説明

パイル織物を用いたエアダクト

【課題】パイル織物を用いてエアダクトを構成することによって製造工程を単純化でき、多様な性能を有するエアダクトを提供する。
【解決手段】織物からなるダクト部材を螺旋状に巻き付けてなる円筒状の蛇腹管エアダクト60であって、織物からなるダクト部材は下地組織の表面に起毛が形成され、起毛の間にできた空気層によって断熱、吸音、結露防止機能を有する単一素材のパイル織物テープであり、該パイル織物テープを螺旋状に巻き付けて円筒状に形成し、後段パイル織物テープ62の縁部が前段パイル織物テープ61の縁部の上側に重畳し、前段パイル織物テープと後段パイル織物テープの縁部が重畳する前段パイル織物テープの下側に芯線63が位置し、芯線と対応するパイル織物テープの上側の位置で後段パイル織物テープ、前段パイル織物テープおよび芯線が結着具64によって結着されて形成され、断熱、吸音、結露防止機能を果たすことができるように形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部通路に空気を移動させながら、通路の中を流れる空気の温度とその外気の温度との差によって生じる熱の移動を防止できるエアダクトに関し、より詳しくは、断熱性、吸音性、通気性、難燃性のあるパイル織物を用いてエアダクトを構成することによって、製造工程を単純化でき、かつ多様な機能を果たせるパイル織物を用いたエアダクトに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に多くの建築物では外部の新鮮な空気を室内側に導入したり、混濁している室内空気を建物の外へ送り出したり、あるいは冷・暖房用冷・温気流を移送する目的でエアダクトを用いている。
【0003】
エアダクトは、概してロール状のアルミニウムホイル、合成樹脂テープ、不織布などのようなダクト素材を螺旋状に巻き付けて円筒状に製造したり、金属製バンドを三角形、四角形、あるいは円形の筒などに目的にみ合うように巻き付けて製造する。
【0004】
図1は、従来のエアダクトの一実施態様として、アルミニウムホイル、合成樹脂テープ、不織布などのようなダクト素材を螺旋状に巻き付けて製作したエアダクト10の例を示したもので、ダクト素材を螺旋状に巻き付ける際に、縁部が一部重畳する先行ダクト素材11と後行ダクト素材12との間の重畳部位に鋼線13を埋め込んで、エアダクト10を円筒状に維持することができるようにしている。このようなエアダクト10は内部通路を流れる空気と外気との間の温度差がないか、温度差による熱移動を考慮しなくてもよい空間において単に空気の移動だけを目的とする所では使用可能であるが、内・外気間に温度差がある空間では結露あるいは熱損失が生じたり、騒音が伝わるなどの不都合がある。
【0005】
図2は、従来のエアダクトの他の実施例であって、図1に示された実施例においての断熱、防音および結露防止機能を改善したエアダクト20の例を示したものであり、図1に示された実施例のエアダクト10の外周を断熱材14で包み、前記断熱材14の外周を外被ジャケット15で包んだ構造になっている。
【0006】
したがって、前記断熱材14によってエアダクト20の内部の空気と外部の空気との間における熱伝達が遮断され、内部通路を流れる空気の温度変化を低減することができ、熱伝達が遮断されることによって結露現象が生じなくなり、また内部通路の騒音が断熱材14で吸収されて外部に伝わらない長所がある。
【0007】
しかし、このようなエアダクト20は図1に示された例のエアダクト10を製造する工程に加えて、断熱材14と外被ジャケット15を重ねて被せる工程が追加されて、製造工程が複雑になるという問題点がある。
【0008】
一方、本出願人によって出願されて登録された韓国実用新案登録第0227606号には、図3に示すように、ダクト素材を螺旋状に巻き付け、先行ダクト素材11と後行ダクト素材12との間の重畳部位を固定する際に、後行ダクト素材12の下側に芯線16を当てて後行ダクト素材12の上側に重畳する先行ダクト素材11の上側で結着具17を用いて先行ダクト素材11と後行ダクト素材12および芯線16を結着して製作したエアダクト30の例が示されている。
【0009】
