説明

パイプルーフ形成用パイプ

【課題】 地中に地下構造物を推進、埋設する際に、該地下構造物に先行して順次、地中に掘進させるパイプルーフ形成用のパイプであって、パイプ前方の切羽地盤の安定化を図って、上方の地盤の崩落等を防止しながら地下構造物の推進、埋設を行えるようにする。【解決手段】 パイプルーフPを構成する複数本のパイプ本体1a内に、前端にカッタヘッド4を固着し、且つ、内外周面に螺旋羽根2、3を一体に設けている内管1bを回転自在に配設し、この内管1bの前端開口部に傘状に拡縮するシャッタ5を設けて推進すべきパイプ以外の全てのパイプ1の前端開口部をこのシャッタ5により閉止した状態にすることにより切羽地盤を抑えて安定化させ、推進すべきパイプ1のシャッタ5のみを収縮させてこのパイプ1の1aの前端開口部を全面的に解放させた状態で掘進させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、軌道下や道路下を横断してこれらの軌道や道路直下の地盤中に地下通路となる地下構造物を埋設、施工する際に、この地下構造物に先行して地下構造物の推進時のガイドとなるパイプルーフを形成するためのパイプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、軌道下や道路下の地盤中に既成の地下構造物を埋設することにより地下道を築造する方法としては、例えば、特許文献1に記載されているように、前端に刃口を装着している地下構造物を発進側に設置すると共にこの地下構造物の少なくとも上床部の前方側に複数本の先受けパイプを刃口の上壁部下面に沿って並設してパイプルーフを形成し、各先受けパイプの後端面と地下構造物の上床部の前端面との間に推進ジャッキを介在させてこれらの推進ジャッキのロッドを伸長させることにより、地下構造物の上床部前端面に推進反力を受止させながら先受けパイプを順次、一定長、到達側に向かって掘進させ、次いで、地下構造物の到達側に設置した牽引手段により、或いは、発進側に設置した推進ジャッキ等の推進手段より前進させて一定長、地中に埋入し、これを繰り返し行うことによって地下構造物を埋設計画域に埋設、施工することが行われている。
【特許文献1】特開昭56−125597号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のように、地下構造物に先行してパイプルーフを地中に一定長、掘進させるには、パイプルーフを形成している複数本の先受けパイプを一本宛、順次、推進ジャッキによって推進させ且つ前方の地盤を手掘り或いは適宜な掘削装置によって掘削させることによって行われるものであるが、その際、全ての先受けパイプは、常に、その前端開口部を前方の掘削地盤に臨ませた状態で全面的に開口しているため、掘進中の先受けパイプ以外の先受けパイプは推進することなく停止状態にある時に、切羽地盤が自立性の小さい軟弱な地盤等である場合には、前方の地盤が崩壊して停止中の先受けパイプの前端開口部内に侵入し、パイプルーフによって支持しなければならない軌道下や道路下の土被りの浅い地盤が弛緩して地盤沈下等が発生し、交通を阻害する虞れがあった。
【0004】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、停止中においては切羽地盤の土留めを行って地盤が内部に崩落するのを確実に防止し、掘進時には掘削土砂を円滑に後方に搬出することができるパイプルーフ形成用パイプを提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために本発明のパイプルーフ形成用パイプは、請求項1に記載したように、地中に地下構造物を推進、埋設する際に、該地下構造物に先行して地中に推進させるパイプルーフの形成用パイプであって、パイプ本体の内部に外周面に土砂搬出用の螺旋羽根を設けた内管を回転自在に配設していると共に、この内管の前端開口部にカッタヘッドを一体に設けてあり、さらに、このカッタヘッドの背面側に拡縮自在なシャッタを配設してこのシャッタを拡げることによりパイプ本体の前端開口部を閉止するように構成している。
【0006】
