説明

パターン状導電性酸化亜鉛積層膜の製造方法、光電変換装置の製造方法、パターン状導電性酸化亜鉛積層膜、および光電変換装置

【課題】酸化亜鉛薄膜層を、複数の領域に分離する分離パターン作製において、各領域間の分離抵抗を十分高くする。
【解決手段】基体10上に、導電性酸化亜鉛微粒子11pが分散されてなる分散媒を塗布する工程を経て、複数の導電性酸化亜鉛微粒子11pからなる、所望のパターン状の導電性酸化亜鉛微粒子層11を形成し、酸化亜鉛微粒子層11上に、導電性酸化亜鉛を化学浴析出法により析出させて導電性酸化亜鉛薄膜層12を形成することにより、所望のパターン状の導電性酸化亜鉛積層膜1を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターン状導電性酸化亜鉛積層膜の製造方法、光電変換装置の製造方法、パターン状導電性酸化亜鉛積層膜、および光電変換装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光電変換層とこれに導通する電極とを備えた光電変換素子が、太陽電池等の用途に使用されている。従来、太陽電池においては、バルクの単結晶Siまたは多結晶Si、あるいは薄膜のアモルファスSiを用いたSi系太陽電池が主流であったが、Siに依存しない化合物半導体系太陽電池の研究開発がなされている。化合物半導体系太陽電池としては、GaAs系等のバルク系と、Ib族元素とIIIb族元素とVIb族元素とからなるCISあるいはCIGS系等の薄膜系とが知られている。CI(G)Sは、一般式Cu1−zIn1−xGaSe2−y(式中、0≦x≦1,0≦y≦2,0≦z≦1)で表される化合物半導体であり、x=0のときがCIS系、x>0のときがCIGS系である。本明細書では、CISとCIGSとを合わせて「CI(G)S」と表記してある箇所がある。
【0003】
CI(G)S系等の薄膜系光電変換素子においては一般に、光電変換層の光吸収面側には、バッファ層を介して透光性導電層(透明電極)が形成されている。
【0004】
透光性導電層としては、酸化亜鉛に亜鉛よりもイオン価数の高いドーパント元素を添加した導電性酸化亜鉛膜が、現在普及しているITO(酸化インジウム錫)に比して安価であり、資源的にも豊富な材料として注目されている。この導電性酸化亜鉛膜の成膜方法としては、低コスト且つ大面積に製造が可能な液相法が好ましい。液相法としては、化学浴析出法(Chemical Bath Deposition法:CBD法)や電解析出法(電析法)等が挙げられる。
【0005】
1つの基板上に複数の光電変換素子(セル)を形成し、集積化を行うために、基板上に薄膜層に対してレーザを用いたスクライブ処理を行い、複数のセルに分離し、各セルを直列接続させるように電極を設ける処理がなされている。
【0006】
導電性酸化亜鉛膜についても、集積化された光電変換素子の電極として用いられるような場合には、レーザによるスクライブ処理が行われる。しかしながら、導電性酸化亜鉛膜をレーザスクライブ法によりパターニングした場合、スクライブライン(開溝)に酸化亜鉛の残渣が付着し、スクライブラインを挟んで隣接する領域間において、十分な絶縁性が担保されない場合がある。
【0007】
かかる問題を解決するため、特許文献1には、導電性酸化亜鉛膜をレーザスクライブ法によりスクライブラインを形成した後に、化学的なエッチングを行い、酸化亜鉛膜表面のテクスチャー処理と同時にスクライブラインに再付着した酸化亜鉛の残渣を除去するという方法が提案されている。
一方、非特許文献1、特許文献2には、酸化物亜鉛のパターンを、レーザスクライブを用いない方法で作製する手法が提案されている。
【0008】
非特許文献1では、Si基板上に親疎水性パターンを予め形成し、疎水性部のみ酸化亜鉛を析出させる方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3492213号公報
【特許文献2】特開2009−167038号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Noriko Saito, Hajime Haneda, Takashi Sekiguchi,Naoki Ohashi, Isao Sakaguchi, and Kunihito Koumoto,Adv. Mater. (2002), 14, No. 6, 418-421.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、酸化亜鉛膜表面のテクスチャー処理を行うためのエッチング処理により残渣を除去するため、酸化亜鉛膜表面にテクスチャー処理を施すべきでないような場合には利用できず、また、酸化亜鉛膜表面のテクスチャー処理が必要ない場合には、できればエッチング処理工程を省くことが望ましい。
【0012】
特許文献2に記載の方法では、パターン形成したシード層上にCBD法により酸化亜鉛層を形成するため、シード層を形成していない部分にも酸化亜鉛の残渣が積もりやすく、分離抵抗が小さくなってしまうとういう問題がある。
非特許文献1に記載の方法では、疎水性部にのみ酸化亜鉛を析出させるための活性化処理として金属触媒微粒子を付与する必要があった。この場合、Si基板を用いる必要があり、他の基板への応用が難しいという問題がある。
【0013】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、酸化亜鉛の残渣がないパターン状の導電性酸化亜鉛膜を製造する方法、およびパターン状導電性酸化亜鉛膜を提供するものである。
【0014】
また、本発明は、透明導電膜として、パターン状導電性酸化亜鉛膜を備えた太陽電池等の光電変換装置の製造方法および光電変換装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明のパターン状導電性酸化亜鉛積層膜の製造方法は、基体上に、分散媒に導電性酸化亜鉛微粒子が分散されてなる塗布液を塗布する工程を経て、該導電性酸化亜鉛微粒子からなる、所望のパターン状の導電性酸化亜鉛微粒子層を形成し、
該導電性酸化亜鉛微粒子層上に、導電性酸化亜鉛を化学浴析出法により析出させて導電性酸化亜鉛薄膜層を形成することにより、前記所望のパターン状の導電性酸化亜鉛薄膜層を形成することを特徴とする。
【0016】
ここで、「導電性酸化亜鉛」とは、酸化亜鉛の中にホウ素やガリウム、アルミニウム等のドーパントを導入し、キャリア電子を増加させる処理を施した酸化亜鉛を意味する。
【0017】
導電性酸化亜鉛微粒子とは、導電性酸化亜鉛を主成分とする微粒子であればよい。本明細書において、「主成分」とは、含量80質量%以上の成分と定義する。
【0018】
ここで、基体は、パターン状導電性酸化亜鉛積層膜を形成すべき表面を有するものをいい、単一材料からなる基板、複合材料からなる基板であってもよいし、さらには、基板上に各種膜が積層されてなるものであってもよい。なお、基体の表面は必ずしも平坦である必要はない。
【0019】
ここで「微粒子」とは、平均粒子径が100nm以下である粒子を意味する。本発明の前記微粒子の平均粒子径は、1〜50nmであることが好ましい。