このように結着具を用いて先行ダクト素材11と後行ダクト素材12との間の重畳部位を固定する構造は、前記重畳部位を固定するために別途の熱融着手段を設けたり、先行ダクト素材11と後行ダクト素材12の材質であるアルミニウムテープ接着専用の特殊接着剤を用いたり、しなくても済む長所がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、前記事情らに鑑みて発明されたものであって、内被ダクトと断熱材および外被ジャケットを別途に製作して締結する複雑な工程を経ることなく断熱、吸音、結露防止機能を有する単一素材としてパイル織物をダクト素材に用いて、エアダクトを製作できるようにすることによって、既存のものと同一の機能を有しながらも、製造工程を単純化することができるパイル織物を用いたエアダクトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した目的を実現するために、本発明は、織物からなるダクト部材を螺旋状に巻き付けてなる円筒状の蛇腹管エアダクトであって、前記織物からなるダクト部材は下地組織の表面に起毛が形成され、起毛の間にできた空気層によって断熱、吸音、結露防止機能を果たせるダクト部材のパイル織物テープであり、前記単一素材のパイル織物テープを螺旋状に巻き付けて円筒状に形成し、後段パイル織物テープの縁部が前段パイル織物テープの縁部の上側に重畳し、前記前段パイル織物テープと後段パイル織物テープの縁部が重畳する前段パイル織物テープの下側に芯線が位置し、前記芯線と対応する後段パイル織物テープの上側の位置で前記後段パイル織物テープ、前段パイル織物テープおよび芯線が結着具によって結着されて形成され、単一ダクト部材を用いて断熱、吸音、結露防止機能を果たせるように形成されたことを特徴とする。
【0012】
前記パイル織物テープは難燃加工されたことを特徴とする。
【0013】
前記パイル織物テープの下地組織面には不燃材層がコーティングされたことを特徴とする。
【0014】
前記パイル織物テープまたは不燃材層上には空気漏洩防止層がコーティングされたことを特徴とする。
【0015】
前記不燃材層はガラスクロス層、ファイバーガラス層またはアルミニウム層からなることを特徴とする。
【0016】
前記空気漏洩防止層はPVC層、PE層またはPET層、またはシリコン樹脂層の合成樹脂層からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
上述したとおり、本発明は、パイル織物という単一素材を用いてエアダクトを製作できるようにすることによって製造工程が簡単で、かつエアダクトが備えるべき断熱性、吸音性、結露防止機能などを有し、パイル織物に難燃処理を施し、不燃コーティングを施して火災の危険を低減することができ、パイル織物にかび防止処理を施してかびの発生を防ぐことができるだけでなく、空気漏洩を阻止するための樹脂コーティングを施して、空気の漏洩を阻止できるエアダクトを提供することができる長所がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】従来のエアダクトの一実施態様を示す図である。
【図2】従来のエアダクトの他の実施例を示す図である。
【図3】従来のエアダクトのまた他の実施例を示す図である。
【図4】本発明のエアダクト素材として用いられるパイル織物の構造を説明するための図である。
【図5】本発明に係るパイル織物を用いて構成したエアダクトを示す図である。
【図6】本発明に係るエアダクトの構成に用いられるパイル織物テープの他の実施態様を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好ましい実施態様に関する構成および作用について、図面を参照して詳細に説明する。
【0020】
図4は、本発明のエアダクト素材として用いられるパイル織物の構造を説明するための図であり、図4の(a)は単組織に起毛構造を形成したパイル織物を示す図であり、図4の(b)は二重織を切断して起毛を形成したパイル織物を示す図である。
【0021】
図4の(a)に示された単組織に起毛構造を形成したパイル織物40は経糸または緯糸でループを形成した後、形成されたループを切断してカットパイル41を形成するか、そのままにしてアンカットパイルまたはループパイル42を形成したものである。カットパイル織物にはベルベット、シール(seal)、アストラカン、モケット、じゅうたんなどがあり、アンカットパイル織物としてはタオルが代表的である。
【0022】
図4の(b)に示されたパイル織物は二重織50で織物を編んだ後に二重になった織物の中央を切断して、下地組織51の上にパイル52を形成した構造である。
【0023】
それ以外にも端が細くて尖った針を用いて織物の表面を引っかいて、前記と同一の機能を有するパイルを形成することもできる。
【0024】
このような素材のパイル織物はパイルの高さに応じて厚さが変わるが、普遍的に厚くて弾力性があり、パイルらの間に空気層が形成されて、保温性、断熱性、吸音性、耐摩耗性に優れている。
