説明

パターン形成方法および磁気記録媒体の製造方法

【課題】スタンパの領域に依存した凹凸比の違いおよびそれに伴うレジスト残渣の膜厚の違いによらず、レジスト残渣を均一に除去できるパターン形成方法を提供する。
【解決手段】下地材料上にレジストを成膜し、前記レジストに、凹凸パターンを有し凸部の側壁にテーパーのついたスタンパをプレスして、凹凸パターンを有し凸部の側壁にテーパーのついたパターン化されたレジストを形成し、前記パターン化されたレジスト上に保護膜を形成し、前記保護膜を異方性エッチングして前記パターン化されたレジストのテーパーのついた凸部の側壁上に前記保護膜を残し、前記保護膜をマスクとして前記パターン化されたレジストの凹部に残存するレジスト残渣をエッチングし、前記保護膜および前記パターン化されたレジストをマスクとして前記下地材料をエッチングすることを特徴とするパターン形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターン形成方法および磁気記録媒体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のパソコンなど情報機器の飛躍的な機能向上により、ユーザが扱う情報量は著しく増大してきている。このような状況の下で、これまでよりも飛躍的に記録密度の高い情報記録再生装置や集積度の高い半導体装置がもとめられている。磁性デバイスであるHDD(Hard Disk Drive)においては、記録密度を向上させるために、記録トラック間を非磁性体または溝によって物理的に分離したディスクリートトラックレコーディング型パターン媒体(DTR媒体)がある。DTR媒体は、記録時におけるサイドイレース現象、再生時におけるサイドリード現象などを低減できるため、トラック密度を大幅に高めることが可能となり、高密度記録可能な磁気記録媒体を提供できる。さらにDTR媒体では、サーボ情報も一括してパターンとして形成すれば、長時間を要して磁気ヘッドでサーボ信号を書き込む必要が無くなる。一方で、サーボ情報が設計通りのパターンとして形成されないと、サーボトラッキングが困難になってしまう。従って、記録密度を向上させるためには、より微細で正確な加工技術が必要となっている。
【0003】
微細加工技術としては、一度に大面積の微細加工が可能である、露光プロセスを用いた従来のフォトリソグラフィーが挙げられる。しかし、光の波長以下の分解能を持たないため、400nm以下の微細構造の作製は困難である。400nm以下のレベルの微細加工技術としては、電子線リソグラフィーや集束イオンビームリソグラフィーなどが挙げられるが、スループットの悪さが問題であり、さらには微細化が進むほど装置は高価になるといった問題がある。
【0004】
これに対してChouらによって提案されたナノインプリントリソグラフィは安価でありながら、10nm程度の解像度を有する加工技術として注目されている(特許文献1)。Chouらは、電子ビームリソグラフィと反応性イオンエッチングを用いてパターンを形成したスタンパを使用している。まず、シリコン基板上にレジストとして、熱可塑性樹脂のPMMA(ポリメタクリル酸メチル)を成膜する。前記スタンパを用いて熱サイクルナノインプリントを行い、レジストにパターンを転写する。酸素RIE(Reactive Ion Etching)でレジストパターンの凹部の底に残存する残渣を除去し、シリコンの表面を出す。その後、レジストパターンをマスクとしてエッチングを行って基板の微細加工を施したり、Al等を成膜した後にリフトオフして配線を形成したりする。
【0005】
インプリント方式としては一般に、UV(紫外線硬化樹脂)式、ホットエンボス式または室温での高圧式インプリントが挙げられる。ここでUV式は高精度のパターン形成が可能だが、UV硬化前のレジスト流動性が高く、スタンパと基板の平坦性揺らぎがそのままレジスト厚に影響を与えるため、レジスト厚の均一性に問題がある。またスタンパは、UVを透過する必要があるため、コストが高くなるという問題がある。ホットエンボス式は、熱を加えるため、収縮による歪が発生しやすく、加熱冷却工程から、スループットも良くない。また、加熱時のレジスト流動性が高いので、UV式と同様に膜厚均一性が問題となる。
【0006】