本明細書において「平均粒子径」はTEM像から求めるものとする。詳細には、充分に分散させた微粒子を透過型電子顕微鏡(TEM)にて観察し、撮影した微粒子画像ファイル情報に対して、(株)マウンテック社製の画像解析式粒度分布測定ソフトウエア「Mac−View」Ver.3を用いて1粒子ごとに測定を実施し、ランダムに選択した50個の微粒子について集計することで、平均粒子径を求めるものとする。粒子が非球状の場合は球相当の平均粒子径を意味するものとする。
【0020】
所望のパターン状の導電性酸化亜鉛微粒子層は、リソグラフィ法により、前記基体上に、該基体が露出する、前記所望のパターン状の開口を有するパターン状レジストを形成し、該パターン状レジストおよび該開口に露出する前記基体上に前記塗布液を塗布することにより、形成することができる。
【0021】
このとき、前記パターン状レジストは、前記導電性酸化亜鉛微粒子層上に、前記化学浴析出法により前記導電性酸化亜鉛薄膜を析出させる前に除去してもよいし、前記導電性酸化亜鉛薄膜を析出させた後に除去してもよい。導電性酸化亜鉛薄膜を析出させる前にレジストを除去する場合には、レジスト上の微粒子層がレジストと共に除去されることとなり、
導電性酸化亜鉛薄膜を析出させた後にレジストを除去する場合には、レジスト上の微粒子層およびその上に析出された導電性酸化亜鉛薄膜がレジストと共に除去されることとなる。
【0022】
また、所望のパターン状の導電性酸化亜鉛微粒子層は、前記基体上に前記塗布液を前記所望のパターン状に塗布することにより、形成してもよい。
【0023】
前記導電性酸化亜鉛微粒子は、ホウ素ドープ酸化亜鉛,アルミニウムドープ酸化亜鉛,およびガリウムドープ酸化亜鉛からなる群より選ばれる少なくとも1種の導電性酸化亜鉛を主成分とするものであることが望ましい。
【0024】
さらに、本発明の製造方法においては、前記化学浴析出法により形成される導電性酸化亜鉛薄膜層からなる第1の導電性酸化亜鉛薄膜層上に、第2の導電性酸化亜鉛薄膜層を電解析出法により形成することが望ましい。
【0025】
また、前記化学浴析出法により形成される導電性酸化亜鉛薄膜層、前記化学浴析出法および前記電解析出法により形成される導電性酸化亜鉛薄膜層は、ホウ素ドープ酸化亜鉛を主成分とするものであることが望ましい。
【0026】
前記化学浴析出法または前記電解析出法においては、亜鉛イオンと、硝酸イオンと、ボラン系化合物とを含む反応液を用いて前記導電性酸化亜鉛薄膜層を形成することが望ましい。
前記ボラン系化合物が、ジメチルアミンボランであることが望ましい。
【0027】
本発明のパターン状導電性酸化亜鉛積層膜の製造方法は、表面形状が矩形の基体に、前記所望のパターンとして、前記矩形の一辺と略平行なラインアンドスペースパターンであり、スペース幅が10〜300μm、ライン幅が1〜10mmを形成する際に好適に用いることができる。
【0028】
本明細書において、「透光性」とは、太陽光の透過率が70%以上であることを意味する。
【0029】
本発明のパターン状導電性酸化亜鉛積層膜は、表面形状が矩形である基体の表面に形成された、平均粒子径1〜50nmの導電性酸化亜鉛微粒子からなる導電性酸化亜鉛微粒子層と、該導電性酸化亜鉛微粒子層上に形成された導電性酸化亜鉛薄膜層とを備えた導電性酸化亜鉛積層膜であって、前記矩形の一辺と平行なラインアンドスペースパターン状に形成され、スペース幅が10〜300μm、ライン幅が1〜10mmであることを特徴とするものである。本発明のパターン状導電性酸化亜鉛積層膜は、本発明のパターン状導電性酸化亜鉛積層膜の製造方法により作製されるものである。
【0030】
本発明のパターン状導電性酸化亜鉛積層膜は、前記導電性酸化亜鉛微粒子が、ホウ素ドープ酸化亜鉛,アルミニウムドープ酸化亜鉛,およびガリウムドープ酸化亜鉛からなる群より選ばれる少なくとも1種の導電性酸化亜鉛を主成分とするものであることが望ましい。
【0031】
また、前記導電性酸化亜鉛薄膜層が、ホウ素ドープ酸化亜鉛を主成分とするものであることが望ましい。
【0032】
本発明の光電変換装置の製造方法は、下部電極と光電変換半導体層とバッファ層と透光性導電層とが積層されてなる光電変換素子が基板上に複数集積化されてなる光電変換装置の製造方法において、
前記複数の光電変換素子の前記透光性導電層をパターン状導電性酸化亜鉛積層膜からなるものとし、
該パターン状導電性酸化亜鉛積層膜を、本発明のパターン状導電性酸化亜鉛積層膜の製造方法用いて、前記基板上に前記下部電極、前記光電変換半導体層および前記バッファ層が順に積層されてなる基体上に形成することを特徴とするものである。
【0033】
本発明の光電変換装置は、下部電極と光電変換半導体層とバッファ層と透光性導電層とが積層されてなる光電変換素子が基板上に複数集積化されてなる光電変換装置であって、
前記複数の光電変換素子の前記透光性導電層が、本発明のパターン状導電性酸化亜鉛積層膜からなるものであることを特徴とするものである。
【0034】
本発明の光電変換装置においては、前記バッファ層が、Cd,Zn,Sn,Inからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素を含む金属硫化物を含むことが好ましい。この中でもZn,Cdが特に好ましい。
【0035】
本発明の光電変換装置においては、前記光電変換半導体層の主成分が、少なくとも1種のカルコパイライト構造の化合物半導体であることが好ましい。カルコパイライト構造の化合物半導体としては、CuおよびAgからなる群より選択された少なくとも1種のIb族元素と、Al,GaおよびInからなる群より選択された少なくとも1種のIIIb族元素と、S,Se,およびTeからなる群から選択された少なくとも1種のVIb族元素とからなる化合物半導体が挙げられる。
【0036】
本発明の光電変換装置においては、前記基板が、Alを主成分とするAl基材の少なくとも一方の面側にAlを主成分とする陽極酸化膜が形成された陽極酸化基板、Feを主成分とするFe材の少なくとも一方の面側にAlを主成分とするAl材が複合された複合基材の少なくとも一方の面側にAlを主成分とする陽極酸化膜が形成された陽極酸化基板、および、Feを主成分とするFe材の少なくとも一方の面側にAlを主成分とするAl膜が成膜された基材の少なくとも一方の面側にAlを主成分とする陽極酸化膜が形成された陽極酸化基板からなる群より選ばれた陽極酸化基板であることが好ましい。
【発明の効果】
【0037】
本発明のパターン状導電性酸化亜鉛積層膜の製造方法は、基体上に、分散媒に導電性酸化亜鉛微粒子が分散されてなる塗布液を塗布する工程を経て、該導電性酸化亜鉛微粒子からなる、所望のパターン状の導電性酸化亜鉛微粒子層を形成するので、塗布液の塗布が可能であれば、基体の種類は限定されず、いかなる材料からなる基体に対しても有効である。また、上述の非特許文献1に記載のような金属による前処理を用いる必要がないため、作製工程が簡単になる。更に、光電変換素子の透光性導電層として適用する場合には、バッファ層、窓層とのバンドギャップの関係から、下地層には、できるだけバンドギャップに影響を与えない材料を用いることが好ましい。従って、透光性導電層と同じ金属酸化物により構成された微粒子により構成される塗布膜を下地層としている本発明は、バンドギャップに与える影響が少なく、かつ抵抗を低くすることができるため、好ましい。
【0038】
