説明

パイロット管弛め器

【課題】パイロット管を弛めるための人力を必要とせず、安全にパイロット管の接続解除ができるパイロット管弛め器を提供する。
【解決手段】ねじ接合された前後のパイロット管1,2のそれぞれをつかむ状態に取り付けられる2つのクランプ10,20と、クランプ10の一対の開閉可能なフレームの一方12に固定された第1のアーム41と、クランプ20の一対の略円弧形フレーム一方22に固定された第2のアーム42と、第1のアーム41と第2のアーム42を、パイロット管1,2の中心に対して相反する方向に回動させるシリンダ43とを備え、クランプ10,20の内周に、パイロット管1,2の中心からの距離が第1および第2のアーム41,42の反回転方向に徐々に小さくなるような複数の溝15,25を設け、溝15,25には、パイロット管1,2に接するようにクランプピース30を回転方向に隙間を設けて取り付けたパイロット管弛め器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば下水道管渠や地中電線管等の推進工法に用いられる、パイロット管を使用した二工程方式管推進機のパイロット管弛め器に関する。
【背景技術】
【0002】
二工程方式管推進機は、一工程目でねじにより連結されるパイロット管を、方向修正しながら発進立抗より推進し、到達立坑にパイロット管が到達した後、二工程目では発進立坑でパイロット管に拡孔ヘッドを接続し、拡孔ヘッドの後部に推進管を連結して推進管を推進する。そのため、到達立抗ではパイロット管の回収を推進管の推進と同時に行う(例えば、特許文献1参照)。
この、パイロット管の接続部のねじの弛めには、従来はパイプレンチ等を使って行っていた。
【0003】
【特許文献1】特開2002−364290号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
パイロット管を推進するときには、地盤の周辺摩擦や、礫、玉石等の障害物の抵抗により回転するために大きなトルクが必要になる場合が多い。そのため、ねじ接合のパイロット管は、そのトルクによりきつく締められる。そのため、パイプレンチの柄を長くして、弛めるためのトルクをかせぐ方法がとられているが、それでも弛まないことがある。そのためパイロット管をアセチレンガスで切断するなど非常手段がとられている。もちろん切断したパイロット管は使用不可能となる。
【0005】
そこで本発明は、パイロット管を弛めるための人力を必要とせず、安全にパイロット管の接続解除ができるパイロット管弛め器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明の第1の構成は、小口径管推進機のねじ式パイロット管の弛め器であって、ねじ接合された前後のパイロット管のそれぞれをつかむ状態に取り付けられる第1および第2のクランプと、前記第1のクランプを構成する複数の開閉可能な略円弧形フレームのいずれか一つに固定された第1のアームと、前記第2のクランプを構成する複数の開閉可能な略円弧形フレームのいずれか一つに固定された第2のアームと、これらの第1のアームと第2のアームを、前記パイロット管の中心に対して相反する方向に回動させるシリンダとを備え、前記第1および第2のクランプの内周に、前記パイロット管の中心からの距離が前記第1および第2のアームの反回転方向に徐々に小さくなるような複数の溝を設け、前記溝には、前記パイロット管に接するようにクランプピースを回転方向に隙間を設けて取り付けたことを特徴とする。
【0007】
この第1の構成においては、パイロット管のねじを弛める場合、シリンダを伸ばすことにより、第1のアームと第2のアームは、相反する方向に回転しようとする。これにより、第1及び第2のクランプの内周の溝に隙間を設けて設けられたクランプピースが最大でその隙間の分だけ溝を滑る。溝は、反回転方向にパイロット管の中心からの距離が徐々に小さくなるように形成されているため、クランプピースはパイロット管の外周に対し、強いクランプ力を発生する。そのため、シリンダの押し力により発生するトルクが、効率よくパイロット管に伝達され、パイロット管を接合しているねじが弛められることになる。一旦ねじがわずかでも弛めば、後は軽くねじを弛ませることができる。
【0008】
本発明の第2の構成は、前記溝に、クランプピースを溝のパイロット管の中心からの距離が大きくなる方向に押し出すようにスプリングを設けたものである。