そこで、量産性やレジスト厚の均一性を考えると、熱をかけずに高圧でパターン形成を行い、基板−スタンパ間の膜厚ムラを高圧で相殺する室温での高圧式インプリントが好ましい。しかし、高圧式インプリントを用いた場合、各々の領域におけるパターンの凹部と凸部の面積比に応じて、パターンの凸部によって排除されパターンの凹部を埋めるレジストの量が変わるという問題が発生する(非特許文献2)。DTR媒体は、記録トラックを含むデータ領域と、アドレス部、プリアンブル部およびバースト部を含むサーボ領域を有し、それぞれの領域で磁性体の面積比率が異なっている。それに応じて、DTR媒体製造用スタンパのそれぞれの領域でも、パターンの凹部と凸部の面積比が異なっている。この結果、スタンパをレジストに最大限押し込んだ状態で、凹部と凸部の面積比に依存して、レジストの凹部に残存するレジスト残渣の厚さに違いが生じる。
【0007】
レジスト残渣の膜厚にばらつきが生じると、RIEによりレジスト残渣を除去する際に問題が生じる。すなわち、膜厚の厚いレジスト残渣が除去される前に、膜厚の薄いレジスト残渣が除去され、その部分では過剰にサイドエッチングが起こる。この結果、スタンパのパターンとレジストに転写されたパターンとの間に寸法の変動が生じる。このパターン寸法の変動は、それぞれの領域によって異なる。
【0008】
そこで、レジストの粘性、インプリント時間、インプリント温度を変えることにより、レジスト残渣を揃えるといった試みが行われているが、これらの方法は有効な対策ではない。
【特許文献1】米国特許第5,772,905号明細書
【非特許文献2】J. Vac. Sci. Technol. B21, 98 (2003)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、スタンパの領域に依存した凹凸比の違いおよびそれに伴うレジスト残渣の膜厚の違いによらず、レジスト残渣を均一に除去できるパターン形成方法および磁気記録媒体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様に係るパターン形成方法は、下地材料上にレジストを成膜し、前記レジストに、凹凸パターンを有し凸部の側壁にテーパーのついたスタンパをプレスして、凹凸パターンを有し凸部の側壁にテーパーのついたパターン化されたレジストを形成し、前記パターン化されたレジスト上に保護膜を形成し、前記保護膜を異方性エッチングして前記パターン化されたレジストのテーパーのついた凸部の側壁上に前記保護膜を残し、前記保護膜をマスクとして前記パターン化されたレジストの凹部に残存するレジスト残渣をエッチングし、前記保護膜および前記パターン化されたレジストをマスクとして前記下地材料をエッチングすることを特徴とする。
【0011】
本発明の他の態様に係る磁気記録媒体の製造方法は、基板上に、磁性膜、レジストを順に成膜し、前記レジストに、凹凸パターンを有し凸部の側壁にテーパーのついたスタンパをプレスして、アドレス部、プリアンブル部およびバースト部を含むサーボ領域ならびに記録トラックを含むデータ領域に対応する凹凸パターンを有し凸部の側壁にテーパーのついたパターン化されたレジストを形成し、前記パターン化されたレジスト上に保護膜を形成し、前記保護膜を異方性エッチングして前記パターン化されたレジストのテーパーのついた凸部の側壁上に前記保護膜を残し、前記保護膜をマスクとして前記パターン化されたレジストの凹部に残存するレジスト残渣をエッチングし、前記保護膜および前記パターン化されたレジストをマスクとして前記磁性膜をエッチングすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、スタンパの領域に依存した凹凸比の違いおよびそれに伴うレジスト残渣の膜厚の違いによらず、レジスト残渣を均一に除去できるパターン形成方法および磁気記録媒体の製造方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は、DTR媒体の周方向に沿ってサーボ領域およびデータ領域のパターンの一例を示す平面図である。このDTR媒体をドライブ組み込んだ場合、媒体に対して相対的にヘッドは左から右へと移動する。
【0014】
図1において、データ領域10は、磁性体からなる記録トラックと、非磁性体からなるガードバンドを含む。記録トラックおよびガードバンドは媒体の周方向に延びている。各記録トラックはガードバンドによって分離されており、一定の周期(トラックピッチTp)で配置されている。記録トラックの幅とガードバンドの幅の比は2:1に設定されている。したがって、データ領域10における磁性体の面積比率は約67%である。