【0025】
図5は、前記のようなパイル織物を用いて構成したエアダクトを示す図であり、図5の(a)は本発明に係るエアダクトの一部切開斜視図であり、図5の(b)は図5の(a)のA部の拡大断面図である。
【0026】
すなわち、図示された実施態様は下地組織の表面に起毛されたパイル層65が製織されて形成されたパイル織物を幅狭く、かつ長く製作してなるパイル織物テープ(以下「パイル織物テープ」という)をロール状に巻き付けた後、パイル織物テープをその縁部の一部が上下に重畳しながら螺旋状に巻き付けてなる、パイル織物テープを用いたエアダクト60を形成したものである。
【0027】
これをさらに詳細に説明する。
【0028】
本発明に係るエアダクト60は、パイル織物テープを螺旋状に巻き付けて円筒状に形成されるもので、パイル織物テープを螺旋状に巻き付ける際に、前段パイル織物テープ61から1回転して後段に位置するようになる後段パイル織物テープ62は、その縁部が前段パイル織物テープ61の縁部と一部重畳して巻き付けられることになる。
【0029】
このように前段パイル織物テープ61の縁部の上側に後段パイル織物テープ62の縁部が重畳して反復的に巻き付けられて、円筒状のエアダクト60を形成するようになる際に、前段パイル織物テープ61の縁部の下側に芯線63を位置させ、それと対応する後段パイル織物テープ62の縁部の上側に結着具64を配置させ、芯線63を前記前後段パイル織物テープ61、62と共に前記結着具64の内部に埋め込ませて結着させる。
【0030】
前記結着具64は金属または合成樹脂材で形成することができる。
【0031】
前記結着具64を合成樹脂材で形成する場合には、円筒形状の胴体部を長さ方向に沿って切開し、その断面がO型の結着溝を備えるように形成されたものであって、前記結着溝の内径は前記前後段パイル織物テープ61、62が芯線63の外周に巻かれた状態の直径と同一の程度の大きさに形成し、芯線63が前記前後段パイル織物テープ61、62と共に前記結着溝に埋め込まれて結着される際に、結着溝内で堅固に密着するようにすることによって、エアダクトが長さ方向に伸張力を受けても、前後段パイル織物テープ61、62の結着状態が外れることのないように形成されたものである。また、合成樹脂材結着具64の場合、多少形状復元力を有している材質で形成することによって、芯線63が前記前後段パイル織物テープ61、62と共に結着溝に埋め込まれる際に、入口が多少広がって芯線63および前後段パイル織物テープ61、62が引き込まれるようにし、その後には再び結着溝の入口が絞められて、芯線63等が外れることのないように形成されたものである。
【0032】
そして、前記結着具64を金属材で形成する場合には、パイル織物テープを巻き付ける過程で、バンド状の金属テープをU字型に折り曲げて、パイル織物テープの重畳部位を結着させる構造からなる。
【0033】
上述の通りに本発明に係るパイル織物を用いて構成したエアダクト60は、パイル層65による空気層の作用で別途の断熱層を形成する必要がなく、単一素材を用いてエアダクト60を製作しても断熱性を確保でき、また、このようなパイル層65はエアダクト60の内部を流れる流体によって発生する騒音も吸収することになり、併せてパイル層65の断熱作用でエアダクト60の表面に生じやすい結露現象も防止できることになる。
【0034】
一方、図6は、本発明に係るエアダクトの構成に用いられるパイル織物テープの他の実施態様を説明するための図である。
【0035】
図5に示された実施態様のエアダクトを製作するためのパイル織物テープはパイル層65によって断熱、吸音、結露防止などの機能を有しているが、単に織物で構成されているため、火災に脆弱になりがちで、空気が漏れやすいことから、図6に示された実施態様のエアダクトの構成に用いられるパイル織物テープ70は、下地織物71および下地織物71の上に製織されるパイル層72を難燃処理したものである。
【0036】
前記難燃処理は難燃処理した原糸を用いてパイル織物テープを製織することができ、また、完成したパイル織物テープを難燃処理して難燃機能を持たせるように構成することもできる。通常、難燃処理は対象織物を難燃剤の混合された溶液に漬浸してから乾燥させたり、スプレー方法で施すことができる。難燃剤としては、各種リン酸塩、ケイ酸塩、ホウ酸塩および含リン有機化合物などが用いられる。
【0037】
これと共に前記難燃加工されたパイル織物テープの下地織物71の面に不燃材コーティング層73を形成することができる。不燃材コーティング層73はガラスクロス、ファイバーガラスまたはアルミニウム層などの不燃材を用いてコーティングして形成する。
【0038】
このように下地織物71とパイル層72が難燃処理されると共に、下地織物71に不燃材コーティング層73を形成することによって防炎機能が強化される。
【0039】
また、前記難燃加工されたパイル織物テープの下地織物71の表面または前記不燃材コーティング層73が形成された表面に空気漏洩防止層74を形成することができる。空気漏洩防止層74はPVC、PE、PETまたはシリコン樹脂層などの合成樹脂をフィルム状に製作し、熱融着方式または接着方式で取り付けて形成することができる。
【0040】
このようにパイル織物テープ70に空気漏洩防止層74を形成することは、エアダクトの内部通路を流れる空気の漏洩を防止し、大気中の湿気がエアダクトの内部に浸透するのを防止するためであるが、シリコン樹脂層を用いると耐熱性や耐寒性を一層強化することができる。
【0041】
上述のように本発明に係るパイル層が製織されたパイル織物テープを用いて製作したエアダクト60や、難燃、不燃、または合成樹脂層が形成されたパイル織物テープ70を用いて製作したエアダクトは、パイル層に形成される空気層によって、断熱、吸音、結露防止機能を有することになる。
【0042】
また、施工過程において畳んで運んだうえで施工する際、エアダクトの内外表面が均等に広がり、空気抵抗が少なくなるため、騒音発生が減り、異物の堆積も防止される。
【0043】
そして、パイル織物テープを用いたエアダクトにかび処理をすれば、かびの発生も防ぐことができる。
【0044】
なお、従来のように断熱材を用いて製作したエアダクトより体積が減ることから、保管のため占めるべき空間が小さくて済み、また、廃棄の際に公害物質の排出も低減され、破けにくいだけでなく、外観も美しくなる。
【符号の説明】
【0045】
10、20、30 エアダクト
11 先行ダクト素材
12 後行ダクト素材
13 鋼線
14 断熱材
15 外被ジャケット
16 芯線
17 結着具
40 パイル織物
41 カットパイル
42 ループパイル
50 二重織
51 下地組織
52 パイル
60 エアダクト
61 前段パイル織物テープ
62 後段パイル織物テープ
63 芯線
64 結着具
65 パイル層
70 パイル織物テープ
71 下地織物
72 パイル層
73 不燃材コーティング層
74 空気漏洩防止層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
織物からなるダクト部材を螺旋状に巻き付けてなる円筒形状の蛇腹管エアダクトであって、
前記織物からなるダクト部材は下地組織の表面に起毛が形成され、起毛の間にできた空気層によって、断熱、吸音、結露防止機能を有するダクト部材のパイル織物テープであり、前記ダクト部材のパイル織物テープを螺旋状に巻き付けて円筒状に形成し、後段パイル織物テープの縁部が前段パイル織物テープの縁部の上側に重畳し、前記前段パイル織物テープと後段パイル織物テープの縁部が重畳する前段パイル織物テープの下側に芯線が位置し、前記芯線と対応する後段パイル織物テープの上側の位置で前記後段パイル織物テープ、前段パイル織物テープおよび芯線が結着具によって結着されて形成され、単一ダクト部材を用いて断熱、吸音、結露防止機能を果たすことができるように形成されたことを特徴とするパイル織物を用いたエアダクト。
【請求項2】
前記パイル織物テープは難燃加工されたことを特徴とする、請求項1に記載のパイル織物を用いたエアダクト。
【請求項3】
前記パイル織物テープの下地組織面には不燃材層がコーティングされたことを特徴とする、請求項1に記載のパイル織物を用いたエアダクト。
【請求項4】
前記不燃材層の上層または下層には空気漏洩防止層がコーティングされたことを特徴とする、請求項3に記載のパイル織物を用いたエアダクト。
【請求項5】
前記不燃材層はガラスクロス層、ファイバーガラス層またはアルミニウム層からなることを特徴とする、請求項4に記載のパイル織物を用いたエアダクト。
【請求項6】
前記空気漏洩防止層はPVC層、PE層、PET層またはシリコン樹脂層からなることを特徴とする、請求項4に記載のパイル織物を用いたエアダクト。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−141030(P2011−141030A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−291139(P2010−291139)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(511001677)
【Fターム(参考)】