説明

バーナ

【課題】コーンガイド内に突起部や鍔状部分等の構造物を設けることなく、低燃焼における振動燃焼抑制と低NOx化とを実現できるバーナを提供すること。
【解決手段】バーナ1は、先端側から燃料を噴霧する油ノズル11Aと、燃料供給下流側に開口部を有して前記油ノズルの先端側が収容される内筒部材12と、この内筒部材12の外周側に配置された外筒部材13とを備えるとともに、外筒部材13の下流側端面13Aには、さらに下流側に延出した空気ノズル14が端面13Aの周方向に間隔を空けて複数設けられ、これらの空気ノズル14の下流端側には主空気噴流口15が形成され、内筒部材12の内部は小孔を介して燃焼空気の一部が流入可能に設けられ、かつ空気ノズル14の外周側には、これらの空気ノズル14を当該外筒部材13の周方向に沿って覆う筒状のコーンガイド20が設けられ、コーンガイド20は、下流側に向かって拡開した拡径部25を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バーナに係り、主として小型のボイラ等に使用される油焚き式のバーナに関する。
【背景技術】
【0002】
燃焼によって生じるNOxに対する排出規制は年々厳しくなっており、NOx低減の技術開発が盛んである。燃焼時に生じるNOxとしては、フューエルNOx、プロンプトNOx、およびサーマルNOxがある。中でもサーマルNOxは、燃焼空気中のN2成分が高温雰囲気中で酸化して生成され、温度依存が高く、燃焼温度が高くなるほど、生成量は急激に増大する。
従って、サーマルNOxは、燃焼に空気を使用する限り必ず生成され、燃料が特に灯油や窒素分の少ないA重油である場合には、排出されるNOxの大半がサーマルNOxといわれ、数多くの低減方法が提案されている。
これらの多くの低減方法の中で、主なNOx抑制燃焼技術としては、(A)分割火炎燃焼方式、(B)排ガス再循環燃焼方式、(C)多段燃焼方式、(D)水混合燃焼方式などが知られている。
【0003】
しかし、(A)分割火炎燃焼方式のバーナでは、火炎の分割が不十分となり易く、NOxの低減には限界があり、昨今の厳しいNOx規制に対応するには更なる技術開発が必要になっている。
また、分割火炎燃焼方式には、複数の主空気噴流口を設けるタイプと、油ノズルを複数個設けるタイプとがあるが、特に後者のタイプのバーナは、大型の油バーナやガスバーナでは比較的容易に分割火炎を形成できるが、バーナ火炎口(外筒部材の径寸法)の小さいバーナでは、分割火炎の形成に難点があるうえ、複数個の油ノズルが必要であり、コストが高くなる。
【0004】
(B)排ガス再循環燃焼方式のバーナは、排ガス(燃焼ガス)の一部を燃焼空気に再循環させ、酸素分圧を下げることで低NOx化を図るものであり、強制排ガス再循環法と自己排ガス再循環法とに大別される。
しかし、強制排ガス再循環法は、排ガスの一部を再循環するのに、再循環用ダクトとブロアーとが必要であり、小型ボイラへの適用はコスト面で問題となる。
これに対して自己排ガス再循環法は、バーナの構造等に工夫を加え、燃焼空気の噴流に周囲の気体が吸引される現象を用いて、燃焼空気流および燃料流に排ガスを混合させて排ガス再循環の効果を持たせることを特徴としており、排ガスを強制的に再循環させることがないため、コスト面でのメリットがあるが、排ガスの再循環量が十分ではなく、NOx低減にはやはり限界がある。
【0005】
(C)多段燃焼方式のバーナは、燃料あるいは燃焼空気を空気比の異なる2段もしくはそれよりも多くの段数に分割して濃淡燃焼させることを特徴とし、火炎温度の低下あるいは酸素濃度の低下によって低NOx化を図るものである。
しかし、この燃焼方式においても、多段で燃焼させるために、バーナの構造が複雑になるという問題がある。
【0006】
(D)水混合燃焼方式は、予め燃料中に水を混合させるか、あるいは燃焼室に水を吹き込んで火炎温度を下げることにより、低NOx化を図るものである。
しかし、この方式では、水の吹き込みによりバーナを構成する筒部材等に腐食が生じるおそれがあるとともに、ボイラ効率も低下する。さらに、ポンプ等の水供給装置が別途必要となるので、コストアップにつながる。
【0007】
以上に述べたように、各方式には一長一短があり、NOxが確実に減少するバーナを安価に製作することは難しかった。これに対して、本出願人が先に開発したバーナ(特許文献1参照)によれば、安価な構造で、かつNOxを確実に低減できる低NOxバーナが実現されている。
