説明

パイプクランプ

【課題】パイプの直径が異なってもその違いに対応できる、保持強度の高いパイプクランプを提供する。
【解決手段】2つのパイプ保持部2A,2Bの中間にパイプ押圧部10が設けられ、パイプ押圧部は、ヒンジ17を中心に各パイプ保持部の上面側で内側に折れ曲がる一対の保持片18と、保持片の上端を相互に連結する頭部19と、頭部下面から垂下して、先端に多段のラチェット爪21を有するラッチロッド22とを備え、頭部の押下げによってラッチロッドが係止爪23へ押込まれ、その押込まれる深さに従って、保持片の各々がパイプ保持部の側に折れ曲がって張り出す大きさが変化して、各パイプ保持部に収容されたパイプが大径であっても小径であっても折れ曲がった保持片がパイプの上方側を押してパイプを固定した状態が得られ、この状態が、ラッチロッドのラチェット爪と係止爪との係合によってロックされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パイプを並列に保持するパイプクランプに関し、特に、燃料給送パイプやブレーキ油給送パイプ等のパイプを、自動車の車体パネル等の被取付部材に取付けたり、被取付部材上で整列するのに適したパイプクランプに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料給送パイプやブレーキ油給送パイプを車体のアンダーパネルに取付けたりアンダーパネルに近接した状態で整列して保持するパイプクランプはよく知られている。特許文献1に記載のクランプは、パイプではないが、パイプと同様の細長い部材であるワイヤハーネスを、複数本、整列して保持できる構成である。特許文献1に記載のクランプでは、ワイヤハーネスの直径が変化しても押さえ部材の高さ位置を変えることで対応できるようにして、ワイヤハーネスの直径の大小に対応できる。
【0003】
【特許文献1】特開昭58−200811号公報
【特許文献2】実開昭61−028974号公報(実公昭63−22395号公報)
【特許文献3】実開昭61−135079号公報
【特許文献4】実開平5−080121号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のワイヤハーネスのクランプは、ワイヤハーネスの直径の大小に対応できる構成を有するので好ましいが、ワイヤハーネス保持部の開放部を塞ぐ押さえ部材が、ワイヤハーネス保持部とは別部品で成り、ワイヤハーネス保持部に細長い嵌合爪で係止する構成であるので、十分な保持強度が得られない。特許文献2のワイヤハーネスクランプは、ワイヤハーネスの直径の大小に応える構成があるが、弾性保持部の弾性によっているので十分な保持強度が得られない。また、特許文献2のクランプは複数のワイヤハーネスを保持する構成でもない。特許文献3のパイプクランプは、パイプの直径の大小に応える構成があるが、弾性の湾曲片と弾性の膨出部との組合せによるので十分な保持強度が得られない。また、特許文献3のクランプは複数のパイプを保持する構成はない。
【0005】
特許文献4は、ワイヤハーネスの取付構造を記載している。ただ、このワイヤハーネスは、通常のパイプ状の細長いものではなく、シート状(又はフィルム状)のワイヤハーネスであり、取付構造は、パイプ等の管形状の細長い部材を保持するクランプではない。従って、パイプのように管形状の細長い部材を保持するパイプクランプの構成を示すものではない。
【0006】
従って、本発明の目的は、パイプを並列に保持し、パイプの直径が異なってもその違いに対応できる、保持強度の高いパイプクランプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するため、本発明によれば、隣接配置された2つのパイプ保持部を備えており、各パイプ保持部は、その上部の開放部から底面に着座するようにパイプが収容される構成であり、各パイプ保持部に収容したパイプを並列に保持する構成のパイプクランプであって、前記2つのパイプ保持部の中間に、各パイプ保持部に収容されたパイプの上方側を押さえて保持するためのパイプ押圧部が設けられており、前記パイプ押圧部は、前記2つのパイプ保持部の底面から伸長時には立ち上がるように延び、中間のヒンジを中心に各パイプ保持部の上面側であって且つ内側に折れ曲がることができる、中折れアーム形状の一対の保持片と、該一対の保持片の上端を相互に連結する頭部と、該頭