このように構成したパイプルーフ形成用パイプにおいて、請求項2に係る発明は、上記シャッタの構造として、カッタヘッドの中心部から後方に向かって突設しているシャフトと、このシャフトの前端部外周面に放射状に複数設けられ且つ前後方向に起伏自在に枢着されたシャッタ片と、シャッタ片の対向側端縁間に折り畳み可能に配設された可撓性シートと、上記シャフトに摺動自在に設けられてリンクを介して各シャッタ片と連結している摺動片と、シャフト上に装着されて摺動片を前後方向に摺動させるジャッキとからなり、摺動片を前後方向に摺動させることにより上記可撓性シートを拡縮させるように構成していることを特徴とする。また、請求項3に係る発明は、上記シャッタにおけるシャッタ片を、外周端面が内管の内周面に沿う円弧状端面に形成し且つ内周端に向かって幅狭くなった形状に形成していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に係る発明によれば、地中に地下構造物を推進、埋設する際に、該地下構造物に先行して地中に推進させるパイプルーフの形成用パイプであって、パイプ本体の内部に外周面に土砂搬出用の螺旋羽根を設けた内管を回転自在に配設していると共に、この内管の前端開口部にカッタヘッドを一体に設けているので、パイプ本体を推進させながらカッタヘッドによって前方の地盤を効率よく掘削することができると共に掘削された全ての土砂を内管の外周面に突設している螺旋羽根によって能率よく後方に搬出することができ、また、内管の内周面にも螺旋羽根を設けておけば、該内管内を通じて礫等を後方に搬出することが可能となり、パイプルーフの推進、施工が円滑に行えて地下構造物の埋設施工工期の短縮を図ることができる。
【0008】
さらに、パイプ本体の前端開口部から前方に臨ませている上記カッタヘッドの背面側に拡縮自在なシャッタを配設してこのシャッタを拡げることによりパイプ本体の前端開口部を閉止するように構成しているので、パイプ本体の掘進時にはこのシャッタを縮小させておくことにより、上記カッタヘッドと内外螺旋羽根とにより土砂の掘削、搬出を行いながらパイプ本体を容易に掘進させることができる一方、パイプ本体の停止時にはこのシャッタを拡げることにより、パイプ本体の前端開口部を閉止しておくことができ、このシャッタによって切羽の土留めを行わせて切羽地盤がパイプ本体内に崩落、侵入するのを確実に防止することができるものであり、従って、軌道下や道路下に推進、埋設すべき地下構造物の上方地盤が土被りの浅い地盤であってもその崩壊を防止しながら地下構造物の推進、埋設作業が能率よく行うことができる。
【0009】
また、請求項2に係る発明によれば、上記シャッタは、カッタヘッドの中心部から後方に向かって突設しているシャフトと、このシャフトの前端部外周面に放射状に複数設けられ且つ前後方向に起伏自在に枢着されたシャッタ片と、シャッタ片の対向側端縁間に折り畳み可能に配設された可撓性シートと、上記シャフトに摺動自在に設けられてリンクを介して各シャッタ片と連結している摺動片と、シャフト上に装着されて摺動片を前後方向に摺動させるジャッキとからなり、摺動片を前後方向に摺動させることにより上記可撓性シートを拡縮させるように構成しているので、ジャッキを伸縮させることによってシャフト上の摺動片を前後方向に移動させてリンクを傘の骨のように屈折させながら、各シャッタ片を軽快に拡縮させることができるものであり、この際、拡大時には隣接するシャッタ片の対向側端縁間を連結している可撓性シート片が緊張してシャッタ全体を傘状に大きく拡げることができてパイプ本体内に切羽地盤が侵入するのを確実に防止することができる。
【0010】
また、シャッタの縮小時には、隣接するシャッタ片の対向側端縁間を連結している上記可撓性シート片がプリーツ状に折り畳まれるのでシャッタの縮小動作を円滑に行わせることができ、その上、シャッタを縮小させた時には該シャッタを内管の中心部に設けている上記シャフト上に沿って折り畳んだ状態にすることができると共にシャッタを拡縮させる上記ジャッキも該シャフト上に装着されているので、パイプ本体の掘進時には、これらのシャッタやジャッキはパイプ本体内に取り込まれる掘削土砂に何ら影響を及ぼすことがなく、該掘削土砂を内外螺旋羽根によって円滑に搬出することができる。
【0011】