特許文献1に記載のバーナは、油ノズルと、当該油ノズルを中心とした周方向に沿って複数設けられた空気ノズルとを備えて構成されている。この特許文献1に記載のバーナでは、油ノズルから燃料が噴霧されるとともに、油ノズルの周囲に配置された空気ノズルから燃焼空気が噴流して火炎が形成される。この際、火炎の着火点(火炎面)は、当該火炎の燃焼速度と、空気ノズルから噴流する燃焼空気の流速とが釣り合った位置に形成される。
【0008】
ところで、特許文献1に記載のバーナでは、低燃焼運転時において、低空気比運転を行った場合、燃焼室の構造や空気ノズルから噴流する燃焼空気の流速等により、この着火点の位置が安定せずに振動してしまういわゆる振動燃焼が生じる場合がある。振動燃焼が生じると、燃焼室内の圧力が変動し、これによりバーナが振動して騒音が生じるおそれがある。従って、従来、低燃焼運転時では、振動燃焼が生じることを抑えるため、空気比を高く設定して運転しており、排ガス量が増加して熱効率が低下してしまうという問題があった。
【0009】
そこで、本出願人は、振動燃焼を抑制する技術として、特許文献2,3に記載の技術を提案している。すなわち、特許文献2では、バーナに燃焼コーンガイドを装着するとともに、コーンガイド内には燃焼空気噴流中に火炎によって熱せられる突起部を設け、この突起部を再着火手段として用いることで低燃焼時の火炎を安定させている。また、特許文献3では、コーンガイド内に鍔状の絞り構造を設けることにより鍔状部分の後方に安定した再循環領域を形成し、これによって安定着火領域を確保している。
【0010】
【特許文献1】特許第3527456号公報
【特許文献2】特開2008−133982号公報
【特許文献3】特開2008−122048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献2,3で提案した技術では、燃料油の組成が変わった場合、特に芳香族分が多く含まれる分解軽油を燃料油として使用した場合には、振動抑制効果を十分に発揮できないことがわかった。
さらに、特許文献2,3で提案されているコーンガイドを用いると、コーンガイド内の突起部や鍔状部分に炭素質成分が析出するおそれがあり、長期間の使用に当たっては定期的なメンテナンスが必要であり、手間がかかるという問題がある。
【0012】
本発明の目的は、コーンガイド内に突起部や鍔状部分等の構造物を設けることなく、低燃焼における振動燃焼抑制と低NOx化とを実現できるバーナを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のバーナは、先端側から燃料を噴霧する油ノズルと、燃料供給下流側に開口部を有して前記油ノズルの先端側が収容される内筒部材と、この内筒部材の外周側に配置された外筒部材とを備え、前記外筒部材の下流側端面には、さらに下流側に延出した空気ノズルが前記端面の周方向に間隔を空けて複数設けられ、これらの空気ノズルの下流端側には主空気噴流口が形成され、前記内筒部材の内部は、供給される燃焼空気から遮断されるか、または、小孔を介して前記燃焼空気の一部が流入可能に設けられたバーナであって、前記空気ノズルの外周側には、これらの空気ノズルを当該外筒部材の周方向に沿って覆う筒状のコーンガイドが設けられ、前記コーンガイドは、下流側に向かって拡開した拡径部を有していることを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、主空気噴流口を複数設けることで、火炎分割効果が得られ、NOxの発生が抑制される。また、外筒部材に主空気噴流口が設けられているので、外筒部材の中央側の空気比が外側の空気比より小さくなり、二段燃焼(濃淡燃焼)効果が得られる。このため、一次燃焼空気の出口である内筒部材の開口部近傍では、着火が抑制され、開口部からより離れた位置で保炎するようになり、NOxの発生が抑制される。また、主空気噴流口からの排ガスが外筒部材の中央側に流入することにより、排ガスの再循環が行われ、燃焼温度が低減する排ガス再循環燃焼効果が得られる。これによってもNOxの発生が減少する。
【0015】