さらに、パターン状の導電性酸化亜鉛微粒子層上に、導電性酸化亜鉛を化学浴析出法により析出させて導電性酸化亜鉛薄膜層を形成することにより、所望のパターン状の導電性酸化亜鉛薄膜層を形成することにより、パターン状導電性酸化亜鉛積層膜を製造するので、一様な膜を形成後のレーザスクライブ工程を省略することができ、レーザスクライブによるスクライブ処理の際には、問題となっていた酸化亜鉛の残渣を抑制することができる。酸化亜鉛の残渣が少ないため、パターン分離部における分離抵抗を十分なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係る一実施形態のパターン状導電性酸化亜鉛積層膜の製造工程を示す概略断面図
【図2】パターン状導電性酸化亜鉛微粒子層の製造工程を示す概略断面図
【図3】図2に示す工程を経てパターン状導電性酸化亜鉛積層膜を製造する工程を示す概略断面図
【図4】パターン状導電性酸化亜鉛積層膜の平面図
【図5】本発明に係る一実施形態の光電変換装置(太陽電池)の概略断面図および平面図
【図6】陽極酸化基板の概略断面図
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。各図において、視認しやすくするため、各部の縮尺は適宜変更して示してある。
【0041】
「パターン状導電性酸化亜鉛積層膜の製造方法」
図1(a)〜(d)は、本発明の導電性酸化亜鉛積層膜の製造方法の一実施形態を示す概略断面図である。
【0042】
本発明では、導電性酸化亜鉛を主成分とする各層を積層して製造することから、本発明により製造される導電性酸化亜鉛薄膜を「積層膜」としている。本発明において、積層されている各層は全て導電性酸化亜鉛を主成分とするものであり、各層はその下層を結晶成長の起点として成膜されるため、その層境界は認識できない場合もある。本発明では、各層の境界の有無に関わらず、製造する膜を「積層膜」と記すが、その主成分および膜厚を考慮すると一つの薄膜としてみなすことができる。
【0043】
図1に示すように、本発明のパターン状導電性酸化亜鉛積層膜1の製造方法は、図1(a)に示す基体10上に、分散媒に導電性酸化亜鉛微粒子11pが分散されてなる塗布液を塗布する工程を経て、多数の導電性酸化亜鉛微粒子11pからなる、所望のパターン状の導電性酸化亜鉛微粒子層11を形成し(図1(b)、この導電性酸化亜鉛微粒子層11上に、導電性酸化亜鉛を化学浴析出法(以下において、CBD法という。)により析出させて導電性酸化亜鉛薄膜層12を形成する(図1(c))ことを特徴としている。
【0044】
さらに、導電性酸化亜鉛薄膜層12を第1の導電性酸化亜鉛薄膜層として、この上に、電解析出法(以下において、電析法という。)により、第2の導電性酸化亜鉛薄膜層13を形成して(図1(d))、パターン状導電性酸化亜鉛積層膜2を製造することもできる。
ここでは、基体10は表面形状が矩形であるものとし、所望のパターンが矩形の一辺に平行なラインアンドスペースパターンであるものとしている。しかしながら、本発明において、基体の形状、所望のパターン形状はこれに限るものではない。
また、基体10はその表面が平坦なもののみならず、溝やその他の凹凸を有するものであってもよい。
【0045】
「CBD法」とは、一般式 [M(L)] m+ ⇔ Mn++iL(式中、M:金属元素、L:配位子、m,n,i:正数を各々示す。)で表されるような平衡によって過飽和条件となる濃度とpHを有する金属イオン溶液を反応液として用い、金属イオンMの錯体を形成させることで、安定した環境で適度な速度で基板上に結晶を析出させる方法である。基板上にCBD法により複数の微粒子を析出する方法としては、例えばPhysical Chemistry Chemical Physics, 9, 2181-2196 (2007). 等に記載の方法が挙げられる。
【0046】
基板上に直接CBD法でZnOを形成すると、核発生の密度が十分でなく下地を良好に被覆する膜が形成できないことがある。これは初期に発生する核の数が少ないという現象に起因する。つまり、初期核の状態がその後に成長する酸化亜鉛薄膜の組織に極めて大きな影響を及ぼすと考えられている。従って、その下地表面における初期核または初期核形成の触媒となりうる物質の有無およびその面内密度が重要となる。
【0047】
本発明の導電性酸化亜鉛積層膜1の製造方法によれば、導電性酸化亜鉛薄膜層12の結晶成長を良好に制御し、導電性酸化亜鉛微粒子層11を下地層として、これをほぼ隙間なく被覆する導電性酸化亜鉛薄膜層12を形成することができることから、この微粒子層11の導電性酸化亜鉛微粒子11pは、結晶成長の起点となる初期核、あるいは結晶成長の触媒として機能しており、また、微粒子層11中の微粒子11pの密度も、良好な導電性酸化亜鉛薄膜層12を形成するに充分な密度であると考えられる。また、この微粒子層11は、反応液中の自発的な核生成の促進等の機能を有する場合もあると考えられる。
【0048】
なお、光電変換素子の透光性導電層(透明電極)として適用する場合には、バッファ層、窓層とのバンドギャップの関係から、下地層には、できるだけバンドギャップに影響を与えない材料を用いることが好ましい。光電変換素子の構成膜等の用途の場合、透光性導電層のバンドギャップ値≧下地層のバンドギャップ値>窓層のバンドギャップ値>バッファ層のバンドギャップ値とする必要があり、透光性導電層のバンドギャップ値と下地層のバンドギャップ値との差は0〜0.15eV程度であることが好ましい。従って、透光性導電層と同じ金属酸化物により構成された微粒子により構成される微粒子層11を下地層としている本発明では、バンドギャップの差を上記範囲内とすることができるので好ましい。
【0049】
さらに、塗布法による成膜は大がかりな成膜装置等を必要とせず、プロセスも容易であり、コスト面でも優れている。
【0050】
以下に、本発明の導電性酸化亜鉛積層膜の製造方法について詳細に説明する。
【0051】
(基体)
基体10は、特に制限されない。ガラス、Siウエハ基板、種々の金属基板のほか、それらの基板上に各種層が積層されてなる積層体を備えた基板を基体10として用いることができる。
【0052】
(導電性酸化亜鉛微粒子層の形成)
まず、基体10上に所望のパターン状に導電性酸化亜鉛微粒子層を形成する方法について説明する。
【0053】
インクジェット法、スクリーン印刷法、マイクロコンタクトプリンティング法、ディスペンサー塗布法等により、所望のパターン状に塗布液を塗布することにより、基体表面に直接、所望のパターン状の導電性酸化亜鉛微粒子層を形成することができる。
【0054】
また、他の方法として、基体表面にリソグラフィ法を用いて、所望のパターン状の開口を有する反転パターンのレジスト(パターン状レジスト)を形成した後、開口に露出する基体の表面およびレジスト上に一様に塗布液を塗布することにより、結果として開口に露出する基体表面に導電性酸化亜鉛微粒子層が形成され、パターン状の導電性酸化亜鉛微粒子層を基体上に形成することができる。
この場合、塗布法としては、基板10を塗布液中に浸漬する浸漬法、スプレーコーティング法、ディップコーティング法、およびスピンコーティング法等を用いればよい。
【0055】
なお、導電性酸化亜鉛微粒子層を形成するためには、基体10上に上述のいずれかの方法で塗布液を付与した後、塗布液から溶媒を除去することを要する。溶媒の除去は、自然乾燥によるものであってもよいが、必要に応じて加熱処理を実施してもよい。
【0056】