【0015】
サーボ領域20は、プリアンブル部21、アドレス部22、バースト部23を含む。以下、これらの領域の役割を詳細に説明する。
【0016】
プリアンブル部21は、メディアの回転偏芯等により生ずる時間ズレに対し、サーボ信号再生用クロックを同期させるPLL処理や、信号再生振幅を適正に保つAGC処理を行うために設けられている。プリアンブル部21は、円弧をなすように径方向に放射状に延びる磁性体と非磁性体が周方向に交互に配列されたパターンが形成されている。磁性体と非磁性体はほぼ1:1に設定されている。したがって、プリアンブル部21における磁性体の面積比率は約50%である。
【0017】
アドレス部22は、サーボマークと呼ばれるサーボ信号認識コードや、セクタ情報、シリンダ情報等が、プリアンブル部の周方向ピッチと同一ピッチで、マンチェスタコードにより形成されている。特に、シリンダ情報は、サーボトラック毎にその情報が変化するパターンとなるため、シーク動作時のアドレス判読ミスの影響が小さくなる様に、グレイコードと呼ばれる隣接トラックとの変化が最小となるコード変換をしてから、マンチェスタコード化して記録されている。アドレス部22における磁性体の面積比率も約50%である。
【0018】
バースト部23は、シリンダアドレスのオントラック状態からのオフトラック量を検出するためのオフトラック検出用領域である。径方向にパターン位相がずれた、A、B、C、Dバーストと呼ばれる4つのマークが形成されている。各バーストには、周方向に複数個のマークがプリアンブル部21と同一のピッチで配置されている。各バーストの径方向周期は、アドレスパターンの周期、換言すれば、サーボトラック周期に比例している。例えば、各バーストが周方向に10周期分形成され、径方向にサーボトラック周期の2倍長周期で繰返すパターンをなす。バーストのマークは非磁性体で形成するので、ABCDバーストにおける磁性体の面積比率は約75%となる。
【0019】
なお、図1においてはバースト部23としてABCDバーストを例にあげて説明したが、位相差サーボを行うようにパターンを形成してもよい。位相差サーボパターンにおける磁性体の面積比率は約50%となる。
【0020】
以上のように、作製しようとするDTR媒体のそれぞれの領域における磁性体の面積比率は異なる。各々の領域の磁性体の面積比率の違いに応じて、DTR媒体作製用スタンパの凹凸比(凹部面積の凸部面積に対する比)も異なる。スタンパの領域による凹凸比の違いが上述の問題を生む。パターン化されたレジストの寸法の変動は、領域に依存したレジスト残渣の膜厚の違いによって生じる過剰なサイドエッチングが原因である。本発明者らは、パターン化されたレジストの凸部の側壁に耐エッチング性の保護膜を形成してサイドエッチングを防ぐことにより、上記の問題を解決できることを見出した。
【0021】
図2に、本発明に係るDTR媒体の製造方法の一例を示す。
【0022】
図2(a)に示すように、基板1上に磁性膜2を成膜する。基板1としては例えばリチウム系結晶化ガラス等を用いることができる。磁性膜2は例えば、高透磁率の軟磁性下地層上に垂直磁気記録層を有するいわゆる垂直二層媒体が挙げられる。軟磁性材料としては、例えばCoZr、CoZrNb、及びCoZrTa系合金などを挙げることができる。記録層としてはCoCrPt等が挙げられる。また、軟磁性下地層と記録層との間に非磁性体からなる中間層を設け、軟磁性下地層と記録層との交換結合相互作用を遮断し、記録層の結晶性を制御するようにしてもよい。中間層材料としては、Ru、Pt、Pd、W、Ti、Ta、Cr、Si、あるいはこれらを含む合金、あるいはこれらの酸化物、窒化物を用いることができる。ただし、磁性膜2の構成はこれらに限定されるものではない。
【0023】
次に磁性膜2上に、インプリント用のレジスト3を成膜する。レジスト3としては、作製する高密度記録媒体に応じてインプリント工程後のエッチングなどのプロセスに適合するものが選択される。また、レジストは、インプリント時にスタンパ表面の凹凸パターンを確実に転写できるようにスタンパ材料よりも軟らかく、かつインプリント後に転写された凹凸パターンを室温で保持できる安定性を持つことが要求される。すなわち、レジストのガラス転移温度及び融点は室温以上である。より具体的には、500bar以上の荷重においてスタンパの凹凸パターンを転写できる程度に軟らかく、ガラス転移点が100℃以下であることが望ましい。従って、レジストとしては、たとえば半導体プロセルにおいて用いられるノボラック樹脂などのフォトレジストや、SOG(Spin on Glass)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0024】
図2(b)に示すように、レジスト3にスタンパ4をプレスすることでパターンを転写する。スタンパ4は、例えばニッケル製である。スタンパ4は、転写しようとする凹凸パターンと凹凸が逆転し、それぞれの領域で凹凸比が異なるパターンを有する。スタンパの離型性を良好にするために、スタンパの凸部の側壁にテーパーがついている。また、通常、スタンパの離型性を高める処理を行う。凸部の側壁にテーパーのついたスタンパをプレスすることにより、レジスト3に転写されるパターンの凸部の側壁にもテーパーがつく。
【0025】
インプリント時にスタンパをプレスすると、まずスタンパの凹凸比が低い領域(図2(b)の右側の領域)で凹部内にレジストが満たされ、それ以上凸部を押し込むことができなくなる。この時点で、スタンパの凹凸比が高い領域(図2(b)の左側の領域)では凹部にレジストが満たされていないので、凸部を押し込める余地がある。プレスを続けると、スタンパはわずかに歪み、スタンパの凹凸比が高い領域ではさらに凸部が押し込まれ、その領域の凹部にもレジストが満たされる。このように、各領域の凹凸比に依存して、凸部の押し込み深さが変わり、レジスト残渣の厚みに差が生じる。図2(c)にスタンパ4を剥離した後の状態を示す。
【0026】
図2(d)に示すように、パターン化されたレジスト3上に、転写したパターン形状を保護するための保護膜5を形成する。保護層5は、後述するレジスト残渣除去時のエッチングに対して、レジスト3よりもエッチング耐性が高い材料を用いる。ここでエッチング耐性の違いとは、ミリングなどに対する物理的な耐性の差、すなわち硬度の違いや、RIEなどに対する化学的な耐性の違い、すなわち反応性の差等であるが、特に限定されない。保護膜5の材料としては、金属膜(例えば、Ti、Ta、W、Pt、Al)、金属酸化膜(例えば、TiO2、Al23)、金属化合物(例えば、AlTi)、無機物(例えばSiO2、C)、高分子有機化合物(例えば、一般的なフォトレジスト)、低分子有機化合物等が挙げられるが、上記の条件を満たすものであれば、特に限定されない。
【0027】
また、幅400nm以下の微細パターンを加工する場合、保護膜5の膜厚は1nm以上15nm以下であることが好ましい。1nm以下であると膜質良くパターンに沿って成膜出来ず、エッチング耐性も良くない。逆に、15nm以上であるとパターンに沿って成膜することが困難になる。また、エッチング時間も増えるためプロセス時間自体が長くなってしまう。
【0028】
保護膜5の成膜方法として、例えばスパッタ法が挙げられる。スパッタは量産性良く、良質な膜を提供できる。ここで、インプリント用のレジストにフォトレジストなどの酸素でエッチング可能なレジストを用いた場合、保護膜にはCF4やSF6等のフッ素系ガスでエッチングが可能なSiO2をスパッタで成膜することが好ましい。また、インプリント用のレジストにSOGなどのフッ素系ガスでエッチング可能なレジストを用いた場合、保護膜には酸素でエッチング可能なカーボンをスパッタで成膜することが好ましい。
【0029】
保護膜5の他の成膜方法として、ディッピングを用いることもできる。ディッピングでは、一度に複数の媒体に対して、保護膜をパターンに沿って成膜することができる。ここで、レジストとして酸素でエッチング可能なフォトレジストを用いた場合、保護膜としてCF4やSF6等のフッ素系ガスでエッチングが可能なSOGをディッピングすることが好ましい。また、レジストとしてフッ素系ガスでエッチング可能なSOGを用いた場合、保護膜として酸素でエッチング可能なノボラック樹脂(フォトレジスト)をディッピングすることが好ましい。ディッピングされる保護膜は、レジストに対して化学的に吸着されるわけではないので、引き上げ速度を遅くし、液面の振動を抑制する。
【0030】
保護膜5の成膜方法はこれら2つの方法に限定されず、スプレーコーティング、インクジェット塗布等を用いることができる。これらの保護膜成膜方法のうち、量産の面ではディッピングが好ましい。
【0031】
図2(e)に示すように、保護膜5を異方性エッチングしてパターン化されたレジスト3のテーパーのついた凸部の側壁上に保護膜5を残す。この異方性エッチングにおいて、保護膜に結晶異方性等が無い場合、イオンの平均自由工程を長くすることが好ましい。異方性エッチング方法は、保護膜5のエッチング耐性の違いによって、例えばイオンミリング、RIE等から選択する。
【0032】
図2(f)に示すように、レジスト3の凸部の側壁上に残存する保護膜5をマスクとして、パターン化されたレジスト3の凹部に残存するレジスト残渣をエッチングする。レジスト残渣除去にはRIE、ICP等を用いて異方性エッチングを行うことが好ましい。パターン凸部の側壁はこの工程で用いるエッチングに対する耐性がレジスト3よりも高い保護膜5で保護されているため、凸部の側壁以外のレジスト3がエッチングされる。この工程において、レジスト残渣膜厚の薄い領域のレジスト残渣は、膜厚の厚い領域のレジスト残渣よりも先に除去されるが、膜厚の厚い領域のレジスト残渣が除去されるまでエッチングを続ける必要がある。一般的に、反応性イオンを用いるエッチングは異方性を示すが、レジスト残渣が除去されると同時にサイドエッチングに入ってしまう。しかし、本発明においては、パターン凸部の側壁がレジスト3よりも高いエッチング耐性を有する保護膜5で保護されているために、サイドエッチングなしに凹凸比の異なるパターン領域全てにおいてレジスト残渣が除去できる。これにより、領域によらず設計値であるスタンパのパターン寸法に対するパターン寸法の変動を抑えることができる。
【0033】
異方性エッチングを用いたレジスト残渣除去により、パターン化されたレジスト3の頂部もエッチングされるため、凸部の形状は図3(a)に示すような形状となる。図3(a)は、図2(f)に示した凸部の1つを拡大した図である。図3(a)に示すように、レジスト3の凸部の頂部はエッチングされる一方、保護膜5はレジスト残渣除去の際のエッチングに対して耐性が高くエッチングが進まないため、保護膜5の頂部の位置はレジスト3の頂部の位置よりも高い。
【0034】
図2(g)に示すように、保護膜5およびパターン化されたレジスト3をマスクとして磁性膜2をエッチングする。磁性膜2の加工には、例えばArイオンミリングを用いる。この際、強磁性記録層のダメージを無くす為、再付着現象を抑えるように、イオン入射角を30°、70°と変化させてイオンミリングによるエッチングを行う。再付着現象を抑えるためにこのように高角度でエッチングを行うことにより、磁性膜のパターン側壁に40°〜75°程度のテーパーがつく。
【0035】
本発明のパターン形成方法によって作られる図3(a)に示す構造のエッチングマスクは、高角度のエッチングによる加工の際に有利な効果を奏する。通常、エッチングマスクとなるパターン凸部のレジストはレジスト残渣を除去する際に一部が除去されエッチング耐性が減少する。しかし、パターン凸部の側壁を保護する保護膜5の頂部の位置がレジスト3の頂部の位置よりも高いため、レジスト3の頂部がエッチングされても、高角度からのエッチング耐性は減少しない。図3(b)に示すように、保護膜5およびレジスト凸部を含むマスクの、高角度からのエッチングに対するエッチング耐性を向上させることができる。
【0036】
図2(h)に示すように、エッチングマスクとして用いたレジスト3を保護膜5とともに除去する。レジスト3の除去はレジスト3の材料に適した除去方法で行う。例えば、レジスト3としてSOGを使用した場合には、ICPエッチング装置を用いたSF6ガスによる除去が挙げられるが、これに限定されない。必要に応じて、水洗など、加工した磁性膜表面の不純物を除去する処理を行ってもよい。
【0037】
さらに、非磁性体からなる平坦化膜の成膜、平坦化エッチバック、保護膜の成膜、潤滑層の塗布など、通常のDTR媒体製造方法に含まれる工程を行い、磁気記録媒体を作製する(図示せず)。
【0038】
上述したように、本発明の方法を用いてDTR媒体を作製すると、レジスト残渣除去の際の過剰なサイドエッチングを防ぐことができ、パターン領域によらず設計値であるスタンパのパターン寸法からの媒体作製後のパターン寸法の変動を減少させることができる。
【0039】
なお、以上DTR媒体の製造方法を例に挙げて説明したが、本発明のパターン形成方法は高圧インプリント法を用いて他の微細加工方法にも適用できることは明白である。例えば半導体装置に使用するシリコン基板を加工する方法などが挙げられるが、これに限定されない。
【実施例】
【0040】
以下、本発明を実施例を用いて具体的に説明する。
【0041】
(実施例1)
図2に示した本発明の方法を用いてDTR媒体を作製した。
【0042】
基板1として直径が2.5インチのリチウム系結晶化ガラス基板を用いた。基板1を洗浄後、スパッタ装置に導入し、軟磁性下地層、中間層、記録層を順に積層させ磁性層2を成膜した。軟磁性下地層および中間層には上述の材料を用いた。記録層にはCoCrPtを用いた。
【0043】
次に、磁性層2上にレジスト3としてSOG(OCD T-7 8000T;東京応化工業株式会社)を6000rpmでスピンコートした。その後100℃で20分間プリベークを行い、SOGをインプリントに適度な硬度とした。
【0044】
他方、レジスト(SOG)3にパターンを転写するためのスタンパ4を用意した。使用するスタンパ4は、パターンの凹凸高さが90nmで、サーボ領域(アドレス部とプリアンブル部:凹凸比50%、およびバースト部:凹凸比75%を含む)とデータ領域(凹凸比67%)に対応するスタンパパターンを有する。
【0045】
インプリントを行うにあたり、フッ素系の剥離材であるパーフルオロアルキル誘導体をスタンパ4にディップし、インプリント時の離型性を高めた。まず、パーフルオロアルキル誘導体とニッケル製スタンパとの密着性を上げるために、40℃以上で5分間アッシャーによりスタンパを酸化させた。その後パーフルオロアルキル誘導体として、パーフルオロポリエーテル(HOOC−CF−O−(CF2−CF2−O)m−(CF2−O)n−(CF2−COOH)をGALDEN-HT70(ソルベイソレクシス社)で希釈した溶液が入っているルーバーを用い、スタンパ4にパーフルオロアルキル誘導体を被覆した。最後にスタンパ4を150℃で10分間窒素雰囲気中にてアニールした。
【0046】
処理を行ったスタンパ4をレジスト(SOG)3に対して、2000barで1分間プレスすることによって、レジスト3にそのパターンを転写した。パターン転写後のレジスト3の凹部の高さは約80nm、レジスト残渣の厚さは約50nmであった。
【0047】
パターン転写後、基板1をスパッタ装置に導入し、転写したパターンに沿って、保護層5として厚さ10nmのカーボンを成膜した。
【0048】
保護層5成膜後、酸素ガスを用いたRIEにより、レジスト3の凸部側壁に保護層5を残した。その後、SFガスを用いたRIEにより、レジスト残渣を除去した。RIEはICP(Inductively Coupled Plasma;誘導結合プラズマ)エッチング装置を用いて2mTorr程度のエッチング圧で行った。
【0049】
レジスト残渣除去後、Arイオンミリングで磁性膜をエッチングした。この際、強磁性記録層のダメージを無くす為、再付着現象を抑えるように、イオン入射角を30°、70°と変化させてイオンミリングによるエッチングした。この結果、磁性膜2の凸部の側壁に40°〜75°程度のテーパーがつく。
【0050】
磁性膜加工後、SF6ガスを用いたRIEにより、レジスト3であるSOGを除去した。この際、レジスト残渣の除去と同様に、ICPエッチング装置を用いた。保護膜5のカーボンはレジスト3のSOGと同時にリフトオフされることが確かめられた。その後、表面に付着したフッ化物を除去するために、水洗を行った。
【0051】
作製したDTR媒体のトラック部、アドレス部およびバースト部におけるパターン寸法の、設計値であるスタンパのパターン寸法からの変動を比較したところ、領域によらずほとんど変動がないことが確認された。
【0052】
次に、保護膜5のカーボンの膜厚を、0.5nm、1nm、2nm、5nm、15nm、20nmと変化させたこと以外、上記と同様の方法を用いてDTR媒体を作製した。また、比較例として、保護膜5を成膜しないこと以外、上記と同様の方法を用いてDTR媒体を作製した。
【0053】
作製した各DTR媒体について、スタンパのパターン寸法からのDTR媒体のパターン寸法の変動を調べた。図4に、保護膜の厚さと、スタンパの凹凸比が最も高いバースト部のパターン寸法の変動との関係を示す。ここでバースト部のパターン寸法の変動は、トラック部にあわせてレジスト残渣除去を行った際の、スタンパのパターン寸法からのズレ量の絶対値である。測定には原子間力顕微鏡(AFM)を用いた。比較例である保護膜が無い場合、パターン寸法の変動は10nmと最も大きかった。保護膜膜厚が1nm以下においても、パターン寸法の変動がやや認められる。しかし、保護膜を1nm以上形成した媒体においては、パターン寸法の変動は見られなかった。
【0054】
次に、膜厚10nmの保護膜を用いて作製された実施例のDTR媒体と、保護膜なしに作製された比較例1のDTR媒体について凹凸高さを比較した。測定にはAFMを用いた。比較例で作製したDTR媒体の凹凸高さは25nmであるのに対し、実施例で作製したDTR媒体の凹凸高さは40nmであり、十分な凹凸高さを得ることができた。これは上で図3を用いて説明したように、保護膜を形成することで高角度からのエッチング耐性が向上した結果である。
【0055】
(実施例2)
保護膜5としてノボラック型フォトレジスト(ローム・アンド・ハース電子材料株式会社製の商品名S1801)を用いたこと以外、実施例1と同様の方法を用いてDTR媒体を作製した。ノボラック型フォトレジストをディップコート法によって成膜する際に、基板の引き上げ速度を遅くする(1mm/min)ことで、パターン形状に沿って厚さ10nmの保護膜を塗布した。
【0056】
作製したDTR媒体のトラック部、アドレス部およびバースト部におけるパターン寸法の、設計値であるスタンパのパターン寸法からの変動を比較したところ、領域によらずほとんど変動がないことが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】DTR媒体のデータ領域およびサーボ領域のパターンを示す図。
【図2】本発明に係るDTR媒体の製造方法を示す図。
【図3】図2(f)に示したエッチングマスクの拡大図。
【図4】本発明の方法を用いて作製したDTR媒体について、保護膜の厚さと、形成されたパターン寸法の変動との関係を示す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下地材料上にレジストを成膜し、
前記レジストに、凹凸パターンを有し凸部の側壁にテーパーのついたスタンパをプレスして、凹凸パターンを有し凸部の側壁にテーパーのついたパターン化されたレジストを形成し、
前記パターン化されたレジスト上に保護膜を形成し、
前記保護膜を異方性エッチングして前記パターン化されたレジストのテーパーのついた凸部の側壁上に前記保護膜を残し、
前記保護膜をマスクとして前記パターン化されたレジストの凹部に残存するレジスト残渣をエッチングし、
前記保護膜および前記パターン化されたレジストをマスクとして前記下地材料をエッチングする
ことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項2】
前記保護膜をスパッタ法により形成することを特徴とする請求項1記載のパターン形成方法。
【請求項3】
前記保護膜をディップコート法により形成することを特徴とする請求項1記載のパターン形成方法。
【請求項4】
前記保護膜は、1nm以上15nm以下の膜厚を有することを特徴とする請求項1記載のパターン形成方法。
【請求項5】
前記レジスト残渣をエッチングした際に、前記保護膜の頂部の位置を前記パターン化されたレジストの頂部の位置よりも高くなるようにすることを特徴とする請求項1記載のパターン形成方法。
【請求項6】
基板上に、磁性膜、レジストを順に成膜し、
前記レジストに、凹凸パターンを有し凸部の側壁にテーパーのついたスタンパをプレスして、アドレス部、プリアンブル部およびバースト部を含むサーボ領域ならびに記録トラックを含むデータ領域に対応する凹凸パターンを有し凸部の側壁にテーパーのついたパターン化されたレジストを形成し、
前記パターン化されたレジスト上に保護膜を形成し、
前記保護膜を異方性エッチングして前記パターン化されたレジストのテーパーのついた凸部の側壁上に前記保護膜を残し、
前記保護膜をマスクとして前記パターン化されたレジストの凹部に残存するレジスト残渣をエッチングし、
前記保護膜および前記パターン化されたレジストをマスクとして前記磁性膜をエッチングする
ことを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−122791(P2007−122791A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−311594(P2005−311594)
【出願日】平成17年10月26日(2005.10.26)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】