さらに、コーンガイドが拡径部を有することにより、コーンガイド内で形成される火炎がコーンガイドの内面と干渉し難くなるので、従来に比して火炎をより安定させることができ、振動燃焼を抑制できる。そして、火炎のより安定した状態を維持することで、特に芳香族分が多く含まれた燃料油においても、振動燃焼を確実に低減できる。
しかも、コーンガイド内には、従来のような突起部や鍔状部分を設ける必要がないから、そのような部分に炭素質成分が性出することが無く、メンテナンスにかかる手間を大幅に低減できる。
【0016】
本発明のバーナにおいて、前記コーンガイドは、前記拡径部と、この拡径部の上流側に一体に設けられて長さ方向に渡って一定の内径寸法とされた上流側直胴部と、前記拡径部の下流側に一体に設けられて長さ方向に渡って一定の内径寸法とされた下流側直胴部とを有していることが好ましい。
本発明によれば、コーンガイドが上流側直胴部を有しているので、この上流側直胴部と空気ノズルとの間の隙間を小さく維持でき、再循環する排ガスに対してエゼクタ効果を良好に効かすことができ、排ガス再循環をさらに効率的に行える。また、下流側直胴部を設けることにより、燃焼空気や燃料油がコーンガイドの下流側で必要以上に拡散するのを防止でき、ボイラの燃焼室の内壁を形成する水管等への火炎の接触を防止できる。
【0017】
本発明のバーナにおいて、前記コーンガイドの全体の長さ寸法をL、前記上流側直胴部の長さ寸法をL1、前記下流側直胴部の長さ寸法をL2とした時、L1およびL2は、0.1L以上、0.3L以下であることが好ましい。
本発明によれば、各直胴部の長さを適性に設定するので、例えば上流側では、エゼクタ効果による排ガス再循環を確実に行え、また、下流側では、火炎の広がりによるボイラ内壁分部の熱傷を確実に防止できたり、火炎を確実に安定させたりできる。L1,L2が0.1Lよりも小さいと、上流側でのエゼクタ効果が最適とはならず、排ガス再循環燃焼を効率的に行えないうえ、下流側では、火炎が広がりすぎてしまう可能性があり、小型ボイラに本発明を適用した場合など、燃焼室の内壁に火炎が接触して燃焼室の耐久性を損ねる可能性がある。反対に、0.3Lを越えると、上流側ではやはり、長さ寸法が長すぎてエゼクタ効果が最適とはならず、下流側では、コーンガイド内の火炎が下流側直胴部に接触するおそれがあり、火炎が安定しない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係るバーナを示す断面図。
【図2】図1のII−II線矢視図。
【図3】保炎板を示す斜視図。
【図4】保炎板の変形例を示す斜視図。
【図5】前記実施形態での最大振幅に関する効果を説明するための図。
【図6】前記実施形態でのNOx量に関する効果を説明するための図。
【図7】実施例1でのNOx量を示す図。
【図8】実施例1でのCO量を示す図。
【図9】実施例1での最大振幅を示す図。
【図10】実施例2でのNOx量を示す図。
【図11】実施例2でのCO量を示す図。
【図12】実施例2での最大振幅を示す図。
【図13】実施例3でのNOx量を示す図。
【図14】実施例3でのCO量を示す図。
【図15】実施例3での最大振幅を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1および図2において、バーナ1は、燃焼空気供給用の図示しないファンにウインドボックスAを介して取り付けられるものであって、油供給管11と、この油供給管11先端側の油ノズル11Aを収容した内筒部材12と、内筒部材12の外周側に配置された外筒部材13と、外筒部材13の端面13Aよりも下流(燃料の供給方向における下流)に設置されたコーンガイド20とを備えて構成されている。
【0020】
外筒部材13の下流側の端面13Aには、内筒部材12との接合部分の外周側に、周方向に沿って複数(本実施形態では8本)の円筒状の空気ノズル14が等間隔で設けられている。これらの空気ノズル14は、バーナ1の軸線Cに沿って平行に下流側に延出しており、先端部分の開口部が主空気噴流口15とされている。この主空気噴流口15は、外筒部材13の端面13Aよりも下流側に位置しており、外筒部材13の内部を介して供給される二次燃焼空気を下流側へ噴出する。
【0021】
このような外筒部材13を用いたバーナ1は、主空気噴流口15が空気ノズル14の数に応じて周方向の複数箇所(8箇所)に設けられているため、分割火炎燃焼方式の構造を有する。