この第2の構成においては、クランプを解除したとき(ボルト24を弛めたとき)、クランプピースは、溝に対し、パイロット管の中心からの距離が大きくなる方向にスプリングで押し出されるので、クランプピースを、初期位置、すなわち溝のパイロット管の中心からの距離が大きくなる位置に強制的に戻すことができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、小口径管推進機のねじ式パイロット管の弛め器であって、ねじ接合された前後のパイロット管のそれぞれをつかむ状態に取り付けられる第1および第2のクランプと、前記第1のクランプを構成する複数の開閉可能な略円弧形フレームのいずれか一つに固定された第1のアームと、前記第2のクランプを構成する複数の開閉可能な略円弧形フレームのいずれか一つに固定された第2のアームと、これらの第1のアームと第2のアームを、前記パイロット管の中心に対して相反する方向に回動させるシリンダとを備え、前記第1および第2のクランプの内周に、前記パイロット管の中心からの距離が前記第1および第2のアームの反回転方向に徐々に小さくなるような複数の溝を設け、前記溝には、前記パイロット管に接するようにクランプピースを回転方向に隙間を設けて取り付けたことにより、パイロット管を弛めるための人力を必要とせず、安全にパイロット管の接続解除ができ、また弛めるためのトルクに比例したクランプ力が発生するため、すべりが無く、シリンダの押し力を、効率的にパイロット管を弛めるトルクに変えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を、図1〜図8に基づいて説明する。
図1は本実施の形態に係るパイロット管弛め器を示すもので、(a)は正面図、(b)は右側面図、(c)は左側面図である。図2はその平面図である。
【0011】
これらの図に示されているように、ねじ接合された前後のパイロット管1,2のそれぞれに取り付けられる第1および第2のクランプ10,20は、それぞれ略円弧形の第1のフレーム11,21と第2のフレーム12,22を有しており、第1のフレーム11,21と第2のフレーム12,22とはそれぞれピン13,23により開閉自在に取り付けられ、ボルト14,24により締め付け固定されるようになっている。各フレーム11,21,12,22の内周には、パイロット管1,2の中心からの距離が各フレーム11,21,12,22の反回転方向に徐々に小さくなるように(図1(c)においてA>Bとなるように)複数の溝15,25を設け、溝15,25には、パイロット管1,2に接するようにクランプピース30を回転方向に隙間16,26を設けて取り付ける。
図1(a)中の17,27は、それぞれ第1クランプ10、第2クランプ20に取り付けられ、第1クランプ10と第2クランプ20との間隔を一定に保つための突起である。両方のクランプに突起17,27を設けたのは、第1クランプ10と第2クランプ20の前後関係を逆にすることにより締め付け用にも使用できるようにするためである。
【0012】
第1のクランプ10の第2のフレーム12には第1のアーム41が溶接等により固定されるか一体に形成され、第2のクランプ20の第2のフレーム22には第2のアーム42が溶接により固定されるか一体に形成されている。第1のアーム41と第2のアーム42の上部は、油圧シリンダ43で互いにパイロット管1,2を中心にして、相反するように動くようにピン44,45で連結されている。なお、油圧シリンダの他にも、気圧、水圧を利用したシリンダを使用することができる。
【0013】
図3はクランプピース30を示すもので、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は側面図である。クランプピース30は硬度をもった超硬合金やクロムモリブデン鋼等を熱処理して表面硬度を高くした材料で形成され、抜け止めボルト用孔31と、スプリング用孔32が設けられており、パイロット管1,2と接する底面には鋸刃状の凹凸33が形成されている。図4及び図5に示すように、クランプピース30は、第1のクランプ10,第2のクランプ20の溝15,25に、外れ止めボルト34により取り付けられ、また溝15,25内においてクランプピース30が回転方向に押しつけられるようにスプリング35により付勢されている。
【0014】
次に、以上の構成のパイロット管弛め器の使用方法について説明する。
図6は、パイロット管1,2にパイロット管弛め器を装着した状態の一部切欠正面図、図7はその側面図である。
【0015】
