説明

パイプ用樹脂組成物

【課題】 顔料プレートアウトが発生せず、表面が平滑なポリエチレン製パイプの製造が可能なパイプ用樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】 ポリエチレンに顔料および滑剤として炭素数が9〜40の、脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪酸アミドおよび脂肪族アルコールからなる群から選択される少なくとも1種の化合物を配合してなることを特徴とするパイプ用樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はパイプ用樹脂組成物に関する。さらに詳しくは、成型時に顔料プレートアウトの発生がなく、平滑な表面を有するポリエチレン製パイプの製造が可能なパイプ用樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からポリエチレン製パイプの製造には、パイプ表面を平滑にするために滑剤として金属石けんなどが使用されてきた。金属石けんは、極性の金属イオンと非極性の炭化水素鎖とからなることから、界面活性剤としてプラスチックに多用されている。例えば、金属石けんは、顔料粒子となじみ易い極性基とプラスチックとなじみ易い炭化水素鎖の作用で顔料粒子の凝集を防ぐ顔料の分散剤としても使用されている。また、滑剤として成型機内部の金属面からプラスチックを滑らせて離れ易くしたり、成型機のダイスにプラスチックなどが堆積する「目やに」を防ぐために使用されている。
【0003】
パイプの着色には着色剤として顔料が使用されるが、パイプ表面の平滑性を確保する目的でポリエチレンに添加される滑剤の金属石けんの影響で、顔料が成型機内の金属表面に付着・堆積する顔料プレートアウトが発生する問題がある。これは、金属石けんが滑剤として作用するときに顔料粒子を捕捉したまま金属表面に移行するためと考えられる。顔料プレートアウトが発生すると、成型されたパイプの表面に肌荒れが生じて表面平滑性が得られない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、顔料プレートアウトが発生せず、表面が平滑なポリエチレン製パイプの製造が可能なパイプ用樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題は以下の本発明によって解決される。すなわち、本発明は、ポリエチレンに顔料および滑剤として炭素数が9〜40の、脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪酸アミドおよび脂肪族アルコールからなる群から選択される少なくとも1種の化合物を配合してなることを特徴とするパイプ用樹脂組成物である。
【発明の効果】
【0006】
本発明のパイプ用樹脂組成物を使用することにより、顔料プレートアウトの発生が防止され、表面が平滑なポリエチレン製パイプの製造が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
次に本発明をさらに詳しく説明する。本発明で使用するポリエチレンとしては、従来からパイプの製造に使用されているポリエチレンがいずれも使用でき、特に限定されない。例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)や線状低密度ポリエチレン(LLDPE)などが使用される。
【0008】
本発明で使用する滑剤としては、炭素数が9〜40の脂肪酸、脂肪酸エステル(脂肪酸の低級アルコールエステルや脂肪酸の多価アルコールエステル)、脂肪酸アミド(モノアミドおよびビスアミド)および脂肪族アルコールからなる群から選択される少なくとも1種の化合物である。炭素数が9〜40の脂肪酸としては、例えば、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸、2−オキシカプロン酸、2−オキシステアリン酸などが挙げられる。
【0009】
炭素数が9〜40の脂肪酸エステル(脂肪酸の低級アルコールエステルや脂肪酸の多価アルコールエステル)としては、例えば、上記脂肪酸のアルキルエステル(アルキル基の炭素数は1〜6程度)、上記脂肪酸のモノグリセリド、同一でも異なっていてもよい上記脂肪酸のジまたはトリグリセリド、例えば、1−モノカプリン酸グリセリド、1−モノステアリン酸グリセリド、1,2−ジステアリン酸ジグリセリド、1−ステアリン酸−2−パルミチン酸ジグリセリド、ヒドロキシステアリン酸トリグリセリド、1−カプリル酸−2,3−ジステアリン酸トリグリセライドなどが挙げられる。
【0010】
炭素数が9〜40の脂肪酸アミドとしては、例えば、ステアリン酸アミド、オレイル酸アミド、エルシル酸アミド、ベヘニル酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミドなどが挙げられる。