また、主空気噴流口15の下流で燃焼が生じるが、図1および図2に2点鎖線で示すように、燃焼時の排ガスは、隣接する空気ノズル14の間を通り、燃焼によって最も負圧になる中央側へと入り込んで戻る(排ガス再循環)。このため、バーナ1は、排ガス再循環燃焼方式(自己排ガス再循環法)の構造も有する。
【0022】
内筒部材12の上流側の端部側面、つまりウインドボックスA側の端部側面には、複数の小孔16が穿設されている。一方、内筒部材12の下流側の開口部には、保炎板17が設けられている。保炎板17は、図3に示すように、油ノズル11Aの取付位置に対応した位置に穿設された燃料噴出口17Aと、この燃料噴出口17Aの周囲に切り起こし加工等によって等間隔に形成された複数(8個)の副空気噴流口17Bとを備えている。副空気噴流口17Bは、小孔16を通って内筒部材12内に流入した一次燃焼空気を旋回させながら下流に向かって噴出するため、当該一次燃焼空気と、油ノズル11Aから噴霧された燃料との混合を速やかに行うことができ、一次燃焼空気と燃料とを良好に混合することができる。
【0023】
ここで、小孔16の総開口面積をS1、空気ノズル14の主空気噴流口15の総開口面積をS2とした時、S1/(S1+S2)は、0.3以下、好ましくは0.2以下、より
好ましくは、0.1以下に設定されている。
すなわち、総開口面積S1,S2による比を0.3以下に設定することで、副空気噴流口17Bから噴流する一次燃焼空気の空気量を抑え、これによってバーナ1では、外筒部材13の中央側(油ノズル11Aの前方)の空気比を外周側の空気比よりも小さくし、いわゆる二段燃焼の効果が得られるようになっている。この場合、本実施形態の主空気噴流口15での二次燃焼空気の流速は、20〜70m/secであるのに対し、副空気噴流口17Bからの一次燃焼空気の流速は、10〜20m/sec以下となる。
なお、総開口面積S1,S2による比を0.3を超えて設定すると、二段燃焼の効果が得られず、火炎が保炎板17に張り付いた状態で燃焼し易くなり、NOxの生成量が多くなる。
【0024】
コーンガイド20は、上流側口径d1よりも下流側口径d2の方が大きく、下流側に向けて拡開した円筒状である。この拡開度合いは、上流側端縁21から下流側端縁22を通る直線をTP(図1中に1点鎖線で図示)とした場合、バーナ1全体の軸線Cに対する直線TPのなす角度(テーパ角度)が約10°前後となるように設定されている。
【0025】
具体的にコーンガイド20は、上流側端縁21を有する上流側直胴部23と、下流側端縁22を有する下流側直胴部24と、各直胴部23,24との間に設けられた拡径部25とを備え、上流側直胴部23の外周面に設けられた図示しない取付ブラケットを介して外筒部材13に取り付けられている。前述の上流側口径d1および下流側口径d2はつまり、長さ方向に渡って一定とされた上流側直胴部23および下流側直胴部24の内径寸法である。そして、コーンガイド20の全体の長さ寸法をLとすると、上流側直胴部23の長さ寸法L1は、0.1L〜0.3Lであり、下流側直胴部24の長さ寸法L2も、0.1L〜0.3Lである。
【0026】
このようなバーナ1では、油ノズル11Aから噴霧された燃料には、まず、保炎板17の各副空気噴流口17Bから一次燃焼空気が供給され、次に、各空気ノズル14の主空気噴流口15から2次燃焼空気が供給されて火炎が形成される。この際、火炎は、図1に示すように、下流側に向かって広がるように形成されるが、コーンガイド20の拡径部25も同様に、下流側に向かうに従って拡開していることから、火炎がコーンガイド20の内面に干渉する心配がなく、火炎全体を安定化させることができ、燃焼室内の圧力変動を低減して燃焼振動を抑制できる。
【0027】
特に燃料油として芳香族分が多く含まれる分解軽油を用いた場合には、燃焼性が好ましくなく、着火速度が遅れるのであるが、本実施形態のように安定した火炎を形成できることにより、分解軽油を用いた場合の着火速度を改善でき、燃焼振動を確実に抑制できる。
【0028】
そして、前述したように、主空気噴流口15から噴流する2次燃焼空気量は、副空気噴流口17Bから噴流する1次燃焼空気量より多くなっており、外筒部材13の中央側(油ノズル11Aの前方)が負圧となるので、燃焼後の排ガスは、図1および図2に示すように、隣接する空気ノズル14の間を通って外筒部材13の中央側(油ノズル11Aの前方)に再循環する。加えて、空気ノズル14が外筒部材13の端面13Aより下流側に突出させて複数設けられているので、分割火炎燃焼を実現できる。これらのことから、分割火炎燃焼効果および排ガス再循環燃焼効果を同時に得ることができ、燃焼温度を低減させることができて、NOxの生成量を低減できる。
【0029】
図5には、軸線Cに対する直線TPのなす角度(テーパ角度)を変化させた実験の火炎の最大振幅が示されている。図5によれば、テーパ角度が5°の場合に最大振幅が最も小さく、10°前後で安定した小ささを得ることができる。一方で、図6には、テーパ角度を変化させた実験のNOxの生成量が示されており、テーパ角度5°の場合よりも10°に設定した場合の方が格段に生成量が小さい。以上のことからすると、テーパ角度としては10°前後に設定することが、振動燃焼の抑制およびNOxの低減といった観点からは有効であるといえる。ここで、図5、図6での実験に用いられたバーナは、d1=195mm、L=120mm、L1=20mm、L2=20mm、端面13Aからコーンガイド20の上流側端縁21までの長さL0=40mmに設定されたものである。
【0030】
また、排ガスは、空気ノズル14の基端側部分とコーンガイド20を構成する上流側直胴部23との隙間をとおしてもコーンガイド20内に導かれるが、上流側直胴部23での上流側口径d1が小さいことから、その隙間をより小さくでき、空気ノズル14の主空気噴流口15から噴流する2次燃焼空気によって良好なエゼクタ効果を発揮でき、排気ガスを良好に戻すことができて排ガス再循環燃焼効果を一層向上させることができる。
【0031】
そして、コーンガイド20の上流側が縮径していることで、コーンガイド20内においても、コーンガイド20の内面と空気ノズル14との間の空間を狭くでき、この空間に入り込んだ再循環排ガスの渦流の発生を抑制でき、この点でも火炎を安定化させることが可能である。
【0032】
しかも、本実施形態でのコーンガイド20内には、突起部や鍔状部分が設けられていないため、それらの部分に炭素質成分が析出するおそれがなく、長期間の使用に当たっては、メンテナンスを行うまでの使用期間をより長く設定でき、メンテナンスにかかる手間を大幅に軽減できる。
【0033】
さらに、本実施形態では、主空気噴流口15と小孔16との総開口面積S1+S2に対する小孔16の総開口面積S1の比S1/(S1+S2)が0.3以下になっているので、主空気噴流口15から噴流する2次燃焼空気の空気量に対して、副空気噴流口17Bから噴流する1次燃焼空気の空気量を確実に抑制することができる。これにより、外筒部材13の中央側(油ノズル11Aの前方)の空気比を外側の空気比よりも小さくでき、二段燃焼効果を得ることができるとともに、保炎板17からより離れた位置で保炎することができ、NOxの生成量をより低減できる。
【0034】
なお、本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、かつ、説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
従って、上記に開示した形状、数量などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、数量などの限定の一部もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【0035】
前記実施形態では、コーンガイド20が上流側直胴部23、下流側直胴部24、および拡径部25を備えて構成されていたが、本発明で用いられるコーンガイドとしては、拡径部を有していればよく、上流側や下流側の直胴部は省略可能である。
【0036】
本発明のバーナに用いられる保炎板としては、実施形態で使用した形状の保炎円17に限定されず、図4に示すような保炎板171を用いてもよい。保炎板171の副空気噴流口171Bは、中央の燃料噴出口171Aの周囲に複数穿設された貫通孔である。その貫通方向を示す軸線Dは、バーナ全体の軸線Cと平行であり、噴流した1次燃焼空気に旋回流が生じないようになっている。
このような保炎板171を用いたバーナでも、実施形態と同様の効果を得ることができるうえ、以下の効果を得ることができる。
【0037】
すなわち、保炎板171の副空気噴流口171Bには、前記実施形態の保炎板17とは異なって切り起こし部分が存在しないから、1次燃焼空気の旋回が生じず、燃料との混合を遅らすことができる。従って、燃料の蒸発を十分に進ませてから燃焼させることができ、保炎板171への火炎の張り付きを抑制することができる。これにより、保炎板171から離れた位置で確実に保炎することができ、NOxの生成量をより低減することができる。
【0038】
前記実施形態では、空気ノズル14の本数が8本であったが、空気ノズル14の本数は、S1/(S1+S2)が0.3以下となる範囲内で任意に設定できる。つまり、例えば第一実施形態の空気ノズル14を外筒部材13の端面13Aに7本以下、あるいは9本以上設けてもよい。
また、空気ノズル14の断面形状も、円形や矩形に限らず、例えば三角形状、楕円形状など、燃焼空気の噴流動作やバーナの使用条件、空気ノズル14の製造性などを考慮して任意に設定してよい。
【0039】
空気ノズル14の配置は、周方向に等間隔に配置されているものに限らず、不等間隔に配置されていてもよい。また、空気ノズル14は、内筒部材12の外周側に配置されていれば、同一半径の円周方向に沿って配置されていなくてもよい。
空気ノズル14は、内筒部材12の軸線に平行に延出していたが、内筒部材12の軸線に向かって傾斜していたり、内筒部材12の軸線に対し外側に向かって傾斜していたりしてもよい。
【0040】
油ノズル11Aの設置個数は、1個に限らず、2個以上であってもよい。
保炎板17,171は、必ずしも設けられていなくてもよい。
内筒部材12の小孔16は、内筒部材12の上流側の端部側面に形成されていたが、これに限らず、例えば内筒部材12の下流側の端部近傍の側面に形成されていてもよい。また、内筒部材12の小孔16は、必ずしも設けられていなくてもよく、例えば内筒部材12の下流側の端面が封止されて、内筒部材12の内部が燃焼空気から遮断されていてもよい。この場合には、主空気噴流口15のみから燃焼空気が噴流することになる。
燃料は、重油のほかに灯油など用途に応じて任意に選択できる。
【実施例1】
【0041】
前記実施形態に基づき、d1=195mm、d2=238mm、L=120mm、L1=20mm、L2=20mm、L0=40mmのバーナを実施例1として製作した。一方、比較例1として、突起部付きの口径216mmのコーンガイドが設けられたバーナを作成した。この比較例1のバーナは、特許文献2の図1に記載のバーナに相当する。
【0042】
そして、実施例1および比較例1の各バーナを市販の小型順流燃焼形式貫流ボイラに組み込み、空気比を1.1〜1.6の間で数段階に変えて燃焼試験を行い、高燃焼運転時の排ガス中のNOx量(図7)およびCO量(図8)、低燃焼運転時のボイラの最大振幅(図9)をそれぞれ計測した。なお、ボイラの振幅は、バイパスブローラインのバイパスのフランジ部(ボイラにおいて最も振動値が大きい場所)を計測した。また、その振幅は、市販のポータブル製の振動計測器を用いて計測した。燃料油は、表1の燃料油性状表にある分解軽油を用いた。高燃焼運転時の重油の燃焼量は、65L/hr、低燃焼運転時の重油の燃焼量は、32.5L/hrである。
【0043】
図7〜図9に燃焼試験の結果を示す。図7に示すように、高燃焼運転時のNOx量としては、空気比1.3以上で明らかに実施例1でのNOx量が比較例1に比べて少ない。これは、上流側で縮径している実施例1のコーンガイドを用いることで、エゼクタ効果によって排ガスの循環効率が向上し、排ガス再循環燃焼が良好に行われているからである。CO量については、図8に示すように、実施例1および比較例1において、略同等の値が得られた。ボイラの振幅については、図9に示すように、空気比1.5以下において、振幅が大幅に改善されていることがわかる。これは、コーンガイドの形状が下流側に向かって拡径していることから、形成された火炎がコーンガイドの内面と干渉せず、火炎を安定した状態に形成できるからである。このことから、燃焼が安定しない芳香族分の多い分解軽油を燃料油として使用した場合でも、振動燃焼を抑制できることが確認された。
【表1】

【実施例2】
【0044】
前記実施例1の構造のバーナにおいて、燃料油性状表中のハイカロリーA重油を燃料油として用いたものを実施例2のバーナとし、前記比較例1の構造のバーナにおいて、ハイカロリーA重油を燃料油として用いたものを比較例2とした。
【0045】
図10〜図12に燃焼結果を示す。NOx量の傾向としては、前記実施例1および前記比較例1と同じであるが、絶対量として実施例2および比較例2の方が低い値となっている。つまり、ハイカロリーA重油を用いた場合でも、本発明のバーナの方が、従来のバーナに比してNOx量を低減できることが確認された。CO量については、前記実施例1および比較例1とほぼ同結果が得られ、十分に低い値である。最大振幅については、分解軽油を用いた場合に比して振幅の大きさは減少しており、さらに、ハイカロリーA重油を用いた場合でも、空気比が1.3以下においては、実施例2の方が比較例2に比して振幅が小さく、振動燃焼を抑制できることが認められた。
【実施例3】
【0046】
前記実施例1の構造のバーナにおいて、燃料油性状表中の低硫黄A重油を燃料油として用いたものを実施例3のバーナとし、前記比較例1の構造のバーナにおいて、低硫黄A重油を燃料油として用いたものを比較例2とした。
【0047】
図13〜図15に燃焼結果を示す。NOx量の傾向としては、前記実施例1,2および前記比較例1,2と同じであるが、絶対量としてさらに実施例3および比較例3の方が低い値となっている。このことから、低硫黄A重油を用いた場合でも、本発明のバーナの方が、従来のバーナに比してNOx量を低減できることが確認された。CO量については、前記実施例1,2および比較例1,2とほぼ同結果が得られた。最大振幅については、分解軽油やハイカロリーA重油を用いた場合に比し、さらに振幅の大きさが減少しているうえ、僅かであるが比較例3に対して実施例3の振幅が小さいと認められる。すなわち、本発明のバーナは、振動燃焼抑制の観点からは、分解軽油等、芳香族分の多い燃料を用いた場合に、より顕著な効果が得られるといえる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明のバーナは、順流燃焼方式、ωフロー方式、および反転燃焼方式などのボイラに利用でき、特に小型のボイラにおいて好適に使用される。
【符号の説明】
【0049】
1…バーナ、11…油供給管、11A…油ノズル、12…内筒部材、13…外筒部材、13A…下流側端面、14…空気ノズル、15…主空気噴流口、16…小孔、20…コーンガイド、23…上流側直胴部、24…下流側直胴部、25…拡径部、L,L1,L2…長さ寸法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端側から燃料を噴霧する油ノズルと、燃料供給下流側に開口部を有して前記油ノズルの先端側が収容される内筒部材と、この内筒部材の外周側に配置された外筒部材とを備え、
前記外筒部材の下流側端面には、さらに下流側に延出した空気ノズルが前記端面の周方向に間隔を空けて複数設けられ、
これらの空気ノズルの下流端側には主空気噴流口が形成され、
前記内筒部材の内部は、供給される燃焼空気から遮断されるか、または、小孔を介して前記燃焼空気の一部が流入可能に設けられたバーナであって、
前記空気ノズルの外周側には、これらの空気ノズルを当該外筒部材の周方向に沿って覆う筒状のコーンガイドが設けられ、
前記コーンガイドは、下流側に向かって拡開した拡径部を有している
ことを特徴とするバーナ。
【請求項2】
請求項1に記載のバーナにおいて、
前記コーンガイドは、前記拡径部と、この拡径部の上流側に一体に設けられて長さ方向に渡って一定の内径寸法とされた上流側直胴部と、前記拡径部の下流側に一体に設けられて長さ方向に渡って一定の内径寸法とされた下流側直胴部とを有している
ことを特徴とするバーナ。
【請求項3】
請求項2に記載のバーナにおいて、
前記コーンガイドの全体の長さ寸法をL、前記上流側直胴部の長さ寸法をL1、前記下流側直胴部の長さ寸法をL2とした時、L1およびL2は、0.1L以上、0.3L以下である
ことを特徴とするバーナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−80698(P2011−80698A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−233442(P2009−233442)
【出願日】平成21年10月7日(2009.10.7)
【出願人】(590000455)財団法人石油産業活性化センター (249)
【出願人】(500117004)株式会社石油産業技術研究所 (5)
【Fターム(参考)】