説明

パウダースラッシュ成形機

【課題】小型化され省スペース化に対応することができるパウダースラッシュ成形機を提供する。
【解決手段】金型を加熱するための金型加熱エリアと、加熱した金型の成形面に樹脂パウダーを溶着させて樹脂成形品を成形するためのパウダリングエリアと、樹脂パウダーが溶着した金型を冷却するための金型冷却エリアと、樹脂成形品を金型から脱離するための脱型エリアと、が配置されるとともに、それぞれのエリア間を金型を移動させるための金型搬送装置を備え、複数の金型を用いて樹脂成形品の製造を連続的に実施するためのパウダースラッシュ成形機であって、パウダリングエリア及び金型冷却エリアを同一エリアに配置するとともに、パウダリングに用いられるパウダーボックスと、金型の冷却に用いられる冷却装置と、を同一エリアに相互に出し入れ可能にしたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パウダースラッシュ成形機に関し、特に、加熱した金型の成形面に樹脂パウダーを溶着させて行うパウダースラッシュ成形の一連の工程を実施することができるパウダースラッシュ成形機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用内装材等の大型で複雑な形状を有するシート状の樹脂成形品を製造するにあたり、加熱した金型の成形面にパウダー(粉末樹脂)を付着させ溶融させた後に冷却して樹脂成形品を取り出すパウダースラッシュ成形方法が広く実施されている。
このようなパウダースラッシュ成形を効率的に行うために、図15に示すように、金型201を加熱するための加熱装置202、パウダーを金型201の成形面に付着させるためのパウダリング装置203、樹脂を溶着させた金型201を冷却するための冷却装置204、成形された樹脂成形品を金型201から脱離するための脱型装置205を備え、金型201を、それぞれの処理装置を順次移動させて樹脂成形品の成形を行うことができるパウダースラッシュ成形機201が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】再表WO2004/060630号公報 (図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、パウダースラッシュ成形機を構成するそれぞれの処理装置は、いずれも金型を出し入れ可能な構造とするために比較的大型のものとなっており、それらをすべて備えたパウダースラッシュ成形機が相当大型化してしまう。特に、金型の搬送を容易にするために、すべての処理装置が直列的に配置されることが多く、配列方向の長さが著しく長くなるおそれがある。したがって、パウダースラッシュ成形機を備え付けるための広いスペースが必要になって、省スペース化に対応させることができないおそれがあった。
【0005】
そこで、本発明の発明者は鋭意検討した結果、パウダリングエリアと金型冷却エリアとを同一エリアに配置するとともに、パウダーボックス及び冷却装置を相互に出し入れ可能に構成することにより、このような問題を解決できることを見出した。
すなわち、本発明は、小型化され省スペース化に対応することができるパウダースラッシュ成形機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、金型を加熱するための金型加熱エリアと、加熱した金型の成形面に樹脂パウダーを溶着させて樹脂成形品を成形するためのパウダリングエリアと、樹脂パウダーが溶着した金型を冷却するための金型冷却エリアと、樹脂成形品を金型から脱離するための脱型エリアと、が配置されるとともに、それぞれのエリア間を金型を移動させるための金型搬送装置を備え、複数の金型を用いて樹脂成形品の製造を連続的に実施するためのパウダースラッシュ成形機であって、パウダリングエリア及び金型冷却エリアを同一エリアに配置するとともに、パウダリングに用いられるパウダーボックスと、金型の冷却に用いられる冷却装置と、を同一エリアに相互に出し入れ可能にしたことを特徴とするパウダースラッシュ成形機が提供され、上述した問題を解決することができる。
【0007】
また、本発明のパウダースラッシュ成形機を構成するにあたり、樹脂成形品の製造を連続的に実施しながら、金型を交換するための金型交換エリアをさらに備えることが好ましい。
【0008】
また、本発明のパウダースラッシュ成形機を構成するにあたり、パウダーボックスを複数備え、当該複数のパウダーボックスをパウダリングエリアを経由するように循環移動させるためのボックス循環装置を備えることが好ましい。
【0009】
また、本発明のパウダースラッシュ成形機を構成するにあたり、ボックス循環装置は、少なくとも金型交換エリア、金型加熱エリア、脱型エリアのいずれかのエリアを経由することが好ましい。
【0010】
また、本発明のパウダースラッシュ成形機を構成するにあたり、金型を、金型交換エリアと、金型の投入、搬出又は待機を行う金型段取エリアと、の間を移動させるための金型移動装置を備えることが好ましい。
【0011】
また、本発明のパウダースラッシュ成形機を構成するにあたり、ボックス循環装置の移動位置の少なくとも一部が、金型移動装置の移動位置と重なることが好ましい。
【0012】
また、本発明のパウダースラッシュ成形機を構成するにあたり、金型搬送装置は、金型を吊下げ支持するとともに上下方向に移動するためのアーム部と、金型を係止し保持するための係止部と、を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、パウダーボックスと冷却装置とを同一エリアに出し入れ可能にし、パウダリングエリアと金型冷却エリアを同一エリアに配置することにより、パウダースラッシュ成形機を小型化させることができる。特に、それぞれの工程を実施する処理装置を直列的に配置した場合であっても、配列方向の長さが過度に長くなることがなくなり、省スペース化に対応可能なパウダースラッシュ成形機を提供することができる。
また、本発明のパウダースラッシュ成形機は、複数の金型を用いて、金型搬送装置によって搬送しながら樹脂成形品を連続的に製造するものであることから、単一の種類の樹脂成形品あるいは複数種類の樹脂成形品を効率的に製造することができる。
【0014】
また、本発明のパウダースラッシュ成形機において、所定の金型交換エリアを備えることにより、金型の損傷が発見された場合に、パウダースラッシュ成形機の作動を停止することなく、速やかに金型を交換することができる。また、一度に投入できる金型の数が限られている場合であっても、金型を交換しながら、複数の種類の樹脂成形品を効率的に製造することができる。
【0015】
また、本発明のパウダースラッシュ成形機において、複数のパウダーボックスを循環使用するための、所定のボックス循環装置を備えることにより、色や素材、種類の異なる樹脂成形品を効率的に製造することができる。
