説明

パイプの接続具

【課題】簡単な作業によって狭い空間においても効率よく迅速に、パイプPとパイプPを同軸に接続し、小さい圧力によってスムーズに圧入することのできるきる装置を提供する。
【解決手段】筒体1の大径部11から鍔部3に向けて、徐々に中心軸から距離の離れる形状の傾斜部2を中心軸の対象位置に複数形成したパイプPの接続具に、円形断面のパイプPを接続加圧することにより、接続具円形断面のパイプPが楕円形に変形することになる。小径部12は、大径部11よりも外径が小さいから、パイプPを引き上げた場合に、楕円形に変形したパイプPの縮小部分が小径部12と大径部11の段差14に係合して引き抜き不能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パイプの接続具に関するものである。ここで「パイプ」とは主に地盤に打ち込む鋼製の管体をいう。
【背景技術】
【0002】
特に本発明の対象は、傾斜した家屋を下から押し上げるアンダーピーニング工法において、押し上げ力の反力を受けるパイプの接続に関するものである。
アンダーピーニング工法の施工法の一例を図10に示すと、まず対象家屋の基礎Aの側面と直下を掘削して作業スペースBを形成する。
次に、家屋の基礎Aの直下において底面に向けて最初のパイプP1を圧入する。
このパイプP1は基礎Aの直下に直立させ、その上を圧入する装置で加圧するものであるから、きわめて限定された範囲の長さのものしか扱うことができない。
そのために短いパイプP1を圧入し、その上に次のパイプP2を順次溶接Cして延長する方法を採用している。
アンダーピーニング工法はこうして圧入したパイプ群の上にジャッキDを設置し、このジャッキDにより、パイプ群に反力を取って家屋の基礎Aを押し上げて沈下を修正するものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記した従来のアンダーピーニング工法におけるパイプの接続方法では次のような問題点がある。
<1> 作業スペースは家屋の側部を掘削して確保するものであるが、一般には用地に余裕のある家屋は少なく、そのためにきわめて狭い作業スペースとなる。そのような狭い作業スペースにおいて高熱を発生する溶接作業を行うことはきわめて劣悪な環境での作業となり、作業効率は悪く、作業員の健康上も好ましくない。
<2> 継ぎ足したパイプ群を地中に圧入する場合に、狭い用地に大型の装置を設置することはできないから、できるだけ小さい圧力で圧入できる必要がある。そのためにはパイプ群の外周は平滑で抵抗が少ない方がよいが、パイプの接続部の溶接の肉盛りが外側に向けて突出することから圧入時の抵抗となり、小さい圧力による圧入の妨げとなる。
<3> アンダーピーニング工法用のパイプでは、パイプに伝わる鉛直荷重は100%伝達させる必要があるが、引張力は施工時に接続したパイプが落下しない程度の強度を備えていれば十分であり、また曲げ強度も基礎とパイプを接続しないのでほとんど考慮する必要がない、という機能を備えたパイプである。したがってこのような機能を達成できればよいのだから、従来の接続具の構造はそれ以上の過剰な機能を備えていたということができる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記のような課題を解決するために、本発明のパイプの接続具は、パイプとパイプを同軸上に接続するための接続具であり、筒体と、鍔部とより構成し、筒体は中空の管体であり、外径の大きい大径部と、外径が大径部の外径より小さい小径部とによって構成し、大径部は筒体の両端に位置し、小径部は筒体の中央に位置し、大径部の外径は、接続対象のパイプの内径にほぼ等しく、鍔部は、筒体の小径部の外周に設けた、筒体の大径部の外径よりも大きい外径の棚状の板であり、筒体の大径部から鍔部に向けて、複数箇所に傾斜部を形成し、この傾斜部は、徐々に筒体の中心軸から距離の離れる形状の斜面体であり、かつ筒体の中心軸から対象位置に配置してあるパイプの接続具を特徴としたものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明のパイプの接続具は以上説明したようになるから次のような効果を得ることができる。
<1> 狭い作業空間においても、きわめて簡単な作業によってパイプとパイプを同軸上に接続することができる。
<2> パイプの表面に、外向きに突出するような部分が生じないから、小さい圧入力によってスムーズに圧入することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下図面を参照にしながら本発明の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【実施例】
【0007】
<1>全体の構成。
本発明の対象は、パイプとパイプを同軸上に接続するための接続具であり、
筒体1と、その外周に鍔状に突設した鍔部3とより構成する。
【0008】
<2>筒体1。
筒体1は中空の管体であり、外径の大きい大径部11と、外径が大径部11の外径より小さい小径部12とによって構成する。
【0009】
<2−1>大径部11。
大径部11は筒体1の両端に位置する。
大径部11の外径は、接続対象のパイプPの内径にほぼ等しく形成する。
大径部11の開放側の外周は、開放側に向けて徐々にその外径を縮小した円錐部13を形成してある。
接続する対象のパイプPの端が、まずこの円錐部13に係合することになり、スムーズなパイプPの外挿が可能となる。
【0010】
<2−2>小径部12。
小径部12は筒体1の中央に位置し、大径部11よりも外径が小さい。
