説明

パクリタキセルおよびアルブミンのナノ粒子を作製する方法

【課題】抗腫瘍特性を有する、パクリタキセルとアルブミンとのナノ粒子を作製する方法を提供すること。
【解決手段】粉末状パクリタキセルをクロロホルムと共にアルブミン水溶液に加えることによって得られる混合物を、高圧均質化処理にかける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗腫瘍組成物を得るのに使用しうる、パクリタキセル(paclitaxel)およびアルブミンのナノ粒子を作製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パクリタキセルは、重要な抗腫瘍作用を持つ、文献でよく知られた天然物質である。これは水溶性が低いため、ヒトへの投与が困難であり、この理由のために、その注射を可能にするための様々なシステムが開発されている。
【0003】
このシステムの1つにおいては、パクリタキセルを、生体適合性があり、かつパクリタキセルと結合して、それと共に、公知の超音波処理、高圧均質化、およびミクロ流動化技術によって、注射可能なエマルジョンを形成する能力の高いヒト血清アルブミン(HSA)と組み合わせる(Allemann等、Eur.J.Pharm.Biopharm.、39(5)、173〜191頁、1993年)。
【0004】
これらの成分をベースにし、上記超音波処理および高圧均質化の技術を用いて、米国企業のVivoRx Pharmaceuticals Inc.は、パクリタキセルとHSAを含む製剤CAPXOL(登録商標)を開発した。
【0005】
米国特許第5,439,686号、米国特許第5,498,421号、米国特許第5,560,933号およびこれに対応するWO94/18954において、VivoRxは、超音波処理技術を用いて調製され、平均粒子サイズ(MPS)が10ミクロン未満の粒子の、パクリタキセルとHSAの微細粒子を、特許請求をしている。これらの特許に記載の調製方法は、工業的規模で使用することはできず、さらに、こうして得られた微細粒子のMPSは大きすぎて、患者に投与するのには適さず使用できない。
【0006】
前記VivoRxは、このことをよく承知しており、次に米国特許第5,916,596号、米国特許第6,096,331号と、WO98/14174およびWO99/00113において、MPS<0.2ミクロンの凍結乾燥粉末を無菌の水性0.9%NaCl溶液で復元(reconstitute)して得た、パクリタキセルおよびHSAの無菌のナノエマルジョンについて記述し、特許請求した。この引用した特許に記載のように、高圧均質化を用いて得られたこれらのナノエマルジョンは、高い安定性を有すると記述されている。ここで、「安定性」という用語は、MPSが経時的に一定であること、およびナノ粒子の沈殿が起きないことの両者を意味する(米国特許第6,096,331号、実施例11)。
【0007】
上記VivoRxの特許(米国特許第5,916,596号の実施例1、5、および6参照)の教示によると、先ずパクリタキセルの溶液およびHSAを含む水性溶液を別々に調製し、次いで、この両相を混ぜ合わせ、得られた混合物を9000〜40000psiの高圧で室温(0℃〜+40℃)で均質化処理にかける。
【0008】
溶媒を蒸発させ、無菌のフィルター(0.22ミクロン)でろ過した後、この混合物を−20℃から−80℃に冷凍し、最後に+20℃から+35℃の温度に加熱することによって冷凍乾燥して、抗腫瘍特性を有する注射用製剤を調製するのに使用し得る粉末を得る。
【0009】
したがって、(一方はパクリタキセルを含み、他方はHSAを含む)2つの別々の相を調製して、次いでそれを高圧均質化する前に混ぜ合わせる必要がある。このため、少なくとも2個の別々の反応器の使用と、2つの別々の溶液のそれぞれ適切な混合を伴う調製とを、すべて無菌条件下で実施する必要があり、高いプラントコスト、混合作業を完了させるための長い時間、および(均質化処理の最後の)ロータベーパー(rotavapor)による溶媒蒸発、それに続く無菌フィルターによるろ過を伴い、結果として総収率が低い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第5,439,686号
【特許文献2】米国特許第5,498,421号
【特許文献3】米国特許第5,560,933号