図2を参照してリソグラフィ法によるレジスト形成を経て導電性酸化亜鉛微粒子層11を形成する方法の詳細を説明する。図2(a)〜(c)は、基体10上にレジスト形成を経てパターン状の導電性酸化亜鉛微粒子層を形成する工程を示す断面図である。
【0057】
図2(a)に示すように、まず、基体10の表面に一様なレジスト15を形成する。その後、図2(b)に示すように、レジスト15を所望のパターン状(あるいは、反転パターン状)に露光し、現像することにより、所望のパターン状に基体10の表面が露出する開口16を有するパターン状レジスト15aを形成する。例えば、ライン状の開口16を有するストライプパターンのレジスト15aを形成する。
【0058】
その後、図2(c)に示すように、レジスト15aおよび開口102に露出する基体10表面に一様に塗布液を塗布して導電性酸化亜鉛微粒子層11を形成する。
【0059】
その後、レジスト15aを除去することにより、図1(b)に示すようなパターン状の微粒子層11を備えた基体10を得ることができる。
【0060】
一方、図3に示すように、図2(c)のレジスト15aを除去することなく、レジスト15a上および基体上の導電性酸化亜鉛微粒子層11にCBD法により導電性酸化亜鉛層12を析出させ(図3(a))、その後、レジスト15aをレジスト15a上の微粒子層11およびその上に析出された導電性酸化亜鉛層12ごと除去することにより(図3(b))、パターン状の導電性酸化亜鉛積層膜12を形成するようにしてもよい。CBD法により、基体表面に微小ながら導電性酸化亜鉛層の析出が生じる恐れがあるため、CBD法による導電性酸化亜鉛層の析出処理後に、レジストを除去することがより好ましい。なお、さらに、電解析出法により第2の導電性酸化亜鉛層を析出させる場合には、その後にレジスト除去を行ってもよい。基体が非導電性であれば、電解析出法では基体上に導電性酸化亜鉛層はほとんど析出されないが、基体が導電性である場合に電解析出法を用いると、基体表面に導電性酸化亜鉛層が析出されてしまうので、レジスト除去は電解析出法による第2の導電性酸化亜鉛層を析出させた後とする必要がある。
【0061】
なお、分散媒に微粒子が分散されてなる塗布液としては、微粒子11pができるだけ密に分散されて含まれるものが好ましい。分散媒は特に制限されず、水、各種アルコール、メトキシプロピルアセテート、およびトルエン等の溶媒が挙げられる。分散媒は、基板表面との親和性等を考慮して選択することができるので、非導電性を有する種々の表面に対応することができ、好ましい。例えば、薄膜太陽電池の窓層(i−ZnO)やバッファ層(Zn(S,O))等が表面に形成されたものの上にも、それぞれの表面との親和性を考慮した分散媒を用いることにより、容易に形成することができる。特に制約のない場合には、分散媒としては環境負荷が大きくないことから水やアルコールが好ましい。
塗布液中の微粒子濃度(固形分濃度)は特に制限されず、1〜50質量%が好ましい。
【0062】
導電性酸化亜鉛微粒子11pとしては、導電性酸化亜鉛を主成分とする微粒子であれば特に制限されないが、ホウ素ドープ酸化亜鉛,アルミニウムドープ酸化亜鉛,およびガリウムドープ酸化亜鉛からなる群より選ばれる少なくとも1種の導電性酸化亜鉛を主成分とするものであることが好ましい。
【0063】
導電性酸化亜鉛微粒子の形状は特に制限されず、例えば、ロッド状、平板状、および球状等が挙げられる。後工程のCBD法において、導電性酸化亜鉛薄膜の結晶成長が基板全体で均一に進むことから、微粒子層中の複数の微粒子の形状および大きさはばらつきが小さい方が好ましい。
複数の導電性酸化亜鉛微粒子11pの平均粒子径は特に制限されず、用途等に応じて決まる積層膜の全体厚みを超えないサイズであればよい。微粒子層11をなす導電性酸化亜鉛微粒子11pの平均粒子径は、結晶成長の核あるいは触媒等としての機能を充分に発現するサイズ以上でなるべく小さいことが好ましい。後工程のCBD法による結晶成長を良好に制御できることから、複数の導電性酸化亜鉛微粒子11pの平均粒子径は、2〜50nmであるであることが好ましい。複数の微粒子の平均粒子径はより好ましくは2〜40nmである。
【0064】
基体10上に付与する複数の導電性酸化亜鉛微粒子11pの密度は特に制限されないが、既に述べたように、微粒子層11中の微粒子の密度は、高い方が好ましい。微粒子層11中の導電性酸化亜鉛微粒子11pの密度が小さすぎると、結晶成長の核および/または触媒等としての機能が充分に発現しない恐れがある。
【0065】
具体的な、塗布液としては、既に市販されているハクスイテック社製導電性酸化亜鉛Pazet GK−40分散液(ガリウムドープ酸化亜鉛,分散媒 IPA(2−プロパノール) ,平均粒子径20〜40nm)等を直接、または希釈して使用することができる。
【0066】
微粒子層11の膜厚は特に制限されず、後工程のCBD法により導電性酸化亜鉛薄膜層12の結晶成長を良好に制御できることから、2nm〜1μmであることが好ましい。基板10全体に均一に反応が進むことから、微粒子層11の膜厚は面内ばらつきが小さい方が好ましい。
【0067】
以上のように、塗布液の塗布という簡単な工程により、パターン状の導電性酸化亜鉛粒子層を形成することができる。
【0068】
(CBD法による導電性酸化亜鉛薄膜層の形成)
CBD法により形成される導電性酸化亜鉛薄膜層12としては特に制限されないが、ホウ素ドープ酸化亜鉛を主成分とするものであることが好ましい。
【0069】
CBD法において用いる反応液は、亜鉛イオンと、硝酸イオンと、1種または2種以上のアミン系ボラン化合物(還元剤)とを含む反応液を用いることが好ましい。アミン系ボラン化合物としては、ジメチルアミンボラン、およびトリメチルアミンボラン等が挙げられ、中でも、ジメチルアミンボランを含むことがより好ましい。反応液としては例えば、硝酸亜鉛とジメチルアミンボランとを含む液が挙げられる。
【0070】
亜鉛イオンと硝酸イオンとジメチルアミンボラン等のアミン系ボラン化合物を含む反応液を用いる場合の反応条件は特に制限されないが、上記亜鉛イオンとアミン系ボラン化合物から生成される錯体とが共存する反応過程を含むことが好ましい。
【0071】
反応温度は40〜95℃が好ましく、50〜85℃が特に好ましい。反応時間は反応温度にもよるが、5分〜72時間が好ましく、15分〜24時間がより好ましい。pH条件は微粒子層11の少なくとも一部が反応液により溶解せずに残存する条件であればよい。亜鉛イオンと硝酸イオンとジメチルアミンボラン等のアミン系ボラン化合物を用いる場合、反応開始から反応終了までのpHを3.0〜8.0の範囲内としてZnO等の金属酸化物層を形成することができる。
【0072】
硝酸亜鉛とジメチルアミンボランとを用いた反応液における主な反応経路は以下のように考えられている。
Zn(NO3)2 → Zn2++2NO3- (1)
(CH3)2NHBH3+H2O → BO+(CH3)2NH+7H++6e-(2)
NO3-+H2O+2e- → NO2-+2OH- (3)
Zn2++2OH- → Zn(OH)2 (4)
Zn(OH)2 → ZnO+H2O (5)
【0073】
上記反応では、ZnOの溶解度が低いpH条件で反応を実施することが好ましい。pHと反応液中に存在する各種Zn含有イオンの種類とその溶解度との関係は、Journal of Materials Chemistry, 12, 3773-3778 (2002). のFig.7等に記載されている。上記反応では、pH3.0〜8.0の範囲内におけるZnOの溶解度が小さく、反応が良好に進行する。換言すれば、上記反応では、強酸あるいは強アルカリ条件ではない穏やかなpH条件で良好に反応が進むため、基板等への影響が少なく、好ましい。
