説明

パターン付フィルムの搬送方法

【課題】納入先等に搬送後、納入先にて高精細なパターニング加工や高精度な貼合が可能なパターン付フィルムの搬送方法を提供すること。
【解決手段】パターン形成時における樹脂フィルムの含水率を基準含水率とした場合に、パターン形成時に至る過程における樹脂フィルムの含水率が当該基準含水率よりも低い場合には、パターン形成後のパターン付フィルムの含水率を常に前記基準含水率よりも低く保持して搬送し、一方で、パターン形成時に至る過程における樹脂フィルムの含水率が当該基準含水率よりも高い場合には、パターン形成後のパターン付フィルムの含水率を常に前記基準含水率よりも高く保持して搬送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばカラーフィルタや配線パターンなどの各種用途に使用される、樹脂フィルム上に所定のパターンが形成されたパターン付フィルムの搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示素子の薄型軽量化および耐衝撃性の向上等が目指されており、カラーフィルタ、TFTアレイ等を構成する基材として、従来使用されてきたある程度の厚さを有する基材、例えばガラス基材の代わりに、可撓性を有する薄厚の基材、例えば樹脂フィルムを用いる試みがなされている。そして、これらの基材は段ボールなどの梱包材によって梱包された状態で搬送されるのが一般的である。
【0003】
このようなフィルム基材の搬送については、各種の提案がなされており、例えば、特許文献1には、搬送中のフィルムのキズやシワを防止するため粘着層と保護フィルムがラミネートされたロールフィルムについての開示がされている。また、特許文献2には、搬送中にカラーフィルタのキズが生じることを防止することを目的として、積層した基板の間にクッションシートを挿入した搬送方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−157592号公報
【特許文献2】特許第4494056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1、特許文献2に提案がされている方法で搬送等が行われた場合であっても、薄厚の樹脂フィルムが基材として用いられている場合は、搬送中に当該基材が極端な乾燥状態、または極端な湿潤状態に曝されてしまうことにより、フィルムの含水率に大きな変化が生じ、その結果、フィルムに寸法変化が生じてしまう。そうすると、当該フィルム上に形成されたパターンも同様に寸法にずれが生じ、納入先等に搬送後、納入先にて高精細なパターニング加工や高精度な貼合ができない問題が生じうる。
【0006】
現在、搬送時に生じる寸法変化に起因し、その後の工程で生じるうる種々の問題を考慮した搬送方法は研究されているが、これらの問題は未解決のままである。
【0007】
本発明はこのような状況に鑑みなされたものであり、納入先等に搬送後、納入先にて高精細なパターニング加工や高精度な貼合が可能なパターン付フィルムの搬送方法を提供することを主たる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明は、樹脂フィルム上にパターンを形成してなるパターン付フィルムの搬送方法であって、パターン形成時における樹脂フィルムの含水率を基準含水率とした場合に、パターン形成時に至る過程における樹脂フィルムの含水率が当該基準含水率よりも低い場合には、パターン形成後のパターン付フィルムの含水率を常に前記基準含水率よりも低く保持して搬送し、一方で、パターン形成時に至る過程における樹脂フィルムの含水率が当該基準含水率よりも高い場合には、パターン形成後のパターン付フィルムの含水率を常に前記基準含水率よりも高く保持して搬送する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の方法は、納入先等に搬送後、納入先にて高精細なパターニング加工や高精度な貼合が可能なパターン付フィルムの搬送方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の搬送方法を行った場合における、フィルムの含水率と時間との関係を示したグラフである。