まず、図6に示すように、前後のパイロット管1,2のねじ接合面を境にして、第1のクランプ10と第2のクランプ20を、ボルト14および24を弛めるか、取り外した状態で取り付け、第1のクランプ10の第1のフレーム11と第2のフレーム12をボルト14で締め付け、第2のクランプ20の第1のフレーム21と第2のフレーム22をボルト24で締め付ける。これにより、クランプピース30で、ある程度パイロット管1,2をクランプする。
【0016】
そして、図8に示すように油圧シリンダ43を伸ばすことにより、第1のアーム41と第2のアーム42は、相反する方向に回転しようとする。このことにより、クランプピース30が溝15,25を滑る。溝15,25は、反回転方向にパイロット管1,2の中心からの距離が徐々に小さくなるように形成されているため、クランプピース30は強いクランプ力を発生する。そのため、油圧シリンダ43の押し力により発生するトルクが、効率よくパイロット管1,2に伝達される。
【0017】
また、ボルト14および24を弛めたときには、溝15,25に対し、クランプピース30は、パイロット管1,2の中心からの距離が大きくなる方向にスプリング35で押し出されるので、クランプピース30を、初期位置、すなわち溝15,25のパイロット管1,2の中心からの距離が大きくなる位置に強制的に戻すことができる。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明は、パイロット管を弛めるための人力を必要とせず、安全にパイロット管の接続解除ができるパイロット管弛め器として、下水道管渠や地中電線管等の推進工法に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施の形態に係るパイロット管弛め器を示すもので、(a)は正面図、(b)は右側面図、(c)は左側面図である。
【図2】本実施の形態に係るパイロット管弛め器の平面図である。
【図3】本実施の形態に係るクランプピースを示すもので、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は側面図である。
【図4】本実施の形態に係るクランプピースを外れ止めボルトで溝に取り付けた状態の一部切欠側面図である。
【図5】本実施の形態に係るクランプピースにスプリングを装着した状態の一部切欠側面図である。
【図6】パイロット管に本実施の形態に係るパイロット管弛め器を装着した状態の一部切欠正面図である。
【図7】図6の側面図である。
【図8】油圧シリンダを作動させた状態の説明図である。
【符号の説明】
【0020】
1,2 パイロット管
10 第1のクランプ
11 第1のフレーム
12 第2のフレーム
13 ピン
14 ボルト
15 溝
16 隙間
17 突起
20 第2のクランプ
21 第1のフレーム
22 第2のフレーム
23 ピン
24 ボルト
25 溝
26 隙間
27 突起
30 クランプピース
31 抜け止めボルト用孔
32 スプリング用孔
33 凹凸
34 外れ止めボルト
35 スプリング
41 第1のアーム
42 第2のアーム
43 油圧シリンダ
44,45 ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
小口径管推進機のねじ式パイロット管の弛め器であって、ねじ接合された前後のパイロット管のそれぞれをつかむ状態に取り付けられる第1および第2のクランプと、前記第1のクランプを構成する複数の開閉可能な略円弧形フレームのいずれか一つに固定された第1のアームと、前記第2のクランプを構成する複数の開閉可能な略円弧形フレームのいずれか一つに固定された第2のアームと、これらの第1のアームと第2のアームを、前記パイロット管の中心に対して相反する方向に回動させるシリンダとを備え、
前記第1および第2のクランプの内周に、前記パイロット管の中心からの距離が前記第1および第2のアームの反回転方向に徐々に小さくなるような複数の溝を設け、前記溝には、前記パイロット管に接するようにクランプピースを回転方向に隙間を設けて取り付けたことを特徴とするパイロット管弛め器。
【請求項2】
前記溝に、前記クランプピースを前記溝のパイロット管の中心からの距離が大きくなる方向に押し出すようにスプリングを設けたことを特徴とする請求項1記載のパイロット管弛め器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2006−9253(P2006−9253A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−183444(P2004−183444)
【出願日】平成16年6月22日(2004.6.22)
【出願人】(000141956)株式会社コプロス (18)
【Fターム(参考)】