部下面から垂下して、先端に多段のラチェット爪を有するラッチロッドとを備え、前記パイプ保持部の一方の底面と他方のパイプ保持部の底面との間の部分に、前記ラッチロッドのラチェット爪を受入れて係止する係止爪が形成されており、該係止爪は、前記ラッチロッドの押込みによって前記ラチェット爪を受入れて係止し、前記ラッチロッドの抜け出しを阻止する構成であり、前記頭部の押下げによって前記ラッチロッドが前記係止爪へ押込まれ、該ラッチロッドが前記係止爪へ押込まれる深さに従って、前記保持片の各々が前記ヒンジ回りに前記パイプ保持部の側に折れ曲がって張り出す大きさが変化する構成であり、前記頭部の押下げによって、各パイプ保持部に収容されたパイプが大径であっても小径であっても前記折れ曲がった前記保持片が該パイプの上方側を押してパイプを底面に着座させる状態が得られ、この状態が、前記ラッチロッドの前記ラチェット爪と前記係止爪との係合によってロックされる、ことを特徴とするパイプクランプが提供される。
【0008】
上記のとおり、頭部の押下げによって、各パイプ保持部に収容されたパイプが大径であっても小径であっても折れ曲がった保持片がパイプの上方側を押してパイプを底面に着座させる状態が得られ、この状態がラッチロッドのラチェット爪と係止爪との係合によってロックされるので、パイプの直径が異なってもその違いに対応できる、保持強度の高いパイプクランプが得られ、しかも、パイプ2本が並列に整列されて保持される。従って、外径の違うパイプを保持するのに、専用のクランプを多種類用意する必要がなくなり、1種類のパイプクランプで対応でき、しかも、1部品構成ででき、高い保持強度を得ることができる。
【0009】
上記パイプクランプにおいて、パイプ保持部へパイプを収容する前にはラッチロッドの先端は係止爪に係合しない状態にあり、パイプをパイプ保持部に収容するとき保持片はパイプ保持部外へ退避するように変形可能であってパイプの挿入を阻害しない構成とすることができ、これによって、パイプをパイプ保持部へ収容するときの作業も力を必要とせずに容易にできる。また、パイプ保持部へパイプを収容した後に頭部を押下げると、ラッチロッドの先端が係止爪に係合するように押下げられる構成であり、頭部の押下げは、保持片の、パイプ保持部側に張り出す折れ曲がり部分が、パイプ上方側を押圧して当接すると停止されるので、パイプの保持作業も極めて容易であり、2つパイプ保持部にパイプが収容されているとき、1回の頭部の押下げでパイプの保持作業ができ、この点においても、パイプの保持作業も極めて容易である。2つのパイプ保持部は、両パイプ保持部を底部でつなぐように延びて各パイプ保持部の底面を形成する基部と、基部の一端から一方のパイプ保持部の外壁を形成するように直立する剛性の側壁と、基部の他端から他方のパイプ保持部の外壁を形成するように直立する剛性の側壁とを備えている、ように形成でき、その構成は複雑にはならない。前記側壁の各々の内壁面の上部には、パイプ保持部に収容されたパイプが上方に脱け出ないように、内壁面から内側に突出するストッパが形成されており、ストッパは、上面側においてはパイプ保持部へパイプを押込むのを容易にするように傾斜して内側に突出しており、底面側においてはパイプ保持部に収容されたパイプを安定して保持するようにパイプの外周面に合わせて湾曲して形成されている。これによって、パイプの収容作業を容易に維持し、保持後の保持強度を一層高く維持する。
【0010】
上記パイプクランプにおいて、2つのパイプ保持部は、該両パイプ保持部を底部でつなぐように延びて各パイプ保持部の底面を形成する基部を備え、基部の底面からは、車体パネル等の被取付部材へ固定される係止脚部が垂下しており、係止脚部は、被取付部材の取付穴に挿入される棒状の軸部と、該軸部の側面から、前記取付穴の縁部に係止するように半径方向外側に弾性的に突出する、一対の弾性係止片とを有する、構成であるのが好ましい。これによって、パイプクランプで保持したパイプを被取付部材に取付けることができる。これとは別に、2つのパイプ保持部は、両パイプ保持部を底部でつなぐように延びて各パイプ保持部の底面を形成する基部を備え、基部の一方の側面には、車体パネル等の被取付部材へ立設されたスタッドに固定されるスタッド係止部が一体に形成されており、スタッド係止部には、スタッドを受入れるように上下方向に延びる空洞が形成され、スタッド係止部には、スタッドの外周面に形成されたねじの谷又は周溝に係止する係止爪が前記空洞に斜めに延びるように形成されている、構成であってもよい。