【0074】
亜鉛イオンと硝酸イオンとジメチルアミンボラン等のアミン系ボラン化合物を含む反応液には、必須成分以外の任意の成分を含むことができる。かかる系の反応液は、水系でよく、反応温度も高温を必要とせず、穏やかなpH条件でよいので、環境負荷が小さく、好ましい。
【0075】
以上のようにして、複数の導電性酸化亜鉛微粒子11pを含む所望のパターン状の微粒子層11を形成し、微粒子層11上にCBD法により所望のパターン状の導電性酸化亜鉛薄膜層12を形成することにより、微粒子層11がほぼ隙間なく導電性酸化亜鉛薄膜層12により被覆された所望のパターン状の導電性酸化亜鉛積層膜1を形成することができる。
【0076】
パターン形成にレーザスクライブ処理などを要しないため、スクライブ時に生じる酸化亜鉛の残渣の問題はない。粒子層が形成されていない領域には、CBD法による酸化亜鉛層の析出はほとんど生じないため、所望のパターンを良好に形成することができる。
【0077】
微粒子層11と、導電性酸化亜鉛薄膜層12との積層体である導電性酸化亜鉛積層膜1は、電解析出法(電析法)により導電性酸化亜鉛薄膜層13を成膜する初期層として好適な膜となる。CBD法は、無電解法であることから、それにより成膜可能な導電性酸化亜鉛薄膜の導電性には限度がある。従って、光電変換素子の透光性導電層等に利用可能な高い導電性を有する、すなわち、低抵抗な導電性酸化亜鉛薄膜を得るためには、CBD法により形成した導電性酸化亜鉛薄膜層12を第1の導電性酸化亜鉛薄膜層(初期層)として、電析法により更に低抵抗な第2の導電性酸化亜鉛薄膜層13を成膜することが好ましい(図1(d))。
【0078】
(電解析出法による導電性酸化亜鉛薄膜層の形成)
透光性導電層として利用する場合、導電性酸化亜鉛膜の透明性は、表面や内部のポアや内在する欠陥の量に大きく影響されることが知られている。既に述べたように、導電性酸化亜鉛薄膜層12の表面には、微粒子層11はほとんど露出されずに良好に被覆されている。従って、導電性酸化亜鉛薄膜層12を初期層として電析法により成膜することにより、低抵抗、且つ、抵抗値の面内均一性の良好であり、光電変換素子の透光性導電層として好適な導電性酸化亜鉛積層膜2を形成することができる。
【0079】
この第2の導電性酸化亜鉛薄膜層13としては、低抵抗な導電性酸化亜鉛を主成分とするものが好ましい。かかる低抵抗な導電性酸化亜鉛としては、第1の導電性酸化亜鉛薄膜層12と同様、ホウ素ドープ酸化亜鉛が好ましい。
【0080】
第2の導電性酸化亜鉛薄膜層13の成膜において、電析法の反応液は、上記CBD法で用いた反応液と同様の反応液を好ましく用いることができる。
【0081】
電析法の好ましい反応条件としては、CBD法により導電性酸化亜鉛薄膜層が形成された基板を作用極とし、対極として亜鉛板、参照電極として銀/塩化銀電極を用い、参照電極を飽和KCl溶液中に浸漬させ、塩橋にて反応液につないで通電化処理を行う方法等が挙げられる。この通電化処理により、CBD法により形成された第1の導電性酸化亜鉛薄膜12上に第2の導電性酸化亜鉛薄膜層13を析出形成することができる。
【0082】
反応温度は25〜95℃が好ましく、40℃〜90℃がさらに好ましい。反応温度が95℃を超えると水を溶媒とする場合溶媒が蒸発してしまうため好ましくない。逆に反応温度が25℃未満となると反応速度が遅くなったりする場合がある。反応時間は反応温度にもよるが、1〜60分が好ましく、1〜30分がより好ましい。電析においては、1cmあたり0.5〜5クーロンの通電化処理を行うことが好ましい。
【0083】
電析法により形成された導電性酸化亜鉛薄膜は、ドーパントの高濃度ドープが可能となることから、導電性酸化亜鉛微粒子層11の平均層厚をd1(nm)とし、導電性酸化亜鉛微粒子層上に形成された導電性酸化亜鉛薄膜層12の平均層厚をd2(nm)とし、第2の導電性酸化亜鉛薄膜層13の平均層厚をd3(nm)とした場合、下記式(1)および(2)を満足する構成とすることにより、低抵抗であり、透光性導電層として好適な、導電性酸化亜鉛積層膜2とすることができる。
100≦d1+d2+d3(nm)≦2000 ・・・(1)
d1≦d2≦d3 ・・・(2)
【0084】
以上述べたように、本発明の導電性酸化亜鉛積層膜1の製造方法によれば、分散媒に導電性酸化亜鉛を主成分とする微粒子11pが分散された塗布液をパターン状に塗布するという簡易な手法により、CBD法の下地層としての導電性酸化亜鉛微粒子層11を形成し、この微粒子層11を良好に被覆する導電性酸化亜鉛薄膜層12をCBD法により形成することによりパターン状の導電性酸化亜鉛薄膜層12形成することができる。
【0085】
また、このCBD法により形成された第1の導電性酸化亜鉛薄膜層12を初期層として、更に、電解析出法(電析法)により、第2の導電性酸化亜鉛薄膜層13を形成する構成とすることにより、太陽電池等の光電変換素子の透明電極として好適な、低抵抗な導電性酸化亜鉛薄膜(積層膜)2を所望のパターン状に形成することができる。
【0086】
太陽電池用途にあたっては、導電性酸化亜鉛積層膜1、2を、スペース幅10〜300μm、ライン幅が1〜10mm程度のラインアンドスペースパターン状に形成することが好ましい。
【0087】
「パターン状導電性酸化亜鉛積層膜」
図4は、本発明のパターン状導電性酸化亜鉛積層膜1(または2)の模式平面図である。本発明のパターン状導電性酸化亜鉛積層膜1(または2)は、10〜300μm幅のスペース1Sの間隔を置いて1〜10mmの複数のライン1Lが並列配置された、所謂ラインアンドスペースパターン状に形成されてなるものである。上述の本発明の製造方法により製造することができ、その斜視図は図1(c)または図1(d)に示すものである。
【0088】
すなわち、本発明のパターン状導電性酸化亜鉛積層膜1または2は、図1(c)に示すように、複数の導電性酸化亜鉛微粒子11pからなる微粒子層11と、その上に積層された導電性酸化亜鉛薄膜層12とを備えてなる、または、図1(d)に示すように、さらに第2の導電性酸化亜鉛薄膜層13とを備えてなるものである。
【0089】
「光電変換装置および光電変換装置の製造方法」
図5を参照して、本発明の光電変換装置および本発明の光電変換装置の製造方法について説明する。図5(a)は、本発明に係る一実施形態の光電変換装置である太陽電池3の一部の概略断面図、同図(b)は平面図である。
【0090】
本実施形態の光電変換装置である太陽電池3は、化合物半導体からなる光電変換層を備えた太陽電池であり、基板上に集積化された多数の光電変換素子(セル)を電気的に直列接続することで高電圧出力とした太陽電池である。
【0091】
太陽電池3は、基板100上に、下部電極20と化合物半導体からなる光電変換層30とバッファ層40と、窓層50と、上記本発明の導電性酸化亜鉛積層膜の製造方法により形成されたパターン状導電性酸化亜鉛積層膜1または2からなる透光性導電層(透明電極)との積層構造を有している。
【0092】
