説明

パケットロス率推定装置、パケットロス率推定方法、パケットロス率推定プログラム、及び、通信システム

【課題】パケットロス率を高い精度にて推定することが可能なパケットロス率推定装置を提供すること。
【解決手段】パケットロス率推定装置100は、単位時間あたりに予め設定された数のパケットを送信する送信装置から、当該送信装置と通信網を介して通信可能に接続された受信装置が単位時間あたりに受信したパケットの数であるパケット到着率を取得するパケット到着率取得部101と、上記取得されたパケット到着率に基づいて、パケット到着率を確率変数とする第1の確率分布を取得する第1の確率分布取得部102と、上記取得された第1の確率分布に基づいて、パケット到着率が所定の閾値パケット到着率以下となる確率を、パケットが上記通信網において消失する確率であるパケットロス率として推定するパケットロス率推定部103と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パケットロス率を推定するパケットロス率推定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通信網(例えば、IP(Internet Protocol)網)を介して、映像配信及び音声通話等を提供するサービスが存在している。ところで、IP網は、ベストエフォート型の通信網であり、通信品質を保証していない。そのため、ベストエフォート型の通信網を介して、比較的高い通信品質にて、映像配信又は音声通話等のサービスを提供するためには、通信網においてパケットが消失するパケットロスの発生を抑制する必要がある。
【0003】
例えば、パケットロスの発生を抑制するため、映像配信又は音声通話等のサービスを提供する通信システムは、パケットを受信する受信装置から、例えば、RTCP(RTP Control Protocol)に従った通信状態情報を受信する。例えば、通信状態情報は、単位時間あたりに受信装置が受信するパケットの数であるパケット到着率、又は、送信装置がパケットを送信した時点から受信装置が当該パケットを受信した時点までの時間である遅延時間等を表す情報を含む。
【0004】
そして、通信システムは、受信した通信状態情報に基づいてパケットロス率を推定し、推定したパケットロス率に基づいて、送信装置が送信するコンテンツデータが有するビットレートを調整したり、誤り訂正処理を行うためのパケットの冗長度を決定したり、する。
【0005】
パケットロス率を推定するパケットロス率推定装置として、特許文献1乃至特許文献3に記載のパケットロス率推定装置は、通信状態情報を取得し、取得された通信状態情報に直接に基づいて、パケットロス率を算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−244695号公報
【特許文献2】特開2006−033396号公報
【特許文献3】特開2006−128997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、送信装置から受信装置へ単位時間あたりに送信されるパケットの数(パケット数)が比較的少ない場合、取得された通信状態情報の統計的なばらつきが、パケットロス率の推定に及ぼす影響が過大となる。
【0008】
例えば、実際のパケットロス率が5%である場合において、送信装置が受信装置へ単位時間あたりに10個のパケットを送信している場合を想定する。この場合、通信網においてパケットが消失するか否かが二項分布により表されることを仮定すると、パケットロスが発生しない確率が約60%となる。
【0009】
従って、このような場合において、取得された通信状態情報に直接に基づいて、パケットロス率を算出するようにパケットロス率推定装置が構成されていると、パケットロス率を高い精度にて推定することができない。また、これに対処するため、送信装置から受信装置へ大量のパケットを送信することも考えられる。しかしながら、この場合も、大量のパケットによって通信網の状態が変化するため、パケットロス率を高い精度にて推定するができない。
【0010】
このため、本発明の目的は、上述した課題である「パケットロス率を高い精度にて推定するができない場合が生じること」を解決することが可能なパケットロス率推定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる目的を達成するため本発明の一形態であるパケットロス率推定装置は、
単位時間あたりに予め設定された数のパケットを送信する送信装置から、当該送信装置と通信網を介して通信可能に接続された受信装置が単位時間あたりに受信したパケットの数であるパケット到着率を取得するパケット到着率取得手段と、
上記取得されたパケット到着率に基づいて、パケット到着率を確率変数とする第1の確率分布を取得する第1の確率分布取得手段と、
上記取得された第1の確率分布に基づいて、パケット到着率が所定の閾値パケット到着率以下となる確率を、パケットが上記通信網において消失する確率であるパケットロス率として推定するパケットロス率推定手段と、
を備える。
【0012】
また、本発明の他の形態であるパケットロス率推定方法は、
単位時間あたりに予め設定された数のパケットを送信する送信装置から、当該送信装置と通信網を介して通信可能に接続された受信装置が単位時間あたりに受信したパケットの数であるパケット到着率を取得し、
上記取得されたパケット到着率に基づいて、パケット到着率を確率変数とする第1の確率分布を取得し、
上記取得された第1の確率分布に基づいて、パケット到着率が所定の閾値パケット到着率以下となる確率を、パケットが上記通信網において消失する確率であるパケットロス率として推定する方法である。
【0013】
また、本発明の他の形態であるパケットロス率推定プログラムは、
情報処理装置に、
単位時間あたりに予め設定された数のパケットを送信する送信装置から、当該送信装置と通信網を介して通信可能に接続された受信装置が単位時間あたりに受信したパケットの数であるパケット到着率を取得するパケット到着率取得手段と、
上記取得されたパケット到着率に基づいて、パケット到着率を確率変数とする第1の確率分布を取得する第1の確率分布取得手段と、
上記取得された第1の確率分布に基づいて、パケット到着率が所定の閾値パケット到着率以下となる確率を、パケットが上記通信網において消失する確率であるパケットロス率として推定するパケットロス率推定手段と、
を実現させるためのプログラムである。
【0014】
また、本発明の他の形態である通信システムは、
単位時間あたりに予め設定された数のパケットを送信する送信装置と、当該送信装置と通信網を介して通信可能に接続され且つ当該送信装置から当該パケットを受信する受信装置と、を備えるとともに、
