説明

パウチ入り米加工食品の製造方法、及び前記パウチ入り米加工食品を用いた味付き米飯の製造方法

【課題】スチームコンベクションオーブン等で加熱するだけで簡便に味付き米飯を製造することができるパウチ入り米加工食品の製造方法であって、炊きたての香りが長時間にわたって維持される味付き米飯が得られるパウチ入り米加工食品の製造方法を提供する。また、前記パウチ入り米加工食品を用いた味付き米飯の製造方法を提供する。
【解決手段】早炊米、もち米粉及び調味液をパウチに収容し、減圧包装するパウチ入り米加工食品の製造方法。前記パウチ入り米加工食品に加熱処理を施す味付き米飯の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スチームコンベクションオーブン等で加熱するだけで簡便に味付き米飯を製造することができるパウチ入り米加工食品の製造方法であって、より詳しくは、炊きたての香りが長時間にわたって維持される味付き米飯を製造することができるパウチ入り米加工食品の製造方法に関する。さらに、本発明は、前記パウチ入り米加工食品を用いた味付き米飯の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スーパーマーケットやコンビニエンスストア等では、様々な米飯類が販売されている。中でも、炊き込みご飯、ピラフ、おこわ等の味付き米飯は、消費者から好まれている米飯類の1つである。これらは、一般的に、スーパーマーケット等のバックヤードや、惣菜工場等で調理された後、店頭で販売される。
【0003】
しかしながら、バックヤードや惣菜工場等で調理された味つき米飯は、店頭で保管中に、調味料や炊飯米に由来する味付き米飯特有の炊きたての香りが消失しやすく、これらの香りが感じられなくなるという問題点があった。
【0004】
一方、上述した米飯類を製造するには、炊飯器が必要となるが、スーパーマーケット等のバックヤードや惣菜工場等では、炊飯器等の炊飯専用設備がないところもあり、炊飯器等を使用しなくても、スチームコンベクションオーブン、スチーマー、湯槽等の加熱設備で米飯類を簡便に製造することが望まれている。
【0005】
米飯の香りの改善については、例えば、特開2003−111575号公報(特許文献1)には、炊き込み御飯に芳香とコク味をムラなく均一に味付けできる抽出鶏脂を含有する炊飯前添加用液状調味が記載されている。また、特開2001−340060号公報(特許文献2)には、無菌炊飯米の異臭の生成を抑制し、保存中の風味の劣化を防止する炊飯米フレーバーが提案されている。しかしながら、これら技術は、上述した味付き米飯中の醤油やだし等の調味料に由来する香りの消失を防ぐものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−111575号公報
【特許文献2】特開2001−340060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、スチームコンベクションオーブン等で加熱するだけで簡便に味付き米飯を製造することができるパウチ入り米加工食品の製造方法であって、炊きたての香りが長時間にわたって維持される味付き米飯を製造することができるパウチ入り米加工食品の製造方法を提供すること、さらに、前記パウチ入り米加工食品を用いた味付き米飯の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記目的を達成すべく使用原料等、様々な諸条件について鋭意研究を重ねた結果、早炊米、もち米粉及び調味液をパウチに収容し、減圧包装したパウチ入り米加工食品は、意外にも、スチームコンベクションオーブン等で加熱処理を施すだけで簡便に味付き米飯が得られること、しかも、得られた味付き米飯は、調味料や炊飯米に由来する味付き米飯特有の炊きたての香りが長時間にわたって維持されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、
(1)早炊米、もち米粉及び調味液をパウチに収容し、減圧包装するパウチ入り米加工食品の製造方法、
(2)前記もち米粉を調味液に対し0.5〜10%添加する(1)記載のパウチ入り米加工食品の製造方法、
(3)前記調味液を早炊き米に対し30〜150%添加する(1)又は(2)記載のパウチ入り米加工食品の製造方法、
(4)(1)乃至(3)のいずれかに記載のパウチ入り米加工食品に加熱処理を施す味付き米飯の製造方法、
である。
【発明の効果】
【0010】
本発明のパウチ入り米加工食品は、パウチ入りのまま保存が可能であり、必要に応じて、スチームコンベクションオーブン、スチーマー、湯槽等の加熱設備を用いて加熱するだけで簡便に味付き米飯を製造できる。したがって、炊飯設備がないスーパーマーケット等のバックヤードでも味付き米飯の製造が可能となり、味付き米飯の需要拡大に貢献できる。さらに、得られた味付き米飯は、調味料や炊飯米に由来する味付き米飯特有の炊きたての香りが長時間にわたって維持されやすいものとなる。したがって、製造後喫食するまでの時間が長いスーパーマーケットやコンビニエンスストア等で販売される味付け米飯のさらなる需要拡大に貢献できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のパウチ入り米加工食品の製造方法、及び前記パウチ入り米加工食品を用いた味付き米飯の製造方法を詳述する。なお、本発明において「%」は「質量%」を、「部」は「質量部」を意味する。
【0012】
本発明のパウチ入り米加工食品の製造方法は、早炊米、もち米粉及び調味液をパウチに収容し、減圧包装することを特徴とする。このようにして得られた本発明のパウチ入り米加工食品は、パウチ入りのまま保存が可能であり、必要に応じて、スチームコンベクションオーブン、スチーマー、湯槽等の加熱設備を用いて加熱するだけで簡便に味付き米飯を製造できる。さらに、得られた味付き米飯は、調味料や炊飯米に由来する味付き米飯特有の炊きたての香りが長時間にわたって維持されやすいものとなる。
【0013】
本発明において前記早炊米とは、生米に比べて炊飯時間を短縮できるようにした加工米をいい、一般には生米(含水量約15%、澱粉はほとんどα化していない)を蒸し機などで数分間加熱して、含水量30〜50%程度に高める等によって製造することができる。このようにして製造された早炊米は、一般に澱粉のα化度が約70%以上に高められているため、短時間の炊飯で、美味しい炊飯米を得ることができる。これら早炊米は市販されており、市販品を用いることができる。また、本発明で用いる早炊米は、うるち米、もち米等であればよいが、本発明では、うるち米であることが好ましい。
【0014】
本発明の前記もち米粉とは、もち米を粉末状としたものをいう。本発明で使用するもち米粉は、特に限定はなく、例えば、加熱処理を施したアルファ化(糊化)もち米粉や、加熱処理する工程を施していない生(ベータ化)もち米粉が挙げられる。本発明においては、特に生もち米粉を添加すると、調味料や炊飯米に由来する味付き米飯特有の炊きたての香りが長時間にわたって維持される本発明の効果が顕著に得られるため、好ましい。
【0015】
前記もち米粉の添加量は、得られた味付き米飯において、味付き米飯特有の炊きたての香りが長時間にわたって維持されやすいことから、調味液に対し、好ましくは0.5〜10%、より好ましくは0.5〜5%である。
【0016】
また、前記もち米粉の添加方法は、早炊米と調味液とともにパウチに収容された状態とすることができれば特に限定はなく、例えば、早炊米と、もち米粉と、調味液とを別々にパウチに入れる方法、あるいは、もち米粉と調味液とを予め混合した後、当該混合液と早炊米とをパウチに入れる方法等が挙げられる。これらの中でも、本願発明では、得られた味付き米飯において、味付き米飯特有の炊きたての香りが維持される効果が得られやすいことから、パウチに入れる前に予めもち米粉と調味液とを混合しておくことが好ましく、特に、パウチに入れる前に予めもち米粉と調味液との混合液を品温70〜100℃に加熱しておくことがより好ましい。
【0017】
調味液としては、調理する味付き米飯の種類により適宜調製したものであればよい。使用する調味料としては、例えば、和風だし、洋風だし等のだし、醤油、みりん、食塩、砂糖、味噌、食酢、香辛料等が挙げられる。中でも、本発明においては、醤油を含有した調味液を用いると、味付き米飯の香りを強くすることができ、その結果、炊飯後も長時間にわたって味付き米飯特有の炊きたての香りが維持されやすく好ましい。
【0018】
また、調味液には澱粉や各種ガム類等の増粘材を添加しておくことが好ましい。増粘材を添加しておくことにより、前記もち米粉成分を調味液中に均一に分散させることができ、味付き米飯特有の炊きたての香りが維持される本発明の効果が得られやすい。
【0019】
また、調味液に添加しておく増粘材としては、米飯の風味・食感を損なわないために、馬鈴薯澱粉やトウモロコシ澱粉等の澱粉類、又はキサンタンガムやタマリンドガム等のガム類が好ましい。調味液への増粘材の添加量は、調味液に対して、好ましくは0.1〜4%、より好ましくは0.5〜4%である。
【0020】
前記調味液の添加量は、早炊き米に対し、好ましくは30〜150%、より好ましくは50〜120%である。30%未満とすると製した米飯に芯が硬く残ってしまう。また150%を越えると早炊米が吸水し過ぎてべたついた食感となる。
【0021】
前記調味液には、着色料、その他添加物を目的に応じ適宜添加してもよい。また、前記調味液は、野菜類、畜肉類、魚介類、卵類等の具材を含有してもよい。例えば、五目おこわや山菜おこわの場合は、醤油、みりんを主体として調製した調味液に、具材として、人参、ごぼう、竹の子、鶏肉、しいたけ、油揚げ、ぜんまい等を用いることができる。
【0022】
本発明で使用するパウチとしては、耐熱性のパウチであればよく、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等の耐熱性の合成樹脂パウチが挙げられる。
【0023】
本発明のパウチ入り米加工食品の製造方法は、上述した早炊米、もち米粉及び調味液をパウチに収容し、減圧包装する。減圧包装は、減圧状態でパウチを密封することができればよく、減圧包装の具体的な工程は、上述した早炊米、もち米粉及び調味液をパウチに収容した後に、例えば、いわゆる真空包装機を用いて減圧下で密封して減圧包装する工程である。減圧の程度(真空度)としては、好ましくは40〜70mmHg、より好ましくは45〜65mmHgである。これは、真空度が高すぎると、調味液が沸騰してふきこぼれる場合があり、真空度が低すぎると、パウチ入り米加工食品を加熱して製造した味付き米飯において、味付き米飯特有の炊きたての香りが維持される効果が得られ難いからである。
【0024】
以上のようにして得られた本発明のパウチ入り米加工食品は、好ましくはチルド品や冷凍品として保管すると長期保管が可能となり、必要に応じて、スチームコンベクションオーブン等で加熱するだけで簡便に味付き米飯を製造することができる。
【0025】
次に、上述した本発明のパウチ入り米加工食品を用いた味付き米飯の製造方法について説明する。
【0026】
本発明の味付き米飯は、上述したパウチ入り米加工食品に加熱処理を施すことを特徴とする。加熱処理は、スチームコンベクションオーブン、スチーマー、湯槽等の加熱設備で米が炊飯されて喫食可能な状態となるように行えばよく、具体的には、中心品温が好ましくは80〜100℃の状態で3〜50分間、より好ましくは5〜30分間である。このように加熱することにより、調味料や炊飯米に由来する味付き米飯特有の炊きたての香りが長時間にわたって維持される味付き米飯を製造することができる。
【0027】
以下、本発明について、実施例、比較例、並びに試験例に基づき具体的に説明する。なお、本発明はこれらに限定するものではない。
【実施例】
【0028】
[実施例1]
(1)早炊米の製造方法
精米済みの粳米を水に約2時間浸漬した後、水切りする。これを、連続スチーマーに供給し、約120℃の水蒸気を吹き込んで約7分間加熱を行った。連続式スチーマーから排出された早炊米を真空冷却機で急速冷却し、品温を30℃以下にした後、ポリエチレン製の袋に1kgずつ充填密封し、加圧加熱殺菌機を用いて102℃で30分間の殺菌を行った。包装体から取り出した早炊米は、含水率は40%、澱粉のα化度は約93%であった。
【0029】
(2)パウチ入り米加工食品の製造
下記配合割合でパウチ入り米加工食品を製造した。つまり、まず、下記配合割合で醤油、上白糖、グアーガム、清水を混合することにより調味液を製造した。次に、加熱釜に、調味液100部、もち米粉3部の割合で投入し、撹拌混合しながら品温90℃まで加熱した後冷却した。次に、前記もち米粉を混合した調味液と(1)で製した早炊米の合計203gをポリエチレン製の耐熱性パウチに充填し、50mmHg真空度で減圧包装をして密封しパウチ入り米加工食品を製造した。もち米粉の添加量は調味液に対し3%、調味液の添加量は、早炊き米に対し100%であった。
【0030】
<調味液の配合割合>
醤油 15%
上白糖 10%
グアーガム 1%
清水 残余
合計 100%
【0031】
<パウチ入り米加工食品の配合割合>
早炊米 100部
生もち米粉 3部
調味液 100部
合計 203部
【0032】
(3)味付き米飯の製造
(2)で得られたパウチ入り米加工食品をスチームコンベクションオーブンで加熱処理を施すことにより味付き米飯を製造した。加熱処理条件は、中心品温が80〜90℃の状態で20分間であった。得られた味付き米飯をパウチから取り出して、蓋付きの成型容器に入れ、40分間室内に静置した後に喫食したところ、甘いおこわの香りが充分に感じられ大変好ましいものであった。
【0033】
[比較例1]
実施例1(2)において、もち米粉を配合しなかった他は、同様な方法でパウチ入り米加工食品を製造した。次に、実施例1(3)と同様にして味付き米飯を製造した。得られた味付き米飯をパウチから取り出して、蓋付きの成型容器に入れ、40分間室内に静置した後に喫食したところ、甘いおこわの香りがあまり感じられず好ましくなかった。
【0034】
[比較例2]
実施例1(2)において、調味液と早炊米をパウチに充填包装する際に、減圧包装をしなかった他は、同様な方法でパウチ入り米加工食品を製造した。次に、実施例1(3)と同様にして味付き米飯を製造した。得られた味付き米飯をパウチから取り出して、蓋付きの成型容器に入れ、40分間室内に静置した後に喫食したところ、甘いおこわの香りがあまり感じられず好ましくなかった。
【0035】
[実施例2]
下記配合割合でパウチ入り米加工食品を製造した。つまり、まず、下記配合割合でチキンエキス、醤油、食塩、上白糖、キサンタンガム、清水を混合することにより調味液を製造した。次に、加熱釜に、調味液100部、もち米粉0.5部の割合で投入し、撹拌混合しながら品温90℃まで加熱した後冷却した。次に、前記もち米粉を混合した調味液と早炊米(実施例1(1)と同じ)の合計253.75gをポリエチレン製の耐熱性パウチに充填し、60mmHg真空度で減圧包装をして密封しパウチ入り米加工食品を製造した。もち米粉の添加量は調味液に対し0.5%、調味液の添加量は、早炊き米に対し120%であった。
【0036】
<調味液の配合割合>
チキンエキス 15%
醤油 10%
食塩 1%
上白糖 2%
キサンタンガム 1%
清水 残余
合計 100%
【0037】
<パウチ入り米加工食品の配合割合>
早炊き米 100部
生もち米粉 0.75部
調味液 120部
合計 250.75部
【0038】
次に、得られたパウチ入り米加工食品をスチームコンベクションオーブンで加熱処理を施すことにより味付き米飯を製造した。加熱処理条件は、中心品温が80〜90℃の状態で20分間であった。得られた味付き米飯をパウチから取り出して、蓋付きの成型容器に入れ、30分間室内に静置した後に喫食したところ、おこわの香ばしい醤油の香りが充分に感じられ、大変好ましいものであった。
【0039】
[実施例3]
下記配合割合でパウチ入り米加工食品を製造した。つまり、まず、下記配合割合でアズキ、アズキの煮汁、馬鈴薯澱粉、清水を混合することにより調味液を製造した。次に、加熱釜に、調味液100部、もち米粉5部の割合で投入し、撹拌混合しながら品温90℃まで加熱した後冷却した。次に、前記もち米粉を混合した調味液と早炊米(実施例1(1)と同じ)の合計153.5gをポリエチレン製の耐熱性パウチに充填し、50mmHg真空度で減圧包装をして密封しパウチ入り米加工食品を製造した。もち米粉の添加量は調味液に対し5%、調味液の添加量は、早炊き米に対し50%であった。
【0040】
<調味液の配合割合>
アズキ 15%
アズキの煮汁 70%
馬鈴薯澱粉 1%
清水 残余
合計 100%
【0041】
<パウチ入り米加工食品の配合割合>
早炊き米 100部
生もち米粉 2.5部
調味液 50部
合計 152.5部
【0042】
次に、得られたパウチ入り米加工食品をスチームコンベクションオーブンで加熱処理を施すことにより味付き米飯を製造した。加熱処理条件は、中心品温が85〜95℃の状態で15分間であった。得られた味付き米飯をパウチから取り出して、蓋付きの成型容器に入れ、40分間室内に静置した後に喫食したところ、甘い赤飯の香りが充分に感じられ大変好ましいものであった。








【特許請求の範囲】
【請求項1】
早炊米、もち米粉及び調味液をパウチに収容し、減圧包装することを特徴とするパウチ入り米加工食品の製造方法。
【請求項2】
前記もち米粉を調味液に対し0.5〜10%添加する請求項1記載のパウチ入り米加工食品の製造方法。
【請求項3】
前記調味液を早炊き米に対し30〜150%添加する請求項1又は2記載のパウチ入り米加工食品の製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載のパウチ入り米加工食品に加熱処理を施すことを特徴とする味付き米飯の製造方法。