太陽電池3には、下部電極20のみを貫通する第1の開溝部61、光電変換層30とバッファ層40と窓層50とを貫通する第2の開溝部62、および上部電極1(2)のみを貫通する第3の開溝部63が形成されている。この第3の開溝部63が、ラインアンドスペースパターン状の上部電極1(2)のスペース1Sに相当する。
【0093】
上記構成では、一枚の基板100上に設けられた積層体が、開溝部61〜63によって複数のライン状の素子Cに分離された構造が得られる。また、第2の開溝部62内に上部電極1(2)が充填されることで、ある素子Cの上部電極1(2)が隣接する素子Cの下部電極20に直列接続した構造が得られる。
【0094】
なお、直列接続された素子のうち、駆動時に最も高電位となる電極(最も正極性側の端部の素子の正電極)に正極側取り出し電極、最も低電位となる電極(最も負極性側の端部の素子の負電極)に負極側取り出し電極を備えている(いずれも図示していない)。
【0095】
太陽電池3の基板100およびその上に積層された下部電極20から窓層50までの積層体が、上記本発明のパターン状導電性酸化亜鉛積層膜の製造方法における、基体10に相当する。
【0096】
太陽電池3は、本発明の光電変換装置の製造方法により製造することができる。
【0097】
基板100上に、公知の方法により下部電極20、光電変換層30、バッファ層40、窓層50を積層し、基体10とする。この際、下部電極20を成膜後、スクライブ処理により下部電極20を貫通する開溝61を形成して下部電極20をラインアンドスペースパターンとし、その上に光電変換層30、バッファ層40および窓層50を成膜した後、同様にスクライブ処理により、これらの層30〜50を貫通する開溝62を形成して、ラインアンドスペースパターンとする。このように形成されたものを基体10とする。各層の成膜には、液相、気相等、各層の形成に適するいかなる方法を用いてもよい。
【0098】
透光性導電層であるパターン状導電性酸化亜鉛積層膜1(2)は、基体10表面を構成する窓層50上に上述のパターン状導電性酸化亜鉛積層膜を製造する方法により製造することができる。
【0099】
このように透光性導電層を本発明のパターン状導電性酸化亜鉛積層膜の製造方法により作製することにより、従来は、一面に成膜した導電層にスクライブ処理を施してパターン化する工程が必要であったところ、本発明の光電変換層の製造方法によれば、透光性導電層に対するスクライブ処理を行う必要がない。工程を削減することができ、また、スクライブ処理では、亜鉛の残渣により十分な分離抵抗が得られない恐れがあったが、亜鉛の残渣を低減し、ライン間の分離抵抗を十分なものとすることができる。
【0100】
以下、基板100から窓層50について説明する。
【0101】
(基板)
基板100としては、特に制限されず、ガラス基板、表面に絶縁膜が成膜されたステンレス等の金属基板、Alを主成分とするAl基材の少なくとも一方の面側にAlを主成分とする陽極酸化膜が形成された陽極酸化基板、Feを主成分とするFe材の少なくとも一方の面側にAlを主成分とするAl材が複合された複合基材の少なくとも一方の面側にAlを主成分とする陽極酸化膜が形成された陽極酸化基板、Feを主成分とするFe材の少なくとも一方の面側にAlを主成分とするAl膜が成膜された基材の少なくとも一方の面側にAlを主成分とする陽極酸化膜が形成された陽極酸化基板、およびポリイミド等の樹脂基板等が挙げられる。
【0102】
連続工程による生産が可能であることから、表面に絶縁膜が成膜された金属基板、陽極酸化基板、および樹脂基板等の可撓性基板が好ましい。
【0103】
熱膨張係数、耐熱性、および基板の絶縁性等を考慮すれば、Alを主成分とするAl基材の少なくとも一方の面側にAlを主成分とする陽極酸化膜が形成された陽極酸化基板、Feを主成分とするFe材の少なくとも一方の面側にAlを主成分とするAl材が複合された複合基材の少なくとも一方の面側にAlを主成分とする陽極酸化膜が形成された陽極酸化基板、およびFeを主成分とするFe材の少なくとも一方の面側にAlを主成分とするAl膜が成膜された基材の少なくとも一方の面側にAlを主成分とする陽極酸化膜が形成された陽極酸化基板からなる群より選ばれた陽極酸化基板が特に好ましい。
【0104】
図6は、陽極酸化基板100の構成を示す概略断面図である。
陽極酸化基板100はAlを主成分とするAl基材101の少なくとも一方の面側を陽極酸化して得られた基板である。基板100は、図6の左図に示すように、Al基材101の両面側に陽極酸化膜102が形成されたものでもよいし、図6の右図に示すように、Al基材101の片面側に陽極酸化膜102が形成されたものでもよい。陽極酸化膜102はAlを主成分とする膜である。
【0105】
デバイスの製造過程において、AlとAlとの熱膨張係数差に起因した基板の反り、およびこれによる膜剥がれ等を抑制するには、図6の左図に示すようにAl基材101の両面側に陽極酸化膜102が形成されたものが好ましい。
【0106】
陽極酸化は、必要に応じて洗浄処理・研磨平滑化処理等が施された基材101を陽極とし陰極と共に電解質に浸漬させ、陽極陰極間に電圧を印加することで実施できる。陰極としてはカーボンやアルミニウム等が使用される。電解質としては制限されず、硫酸、リン酸、クロム酸、シュウ酸、スルファミン酸、ベンゼンスルホン酸、およびアミドスルホン酸等の酸を、1種または2種以上含む酸性電解液が好ましく用いられる。
【0107】
陽極酸化条件は使用する電解質の種類にもより特に制限されない。条件としては例えば、電解質濃度1〜80質量%、液温5〜70℃、電流密度0.005〜0.60A/cm2、電圧1〜200V、電解時間3〜500分の範囲にあれば適当である。
【0108】
電解質としては、硫酸、リン酸、シュウ酸、若しくはこれらの混合液が好ましい。かかる電解質を用いる場合、電解質濃度4〜30質量%、液温10〜30℃、電流密度0.05〜0.30A/cm2、および電圧30〜150Vが好ましい。
【0109】
基材101および陽極酸化膜102の厚みは特に制限されない。基板100の機械的強度および薄型軽量化等を考慮すれば、陽極酸化前の基材101の厚みは例えば0.05〜0.6mmが好ましく、0.1〜0.3mmがより好ましい。基板の絶縁性、機械的強度、および薄型軽量化を考慮すれば、陽極酸化膜102の厚みは例えば0.1〜100μmが好ましい。
【0110】
さらに、基板100は、陽極酸化膜102上にソーダライムガラス(SLG)層が設けられたものであってもよい。ソーダライムガラス層を備えることにより、光電変換層にNaを拡散させることができる。光電変換層がNaを含むことにより、光電変換効率をさらに向上させることができる。
【0111】
(下部電極)
下部電極(裏面電極)20の主成分としては特に制限されず、Mo,Cr,W,およびこれらの組合わせが好ましく、Mo等が特に好ましい。下部電極(裏面電極)20の膜厚は制限されず、200〜1000nm程度が好ましい。
【0112】
(光電変換層)
光電変換層は、光吸収により電荷を生じる層である。光電変換層30の主成分としては特に制限されず、高光電変換効率が得られることから、少なくとも1種のカルコパイライト構造の化合物半導体である場合に好適に適用することができる。カルコパイライト構造の化合物半導体としては、Ib族元素とIIIb族元素とVIb族元素とからなる少なくとも1種の化合物半導体であることがより好ましい。
【0113】
光電変換層30の主成分としては、
CuおよびAgからなる群より選択された少なくとも1種のIb族元素と、