上記受信装置が単位時間あたりに上記送信装置から受信したパケットの数であるパケット到着率を取得するパケット到着率取得手段と、
上記取得されたパケット到着率に基づいて、パケット到着率を確率変数とする第1の確率分布を取得する第1の確率分布取得手段と、
上記取得された第1の確率分布に基づいて、パケット到着率が所定の閾値パケット到着率以下となる確率を、パケットが上記通信網において消失する確率であるパケットロス率として推定するパケットロス率推定手段と、
を備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、以上のように構成されることにより、パケットロス率を高い精度にて推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態に係る通信システムの概略構成を表す図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る受信装置の機能の概略を表すブロック図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る第2の確率分布(混合分布)を示したグラフである。
【図4】本発明の第1実施形態に係る受信装置のCPUが実行するパケットロス率推定プログラムを示したフローチャートである。
【図5】本発明の第2実施形態に係るVoIP端末の機能の概略を表すブロック図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る通信システムを模擬したシミュレーションモデルを概念的に示した説明図である。
【図7】図6に示したシミュレーションモデルにおけるパケットロス率を示したグラフである。
【図8】本発明の第3実施形態に係る配信サーバ装置の機能の概略を表すブロック図である。
【図9】本発明の第4実施形態に係るパケットロス率推定装置の機能の概略を表すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る、パケットロス率推定装置、パケットロス率推定方法、パケットロス率推定プログラム、及び、通信システム、の各実施形態について図1〜図9を参照しながら説明する。
【0018】
<第1実施形態>
(構成)
図1に示したように、第1実施形態に係る通信システム1は、送信装置としての通信装置10と、受信装置としての通信装置20と、を含む。送信装置10、及び、受信装置20は、通信網としてのIP(Internet Protocol)網を構成する通信回線NWを介して、互いに通信可能に接続されている。
【0019】
各通信装置(情報処理装置)10,20は、図示しない中央処理装置(CPU;Central Processing Unit)、及び、記憶装置(メモリ)を備える。各通信装置10,20は、記憶装置に記憶されているプログラムをCPUが実行することにより、後述する機能を実現するように構成されている。
【0020】
本例では、受信装置20は、パケットロス率推定装置を構成している。また、送信装置10は、単位時間あたりに予め設定された数のパケットを受信装置20へ送信する。
【0021】
(機能)
図2は、上記のように構成された受信装置20の機能を表すブロック図である。
受信装置20の機能は、パケットモニタ部(パケット到着率取得手段、遅延時間取得手段)21と、第1の確率分布取得部(第1の確率分布取得手段)22と、第2の確率分布取得部(第2の確率分布取得手段)23と、閾値遅延時間推定部(閾値遅延時間推定手段)24と、閾値パケット到着率取得部(閾値パケット到着率取得手段)25と、パケットロス率推定部(パケットロス率推定手段)26と、を含む。
【0022】
パケットモニタ部21は、送信装置10から送信されたパケットを受信する。パケットモニタ部21は、送信装置10から、単位時間あたりに受信したパケットの数であるパケット到着率を取得(本例では、測定)する。
【0023】
更に、パケットモニタ部21は、送信装置10がパケットを送信した時点から、受信装置20が当該パケットを受信した時点までの時間である遅延時間を取得する。本例では、パケットモニタ部21は、パケットを受信した時刻と、当該パケットに含まれる情報としての当該パケットが送信された時刻と、に基づいて遅延時間を取得する。
なお、本例では、パケット到着率と遅延時間とは、通信状態を表す通信状態情報を構成している。
【0024】
第1の確率分布取得部22は、パケットモニタ部21により取得されたパケット到着率に基づいて、パケット到着率を確率変数とする第1の確率分布を取得する。具体的には、第1の確率分布取得部22は、第1の確率分布を特定するためのパラメータを取得することにより当該第1の確率分布を取得する。
【0025】
本例では、第1の確率分布取得部22は、EM(Expectation Maximization)アルゴリズムに従って、第1の確率分布を特定するためのパラメータを推定(取得)する。なお、第1の確率分布取得部22は、他の最尤推定法を用いてパラメータを推定してもよい。また、本例では、第1の確率分布は、ポアソン分布である。従って、第1の確率分布取得部22は、パケット到着率の平均値を、第1の確率分布を特定するためのパラメーとして推定する。
なお、第1の確率分布は、冪乗則に従った確率分布である冪分布であってもよい。
【0026】
なお、第1の確率分布取得部22は、前回、推定されたパラメータにも基づいてパラメータを推定するように構成されていてもよい。この場合、第1の確率分布取得部22は、最初にパラメータを推定するとき、予め設定された値を用いるように構成されることが好適である。
【0027】
第2の確率分布取得部23は、パケットモニタ部21により取得された遅延時間に基づいて、遅延時間を確率変数とする第2の確率分布を取得する。具体的には、第2の確率分布取得部23は、第2の確率分布を特定するためのパラメータを取得することにより当該第2の確率分布を取得する。
【0028】
本例では、第2の確率分布取得部23は、第1の確率分布取得部22と同様に、EMアルゴリズムに従って、第2の確率分布を特定するためのパラメータを推定(取得)する。なお、第2の確率分布取得部23は、他の最尤推定法を用いてパラメータを推定してもよい。
【0029】
また、本例では、第2の確率分布は、図3、及び、数式1に示したように、複数(本例では、2つ)の確率分布の和により表される混合分布である。
【数1】

【0030】