【特許文献4】国際公開第94/18954号
【特許文献5】米国特許第5,916,596号
【特許文献6】米国特許第6,096,331号
【特許文献7】国際公開第98/14174号
【特許文献8】国際公開第99/00113号
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Allemann等、Eur.J.Pharm.Biopharm.、39(5)、173〜191頁、1993年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本発明の主な目的は、均質化処理にかけるための、パクリタキセルおよびHSAを含む液体混合物を形成するのに単一の反応器を使用することでよく、また公知技術より短時間かつ低コストで完了させることができる、パクリタキセルおよびHSAのナノ粒子の無菌の凍結乾燥粉末を作製する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記ならびにその他の目的は、パクリタキセルおよびアルブミンを含む水性混合物を、0℃〜40℃の温度で9000〜40000psiの高圧での均質化処理にかけてナノエマルジョンを調製し、該ナノエマルジョンを−20℃〜−80℃で凍結し、最後に+20℃から+35℃の温度に加熱することによって凍結乾燥する方法において、前記水性混合物は、無菌条件において、前記アルブミンを無菌の水に濃度2%〜3%(w/v)になるように溶解し、次いで前記アルブミン溶液にクロロホルム2%〜4%(v/v)を加え、さらに無菌の粉末状パクリタキセルを、溶液中に存在するアルブミンの重量に対して5.4重量%〜20.0重量%の量加えることによって得られたものであることを特徴とする方法によって達成することができる。液体混合物に加えられる無菌の粉末状パクリタキセルの量は、好ましくはアルブミンに対して5.6重量%〜19.4重量%である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本プロセス中で、パクリタキセルを無菌の粉末状で使用すると、プラント自体およびプロセスが、公知技術と比較して大幅に簡易化され、均質化処理の前に様々な成分の混合を完了させるのに要する時間がかなり短縮されるだけでなく、最終的な収量が改善され、また所望の無菌の凍結乾燥粉末を得るために順守すべき条件が簡素化されることが、重要な注目点である。
【0015】
上述のように操作することによって、パクリタキセルおよびHSAのナノ粒子の混合によって形成された粉末が得られるが、それは、前述の先行特許に記載の、より複雑で手間と費用のかかる方法によって得られるものとまったく同様または同一のものである。
【0016】
これらの混合物を、Avestinホモジナイザーで、米国特許第5,916,596号で推奨されている圧力範囲内で処理した場合、pH=6.7のナノエマルジョンが得られる。これは前記特許中に記載のロータベーパー中で蒸発させた場合、MPSが約0.2ミクロン(蒸発後のMPSの増加が>0.02ミクロン)のナノエマルジョンをもたらすが、これは注射用の生理的溶液製剤中で安定性が劣り(MPSが約0.05ミクロン増加し、約12時間で沈降の傾向)、かつこれを滅菌するための0.22ミクロンフィルターでのろ過が困難であり、このフィルターは容易に目詰まりし、パクリタキセルの収率は非常に低い値(30%以下まで)に減少する。
【0017】
上記に定義した本発明の方法、および先行特許による方法の両方の方法によって調製した生成物は、米国特許第5,916,596号および米国特許第6,096,331号に記載のとおりに凍結乾燥をし、復元した場合、その安定性(米国特許第6,096,331号の実施例11の教示により評価した)は、許容されるものではあるが、決して24時間は超えなかった。
【0018】
驚くべきことには、少なくとも1種の生体適合性の酸を、(粉末状パクリタキセルをこれに加える前の)HSAを含む液体混合物に、粉末状ナノ粒子の復元された注射用水性混合物のpHを5.4〜5.8(好ましくは、5.5〜5.7)にするのに十分な量加えると、凍結乾燥され、復元された注射形態の混合物の安定性は、かなり向上して24時間を超すことが分かった。
【0019】
前述の酸の添加も本発明の一部を形成する。
【0020】