これによって、スタッドを立設した被取付部材に、パイプを固定するができる。更に別の場合には、2つのパイプ保持部は、該両パイプ保持部を底部でつなぐように延びて各パイプ保持部の底面を形成する基部を備えているが、基部には、被取付部材への固定手段が形成されていない、構成であってもよい。このパイプクランプは、「空中クランプ」として用いることができ、例えば、パイプを被取付部材上で整列するの用いることができる。そして、パイプクランプは、全体が熱可塑性プラスチックで一体成形されている、のが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明に係るパイプクランプについて説明する。図1〜図10には、本発明の第1実施形態に係るパイプクランプ1が示されている。図11〜図13には、第2実施形態に係るパイプクランプ1Aが示され、図14〜図16には、第3実施形態に係るパイプクランプ1Bが示されている。第1実施形態に係るパイプクランプ1、第2実施形態に係るパイプクランプ1A、第3実施形態に係るパイプクランプ1Bは、いずれも、熱可塑性のプラスチック材料で一体成形されている。本発明に係るパイプクランプは、図示のように、2つのパイプ保持部を隣接配置しているが、他の形態、例えば、2つのパイプ保持部を隣接配置して成るパイプクランプの側面に公知のパイプクランプを連設したものでもよく、2つのパイプ保持部だけを有するパイプクランプに限定されない。
【0012】
図1〜図10に示す、第1実施形態に係るパイプクランプ1の構成について、図1〜図6を参照して説明する。パイプクランプ1は、2本のパイプを並列に保持する2つのパイプ保持部2Aと2Bを形成する本体3と、車体パネル等の被取付部材への固定部である、被取付部材の取付穴に挿入されて係止する係止脚部5とを有する。本体3は、2つのパイプ保持部2A及び2Bを底部でつなぐように延びて、パイプ保持部2A及び2Bの底面側を形成する基部6と、基部6の一端から一方のパイプ保持部2Aの外壁を形成するように直立する剛性の側壁7と、基部6の他端から他方のパイプ保持部2Bの外壁を形成するように直立する剛性の側壁9とを備える。更に、本体3には、パイプ保持部2Aと2Bとの中間に、パイプ保持部2A、2Bに受入れられたパイプの上面又は上部側の側面を押さえて保持するためのパイプ押圧部10が設けられている。このパイプ押圧部10は、図7〜図10に図示のように、小径のパイプ(図7及び図8)であっても、大径のパイプ(図9及び図10)であっても、確実に、パイプ保持部2A、2Bに保持することができる。
【0013】
車体パネル等の被取付部材への固定部である、係止脚部5は、基部6の底面から直立して延びて、被取付部材の取付穴に挿入される棒状の軸部11と、軸部11の側面から、取付穴の縁部に係止する半径方向外側に弾性的に突出する、一対の弾性係止片13とを有する。軸部11が取付穴に挿入されて、弾性係止片13が取付穴を貫通すると、取付穴の縁部に弾性的に係合し、これによって、基部6の底面と弾性係止片13の間に被取付部材が挟持され、パイプクランプ1が被取付部材に固定される。
【0014】
パイプ保持部2A及び2Bの底部を形成する基部6は、一定の幅(図2の上下方向の長さ)と一定の長さ(図2の左右方向の長さ)と一定の高さ(図3の上下方向の長さ)で成る剛性のブロックとして形成され、パイプ保持部2A、2Bを保持する剛性を有する。なお、材料の節約と重量の軽減のために、パイプ保持部2A、2Bの中間高さ部分には上記の幅方向(図2の上下方向)に延びる空洞が形成されている。基部6の上面は、パイプ保持部2A、2Bにおいて、湾曲したパイプ保持底面14を形成している。基部6の長さ方向(図2の左右方向)の各端部から直立する剛性の側壁7、9は、パイプ保持部2A、2Bに収容されたパイプに外側へ移動する力が加わっても撓まない剛性の壁板として形成される。更に、側壁7及び9の各々の内壁面の上部には、パイプ保持部2A、2Bに収容されたパイプが上方に脱け出ないように、内側に突出するストッパ15が形成されている。各ストッパ15は、上面側においてはパイプ保持部2A、2Bへパイプを押込むのを容易にするように傾斜して内側に突出しており、下面側においてはパイプ保持部2A、2Bに収容されたパイプを安定して保持するようにパイプの外周面に合わせて湾曲して形成されている。