数式1において、f(x)は、第2の確率分布である。xは、確率変数としての遅延時間である。Nは、第2の確率分布を構成する確率分布の数(即ち、本例では、N=2)である。g(x,θ)は、第2の確率分布を構成する確率分布である。θは、確率分布g(x,θ)を特定するためのパラメータである。πは、係数である。πは、数式2に示したように、和が1となるように設定される。
【数2】

【0031】
本例では、第2の確率分布は、ガンマ分布の重み付き線形和により表される。即ち、第2の確率分布は、各ガンマ分布に係数を乗じた確率分布の和により表される。
【0032】
閾値遅延時間推定部24は、第2の確率分布取得部23により取得された第2の確率分布に基づいて、通信網の状態が輻輳状態にある範囲における遅延時間の下限値である閾値遅延時間を推定する。即ち、閾値遅延時間は、通信網の状態が安定状態(即ち、パケットロスが発生しない状態)にある範囲と、通信網の状態が輻輳状態(即ち、パケットロスが発生する状態)にある範囲と、の境界における遅延時間である。
【0033】
ところで、第2の確率分布を構成する2つの確率分布のうちの、より大きい値を平均として有する確率分布は、状態が輻輳状態にある通信網に対応している。また、第2の確率分布を構成する2つの確率分布のうちの、より小さい値を平均として有する確率分布は、状態が安定状態にある通信網に対応している。従って、2つの確率分布の交点における遅延時間は、通信網の状態が輻輳状態にある範囲における遅延時間の下限値に十分に近い値となる可能性が十分に高い。
【0034】
そこで、本例では、閾値遅延時間推定部24は、第2の確率分布を構成する2つの確率分布の交点における遅延時間T1を閾値遅延時間として推定する。ここで、2つの確率分布の交点における遅延時間は、当該遅延時間における確率の値が、2つの確率分布間で一致する遅延時間である。
【0035】
なお、閾値遅延時間推定部24は、第2の確率分布を構成する複数の確率分布に含まれる確率分布の、平均及び分散のうちの少なくとも1つに基づいて、閾値遅延時間を推定するように構成されていてもよい。例えば、閾値遅延時間推定部24は、第2の確率分布を構成する2つの確率分布のうちの、より小さい値を平均として有する確率分布g(x,θ)の平均Taに当該確率分布の分散の平方根(即ち、標準偏差)Dを加えた値T2を閾値遅延時間として推定する。
【0036】
なお、第2の確率分布(混合分布)を構成する確率分布の数が3以上である場合、閾値遅延時間推定部24は、パケットロスが発生した数を計測し、計測した数に基づいて閾値遅延時間を推定するように構成されていてもよい。
【0037】
閾値パケット到着率取得部25は、閾値遅延時間推定部24により推定された閾値遅延時間に対応する閾値パケット到着率を取得する。本例では、閾値パケット到着率取得部25は、遅延時間と、パケット到着率と、の対応関係を、回帰分析を行うことにより予め取得する。そして、閾値パケット到着率取得部25は、取得された対応関係と、閾値遅延時間推定部24により推定された閾値遅延時間と、に基づいて閾値パケット到着率を取得する。
【0038】
パケットロス率推定部26は、第1の確率分布取得部22により取得された第1の確率分布に基づいて、パケット到着率が、閾値パケット到着率取得部25により取得された閾値パケット到着率以下となる確率をパケットロス率として推定する。パケットロス率は、パケットが通信網において消失する確率である。
【0039】
(作動)
次に、上記のように構成された受信装置20の作動について図4を参照しながら説明する。図4は、受信装置20のCPUが実行するパケットロス率推定プログラムを示したフローチャートである。
【0040】
いま、送信装置10が、単位時間あたりに予め設定された数のパケットを受信装置20へ送信している状態を想定する。この状態において、受信装置20のパケットモニタ部21は、送信装置10からパケットを受信する。そして、パケットモニタ部21は、受信したパケットに基づいて、パケット到着率と遅延時間とを含む通信状態情報を取得する(ステップS101)。
【0041】
次いで、第1の確率分布取得部22は、ステップS101にて取得された通信状態情報に含まれるパケット到着率に基づいて、第1の確率分布を特定するためのパラメータを取得することにより当該第1の確率分布を取得する(ステップS102)。
【0042】
そして、第2の確率分布取得部23は、ステップS101にて取得された通信状態情報に含まれる遅延時間に基づいて、第2の確率分布を特定するためのパラメータを取得することにより当該第2の確率分布を取得する(ステップS103)。
【0043】
次いで、閾値遅延時間推定部24は、ステップS103にて取得された第2の確率分布に基づいて閾値遅延時間を推定する(ステップS104)。本例では、閾値遅延時間推定部24は、第2の確率分布を構成する2つの確率分布の交点における遅延時間を閾値遅延時間として推定する。
【0044】
そして、閾値パケット到着率取得部25は、ステップS104にて推定された閾値遅延時間に対応する閾値パケット到着率を、予め取得された、遅延時間とパケット到着率との対応関係に基づいて取得する(ステップS105)。
【0045】
次いで、パケットロス率推定部26は、ステップS102にて取得された第1の確率分布に基づいて、パケット到着率が、ステップS105にて取得された閾値パケット到着率以下となる確率をパケットロス率として推定する(ステップS106)。
【0046】
以上、説明したように、本発明の第1実施形態に係るパケットロス率推定装置(受信装置)20によれば、送信装置10から受信装置20へ単位時間あたりに送信されるパケットの数(パケット数)が比較的少ない場合であっても、取得されたパケット到着率の統計的なばらつきが、パケットロス率の推定に及ぼす影響を低減することができる。従って、取得されたパケット到着率に直接に基づいてパケットロス率を算出する場合よりも、高い精度にてパケットロス率を推定することができる。
【0047】
更に、第1実施形態に係るパケットロス率推定装置20は、取得された遅延時間に基づいて、遅延時間を確率変数とする第2の確率分布を取得し、取得された第2の確率分布に基づいて、閾値遅延時間を推定し、推定された閾値遅延時間に対応する閾値パケット到着率を取得する。
【0048】
ところで、遅延時間は、通信網の状態が輻輳状態にあるか否かと強い相関を有する。即ち、遅延時間が相当長いことは、通信網の状態が輻輳状態にあることに対応している。また、通信網の状態が輻輳状態にある場合、送信装置から送信されたパケットは、通信網において消失する(即ち、パケットロスが発生する)可能性が比較的高い。
【0049】
従って、第1実施形態に係るパケットロス率推定装置20によれば、閾値パケット到着率を適切に設定することができる。この結果、より一層高い精度にてパケットロス率を推定することができる。
【0050】
更に、第1実施形態に係るパケットロス率推定装置20によれば、取得された遅延時間の統計的なばらつきが、閾値遅延時間の推定に及ぼす影響を低減することができる。従って、取得された遅延時間に直接に基づいて閾値遅延時間を推定する場合よりも、高い精度にて閾値遅延時間を推定することができる。
【0051】
加えて、第1実施形態に係るパケットロス率推定装置20は、第2の確率分布を構成する複数の確率分布に含まれる2つの確率分布の交点における遅延時間を閾値遅延時間として推定する。
【0052】
ところで、第2の確率分布は、複数の確率分布の和により、よく表される。更に、各確率分布は、互いに異なる通信網の状態に対応していることが多い。従って、より大きい値を平均として有する確率分布は、状態が輻輳状態にある通信網に対応している。同様に、より小さい値を平均として有する確率分布は、状態が安定状態にある通信網に対応している。
【0053】
従って、2つの確率分布の交点における遅延時間は、通信網の状態が輻輳状態にある範囲における遅延時間の下限値に十分に近い値となる可能性が十分に高い。従って、第1実施形態に係るパケットロス率推定装置20によれば、より一層高い精度にて閾値遅延時間を推定することができる。
【0054】
なお、第1実施形態においては、パケットロス率推定装置は、受信装置20により構成されていたが、送信装置10により構成されていてもよく、送信装置10及び受信装置20の両方により構成されていてもよい。また、通信システム1は、送信装置10及び受信装置20以外の装置としてパケットロス率推定装置を備えていてもよい。また、送信装置10及び受信装置20のそれぞれが、ともに、パケットロス率推定装置の機能を有していてもよい。
【0055】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係る通信システムについて説明する。第2実施形態に係る通信システムは、上記第1実施形態に係る通信システムに対して、推定されたパケットロス率に基づいて、誤り訂正処理にて用いられる冗長度を決定する点において相違している。従って、以下、かかる相違点を中心として説明する。
【0056】
第2実施形態に係る通信装置10,20は、VoIP(Voice over IP)端末である。VoIP端末(送信装置)10、及び、VoIP端末(受信装置)20は、UDP(User Datagram Protocol)に従って、音声を表す情報を含むパケット(音声パケット)を送受信する。これにより、通信システム1は、電話サービスを実現する。
【0057】
また、通信網には、図1において図示されない、他の多くの通信装置が接続されている。これらの通信装置が行う通信によって、通信網の状態(通信品質等)は、時間の経過に伴って変化する。
【0058】
そこで、VoIP端末20は、電話サービスにおける音声の途切れ等が発生しないように、パケットを受信する際、通信網において消失したパケットを復元するための誤り訂正処理を行う。このため、VoIP端末10は、所定の冗長度にて冗長化されたパケット(冗長符号化されたパケット)を送信する。本例では、VoIP端末10は、パケットロス率を推定し、推定されたパケットロス率に基づいて冗長度を決定する。即ち、VoIP端末10は、パケットロス率推定装置を構成している。
【0059】
なお、VoIP端末10も、VoIP端末20と同様に、パケットを受信する際、誤り訂正処理を行うように構成されていてもよい。この場合、VoIP端末20は、パケットロス率を推定し、推定されたパケットロス率に基づいて冗長度を決定し、決定された冗長度にて冗長化されたパケットを送信するように構成される。なお、VoIP端末20は、VoIP端末10により推定されたパケットロス率に基づいて冗長度を決定するように構成されていてもよい。
【0060】
(機能)
図5に示したように、VoIP端末10の機能は、第1実施形態に係る受信装置20の機能に加えて、冗長度決定部(冗長度決定手段)27と、符号化処理部28と、パケット送信部29と、を含む。
【0061】
冗長度決定部27は、パケットロス率推定部26により推定されたパケットロス率に基づいて冗長度を決定する。本例では、冗長度決定部27は、推定されたパケットロス率が大きくなるほど大きくなる値を冗長度として決定する。
【0062】
符号化処理部28は、冗長度決定部27により決定された冗長度を有するように、データを符号化する。パケット送信部29は、符号化処理部28により符号化されたデータからパケットを生成し、生成されたパケットを送信する。
【0063】
VoIP端末20は、VoIP端末10からパケットを受信し、受信したパケットに基づいて、通信網において消失したパケットを復元するための誤り訂正処理を実行する。
【0064】
ところで、通信網を流れるパケットの遅延時間は、通信網においてパケットが伝送される際に経由するルータにおける転送処理の待ち時間、及び、伝送時間の和である。伝送時間の、時間の経過に伴う変動量は、比較的小さい。一方、転送処理の待ち時間は、クロストラフィック(他の通信装置間の通信量)が時間の経過に伴って比較的大きく変化するので、時間の経過に伴って比較的大きく変化する。
【0065】
即ち、あるルータに流入するクロストラフィックが少ない場合、当該ルータにおける待ち時間は短くなり、一方、当該ルータに流入するクロストラフィックが多い場合、当該ルータにおける待ち時間は長くなる。更に、ルータのバッファ長(ルータの記憶容量)を超えるトラフィックがルータに流入すると、パケットロスが発生する。
【0066】
このような、ルータにおける待ち時間(即ち、ルータの混雑状況)と、パケットの遅延時間と、の関係に基づく、遅延時間の確率分布は、上述した混合分布(第2の確率分布)によりよく表される。従って、VoIP端末10は、高い精度にてパケットロス率を推定することができる。
【0067】
なお、多くの通信網において、時間の経過に伴って、混雑するルータが変化した場合、その変化に応じて、混合分布を構成する確率分布を特定するためのパラメータが変化するため、2つの確率分布により構成される混合分布に基づいて、高い精度にてパケットロス率を推定することができる。
【0068】
以上、説明したように、本発明の第2実施形態に係る通信システムによれば、第1実施形態に係る通信システムと同様の作用及び効果を奏することができる。
更に、第2実施形態に係る通信システムによれば、通信網において消失したパケットをVoIP端末(受信装置)20が確実に復元することができるとともに、冗長度を過大な値に設定することを防止することができる。
【0069】
次に、本発明の第2実施形態に係る通信システムの効果を説明するため、図6に示したシミュレーションモデルについて説明する。
【0070】
図6におけるVoIP端末V1が第2実施形態に係るVoIP端末10に対応し、図6におけるVoIP端末V2が第2実施形態に係るVoIP端末20に対応している。また、VoIP端末V1と、VoIP端末V2と、は、ルータR1及びルータR2を介して接続されている。更に、TCP(Transmission Control Protocol)端末C1〜C6も、ルータR1及びルータR2を介して接続されている。即ち、TCP端末C1〜C6は、クロストラフィックを生成する。
【0071】
このシミュレーションモデルにおいては、VoIP端末V1、及び、VoIP端末V2が互いに音声パケットを送受信する。また、TCP端末C1〜C6は、所定の時間帯において、クロストラフィックを発生させる。
【0072】
このシミュレーションモデルに本発明を適用した場合におけるパケットロス率を図7に示す。図7に示した実線L1は、ルータR1又はルータR2において測定されたパケットロス率を示す。図7に示した点線L2は、VoIP端末V2により推定されたパケットロス率を示す。図7に示した一点鎖線L3は、VoIP端末V2において測定されたパケットロス率を示す。
【0073】
時刻5から時刻10においては、VoIP端末V2において測定されたパケットロス率L3は、0である。一方、VoIP端末V2により推定されたパケットロス率L2は、ルータR1又はルータR2において測定されたパケットロス率L1に比較的近い値を有する。即ち、VoIP端末V2は、高い精度にてパケットロス率を推定している、と言うことができる。
【0074】
また、時刻11から時刻16においては、VoIP端末V2により推定されたパケットロス率L2、及び、VoIP端末V2において測定されたパケットロス率L3、は、ルータR1又はルータR2において測定されたパケットロス率L1よりも大きい値を有する。この理由は、パケットロス率の定義が「パケットロスが発生した回数/単位時間あたりに受信されたパケットの数」であり、ルータR1及びルータR2が受信するパケットの数と、VoIP端末V2が受信するパケットの数が異なるためである。
【0075】
ところで、VoIP端末V2により推定されたパケットロス率L2が、ルータR1又はルータR2において測定されたパケットロス率L1よりも大きい値を有している場合、冗長度は、十分に大きな値に設定される。従って、音声の途切れが発生することを確実に防止することができる。
【0076】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態に係る通信システムについて説明する。第3実施形態に係る通信システムは、上記第1実施形態に係る通信システムに対して、推定されたパケットロス率に基づいて、送信されるコンテンツデータが有するビットレートを決定する点において相違している。従って、以下、かかる相違点を中心として説明する。
【0077】
第3実施形態に係る通信装置10は、配信サーバ装置である。また、通信装置20は、映像端末である。なお、映像端末20は、携帯電話端末、PHS(Personal Handyphone System)、PDA(Personal Data Assistance、Personal Digital Assistant)、カーナビゲーション端末、又は、ゲーム端末等であってもよい。
【0078】
配信サーバ装置10は、コンテンツ(本例では、映像)を表すコンテンツデータを予め記憶している。配信サーバ装置10は、HTTP(HyperText Transfer Protocol)に従って、コンテンツデータを映像端末20へ送信する。映像端末20は、配信サーバ装置10からコンテンツデータを受信し、受信したコンテンツデータが表すコンテンツを出力(再生)する(本例では、ディスプレイに表示する)。
【0079】
また、通信網には、図1において図示されない、他の多くの通信装置が接続されている。これらの通信装置が行う通信によって、通信網の状態(通信品質等)は、時間の経過に伴って変化する。
【0080】
そこで、配信サーバ装置10は、映像端末20によるコンテンツの再生が停止したり、再生中のコンテンツ(映像)が乱れたり、しないように、送信するコンテンツデータが有するビットレートを調整する。このため、映像端末20は、パケットロス率を推定し、推定されたパケットロス率を配信サーバ装置10へ送信する。更に、配信サーバ装置10は、受信したパケットロス率に基づいてビットレートを決定し、決定されたビットレートを有するコンテンツデータを送信する。即ち、本例では、映像端末20は、パケットロス率推定装置を構成している。
【0081】
なお、映像端末20は、パケットロス率を推定し、推定されたパケットロス率に基づいてビットレートを決定し、決定したビットレートを配信サーバ装置10へ送信するように構成されていてもよい。この場合、配信サーバ装置10は、受信したビットレートを有するコンテンツデータを送信するように構成される。
【0082】
(機能)
映像端末20の機能は、第1実施形態に係る受信装置20の機能と同じ機能を有する。更に、映像端末20は、推定されたパケットロス率を、予め設定された送信周期が経過する毎に、配信サーバ装置10へ送信する機能を有する。
【0083】
また、配信サーバ装置10の機能は、図8に示したように、ビットレート決定部(ビットレート決定手段)31と、パケット送信部32と、を含む。
【0084】
ビットレート決定部31は、映像端末20からパケットロス率を受信する。ビットレート決定部31は、受信されたパケットロス率に基づいてビットレートを決定する。本例では、ビットレート決定部31は、受信されたパケットロス率が大きくなるほど小さくなる値をビットレートとして決定する。
【0085】
ところで、配信サーバ装置10は、HTTPに従って、コンテンツデータを送信する。従って、パケットロス率は、HTTPよりも下位側のレイヤにて動作するTCPのスループット性能に影響を与える。例えば、TCPの制御アルゴリズムの一つであるTCP Renoにおいては、スループット性能は、数式3により算出される。
【数3】

【0086】
ここで、MSSは、最大セグメントサイズであり、RTTは、遅延時間である。また、PLRは、パケットロス率であり、TPは、スループット性能である。
従って、本例では、ビットレート決定部31は、受信されたパケットロス率と、数式3と、に基づいてスループット性能を算出し、算出されたスループット性能に基づいて、ビットレートを決定する。
【0087】