Al,GaおよびInからなる群より選択された少なくとも1種のIIIb族元素と、
S,Se,およびTeからなる群から選択された少なくとも1種のVIb族元素とからなる少なくとも1種の化合物半導体であることが好ましい。
【0114】
上記化合物半導体としては、
CuAlS,CuGaS,CuInS
CuAlSe,CuGaSe
AgAlS,AgGaS,AgInS
AgAlSe,AgGaSe,AgInSe
AgAlTe,AgGaTe,AgInTe
Cu(In,Al)Se,Cu(In,Ga)(S,Se)
Cu1−zIn1−xGaSe2−y(式中、0≦x≦1,0≦y≦2,0≦z≦1)(CI(G)S),
Ag(In,Ga)Se,およびAg(In,Ga)(S,Se)等が挙げられる。
光電変換層130の膜厚は特に制限されず、1.0〜3.0μmが好ましく、1.5〜2.0μmが特に好ましい。
【0115】
(バッファ層)
バッファ層40は、(1)光生成キャリアの再結合の防止、(2)バンド不連続の整合、(3)格子整合、および(4)光電変換層の表面凹凸のカバレッジ等を目的として、設けられる層である。
バッファ層40としては特に制限されないが、Cd,Zn,Sn,Inからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素を含む金属硫化物を含むことが好ましい。かかるバッファ層40はCBD法により形成することが好ましい。
バッファ層40の膜厚は特に制限されず、10nm〜2μmが好ましく、15〜200nmがより好ましい。
【0116】
(窓層)
窓層(保護層)50は、光を取り込む中間層である。窓層50としては、光を取り込む透光性を有していれば特に制限されないが、その組成としてはバンドギャップを考慮すれば、i−ZnO等が好ましい。窓層50の膜厚は特に制限されず、10nm〜2μmが好ましく、15〜200nmがより好ましい。窓層50は必須ではなく、窓層50のない光電変換素子もある。
【0117】
(透光性導電層)
透光性導電層(透明電極)1または2は、光を取り込むと共に、下部電極20と対になって、光電変換層30で生成された電荷が流れる電極として機能する層である。本実施形態において、透光性導電層1(2)が、上記の本発明の導電性酸化亜鉛積層膜の製造方法により製造された積層膜である(図2(b)〜図2(d))。透光性導電層としては、上記本発明の導電性酸化亜鉛積層膜の製造方法により製造された、微粒子層11と、導電性酸化亜鉛薄膜12と、導電性酸化亜鉛薄膜13とからなる積層膜2が低抵抗であり好適であるが、上記本発明の導電性酸化亜鉛積層膜の製造方法により製造された、微粒子層11と、導電性酸化亜鉛薄膜12とからなる積層膜1であってもよい。
【0118】
太陽電池3は、必要に応じてカバーガラス、保護フィルム等を取り付けられている。
【0119】
なお、本発明の製造方法で作製される光電変換装置は、太陽電池のみならずCCD等の他の用途にも適用可能である。
【実施例1】
【0120】
本発明に係る実施例および比較例について説明する。
【0121】
各実施例ではそれぞれ基体上にラインアンドスペースパターン状の導電性酸化亜鉛薄膜を形成した。ここでは、ライン幅5mm、スペース幅100μmとした。
【0122】
<基体>
基体として、下記の基体1〜4を用意した。
基体1:ガラス基板「松浪硝子工業株式会社製、マイクロスライドグラス 白フチ磨 No.2 S1112)」。
基体2:Mo付きソーダライムガラス(SLG)基板上にCIGS層、バッファ層、i−ZnO層を成膜した基板。基板2の製造プロセスを以下に示す。
ソーダライムガラス(SLG)基板上に、スパッタ法によりMo下部電極を0.8μm厚で成膜した。この基板上にCIGS層の成膜法の一つとして知られている3段階法を用いて膜厚1.8μmのCu(In0.7Ga0.3)Se層を成膜した。上記積層膜を15wt%のKCN水溶液でエッチングおよび水洗した後、ZnSO:0.03M、チオ尿素:0.05M、クエン酸ナトリウム:0.03M、アンモニア:0.15Mとなるよう調製した反応液に浸漬させ、Zn(S,O)層を得た。反応液は90℃に調温し、基板を60分浸漬させて、Zn系薄膜を析出させた。最終的に20℃、1hのアニール処理を行って、Zn(S,O)層を得た。形成した上記Zn(S,O)層上に、スパッタ法によりi−ZnO層を製膜した。
基体3:Siウエハ「NK Platz社製 p−type Si[100]」。
【0123】
<導電性酸化亜鉛微粒子の分散液>
ハクスイテック社製導電性酸化亜鉛Pazet GK−40分散液(ガリウムドープ酸化亜鉛,分散媒 IPA(2−プロパノール),平均粒子径20〜40nm,体積抵抗率20〜100Ω・cmを用意した。
【0124】
(実施例1)
基体1(ガラス基板)上に上記導電性酸化亜鉛微粒子の分散液をインクジェット法によりパターン状に塗布することにより、パターン状の導電性酸化亜鉛微粒子層を形成した。
【0125】
次に、この導電性酸化亜鉛微粒子層上に、CBD法により導電性酸化亜鉛薄膜(ZnO)層を成長させた。
【0126】
0.20MのZn(NO溶液と0.10MのDMAB(ジメチルアミンボラン)溶液を同体積で混合し、15分以上攪拌したものを反応液とした。反応液のpHは5.5程度であった。85℃に調温した反応液中に導電性酸化亜鉛微粒子層を形成した基体を所定時間浸漬させた後、基体を取り出して、これを室温乾燥させて、導電性酸化亜鉛薄膜層を形成した(CBD条件1)。
【0127】
(実施例2)
基体1上にリソグラフィによりレジストパターンを形成後、上記導電性酸化亜鉛微粒子の分散液を塗布することにより、微粒子層を形成した。
下地層上に、実施例1と同条件(CBD条件1)でCBD法によりZnO膜を成長させた。
その後、レジストを除去した。
【0128】
(実施例3)
基体2(i−ZnO/Zn(S,O)/CIGS/Mo/SLG基板)を用いた以外は実施例2と同様にして、微粒子層、導電性酸化亜鉛薄膜層を形成した。
【0129】
(比較例1)
基体3(Siウエハ)上にUV照射により疎水性パターンを形成した。
疎水パターンが形成されたSiウエハ上にCBD法により導電性酸化亜鉛薄膜(ZnO)層を成長させた。
0.05MのZn(NO溶液と0.01MのDMAB(ジメチルアミンボラン)溶液の混合液を55℃に温調して30分浸漬させた後、基体を取り出して、これを室温乾燥させて、導電性酸化亜鉛薄膜層を形成した(CBD条件2)。
この比較例1は、非特許文献1の記載のパターン状導電性酸化亜鉛薄膜層形成方法に基づいて行った。
【0130】
(比較例2)
基体3(Siウエハ)上に実施例1と同様の条件(CBD条件1)のCBD法により導電性酸化亜鉛薄膜層を形成した後、レーザスクライブにより溝を形成してパターン状の導電性酸化亜鉛薄膜層とした。
【0131】
(比較例3)
基体3(Siウエハ)上にスパッタリング法により導電性酸化亜鉛薄膜層を形成した後、レーザスクライブにより溝を形成してパターン状の導電性酸化亜鉛薄膜層とした。
スパッタリング法の条件は、基板温度150℃、アルゴン圧力6mTorr、投入パワー密度2.5mW/cmとした。
この比較例1は、特許文献1に記載のパターン状導電性酸化亜鉛薄膜層形成方法に基づいて行った。ただし、特許文献1に記載のスクライブ後のエッチング処理は行っていない。
【0132】
各実施例および比較例について以下の評価を行った。