【0015】
大径のパイプでも小径のパイプでも押圧保持するパイプ押圧部10は、2つのパイプ保持部2Aと2Bとの間に、各パイプ保持部2A、2Bのそれぞれに受入れられたパイプの上面又は上部側の側面を押さえて保持するように設けられている。詳細には、図3及び図6に最もよく示されるように、パイプ押圧部10は、基部6のパイプ保持部2Aのパイプ保持底面14とパイプ保持部2Bのパイプ保持底面14と間であって各底面14の端部から伸長時には立ち上がるように延び、中間のヒンジ17を中心にパイプ保持部2A、2Bの上面側であって各パイプ保持部2A、2Bの内側に折れ曲がる、中折れアーム形状の一対の保持片18と、一対の保持片18の上端を相互に連結する水平姿勢の頭部19と、頭部19の下面から垂下して先端に多段のラチェット爪21を有するラッチロッド22とを有する。保持片18は、可撓性であり、それによって、パイプの押圧面積が多くなって、パイプの押圧を一層強固にする。各保持片18は、基部6の底面14に連結する部分で保持片18の中折れを有効にするようにヒンジ連結されており、同様に、頭部18に連結する部分でヒンジ連結されている。従って、パイプ押圧部10は、一対の保持片18と頭部19とによって、パンタグラフ形状を形成して、上下方向の高さを変更することができ、伸張時には図1、図3の高さであるが、頭部19が下方に押されるとパイプ保持部2A、2Bの側に張り出すように折れ曲がる。なお、保持片18の長さは、パイプ保持部2A、2Bが保持できるパイプの直径の大きさに合わせて定められる。ヒンジ17の位置は、保持片18のほぼ半分の長さの位置であるが、保持するパイプへの押圧が大径のパイプであっても小径のパイプであっても有効になる位置に定められる。
【0016】
基部6には、パイプ保持部2Aのパイプ保持底面14とパイプ保持部2Bのパイプ保持底面14との中間部分に、ラッチロッド22のラチェット爪21を受入れて係止する一対の係止爪23が形成されている。一対の係止爪23の間には、ラッチロッド22の先端のラチェット爪21を受入れる隙間が形成されている。一対の係止爪23は、ラッチロッド22の押込みによってラチェット爪21を受入れてそのラチェット爪21に係止し、ラッチロッド22の抜け出しを阻止する。
【0017】
上記したパイプ押圧部10は、図7〜図10に図示のように、頭部19を押込んでラッチロッド22の先端のラチェット爪21を係止爪23の間の隙間に挿入すると、一対の保持片18がヒンジ17で中折れして、その中折れ部分が側方に張り出して、パイプ保持部2A、2Bにある、小径のパイプ25(図7、8)の上面又は大径のパイプ26(図9、10)の上部側の側面を押さえて保持する。
【0018】
図7及び図8を参照して、小径のパイプ25をパイプ保持部2A及び2Bに保持する操作を説明する。図7(A)において、パイプ25をパイプ保持部2A、2Bの開口部に配置して、矢印27で示すように、力F1で、2つのパイプ25をそれぞれパイプ保持部2A、2Bに押込む。この押込みは、パイプ押圧部10の保持片18のヒンジ17の部分を撓めるが、その反力は小さく、小さな押込み力F1で、パイプ25をパイプ保持部2A、2Bに収容できる。図7(A)の破線で示すパイプ25は、前記の押込みによって、パイプクランプ1のパイプ保持部2A、2Bに仮保持された状態にある。
【0019】
次に、図7(B)において、パイプ押圧部10の頭部19を矢印29で示すように、力F2で押圧する。この押圧によって、頭部19が押下げられ、頭部19から垂下するラッチロッド22の先端側の多段のラチェット爪21が係止爪23、23の隙間に挿入されて係止爪23に、先端側のラチェット爪21が係止し始める。頭部19を更に押下げることによって、保持片18はヒンジ17を中心に中程から折曲げられて、その折曲げ部分がパイプ保持部2A、2Bの側に張り出す。頭部19を力F2で十分に押下げると、ラチェット爪21の部分が係止爪23の隙間に深く挿入されて、そこで、保持されて、保持片18の折曲げ部分がパイプ25の上面を強く押圧し、その押圧によって各パイプ25が、パイプ保持部2A、2Bのパイプ保持底面14に押付けられて、各パイプ25は、パイプ保持部2A及び2Bに保持される。すなわち、2つのパイプ25はパイプクランプ1に並列に保持される。
【0020】