【図2】本発明の第2の搬送方法を行った場合における、フィルムの含水率と時間との関係を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のパターン付フィルムの搬送方法について図面を用いて詳細に説明する。
【0012】
(第1の搬送方法)
図1は、本発明の第1の搬送方法を行った場合における、フィルムの含水率と時間との関係を示したグラフである。
【0013】
図1に示すように、本発明の第1の搬送方法にあっては、パターン形成時における樹脂フィルムの含水率を基準含水率Xとした場合に、パターン形成時に至る過程aにおける樹脂フィルムの含水率が当該基準含水率Xよりも低い場合には、パターン形成後、つまり搬送bにおけるパターン付フィルムの含水率を常に前記基準含水率Xよりも低く保持して搬送する点に特徴を有している。
【0014】
本願発明者は、フィルムの含水率とフィルムのおかれる環境との関係について鋭意研究し、例えば原材料となるフィルムの含水率が非常に低く、乾燥した状態の場合であって、当該原材料となるフィルムの含水率をある程度高くした状態でパターン形成した場合にあって、図1中の点線yのように、当該パターン形成時のフィルムの含水率Xよりも当該含水率を高くした状態で搬送をしてしまうと、搬入先において後工程を行うにあたり当該パターン付フィルムを乾燥などして含水率を下げようとしても、図中の符号hに示すように、もはやパターン形成時における含水率Xまで下がらない現象、いわばヒステリシスが生じることを見出し、本発明を完成させている。ここで、上記含水率Xを本発明は基準含水率としている。
【0015】
上記で説明したように、パターン付フィルムの原材料となる樹脂フィルムのほとんどは、製造された段階では常温常湿雰囲気における含水率よりも乾燥した状態であり、一方で、パターンが形成される環境は常温常湿雰囲気であることが多い。このような状況にあっては、通常の場合、樹脂フィルムは乾燥状態から徐々に水分を吸収して常温常湿雰囲気における定常的な含水率になることが多く、したがってこのような場合には、パターン形成時におけるフィルムの含水率Xを基準含水率とし、搬送中は常にフィルムの含水率を基準含水率Xよりも少なく、つまり若干の乾燥状態で搬送することにより、上記いわゆるヒステリシスが生じることを防止できる。そして、本発明の第1の搬送方法にあっては、前述の通り、搬送中におけるパターン付フィルムはパターン形成時に比べて若干の乾燥状態となるため、含水率の変化によりフィルム全体が縮み、これに起因してパターン自体の寸法にも変化が生じてしまうが、納入先において、パターン形成時の環境と同じ環境に所定時間曝すことにより、パターン形成時の含水率、つまり基準含水率に戻ることができるので、フィルムおよびパターンの寸法も元に戻ることとなる。よって、当該納入先においては、当該パターン付フィルムを用いて高精細なパターニング加工や高精度な貼合をすることが可能となる。
【0016】
(第2の搬送方法)
図2は、本発明の第2の搬送方法を行った場合における、フィルムの含水率と時間との関係を示したグラフである。
【0017】
図2に示すように、本発明の第2の搬送方法にあっては、パターン形成時における樹脂フィルムの含水率を基準含水率Xとした場合に、パターン形成時に至る過程aにおける樹脂フィルムの含水率が当該基準含水率Xよりも高い場合には、パターン形成後、つまり搬送bにおけるパターン付フィルムの含水率を常に前記基準含水率Xよりも高く保持して搬送する点に特徴を有している。
【0018】
図1を用いて説明した本発明の第1の搬送方法にあっては、パターン形成時における樹脂の含水率、つまり基準含水率Xよりも、パターン形成時に至る過程aにおける樹脂フィルムの含水率が低い場合であったが、この逆、つまり基準含水率Xよりも、パターン形成時に至る過程aにおける樹脂フィルムの含水率が高い場合であっても、搬送方法を間違えば、いわゆるヒステリシスが生じてしまうところ、図2に示すように、パターン形成時に至る過程aにおける樹脂フィルムの含水率が高い場合には、パターン形成後の搬送中にあっては、基準含水率Xよりも若干の湿潤状態で搬送することにより、上記いわゆるヒステリシスが生じることを防止できる。上記本発明の第1の搬送方法と同様、第2の搬送方法にあっても、搬送中におけるパターン付フィルムはパターン形成時に比べて若干の湿潤状態となるため、含水率の変化によりフィルム全体が伸び、これに起因してパターン自体の寸法にも変化が生じてしまうが、納入先において、パターン形成時の環境と同じ環境に所定時間曝すことにより、パターン形成時の含水率、つまり基準含水率に戻ることができるので、フィルムおよびパターンの寸法も元に戻ることとなる。よって、当該納入先においては、当該パターン付フィルムを用いて高精細なパターニング加工や高精度な貼合をすることが可能となる。