上記シャッタ片としては、請求項3に記載したように、外周端面が内管の内周面に沿う円弧状端面に形成され且つ内周端に向かって幅狭くなるように形成された面状部材を採用し、その板面によって上記可撓性シートと共に土留め作用を行わせているが、このシャッタ片を棒状形状に形成しておいてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の具体的な実施の形態を図面について説明すると図1〜図3は、道路や軌道(以下、軌道Aとして説明する)の直下の地中に、発進立坑B側から到達立坑(図示せず)に向かって地下構造物Cを推進、埋設して軌道下を横断する地下道を構築する際に、地下構造物Cの上床部C1の前方側に横幅が地下構造物Cの幅に略等しいパイプルーフPを配設して、このパイプルーフPを一定長、到達立坑に向かう前方に推進させる工程と、この工程に後続して上記地下構造物Cを一定長、推進させる工程とを繰り返し行うことにより、地中に地下構造物Cを埋設している状態を示すもので、地下構造物Cは前後方向に貫通した断面矩形状の既製の鉄筋コンクリート製函体からなり、その前端開口部に刃口Dを装着している。
【0013】
刃口Dは、地下構造物Cの矩形断面と略同じ断面形状を有する後端枠部D1を地下構造物Cの前端面に接合させて一体に固着していると共にこの後端枠部D1の前面上端部に、地下構造物Cの上床部C1の上面から該上床部C1の厚みと同じ寸法だけ、又は、上床部C1の厚み以下の寸法だけ下方に位置させた状態で前方に向かって一定長さの台板D2を水平状に突設してあり、さらに、後端枠部D1の前面下端部にこの台板D2の長さよりも短く且つ先端を刃先部に形成している下枠部D3を前方に向かった突設していると共にこれらの台板D2と下枠部D3の前端間を上端から下端に向かって斜め後方に傾斜した両側傾斜枠部D4、D4によって一体に連結してあり、この両側傾斜枠部D4、D4の前端に全長に亘って刃先部を形成してなるものである。
【0014】
このように構成した刃口Dの上記台板D2における前半部上に上記パイプルーフPを形成している複数本のパイプ1の後部下面をそれぞれ単独的に前方に向かって移動可能に支持させている。パイプ1は図4、図5に示すように、一定長さを有する断面矩形状の鋼管からなるパイプ本体1a内に、内外周面に土砂搬出用の螺旋羽根2、3を全長に亘って一体に設け、且つ、前端にパイプ本体1aの前端開口部に臨ませているカッタヘッド4を固着している断面円形状の鋼管からなる内管1bを回転自在に配設してなり、さらに、カッタヘッド4の背面側に拡縮自在なシャッタ5を配設してこのシャッタ5を拡げることにより、パイプ本体1の前端開口部を閉止するように構成している。
【0015】
上記シャッタ5は、外周端面が内管1bの内周面に沿う円弧状端面に形成され且つその外周端面から内周端に向かって両側端面間の幅が徐々に狭くなる正面不等脚台形状に形成された金属板製或いは硬質合成樹脂板製の複数のシャッタ片5aを周方向に所定間隔毎に配設すると共に、隣接するシャッタ片5a、5aの対向側端縁間をプリーツ状に折り畳み可能な布又は合成樹脂製シート等の扇形片形状の可撓性シート片5bによって連結してなり、さらに、各シャッタ片5aの内端部を上記カッタヘッド4の中心部から後方に向かって突設しているシャフト6の前端に固着した軸受片7の外周面に前後方向に起伏回動自在に枢着して、起立させた場合には正面円形状の傘状に拡がり、後方に傾倒させた場合には図6、図7に示すように、シャフト6上にこのシャフト6を被覆するように折り畳まれるように形成されている。なお、上記シャッタ片5aとしては、正面不等脚台形状等の面状部材に限らず、棒状部材であってよい。
【0016】
このシャッタ5の拡縮手段は、該シャッタ5の後方における上記シャフト6上に小径筒状の摺動片8を前後摺動自在に被嵌させてこの摺動片8と上記各シャッタ片5aの外周端部間をリンク9により回動自在に連結していると共に、摺動片8の後方側における上記シャフト6に沿って2本の油圧ジャッキ10、10をその長さ方向をシャフト6の長さ方向に向けた状態に並設してその後端をシャフト6に固着している固定部材11に連結する一方、前方に向けているこれらの油圧ジャッキ10、10のロッド先端を上記摺動片8に連結してなるもので、油圧ジャッキ10、10のロッドを伸縮させることにより、リンク9を介して各シャッタ片5aを前後方向に起伏させてシャッタ5を拡縮させるように構成している。
【0017】
上記シャフト6は内管1b内の中心部に配設されていてその前端部を上述したようにカッタヘッド4の中心部に支持されている一方、後端部は内管1bの後端中心部に支持されてあり、さらに、このシャフト6を中空に形成してその中空内部に上記油圧ジャッキ10、10に接続した圧油配管(図示せず)を配設すると共に該シャフト6の後端にロータリージョイント(図示せず)を接続してパイプ1の後端外部からこのロータリージョイントを通じて圧油配管に圧油を供給し、油圧ジャッキ10、10を作動させるように構成している。なお、このような圧油供給路は、シャフト6を利用することなく内管1bの内周面に沿って圧油配管を設けておいてもよい。
【0018】
内管1bの内径寸法は、この内管1bの外周面と断面矩形状のパイプ本体1aの平坦な管壁内面との幅よりも大径に形成されていて、その外周面とパイプ本体1aの内周面間の空間部によって形成した土砂搬出通路12よりも該内管1b内の空間部によって形成した土砂搬出通路13を大きくし、この土砂搬出通路13内に比較的大径の礫等を取り込んで、該内管1bの内周面に突設している一定高さの上記内側螺旋羽根3により後方に搬出させるように構成している。
【0019】
また、内管1bの前端開口部に固着しているカッタヘッド4は、前面にセンタービット4a' を突設している中心部材4aの外周面から径方向に向かって、前面に複数本のカッタビット4b' を突設している数本(図においては3本)のスポーク体4bを径方向に放射状に突設してなり、隣接するスポーク体4b、4b間の空間部を掘削土砂や礫等の取り込み可能な大きさを有する土砂取込口14に形成していると共に各スポーク体4bの外端部後面にアーム片4cを後方に向かって突設し、このアーム片4cの後端を内管1bの前端開口部の外周面から外方に突設した連結片4dに固着して内管1bと一体に回転させるように構成している。
【0020】
さらに、パイプ本体1aと内管1bとの後端部周壁には、図9に示すように土砂排出口15、16がそれぞれ設けられていると共にパイプ本体1aの後端開口部に端面板17を固着してこの端面板17に内管1bの後端部を回転自在に支持させてあり、内管1bの後端中心部から後方に向かって突設した回転軸の後端に、後述する回転駆動モータ22の回転軸の前端に固着したクラッチ片24と係脱自在に係止するクラッチ片18を固着している。
【0021】
このように構成したパイプ1は図1〜図3及び図8に示すように、地下構造物Cの前端開口部に装着している上記刃口Dの台板D2上に該台板D2の幅方向に並列させてその後端部をこの台板D2に前後方向に摺動自在に支持させることによって上記パイプルーフPを形成している。また、該パイプ本体1aは、その上面が上記地下構造物Cの上床部C1の上面と面一状となる高さ(厚み)に形成されていると共に該上面にパイプ本体1aの幅に略等しい幅を有する一定厚みの帯鋼板からなるフリクションカット板19を載置してその前端をパイプ本体1aの前端上面に溶接によって一体に固着してあり、さらに、このフリクションカット板19をパイプ本体1aの後端から後方に延長させてその後部を地下構造物Cの上床部C1の上面に前後摺動自在に載置させた状態で上記発進立坑Bの坑口から後方に露出させている。
【0022】
また、上記複数本のパイプ列からなるパイプルーフPの後端と地下構造物Cの上床部C1の前端面に当接している上記刃口Dの後端枠部D1の上端部前面との間の刃口Dの台板D2上の空間部を、図8、図9に示すように、上床部C1の幅方向に長い作業空間部20に形成してあり、この作業空間部20をパイプ1の後端上面から地下構造物Cの上床部C1の上面間に架設状態で延長しているフリクションカット板列の長さ方向の中間部によって被覆してこの中間部により上方の地盤を支持させ、作業空間部20内に土砂等が崩落するのを防止している。
【0023】
上記作業空間部20内には、地下構造物Cの上床部C1の前端面に当接している上記後端枠部D1の上端部前面に沿って地下構造物Cの幅方向に移動可能な横移動台車21が配設されてあり、この横移動台車21上に上記パイプ本体1a内の内管1bを回転駆動するための回転駆動モータ22を設置している前後移動台23を配設している。回転駆動モータ22の回転軸の前端には、上記内管1bの後端中心部から後方に向かって突設した回転軸に固着しているクラッチ片18と係脱するクラッチ片24を固着していると共に、上記前後移動台23の両側部上にパイプ推進ジャッキ25、25を固定してあり、これらのパイプ推進ジャッキ25、25における後方に向けたロッドの先端間をスプレッダ26によって一体に連結している。
【0024】
さらに、スプレッダ26の後端両側部下面に、図9、図10に示すように、係止片27を下方に向かって突設する一方、上記横移動台車21の後端部両側上面にこれらの係止片27の前方側に配設されてこの係止片27の前端面を受止するストッパ片28を上方に向かって突設してあり、パイプ推進ジャッキ25、25のロッドの伸長させる際にはこのストッパ片28から該係止片27を後方に離間させ、ロッドの収縮時には、該係止片27をストッパ片28に受止させ、この状態からさらにロッドを収縮させることによりこの受止部を支点として前後移動台23を後退させるように構成している。
【0025】
一方、図1、図2において、上記地下構造物Cは発進立坑Bの底面上に敷設した上面が平坦な底版(図示せず)上に前後方向に摺動移動自在に設置されていると共にこの地下構造物Cの後端面と発進立坑Bの後側土留壁29の前面に配設した反力受け30間に複数個のスペーサ31を介して複数本の地下構造物推進ジャッキ32を配設し、これらの推進ジャッキ32の前端面を地下構造物Cの後端面に接合したプレスリング33の後面に押し付けた状態で固定し、後方に向かって突出させている該推進ジャッキ32のロッドの先端を一定厚みを有する板材又は枠材からなる最前部のスペーサ31の前面に当接、受止させて、推進ジャッキ32の該ロッドを伸長させることにより地下構造物Cを発進立坑Bの坑口から地中に推進、埋設させるように構成している。
【0026】
この地下構造物Cの推進、埋設は、パイプルーフPを構成している全てのパイプ1を一定長だけ地中に順次、推進する工程と、このパイプルーフPの一定長の推進工程後に地下構造物Cを同一長さだけ推進させる工程とを順次、繰り返すことによって行われる。なお、各パイプ1上から後方の地下構造物Cの上床部C1上にまで引き出されているフリクションカット板19がパイプ1と一体に推進して地中に一定長、埋入されると、発進立坑B内に露出している該フリクションカット板19の後端面に次の一定長さのフリクションカット板の前端面を突き合わせ状にして溶接により継ぎ足す。
【0027】
パイプルーフPを構成しているパイプ1を順次、一定長だけ掘進させる際に、予め、推進すべきパイプ1以外の全てのパイプ1におけるパイプ本体1aの前端開口部をシャッタ5によって閉止しておく一方、推進すべきパイプ1におけるパイプ本体1aの前端開口部は全面的に開口した状態にしておく。シャッタ5によりパイプ本体1aの前端開口部を閉止させるには、パイプ1の後方側から該パイプ1における内管1bの前端部内のシャフト6上に配設している油圧ジャッキ10に圧油を供給してそのロッドを伸長させると、このロッドと連結している摺動片8がシャフト6上を前方に摺動して互いに外端部同士を回動自在に連結しているシャッタ片5aとリンク9とが互いに屈折しながらその内端部を回動自在に枢着させている軸受片7と上記摺動片8を支点として外径方向に起立し、それに従って隣接するシャッタ片5a、5a間の可撓性シート片5bが展開して図4、図5に示すように、シャッタ5全体が傘状に拡大することにより行われる。
【0028】
このように、シャッタ5によりパイプ本体1aの前端開口部を閉止させると、切羽地盤がこのシャッタ5によって崩壊するのを抑制されて自立状態を保持し、上方の地盤が弛緩するのを防止しながら地下構造物Cの推進、埋設作業を行うことができる。
【0029】
一方、シャッタ5を収縮させて内管1bの前端開口部を全面的に解放させるには、上記油圧ジャッキにそのロッドが収縮するように圧油を供給すると、摺動片8がシャフト6上を後退して互いに外端部同士を回動自在に連結しているシャッタ片5aとリンク9とがその内端部を回動自在に枢着させている軸受片7と上記摺動片8を支点として傾倒し、それに従って隣接するシャッタ片5a、5a間の可撓性シート片5bがプリーツ状に折り畳まれて図6、図7に示すようにシャフト6上に沿って格納され、パイプ本体1aの前端開口部を全面的に解放させた状態となる。