図7(B)のように、パイプクランプ1が取付けられたパイプ25は、例えば、自動車の組付ラインに納入されて、車体パネル等の被取付部材に取付けられる。図8(A)及び(B)は、パイプクランプ1で保持されたパイプ25が、被取付部材であるパネル30に取付けられた様子を示している。図7(B)に図示のように、パイプ25をパイプクランプ1に保持した状態で、パイプクランプ1の固定部である係止脚部5の軸部11をパネル30の取付穴に挿入する。この挿入によって、弾性係止片13がパネル30の取付穴の縁部に係止して、本体2の基部6の下面と協働して、パネル30を挟持して、パイプクランプ1がパネル30に取付けられる。このように、パイプ25の取付け作業は極めて簡単に行える。
【0021】
図9及び図10を参照して、大径のパイプ26をパイプ保持部2A及び2Bに保持する操作を説明する。図9(A)において、パイプ26をパイプ保持部2A、2Bの開口部に配置して、矢印31で示すように、力F3で、2つのパイプ26をそれぞれパイプ保持部2A、2Bに押込む。この押込みは、パイプ押圧部10の保持片18のヒンジ17の部分を撓めるが、その反力は小さく、小さな押込み力F1と同様にに小さな押込み力F3で、パイプ26をパイプ保持部2A、2Bに収容できる。図9(A)の破線で示すパイプ26は、前記の押込みによって、パイプクランプ1のパイプ保持部2A、2Bに仮保持された状態にある。
【0022】
次に、図9(B)において、パイプ押圧部10の頭部19を矢印33で示すように、力F4で押圧する。この押圧によって、頭部19が押下げられ、頭部19から垂下するラッチロッド22の先端側の多段のラチェット爪21が係止爪23、23の隙間に挿入されて係止爪23に、先端側のラチェット爪21が係止し始める。頭部19を更に押下げることによって、保持片18はヒンジ17を中心に中程から折曲げられて、その折曲げ部分がパイプ保持部2A、2Bの側に張り出す。頭部19を力F4で十分に押下げると、ラチェット爪21の部分が係止爪23の隙間に確実に挿入されて保持され、保持片18の折曲げ部分がパイプ26の上部の側面を強く押圧する。その押圧によって各パイプ26がパイプ保持部2A、2Bのパイプ保持底面14に押付けられてパイプ保持部2A及び2Bに保持されて、2つのパイプ26がパイプクランプ1に並列に保持される。
【0023】
図9(B)のように、パイプクランプ1が取付けられたパイプ26は、例えば、自動車の組付ラインに納入されて、車体パネル等の被取付部材に取付けられる。図10(A)及び(B)は、パイプクランプ1で保持されたパイプ26が、被取付部材であるパネル30に取付けられた様子を示している。図9(B)に図示のように、パイプ26をパイプクランプ1に保持した状態で、パイプクランプ1の固定部である係止脚部5の軸部11をパネル30の取付穴に挿入して、弾性係止片13がパネル30の取付穴の縁部に係止し、本体2の基部6の下面と協働して、パネル30を挟持して、パイプクランプ1がパネル30に取付けられる。このように、パイプ26の取付け作業は極めて簡単に行える。
【0024】
上記のとおり、パイプ押圧部10は、小径のパイプ25(図7及び図8)であっても、大径のパイプ26(図9及び図10)であっても、確実に、パイプ保持部2A、2Bに保持する。従って、パイプの直径の大きさに合わせるように多くの形状の異なるパイプクランプを用意する必要がなくなり、1つの形状のパイプクランプで異なる直径のパイプを保持することができる。
【0025】
図11〜図13は、本発明の第2実施形態に係るパイプクランプ1Aを示している。パイプクランプ1Aは、第1実施形態に係るパイプクランプ1の係止脚部5を除去した形状で成る。他の部分は、第1実施形態に係るパイプクランプ1と同じ構成であるので、パイプクランプ1の構成要素の符号を付けて説明に代える。図11〜図13に示すパイプクランプ1Aは、空中パイプクランプと呼ばれており、複数のパイプを相互に連結して整理又は整列するのに用いられる。
【0026】
図14〜図16は、本発明の第3実施形態に係るパイプクランプ1Bを示している。パイプクランプ1Bは、第1実施形態に係るパイプクランプ1の固定部である係止脚部5を除去し、固定部としてスタッドボルト等のスタッドに係止するスタッド係止部34が側壁に一体に形成されている。第3実施形態に係るパイプクランプ1Bは、第1実施形態に係るパイプクランプ1の側壁9がスタッド係止部34の壁部と共用されていること及びパイプクランプ1にはないスタッド係止部34がありこと以外は、パイプクランプ1と同じ構成であるので、パイプクランプ1の構成要素の符号を付けて説明に代える。
【0027】
固定部である、スタッド係止部34には、図16に示すように、パネル等に立設されたスタッドボルト等のスタッドを受入れるように、上下方向に延びる空洞35が形成されている。空洞35の入口部(図16の下端側の部分)には、スタッドボルト等のスタッドの外周面に形成されたねじの谷又は周溝に係止する一対の係止爪37、37が形成されている。スタッド係止部34は、図14に図示のように、全体として直方体形状のブロックとして形成されて剛性を維持している。スタッド係止部34は、パネル等に立設されたスタッドボルト等のスタッドを空洞35に受入れて、係止爪37をスタッドのねじの谷又は周溝に係止させることによってスタッドに固定される。従って、パイプクランプ1Bは、パネル等の被取付部材に取付けられる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1実施形態に係るパイプクランプの斜視図である。
【図2】図1のパイプクランプの平面図である。
【図3】図1のパイプクランプの正面図である。
【図4】図1のパイプクランプの底面図である。
【図5】図3のパイプクランプのA−B−C−D−E線断面図である。
【図6】図3のパイプクランプの円Bの部分の拡大図である。
【図7】図1のパイプクランプに小径パイプを保持する操作を説明する図であり、(A)は小径パイプをパイプクランプに仮保持させる説明図であり、(B)は小径パイプをパイプクランプに本止めした様子を示す図である。
【図8】(A)は図1のパイプクランプに小径パイプを保持させて被取付部材に固定した状態を示す斜視図であり、(B)は(A)のパイプクランプの断面図である。
【図9】図1のパイプクランプに大径パイプを保持する操作を説明する図であり、(A)は大径パイプをパイプクランプに仮保持させる説明図であり、(B)は大径パイプをパイプクランプに本止めした様子を示す図である。
【図10】(A)は図1のパイプクランプに大径パイプを保持させて被取付部材に固定した状態を示す斜視図であり、(B)は(A)のパイプクランプの断面図である。
【図11】本発明の第2実施形態に係るパイプクランプの斜視図である。
【図12】図11のパイプクランプの平面図である。
【図13】図11のパイプクランプの正面図である。
【図14】本発明の第3実施形態に係るパイプクランプの斜視図である。
【図15】図14のパイプクランプの正面図である。
【図16】図15のパイプクランプのF−F線断面図である。
【符号の説明】
【0029】
1:1A:1B パイプクランプ
2A:2B パイプ保持部
3 本体
5 係止脚部(固定部)
6 基部
7、9 側壁
10 パイプ押圧部
11 軸部
13 弾性係止片
14 パイプ保持底面
15 ストッパ
17 ヒンジ
18 保持片
19 頭部
21 ラチェット爪
22 ラッチロッド
23 係止爪
25 小径のパイプ
26 大径のパイプ
30 パネル(被取付部材)
34 スタッド係止部(固定部)
35 空洞
37 係止爪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣接配置された2つのパイプ保持部を備えており、各パイプ保持部は、その上部の開放部から底面に着座するようにパイプが収容される構成であり、各パイプ保持部に収容したパイプを並列に保持する構成のパイプクランプであって、
前記2つのパイプ保持部の中間に、各パイプ保持部に収容されたパイプの上方側を押さえて保持するためのパイプ押圧部が設けられており、
前記パイプ押圧部は、前記2つのパイプ保持部の底面から伸長時には立ち上がるように延び、中間のヒンジを中心に各パイプ保持部の上面側であって且つ内側に折れ曲がることができる、中折れアーム形状の一対の保持片と、該一対の保持片の上端を相互に連結する頭部と、該頭部下面から垂下して、先端に多段のラチェット爪を有するラッチロッドとを備え、
前記パイプ保持部の一方の底面と他方のパイプ保持部の底面との間の部分に、前記ラッチロッドのラチェット爪を受入れて係止する係止爪が形成されており、該係止爪は、前記ラッチロッドの押込みによって前記ラチェット爪を受入れて係止し、前記ラッチロッドの抜け出しを阻止する構成であり、