【0019】
このような本発明の搬送方法の対象となるパターン付フィルムとしては、樹脂フィルム上にパターンが形成されたものであればよく、パターン付フィルムについていかなる限定もされることはない。樹脂フィルムとしては、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルイミド(PEI)、セルローストリアセテート(CTA)、環状ポリオレフィン(COP)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリサルフォン(PSF)、ポリアミドイミド(PAI)、ノルボルネン系樹脂、アリルエステル樹脂等の合成樹脂からなるフィルム等を挙げることができる。
【0020】
この樹脂フィルムは、単一層からなる構成であっても良く、あるいは、複数の層が積層された構成を有するものであっても良い。
【0021】
また、樹脂フィルムの湿度膨張係数としては、2×10-5/%RH以下であることが好ましく、1×10-5/%RH以下であることがより好ましく、5×10-6/%RH以下であることがさらに好ましい。基材自体の湿度変化による寸法変化量は少なく、取り扱いが容易となるからである。
【0022】
また、樹脂フィルムの線膨張係数としては、2×10-5/℃以下であることが好ましく、1×10-5/℃以下であることがより好ましく、5×10-6/℃以下であることがさらに好ましい。前記湿度膨張係数と同様、温度変化による寸法変化量が少なく、取り扱いが容易だからである。
【0023】
樹脂フィルム上に形成されるパターンは任意のパターンであり、例えば、液晶表示装置用の画像表示素子に用いられる光学機能層や画像表示素子全体、より具体的には、カラーフィルタや各種配線パターン、さらにはハードコート層、アンチグレア層、アンチリフレクション層、偏光層などを挙げることができる。
【0024】
また、パターン付フィルムの形状についても特に限定することなく、所定の寸法を有した枚葉状であってもよく、またロール状であってもよい。
【0025】
上記第1の搬送方法および第2の搬送方法のいずれにおいても、搬送中のパターン付フィルムの含水率を管理する必要があるが、当該管理は含水率の上限または下限のいずれか一方のみを管理すれば足りるため、つまり、第1の搬送方法の場合、含水率が基準含水率Xを超えないように、その上限値を管理するのみで足り、一方で、第2の搬送方法の場合、含水率が基準含水率Xよりも低くならなないように、その下限値を管理するのみで足りるため、その管理手段は厳密である必要はなく、このような管理ができる手段であれば如何なる手段であっても採用可能である。
【0026】
具体的には、ある程度の防湿性能を有する、例えば、温度40℃、相対湿度90%における水蒸気透過度が1.0g/m2・24hr・MPa以下の防湿性能を有する梱包材を用い、これによりパターン付フィルムを密閉することで、搬送中の外部環境における水分の影響によってパターン付フィルムの含水量が大きく変動することを防止することができる。
【0027】
このような梱包材としては、水蒸気透過度が上記範囲内のガスバリア性フィルム等を使用することができる。ガスバリア性フィルムとしては、基材フィルムと無機酸化物層が積層されてなるもの等を挙げることができる。
【0028】
基材フィルムとしては、ポリ(メタ)アクリレート、ポリ(メタ)アリレート(PAR)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルサルホン(PES)、ポリカーボネート(PC)、環状ポリオレフィン共重合体であるポリノルボルネン、環状ポリオレフィン樹脂、ポリシクロヘキセン、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリシロキサン系、エチレン−四フッ化エチレン共重合体(ETFE)、三フッ化塩化エチレン(PFA)、四フッ化エチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(FEP)、フッ化ビニリデン(PVDF)、フッ化ビニル(PVF)等のフッ素系樹脂等を挙げることができる。