【0133】
<酸化亜鉛の残渣>
走査型電子顕微鏡(SEM)観察により、スペース部100μm×100μm当たりに視認された酸化亜鉛の残渣数をカウントした。10視野分カウントし、その平均値を求め、100μm×100μm当たりの平均付着粒子数とし、平均付着粒子数が5個以下であれば○(良好)、6個以上、10個以下であれば△(可)、11個以上であれば×(不良)と評価した。
【0134】
<分離抵抗>
スペースで区切られて隣り合う酸化亜鉛のライン間の抵抗を測定した。測定には、HIOKI社製DIGITSL HiTESTER 3456−50(最大測定値:40メガオーム)を用いた。
【0135】
各例における主な製造条件と評価結果を表1に示す。
【表1】

表1に示すように、比較例1〜3においては酸化亜鉛の残渣が11個以上あり、分離抵抗も数百kΩ程度しか得られなかった。
【0136】
一方、実施例1〜3では、酸化亜鉛の残渣を10個以下、特に実施例2、3においては5個以下とすることができた。結果として、分離抵抗としても実施例1で1MΩ以上、実施例2、3では10MΩ以上となり、スペースによるライン化の良好な絶縁が実現されていることが確認された。
【符号の説明】
【0137】
1,2 導電性酸化亜鉛積層膜(透光性導電層)
1L ライン(ライン状積層膜)
1S スペース(ライン状積層膜間領域)
3 光電変換装置(太陽電池)
10 基体
11 導電性酸化亜鉛微粒子層
11p 導電性酸化亜鉛微粒子
12 導電性酸化亜鉛薄膜層(第1の導電性酸化亜鉛薄膜層)
13 第2の導電性酸化亜鉛薄膜層
15 レジスト
20 下部電極(裏面電極)
30 光電変換層
40 バッファ層
50 窓層
100 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体上に、分散媒に導電性酸化亜鉛微粒子が分散されてなる塗布液を塗布する工程を経て、該導電性酸化亜鉛微粒子からなる、所望のパターン状の導電性酸化亜鉛微粒子層を形成し、
該導電性酸化亜鉛微粒子層上に、導電性酸化亜鉛を化学浴析出法により析出させて導電性酸化亜鉛薄膜層を形成することにより、前記所望のパターン状の導電性酸化亜鉛薄膜層を形成することを特徴とするパターン状導電性酸化亜鉛積層膜の製造方法。
【請求項2】
リソグラフィ法により、前記基体上に、該基体が露出する、前記所望のパターン状の開口を有するパターン状レジストを形成し、該パターン状レジストおよび該開口に露出する前記基体上に前記塗布液を塗布することにより、前記基体上に前記所望のパターン状の前記導電性酸化亜鉛微粒子層を形成することを特徴とする請求項1記載のパターン状導電性酸化亜鉛積層膜の製造方法。
【請求項3】
前記パターン状レジストを、前記導電性酸化亜鉛微粒子層上に、前記化学浴析出法により前記導電性酸化亜鉛薄膜を析出させる前、または析出させた後に除去することを特徴とする請求項2記載のパターン状導電性酸化亜鉛積層膜の製造方法。
【請求項4】
前記基体上に前記塗布液を前記所望のパターン状に塗布することにより、前記所望のパターン状の前記導電性酸化亜鉛微粒子層を形成することを特徴とする請求項1記載のパターン状導電性酸化亜鉛積層膜の製造方法。
【請求項5】
前記導電性酸化亜鉛微粒子の平均粒子径が、1〜50nmであることを特徴とする請求項1から4いずれか1項記載のパターン状導電性酸化物積層膜の製造方法。
【請求項6】
前記導電性酸化亜鉛微粒子が、ホウ素ドープ酸化亜鉛,アルミニウムドープ酸化亜鉛,およびガリウムドープ酸化亜鉛からなる群より選ばれる少なくとも1種の導電性酸化亜鉛を主成分とするものであることを特徴とする請求項1から5いずれか1項記載のパターン状導電性酸化物積層膜の製造方法。
【請求項7】
前記化学浴析出法により形成される導電性酸化亜鉛薄膜層が、ホウ素ドープ酸化亜鉛を主成分とすることを特徴とする請求項1から6いずれか1項記載のパターン状導電性酸化物積層膜の製造方法。
【請求項8】
前記化学浴析出法において、亜鉛イオンと、硝酸イオンと、ボラン系化合物とを含む反応液を用いて前記導電性酸化亜鉛薄膜層を形成することを特徴とする請求項1から7いずれか1項記載のパターン状導電性酸化物積層膜の製造方法。
【請求項9】
前記化学浴析出法により形成される導電性酸化亜鉛薄膜層からなる第1の導電性酸化亜鉛薄膜層上に、第2の導電性酸化亜鉛薄膜層を電解析出法により形成することを特徴とする請求項1から8いずれか1項記載のパターン状導電性酸化亜鉛積層膜の製造方法。
【請求項10】
前記第2の導電性酸化亜鉛薄膜層が、ホウ素ドープ酸化亜鉛を主成分とすることを特徴とする請求項9項記載のパターン状導電性酸化物積層膜の製造方法。
【請求項11】
前記電解析出法において、亜鉛イオンと、硝酸イオンと、ボラン系化合物とを含む反応液を用いて前記第2の導電性酸化亜鉛薄膜層を形成することを特徴とする請求項9または10記載のパターン状導電性酸化物積層膜の製造方法。
【請求項12】
前記ボラン系化合物が、ジメチルアミンボランであることを特徴とする請求項8または11に記載のパターン状導電性酸化物積層膜の製造方法。
【請求項13】
前記基体の表面形状が矩形であり、
前記所望のパターンが、前記矩形の一辺と略平行なラインアンドスペースパターンであり、スペース幅が10〜300μm、ライン幅が1〜10mmであることを特徴とする請求項1から12記載のパターン状導電性酸化物積層膜の製造方法。
【請求項14】
表面形状が矩形である基体の表面に形成された、平均粒子径1〜50nmの導電性酸化亜鉛微粒子からなる導電性酸化亜鉛微粒子層と、該導電性酸化亜鉛微粒子層上に形成された導電性酸化亜鉛薄膜層とを備えた導電性酸化亜鉛積層膜であって、前記矩形の一辺と平行なラインアンドスペースパターン状に形成され、スペース幅が10〜300μm、ライン幅が1〜10mmであることを特徴とするパターン状導電性酸化亜鉛積層膜。
【請求項15】
前記導電性酸化亜鉛微粒子が、ホウ素ドープ酸化亜鉛,アルミニウムドープ酸化亜鉛,およびガリウムドープ酸化亜鉛からなる群より選ばれる少なくとも1種の導電性酸化亜鉛を主成分とするものであることを特徴とする請求項14記載のパターン状導電性酸化亜鉛積層膜。
【請求項16】
前記導電性酸化亜鉛薄膜層が、ホウ素ドープ酸化亜鉛を主成分とすることを特徴とする請求項14または15記載のパターン状導電性酸化亜鉛積層膜。
【請求項17】
下部電極と光電変換半導体層とバッファ層と透光性導電層とが積層されてなる光電変換素子が基板上に複数集積化されてなる光電変換装置の製造方法において、
前記複数の光電変換素子の前記透光性導電層をパターン状導電性酸化亜鉛積層膜からなるものとし、
該パターン状導電性酸化亜鉛積層膜を、請求項1から13記載のパターン状導電性酸化亜鉛積層膜の製造方法用いて、前記基板上に前記下部電極、前記光電変換半導体層および前記バッファ層が順に積層されてなる基体上に形成することを特徴とする光電変換装置の製造方法。
【請求項18】
下部電極と光電変換半導体層とバッファ層と透光性導電層とが積層されてなる光電変換素子が基板上に複数集積化されてなる光電変換装置であって、
前記複数の光電変換素子の前記透光性導電層が、請求項13から16いずれか1項記載のパターン状導電性酸化亜鉛積層膜からなるものであることを特徴とする光電変換装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate