説明

パターン形成方法

パターン形成方法は、(a)少なくとも1つの主表面を有する少なくとも1つの基材を提供する工程と、(b)ペルフルオロポリエーテル有機イオウ化合物である、少なくとも1つの官能基形成性分子を含む少なくとも1つのパターン形成性組成物を提供する工程と、(c)パターン形成性組成物を基材の主表面に、主表面の少なくとも1つの官能基化領域及び少なくとも1つの非官能基化領域を形成するような仕方で塗布する工程と、(d)非官能基化領域の少なくとも一部をエッチングする工程と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、米国特許仮出願第61/121,605号及び同第61/121,598号(いずれも2008年12月11日出願)の優先権を主張し、その内容は本明細書に参照により組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、官能基形成性分子を基材上でパターン形成するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
自己組織化モノレイヤー(SAM)は、溶液又は気体から基材(例えば、金属又は金属酸化物)上に官能基形成性分子を単一層で自発的吸着することにより形成することができる。SAMを形成する分子は、一般に、基材と相互作用することができる、頭基を含み、この分子の残りの部分は単層中の隣接分子との相互作用から若干の規則性を獲得することができる。例えば、この分子は、化学結合により基材表面に結合可能であり、表面に関して、更には分子相互に関して好ましい配向を行うことができる。
【0004】
SAMは、頭基の特異な化学的及び/又は物理的性状に依存して、さまざまなタイプの基材(物理的支持体上のコーティングを含む基材を含めて)上で形成することができる。例えば、アルキルチオール及びジスルフィドは、金、銀、パラジウム、及び銅の上でSAMを形成することができ、シランは酸化ケイ素の上でSAMを形成することができる。SAMの作製、特性評価、及び利用は、SAMが基材表面の性質(例えば、濡れ、潤滑、及び/又は腐食の性質)を変化させ、制御することができるために、重要な研究分野となっている。
【0005】
さまざまな手法が、基材表面上に自己組織化モノレイヤーのパターン形成に使用されてきた。これらの手法の多くは、最初に基材を全体的にSAMにより被覆し、次いで例えば、紫外光、電子ビーム、衝突原子、走査プローブ顕微鏡のプローブ(走査トンネル顕微鏡又は原子間力顕微鏡)を使用することにより、一部の領域のSAMを除去することを伴う。マイクロコンタクトプリンティング(μCP)と呼ばれる別のパターン形成手法が、基材表面の所望の領域上にSAMを印刷工程時に形成するのに使用されてきた(例えば、1マイクロメートル未満の印刷形体のサイズが達成可能)。次いで、このようなパターン形成手法から得られるパターン形成されたSAMは、基材を選択的にエッチングするためのレジストとしての役割をしてきた。
【0006】
SAMをマイクロコンタクトプリンティングすることは、一般に、官能基形成性分子を含むインク組成物をレリーフパターン形成されたエラストマースタンプ(例えば、ポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)スタンプ)に塗布し、次いでインクを付けたスタンプを基材表面に、通常、金属(例えば、金、銀、パラジウム、又は銅)又は金属酸化物(例えば、インジウム−スズ酸化物)表面と接触させ、スタンプと基材との間の接触領域にSAMを形成させる工程を伴う。マイクロコンタクトプリンティングを使用して、基材の表面の性質(例えば、濡れ特性)を変化させることは比較的容易であって、基材(例えば、比較的薄い金フィルム)を高いコントラスト及び分解能をもって化学エッチング−パターン形成するのにマイクロコンタクトプリンティングを使用することは可能であるが、このような方法は、一般に、商業的な実施が制限された、望ましくない特性のある化学エッチング剤の使用を必要とするものであった。特に、マイクロコンタクトプリントSAMマスクパターンを望ましい長寿命及び望ましい高いエッチング速度及びエッチング容量を有する化学エッチング剤と組み合わせて使用して、金属基材(金属でコーティングされた物理的支持体を含む)をエッチングーパターン形成することは、これまで可能でなかった。
【0007】
SAMを形成する分子が化学エッチング剤に対して耐性を欠くと、比較的少ない欠陥を有する高品質のSAMでもエッチング保護の付与の点で無効である可能性がある。ヨウ化カリウム/ヨウ素をベースとするエッチング剤(KI/I;「三ヨウ化物」エッチング剤)は市販されており、安定性(例えば、数週間の間の)、速度(例えば、1分当り約25〜660ナノメートルのエッチング速度)、容量(例えば、約20グラム超のエッチング剤1リットル当りの除去金属)、及び安全性の強力な組み合わせを提供する。しかしながら、エッチング−パターン形成で通常使用されるSAMを形成する分子は、一般に、有効なパターン形成を可能とさせる三ヨウ化物エッチング剤に対する充分な耐性を呈さない。特に、このようなエッチング剤と共に使用されるSAMを形成性分子に対しては、パターン形成されたSAMの下地の金属は、今日まで、一般に、SAMにより被覆されていない金属と本質的に同じく急速にエッチングされてきた。
【0008】
従来のSAMは、金のエッチングに使用されてきた、さまざまな他の化学エッチング剤(シアン酸塩/酸素−、フェロシアン酸塩/フェリシアン酸塩−、及びチオ尿素をベースとするエッチング剤系を含む)に対する耐性を示した。シアン酸塩/酸素をベースとする系は、一般に、比較的遅く(例えば、1分当り約2〜3ナノメートルの速度)、毒性の問題を提起する。フェロシアン酸塩/フェリシアン酸塩の混合物は、遊離シアン酸塩をベースとするエッチング剤よりも低毒性であり得るが、比較的遅く(例えば、1分当り約2〜4ナノメートルのエッチング速度)、かつ比較的低容量である。酸化性種として第二鉄イオンを含むチオ尿素をベースとするエッチング剤は、比較的安定(例えば、数時間の安定な活性)であるが、比較的遅い(例えば、金に対して1分当り約10ナノメートルの速度)。過酸化水素を酸化性種として含むチオ尿素をベースとするエッチング剤は、比較的速い(例えば、金に対する1分当り約100ナノメートルのエッチング速度)が、比較的不安定(例えば、数分〜数時間だけ安定)である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前出に鑑みて、本発明者らは、比較的高いコントラスト及び分解能によって、好ましくは、商業的にほぼ成立するような充分な速度によって、基材をエッチング−パターン形成(例えば、金属及び金属酸化物の化学エッチング−パターン形成)するために有効に使用可能な、パターン形成する方法(及びそれに使用するための組成物)を求める必要性が存在しているということを認識している。
【課題を解決するための手段】
【0010】
端的にいうと、一つの態様では、本発明は、パターン形成方法を提供する。この方法は、(a)少なくとも1つの主表面を有する少なくとも1つの基材(好ましくは、少なくとも1種の元素金属、少なくとも1種の金属合金、少なくとも1種の金属含有化合物、又はこれらの組み合わせを含む基材)を提供する工程と、(b)ペルフルオロポリエーテル有機イオウ化合物(例えば、ペルフルオロポリエーテルチオール化合物)である、少なくとも1つの官能基形成性分子を含む少なくとも1つのパターン形成性組成物を提供する工程と、(c)このパターン形成性組成物を、基材の主表面に、この主表面の少なくとも1つの官能基化領域(好ましくは、官能基形成性分子の自己集積化モノレイヤー(SAM)を含む)及び少なくとも1つの非官能基化領域を形成するような仕方で塗布する工程と、(d)非官能基化領域の少なくとも一部をエッチング(好ましくは、選択的に)する(好ましくは、化学エッチングにより)工程と、を含む。好ましくは、このパターン形成性組成物は印刷(より好ましくは、マイクロコンタクトプリンティングにより)により塗布される。この官能基形成性分子は、好ましくは、アミドで連結されたペルフルオロポリエーテル有機イオウ化合物(より好ましくは、アミドで連結されたペルフルオロポリエーテルチオール化合物)である。
【0011】
例えば、金属を含むさまざまな基材上にペルフルオロポリエーテル有機イオウ化合物を(官能基形成性にするか、又は性質を変成するために)パターンとして塗布することができるということを見出した。次いで、得られたパターンを、基材をエッチング−パターン形成するためのレジストとして使用することができる。
【0012】
驚くべきことには、ペルフルオロポリエーテル有機イオウ化合物は、従来のSAM(例えば、アルキルチオールから形成されるSAM)が呈する耐性よりも比較的大きい、金に対する三ヨウ化物エッチング剤への耐性(及びそれにより比較的大きいエッチング選択性)を呈することができる、官能基化領域(好ましくは、官能基形成性分子の自己組織化モノレイヤー(SAM)を含む)を形成することができる。ペルフルオロポリエーテル有機イオウ化合物(特に、アミドで連結されたもの)を使用して、金表面上に比較的高い忠実度をもってマイクロプリントして、「三ヨウ化物エッチング剤適合性」である、パターン形成されたマスクを生成させることができる、パターン形成性組成物を形成することができる。三ヨウ化物エッチング剤とのこのような適合性によって、従来のSAM及び/又は従来の化学エッチング剤(例えば、シアン酸塩/酸素−、フェロシアン酸塩/フェリシアン酸塩−、及びチオ尿素をベースとするエッチング剤系)を用いる方法と比べて、向上したプロセス速度、及び、したがって向上した工業的な有用性をもって、パターン形成された基材の化学エッチングを行うことが可能となる。
【0013】
このように、少なくとも好ましい実施形態では、本発明の方法は、比較的高いコントラスト及び分解能を有して、並びに好ましくは、商業的にほぼ成立するような充分な速度をもって、基材のエッチング−パターン形成(例えば、絶縁性担体上の金属コーティングの化学エッチング−パターン形成)に有効に使用可能である、パターン形成方法を求める上述の必要性に合致することができる。この方法を使用して、ディスプレイ及びディスプレイ部品、可撓性エレクトロニック部品、センサー並びにコンピュータ、通信、個人の安全、医療用診断、及び偽造防止用途における使用のための電子デバイスの製造において使用するための絶縁性又は半導性な物理的支持体(例えば、ガラス、プラスチック、又はシリコン支持体)上の導体コーティング(例えば、金、銀、又はパラジウムの薄膜)を微小パターン形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本発明のこれら並びにその他の特徴、態様及び利益は、次の説明、添付した請求項及び添付図面でよりよく理解されるであろう。
【図1】実施例7の得られた金の微小パターン形成された基材の光学顕微鏡写真(透過モード)(暗い領域は金である)。
【図2】実施例8の得られた金の微小パターン形成された基材の光学顕微鏡写真(透過モード)(暗い領域は金である)。
【図3】実施例9の得られた金の微小パターン形成された基材の光学顕微鏡写真(透過モード)(暗い領域は金である)。
【図4】実施例10の得られた金の微小パターン形成された基材の光学顕微鏡写真(透過モード)(暗い領域は金である)。
【図5】比較例C−10の得られた金の微小パターン形成された基材の光学顕微鏡写真(透過モード)(暗い領域は金である)。
【図6】比較例C−14の得られた金のエッチングされた基材の光学顕微鏡写真(透過モード)(暗い領域は金である)。
【図7】実施例11の得られた金の微小パターン形成された基材の光学顕微鏡写真(透過モード)(暗い領域は金である)。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下の詳細な説明では、さまざまな組の数値範囲(例えば、特定の部分における炭素原子の数、特定の成分の量等の)が記載され、各組内では、範囲の任意の下限を範囲の任意の上限と対にすることができる。
【0016】
定義
本特許出願で使用される場合:
「アミドで連結された」は、少なくとも1つのカルボニルイミノ部分(下記に定義される)を含むことを意味し、
「鎖状に連結されたへテロ原子」とは、炭素−へテロ原子−炭素鎖を形成するように、炭素鎖中の炭素原子に結合した炭素以外の原子(例えば、酸素、窒素、又はイオウ)を意味し、
「カルボニルイミノ」は、Rが水素又はアルキル(例えば、1から約4個の炭素原子を有するアルキル基から選択される)である、式−C(=O)−N(R)の二価の基又は部分を意味し、
「カルボニルオキシ」は、式−C(=O)O−の二価の基又は部分を意味し、
「カルボニルチオ」は、式−C(=O)S−の二価の基又は部分を意味し、
「ジチオ」は、式−S−S−の二価の基又は部分を意味し、
「エッチング」は、化学反応、溶解、又はこれらの組み合わせ(例えば、材料を溶解するか、又は材料と材料を反応させて、可溶生成物を生成する溶液と接触させることにより)により、基材から材料を除去することを意味し、
「フルオロ−」(例えば、「フルオロアルキレン」若しくは「フルオロアルキル」、又は「フルオロカーボン」の場合のような基若しくは部分に関して)又は「フッ素化された」とは、炭素に結合した水素原子が少なくとも1つはあるように、部分フッ素化されていることを意味し、
「フルオロケミカル」とはフッ素化又はペルフルオロ化を意味し、
「ヘテロアルキレン」は、少なくとも1つの連鎖したヘテロ原子アルキレン基又は部分を意味し、
「メルカプト」は、式−SHの一価の基又は部分を意味し、
「オキシチオカルボニルチオ」は、式−O−C(=S)S−の二価の基又は部分を意味し、
「ペルフルオロ」(例えば、「ペルフルオロアルキレン」又は「ペルフルオロアルキル」又は「ペルフルオロカーボン」の場合のような、基又は部分に関して)若しくは「ペルフルオロ化」とは、完全にフッ素化されたことを意味し、その結果、特記しない限り、フッ素と置換できる炭素に結合した水素原子がないことを意味し、
「ペルフルオロエーテル」は、酸素原子により連結された、2つの飽和又は不飽和のペルフルオロカーボン基(線状、分岐、環状(好ましくは、脂環式)、又はこれらの組み合わせ)を有する(すなわち、1個の連結酸素原子が存在する)、基又は部分を意味し、
「ペルフルオロポリエーテルセグメント」は、3つ以上の飽和又は不飽和のペルフルオロカーボン基(線状、分岐、環状(好ましくは、脂環式)、又はこれらの組み合わせ)を有する、基又は部分を意味し、
「スルホンアミド」は、R’が水素又はアルキル(例えば、1〜約4個の炭素原子を有するアルキル基から選択される)である、式−SON(R’)−の二価の基又は部分を意味し、並びに
「チオ」は、式−S−の二価の基又は部分を意味する。
【0017】
基材
本発明の方法における使用に好適な基材としては、ペルフルオロポリエーテル有機イオウ化合物のパターンを官能基形成性分子として支持することのできる材料を含む、少なくとも1つの表面を有するものが挙げられる。好ましくは、このペルフルオロポリエーテル有機イオウ化合物は、化学的な相互作用により材料上に支持される。好適な基材は、単一材料又は異なる材料の組み合わせを含むことができ、均質又は不均質な性状であることができる。有用な不均質な基材としては、物理的な支持体(例えば、ポリマーフィルム)上に担持された材料(例えば、金属)のコーティングを含む、コーティングされた基材が挙げられる。ある実施形態では、基材は実質的に平滑である(好ましくは、約5ナノメートル(nm)未満の平均粗さ(Ra)を備える)。
【0018】
ある実施形態では、基材は、少なくとも1つの実質的に平坦な表面を含む。実質的に平坦な表面は、比較的低曲率(例えば、約0.03cm−1未満)の表面を含む。実質的に平坦な表面は、可撓性フィルム又はシート基材の主表面、並びに比較的低曲率を有する表面を有する剛性物品の形の物理的な支持体又は可撓性フィルム又はシートの形の物理的な支持体に塗布されたコーティングの露出表面も含む。
【0019】
有用な基材は、少なくとも1種の無機材料(例えば、多結晶性材料を含む金属性又は金属含有化合物材料)を単独で、又は例えば、ポリマーフィルム若しくはガラス、又はシリコンウエハーなどの物理的な支持体上のコーティングとして含む、ものを包含する。無機材料としては、例えば、元素金属、金属合金、金属含有化合物(例えば、金属間化合物、金属酸化物、金属硫化物、金属炭化物、及び金属窒化物)など、及びこれらの組み合わせが挙げられる。代表的な金属としては、金、銀、パラジウム、白金、ロジウム、銅、ニッケル、鉄、インジウム、スズ、タンタルなど、並びにこれらの組み合わせ(例えば、これらの元素の混合物、合金、及び化合物)が挙げられる。好ましい金属としては、銀、金、銅、白金、パラジウム、ニッケル、及びこれらの組み合わせ(最も好ましくは、金)が挙げられる。
【0020】
好ましくは、この基材は、少なくとも1種の元素金属、少なくとも1種の金属合金、少なくとも1種の金属含有化合物、又はこれらの組み合わせ(より好ましくは、少なくとも1種の元素金属、少なくとも1種の金属合金、又はこれらの組み合わせ、最も好ましくは少なくとも1種の元素金属)を含む。当該技術分野で理解されているように、元素金属は、比較的少量の不純物(例えば、約1重量パーセント以上まで)を含むことができ、かつなお元素金属であるとみなされ得る。
【0021】
物理的な支持体(例えば、ポリマーフィルム又はガラス又はシリコンウエハー)上の無機材料のコーティングは、例えば、約5ナノメートル〜約50マイクロメートルの、約10ナノメートル〜約10マイクロメートルの、又は約15ナノメートル〜約1000ナノメートルの本質的に任意の厚さであることもできる。無機材料コーティングは、任意の好都合な方法、例えば、スパッタリング、蒸着、化学気相成長法、又は化学溶液堆積法(無電解メッキを含む)を利用して物理的な支持体上に堆積可能である。
【0022】
本発明の方法における使用の無機材料のコーティングのための物理的な支持体の最小及び最大の厚さ(又は他の寸法)に対する特定の制約は存在しない。物理的な支持体がポリマーフィルムである場合には、好都合でかつ有用な厚さ寸法は、約10マイクロメートル〜約1ミリメートル(好ましくは、約25マイクロメートル〜約250マイクロメートル、より好ましくは、約50マイクロメートル〜約150マイクロメートル)の範囲であることができる。
【0023】
スタンプ又は版のレリーフパターンに従って基材に官能基形成性分子のパターンを転写するために、マイクロコンタクトプリンティングは、エラストマーでできたレリーフパターン形成されたスタンプ又は印刷版を、実質的に平坦な基材と組み合わせて使用することにより実施可能である。別法として、基材のレリーフパターンに従って基材に官能基形成性分子のパターンを転写するために、マイクロコンタクトプリンティングは、エラストマーでできた実質的に平坦なスタンプ又は印刷版を、レリーフパターン形成された(又は構造化又はミクロ構造化された)基材(例えば、エンボスされた表面構造を主表面上に持つコーティングされたポリマーフィルム)と組み合わせて使用することにより実施可能である(例えば、参照により本明細書に組み込まれている、米国特許出願公開第2008−0095985(A1)号(Freyら)で述べられているように)。本発明の方法は、下記に詳述する、いずれのモードでの印刷にも有用である。
【0024】
官能基形成性分子及びそれらの作製
本発明の方法の実施において官能基形成性分子として有用なペルフルオロポリエーテル有機イオウ化合物としては、少なくとも1つのペルフルオロポリエーテルセグメント及び少なくとも1つの有機イオウ基を含むものが挙げられる。有用な有機イオウ基としては、メルカプト(−SH)、ジチオ(−S−S−)、オキシチオカルボニルチオ(−O−C(=S)S−)、チオ(−S−)などのイオウ含有部分(このような部分は、それぞれチオール、ジスルフィド、キサンテート、及びスルフィド(チオエーテルを含む)化合物を特徴とする)など、及びこれらの組み合わせを含むものが挙げられる。
【0025】
好ましいペルフルオロポリエーテル有機イオウ化合物としてはペルフルオロポリエーテルチオール化合物が挙げられる。このような化合物は、参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第6,923,921号(Flynnら)で述べられているものを含む、さまざまな異なる既知の方法により作製可能である。ペルフルオロポリエーテルチオール化合物を既知の方法により酸化して、ペルフルオロポリエーテルジスルフィド化合物(例えば、対称又は非対称であることが可能な、ペルフルオロポリエーテルチオール化合物のジチオで連結された二量体の形の)を得ることができる。ペルフルオロポリエーテルスルフィド及びペルフルオロポリエーテルキサンテートを既知の方法により作製することができる。
【0026】
好ましいペルフルオロポリエーテル有機イオウ化合物としては、1つだけのペルフルオロポリエーテルセグメントを含有する、チオール、キサンテート、及びスルフィド、並びに2つだけのペルフルオロポリエーテルセグメントを含有する、ペルフルオロポリエーテルジスルフィド(好ましいジスルフィドは、例えば、好ましいチオールの二量体である)が挙げられる。このペルフルオロポリエーテルセグメントは、線状、分岐、環状(好ましくは、脂環式)、又はこれらの組み合わせであることができる。好ましくは、このペルフルオロポリエーテルセグメントは、一価又は二価であり、及び/又はこのペルフルオロポリエーテルセグメントは、少なくとも1つの二価のヘキサフルオロプロピレンオキシ基(−CF(CF)−CFO−)を含む。好ましいペルフルオロポリエーテルセグメントとしては、aが約4〜約20の平均値を有する、F[CF(CF)CFO]CF(CF)−、及びb+cが約4〜約15の平均値を有する、−CF(CF)(OCFCF(CFOCFCFCFCFO(CF(CF)CFO)CF(CF)−が挙げられる。このようなペルフルオロポリエーテルセグメントは、ヘキサフルオロプロピレンオキシドのオリゴマー化により入手可能であり、環境に対する性質が比較的優しいために優先され得る。
【0027】
有用なペルフルオロポリエーテルチオール化合物の類は、以下の一般式(I):
−[Q−(SH) (I)
により表すことができ、式中、Rは、一価又は二価のペルフルオロポリエーテル基であり、Qは二価、三価、又は四価の有機連結基であり、xは1〜3の整数(好ましくは1)であり、yは1又は2の整数(好ましくは1)である。R及びQに更に好ましいものとしては、式II及びIIIに関して下記に述べられるものが挙げられる。
【0028】
本発明の方法の実施において官能基形成性分子として使用するのに好ましいペルフルオロポリエーテル有機イオウ化合物としては、アミドで連結されたものが挙げられる。このようなアミドで連結された化合物としては、ペルフルオロポリエーテルセグメント(上述のような)、少なくとも1つのメルカプト基(−SH)、及び少なくとも1つの介在型又は介在型(interposed)の二価カルボニルイミノ部分(−C(=O)−N(R)−を含む、ペルフルオロポリエーテルチオール化合物が挙げられ、式中、Rは水素又はアルキルであり、好ましくは、アルキル基は1〜約4個の炭素原子を有する。この二価カルボニルイミノ部分は、炭素原子からペルフルオロポリエーテルセグメントに直接又は間接に(好ましくは、直接に)結合可能であり、窒素原子からメルカプト基に間接的に結合可能である。あるいは、この二価カルボニルイミノ部分は、炭素原子からメルカプト基に間接に結合可能であり、窒素原子からペルフルオロポリエーテルセグメントに間接的に結合可能である。好ましくは、このカルボニルイミノ部分は−C(=O)−NH−である(すなわち、Rは水素である)。
【0029】
有用なアミドで連結されたペルフルオロポリエーテルチオール化合物の類は、以下の一般式(II):
−[C(=O)−N(R)−Q−(SH) (II)
により表すことができ、式中、Rは、一価又は二価のペルフルオロポリエーテル基であり、Rは水素又はアルキルであり、Qは二価、三価、又は四価の有機連結基であり、xは1〜3の整数(好ましくは1)であり、yは1又は2の整数(好ましくは1)である。好ましくは、Rは水素又は1〜約4個の炭素原子(より好ましくは水素)を有するアルキル基であり、及び/又はQはアルキレン、シクロアルキレン、アリーレン、ヘテロアルキレン、及びこれらの組み合わせ(好ましくは、アルキレン、ヘテロアルキレン、及びこれらの組み合わせ、より好ましくは、アルキレン)から選択される二価基であり、所望によりカルボニル、カルボニルオキシ、カルボニルチオ、カルボニルイミノ、スルホンアミド、及びこれらの組み合わせ(好ましくはカルボニル、カルボニルオキシ、カルボニルイミノ、カルボニルチオ、及びこれらの組み合わせ、より好ましくは、カルボニルオキシ、カルボニルイミノ、及びこれらの組み合わせ)から選択され、所望によりアルキル、シクロアルキル、アリール、ハロ、及びこれらの組み合わせから選択され、少なくとも1つの部分により置換された、少なくとも1つの二価基を更に含む。
【0030】
好ましくは、Qは、少なくとも約2個の炭素原子及び/又は約30個未満若しくはそれに等しい炭素原子(より好ましくは、約20個未満又はそれに等しい炭素原子、更により好ましくは、約10個未満又はそれに等しい炭素原子、最も好ましくは、約6個未満又はそれに等しい炭素原子)を有する。特に好ましい連結基、Qとしては、−CHCH−、−CHCHCH−[NH−C(=O)]−CHCHCH−、
−CHCHCH−[N(CH)−C(=O)]−CHCHCH−、
−CHCHCH−[N(CH)−C(=O)]−CHCHCH−S−C(=O)−CHCHCH−、
−CHCH−[NH−C(=O)]−CHCHCH−、−CHCH−[O−C(=O)]−CHCH−、
−(CHCHO)−[C(=O)]−CHCH−、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0031】
は、直鎖状、分岐、環状、又はそれらの組み合わせであることができ、飽和又は不飽和であることもある。有用なR基の代表的な例としては、−(C2p)−、−(C2pO)−、−(CF(Z))−、−(CF(Z)O)−、−(CF(Z)C2pO)−、−(C2pCF(Z)O)−、−(CFCF(Z)O)−、及びこれらの組み合わせから選択されるペルフルオロ化繰り返し単位を有し、pが1〜約10(好ましくは、1〜約8、より好ましくは、1〜約6、なおより好ましくは、1〜約4、最も好ましくは、1〜約3)の整数であり、Zが線状、分岐、環状、又はこれらの組み合わせであり、かつ約12個未満又はそれに等しい炭素原子(好ましくは、約10個未満又はそれに等しい炭素原子、より好ましくは、約8個未満又はそれに等しい炭素原子、更により好ましくは、約6個未満又はそれに等しい炭素原子、更により好ましくは、約4個未満又はそれに等しい炭素原子、最も好ましくは、約3個未満又はそれに等しい炭素原子)を有し、及び/又は約4個未満又はそれに等しい酸素原子(好ましくは、約3個未満又はそれに等しい酸素原子、より好ましくは、約2個未満又はそれに等しい酸素原子、最も好ましくは、ゼロ又は1個の酸素原子)を有する、ペルフルオロアルキル、ペルフルオロポリエーテル、ペルフルオロポリエーテル、及びペルフルオロアルコキシ基から選択される、基が挙げられるが、これらに限定されない。これらのペルフルオロポリエーテル構造物においては、異なる繰り返し単位をブロック、交互、又はランダムの配列で組み合わせて、R基を形成することができる。
【0032】
が一価である場合、その末端基は、例えば(C2p+1)−又は(C2p+1O)−であることができ、ここでpは上記に定義したとおりのものである。有用な一価のR基の代表的な例としては、CO(CF(CF)CFO)CF(CF)−、CO(CFCFCFO)CFCF−、CFO(CO)CF−、CFO(CFO)(CO)CF−及びF(CFO(CO)(CF−(式中、nは、0〜約50の、約1〜約50の、約3〜約30の、約3〜約15の、又は約3〜約10の平均値を有し、qは、0〜約50の、約3〜約30の、約3〜約15の、又は約3〜約10平均値を有する)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0033】
有用な二価のR基の代表的な例としては、−CFO(CFO)(CO)CF−、−CFO(CO)CF−、−(CFO(CO)(CF−、及び−CF(CF)(OCFCF(CF))OC2tO(CF(CF)CFO)CF(CF)−(式中、n及びqは、上記に定義したとおりのものであり、sは、0〜約50の、約1〜約50の、約3〜約30の、約3〜約15の、又は約3〜約10の平均値を有し、q及びsの和(すなわち、q+s)は、0〜約50の、又は約4〜約40の平均値を有し、q及びnの和(すなわち、q+n)は、0よりも大きく、tは、約2〜約6の整数である)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0034】
本発明の方法における使用に好ましい類のアミドで連結されたペルフルオロポリエーテルチオール化合物は、以下の一般式(III):
’−(O[CF(CF)CFO]CF(CF)−[C(=O)−N(R)−Q−(SH)]) (III)
により表わすことができ、式中、R’は、線状又は分岐のペルフルオロアルキル又はペルフルオロアルキレン基(好ましくは、1〜約6個の炭素原子を有する)であり、aは、約4〜約20の平均値を有し、R、Q、x、及びyは、一般式IIに関して上記に定義したとおりのものである。
【0035】
有用なアミドで連結されたペルフルオロポリエーテルチオール化合物の代表的な例としては、aが約4〜約20の平均値を有し、b+cが約4〜約15の平均値を有する、次のもの:
F[CF(CF)CFO]CF(CF)−C(=O)−NH−(CH−N(CH)C(=O)−(CH−SH、
F[CF(CF)CFO]CF(CF)−C(=O)−NH−(CHSH、
HS−(CH−NH−C(=O)−CF(CF)(OCFCF(CF−OCFCFCFCFO(CF(CF)CFO)−CF(CF)−C(=O)−NH−(CHSH、
HS−(CH−C(=O)−NH−(CH−NH−C(=O)−CF(CF)(OCFCF(CF−OCFCFCFCFO(CF(CF)CFO)−CF(CF)−C(=O)−NH−(CH−NHC(=O)−(CH−SH、
F[CF(CF)CFO]CF(CF)−C(=O)NH−CHCH−O−C(=O)−CHCHSH、
F[CF(CF)CFO]CF(CF)−C(=O)NH−(CHCH−O)−C(=O)−CHCHSH、
HS−(CH−C(=O)−N(CH)−(CH−NH−C(=O)−CF(CF)(OCFCF(CF−OCFCFCFCFO(CF(CF)CFO)−CF(CF)−C(=O)−NH−(CH−N(CH)C(=O)−(CH−SH、
など、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0036】
このようなアミドで連結されたペルフルオロポリエーテルチオール化合物は、さまざまな異なる方法により作製可能である。例えば、メチルエステル、酸クロリド、又は酸フルオリドなどのペルフルオロポリエーテル誘導体を、アミン官能性アルカンチオール(例えば、2−アミノエタンチオール)又は対応するアルキルアンモニウム塩(例えば、SH−CHCH−NHCl)と、塩基性条件(例えば、NaOH又はKOH)下、水中で反応させることができる。しかしながら、このような方法は、所望のアミドで連結されたペルフルオロポリエーテルチオール化合物の収率が比較的低い、複雑な生成物の混合物をもたらすことができる。
【0037】
このように、好ましい作製方法は、所望の化合物をチオラクトンと対応するペルフルオロポリエーテルのアミン誘導体との開環の主生成物として比較的純粋な形でもたらすことができる。この方法は、(a)少なくとも1つのチオラクトン化合物(好ましくは、約5〜約8の環員を有するチオラクトン化合物、より好ましくは、約5〜約6の環員チオラクトン化合物)を提供する工程と、(b)少なくとも1つのアミドで連結されたペルフルオロポリエーテル置換の一級又は二級アミン化合物を提供する工程と、(c)チオラクトン化合物及びアミドで連結されたペルフルオロポリエーテル置換の一級又は二級アミン化合物(好ましくは、少なくとも1つの三級アミンの存在において)を混合する工程と、を含む。
【0038】
例えば、少なくとも1つのアミドで連結されたペルフルオロポリエーテル置換の一級又は二級アミン、少なくとも1つのチオラクトン(一般に、ペルフルオロポリエーテルアミンに対して少なくとも化学量論的な量;好ましくは、化学量論的な過剰)、及び所望により、少なくとも1つの無水の極性非プロトン性溶媒(例えば、テトラヒドロフラン(THF))を、任意の好適な反応器(例えば、磁気攪拌棒、還流コンデンサー、及び窒素入口を備えた丸底フラスコ)中で本質的に任意の順序で混合し、次いでこれを攪拌し、窒素雰囲気下で所望の反応温度(例えば、約75℃)に加熱することができる。次いで、少なくとも1つの三級アミン(少なくとも触媒量の)を、一般に、反応器内容物を攪拌又は振盪しながら、好ましくは温度コントロールしながら反応器に添加することができる(又は、連続的若しくは分割して添加することができる)。
【0039】
三級アミン添加を完結した後で、又は反応を完結させた後で、反応器を冷却及び通気することができ、反応器内容物を蒸留して、いかなる過剰のチオラクトン及びいかなる溶媒も除去することができる。所望ならば、場合によっては、生成物を水の中に注ぎ入れ、得られた混合物を相分離させることにより、得られた蒸留生成物を更に精製することができる(例えば、スペクトル分析の前に)。
【0040】
作製方法の実施における使用に好適なペルフルオロポリエーテル置換の一級及び二級アミン化合物は、既知の方法により作製可能である。例えば、メチルエステルなどのペルフルオロポリエーテル(上述の)誘導体を、少なくとも1つの一級アミノ基を有するジアミン化合物(例えば、1,3−ジアミノプロパンなど、約2〜約6個の炭素原子を有するジアミノアルカン)と、窒素雰囲気下で反応させることができる。
【0041】
このようなジアミンとの反応に好ましいペルフルオロポリエーテル誘導体を、ヘキサフルオロプロピレンオキシド(HFPO)のオリゴマー化により得ることができる。このようなオリゴマー化は、カルボニルフルオリド誘導体をもたらし、これを、既知の反応(例えば、参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第3,250,808号(Mooreら)に記載されている反応)によりメチルエステル又は他の誘導体に変換することができる。このようなオリゴマー化により作製されるカルボニルフルオリド誘導体は、さまざまなオリゴマー化度を有する、さまざまな分子量の化合物の混合物の形である(すなわち、この誘導体は単一化合物として合成されず、異なるペルフルオロポリエーテル基を持つ化合物の混合物として合成される)。好ましくは、この混合物は、少なくとも約400g/モル(より好ましくは、少なくとも約800g/モル;最も好ましくは、少なくとも約1000g/モル)の数平均分子量を有する。例えば、この混合物の数平均分子量は、400〜10000g/モル、800〜4000g/モル、又は1000〜3000g/モルであることができる。
【0042】
ペルフルオロポリエーテルジアシルフルオライド類は、ペルフルオロポリエーテルポリペルオキシド類を形成させる、テトラフルオロエチレン(TFE)の光酸化重合により作製可能である。ペルフルオロポリエーテルポリペルオキシド類は、物理的手法(例えば、熱的又は光化学処理)により、又は化学的手法(例えば、白金又はパラジウムなどの貴金属触媒の存在下で水素で還元することにより)還元することができる。この還元は、過酸化性のペルフルオロポリエーテル結合を破断し、及び−COF末端基とランダムに分布したジフルオロメチレンオキシ及びテトラフルオロエチレンオキシ部分とを有する低分子量のペルフルオロポリエーテル類を与えることができる。この合成方法は、例えば、参照により本明細書に組み込まれている、米国特許出願公開第2003/0013923(A1)号(Marchionniら)及び米国特許第5,354,922号(Marchionniら)に更に詳細に記述されている。
【0043】
1,1,2,2−テトラフルオロオキセタンのフッ化物で触媒されたオリゴマー化と、それに続く直接フッ素化により、ペルフルオロポリエーテルアシルフルオリドを作製することもできる(例えば、参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第4,904,417号及び同第4,845,268号(Ohsakaら)で述べられているように)。上述の手順を使用することにより、これらのアシルフルオリドをメチルエステルに変換することができる。
【0044】
作製方法の実施における使用に好適なチオラクトン化合物としては、ペルフルオロポリエーテルで置換された、一級又は二級アミンと混合した場合に、開環反応を行うことができるものが挙げられる。このチオラクトンを、当該技術分野において周知されているさまざまな標準的な合成手順のいずれかによっても作製することができる。あるチオラクトン(例えば、ガンマ−ブチロチオラクトン)は市販もされている。
【0045】
有用なチオラクトンの代表的な例としては、ガンマ−ブチロチオラクトン、デルタ−バレロチオラクトンなど、及びこれらの混合物が挙げられる。(所望ならば、混合物を使用することができるが、混合物は、一般に、精製を必要とする可能性のある生成物の混合物が生成することにより、あまり好ましくない。)ガンマ−ブチロチオラクトンは、好ましいチオラクトンである。
【0046】
作製方法の実施における使用に好適な三級アミンとしては、チオラクトンとペルフルオロポリエーテルで置換された、一級又は二級アミンとの反応を触媒することができるものが挙げられる。好ましくは、三級アミンは比較的低沸点を有する。当該技術分野において周知されているさまざまな標準的な合成手順のいずれかにより、三級アミンを作製することができ、多くのものは市販されている。
【0047】
有用な三級アミンの代表的な例としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、及びトリプロピルアミンなどのトリアルキルアミン;ピリジンなど;並びにこれらの組み合わせが挙げられる。好ましい三級アミンとしては、トリアルキルアミン(より好ましくは、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、及びこれらの組み合わせ、最も好ましくは、トリエチルアミン)が挙げられる。
【0048】
製造プロセスの実施における使用に好適な溶媒としては、グリコールエーテル溶媒(例えば、グリム、ジグリム、トリグリム、テトラグリムなど、及びこれらの混合物)、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、アセトニトリルなど、及びこれらの混合物などの無水の極性非プロトン性溶媒が挙げられる。好ましい溶媒としては、THF、グリム、ジグリム、トリグリム、テトラグリム、ジメチルホルムアミド、及びこれらの混合物が挙げられ、THF、グリム、ジグリム、ジメチルホルムアミド、及びこれらの混合物がより好ましく、THFが最も好ましい。
【0049】
パターン形成性組成物
本発明の方法の実施において有用なパターン形成性組成物は、上述のような少なくとも1つの官能基形成性分子を含む。所望により、しかし好ましくは、この組成物は、少なくとも1つの溶媒を更に含むことができる。有用な溶媒としては、官能基形成性分子が比較的高溶解性(例えば、約1ミリモル(mM)超又は更に約10ミリモル(mM)超の濃度において)であるものが挙げられる。この溶媒が官能基形成性分子と著しく反応しないことも好ましい。好ましくは、溶媒を含むパターン形成性組成物は、長期間(例えば、官能基形成性分子を包含する沈澱、分解、又は他の反応無しで数ヶ月又は更には数年)安定状態であることができる。
【0050】
パターン形成性組成物中での使用に好適な溶媒としては、アルコール、ケトン、芳香族化合物、ヘテロ環化合物、フッ素化溶媒など、及びこれらの組み合わせが挙げられる。他の有用な溶媒としては、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、エチルアセテート、テトラヒドロフラン(THF)、メチルt−ブチルエーテル(MTBE)など、及びこれらの組み合わせが挙げられる。好ましい溶媒としては、テトラヒドロフラン、メチルt−ブチルエーテル、エタノール、イソプロパノール、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0051】
マイクロコンタクトプリンティングは、スタンプのインク付けに無希釈の有機硫黄化合物を使用して実施されてきたが、例えば溶媒ベースの組成物によって行う場合には、スタンプへの有機硫黄化合物の送達は、より均一に達成でき、ポリジメチルシロキサン(PDMS)スタンプを使用した場合のスタンプの膨潤がより少ない。好ましい溶媒は、スタンプの上又は内部にこの有機硫黄化合物が急速かつ均一に付着するように調整された乾燥挙動を有するものである。好ましい溶媒は、大気圧で約50℃〜約100℃(より好ましくは、約55℃〜約85℃、最も好ましくは、約55℃〜約77℃と)の沸点を有する。
【0052】
このような溶媒は、好ましくは、マイクロコンタクトプリンティングに最も一般的に使用される材料であるPDMSとの使用に適合する(すなわち、PDMSを過剰に膨潤させることがない)。例えば、トルエン及びジエチルエーテルなどのいくつかの一般的な溶媒は、PDMSを膨潤させ過ぎるため、マイクロコンタクトプリンティングにおいて効果的に使用することができない。マイクロコンタクトプリンティングにおいて、PDMSスタンプの膨潤は、パターン形成された形体のひずみを引き起こし、パターン忠実度の低下をもたらす可能性がある。インク付着アプローチ方法によっては、過剰に膨潤すると、スタンプに機械的支持を提供することが顕著に困難になる可能性もある。
【0053】
それゆえ、好ましい溶媒は、比較的低いPDMS膨潤比、D/Dを有する。ここで、Dは溶媒中のPDMS片の長さであり、Dは乾燥時の同一のPDMS片の長さであり、PDMSはDow Corning(Midland,Michigan)から商品として入手可能な、Sylgard(商標)184 PDMSである。膨潤比の測定手順は、参照により本明細書に組み込まれている、Leeらによる「Solvent Compatibility of Poly(dimethylsiloxane)−Based Microfluidic Devices」(Analytical Chemistry Vol.75,pp.6544〜6554(2003))で述べられている。好ましい溶媒は、約1.25未満(より好ましくは約1.10未満;最も好ましくは約1.06以下)のPDMS膨潤比を有する。
【0054】
マイクロコンタクトプリンティングに好ましい溶媒は、約0.7未満の相対極性を有する。相対極性は、ピリジニウム−N−フェノキシドベタイン染料の最長波長ソルバトクロミズム吸収帯についての正規化遷移エネルギーであり、詳細はOrganic Chemistry,Second Editionの「Solvents and Solvent Effects」(C.Reichardt、VCH Verlagsgesellschaft mbH,Germany(1988))に記載されている。この正規化により、テトラメチルシランついて0.000及び水について1.000で制限される、無次元の相対極性尺度が生成される。多くの溶媒の相対極性の値は、Reichardtの上記文献に見出すことができる。
【0055】
ケトンなどは、マイクロコンタクトプリンティングに好適な溶媒であることができる。好ましい溶媒としては、例えば、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、エチルアセテートなど、及びこれらの組み合わせが挙げられる。アセトンは特に好ましい溶媒である。
【0056】
好ましくは、溶媒を使用する場合には、官能基形成性分子は、溶解度限界よりも小さい濃度で溶媒中に存在する。しかしながら、有用な組成物は、官能基形成性分子が溶媒中に完全に溶解しないものも含む。官能基形成性分子は、少なくとも約0.1mMの全濃度(すなわち、凝集体中に捕捉された全ての官能基形成性分子のモル濃度)で溶媒中に存在できる。好ましくは、官能基形成性分子の全濃度は、パターン形成性組成物がなお本質的に単一相からなる、任意の全濃度までの範囲である。官能基形成性分子は、少なくとも約1mMの、少なくとも約2mMの、少なくとも約5mMの、又は更に少なくとも約10mMの全濃度で存在することができる。
【0057】
パターン形成性組成物は、好ましくは、官能基形成性分子の固体粒子又は官能基形成性分子由来の固体粒子を本質的に含有しない(例えば、典型的には、官能基形成性分子の全重量の約10重量パーセントの、好ましくは、約5重量パーセント未満の、より好ましくは、約1重量パーセント未満のレベルで存在する)。最も好ましくは、パターン形成性組成物は、いかなるこのような固体粒子(例えば、非溶解粒子、再沈澱粒子、又は結晶の形の固体反応生成物、ゼラチン状沈澱物、又は酸化生成物の凝集物)を含有しない(すなわち、ゼロパーセント)。
【0058】
パターン形成性組成物は、所望ならば、比較的少量の一般的な添加物(例えば、安定化剤又は乾燥剤)を含む。有用な安定化剤の例としては、例えば、Srinivasらによる「Bioanalytical considerations for compounds containing free sulfhydryl groups」(Biomedical Chromotography Vol.17,pp.285〜291(2003))で述べられているものが挙げられる。好ましくは、安定化剤などの添加物を、ペルフルオロポリエーテル有機イオウ化合物の基材表面の官能基化を著しく妨害しないように充分に少量でこの組成物中に含むことができる。
【0059】
好ましいパターン形成性組成物は、(a)アミドで連結されたペルフルオロポリエーテルチオール化合物、アミドで連結されたペルフルオロポリエーテルジスルフィド化合物、アミドで連結されたペルフルオロポリエーテルキサンテート化合物、アミドで連結されたペルフルオロポリエーテルスルフィド化合物、及びこれらの組み合わせから選択される少なくとも1つのアミドで連結されたペルフルオロポリエーテル有機イオウ化合物(好ましくは、アミドで連結されたペルフルオロポリエーテルチオール化合物、アミドで連結されたペルフルオロポリエーテルジスルフィド化合物、及びこれらの組み合わせ、最も好ましくは、少なくとも1つのアミドで連結されたペルフルオロポリエーテルチオール化合物から選択される少なくとも1つのアミドで連結されたペルフルオロポリエーテル有機イオウ化合物、より好ましくは、少なくとも1つのアミドで連結されたペルフルオロポリエーテル有機イオウ化合物)と、(b)少なくとも1つの溶媒と、を含む。好ましくは、アミドで連結されたペルフルオロポリエーテル有機イオウ化合物は、少なくとも2つのカルボニルイミノ部分を含むか、又は少なくとも1つのカルボニルイミノ部分及び少なくとも1つのカルボニルオキシ部分を含む。
【0060】
パターン形成性組成物の塗布
パターン形成性組成物は、主表面の少なくとも1つの官能基化領域及び少なくとも1つの非官能基化領域を形成することができる本質的にいかなる方法でも基材の主表面に塗布可能である。これは、表面の一部のみに塗布すること、又は表面の本質的に全てに塗布し、続いてその一部から選択的に除去(例えば、紫外(UV)光、電子ビーム、衝突原子、走査プローブ顕微鏡のプローブ(走査トンネル顕微鏡又は原子間力顕微鏡)など又はこれらの組み合わせのパターンを用いてパターン形成された分解を行うことによる)することを伴うことができる。有用な塗布方法としては、フレキソ印刷、インクジェット印刷、グラビア印刷、ディップコーティング、スピンコーティング、スプレーコーティングなど、及びこれらの組み合わせなどの印刷及びコーティング法が挙げられる。
【0061】
好ましくは、この塗布方法は、官能基形成性分子の自己組織化モノレイヤー(SAM)を含む、官能基化領域をもたらす方法である。このような方法としては、基材の全部又は一部を溶液中に浸漬することによる溶液からの吸着、並びにマイクロコンタクトプリンティング、インクジェット印刷、トポグラフィ指向組み立て体など、及びこれらの組み合わせなどの方法が挙げられる。マイクロコンタクトプリンティングは、基材の表面にパターン形成性組成物を塗布する、優先される塗布方法である。
【0062】
このパターン形成性組成物をマイクロコンタクト印刷して、例えば、エッチングレジスト、結晶化のテンプレート、及び生物学研究用のモデル表面として有用な、パターン形成された官能基形成性分子(パターン形成されたSAMを含めて)を提供することができる。当該技術分野では既知であるように、このような印刷は、官能基形成性分子中の原子又は官能基の除去又は変成を生じる置換反応を含むことができる(例えば、Loveらによる「Self−Assembled Monolayers of Thiolares on Metals as a Form of Nanotechnology」(Chemical Reviews Vol.105,pp.1103〜1169(2005))で述べられているように、モノレイヤーを金属(M)、例えば金の上に形成する場合の、チオール(R−SH化合物)のチオレート(R−S−M)モノレイヤーへの変換)。このように、得られた印刷パターンは、パターン形成性組成物中の官能基形成性分子と化学的に異なる化合物又は分子を含むことができる。
【0063】
マイクロコンタクトプリンティングは典型的に、レリーフパターン形成されたエラストマー製スタンプを利用する。スタンプの形成に有用なエラストマーとしては、シリコーン、ポリウレタン、エチレンプロピレンジエンM−クラス(EPDM)ゴム、並びにさまざまな既存の市販のフレキソ印刷版材料(例えば、商品名Cyrel(商標)でE.I.du Pont de Nemours and Company(Wilmington,Delaware)から市販されている)が挙げられる。このスタンプを複合材料(例えば、織製繊維又は不織繊維補強と組み合わされた前述のエラストマーの1つ)から作ることができる。
【0064】
ポリジメチルシロキサン(PDMS)は、エラストマー性であり、低表面エネルギー(これによりスタンプを大多数の基材から取り外すのが容易)を有するので、スタンプ材料として特に有用である。PDMSも市販されている。有用な市販の配合物は、Sylgard(商標)184 PDMS(Dow Corning,Midland,Michigan)である。PDMSスタンプは例えば、パターン付き型に、無架橋のPDMSポリマーを流し入れ、次いで硬化させることにより形成することができる。パターン形成された形体は、例えば、ミリメートルのサイズ、マイクロメートルのサイズ、ナノメートルのサイズ、又はこれらの組み合わせであることができる。
【0065】
ペルフルオロポリエーテル有機イオウ化合物、特にペルフルオロポリエーテルチオール及びアミドで連結されたペルフルオロポリエーテルチオールを含む、本明細書で述べられているパターン形成性組成物と共に使用するのに特に有用なスタンプ材料としては、例えば、ヘキサフルオロプロピレン単位又はテトラフルオロエチレンオキシド単位を有するペルフルオロポリエーテルエラストマーが挙げられる。ペルフルオロポリエーテルエラストマー及びそれをベースとするスタンプの作製に好適な材料としては、例えば、米国特許第3,810,874号(Mitschら)及びJ.P.Rollandらによる「High−Resolution Soft Lithography:Enabling Material for Nanotechnologies」(Angewandte Chemie 43、5796(2004)で述べられている、反応性ペルフルオロポリエーテル含有化合物が挙げられている。一部のこのような化合物は、例えば、商品名CN 4000でSartomer Company(Exton,PA)から市販されている。
【0066】
スタンプは、当該技術分野において既知の方法(例えば、Libioulleらによる「Contact−Inking Stamps for Microcontact Printing of Alkanethiols on Gold」(Langmuir Vol.15、pp.300〜304(1999))に記載されている方法を使用して、このパターン形成性組成物により「インクを付ける」ことができる。1つのアプローチにおいては、このパターン形成性組成物を滲み込ませたアプリケータ(例えば綿棒又はフォームアプリケータ)をスタンプのレリーフパターン形成された表面にこすりつけ、次にこのスタンプ表面から溶媒を乾燥させることができる。別のアプローチにおいては、パターン形成性組成物を滲み込ませた「インクパッド」にスタンプを押し付けることができ、このインクパッドは所望によりPDMSスラブであり得る。別のアプローチにおいて、プリント面に対し裏側からこのスタンプにパターン形成性組成物を装填することができる。後者のアプローチにおいては、この官能基形成性分子がスタンプを通過して拡散し、プリントのレリーフパターン面に達する。あるいは、スタンプのレリーフパターンプリント面をパターン形成性組成物に浸漬し、次に引き上げて乾燥させることができる(「浸漬インク付け」)。上に記述したインク付け方法全てが、レリーフパターンのスタンプ表面にインクを与え、「インク付けされた表面」をもたらす。
【0067】
インク付けしたスタンプを使用し、基材の表面に官能基形成性分子のパターンを転写して、表面の少なくとも1つの官能基化領域及び少なくとも1つの非官能基化領域を形成することができる。インク付けしたスタンプ表面がレリーフパターンを有する場合、官能基形成性分子のパターンを基材表面に転写するために、インク付けされた表面は、基本的に平坦である基材表面に接触することができ、ここで、官能基形成性分子のパターンは、本質的に、スタンプのインク付けした表面のレリーフパターンの高くなった形体のパターンと同一である。このような方法においては、パターンは、スタンプのインク付けした表面のレリーフパターンに従って転写されるといわれる。
【0068】
インク付けしたスタンプ表面(あるいは、印刷版)がレリーフパターンを有する場合、官能基形成性分子のパターンを基材表面に転写するために、インク付けされた表面は、基本的に平坦である基材表面に接触することができ、ここで、官能基形成性分子のパターンは、本質的に、基材の表面のレリーフパターンの高くなった形体のパターンと同一である。このような方法においては、パターンは、基材の表面のレリーフパターンに従って転写されるといわれる。例えば、米国特許第6,518,168号(Clemら)は、この「逆マイクロコンタクトプリンティング法」を記述している。
【0069】
スタンプのインク付けした表面が、第一レリーフパターンを有する場合、第一レリーフパターンの高くなった形体と第二のレリーフパターンの高くなった形体との間で接触する領域(すなわち、レリーフパターンの交点)によって画定される、官能基形成性分子のパターンが転写するために、インク付けした表面は、第二レリーフパターンを有する基材表面に接触することができる。このような方法においては、官能基形成性分子のパターンは、両方の表面のレリーフパターンに従って転写されるといわれる。
【0070】
好ましくは、浸漬インク付けアプローチの使用において製造効率を達成するためには、インク付け時間(すなわち、スタンプがパターン形成性組成物に接触している時間)が可能な限り短く、同時に、適切なプリンティング性能を備えたインク付けされたスタンプを得ることが望ましい。乾燥時間(基材の表面と接触する前の)はできるだけ短いことも望ましいことができる。これらの要素によって、高濃度で安定であることができ、スタンプ表面上で急速に乾燥可能な、パターン形成性組成物に対する要望が推進される。
【0071】
好ましくは、スタンプ表面から比較的急速に蒸発させることができるように、パターン形成性組成物の溶媒を選択することができ、最小の時間及び強制空気の適用と共に、このことは、スタンプ上又はスタンプ内での官能基形成性分子の比較的均一な分布を得るのにも有用であり得る。浸漬インク付けに対しては、インク付け時間は、約60秒未満であることが好ましく、より好ましくは約45秒未満、より好ましくは約30秒未満、更により好ましくは約15秒未満である。
【0072】
引き上げ及び乾燥を行った後、インク付けしたスタンプを、このスタンプのレリーフパターン表面の高くなった領域に接触するように、基材の表面と接触して配置することができる。官能基形成性分子は、スタンプから基材表面上へと拡散し、ここで、SAMを形成することができる。
【0073】
必要なプリンティング時間(すなわち、スタンプと基材との接触持続時間)は、例えばパターン形成性組成物の濃度及びスタンプに適用される圧力などのさまざまな要素に依存して、変わることができる。いくつかの実施形態において、プリント時間は、1分未満(好ましくは約30秒未満、より好ましくは約10秒未満、最も好ましくは約5秒未満)である。
【0074】
エッチング
基材の表面の得られた官能基化領域(好ましくは、パターン形成性組成物の官能基形成性分子により形成されるパターン形成されたSAMを含む)を、例えば、以降のパターン形成工程時に下地の基材表面を保護するレジストとして使用することができる。例えば、官能基化領域は、エッチングマスクとしての役目をすることができる。エッチングマスクとして、基材表面(例えば、ポリマーフィルム上の金属コーティングの表面)の官能基化領域は、エッチング剤の作用に抗して保護可能であり、基材表面の非官能基化領域は、保護されず、非官能基化領域中の材料(例えば、金属)の選択的除去を可能とさせる。
【0075】
基材のエッチングは、使用される特定の基材の非官能基化領域の少なくとも一部をエッチングすることができる、本質的に任意の既知の方法又はこれ以降開発される方法により実施可能である。このような方法は、ガス状エッチング剤(「ドライエッチング」を提供する)、エッチング剤溶液(「ウエットエッチング」を提供する)など、及びこれらの組み合わせを含む、化学エッチング剤の使用を包含する。ドライエッチングは、その制御性により優先されることができるが、ウエットエッチングは、一般に、経済的な理由及びエッチング副生成物の除去の容易さにより優先される。
【0076】
好ましくは、非官能基化領域のエッチングは、選択的であること、言い換えれば、官能基化領域の著しいエッチングが起こらないことである(例えば、単位面積当りで非官能基化領域からエッチングされる量の約50パーセント未満の、好ましくは、約25パーセント未満の、より好ましくは、約10パーセント未満の、最も好ましくは、約5パーセント未満のエッチング)。既知の方法(例えば、透過光の減衰、形状測定、重量分析などに基づく方法)を使用することにより、エッチング後に残存する材料の量に相補的な官能基化領域又は非官能基化領域からエッチングされる材料の量を求めることができる。
【0077】
有用な化学エッチング浴は、エッチング剤種を水又は非水性溶媒に溶解する(例えば、エッチング剤の性状に従って、振盪又は攪拌、pH制御、温度制御、及び/又は消費時のエッチング剤種の補充)ことにより、作製可能である。エッチング剤と基材との間の接触は、本質的に任意の有効な方法で達成され得る。
【0078】
例えば、基材を浴中にある時間(基材及び/又はエッチング剤に性状によって変わり得る)浸漬することができるか、あるいはエッチング剤溶液を基材の上にスプレーすることができる。一部のウエットエッチング工程では、エッチング時にエッチング浴、基材、又はその両方を振盪することが有用であり得る(例えば、攪拌、流動、及び/又はエッチング浴の超音波による活性化により、及び/又は基材の揺動、平行移動、回転、及び/又は振動により)。
【0079】
有用な化学エッチング剤としては、例えば金、銀、銅、パラジウム、白金などの金属のエッチングに使用されてきたもの(例えば、塩化第二鉄ベースの、シアン酸塩/酸素ベースの、フェロシアン酸塩/フェリシアン酸塩ベースの、チオ尿素ベースの、及びヨウ化カリウム/ヨウ素ベース(KI/I;「三ヨウ化物」)のエッチング剤系など、及びこれらの組み合わせ)が挙げられる。一部のウエット化学エッチング剤は市販されている(例えば、Transene Company,Inc.(Danvers,MA)から)。
【0080】
ヨウ化カリウム/ヨウ素ベースのエッチング剤(三ヨウ化物エッチング剤系の1つの例)は、市販されており、かつ安定性(例えば、数週間)、容量(例えば、約20グラム超のエッチング剤1リットル当り除去される基材)、速度(例えば、1分当り約25〜660ナノメートルのエッチング速度)、及び安全性(例えば、W.Eidelloth及びR.L.Sandstromの「Wet etching of gold films compatible with high Tc superconducting thin films」(Applied Physics Letters 59(13),1632(1991)を参照のこと)の強力な組み合わせをもたらすので、金又は銀のエッチングパターン形成において優先される可能性がある。他の有用な三ヨウ化物エッチング剤系としては、ヨウ化アンモニウム(NHI)及びヨウ素(I)を含む水溶液が挙げられる(例えば、T.Masudaらの「Visualization of DNA hybridization on gold thin film by utilizing the resistance effect of DNA monolayer」(Sensors and Actuators B 105、556(2005)を参照のこと)。
【0081】
当該技術分野で既知であるように、ヨウ化カリウム塩及びヨウ素ビーズ(出発材料として)と水との組み合わせにより形成される単純なエッチング剤溶液では、追加のヨウ素含有種が生成し、出発材料又は出発材料の可溶性成分との化学平衡で存在することができる。三ヨウ化物種がヨウ化物塩及びヨウ素の出発材料から形成される、I、I、及びI種の平衡挙動はよく知られている(例えば、R.W.Ramette及びR.W.Sandford,Jr.による「Thermodynamics of Iodine Solubility and Triiodide Ion Formation in Water and in Deuterium Oxide」(Journal of the American Chemical Society 87(22)、5001(1965)を参照のこと)。
【0082】
金のエッチングを含めて、三ヨウ化物エッチング剤系のエッチング挙動は既知で、有用であるにも拘わらず、金属(例えば、金)のパターン形成に対する官能基形成性分子(例えば、アルキルチオール分子)の印刷マスクとの組み合わせは、困難なものであった(例えば、D.Burdinski及びM.H.Bleesによる「Thiosulfate−and Thiosulfonate−Based Echants for the Patterning of Gold Using Microcontact Printing」(Chemistry of Materials 19、3933(2007)を参照のこと)。しかしながら、本発明の方法における使用のための本明細書で開示されている官能基形成性分子は、微細寸法パターン(例えば、マイクロコンタクトプリンティングにより)で印刷可能であり、少なくとも適当な耐性を呈して、三ヨウ化物ベースのエッチング剤用のエッチングマスクの役割をすることができる。
【0083】
本発明の方法の実施における使用のためには、三ヨウ化物エッチング剤の出発材料を溶媒と、所望のエッチング性をもたらすことができる本質的に任意の濃度で混合することができる。例えば、ヨウ化物塩(例えば、ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウム又はヨウ化アンモニウム)、ヨウ素(I)、及び水を、それぞれ約0.5〜5及び約2〜20重量パーセントの塩及びヨウ素に対する好ましい濃度範囲で混合することにより、金を含むエッチング基材において使用するための三ヨウ化物エッチング剤を作製することができる。これらの範囲の下端に基づく組み合わせは、金を遅い速度(例えば、1分当り約25ナノメートル未満の)でエッチングするのに有用であり、同時にこれらの範囲の上端に基づく組み合わせは、金を速い速度(例えば、1分当り約600ナノメートル超の)でエッチングするのに有用であることができる。
【0084】
金を含むエッチング基材において使用するための好ましい三ヨウ化物エッチング剤配合物は、ヨウ化物塩重量パーセントレベルの約2〜約5倍である重量パーセントレベルでヨウ素を含む。モル濃度の形で、エッチング剤の配合物中に示される、ヨウ化物塩及びヨウ素に対するこれらの好ましい範囲は、それぞれ約0.02M〜約0.25M及び約0.1M〜約1.5Mである。知られているように、I、I、及びIの間の平衡によって、「ヨウ化物種」の実際の濃度はバッチのレベルから変化する。
【0085】
本発明の方法の好ましい実施形態ではパターン形成性組成物(好ましくは、上述の好ましいパターン形成性組成物、又は溶媒無しの対応する組成物)の基材(好ましくは、金を含む基材)への塗布は、マイクロコンタクトプリンティングにより行われ、基材のエッチングは、三ヨウ化物(例えば、ヨウ化カリウム/ヨウ素をベースとする)エッチング剤系を用いて、化学エッチングにより行われる。
【0086】
任意のプロセス工程
所望ならば、基材表面は、パターン形成性組成物を塗布する前に多数の異なる方法のいずれかにより処理可能である。任意の処理方法の例としては、紫外光−オゾンクリーニング、酸素プラズマクリーニング、溶媒脱脂、高圧洗浄、及び洗剤をベースとするクリーニングが挙げられる。
【0087】
所望ならば、基材の無電解又は電解オーバーめっきを行い、続いてパターン形成性組成物を除去することができる。これは、電流を運ぶ材料を形体に選択的に添加することによる得られたパターンの金属的な形体の電気伝導の増幅をもたらすことができる。このような添加物後処理は、ある用途ではより厚い金属堆積物のエッチングパターン形成よりも優先可能である(例えば、技術的な困難が少ないこと、又はコストが低いことにより)。
【実施例】
【0088】
本発明の目的及び利点は、以下の実施例によって更に例示されるが、これらの実施例において列挙された特定の材料及びその量は、他の諸条件及び詳細と同様に、本発明を過度に制限するものと解釈されるべきではない。これらの実施例は単にあくまで例示を目的としたものであり、添付した特許請求の範囲の範囲に限定するものではない。
【0089】
官能基形成性分子の作製
材料
ガンマ−ブチロチオラクトン、メルカプトエタノールアンモニウムヒドロクロリド、トリエチルアミン、N−メチル−1,3−ジアミノプロパン、モノエタノールアミン、エチレンジアミン、ジイソプロピルエチルアミン、及びメタンスルホニルクロリドをAldrich Chemical Company(Milwaukee,WI)から入手した。全ての溶媒は商用源から入手される標準の試薬グレードであり、特記しない限り更に精製せずに使用した。
【0090】
特記しない限り、「HFPO−」は、メチルエステルF(CF(CF)CFO)CF(CF)C(=O)OCHの一価の末端基F(CF(CF)CFO)CF(CF)−を指し、ここで「a」は平均約6.7であり、メチルエステルは約1,211g/モルの平均分子量を有する。参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第3,250,808号(Mooreら)に述べられている方法により、このメチルエステルを作製し、分留により精製した。FC−4の手続きにより、米国特許出願公開第2005/0250921号(Qiuら)6及び7ページに述べられているように、モノエタノールアミンにより処理することにより、このメチルエステルをアミドールHFPO−C(=O)NHCHCHOHに変換した。
【0091】
対応するオリゴマービス−酸フルオリドをもたらす、米国特許第3,250,807号(Fritzら)で述べられている方法に本質的に従って、FC(=O)CFCFC(=O)Fを出発材料として用いて、b+cが平均約8.4である、ジメチルエステルCHO(O=)C−CF(CF)(OCF(CF)CFOCFCFCFCFO−(CFCF(CF)O)CF(CF)−C(=O)OCH3、を作製し、続いて、参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第6,923,921号(Flynnら)に従って、メタノール分解及び分留により低沸点材料を除去することによる精製を行った。特記しない限り、「−HFPO−」は、二価のオリゴマー−CF(CF)(OCF(CF)CFOCFCFCFCFO(CFCF(CF)O)CF(CF)−を指す。したがって、上述のジメチルエステルは、アルファ,オメガ−HFPO−[C(=O)OCHと命名可能である。
【0092】
米国特許第7,335,786号(Iyerら)、合成実施例1で述べられているように、HFPO−C(=O)NH−CHCHCH−N(CH)Hを作製した。
【0093】
米国特許第7,335,786号(Iyerら)、合成実施例3で述べられているように、HFPO[−C(=O)NH−CHCH−NHを作製した。
【0094】
HFPO−C(=O)NHCHCHOCHCHOHを次の手順により作製した:
磁気攪拌棒、油浴、還流コンデンサー、及び窒素入口を備えた500mLの丸底フラスコにHFPO−C(=O)OCH(70g、0.0537モル)及びNH−CHCH−O−CHCH−OH(5.65g、1モル等量)を窒素雰囲気下で装填した。得られた混合物を75℃で16時間攪拌した。次いで、混合物の試料を赤外分光法(IR)及びプロトン(H)NMRにより分析し、得られたスペクトルデータにより所望の生成物の形成を確認した。この混合物を塩水(5×50mL)により洗浄し、メチルt−ブチルエーテル(MTBE)により抽出した。得られた抽出物をMgSO上で乾燥し、濾過し、ロータリーエバポレータを用いて溶媒を除去し、次いで真空下で室温で12時間保持する。
【0095】
SON(CH)CHCHOH(MeFBSE)及びHFE−7100(メチルペルフルオロブチルエーテル)を3M Company(St.Paul,MN)から入手した。
【0096】
SO−N(CH)CHCH−NHを次の手順で作製した:
N−メチルノナフルオロブタンスルホンアミド(626g、2モル、3M Company(St.Paul,MN)、2−エチル−2−オキサゾリン(198g、2モル、Alfa Aesar,Ward Hill,MA)、及び炭酸ナトリウム(17g、0.16モル、EMD Chemicals,Gibbstown,NJ)を混合し、140℃で16時間加熱して、N−(2−(N−メチルノナフルオロブタンスルホンアミド)エチル)プロピオンアミドを形成した。このアミドを250mLの脱イオン水により2回抽出し、250mLの濃塩酸及び100mLの脱イオン水と共に100℃で18時間加熱し、925mLの24重量パーセント水酸化ナトリウム水溶液により抽出し、250mLの10重量パーセント水酸化ナトリウム水溶液により抽出し、及び蒸留して、N−(2−アミノエチル)−N−メチルノナフルオロブタンスルホンアミド(538g;75パーセント回収;ガスクロマトグラフィ(GC)により94パーセント純度;2mmHg圧力下で104〜109℃で蒸留)を得た。
【0097】
HFPO−C(=O)−NH−(CH−N(CH)C(=O)−(CH−SHの合成
(分子番号1)
磁気攪拌棒、油浴、還流コンデンサー、及び窒素入口を備えた50mLの丸底フラスコにHFPO−C(=O)NH−CHCHCH−N(CH)H(5g、0.0039モル)、ガンマ−ブチロチオラクトン(4.03g、10モル等量)及びテトラヒドロフラン(THF)(25g)を窒素雰囲気下で装填する。得られた混合物は濁っており、室温で5分間攪拌した。トリエチルアミン(3.985g、10モル等量)を注射器により室温で混合物に滴加した。混合物は、トリエチルアミンの添加後透明になり、得られた混合物を75℃で16時間攪拌した。過剰の未反応のガンマ−ブチロチオラクトンを真空下で留出させ、得られた混合物を氷水の中に注いだ。得られた有機相をHFE−7100により抽出し、MgSO上で乾燥し、濾過した。溶媒を真空下で除去することによって、ペーストを残し、核磁気共鳴分光法(NMR)及びガスクロマトグラフィ−質量分光法(GC−MS)により分析した。得られたスペクトルデータは所望の生成物の形成と一致した。
【0098】
HFPO−C(=O)−NH−CHCH−SHの合成
(分子番号2)
磁気攪拌棒、油浴、還流コンデンサー、及び窒素入口を備えた500mLの丸底フラスコにHFPO−C(=O)OCH(100g、0.0761035モル)及びNH−CHCH−SH(7.05g、1.2モル等量)を窒素雰囲気下で装填した。得られた混合物を75℃で16時間攪拌した。次いで、混合物の試料を赤外分光法(IR)及びプロトン(H)NMRにより分析し、得られたスペクトルデータによって所望の生成物の形成を確認した。混合物をCHCl(5×50mL)により洗浄し、CHCl洗浄液を合わせ、MgSO上で乾燥し、濾過し、得られた生成物から溶媒を真空下室温で12時間除去した。
【0099】
HFPO−[C(=O)−NH−(CHSH]の合成
(分子番号3)
磁気攪拌棒、油浴、還流コンデンサー、及び窒素入口を備えた500mLの丸底フラスコにアルファ,オメガ−HFPO−[C(=O)OCH(50g、0.0325モル)及びNH−CHCH−SH(6.035g、2.4モル等量)を窒素雰囲気下で装填した。得られた混合物を75℃で16時間攪拌した。混合物の試料をIR及びH NMRにより分析し、得られたスペクトルデータにより所望の生成物の形成を攪拌した。混合物をCHCl(5×50mL)により抽出し、合わせたCHCl抽出物をMgSO上で乾燥し、濾過し、溶媒を真空下で12時間除去した。
【0100】
HFPO[−C(=O)−NH−(CH−NHC(=O)−(CH−SH]の合成
(分子番号4)
磁気攪拌棒、還流コンデンサー、及び窒素入口を備えた250mLの丸底フラスコにHFPO[−C(=O)NH−CHCH−NH(10g、0.00628モル)、ガンマ−ブチロチオラクトン(6.4g、20モル等量)、及びTHF(80g)を窒素雰囲気下で装填した。得られた混合物は濁っていて、室温で5分間攪拌した。トリエチルアミン(6.3g、20モル等量)を注射器により室温で混合物に滴加した。混合物は、トリエチルアミンの添加の後透明になり、75℃で16時間攪拌した。過剰の未反応のガンマ−ブチロチオラクトンを留出させ、得られた混合物を氷水の中に注いだ。得られた有機相をHFE−7100の中に抽出し、MgSO上で乾燥し、濾過し、溶媒を真空下室温で除去した。得られたペーストをNMR及びGC−MSにより分析し、得られたスペクトルデータにより所望の生成物の形成を確認した。
【0101】
HFPO−C(=O)−NH−CHCH−O−C(=O)−CHCH−SHの合成
(分子番号5)
磁気攪拌棒、油浴、ディーン−シュタルク装置、還流コンデンサー、及び窒素入口を備えた500mL丸底フラスコにHFPO−C(=O)NHCHCHOH(100g、0.06463モル)、HO(O=)C−CHCH−SH(8.23g、0.077モル)、p−トルエンスルホン酸(13g)、及びトルエン(600g)を窒素雰囲気下で装填した。得られた混合物を還流させ、16時間攪拌した。混合物を冷却し、濾過し、溶媒をロータリーエバポレータにより混合物から除去した。得られた残渣を水(500mL×6回)により洗浄し、得られた有機部分をメチルt−ブチルエーテル(MTBE)(500mL)に溶解し、MgSO上で乾燥し、濾過し、ロータリーエバポレーターにより除去して、所望の生成物を73パーセントの収率で得た。
【0102】
HFPO−C(=O)−NH−(CHCH−O)−C(=O)−CHCH−SHの合成
(分子番号6)
磁気攪拌棒、油浴、ディーン−シュタルク装置、還流コンデンサー、及び窒素入口を備えた500mLの丸底フラスコにHFPO−C(=O)NHCHCHOCHCHOH(100g、0.0727モル)、HO(O=)C−CHCH−SH(9.65g、0.090モル)、p−トルエンスルホン酸(13g)、及びトルエン(600g)を窒素雰囲気下で装填した。得られた混合物を還流し、16時間攪拌した。混合物を冷却し、濾過し、溶媒をロータリーエバポレータにより混合物から除去した。得られた残渣を水(500mL×6回)により洗浄し、得られた有機部分をMTBE(500mL)に溶解し、MgSO上で乾燥し、濾過し、溶媒をロータリーエバポレータにより除去して、所望の生成物を82パーセントの収率で得た。
【0103】
SON(CH)CHCHNH−C(=O)−CHCHCHSHの合成
(比較用分子C−1)
磁気攪拌棒、油浴、還流コンデンサー、及び窒素入口を備えた250mLの丸底フラスコにCSON(CH)CHCHNH(10g、0.028モル)、ガンマ−ブチロチオラクトン(28.083g、10モル等量)、及びTHF(75g)を窒素雰囲気下で装填した。得られた混合物は濁っており、室温で5分間攪拌した。トリエチルアミン(28.3g、10モル等量)を注射器により室温で混合物に滴加した。トリエチルアミンの添加後、混合物は透明になり、75℃で16時間攪拌した。過剰のガンマ−ブチロチオラクトンを留出させ、得られた混合物を氷水の中に注いだ。得られた有機相をCHCl中に抽出し、洗浄液を合わせ、MgSO上で乾燥し、溶媒を真空下室温で除去した。得られたペーストをNMR及びGC−MSにより分析し、得られたスペクトルデータにより所望の生成物の形成を確認した。
【0104】
SON(CH)CHCH−SHの合成
(比較用分子C−2)
35.7g(0.1モル)のMeFBSE、14.0gのジイソプロピルエチルアミン、及び200mLのジクロロメタンの混合物を、20mLのジクロロメタン中の11.5gのメタンスルホニルクロリドにより滴単位で処理した。処理した混合物を水により洗浄し、MgSO上で乾燥した後、溶媒を混合物から除去して、50.4gの白色固体を得た。この固体(8.7g)を10mLのグリム中の2.2gのチオ尿素と共に約60℃で一夜加熱して、沈澱物を生成させた。エチルエーテルを沈澱物を含有するグリムに添加し、得られた混合物を濾過して、5.0gのイソチオウロニウム塩を得た。この塩を希NaOH中で加熱し、得られた溶液を酸性として、チオールを白色固体として沈澱させた。この固体のGC/MSデータによって所望の生成物の形成を確認した。
【0105】
SON(CH)CHCHOC(=O)CHCHSHの合成
(比較用分子C−3)
MeFBSEA(10g、0.028モル)、SH−CHCH−COOH(3.56g、0.0336モル)、及びp−トルエンスルホン酸(PTSA)(1g、出発アルコール基準で10重量パーセント)の混合物をトルエン中で還流した。この混合物の反応をIRによりモニターし、アルコールのピークの消失後、トルエンを留出し、得られた生成物を塩水の中に添加した。得られた有機部分をジクロロメタンにより抽出し、水により洗浄し、MgSO上で乾燥した。
【0106】
比較用分子C−4、C−5、及びC−6の合成
これらの官能基形成性分子(下記の表1に示す化学構造を有する)を、R.S.Clegg and J.E.Hutchisonによる「Control of Monolayer Assembly Structure by Hydrogen Bonding Rather Than by Adsorbate−Substrate Templating」(Journal of the American Chemical Society 121、5319(1999))に記述されている方法により合成した。
【0107】
比較用分子C−7及びC−8
これらの分子(下記の表1に示す化学構造を有する)を、それぞれカタログ番号08686(1H,1H,2H,2H−ペルフルオロ−1−デカンチオール)及び674516(1−ヘキサデカンチオール)としてAldrich Chemical Company(Milwaukee,Wisconsin)から購入した。
【0108】
実施例1〜6及び比較例C−1〜C−8:
浸漬による塗布
パターン形成性組成物の作製
それぞれの分子を表1に示す比率で溶媒(エタノール(EtOH)又はテトラヒドロフラン(THF)のいずれか)と合わせることにより、下記の表1に示すさまざまな官能基形成性分子を使用して、一連のパターン形成性組成物を作製した。
【0109】
【表1】

【0110】
金でコーティングされたポリマーフィルムを含む基材の作製
2つのタイプのポリマーフィルムを使用して、金でコーティングされたポリマーフィルムを基材として作製した。1つのタイプのフィルムは、およそ1センチメートル平方の形のポリエチレンナフタレート「PEN」フィルム(Dupont(商標)、Teijin(登録商標)TEONEX(登録商標)Q65FA、100マイクロメートル厚、E.I.Du Pont de Nemours and Company,Wilmington,Delaware)であった。70ナノメートルの金によりスパッタリングすることにより、PENフィルムの主表面をコーティングした。もう1つのタイプのフィルムは、およそ1センチメートル平方の形のポリエチレン−テレフタレート「PET」フィルム(Dupont(商標)、Teijin(登録商標)TEONEX(登録商標)ST504、125マイクロメートル厚、E.I.DuPont de Nemours and Company,Wilmington,Delaware)であった。熱蒸着(DV−502A熱蒸着器、Denton Vacuum,Moorestown,New Jersey)により、PETフィルムの主表面を、最初に20オングストロームのクロムでコーティングし、次いで70ナノメートルの金でコーティングした。
【0111】
基材へのパターン形成性組成物の塗布手順
金属化後、得られた、金がコーティングされたポリマーフィルムを、下記の実施例で特定されるさまざまな時間上記の表1に示したパターン形成性組成物のそれぞれの中で浸漬した。次いで、得られた浸漬処理された金属化フィルムをエタノールによりリンスし、窒素流により乾燥した。
【0112】
エッチング剤及びエッチング手順
リンス及び乾燥後、浸漬処理された金属化フィルム(パターン形成性組成物への浸漬により形成された自己組織化モノレイヤー(SAM)エッチングマスクを担持する)を、さまざまなエッチング剤溶液に浸漬して、SAMエッチングマスクを調べた。フェリシアン酸塩エッチング剤、社内で作製したKI/Iエッチング剤及び市販のKI/Iエッチング剤を金エッチング剤として使用した。
【0113】
0.042グラムのフェロシアン酸カリウム三水和物(製品番号1−3114、J.T.Baker Chemical Company,Phillipsburg,New Jersey)、0.329グラムのフェリシアン酸カリウム(製品番号24,402−3、Aldrich Chemical Company,Milwaukee,Wisconsin)、1.90グラムのチオ硫酸カリウム(製品番号P24005、Pfaltz & Bauer,Inc.,Waterbury,Connecticut)、5.61グラムの水酸化カリウム(「Flake Caustic Potash」,IMC Chemical Group,Inc.,Niagara Falls,New York)、及び92.5グラムの脱イオン(DI)水を混合することにより、フェリシアン酸塩エッチング剤溶液を作製した。それぞれの浸漬処理された金属化フィルムをこのエッチング剤溶液に45分間浸漬した。
【0114】
10グラムのヨウ化カリウム(Aldrich Chemical Company,Milwaukee,Wisconsin)、5グラムのヨウ素(Aldrich Chemical Company,Milwaukee,Wisconsin)、及び85グラムのDI水を混合することにより、社内で作製したKI/Iエッチング剤溶液を作製した。それぞれの浸漬処理された金属化フィルムをこのエッチング剤溶液中で25秒間浸漬した。
【0115】
市販のKI/Iエッチング剤をTransene Company(Silver Etchant TFS,Transene Company,Inc.,Danvers,Massachusetts)から購入した。それぞれの浸漬処理された金属化フィルムをこのエッチング剤溶液中で15秒間浸漬した。
【0116】
エッチング耐性の特性評価
目視観察を行って、エッチング耐性を評価した。高耐性SAMによって、SAMエッチングマスクの下地となる金コーティングのエッチングは極めて限定的となるか、又は起こらなかった。低耐性SAMによれば、金コーティングのエッチングが妨げられることはなかった。エッチング耐性の定量的な評点付けに5ポイントの尺度を使用した(5−最高の耐性;1−最低の耐性)。
【0117】
実施例1〜4並びに比較例C−1及びC−2
一連の正方形の浸漬処理された金属化PENフィルム(上記の表1中の分子1〜4、C−1、及びC−2を含むパターン形成性組成物に対応する)をフェリシアン酸塩エッチング剤溶液中に45分間浸漬し、次いで水でリンスした。第2の一連の正方形の浸漬処理された金属化PENフィルム(上記の表1中の分子1〜4、C−1、及びC−2を含むパターン形成性組成物に対応する)を社内で作製したKI/Iエッチング剤溶液中に25分間浸漬し、次いで水でリンスした。得られた試料の全部を上述の方法に従って特性評価し、得られたエッチング耐性評点を下記の表2に示す。
【0118】
実施例5〜6及び比較例C−3〜C−6
一連の正方形の浸漬処理された金属化PETフィルム(上記の表1中の分子5〜6、C−3〜C−6を含むパターン形成性組成物に対応する)を市販のKI/Iエッチング剤溶液に15秒間浸漬し、次いで水でリンスした。得られた試料の全部を上述の方法に従って特性評価し、得られたエッチング耐性評点を下記の表2に示す。
【0119】
比較例C−7及びC−8
一対の正方形の浸漬処理された金属化PENフィルム(上記の表1中の分子C−7及びC−8を含むパターン形成性組成物に対応する)をフェリシアン酸塩エッチング剤溶液中に45分間浸漬し、次いで水でリンスした。第2の一対の正方形の浸漬処理された金属化PETフィルム(上記の表1中の分子C−7及びC8を含むパターン形成性組成物に対応する)を市販のKI/Iエッチング剤溶液に25秒間浸漬し、次いで水でリンスした。得られた試料の全部を上述の方法に従って特性評価し、得られたエッチング耐性評点を下記の表2に示す。
【0120】
比較例C−9
正方形の非処理金属化PENフィルムをフェロシアン酸塩エッチング剤溶液中に45分間浸漬し、次いで水でリンスした。第2の正方形の非処理金属化PETフィルムを市販のKI/Iエッチング剤溶液に25秒間浸漬し、次いで水でリンスした。得られた試料の両方を上述の方法に従って特性評価し、得られたエッチング耐性評点を下記の表2に示す。
【0121】
【表2】

【0122】
実施例7〜11及び比較例C−10〜C−15:
マイクロコンタクトプリンティングによる塗布
スタンプ作製
フォトレジスト(Shipley1818,Rohm and Haas Company,Philadelphia,Pennsylvania)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、混合クレゾールノボラック樹脂、及びジアゾ光活性化合物を含む塩基可溶性ポジ型フォトレジスト)のパターンを、10センチメートル直径のシリコンウエハー上に作製することにより、エラストマースタンプを成形するためのマスターツールを生成した。この設計は、正方形の形状物の間に5マイクロメートルの間隙(スタンプ中の凹んだ形体)を持つ、正方形の形体(それぞれの正方形の形体は約95マイクロメートル×95マイクロメートルの寸法であり、マスク中の開口領域及び得られたスタンプ中の高くなった形体)の正方配列を含むものであった。フォトレジストをウエハー上におよそ1.8マイクロメートルの厚さにスピンコートした。正方形の形体の正方配列を画定する、クロム中に開口を持つ別個のバイナリのクロムフォトマスクを使用して、パターン形成のためにフォトレジストを露光した。フォトレジストの正方形の現像後、正方形の正方配列の形の凹んだ形体を含むバイナリのレリーフパターンを含むマスターツールを得た。
【0123】
エラストマースタンプの成形に2つの異なるスタンプ材料を使用した。一方のスタンプ材料は、ポリジメチルシロキサン(PDMS,Sylgard(商標)184,Dow Corning,Midland,Michigan)であった。ツールに未硬化PDMSをおよそ3.0ミリメートルの厚さまで注ぐことによって、エラストマースタンプをマスターツールに対して成形した。マスターと接触している未硬化シリコーンを真空に曝露することによって脱気し、その後70℃で2時間硬化した。
【0124】
他方のスタンプ材料は、米国特許第3,810,874号(Mitschら)に記述されている方法により合成された、アクリレート末端のペルフルオロアルキレンオキシド(「LTMジアクリレート」)であった。未硬化LTMジアクリレートを光開始剤(Darocur(商標)1173、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、0.5重量パーセント、Ciba Specialty Chemicals Corp.,Tarrytown,New York)と共にツールにおよそ3.0ミリメートルの厚さまで注ぐことによって、エラストマースタンプをマスターツールに対して成形した。マスターツールと接触している未硬化LTMジアクリレートを、水銀ランプ(Blak−Ray(商標)XX−15BLB UV Bench Lamp、P/N 95−0042−06、UVP,LLC.,Upland,California)からの紫外(UV)光(365nm波長)の下で15分間硬化させた。
【0125】
マスターツールから剥離した後、この2つのスタンプのそれぞれにおよそ1.8マイクロメートルの高さの高くなった正方形の形体を上述の正方配列パターン中に含む、レリーフパターンを設けた。この2つのスタンプのそれぞれをおよそ1.0〜1.5センチメートル×2センチメートルのサイズに切断した。
【0126】
インク付け
パターン形成性組成物中に30分間浸漬(インク付け時間)することにより、それぞれのスタンプにインクを付けた。インク付け後、スタンプを窒素流により1分間乾燥した。
【0127】
スタンピング
上述の方法(フィルムがおよそ2センチメートル×3センチメートルの面積の寸法であったということを除いて)により、金でコーティングされたPETフィルム(基材としての役割)を作製した。金属化後、上述のインク付けしたスタンプを使用することにより、フィルムにスタンプ押しした。
【0128】
このスタンプのレリーフパターン形成された表面を金でコーティングされたPETフィルムと30秒間接触させた。スタンプ押し時、追加の重量をフィルム−スタンプ組み立て体に印加した。追加の重量は、重量120グラムの平坦なガラス片であった。スタンプ押し後、フィルムをスタンプから剥離して、印刷パターンを担持する、金でコーティングされたPETフィルムを得た。
【0129】
エッチング
スタンプ押し後、印刷されたパターンを有する金でコーティングされたPETフィルムを選択的エッチング及び金属パターニングのために、エッチング剤溶液中に浸漬した。上述の社内作製の、及び市販のKI/Iをベースとするエッチング剤の両方を使用した。印刷した金属化フィルムをエッチング剤溶液中に50秒間(社内作製のエッチング剤)又は20秒間(市販のエッチング剤)浸漬した。
【0130】
特性評価
選択的エッチング及び金属パターン形成の後、光学顕微鏡(DP12デジタルカメラ、Olympus America,Center Valley,Pennsylvaniaを備えたモデルBH−2)を用いて、得られた金属パターンを特性評価して、エッチングの選択性(印刷されていない領域からの金のエッチング除去時における基材の印刷された領域における金の保護及び保存の程度)を判定した。1、2、3、4、又は5の選択性品質ファクターを割り当てて、得られる選択性の程度を記述した(5は最高の品質を表わし、エッチング時の正方形のピンホール又は溶出が本質的に無く、1は最低の品質を表わし、正方配列が大部分エッチングにより除去される)。
【0131】
光学顕微鏡を使用して、意図した金属パターンが生成された忠実度も評価した。得られた金属パターン中の正方形の間の間隙を測定し、5マイクロメートルの公称間隙値と比較した。測定される間隙が0マイクロメートル、0超〜1.0マイクロメートル以下、1.0超〜3.0マイクロメートル以下、3.0超〜5.0マイクロメートル以下、又は5.0マイクロメートル超だけ公称間隙を超えるかどうかによって、5、4、3、2、又は1の寸法精度品質ファクターを割り当てた。
【0132】
実施例7〜11及び比較例C−10〜C−15
表3に示すパターン形成性組成物を上述の金でコーティングされたPETフィルム基材上に印刷し、次いで上述の手順を用いて、エッチングした。社内作製のKI/Iをベースとするエッチング剤を実施例7及び比較例C−14に対して使用し、市販のKI/Iエッチング剤を全ての他の実施例及び比較例に対して使用した。比較例C−15に対しては、ブランク(印刷パターン形成性組成物を担持しない)金でコーティングされたPETフィルムを市販のKI/Iベースベースのエッチング剤中に15秒間浸漬した。
【0133】
上述の手順に従って、得られたエッチングされた基材を特性評価し、結果を表3及び図1〜7に示す。実施例7、8、9、10、及び11、並びに比較例C−10及びC−14に対しては、光学顕微鏡における透過光減衰を使用することにより、単位面積当りの基材の非官能基化領域から除去される金の量のパーセントとして表される、単位面積当りの基材の官能基化領域からエッチング後に除去される金の量を、8パーセント(%)、5%、10%、10%、14%、67%、及び100%であると評価した。これらの評価に対して、全ての場合、官能基化領域の代表的と考えられる、官能基化領域の一部を選択した。分析に選択される官能基化領域の一部は、スタンプと基材との完全接触領域よりも小さかった。
【0134】
【表3】

【0135】
本明細書で引用した特許、特許文献、及び公報に含有される参照された記述内容は、その全体が、それぞれ個別に組み込まれているかのように、参照として組み込まれる。本発明に対するさまざまな予見できない修正及び変更が、本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく当業者に明らかとなるであろう。本発明は、本明細書に記載した例示的な実施形態及び実施例によって過度に限定されるものではなく、またかかる実施例及び実施形態は、一例として表されているだけであり、ただし、本発明の範囲は、以下のように本明細書に記載した請求項によってのみ限定されることを意図するものと理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)少なくとも1つの主表面を有する少なくとも1つの基材を提供する工程と、(b)ペルフルオロポリエーテル有機イオウ化合物である、少なくとも1つの官能基形成性分子を含む少なくとも1つのパターン形成性組成物を提供する工程と、(c)前記パターン形成性組成物を前記基材の前記主表面に、前記主表面の少なくとも1つの官能基化領域及び少なくとも1つの非官能基化領域を形成するような仕方で塗布する工程と、(d)前記非官能基化領域の少なくとも一部をエッチングする工程と、を含む、方法。
【請求項2】
前記基材が少なくとも1種の無機材料を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記基材が少なくとも1種の元素金属、少なくとも1種の金属合金、少なくとも1種の金属含有化合物、又はこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記基材が少なくとも1種の元素金属を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記基材が金を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ペルフルオロポリエーテル有機イオウ化合物が、一価又は二価である、少なくとも1つのペルフルオロポリエーテルセグメントを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ペルフルオロポリエーテル有機イオウ化合物が、少なくとも1つの二価のヘキサフルオロプロピレンオキシ基を含む、少なくとも1つのペルフルオロポリエーテルセグメントを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ペルフルオロポリエーテルセグメントは、aが4〜20の平均値を有する、F[CF(CF)CFO]CF(CF)−、及びb+cが4〜15の平均値を有する、−CF(CF)(OCFCF(CFOCFCFCFCFO(CF(CF)CFO)CF(CF)−から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ペルフルオロポリエーテル有機イオウ化合物が、ペルフルオロポリエーテルチオール化合物、ペルフルオロポリエーテルジスルフィド化合物、ペルフルオロポリエーテルキサンテート化合物、ペルフルオロポリエーテルスルフィド化合物、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記ペルフルオロポリエーテル有機イオウ化合物が、以下の一般式(I):
−[Q−(SH) (I)
により表される、ペルフルオロポリエーテルチオール化合物の類の一つであり、
式中、Rは一価又は二価のペルフルオロポリエーテル基であり、Qは二価、三価、又は四価の有機連結基であり、xは1〜3の整数であり、yは1又は2の整数である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記官能基形成性分子がアミドで連結されたペルフルオロポリエーテル有機イオウ化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記官能基形成性分子が、少なくとも2つのカルボニルイミノ部分を含むか、又は少なくとも1つのカルボニルイミノ部分及び少なくとも1つのカルボニルオキシ部分を含む、アミドで連結されたペルフルオロポリエーテル有機イオウ化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記アミドで連結されたペルフルオロポリエーテル有機イオウ化合物が、ペルフルオロポリエーテルセグメント、少なくとも1つのメルカプト基、及び少なくとも1つの介在型二価カルボニルイミノ部分を含む、アミドで連結されたペルフルオロポリエーテルチオール化合物である、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記カルボニルイミノ部分が、−C(=O)−NH−である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記アミドで連結されたペルフルオロポリエーテルチオール化合物が、以下の一般式(II):
−[C(=O)−N(R)−Q−(SH)(II)
により表される類の一つであり、式中、Rは一価又は二価のペルフルオロポリエーテル基であり、Rは水素又はアルキルであり、Qは二価、三価、又は四価の有機連結基であり、xは1〜3の整数であり、yは1又は2の整数である、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記アミドで連結されたペルフルオロポリエーテルチオール化合物が、以下の一般式(III):
’−(O[CF(CF)CFO]CF(CF)−[C(=O)−N(R)−Q−(SH)]) (III)
により表される類の一つであり、式中、R’は、線状又は分岐のペルフルオロアルキル又はペルフルオロアルキレン基であり、aは4〜20の平均値を有し、Rは水素又はアルキルであり、Qは二価、三価、又は四価の有機連結基であり、xは1〜3の整数であり、yは1又は2の整数である、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記アミドで連結されたペルフルオロポリエーテルチオール化合物が、
F[CF(CF)CFO]CF(CF)−C(=O)−NH−(CH−N(CH)C(=O)−(CH−SH、
F[CF(CF)CFO]CF(CF)−C(=O)−NH−(CHSH、
HS−(CH−NH−C(=O)−CF(CF)(OCFCF(CF−OCFCFCFCFO(CF(CF)CFO)−CF(CF)−C(=O)−NH−(CHSH
HS−(CH−C(=O)−NH−(CH−NH−C(=O)−CF(CF)(OCFCF(CF−OCFCFCFCFO(CF(CF)CFO)−CF(CF)−C(=O)−NH−(CH−NHC(=O)−(CH−SH、
F[CF(CF)CFO]CF(CF)−C(=O)NH−CHCH−O−C(=O)−CHCHSH、
F[CF(CF)CFO]CF(CF)−C(=O)NH−(CHCH−O)−C(=O)−CHCHSH、
HS−(CH−C(=O)−N(CH)−(CH−NH−C(=O)−CF(CF)(OCFCF(CF−OCFCFCFCFO(CF(CF)CFO)−CF(CF)−C(=O)−NH−(CH−N(CH)C(=O)−(CH−SH、
及びこれらの組み合わせから選択され、式中、aは約4〜約20の平均値を有し、b+cは約4〜約15の平均値を有する、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記パターン形成性組成物が印刷により塗布される、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記パターン形成性組成物がマイクロコンタクトプリンティングにより塗布される、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記官能基化領域が前記官能基形成性分子の自己組織化モノレイヤー(SAM)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記エッチングが化学エッチングである、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記化学エッチングが、三ヨウ化物エッチング剤系を使用することにより行われる、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記エッチングが選択的に行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
(a)少なくとも1つの主表面を有する少なくとも1つの基材を提供する工程であって、前記基材が金を含む、工程と、(b)アミドで連結されたペルフルオロポリエーテル有機イオウ化合物である、少なくとも1つの官能基形成性分子を含む少なくとも1つのパターン形成性組成物を提供する工程と、(c)前記主表面の少なくとも1つの官能基化領域及び少なくとも1つの非官能基化領域を形成するように、前記パターン形成性組成物をマイクロコンタクトプリンティングにより前記基材の前記主表面に塗布する工程と、(d)三ヨウ化物化学エッチング剤系を使用することにより、前記非官能基化領域の少なくとも一部を選択的にエッチングする工程と、を含む、方法。
【請求項25】
前記アミドで連結されたペルフルオロポリエーテル有機イオウ化合物がアミドで連結されたペルフルオロポリエーテルチオール化合物である、請求項24に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−511635(P2012−511635A)
【公表日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−540782(P2011−540782)
【出願日】平成21年12月2日(2009.12.2)
【国際出願番号】PCT/US2009/066358
【国際公開番号】WO2010/068535
【国際公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】