したがって大径部11と小径部12との境界には、段差部14が生じる。
この段差部14において、後述するように縮小したパイプPの縮小部分が係合することになる。
【0011】
<3>鍔部3。
鍔部3は、筒体1の小径部12の中央に、その外周に棚状に設けた板体である。
鍔部3の外径は、小径部12の外径より大きいだけではなく、大径部11の外径よりも大きく形成する。
【0012】
<4>傾斜部2。
筒体1の大径部11から鍔部3に向けて、傾斜部2を形成する。
傾斜部2の形成位置は、筒体1の円形断面の対称位置である。
この傾斜部2は、徐々に筒体1の中心軸から距離の離れる形状の斜面体である。
このように傾斜部2の始端21は、大径部11の外周面であり、傾斜部2の終端22は鍔部3の表面である。
【0013】
<5>相互の寸法。
鍔部3の外周縁31と、傾斜部2の終端22との間隔は、接続対象のパイプPの肉厚とほぼ等しく形成してある。
また、一方の傾斜部2の終端22から、対称位置にある傾斜部2の終端22までの距離から、大径部11の外径を引いた値が、大径部11の外径から小径部12の外径を引いた値とほぼ等しく構成してある。
そのように構成することによって、パイプPを接続具に挿入した場合以下のような関係が成立する。
1) 拡大寸法=[一方の傾斜部終端22から他方の傾斜部終端22までの距離]から[大径部11の外径]を引いた値。
2) 縮小寸法=[大径部11の外径]から[小径部12の外径]を引いた値。
3) 拡大寸法≒縮小寸法
【0014】
<6>パイプPの挿入。
次に本発明の接続具が圧入してある1本のパイプPの上端にすでに固定してあるものとし、その上から新たなパイプPを接続する場合を例として接続方法を説明する。
上記の構成の接続具の筒体1の端部から、接続すべき新たなパイプPの端を外挿する。
筒体1の開放側は、開放側へ向けて外径が徐々に縮小する円錐部13として形成してあるから、大径部11の外径とほぼ等しい内径を有するパイプPであってもスムーズに大径部11へ挿入することができる。
【0015】
<7>パイプPの長軸の拡大。(図3〜図5)
パイプPの他端から所定の圧力で加圧すると、パイプPの先端は傾斜部の始端21に到達する。
そのまま加圧を続けると、パイプPの内径よりも、対称位置にある傾斜部2間の間隔が徐々に広くなっているから、パイプPの断面は徐々に、両側の傾斜部2間を長軸aとした楕円形に変形する。(図9)
【0016】
<8>パイプPの短軸の縮小。(図6〜図8)
パイプPの断面が円形から楕円形に変形して長軸aは長くなることに比例して短軸bは短くなる。(図9)
パイプPの断面における短軸bに相当する位置において、筒体1は小径部12を形成しているから、パイプPの先端側は小径部12の外周面の側に引き寄せられてさらに短軸bを縮小してゆく。
【0017】
<9>接続の完了。
パイプPの端部において、楕円形の短軸bに相当する部分は、筒体1の小径部12の外周面に接する程度まで縮小する。
小径部12は、大径部11よりも外径が小さいから、パイプPを引き上げた場合に、パイプPの縮小部分が小径部12と大径部11の段差14に係合してしまい、引き抜くことができない状態となる。
こうしてパイプPと接続具との接続が完了する。
以上のように、この接続作業は、パイプPを接続具に圧入するだけのきわめて簡単な作業であり、狭い空間においても効率よく迅速に接続を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明のパイプの接続具の実施例の説明図。
【図2】その側面図。
【図3】パイプの内径が拡大する状態の説明図。
【図4】パイプの内径が拡大する状態の説明図。
【図5】パイプの内径が拡大する状態の説明図。
【図6】パイプの内径が縮小する状態の説明図。
【図7】パイプの内径が縮小する状態の説明図。
【図8】パイプの内径が縮小する状態の説明図。
【図9】パイプの断面が円形から楕円形に変形する状態の説明図。
【図10】アンダーピーニング工法の説明図。
【符号の説明】
【0019】
1:筒体
2:傾斜部
3:鍔部
P:パイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイプとパイプを同軸上に接続するための接続具であり、
筒体と、鍔部とより構成し、
筒体は中空の管体であり、外径の大きい大径部と、外径が大径部の外径より小さい小径部とによって構成し、
大径部は筒体の両端に位置し、小径部は筒体の中央に位置し、
大径部の外径は、接続対象のパイプの内径にほぼ等しく、
鍔部は、筒体の小径部の外周に設けた、筒体の大径部の外径よりも大きい外径の棚状の板であり、
筒体の大径部から鍔部に向けて、複数箇所に傾斜部を形成し、
この傾斜部は、徐々に筒体の中心軸から距離の離れる形状の斜面体であり、かつ筒体の中心軸から対象位置に配置してある、
パイプの接続具。
【請求項2】
鍔部の外周縁と、
傾斜部と鍔部の接点との間隔を、
接続対象のパイプの肉厚とほぼ等しく形成した、
請求項1記載の、パイプの接続具。
【請求項3】
両側の傾斜部の終端の距離から、大径部の外径を引いた値が、
小径部の外径とほぼ等しく構成した、
請求項1記載の、パイプの接続具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−120122(P2007−120122A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−313113(P2005−313113)
【出願日】平成17年10月27日(2005.10.27)
【出願人】(598027847)株式会社設計室ソイル (15)
【Fターム(参考)】