パケット送信部32は、ビットレート決定部31により決定されたビットレートを有するコンテンツデータを取得し、取得されたコンテンツデータからパケットを生成する。そして、パケット送信部32は、生成されたパケット(即ち、コンテンツデータの一部を含むパケット)を映像端末20へ送信する。
【0088】
以上、説明したように、本発明の第3実施形態に係る通信システムによれば、第1実施形態に係る通信システムと同様の作用及び効果を奏することができる。
更に、第3実施形態に係る通信システムによれば、パケットロス率が過大となることを防止することができる範囲において、送信されるコンテンツデータのビットレートを高めることができる。この結果、ユーザ体感品質を高めることができる。
【0089】
<第4実施形態>
次に、本発明の第4実施形態に係るパケットロス率推定装置について図9を参照しながら説明する。
第4実施形態に係るパケットロス率推定装置100は、
単位時間あたりに予め設定された数のパケットを送信する送信装置から、当該送信装置と通信網を介して通信可能に接続された受信装置が単位時間あたりに受信したパケットの数であるパケット到着率を取得するパケット到着率取得部(パケット到着率取得手段)101と、
上記取得されたパケット到着率に基づいて、パケット到着率を確率変数とする第1の確率分布を取得する第1の確率分布取得部(第1の確率分布取得手段)102と、
上記取得された第1の確率分布に基づいて、パケット到着率が所定の閾値パケット到着率以下となる確率を、パケットが上記通信網において消失する確率であるパケットロス率として推定するパケットロス率推定部(パケットロス率推定手段)103と、
を備える。
【0090】
これによれば、送信装置から受信装置へ単位時間あたりに送信されるパケットの数(パケット数)が比較的少ない場合であっても、取得されたパケット到着率の統計的なばらつきが、パケットロス率の推定に及ぼす影響を低減することができる。従って、取得されたパケット到着率に直接に基づいてパケットロス率を算出する場合よりも、高い精度にてパケットロス率を推定することができる。
【0091】
以上、上記実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成及び詳細に、本願発明の範囲内において当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0092】
なお、上記各実施形態において通信システムの各機能は、CPUがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現されていたが、回路等のハードウェアにより実現されていてもよい。
【0093】
また、上記各実施形態においてプログラムは、記憶装置に記憶されていたが、コンピュータが読み取り可能な記録媒体に記憶されていてもよい。例えば、記録媒体は、フレキシブルディスク、光ディスク、光磁気ディスク、及び、半導体メモリ等の可搬性を有する媒体である。
【0094】
また、上記実施形態の他の変形例として、上述した実施形態及び変形例の任意の組み合わせが採用されてもよい。
【0095】
<付記>
上記実施形態の一部又は全部は、以下の付記のように記載され得るが、以下には限られない。
【0096】
(付記1)
単位時間あたりに予め設定された数のパケットを送信する送信装置から、当該送信装置と通信網を介して通信可能に接続された受信装置が単位時間あたりに受信したパケットの数であるパケット到着率を取得するパケット到着率取得手段と、
前記取得されたパケット到着率に基づいて、パケット到着率を確率変数とする第1の確率分布を取得する第1の確率分布取得手段と、
前記取得された第1の確率分布に基づいて、パケット到着率が所定の閾値パケット到着率以下となる確率を、パケットが前記通信網において消失する確率であるパケットロス率として推定するパケットロス率推定手段と、
を備えるパケットロス率推定装置。
【0097】
これによれば、送信装置から受信装置へ単位時間あたりに送信されるパケットの数(パケット数)が比較的少ない場合であっても、取得されたパケット到着率の統計的なばらつきが、パケットロス率の推定に及ぼす影響を低減することができる。従って、取得されたパケット到着率に直接に基づいてパケットロス率を算出する場合よりも、高い精度にてパケットロス率を推定することができる。
【0098】
(付記2)
付記1に記載のパケットロス率推定装置であって、
前記送信装置が前記パケットを送信した時点から、前記受信装置が当該パケットを受信した時点までの時間である遅延時間を取得する遅延時間取得手段と、
前記取得された遅延時間に基づいて、遅延時間を確率変数とする第2の確率分布を取得する第2の確率分布取得手段と、
前記取得された第2の確率分布に基づいて、前記通信網の状態が輻輳状態にある範囲における前記遅延時間の下限値である閾値遅延時間を推定する閾値遅延時間推定手段と、
前記推定された閾値遅延時間に対応する前記閾値パケット到着率を取得する閾値パケット到着率取得手段と、
を備えるパケットロス率推定装置。
【0099】
ところで、遅延時間は、通信網の状態が輻輳状態にあるか否かと強い相関を有する。即ち、遅延時間が相当長いことは、通信網の状態が輻輳状態にあることに対応している。また、通信網の状態が輻輳状態にある場合、送信装置から送信されたパケットは、通信網において消失する(即ち、パケットロスが発生する)可能性が比較的高い。従って、上記のようにパケットロス率推定装置を構成することにより、閾値パケット到着率を適切に設定することができる。この結果、より一層高い精度にてパケットロス率を推定することができる。
【0100】
更に、上記のように構成されたパケットロス率推定装置によれば、取得された遅延時間の統計的なばらつきが、閾値遅延時間の推定に及ぼす影響を低減することができる。従って、取得された遅延時間に直接に基づいて閾値遅延時間を推定する場合よりも、高い精度にて閾値遅延時間を推定することができる。
【0101】
(付記3)
付記2に記載のパケットロス率推定装置であって、
前記第2の確率分布は、複数の確率分布の和により表される混合分布であり、
前記閾値遅延時間推定手段は、前記複数の確率分布に含まれる2つの確率分布の交点における遅延時間を前記閾値遅延時間として推定するように構成されたパケットロス率推定装置。
【0102】
ところで、第2の確率分布は、複数の確率分布の和により、よく表される。更に、各確率分布は、互いに異なる通信網の状態に対応していることが多い。従って、より大きい値を平均として有する確率分布は、状態が輻輳状態(即ち、パケットロスが発生する状態)にある通信網に対応している。同様に、より小さい値を平均として有する確率分布は、状態が安定状態(即ち、パケットロスが発生しない状態)にある通信網に対応している。
【0103】
従って、2つの確率分布の交点における遅延時間は、通信網の状態が輻輳状態にある範囲における遅延時間の下限値に十分に近い値となる可能性が十分に高い。従って、上記のようにパケットロス率推定装置を構成することにより、より一層高い精度にて閾値遅延時間を推定することができる。
【0104】
(付記4)
付記2に記載のパケットロス率推定装置であって、
前記第2の確率分布は、複数の確率分布の和により表される混合分布であり、
前記閾値遅延時間推定手段は、前記複数の確率分布に含まれる確率分布の、平均及び分散のうちの少なくとも1つに基づいて、前記閾値遅延時間を推定するように構成されたパケットロス率推定装置。
【0105】
(付記5)
付記2乃至付記4のいずれか一項に記載のパケットロス率推定装置であって、
前記閾値パケット到着率取得手段は、前記遅延時間と、前記パケット到着率と、の対応関係を、回帰分析を行うことにより予め取得するとともに、当該取得された対応関係と、前記閾値遅延時間と、に基づいて前記閾値パケット到着率を取得するように構成されたパケットロス率推定装置。
【0106】
(付記6)
付記1乃至付記5のいずれか一項に記載のパケットロス率推定装置であって、
前記第1の確率分布は、ポアソン分布、又は、冪乗則に従った確率分布である冪分布であるパケットロス率推定装置。
【0107】
(付記7)
付記1乃至付記6のいずれか一項に記載のパケットロス率推定装置であって、
前記第1の確率分布取得手段は、前記第1の確率分布を特定するためのパラメータを取得することにより当該第1の確率分布を取得するように構成されたパケットロス率推定装置。
【0108】
(付記8)
単位時間あたりに予め設定された数のパケットを送信する送信装置から、当該送信装置と通信網を介して通信可能に接続された受信装置が単位時間あたりに受信したパケットの数であるパケット到着率を取得し、
前記取得されたパケット到着率に基づいて、パケット到着率を確率変数とする第1の確率分布を取得し、
前記取得された第1の確率分布に基づいて、パケット到着率が所定の閾値パケット到着率以下となる確率を、パケットが前記通信網において消失する確率であるパケットロス率として推定する、パケットロス率推定方法。
【0109】
(付記9)
付記8に記載のパケットロス率推定方法であって、
前記送信装置が前記パケットを送信した時点から、前記受信装置が当該パケットを受信した時点までの時間である遅延時間を取得し、
前記取得された遅延時間に基づいて、遅延時間を確率変数とする第2の確率分布を取得し、
前記取得された第2の確率分布に基づいて、前記通信網の状態が輻輳状態にある範囲における前記遅延時間の下限値である閾値遅延時間を推定する閾値遅延時間推定手段と、
前記推定された閾値遅延時間に対応する前記閾値パケット到着率を取得する、パケットロス率推定方法。
【0110】
(付記10)
情報処理装置に、
単位時間あたりに予め設定された数のパケットを送信する送信装置から、当該送信装置と通信網を介して通信可能に接続された受信装置が単位時間あたりに受信したパケットの数であるパケット到着率を取得するパケット到着率取得手段と、
前記取得されたパケット到着率に基づいて、パケット到着率を確率変数とする第1の確率分布を取得する第1の確率分布取得手段と、
前記取得された第1の確率分布に基づいて、パケット到着率が所定の閾値パケット到着率以下となる確率を、パケットが前記通信網において消失する確率であるパケットロス率として推定するパケットロス率推定手段と、
を実現させるためのパケットロス率推定プログラム。
【0111】
(付記11)
付記10に記載のパケットロス率推定プログラムであって、
前記情報処理装置に、更に、
前記送信装置が前記パケットを送信した時点から、前記受信装置が当該パケットを受信した時点までの時間である遅延時間を取得する遅延時間取得手段と、
前記取得された遅延時間に基づいて、遅延時間を確率変数とする第2の確率分布を取得する第2の確率分布取得手段と、
前記取得された第2の確率分布に基づいて、前記通信網の状態が輻輳状態にある範囲における前記遅延時間の下限値である閾値遅延時間を推定する閾値遅延時間推定手段と、
前記推定された閾値遅延時間に対応する前記閾値パケット到着率を取得する閾値パケット到着率取得手段と、
を実現させるためのパケットロス率推定プログラム。
【0112】
(付記12)
単位時間あたりに予め設定された数のパケットを送信する送信装置と、当該送信装置と通信網を介して通信可能に接続され且つ当該送信装置から当該パケットを受信する受信装置と、を備えるとともに、
前記受信装置が単位時間あたりに前記送信装置から受信したパケットの数であるパケット到着率を取得するパケット到着率取得手段と、
前記取得されたパケット到着率に基づいて、パケット到着率を確率変数とする第1の確率分布を取得する第1の確率分布取得手段と、
前記取得された第1の確率分布に基づいて、パケット到着率が所定の閾値パケット到着率以下となる確率を、パケットが前記通信網において消失する確率であるパケットロス率として推定するパケットロス率推定手段と、
を備える通信システム。
【0113】
(付記13)
付記12に記載の通信システムであって、
前記送信装置が前記パケットを送信した時点から、前記受信装置が当該パケットを受信した時点までの時間である遅延時間を取得する遅延時間取得手段と、
前記取得された遅延時間に基づいて、遅延時間を確率変数とする第2の確率分布を取得する第2の確率分布取得手段と、
前記取得された第2の確率分布に基づいて、前記通信網の状態が輻輳状態にある範囲における前記遅延時間の下限値である閾値遅延時間を推定する閾値遅延時間推定手段と、
前記推定された閾値遅延時間に対応する前記閾値パケット到着率を取得する閾値パケット到着率取得手段と、
を備える通信システム。
【0114】
(付記14)
付記12又は付記13に記載の通信システムであって、
前記送信装置は、前記通信網において消失したパケットを復元するための誤り訂正処理を前記受信装置に行わせるために、所定の冗長度にて冗長化された前記パケットを送信するように構成され、
前記推定されたパケットロス率に基づいて前記冗長度を決定する冗長度決定手段を備える通信システム。
【0115】
これによれば、通信網において消失したパケットを受信装置が確実に復元することができるとともに、冗長度を過大な値に設定することを防止することができる。
【0116】
(付記15)
付記12乃至付記14のいずれか一項に記載の通信システムであって、
前記送信装置は、所定のビットレートを有するコンテンツデータの一部を前記パケットとして送信するように構成され、
前記推定されたパケットロス率に基づいて前記ビットレートを決定するビットレート決定手段を備える通信システム。
【0117】
これによれば、パケットロス率が過大となることを防止することができる範囲において、送信されるコンテンツデータのビットレートを高めることができる。この結果、ユーザ体感品質を高めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明は、パケットロス率を推定するパケットロス率推定装置、及び、IP網を介して通信を行う通信システム等に適用可能である。
【符号の説明】
【0119】
1 通信システム
10 通信装置(送信装置、VoIP端末、配信サーバ装置)
20 通信装置(受信装置、VoIP端末、映像端末)
21 パケットモニタ部
22 第1の確率分布取得部
23 第2の確率分布取得部
24 閾値遅延時間推定部
25 閾値パケット到着率取得部
26 パケットロス率推定部
27 冗長度決定部
28 符号化処理部
29 パケット送信部
31 ビットレート決定部
32 パケット送信部
100 パケットロス率推定装置
101 パケット到着率取得部
102 第1の確率分布取得部
103 パケットロス率推定部
NW 通信回線


【特許請求の範囲】
【請求項1】
単位時間あたりに予め設定された数のパケットを送信する送信装置から、当該送信装置と通信網を介して通信可能に接続された受信装置が単位時間あたりに受信したパケットの数であるパケット到着率を取得するパケット到着率取得手段と、
前記取得されたパケット到着率に基づいて、パケット到着率を確率変数とする第1の確率分布を取得する第1の確率分布取得手段と、
前記取得された第1の確率分布に基づいて、パケット到着率が所定の閾値パケット到着率以下となる確率を、パケットが前記通信網において消失する確率であるパケットロス率として推定するパケットロス率推定手段と、
を備えるパケットロス率推定装置。
【請求項2】
請求項1に記載のパケットロス率推定装置であって、
前記送信装置が前記パケットを送信した時点から、前記受信装置が当該パケットを受信した時点までの時間である遅延時間を取得する遅延時間取得手段と、
前記取得された遅延時間に基づいて、遅延時間を確率変数とする第2の確率分布を取得する第2の確率分布取得手段と、
前記取得された第2の確率分布に基づいて、前記通信網の状態が輻輳状態にある範囲における前記遅延時間の下限値である閾値遅延時間を推定する閾値遅延時間推定手段と、
前記推定された閾値遅延時間に対応する前記閾値パケット到着率を取得する閾値パケット到着率取得手段と、
を備えるパケットロス率推定装置。
【請求項3】
請求項2に記載のパケットロス率推定装置であって、
前記第2の確率分布は、複数の確率分布の和により表される混合分布であり、
前記閾値遅延時間推定手段は、前記複数の確率分布に含まれる2つの確率分布の交点における遅延時間を前記閾値遅延時間として推定するように構成されたパケットロス率推定装置。
【請求項4】
請求項2に記載のパケットロス率推定装置であって、
前記第2の確率分布は、複数の確率分布の和により表される混合分布であり、
前記閾値遅延時間推定手段は、前記複数の確率分布に含まれる確率分布の、平均及び分散のうちの少なくとも1つに基づいて、前記閾値遅延時間を推定するように構成されたパケットロス率推定装置。
【請求項5】
請求項2乃至請求項4のいずれか一項に記載のパケットロス率推定装置であって、
前記閾値パケット到着率取得手段は、前記遅延時間と、前記パケット到着率と、の対応関係を、回帰分析を行うことにより予め取得するとともに、当該取得された対応関係と、前記閾値遅延時間と、に基づいて前記閾値パケット到着率を取得するように構成されたパケットロス率推定装置。
【請求項6】
単位時間あたりに予め設定された数のパケットを送信する送信装置から、当該送信装置と通信網を介して通信可能に接続された受信装置が単位時間あたりに受信したパケットの数であるパケット到着率を取得し、
前記取得されたパケット到着率に基づいて、パケット到着率を確率変数とする第1の確率分布を取得し、
前記取得された第1の確率分布に基づいて、パケット到着率が所定の閾値パケット到着率以下となる確率を、パケットが前記通信網において消失する確率であるパケットロス率として推定する、パケットロス率推定方法。
【請求項7】
単位時間あたりに予め設定された数のパケットを送信する送信装置と、当該送信装置と通信網を介して通信可能に接続され且つ当該送信装置から当該パケットを受信する受信装置と、を備えるとともに、
前記受信装置が単位時間あたりに前記送信装置から受信したパケットの数であるパケット到着率を取得するパケット到着率取得手段と、
前記取得されたパケット到着率に基づいて、パケット到着率を確率変数とする第1の確率分布を取得する第1の確率分布取得手段と、
前記取得された第1の確率分布に基づいて、パケット到着率が所定の閾値パケット到着率以下となる確率を、パケットが前記通信網において消失する確率であるパケットロス率として推定するパケットロス率推定手段と、
を備える通信システム。
【請求項8】
請求項7に記載の通信システムであって、
前記送信装置が前記パケットを送信した時点から、前記受信装置が当該パケットを受信した時点までの時間である遅延時間を取得する遅延時間取得手段と、
前記取得された遅延時間に基づいて、遅延時間を確率変数とする第2の確率分布を取得する第2の確率分布取得手段と、
前記取得された第2の確率分布に基づいて、前記通信網の状態が輻輳状態にある範囲における前記遅延時間の下限値である閾値遅延時間を推定する閾値遅延時間推定手段と、
前記推定された閾値遅延時間に対応する前記閾値パケット到着率を取得する閾値パケット到着率取得手段と、
を備える通信システム。
【請求項9】
請求項7又は請求項8に記載の通信システムであって、
前記送信装置は、前記通信網において消失したパケットを復元するための誤り訂正処理を前記受信装置に行わせるために、所定の冗長度にて冗長化された前記パケットを送信するように構成され、
前記推定されたパケットロス率に基づいて前記冗長度を決定する冗長度決定手段を備える通信システム。
【請求項10】
請求項7乃至請求項9のいずれか一項に記載の通信システムであって、
前記送信装置は、所定のビットレートを有するコンテンツデータの一部を前記パケットとして送信するように構成され、
前記推定されたパケットロス率に基づいて前記ビットレートを決定するビットレート決定手段を備える通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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