【0011】
炭素数が9〜40の脂肪族アルコールとしては、例えば、デカノール−1、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、ステアリルアルコールなどが挙げられる。
これらの中で、特に好ましいのは、ヒドロキシステアリン酸トリグリセリド、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミドなどである。これらは、ポリエチレン100質量部に対して、好ましくは0.01〜5質量部、さらに好ましくは0.05〜1質量部の割合で使用される。
【0012】
本発明において使用される顔料としては、従来公知の有機顔料、無機顔料、体質顔料などがいずれも使用でき、特に限定されない。有機顔料としては、例えば、フタロシアニン系、アゾ系、縮合アゾ系、アンスラキノン系、ペリノン・ペリレン系、インジゴ・チオインジゴ系、イソインドリノン系、アゾメチンアゾ系、ジオキサジン系、キナクリドン系、アニリンブラック系、トリフェニルメタン系などが、無機顔料としては、例えば、カーボンブラック系、酸化チタン系、酸化鉄系、水酸化鉄系、酸化クロム系、スピンネル型焼成顔料、クロム酸鉛系、クロム酸バーミリオン系、紺青系、アルミニウム粉末、ブロンズ粉末などが、体質顔料としては、例えば、炭酸カルシウム系、硫酸バリウム系、酸化珪素系、水酸化アルミニウム系などが挙げられる。顔料は、ポリエチレン製パイプが所定の色となるように単独、または組み合わせて使用される。
【0013】
本発明のパイプ用樹脂組成物は、ポリエチレンと上記の滑剤および顔料を、1軸または2軸押出機などの従来公知の混合機を用いて混合混練することで製造することができる。その際、必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、難燃剤などの添加剤を適宜添加することができる。顔料や添加剤は、直接ポリエチレンと混合しても、これらのマスターバッチとして混合してもよい。上記の添加剤は、ポリエチレンで従来から使用されているものがいずれも使用でき、特に限定されるものではない。
【0014】
本発明のパイプ用樹脂組成物は、マスターバッチの形態で製造したものをナチュラルポリエチレンと混合して製造することもできる。パイプ用樹脂組成物は、通常ペレットの形態に加工され、通常の1軸または2軸押出機などの成型機を用いて所望の径のパイプに成型される。
【実施例】
【0015】
以下に、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の文中の部および%は、特に断りのない限り質量基準である。
【0016】
実施例1〜2、比較例1〜4
表1に記載の配合処方に従い、HDPE(MFR=0.2)と顔料および滑剤などとを45mm2軸押出機(L/D=22:池貝製作所製)を用いて混合混練してマスターバッチを得た。ナチュラルHDPE60部とこのマスターバッチ1部とを用いて、ベルトダイスタイプの金型を設置したプラストグラフ押出機を用いてパイプを成形した。この際の顔料プレートアウトの発生状況と成型物の表面状態を評価した。顔料プレートアウトの発生が認められない場合を○で、顔料プレートアウトが発生した場合を×で表示する。また、表面状態が平滑な場合を○で、表面状態が平滑でない場合を×で表示する。以上の評価結果を表1に併記する。なお、表中の数値は使用部数である。
【0017】

【0018】
表1に示す結果から、滑剤としてヒドロキシステアリン酸トリグリセリドまたはエチレンビスステアリン酸アミドを用いた場合は、顔料プレートアウトも発生せず、表面が平滑な成型品が得られることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明のパイプ用樹脂組成物を用いることで、成型時の顔料プレートアウトが防止され、表面が平滑なポリエチレン製パイプの製造が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレンに顔料および滑剤として炭素数が9〜40の、脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪酸アミドおよび脂肪族アルコールからなる群から選択される少なくとも1種の化合物を配合してなることを特徴とするパイプ用樹脂組成物。
【請求項2】
滑剤が、ヒドロキシステアリン酸トリグリセリドまたはエチレンビスステアリン酸アミドである請求項1に記載のパイプ用樹脂組成物。

【公開番号】特開2006−57036(P2006−57036A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−242088(P2004−242088)
【出願日】平成16年8月23日(2004.8.23)
【出願人】(000002820)大日精化工業株式会社 (387)
【Fターム(参考)】