前記頭部の押下げによって前記ラッチロッドが前記係止爪へ押込まれ、該ラッチロッドが前記係止爪へ押込まれる深さに従って、前記保持片の各々が前記ヒンジ回りに前記パイプ保持部の側に折れ曲がって張り出す大きさが変化する構成であり、前記頭部の押下げによって、各パイプ保持部に収容されたパイプが大径であっても小径であっても前記折れ曲がった前記保持片が該パイプの上方側を押してパイプを底面に着座させる状態が得られ、この状態が、前記ラッチロッドの前記ラチェット爪と前記係止爪との係合によってロックされる、
ことを特徴とするパイプクランプ。
【請求項2】
請求項1に記載のパイプクランプにおいて、前記パイプ保持部へパイプを収容する前には前記ラッチロッドの先端は前記係止爪に係合しない状態にあり、パイプをパイプ保持部に収容するとき前記保持片は該パイプ保持部外へ退避するように変形可能であって該パイプの挿入を阻害しない、ことを特徴とするパイプクランプ。
【請求項3】
請求項1に記載のパイプクランプにおいて、前記パイプ保持部へパイプを収容した後に前記頭部を押下げると、前記ラッチロッドの先端が前記係止爪に係合するように押下げられる構成であり、前記頭部の押下げは、前記保持片の、前記パイプ保持部側に張り出す折れ曲がり部分が、パイプ上方側を押圧して当接すると停止される、ことを特徴とするパイプクランプ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のパイプクランプにおいて、前記2つのパイプ保持部は、該両パイプ保持部を底部でつなぐように延びて各パイプ保持部の底面を形成する基部と、該基部の一端から一方のパイプ保持部の外壁を形成するように直立する剛性の側壁と、該基部の他端から他方のパイプ保持部の外壁を形成するように直立する剛性の側壁とを備えている、ことを特徴とするパイプクランプ。
【請求項5】
請求項4に記載のパイプクランプにおいて、前記側壁の各々の内壁面の上部には、パイプ保持部に収容されたパイプが上方に脱け出ないように、前記内壁面から内側に突出するストッパが形成されており、各ストッパは、上面側においてはパイプ保持部へパイプを押込むのを容易にするように傾斜して内側に突出しており、底面側においてはパイプ保持部に収容されたパイプを安定して保持するようにパイプの外周面に合わせて湾曲して形成されている、ことを特徴とするパイプクランプ。
【請求項6】
請求項1に記載のパイプクランプにおいて、前記2つのパイプ保持部は、該両パイプ保持部を底部でつなぐように延びて各パイプ保持部の底面を形成する基部を備え、該基部の底面からは、車体パネル等の被取付部材へ固定される係止脚部が垂下しており、該係止脚部は、被取付部材の取付穴に挿入される棒状の軸部と、該軸部の側面から、前記取付穴の縁部に係止するように半径方向外側に弾性的に突出する、一対の弾性係止片とを有する、ことを特徴とするパイプクランプ。
【請求項7】
請求項1に記載のパイプクランプにおいて、前記2つのパイプ保持部は、該両パイプ保持部を底部でつなぐように延びて各パイプ保持部の底面を形成する基部を備え、該基部の一方の側面には、車体パネル等の被取付部材へ立設されたスタッドに固定されるスタッド係止部が一体に形成されており、該スタッド係止部には、前記スタッドを受入れるように上下方向に延びる空洞が形成され、該スタッド係止部には、スタッドの外周面に形成されたねじの谷又は周溝に係止する係止爪が前記空洞に斜めに延びるように形成されている、ことを特徴とするパイプクランプ。
【請求項8】
請求項1に記載のパイプクランプにおいて、前記2つのパイプ保持部は、該両パイプ保持部を底部でつなぐように延びて各パイプ保持部の底面を形成する基部を備え、該基部には、被取付部材への固定手段が形成されていない、ことを特徴とするパイプクランプ。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のパイプクランプにおいて、全体が熱可塑性プラスチックで一体成形されている、ことを特徴とするパイプクランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−228881(P2009−228881A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−78443(P2008−78443)
【出願日】平成20年3月25日(2008.3.25)
【出願人】(390025243)ポップリベット・ファスナー株式会社 (159)
【Fターム(参考)】