好ましくは、前記酸は、HCl、クエン酸、リン酸、酢酸、生体適合性の有機酸および無機酸からなる群から選択されるが、クエン酸が最も好ましい。
【0021】
本発明の特徴を明らかにするために、いくつかの非限定的な実施例を以下に記載する。そのいくつかは、生理的なpHの液体混合物を用い、またいくつかは酸性化して、前記の酸を使用した結果の違いを強調するものである。
【実施例】
【0022】
実施例1
pH6.7の製剤の調製
FDA仕様(pH=6.9±0.5)に従った注射可能な水性の20%(w/v)HSA溶液を、無菌の脱塩水で3%(w/v)に希釈する。
【0023】
前記溶液41.4mlを、強力に攪拌しながら無菌のクロロホルム1.25ml、および無菌の粉末状パクリタキセル(力価>99%)73.6mg(溶液中のアルブミンに対して5.9重量%)と混合し、次いで、この混合物を高圧ホモジナイザー(適当に滅菌した)中で、ナノエマルジョン(MPSが約0.2ミクロン)が得られるまで処理し、これを真空下で、蒸発させて溶媒を除去し、冷凍し、無菌条件下で48時間凍結乾燥する。
【0024】
得られたパクリタキセル4.60%(w/w)を含む粉末を、パクリタキセルの濃度が2mg/mlになるように、0.9%NaCl水溶液で復元する。得られた製剤は、MPSが0.486ミクロン、pH=6.7であり、安定性が<12時間である。
【0025】
得られた生成物は、米国特許第5,916,596号の実施例1で使用された方法によって調製されたものと同じ特性を有していた。
【0026】
実施例2
pH6.7の製剤の調製
FDA仕様(pH=6.9±0.5)に従った注射可能な水性の25%(w/v)HSA溶液を、無菌の脱塩水で2%(w/v)に希釈する。
【0027】
前記溶液49.0mlを、無菌のクロロホルム1.0mlおよび無菌の粉末状パクリタキセル(力価>99%)72.5mg(アルブミンに対して7.4%)と混合し、次いで、この混合物を高圧ホモジナイザー(適当に滅菌した)中で、ナノエマルジョン(MPSが約0.2ミクロン)が得られるまで処理し、これを真空下で蒸発させて溶媒を除去し、無菌フィルター(0.2ミクロン)でろ過し、冷凍し、無菌条件下で48時間凍結乾燥する。
【0028】
得られたパクリタキセル0.60%(w/w)を含む粉末を、パクリタキセルの濃度が2mg/mlになるように、0.9%NaCl水溶液で復元する。得られた製剤は、MPSが0.25ミクロン、pH=6.7であり、安定性が<12時間である。
【0029】
実施例3
pH6.7の製剤の調製
FDA仕様(pH=6.9±0.5)に従った注射可能な水性の20%(w/v)HSA溶液を、無菌の脱塩水で3%(w/v)に希釈する。
【0030】
前記溶液46.7mlを、無菌のCHCl1.40mlおよび無菌の粉末状パクリタキセル(力価>99%)108.5mg(アルブミンに対して7.7%)と混合し、次いで、この混合物を高圧ホモジナイザー(適当に滅菌した)中で、ナノエマルジョン(MPSが約0.2ミクロン)が得られるまで処理し、これを真空下で蒸発させて溶媒を除去し、無菌フィルター(0.2ミクロン)でろ過し、冷凍し、無菌条件下で48時間凍結乾燥する。
【0031】
得られたパクリタキセル0.77%(w/w)を含む粉末を、パクリタキセルの濃度が2mg/mlになるように、0.9%NaCl水溶液で復元する。得られた製剤は、MPSが0.12ミクロン、pH=6.7であり、安定性が<12時間である。
【0032】
既に最初の説明の部分で述べたように、ろ過によりパクリタキセルのかなりの損失が生じた(凍結乾燥した粉末はパクリタキセルを、実施例2の5.2%の代わりに、0.55%含む)。これによりMPSが<0.2ミクロンの製剤が可能になった。
【0033】
実施例4
pH6.7の製剤の調製
FDA仕様(pH=6.9±0.5)に従った注射可能な水性の25%(w/v)HSA溶液を、無菌の脱塩水で3%(w/v)に希釈する。
【0034】
前記溶液29.1mlを、無菌のCHCL0.90mlおよび無菌の粉末状パクリタキセル(力価>99%)67.0mg(アルブミンに対して7.7%)と混合し、次いで、この混合物を高圧ホモジナイザー(適当に滅菌した)中で、ナノエマルジョン(MPSが約0.2ミクロン)が得られるまで処理し、これを真空下で蒸発させて溶媒を除去し、無菌フィルター(0.2ミクロン)でろ過し、冷凍し、無菌条件下で48時間凍結乾燥する。
【0035】
得られたパクリタキセル0.70%(w/w)を含む粉末を、パクリタキセルの濃度が1.5mg/mlになるように、0.9%NaCl水溶液で復元する。得られた製剤は、MPSが0.25ミクロン、pH=6.7であり、安定性が<12時間である。
【0036】
得られた生成物は、米国特許第5,916,596号の実施例5で使用された方法で調製されたものと同じ特性を有していた。
【0037】
実施例5
pH6.7の製剤の調製
FDA仕様(pH=6.9±0.5)に従った注射可能な水性の20%(w/v)HSA溶液を、無菌の脱塩水で2.5%(w/v)に希釈し、クロロホルム(1%v/v)で前もって飽和させた。
【0038】
前記溶液48.5mlを、無菌のCHCL1.0mlおよび無菌の粉末状パクリタキセル(力価>99%)75mg(アルブミンに対して6.2%)と混合し、次いで、この混合物を高圧ホモジナイザー(適当に滅菌した)中で、ナノエマルジョン(MPSが約0.2ミクロン)が得られるまで処理し、これを真空下で蒸発させて溶媒を除去し、無菌フィルター(0.2ミクロン)でろ過し、冷凍し、無菌条件下で48時間凍結乾燥する。
【0039】
得られたパクリタキセル0.70%(w/w)を含む粉末を、パクリタキセルの濃度が2.2mg/mlになるように、0.9%NaCl水溶液で復元する。得られた製剤は、MPSが0.18ミクロン、pH=6.7であり、安定性が<12時間である。
【0040】
この場合においても再び、実施例3の最後に述べた観察結果が当てはまる。
【0041】
実施例6
pH5.6の製剤の調製
FDA仕様(pH=6.9±0.5)に従った注射可能な水性の25%(w/v)HSA溶液を、無菌の脱塩水で3%(w/v)に希釈し、このpHを、アルブミン中に存在するいくらかの塩基性基と塩を生成する1M HClで5.6に補正する。
【0042】
前もって滅菌した、前記溶液57mlを、無菌のクロロホルム1.40mlおよび無菌の粉末状パクリタキセル(力価>99%)108mg(アルブミンに対して6.3%)と少なくとも30分間激しく攪拌しながら混合する。
【0043】
この混合物をホモジナイザー(適当に滅菌した)中で高圧(9000〜40000psi)で、ナノエマルジョン(MPS<0.2ミクロン)が得られるまで処理し、これを−80℃に急速に冷凍し、温度を+30℃にまで上げながら、無菌条件下で55時間凍結乾燥させる。
【0044】
得られたパクリタキセル4.83%(w/w)および水4%(w/w)を含む粉末を、パクリタキセルの濃度が2mg/mlになるように、0.9%NaCl水溶液で復元する。得られた製剤は、MPSが0.175ミクロン、pH=5.6であり、安定性が>24時間である。
【0045】
塩酸の代わりにリン酸を用いることによって同等の結果が得られる。
【0046】
実施例7
pH5.4の製剤の調製
FDA仕様に従った注射可能な水性の25%(w/v)HSA溶液を、無菌の脱塩水で3%(w/v)に希釈し、このpHを、アルブミン中に存在するいくらかの塩基性基と塩を生成するクエン酸で5.4に補正する。
【0047】
前もって滅菌した、前記溶液50mlを、無菌のクロロホルム1.23mlおよび無菌の粉末状パクリタキセル(力価>99%)98mg(アルブミンに対して6.5%)と少なくとも40分間激しく攪拌しながら混合する。
【0048】
この混合物をホモジナイザー(適当に滅菌した)中で高圧(9000〜40000psi)で、ナノエマルジョン(MPS<0.2ミクロン)が得られるまで処理し、これを−30℃に急速に冷凍し、温度を+35℃にまで上げながら、無菌条件下で57時間凍結乾燥させる。
【0049】
得られたパクリタキセル4.80%(w/w)と水3.8%(w/w)を含む粉末を、パクリタキセルの濃度が2mg/mlになるように、0.9%NaCl水溶液で復元する。得られた製剤は、MPSが0.19ミクロン、pH=5.4であり、安定性が>24時間である。
【0050】
クエン酸の代わりに、酢酸を用いることによって同等の結果が得られる。
【0051】
実施例8
pH5.5の製剤の調製
FDA仕様に従った注射可能な水性の25%(w/v)HSA溶液を、無菌の脱塩水で3%(w/v)に希釈し、このpHを、アルブミン中に存在するいくらかの塩基性基と塩を生成する無菌のクエン酸で5.5に補正する。
【0052】
前記溶液37mlを、無菌のクロロホルム0.91mlおよび無菌の粉末状パクリタキセル(力価>99%)71mg(アルブミンに対して6.4%)と少なくとも40分間激しく攪拌しながら混合し、その後、この混合物を5〜8℃に冷却する。
【0053】
この混合物をホモジナイザー(適当に滅菌した)中で高圧(9000〜40000psi)で、ナノエマルジョン(MPS<0.2ミクロン)が得られるまで処理し、これを−80℃に急速に冷凍し、温度を+30℃にまで上げながら、無菌条件下で58時間凍結乾燥させる。
【0054】
得られたパクリタキセル4.70%(w/w)および水4.5%(w/w)を含む粉末を、パクリタキセルの濃度が2mg/mlになるように、0.9%NaCl水溶液で復元する。得られた製剤は、MPSが0.185ミクロン、pH=5.5であり、安定性が>24時間である。
【0055】
実施例9
pH5.5の製剤の調製
FDA仕様(pH=6.9±0.5)に従った注射可能な水性の20%(w/v)HSA溶液を、無菌の脱塩水で3%(w/v)に希釈し、このpHを、アルブミン中に存在するいくらかの塩基性基と塩を生成するクエン酸で5.5に補正する。
【0056】
前記溶液110mlを、無菌のCHCl4.10mlおよび無菌の粉末状パクリタキセル(力価>99%)639mg(アルブミンに対して19.4%)と混合し、次いで、この混合物を高圧ホモジナイザー(適当に滅菌した)中で、ナノエマルジョン(MPS約0.2ミクロン)が得られるまで処理し、これを無菌フィルター(0.2ミクロン)でろ過し、真空下で蒸発させて溶媒を除去し、冷凍し、無菌条件下で48時間凍結乾燥する。
【0057】
得られたパクリタキセル10.8%(w/w)を含む粉末を、パクリタキセルの濃度が2mg/mlになるように、0.9%NaCl水溶液で復元する。得られた製剤は、MPSが0.15ミクロンであり、安定性が>24時間である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パクリタキセルおよびアルブミンを含む0℃〜40℃の温度の水性混合物を、9000〜40000psiの高圧での均質化処理にかけてナノエマルジョンを調製し、該ナノエマルジョンを−20℃〜−80℃で凍結し、最後に+20℃から+35℃の温度に加熱することによって凍結乾燥する方法において、前記水性混合物は、無菌条件において、前記アルブミン2%〜3%(w/v)を無菌の水に溶解し、次いで前記アルブミン溶液に無菌クロロホルム2%〜4%(v/v)を加え、さらに無菌の粉末状パクリタキセルを、溶液中に存在するアルブミンに対して5.4重量%〜20.0重量%の量加えることによって得られたものであることを特徴とする、パクリタキセルおよびヒト血清アルブミンのナノ粒子からなる無菌の凍結乾燥粉末を作製する方法。
【請求項2】
前記アルブミン溶液に加えられる、無菌の粉末状パクリタキセルの量が、アルブミンに対して5.6重量%〜19.4重量%であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アルブミン溶液に、パクリタキセルを加える前に、少なくとも1種の生体適合性の酸を、粉末状ナノ粒子の復元した注射用水性混合物のpHを5.4〜5.8にするのに十分な量加えることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記酸の量が、前記復元した水性溶液のpHを5.5〜5.7にする量であることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記酸が、HCl、クエン酸、リン酸、酢酸、生体適合性の有機酸および無機酸からなる群から選択されることを特徴とする請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
前記酸が、クエン酸であることを特徴とする請求項5に記載の方法。

【公開番号】特開2011−132253(P2011−132253A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−43799(P2011−43799)
【出願日】平成23年3月1日(2011.3.1)
【分割の表示】特願2003−70028(P2003−70028)の分割
【原出願日】平成15年3月14日(2003.3.14)
【出願人】(509210601)アブラキシス・バイオサイエンス・エル・エル・シー (1)
【Fターム(参考)】