【0029】
無機酸化物層としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化硅素、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化ホウ素、酸化ハフニウム、酸化バリウム等の酸化物であり、特に、水蒸気透過度を容易に上記範囲内とすることができる生産性などを考慮すると、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化窒化珪素、酸化炭化珪素、二酸化珪素のいずれかが好ましい。無機酸化物層の形成方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、PVD法、プラズマアシストCVD法やイオンビームアシストCVD法などを適用できるが、好ましくは生産性の点からPVD法やイオンプレーティング法である。これらの方法は、基材フィルムや無機酸化物の成膜材料の種類、成膜のし易さ、工程効率等を考慮して選択すればよい。
【0030】
パターン付フィルムを、梱包材によって梱包する方法について特に限定はなく、例えば、袋状の梱包材を用い、パターン付フィルムを袋内部に挿入後、開口部を閉じることでパターン付フィルムを梱包材によって梱包することができる。
【0031】
また、梱包材によってパターン付フィルムを密閉する場合において、前記第1の搬送方法を実施する場合には、パターン付フィルムと一緒にシリカゲルなどの乾燥剤を梱包することにより、乾燥状態を保ち、基準含水率Xを超えることを防止してもよい。
【0032】
一方で、梱包材によってパターン付フィルムを密閉する場合において、前記第2の搬送方法を実施する場合には、パターン付フィルムと一緒に水を含んだ脱脂綿などを梱包することにより、湿潤状態を保ち、基準含水率Xを下回ることを防止してもよい。
【実施例】
【0033】
以下、実施例を用いて本発明をさらに説明する。
【0034】
(実施例1)
基材フィルムとして、PETフィルム(東洋紡社製、品名:A4100、膜厚:125μm)を購入し、当該基材フィルムの含水率を測定したところ0.10±0.01wt%であった。なお、含水率の測定には、水分計(クラボウ製、品名:RX−100)を用いた。また、当該基材フィルムの含水率と寸法の関係を調べたところ、含水率が0.01wt%変化すると寸法は100mmあたり1.8μm変化することが分かった。
【0035】
ここで当該基材フィルムを常温常湿平衡状態(23±2℃、45±5%RH)で養生した結果、その含水率は0.33wt%となったので、この状態で当該基材フィルムの表面に所定のパターンを形成した。つまり、当該基材フィルムの基準含水率は0.33wt%であり、この基材フィルムは、当該基準含水率に至るまでの過程における含水率が前記基準含水率よりも低いことになる。
【0036】
パターン形成後の基材フィルムの含水率を常に基準含水率よりも低い状態で24時間搬送した後、再度常温常湿平衡状態で養生し、その後の含水率を測定したところ、0.33wt%となった。したがって、所定のパターンとの寸法変化量は0±1.8μm/100mmとなった。なお、当該寸法変化量における「±1.8μm」は、基材フィルムの含水率を測定する際に生じ得る測定誤差である「±0.01wt%」に起因するものであり、したがって、当該実施例1における実質的な寸法変化量は「0μm」であると言える。
【0037】
(実施例2)
基材フィルムとして、PETフィルム(東洋紡社製、品名:A4100、膜厚:125μm)を購入し、当該基材フィルムの含水率を測定したところ0.60±0.01wt%であった。なお、含水率の測定には、水分計(クラボウ製、品名:RX−100)を用いた。また、当該基材フィルムの含水率と寸法の関係を調べたところ、含水率が0.01wt%変化すると寸法は100mmあたり1.8μm変化することが分かった。
【0038】
ここで当該基材フィルムを常温常湿平衡状態(23±2℃、45±5%RH)で養生した結果、その含水率は0.36wt%となったので、この状態で当該基材フィルムの表面に所定のパターンを形成した。つまり、当該基材フィルムの基準含水率は0.36wt%であり、この基材フィルムは、当該基準含水率に至るまでの過程における含水率が前記基準含水率よりも高いことになる。
【0039】
パターン形成後の基材フィルムの含水率を常に基準含水率よりも高い状態で24時間搬送した後、再度常温常湿平衡状態で養生し、その後の含水率を測定したところ、0.36wt%となった。したがって、所定のパターンとの寸法変化量は0±1.8μm/100mmとなった。なお、上記実施例1と同様、当該寸法変化量における「±1.8μm」は、基材フィルムの含水率を測定する際に生じ得る測定誤差である「±0.01wt%」に起因するものであり、したがって、当該実施例2における実質的な寸法変化量は「0μm」であると言える。
【0040】
(比較例1)
実施例1と同様の基材フィルムを準備し、当該基材フィルムに実施例1と同様の条件で所定のパターンを形成した。
【0041】
つまり、当該基材フィルムの基準含水率は0.33wt%であり、この基材フィルムは、当該基準含水率に至るまでの過程における含水率が前記基準含水率よりも低いことになる。
【0042】
パターン形成後の基材フィルムの含水率を、実施例1とは異なり常に基準含水率よりも高い状態で24時間搬送した後、再度常温常湿平衡状態(23±2℃、45±5%RH)で養生し、その後の含水率を測定したところ、0.36wt%となった。したがって、所定のパターンとの寸法変化量は5.4±1.8μm/100mmとなった。なお、上記実施例1と同様、当該寸法変化量における「±1.8μm」は、基材フィルムの含水率を測定する際に生じ得る測定誤差である「±0.01wt%」に起因するものであり、したがって、当該比較例1における実質的な寸法変化量は「5.4μm」であると言える。
【0043】
(比較例2)
実施例2と同様の基材フィルムを準備し、当該基材フィルムに実施例2と同様の条件で所定のパターンを形成した。
【0044】
つまり、当該基材フィルムの基準含水率は0.36wt%であり、この基材フィルムは、当該基準含水率に至るまでの過程における含水率が前記基準含水率よりも高いことになる。
【0045】
パターン形成後の基材フィルムの含水率を、実施例2とは異なり常に基準含水率よりも低い状態で24時間搬送した後、再度常温常湿平衡状態(23±2℃、45±5%RH)で養生し、その後の含水率を測定したところ、0.33wt%となった。したがって、所定のパターンとの寸法変化量は5.4±1.8μm/100mmとなった。なお、上記実施例1と同様、当該寸法変化量における「±1.8μm」は、基材フィルムの含水率を測定する際に生じ得る測定誤差である「±0.01wt%」に起因するものであり、したがって、当該比較例2における実質的な寸法変化量は「5.4μm」であると言える。
【0046】
(結果)
上記実施例1、2からも明らかなように、本発明の搬送方法によれば、パターン形成時の環境に戻すことによりフィルムの含水率もパターン形成時の含水率に戻るため、含水率の変化によるフィルムの伸びを許容範囲内に抑えることができる。一方で、上記比較例1、2のように、パターン形成時に至る過程における含水率が低い場合において、パターン形成時の含水率を超えた状態で搬送する、もしくは、パターン形成時に至る過程における含水率が高い場合において、パターン形成時の含水率よりも低い状態で搬送すると、いわゆるヒステリシスが生じ、パターン形成時の含水率に戻ることができず、含水率の変化に起因するフィルムの伸びが発生してしまう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂フィルム上にパターンを形成してなるパターン付フィルムの搬送方法であって、
パターン形成時における樹脂フィルムの含水率を基準含水率とした場合に、
パターン形成時に至る過程における樹脂フィルムの含水率が当該基準含水率よりも低い場合には、パターン形成後のパターン付フィルムの含水率を常に前記基準含水率よりも低く保持して搬送し、一方で、
パターン形成時に至る過程における樹脂フィルムの含水率が当該基準含水率よりも高い場合には、パターン形成後のパターン付フィルムの含水率を常に前記基準含水率よりも高く保持して搬送する、
ことを特徴とするパターン付フィルムの搬送方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−181259(P2012−181259A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−42725(P2011−42725)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】