【0030】
パイプルーフPを構成しているパイプ1を順次、一定長だけ掘進させるには、地下構造物Cの上床部C1の前方側に設けている上記作業空間部20内において、横移動台車21を駆動して推進すべき1本のパイプ1の後方にまで移動させてその位置で停止させ、図10に示すようにこの横移動台車21上の前後移動台23の両側部上に配設しているパイプ推進ジャッキ25、25を伸長させることによってそのロッドの後端間を連結しているスプレッダ26を刃口Dの後端枠部D1に当接、受止させ、この後端枠部D1に推進反力をとった状態にしてさらにロッドを伸長させると、前後移動台23が前進して、この前後移動台23上に設置した回転駆動モータ22の回転軸先端に装着しているクラッチ片24が内管1bの後端回転軸に固着しているクラッチ片18に係合する。この際、推進すべきパイプ1のシャッタ5は、このパイプ1の後方に横移動台車21を配置させる前に行ってもよく、配置後に行ってもよい。
【0031】
この状態にして回転駆動モータ22を作動させることにより内管1bを回転させると共にパイプ推進ジャッキ17、17をさらに伸長させると、図10に示すように、上記刃口Dの後側枠部D1に推進反力を受止させた状態で前後移動台23が前進し、カッタヘッド4によって前方の地盤を掘削しながらパイプ1がその上面に載置させているフリクションカット板19と一体的に推進する。掘削された土砂は、カッタヘッド4の土砂取込口14を通じてパイプ本体1aと内管1b間の外側土砂搬出通路12と内管1b内の内側土砂搬出通路13に取り込まれ、内管1bの内外周面に一体に設けている螺旋羽根2、3によって後方に搬出されて土砂排出口15、16から落下し、刃口Dの前方地盤の掘削土砂と共に地下構造物C内を通じて発進立坑B側に排出される。この場合、外側土砂搬出通路12内に取り込みができない大径の礫等は内管1b内に取り込まれて内管1b内を螺旋羽根3によって後方に搬出される。なお、該内管1bの内周面側には螺旋羽根3を必ずしも設けておく必要はない。
【0032】
こうして、一本のパイプ1を一定長、地中に掘進したのち、パイプ推進ジャッキ25、25を収縮させると、スプレッダ26が反力受けである刃口Dの後端枠部D1から前方に離間すると共に、該スプレッダ26から下方に突設している係止片27が横移動台車21の後端に上方に向かって突設しているストッパ片28の後端面に当接してそれ以上の離間が阻止され、この状態からパイプ推進ジャッキ25、25をさらに収縮させると、前後移動台23が後退して回転駆動モータ22の回転軸と内管1bとを連結していたクラッチ片18、24の連結が解かれる。
【0033】
しかるのち、横移動台車21を次の推進すべきパイプ1の後方によって横移動させ、再び上記同様にしてこのパイプ1のシャッタ5を解放させる一方、他のパイプ1のシャッタ5を閉止させた状態で、パイプ推進ジャッキ25、25のロッドを伸長させると共に回転駆動モータ11を駆動して該パイプ1を先に推進したパイプ1と同一長さだけ掘進させる。
【0034】
以下、同様にしてパイプ1を順次、掘進させ、パイプルーフPを構成しているこれらの全てのパイプ1を一定長、掘進させたのち、発進立坑B内に配設している複数本の推進ジャッキ32を伸長させ、スペーサ31を介して反力受け30に反力をとって地下構造物Cをその上床部C1の上面をフリクションカット板列の下面に摺接させながら上記パイプルーフPと同じ推進長だけ前方に推進させる。
【0035】
このように、前後移動台23を配設している横移動台車21によって各パイプ1を水平方向に順次掘進させてこれらのパイプ列よりなるパイプルーフPを一定長、到達立坑側に向かって前方の地中に推進させる工程と、この工程後に、発進立坑B側に配設している推進ジャッキ32を伸長させて上記パイプルーフPと同一距離だけパイプルーフPの下面に接して地下構造物Cを前方に推進させる工程とを繰り返し行うことにより、地下構造物Cを到達立坑側に到達させ、発進立坑Bと該到達立坑間にこの地下構造物Cによる地下道を構築する。
【0036】
この際、パイプルーフPが一定長、推進する毎に、各パイプ1上にその前端のみをパイプ1の前端上面に溶接によって固着しているフリクションカット板19も一体に推進して発進立坑B内に突設している部分の長さが短くなるので、該フリクションカット板19の後端部が発進立坑Bから地中に進入する前に、各フリクションカット板19の後端面に一定長さを有する新たなフリクションカット板の前端面を接合させた状態で溶接することにより一体に接続して上記同様に、再び、パイプルーフPの推進と、この推進に後続して地下構造物Cの推進とを繰り返し行う。
【0037】
同様に、地下構造物Cが所定長、地中に掘進される毎に、発進立坑B内においてその掘進長に応じた厚みを有するスペーサ31を推進ジャッキ32の後方側に介在させると共に、地下構造物Cによって構築すべき地下道の長さが長い場合には、該地下道の長さを数分割した一定長さの地下構造物を順次、接合、連結させながら推進させて到達立坑に到達させ、発進立坑Bと該到達立坑間にこの地下構造物Cによる地下道を構築するものである。なお、上記実施の形態においては、軌道Aの直下地盤に地下構造物Cを施工しているが、道路下においても上記同様な方法によって地下構造物1を施工し得るのは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】地下構造物を地中に推進させている状態の簡略縦断側面図。
【図2】その簡略平面図。
【図3】パイプルーフの簡略正面図。
【図4】シャッタを備えたパイプの前端部分の拡大縦断側面図。
【図5】そのカッタヘッドの中央部分を切除した状態の正面図。
【図6】シャッタを折り畳んだ状態を示すパイプ前端部分の拡大縦断側面図。
【図7】そのカッタヘッドの中央部分を切除した状態の正面図。
【図8】横移動台車を推進すべきパイプの後方に位置させた状態の一部省略平面図。
【図9】その縦断側面図。
【図10】パイプを推進している状態の縦断側面図。
【符号の説明】
【0039】
A 軌道
B 発進立坑
C 地下構造物
P パイプルーフ
1 パイプ
1a パイプ本体
1b 内管
2、3 内外螺旋羽根
4 カッタヘッド
5 シャッタ
5a シャッタ片
5b 可撓性シート片
6 シャフト
8 摺動片
9 リンク
10 油圧ジャッキ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に地下構造物を推進、埋設する際に、該地下構造物に先行して地中に推進させるパイプルーフの形成用パイプであって、パイプ本体の内部に外周面に土砂搬出用の螺旋羽根を設けた内管を回転自在に配設していると共に、この内管の前端開口部にカッタヘッドを一体に設けてあり、さらに、このカッタヘッドの背面側に拡縮自在なシャッタを配設してこのシャッタを拡げることによりパイプ本体の前端開口部を閉止するように構成していることを特徴とするパイプルーフ形成用パイプ。
【請求項2】
シャッタは、カッタヘッドの中心部から後方に向かって突設しているシャフトと、このシャフトの前端部外周面に放射状に複数設けられ且つ前後方向に起伏自在に枢着されたシャッタ片と、シャッタ片の対向側端縁間に折り畳み可能に配設された可撓性シートと、上記シャフトに摺動自在に設けられてリンクを介して各シャッタ片と連結している摺動片と、シャフト上に装着されて摺動片を前後方向に摺動させるジャッキとからなり、摺動片を前後方向に摺動させることにより上記可撓性シートを拡縮させるように構成していることを特徴とする請求項1に記載のパイプルーフ形成用パイプ。
【請求項3】
シャッタ片は、外周端面が内管の内周面に沿う円弧状端面に形成され且つ内周端に向かって幅狭くなるように形成されていることを特徴とする請求項2に記載のパイプルーフ形成用パイプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−262837(P2007−262837A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−92422(P2006−92422)
【出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【出願人】(000140292)株式会社奥村組 (469)
【Fターム(参考)】