【0016】
また、本発明のパウダースラッシュ成形機において、ボックス循環装置が、他のいずれかの工程を行うエリアを経由することにより、ボックス循環装置のスペースの一部を共用して、パウダースラッシュ成形機の大型化を防ぐことができる。
【0017】
また、本発明のパウダースラッシュ成形機において、金型交換エリアと金型段取エリアとの間を金型を移動させるための金型移動装置を備えることにより、金型の交換作業を効率化することができる。
【0018】
また、本発明のパウダースラッシュ成形機において、ボックス循環装置の少なくとも一部が金型移動装置と重なることにより、ボックス循環装置及び金型移動装置をそれぞれ備える場合であっても、パウダースラッシュ成形機が大型化することを防ぐことができる。
【0019】
また、本発明のパウダースラッシュ成形機において、金型搬送装置が所定のアーム部と係止部とを備えることにより、金型搬送装置に同時に二つの金型を保持させることができ、複数の金型を用いる場合におけるそれぞれの金型の搬送タイミングに自由度を持たせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の実施の形態は、金型を加熱するための金型加熱エリアと、加熱した金型の成形面に樹脂パウダーを溶着させて樹脂成形品を成形するためのパウダリングエリアと、樹脂パウダーが溶着した金型を冷却するための金型冷却エリアと、樹脂成形品を金型から脱離するための脱型エリアと、が配置されるとともに、それぞれのエリア間を金型を移動させるための金型搬送装置を備え、複数の金型を用いて樹脂成形品の製造を連続的に実施するためのパウダースラッシュ成形機(以下、単に成形機と称する場合がある。)である。
このパウダースラッシュ成形機は、パウダリングエリア及び金型冷却エリアを同一エリアに配置するとともに、パウダリングに用いられるパウダーボックスと、金型の冷却に用いられる冷却装置とを同一エリアに相互に出し入れ可能にしたことを特徴とする。
【0021】
以下、本発明にかかるパウダースラッシュ成形機の実施の形態について、適宜図面を参照しながら具体的に説明する。ただし、言うまでもなく、本実施形態は本発明の一態様を示すものであり、この発明を限定するものではなく、本発明の範囲内で任意に変更することが可能である。
【0022】
1.全体構成
図1は、本実施形態のパウダースラッシュ成形機10の側面図を、図2は、図1のパウダースラッシュ成形機10を上面から見た平面図を、図3は、図1のパウダースラッシュ成形機10を側方(図中左側)から見た側面図を示している。
これらの図1〜図3に示すパウダースラッシュ成形機10は、金型の加熱炉20が配置された金型加熱エリアAと、金型移動装置30が配置された金型交換エリアBと、パウダリング装置40が配置されたパウダリングエリアCと、金型の冷却装置50が配置された金型冷却エリアDと、脱型装置60が配置された脱型エリアEとを備えている。このうち、パウダリングエリアCと金型冷却エリアDはエリアを共通にし、エリアC(D)には、パウダーボックス41と冷却装置50とが相互に出し入れ可能にされている。
【0023】
このパウダースラッシュ成形機10は、垂直方向及び水平方向に組まれた鉄製のフレーム11によって骨格が形成されるとともに、フレーム11によって区切られたそれぞれのエリアA、B、C(D)、Eが直列的に配置されている。また、骨格をなすフレーム11のうち、成形機10の上方に位置し、各エリアの配列方向に沿って水平方向に配置された二本のフレーム11a、11b上にはレール12a、12bが配置され(図2を参照)、それぞれのエリアA、B、C(D)、Eに金型Xを移動させるために、二本のレール12a、12b上を移動可能な金型搬送装置70が備えられている。
【0024】
2.金型加熱エリア
金型加熱エリアAは、パウダリング工程で樹脂パウダーを金型Xの成形面に溶着させるために、金型Xを加熱するための金型加熱工程を行うためのエリアであり、この金型加熱エリアAには、加熱炉20が配置されている。
本実施形態のパウダースラッシュ成形機10では、成形機10の上方に配置された金型搬送装置70によって金型Xが搬送されて投入されるため、加熱炉20は、上方から金型Xを炉内に投入できるように構成されている。このような加熱炉20としては、公知のものを適宜使用することができるが、その一構成例を図4に示す。
【0025】
図4は金型Xが投入された状態の加熱炉20の概略構成図を示しており、この加熱炉20は、炉本体部21と、熱風発生部22とから構成されている。
炉本体部21は、熱風発生部22の上方に配置されており、開閉可能な蓋部23を備えた金型投入口21aが上方に設けられ、ステンレス等からなる箱状の筐体からなっている。この筐体は、金型の形状に対応させて、円筒状や立方体、あるいはそれ以外の形状とすることもできる。
また、炉本体部21の炉内底面21bには、熱風発生部22からの熱風が吹き込まれる熱風吹出口21cが設けられるとともに、炉本体部21内に吹き込まれた熱風の残留する熱量を回収するための熱エネルギ回収口21dが設けられている。この熱風吹出口21cには、熱風の進行方向を可変とするためのルーバー24が取り付けられ、金型Xの成形面S全体に対して均等に、あるいは、金型Xの成形面Sの形状に応じて吹き付け量にばらつきを持たせながら、熱風を吹き付けられるようになっている。
なお、熱エネルギ回収部21dは、炉内底面21b以外の側面等に設けられていてもよい。
【0026】
また、図4に示す加熱炉20において、炉本体部21には、金型Xに対して成形面Sの裏面側Srからも熱風を吹付けられるように、ダクト構造によって構成された熱風補助吹出口25が設けられている。この熱風補助吹出口25は、熱風発生部22における主送風管91から分岐した分岐管92と接続されており、その風量をダンパ93等によって調節できるように構成されている。このような熱風補助吹出口25を備えることにより、成形面S側からのみならず、裏面側Srからも熱風を吹き付けて金型Xを加熱することができ、金型Xの加熱を効率的に行うことができる。なお、熱風補助吹出口25の構成は、金型Xの形状に応じて適宜変更することができる。
【0027】
また、熱風発生部22は、熱風発生装置(図示せず)と、熱風発生装置により得られた熱風を移送する送風ファン94とを備え、それらは互いに主送風管91で接続されている。また、主送風管91と熱風吹出口21cとの間には熱風貯留室95が設けられ、この熱風貯留室95の中の主送風管91の出口部分に邪魔板96が配置されている。この邪魔板96によって、送風ファン94により送り込まれてくる熱風を分散させることができ、複数の熱風吹出口21cを設けた場合であっても、それぞれの熱風吹出口21cから、熱風を均一に吹き出させることができる。また、主送風管91の途中からは熱風補助吹出口25へと通じる分岐管92が分岐しており、熱風が、炉本体部21の炉内底面21bの熱風吹出口21cだけでなく、熱風補助吹出口25側にも送り込まれるようになっている。
【0028】
また、主送風管91の途中には混合室97が備えられ、この混合室97に対して炉本体部21の炉内底面21bの熱エネルギ回収口21dに接続された回収用ダクト98が接続されている。また、回収用ダクト98の途中には循環ファン99が備えられている。このような熱風の循環路であれば、炉本体部21内の圧力に対して回収用ダクト98側の圧力を低くすることができ、炉本体部21内の余剰の熱量を速やかに回収することができる。そして、熱エネルギ回収口21dを介して炉本体部21内から回収され、循環ファン99により混合室97に送り込まれた熱風は、熱風発生装置から移送される熱風と混合された後、送風ファン94によって主送風管91を通じて、再び熱風吹出口21cに供給される。したがって、一旦発生させた熱風を効率的に利用することができ、加熱時間を短縮したり、生産コストを低減させたりすることができる。
【0029】
このような構成の加熱炉20では、上面の金型投入口21aを開口した状態で、フレーム部Fによって保持された金型Xを、成形面Sを下方に向けて加熱炉20内に投入した後金型投入口21aを閉じ、熱風発生部22から熱風を送り込むことにより、金型Xを効率的に加熱することができる。
【0030】
3.金型交換エリア
本実施形態のパウダースラッシュ成形機10には、金型交換エリアBが設けられている。パウダースラッシュ成形を行っている最中に金型の損傷が発見されたり、あるいは、種類の異なるシート状物を成形したりするために金型を変更したりする場合があるが、この金型交換エリアBを備えることによって、パウダースラッシュ成形機10を稼動させたまま、金型の交換作業を行うことができる。
【0031】
図1〜3に示すパウダースラッシュ成形機10の例では、金型交換エリアBの、各エリアA、B、C(D)、Eの配列方向とは交差する方向に隣接して、金型段取エリアFが設けられ(図2及び図3参照)、金型交換エリアBと金型段取エリアFとの間を金型Xを移動させるための金型移動装置30を備えている。
この金型移動装置30は、金型交換エリアBと金型段取エリアFとにまたがって配置されたローラコンベア31と、金型Xが載置され、ローラコンベア31上を移動する載置台32と、この載置台32を移動させるための駆動モータ(図示せず)とを備え、載置台32が外部制御によりローラコンベア31上を移動可能になっている。
【0032】
4.パウダリングエリア
パウダリングエリアCは、金型加熱エリアAで加熱された金型Xを、成形面を内側にしてパウダーボックス41と一体化した後、金型X及びパウダーボックス41を回転させることによって、金型Xの成形面に樹脂パウダーを溶着させるためのパウダリング工程を行うためのエリアである。このパウダリングエリアCには、パウダーボックス41を取り付けた状態で金型Xを回転させるためのパウダリング装置40が配置されている。
本実施形態のパウダースラッシュ成形機10に備えられたパウダリング装置40の一構成例を図5に示す。
【0033】
図5は、フレーム部Fに保持された金型Xを取り付けた状態のパウダリング装置40の概略構成図を示しており、樹脂パウダーが収容されたパウダーボックス41と、パウダーボックス41と一体化した金型Xを上下方向に回転させる回転機構42とを備えている。
金型Xを回転させる回転機構42は、例えば、回転軸方向の両側にギアシャフト43が固定された枠状の載置台44と、ギアシャフト43を軸線を中心に回転させて金型X及びパウダーボックス41とともに載置台44を回転させるための駆動モータ(図示せず)と、このギアシャフト43及び駆動モータにそれぞれ接続され、駆動用モータの駆動力をギアシャフト43に伝達するチェーンベルト(図示せず)とを備えている。枠状の載置台44には、フレーム部Fに保持された金型Xが載置され固定されるとともに、パウダーボックス41も固定されるようになっている。これによって、所望の回転速度で所定時間モータを駆動させることにより、パウダーボックス41及び金型Xを一体化した状態で回転させて、パウダーボックス41に収容された樹脂パウダーを金型Xの成形面Sに溶着させることができる。
【0034】
また、図5に示すパウダーボックス41は、載置台44に固定される側が開口し、樹脂パウダーが収容される第1の空間部41aと、樹脂パウダーを通さない一方で、通気が可能な多孔性シート41cによって第1の空間41aと区切られた第2の空間部41bとを有しており、第2の空間部41bに通風孔41dが設けられている。したがって、パウダリングを行う際には、第2の空間部41b側からエアを導入しながら行うことにより、パウダーボックス41内の樹脂パウダーが巻き上げられて流動性及び分散性が向上し、均一な厚さの樹脂膜(シート状物)を形成しやすくすることができる。一方、パウダリング後に金型Xをパウダーボックス41から取り外す際には、あらかじめ第2の空間部41b側から脱気することにより、金型Xをはずしたときに樹脂パウダーが飛散することを防ぐことができる。
【0035】
また、パウダーボックス41の上面には、金型Xの縁面と当接する方枠45が設けられている。この方枠45の上面には、シリコーンゴムやフッ素樹脂フィルムからなる樹脂膜が形成されており、金型Xを取り付けた際に、金型Xとパウダーボックス41との間の間隙を無くすことができる。したがって、金型X及びパウダーボックス41を回転させる際、金型Xとパウダーボックス41との間から樹脂パウダーが外部に漏出することを防ぐことができる。
【0036】
本発明のパウダースラッシュ成形機では、かかるパウダリング装置のうち、パウダーボックスが金型冷却エリアDと共通するパウダリングエリアCに出し入れ可能になっている。図1〜図3に示すパウダースラッシュ成形機10の例では、金型Xの数に一致させた三つのパウダーボックス41を備えており、この三つのパウダーボックス41が、ボックス循環装置80上の四つの位置80a、80b、80c、80dをX−Y方向(Y方向は各エリアの配列方向)に沿って循環移動することによって、パウダリングエリアCに投入、排出される。
【0037】
図6(a)〜(b)に、ボックス循環装置80の構成例を示す。図6(a)はボックス循環装置80の上方平面図を示しており、図6(b)は図6(a)のボックス循環装置80を矢印Pの側から見た側面図を示している。このボックス循環装置80は、パウダリングエリアC(80a)、金型交換エリアB(80b)、金型段取エリアF(80c)、パウダーボックス待機エリアG(80d)の間をそれぞれ結ぶように、X−Y方向に沿った複数のローラコンベア81X、81Yを備え、パウダーボックス41を順次移動させることができるようになっている。また、Y方向移動用のローラコンベア81Yは、X方向移動用のローラコンベア81Xのローラ81Xaの間に対応するように、Y方向移動用のローラコンベア81Yのローラ81Yaが配置されているとともに、それぞれの位置80a〜80dにおいて、ローラコンベア81YB、81YC、81YF、81YGを独立的にあるいは一体的に上下動させるための駆動機構(図示せず)を備えている。したがって、Y方向移動用のローラコンベア81YB、81YC、81YF、81YGが上下動することによって、それぞれの位置80a〜80dにおいて、パウダーボックス41の移動方向を容易に転換できるようになっている。
【0038】
また、このボックス循環装置80は、X方向移動用のローラコンベア81Xのうち、パウダリングエリアCに位置する部分81XCについても上下動できるように、当該部分81XCを上下動させるための駆動機構(図示せず)を備えている。したがって、当該部分81XCに循環移動してきたパウダーボックス41を上昇させて、パウダリング装置40の載置台に固定させることができるようになっている。
なお、このX方向移動用のローラコンベア81Xの部分81XCは、後述する金型冷却装置50を金型冷却エリアDに移動し、上昇する際にも用いられる。
【0039】
また、図1及び図3に示すように、このボックス循環装置80を構成する各ローラコンベア81X、81Yの高さ位置は、金型Xの交換を行うために金型交換エリアB及び金型段取エリアFに備えられた金型移動装置30とは高さを異ならせてあり、ボックス循環装置80の一部が、金型移動装置30と上下方向に重なっている。そのため、パウダースラッシュ成形機10の平面的な大きさがコンパクト化され、成形機10の省スペース化が図られている。
また、このような平面循環移動型のボックス循環装置であれば、ボックスを循環させるための領域を形成するために地面を掘り下げる必要もなく、パウダースラッシュ成形機を設置する際の作業が容易になる。
【0040】
なお、パウダリングに用いられる樹脂パウダーとしては、例えば、エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、オレフィン樹脂、ウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、又はポリエステル樹脂の少なくとも一つの樹脂が挙げられる。
【0041】
5.金型冷却エリア
金型冷却エリアDは、パウダリング工程で、成形面に樹脂パウダーが溶着した金型Xを冷却するための金型冷却工程を行うエリアであり、この金型冷却エリアDには、冷却装置50が出し入れできるようにされている。
本実施形態のパウダースラッシュ成形機10では、パウダリング工程を行った後、金型Xが枠状の載置台44に支持された状態で金型Xの成形面が上方を向くように保持し、冷却装置50を下方側から、配置するようになっている。そのため、冷却装置50は、金型Xが取り付けられる開口部51aが上部に設けられている。かかる冷却装置50としては、水冷タイプや空冷タイプをはじめとして、公知のものを適宜使用することができるが、そのうち水冷タイプの一構成例を図7に示す。
【0042】
図7は金型Xが投入された状態の冷却装置50の断面図を示している。
この冷却装置50は、上部に開口部51aを有する筐体51と、噴霧装置52と、シャワー装置53とを備えている。金型Xを、成形面Sを上方に向けた状態で筐体51内に投入した後、初期段階では噴霧装置52を使用し、次いで、シャワー装置53を使用して冷却できるため、金型Xが高温状態から急激に冷却されて、熱損傷や割れ等が発生することを防止することができる。
また、シャワー装置53のノズル54は首振り可能に構成されており、金型Xの成形面Sの裏面側Srに対して、均等に、あるいは、成形面Sの形状に応じて冷却水を吹き付けることができるようになっている。
なお、シャワー装置及び噴霧装置は、一つの給水タンクに連結し、吹き出し口に設けた制御弁等の切り替え装置によって、噴霧量やシャワー量を決定できるように構成することもできる。
【0043】
また、本発明のパウダースラッシュ成形機10では、この冷却装置50がパウダリングエリアCと共通する金型冷却エリアDに出し入れ可能に構成されている。図1〜図3に示すパウダースラッシュ成形機10の例では、冷却装置50はローラコンベア55上に載置され、冷却装置50の待機エリアHと金型冷却エリアDとの間を行き来できるように構成されている。また、金型冷却エリアDにおいては、冷却装置50が、図6に示すボックス循環装置80の一部分81XC上に配置されるようになっており、金型Xが上側開口部に取り付けられるように、冷却装置50を上昇させることができるように構成されている。
【0044】
6.脱型エリア
脱型エリアEは、金型冷却エリアDで冷却され、固化された樹脂成形品を金型Xから取り外す工程を行うエリアであり、この脱型エリアEには脱型装置60が備えられている。
本実施形態のパウダースラッシュ成形機10に備えられる脱型装置60としては、公知のものを適宜使用することができるが、図8に例示される脱型装置60は、回転軸方向両側にギアシャフト61が固定された枠状の載置台62と、ギアシャフト61を軸線を中心に回転させて金型Xとともに載置台62を回転させるための駆動モータ(図示せず)と、このギアシャフト61及び駆動モータにそれぞれ接続され、駆動用モータの駆動力をギアシャフト61に伝達するチェーンベルト(図示せず)とを備えている。ギアシャフト61は、載置台62の端部側に取り付けられており、金型Xを回転させた場合に、比較的低い位置まで下げることができるようになっている。したがって、作業者が脱型作業を行うためのステップ台等を備える必要がなくなり、その分だけ、パウダースラッシュ成形機10の平面的な大きさが小さくされている。
【0045】
7.金型搬送装置
金型搬送装置70は、各エリアに金型Xを順次移動させるための装置である。本実施形態のパウダースラッシュ成形機10では、骨格をなすフレーム11のうち上方の二本のフレーム11a、11b上に配置された搬送用レール12a、12b上を行き来する金型搬送装置70が備えられている。
図9は、本実施形態のパウダースラッシュ成形機10に備えられた金型搬送装置70を示している。この金型搬送装置70は、レール上を回動する車輪71と、車輪71を駆動させるためのモータ(図示せず)とを備えており、モータの駆動によってレール12a、12b上を行き来させることができる。また、レール12a、12bの高さ位置から下方に向かって延設されたアーム73と、このアーム73に沿って上下動可能に備えられ、金型Xを両側から係止する係止レバー74と、この係止レバー74を上下に移動させるためのチェーン75及びモータ(図示せず)とで構成されるアーム部72を備えており、金型Xを吊下げ支持し、各エリアに投入したり、あるいは、各エリアから搬出したりすることができる。
また、アーム部72とは別に、レール12a、12bの高さ位置において、金型Yを係止し保持するための係止部77を備えており、アーム部72と係止部77とによって同時期に金型搬送装置70上に二つの金型X及び金型Yを保持させることができるようになっている。したがって、金型の移動作業の時期の自由度を高めることができ、複数の金型を使用して連続的に行うパウダースラッシュ成形の効率を向上させることができる。
【0046】
8.金型
金型Xは、フレーム部Fに取り付けられた状態で、それぞれのエリアを移動する。この金型Xのフレーム部Fと成形面Sとの継ぎ目となる部分は、例えばシール材によって防水処理されている。これにより、金型冷却工程において、樹脂成形品の表面に、過度に水分が付着することを防止することができる。
また、金型Xは、フレーム部Fが金型搬送装置に係止された状態で動かされ、それぞれのエリアの上方に移動させ、上方からそれぞれのエリアに投入できるようにされている。したがって、金型の搬送が容易になるとともに、パウダースラッシュ成形機における各エリアを容易に配置することができる。
【0047】
また、金型Xの成形面Sは、一つのみでもよく、あるいは、二つ以上備えることもできる。樹脂成形品の大きさにもよるが、二つ以上備える場合には、一つの金型で、同時に2以上のシート状物を成形することができ、生産効率を高めることができる。また、成形面を二つ以上設ける場合には、金型Xの回転軸方向に沿って、それぞれの成形面Sをずらして配置することが好ましい。このように構成することにより、パウダースラッシュ工程において金型Xを回転させた場合に、それぞれの成形面にパウダーが入り込みやすくなり、均一な厚さを有するシート状物を得ることができるためである。
【0048】
9.表面処理エリア
また、図示しないものの、パウダースラッシュ成形機は、さらに表面処理エリアを備えた構成とすることもできる。この表面処理エリアは、パウダースラッシュ成形された樹脂成形品の表面あるいは裏面に対して表面処理を行うエリアであり、例えば、樹脂成形品の表面あるいは裏面に別の部材を積層する場合に、密着性を上げるための処理を行うエリアとすることができる。また、この表面処理エリアは、独立したエリアとして設けても構わないが、成形機全体の平面的な大きさが大きくなることを防ぐためには、上記のいずれかのエリアと同一のエリアに配置することが好ましい。例えば、脱型エリアとエリアを共通にし、表面処理装置を脱型エリアに出し入れできるように構成することができる。
【0049】
表面処理装置の種類は特に制限されるものではないが、例えば、オゾン処理、プラズマ処理、コロナ処理、高圧放電処理、紫外線処理、及びケイ酸化炎処理の少なくとも一つの表面処理を施すための表面処理装置とすることができる。
【0050】
10.動作
次に、これまで説明したパウダースラッシュ成形機を用いて連続的にパウダースラッシュ成形が行われる際の動作について説明する。図1〜図3に示すパウダースラッシュ成形機10では、複数の金型を同時に投入してパウダースラッシュ成形を連続的に実施することができるが、以下、二つの金型を同時に投入して行う場合と、三つの金型を同時に投入して行う場合とを例にとって説明する。
なお、以下の動作はあくまでも一例であり、それぞれの工程における処理時間に応じて適宜変更することが可能である。
【0051】
(1)二型循環
二つの金型X及び金型Yを同時に投入してパウダースラッシュ成形を行う場合の動作フローを図10に示す。金型Xが金型搬送装置70のアーム部72に係止され、金型Yが脱型エリアEの脱型装置60に置かれている状態を開始位置として説明する(ステップ0)。
【0052】
まず、金型搬送装置70のアーム部72に保持された金型Xを金型加熱エリアAへ移動し、成形面Sを下方側に向けた状態で加熱炉20内に投入し、図11(a)に示すように、金型加熱工程を行う(ステップ1)。この金型Xについて金型加熱工程を行っている間に、金型搬送装置70を脱型エリアEに移動し、金型Yをアーム部72に係止した後、上昇させて、上方の係止部77に係止保持させる(ステップ2)。
【0053】
次いで、金型搬送装置70を金型加熱エリアAに移動し、金型加熱工程を終えた金型Xをアーム部72に係止して加熱炉20内から取り出す(ステップ3)。このとき、金型搬送装置70のアーム部72には金型Xが係止され、上方の係止部77には金型Yが保持されている。この状態で金型搬送装置70をパウダリングエリアCに移動し、パウダリング装置40の枠状の載置台44上に金型Xを載置し固定する。この載置台44には、下方側からパウダーボックス41Aが取り付けられ、図11(b)に示すように、パウダリング工程が行われる(ステップ4)。
【0054】
金型Xについてパウダリング工程を行っている間に、金型搬送装置70を金型加熱エリアAに移動し、係止部77に保持されていた金型Yを加熱炉20内に投入し、金型加熱工程を行う(ステップ5)。この時点で、金型搬送装置70上には、金型X及び金型Yのいずれも存在しないことになる。
【0055】
金型Yについて金型加熱工程を行っている間に、金型Xについてはパウダリング工程を終え、図11(c)に示すように、金型冷却工程に移行される。このパウダースラッシュ成形機10では、パウダリングエリアCと金型冷却エリアDとが同一エリアに配置されているため、金型搬送装置70によって金型Xを移動させる必要はなく、その代わりに、パウダーボックス41Aが枠状の載置台44から外され金型交換エリアBに移動するとともに、冷却装置50がこのエリアD(C)に導入され、金型Xが冷却装置50の上面の開口部に取り付けられる(ステップ6)。パウダリング工程終了時には、金型Xの成形面Sは下方を向いているが、冷却装置50に投入される時点では、金型Xの成形面Sの背面側Srから冷却できるように、成形面Sが上方を向くように金型Xが回転させられている。
なお、パウダーボックス41Aが金型交換エリアBに移動し終えたときには、他方のパウダーボックス41Bについてもパウダーボックス待機エリアGに移動している。
【0056】
そして、金型Xについて金型冷却工程が終了すると、冷却装置50が枠状の載置台44から外され、再び成形面Sが下方を向くように金型Xを回転させる(ステップ7)。このとき、冷却装置50は待機エリアHに戻される。また、この時点では、金型Yについてはなお金型加熱工程が行われている。
次いで、金型Xを金型搬送装置70のアーム部72に係止して、脱型エリアEへ移動するとともに、成形面Sを下方に向けた状態で脱型装置60の枠状の載置台62に載置する(ステップ8)。脱型エリアEでは、金型Xを載置台62とともに回転させて、図11(d)に示すように、樹脂成形品100が取り出される。
樹脂成形品を取出した後、金型Xを、金型搬送装置70のアーム部72に係止した後、上昇させて、上方の係止部77に係止保持する(ステップ9)。
【0057】
次いで、金型Xを上方の係止部77に保持したまま、金型搬送装置70を金型加熱エリアAに移動し、金型加熱工程を終えた金型Yをアーム部72に係止して加熱炉20から取り出す(ステップ10)。このとき、金型搬送装置70のアーム部72には金型Yが係止され、上方の係止部77には金型Xが保持され、金型Xと金型Yとが置き換わった形で上述のステップ3と同様の状態となっており、以降、同様のステップが行われる。
【0058】
すなわち、金型搬送装置70を金型加熱エリアAに移動し、金型加熱工程を終えた金型Yをアーム部72に係止して加熱炉20内から取り出した後、金型搬送装置70をパウダリングエリアCに移動し、パウダリング装置40の枠状の載置台44上に金型Yを載置し固定する(ステップ11)。この載置台44には、下方側からパウダーボックス41Bが取り付けられ、パウダリング工程が行われる。このとき取り付けられるパウダーボックス41Bは、金型Xのパウダリングに用いられたパウダーボックス41Aではなく、ボックス循環装置80によって循環移動してきた他方のパウダーボックス41Bが取り付けられる。したがって、金型Xにはパウダーボックス41Aが、金型Yにはパウダーボックス41Bがそれぞれ一体化されることになり、種類の異なる樹脂成形品であっても、同時に連続的に生産することが可能になっている。
【0059】
金型Yについてパウダリング工程を行っている間に、金型搬送装置70を金型加熱エリアAに移動し、係止部77に保持されていた金型Xを加熱炉20内に投入する(ステップ12)。金型Xについて金型加熱工程を行っている間に、金型Yについてはパウダリング工程を終え、金型冷却工程に移行される。このとき、パウダーボックス41Bが枠状の載置台44から外され金型交換エリアBに移動するとともに、冷却装置50がこのエリアD(C)に導入され、成形面Sを上方に向けた金型Yが冷却装置50の上面の開口部51aに取り付けられる(ステップ13)。
なお、パウダーボックス41Bが金型交換エリアBに移動し終えたときには、他方のパウダーボックス41Aについてもパウダーボックス待機エリアGに移動している。
【0060】
そして、金型Yについて金型冷却工程が終了すると、冷却装置50が枠状の載置台44から外され、再び成形面Sが下方を向くように金型Yを回転させるとともに、冷却装置50を待機位置に戻しておく(ステップ14)。次いで、金型Yを金型搬送装置70のアーム部72に係止して、脱型エリアEへ移動するとともに、成形面Sを下方に向けた状態で脱型装置60の枠状の載置台62に載置する(ステップ15)。脱型エリアEでは、金型Yを載置台62とともに回転させて、樹脂成形品が取り出される。
樹脂成形品を取出した後は、金型Yを、金型搬送装置70のアーム部72に係止した後、上昇させて、上方の係止部77に係止保持する(ステップ16)。
【0061】
次いで、金型Yを上方の係止部77に保持したまま、金型搬送装置70を金型加熱エリアAに移動し、金型加熱工程を終えた金型Xをアーム部72に係止して加熱炉20から取り出す(ステップ17)。このとき、金型搬送装置70のアーム部72には金型Xが係止され、上方の係止部77には金型Yが保持され、上述のステップ3と完全に一致した状態に戻っている。
以降、上述のステップ3〜ステップ17と同様の工程が繰り返し行われる。このようにして、二つの金型を用いたパウダースラッシュ成形の連続的な実施が行われる。
【0062】
ここで、何らかの理由で金型Xを交換する必要が出てきたときには、パウダースラッシュ成形機10の稼動を中断することなく、以下のように行うことができる。
金型Xの交換は、金型Xが冷却された状態、かつ、成形面Sに樹脂パウダーが溶着していない状態で行うことが望ましいため、ここでは、脱型工程終了後、金型加熱工程前に行う場合、すなわち、上述のステップ11の後、ステップ12に進むまでの間に行う場合を例にとって説明する。
【0063】
図12は、金型Xの交換時の動作フローを示している。
上述のステップ11の状態では、金型YがパウダリングエリアCに投入されている一方、金型Xは金型搬送装置70の上方側の係止部77に係止されている。このときまでに、新たに導入する金型Zを金型段取エリアFにおいて金型移動装置30の載置台32上にセットし、金型交換エリアBに移動しておく(ステップ20)。
この状態で、金型搬送装置70を金型交換エリアBに移動し、金型移動装置30の載置台32上に置かれた金型Zを、アーム部72によって係止保持する(ステップ21)。
【0064】
次いで、金型搬送装置70を金型加熱エリアAに移動し、アーム部72に係止した金型Zを加熱炉20に投入する(ステップ22)。このとき、金型Yについてパウダリング工程並びに金型冷却工程が行われ、金型Zについて金型加熱工程が行われる。
この間に、金型搬送装置70を再び金型交換エリアBに移動し、上方の係止部77に係止していた金型Xをアーム部72によって下降させ、金型移動装置30の載置台32上に載置する(ステップ23)。載置台32上に置かれた金型Xは金型段取エリアFに移動し、搬出される。
【0065】
この後、金型搬送装置70はパウダリング工程及び金型冷却工程を終えた金型Yを脱型エリアEに移動させるために、金型冷却エリアD(パウダリングエリアC)に移動する(ステップ24)。この状態で、金型Xが金型Zに置き換わった形で、上述のステップ15の前の状態と同様の状態にされる。以降、金型Xが金型Zに置き換わった状態で、再びステップ15以降の工程が繰り返される。
このようにして、パウダースラッシュ成形機10の稼動を中断することなく、金型Xの交換作業を行うことができる。
【0066】
(2)三型循環
次に、三つの金型X、金型Y及び金型Zを同時に投入してパウダースラッシュ成形を行う場合の動作フローを図13に示す。金型Xが金型交換エリアBの金型移動装置30上に置かれ、金型Yが脱型エリアEの脱型装置60に置かれ、金型ZがパウダリングエリアCのパウダリング装置40に置かれている状態を開始位置として説明する(ステップ50)。なお、開始時点では、金型搬送装置70上には金型が一切保持されていない。
【0067】
まず、金型交換エリアBにある金型Xを、金型搬送装置70のアーム部72に係止し、金型加熱エリアAへ移動するとともに、成形面Sを下方側に向けた状態で加熱炉20内に投入する(ステップ51)。この金型Xについて金型加熱工程を行っている間に、金型搬送装置70を脱型エリアEに移動し、金型Yをアーム部72に係止した後、上昇させて、上方の係止部77に係止保持させる(ステップ52)。さらに、金型搬送装置70をパウダリングエリアCに移動し、金型Zをアーム部72に係止して、脱型エリアEの脱型装置60の載置台62上に載置する(ステップ53)。このとき、金型搬送装置70には、金型Yのみが係止部77に保持された状態となっている。
【0068】
次いで、金型搬送装置70を金型加熱エリアAに移動し、金型加熱工程を終えた金型Xをアーム部72に係止して加熱炉20内から取り出す(ステップ54)。このとき、金型搬送装置70のアーム部72には金型Xが係止され、上方の係止部77には金型Yが保持されている。この状態で金型搬送装置70をパウダリングエリアCに移動し、パウダリング装置40の枠状の載置台44上に金型Xを載置し固定する。この載置台44には、下方側からパウダーボックス41Aが取り付けられ、パウダリング工程が行われる(ステップ55)。
【0069】
金型Xについてパウダリング工程を行っている間に、金型搬送装置70を金型加熱エリアAに移動し、係止部77に保持されていた金型Yを加熱炉20内に投入する(ステップ56)。この時点で、金型搬送装置70上には、金型X〜金型Zのいずれも存在しないことになる。
【0070】
金型Yについて金型加熱工程を行っている間に、金型Xについてはパウダリング工程を終え、金型冷却工程に移行される。このパウダースラッシュ成形機10では、パウダリングエリアCと金型冷却エリアDとが同一エリアに配置されているため、金型搬送装置70によって金型Xを移動させる必要はなく、その代わりに、パウダーボックス41Aが枠状の載置台44から外され金型交換エリアBに移動するとともに、冷却装置50がこのエリアD(C)に導入され、金型Xが冷却装置50の上面の開口部に取り付けられる(ステップ57)。パウダリング工程終了時には、金型Xの成形面Sは下方を向いているが、冷却装置50に投入される時点では、金型Xの成形面Sの背面側Srから冷却できるように、成形面Sが上方を向くように金型Xが回転させられている。
なお、パウダーボックス41Aが金型交換エリアBに移動し終えたときには、パウダーボックス41Bについてもパウダーボックス待機エリアGに移動している。
【0071】
また、金型Xについて金型冷却工程を行い、金型Yについて金型加熱工程を行っている間に、金型搬送装置70を脱型エリアEに移動し、脱型装置60上に置かれた金型Zをアーム部72に係止し、上昇させて、上方の係止部77に係止する(ステップ58)。この間に、金型Xについて金型冷却工程が終了し、冷却装置50が枠状の載置台44から外され、再び成形面Sが下方を向くように金型Xを回転させる(ステップ59)。このとき、冷却装置50が待機エリアHに戻される。また、この時点で、金型Yについては、なお金型加熱工程が行われている。
【0072】
次いで、金型搬送装置70を金型冷却エリアDに移動し、金型Xをアーム部72に係止して、脱型エリアEへ移動するとともに、成形面Sを下方に向けた状態で脱型装置60の枠状の載置台62に載置する(ステップ60)。脱型エリアEでは、金型Xを載置台62とともに回転させて、樹脂成形品が取り出される。
【0073】
金型Xについて脱型工程を行っている間に、金型搬送装置70を金型加熱エリアAに移動し、金型加熱工程を終えた金型Yをアーム部72に係止して加熱炉20から取り出す(ステップ61)。このとき、金型搬送装置70のアーム部72には金型Yが係止され、上方の係止部77には金型Zが保持された状態となっている。
このまま、金型搬送装置70をパウダリングエリアCに移動し、パウダリング装置40の枠状の載置台44上に金型Yを載置し固定する。この載置台44には、下方側からパウダーボックス41Bが取り付けられ、パウダリング工程が行われる(ステップ62)。このとき取り付けられるパウダーボックス41Bは、金型Xのパウダリングに用いられたパウダーボックス41Aではなく、ボックス循環装置80によって循環移動してきたパウダーボックス41Bが取り付けられる。
【0074】
金型Xについて脱型工程を行い、金型Yについてパウダリング工程を行っている間に、金型搬送装置70を金型加熱エリアAに移動し、係止部77に保持されていた金型Zを加熱炉20内に投入する(ステップ63)。次いで、金型搬送装置70を脱型エリアEに移動し、金型Xをアーム部72に係止し、上昇させて、上方の係止部77に保持させる(ステップ64)。また、金型Zについて金型加熱工程を行っている間に、金型Yについてはパウダリング工程を終え、金型冷却工程に移行されている。このとき、パウダーボックス41Bが枠状の載置台44から外され金型交換エリアBに移動するとともに、冷却装置50がこのエリアD(C)に導入され、成形面Sを上方に向けた金型Yが冷却装置50の上面の開口部51aに取り付けられる(ステップ65)。
なお、パウダーボックス41Bが金型交換エリアBに移動し終えたときには、パウダーボックス41Cについてもパウダーボックス待機エリアGに移動している。
【0075】
次いで、金型Yについて金型冷却工程を行い、金型Zについて金型加熱工程を行っている間に、金型搬送装置70を脱型エリアEに移動し、樹脂成形品を取出した金型Xを、金型搬送装置70のアーム部72に係止した後、上昇させて、上方の係止部77に係止保持する(ステップ66)。
そのまま、金型搬送装置70を金型冷却エリアDに移動し、金型Yをアーム部72に係止して、脱型エリアEへ移動するとともに、成形面Sを下方に向けた状態で脱型装置60の枠状の載置台62に載置する(ステップ67)。
【0076】
金型Yについて脱型工程を行っている間に、金型搬送装置70を金型加熱エリアAに移動し、金型加熱工程を終えた金型Zをアーム部72に係止して加熱炉20から取り出す(ステップ68)。このとき、金型搬送装置70のアーム部72には金型Zが係止され、上方の係止部77には金型Xが保持された状態となっている。
このまま、金型搬送装置70をパウダリングエリアCに移動し、パウダリング装置40の枠状の載置台44上に金型Zを載置し固定する。この載置台44には、下方側からパウダーボックス41Cが取り付けられ、パウダリング工程が行われる(ステップ69)。このとき取り付けられるパウダーボックス41Cは、金型Xや金型Yのパウダリングに用いられたいずれのパウダーボックス41A、41Bでもなく、ボックス循環装置80によって循環移動してきたパウダーボックス41Cが取り付けられる。したがって、金型Xにはパウダーボックス41Aが、金型Yにはパウダーボックス41Bが、金型Zにはパウダーボックス41Cがそれぞれ一体化されることになり、種類の異なる樹脂成形品であっても、同時にかつ連続的に生産することが可能になっている。
【0077】
金型Yについて脱型工程を行い、金型Zについてパウダリング工程を行っている間に、金型搬送装置70を金型加熱エリアAに移動し、係止部77に保持されていた金型Xを加熱炉20内に投入する(ステップ70)。このとき、金型Xが金型加熱エリアAに置かれ、金型Yが脱型エリアEに置かれ、金型ZがパウダリングエリアC(金型冷却エリアD)に置かれ、上述のステップ52と完全に一致した状態に戻っている。
以降、上述のステップ52〜ステップ70と同様の工程が繰り返し行われる。このようにして、三つの金型を用いたパウダースラッシュ成形の連続的な実施が行われる。
【0078】
ここで、何らかの理由で金型Xを交換する必要が出てきたときには、パウダースラッシュ成形機10の稼動を中断することなく、以下のように行うことができる。
金型Xの交換は、金型Xが冷却された状態、かつ、成形面Sに樹脂パウダーが溶着していない状態で行うことが望ましいため、ここでは、脱型工程終了後、金型加熱工程前に行う場合、すなわち、上述のステップ69の後、ステップ70に進むまでの間に行う場合を例にとって説明する。
【0079】
図14は、金型Xの交換時の動作フローを示している。
上述のステップ69の状態では、金型Yが脱型エリアEに置かれ、金型Zが金型冷却エリアD(パウダリングエリアC)に投入されている一方、金型Xは金型搬送装置70の上方の係止部77に係止されている。このときまでに、新たに導入する金型Wを金型段取エリアFにおいて金型移動装置30の載置台32上にセットし、金型交換エリアBに移動しておく(ステップ80)。
この状態で、金型搬送装置70を金型交換エリアBに移動し、金型移動装置70の載置台32上に置かれた金型Wを、アーム部72によって係止保持する(ステップ81)。
【0080】
次いで、金型搬送装置70を金型加熱エリアAに移動し、アーム部72に係止した金型Wを加熱炉20に投入する(ステップ82)。その後、金型搬送装置70を再び金型交換エリアBに移動し、上方の係止部77に係止していた金型Xをアーム部72によって下降させ、金型移動装置30の載置台32上に載置する(ステップ83)。載置台32上に置かれた金型Xは金型段取エリアFに移動し、搬出される。これによって、金型Xが金型Wに置き換わった形で、上述のステップ51の前の状態と同様の状態にされる。以降、金型Xが金型Wに置き換わった状態で、再びステップ51以降の工程が繰り返される。
このようにして、パウダースラッシュ成形機10の稼動を中断することなく、金型Xの交換作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の実施の形態にかかるパウダースラッシュ成形機を示す側面図である。
【図2】本発明の実施の形態にかかるパウダースラッシュ成形機を示す上側平面図である。
【図3】本発明の実施の形態にかかるパウダースラッシュ成形機を示す正面図である。
【図4】金型加熱エリアに備えられた加熱炉の構成例を説明するための図である。
【図5】パウダリングエリアに備えられたパウダリング装置の構成例を説明するための図である。
【図6】ボックス循環装置の構成例を説明するための図である。
【図7】金型冷却エリアに備えられた冷却装置の構成例を説明するための図である。
【図8】脱型エリアに備えられた脱型装置の構成例を説明するための図である。
【図9】金型搬送装置の構成例を説明するための図である。
【図10】二つの金型を用いてパウダースラッシュ成形を行う場合の動作フローを示す図である。
【図11】パウダースラッシュ成形について説明するための図である。
【図12】二型循環のパウダースラッシュ成形中に金型を交換する際の動作フローを示す図である。
【図13】三つの金型を用いてパウダースラッシュ成形を行う場合の動作フローを示す図である。
【図14】三型循環のパウダースラッシュ成形中に金型を交換する際の動作フローを示す図である。
【図15】従来のパウダースラッシュ成形機の構成について説明するための図である。
【符号の説明】
【0082】
X・Y・Z:金型、S:金型の成形面、F:フレーム部、10:パウダースラッシュ成形機、11:フレーム(骨格)、20:加熱炉、21:炉本体部、22:熱風発生部、30:金型移動装置、40:パウダリング装置、41:パウダーボックス、50:冷却装置、60:脱型装置、70:金型搬送装置、72:アーム部、77:係止部、80:ボックス循環装置、81X・81Y:ローラコンベア、81Xa・81Ya:ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型を加熱するための金型加熱エリアと、加熱した前記金型の成形面に樹脂パウダーを溶着させて樹脂成形品を成形するためのパウダリングエリアと、前記樹脂パウダーが溶着した前記金型を冷却するための金型冷却エリアと、前記樹脂成形品を前記金型から脱離するための脱型エリアと、が配置されるとともに、それぞれのエリア間を前記金型を移動させるための金型搬送装置を備え、複数の前記金型を用いて前記樹脂成形品の製造を連続的に実施するためのパウダースラッシュ成形機において、
前記パウダリングエリア及び前記金型冷却エリアを同一エリアに配置するとともに、
パウダリングに用いられるパウダーボックスと、前記金型の冷却に用いられる冷却装置と、を前記同一エリアに相互に出し入れ可能にしたことを特徴とするパウダースラッシュ成形機。
【請求項2】
前記樹脂成形品の製造を連続的に実施しながら、前記金型を交換するための金型交換エリアをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のパウダースラッシュ成形機。
【請求項3】
前記パウダーボックスを複数備え、当該複数のパウダーボックスを前記パウダリングエリアを経由するように循環移動させるためのボックス循環装置を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のパウダースラッシュ成形機。
【請求項4】
前記ボックス循環装置は、少なくとも前記金型交換エリア、前記金型加熱エリア、前記脱型エリアのいずれかのエリアを経由することを特徴とする請求項3に記載のパウダースラッシュ成形機。
【請求項5】
前記金型交換エリアと、前記金型の投入、搬出又は待機を行う金型段取エリアと、の間を前記金型を移動させるための金型移動装置を備えることを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項に記載のパウダースラッシュ成形機。
【請求項6】
前記ボックス循環装置の移動位置の少なくとも一部が、前記金型移動装置の移動位置と重なることを特徴とする請求項5に記載のパウダースラッシュ成形機。
【請求項7】
前記金型搬送装置は、前記金型を吊下げ支持するとともに上下方向に移動するためのアーム部と、前記金型を係止し保持するための係止部と、を備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のパウダースラッシュ成形機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−137272(P2008−137272A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−325830(P2006−325830)
【出願日】平成18年12月1日(2006.12.1)
【出願人】(000150512)株式会社仲田コーティング (40)
【Fターム(参考)】