説明

パターン画像計測方法及びその方法を用いたパターン画像計測装置

【課題】フォトマスク又はウェハのパターンを電子顕微鏡(SEM)から撮像し、得られたパターン画像を計測する方法において、そのパターン画像特有のチャージアップやフォーカスのボケによるパターン計測の信頼性の低下を防ぎ、パターン計測結果の信頼性を高めることを目的とする。
【解決手段】計測対象のパターンのSEM画像を取得し、計測するパターンを輪郭線を抽出処理し、該輪郭線の各点の近傍領域の濃度値から判別分析処理を行い判別分析処理によって算出したη値を統計解析処理し、画質の定量化し、信頼度の判定処理することにより、前記パターン計測の結果の信頼度を向上させるが可能となるパターン画像計測方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体製造のリソグラフィ工程に用いられるフォトマスク、及びリソグラフィ工程後のウェハを、電子顕微鏡で撮影したパターン画像を計測するパターン画像計測方法及びその方法を用いたパターン画像計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の半導体LSIパターンの微細化に伴い、パターン原版としてのフォトマスクも同様に微細化への対応を迫られており、同時に高精度化への要求は非常に厳しい。従来、フォトマスク品質における重要項目として、欠陥・寸法精度・アライメントの3項目が特に重視されており、半導体の微細化が進む現在ではそれぞれの項目を計測するための高精度なフォトマスク専用検査装置が開発され使用されている。しかしフォトマスクパターンの微細化による高精度化への要求は、前記3項目以外のあらゆる品質項目(パターン形状、パターンデータ保証、耐久性、クリーン度等)においても同様になりつつあり、特にパターン形状の精度については直接LSI回路の精度および性能に関わることから、重視されるようになってきた。
【0003】
フォトマスクのパターン形状は、半導体回路のマスクレイアウト設計において設計図面通りのパターンが精度良くマスク上に再現されていることが望ましいのは当然である。しかし、実際にはリソグラフィ技術を用いてガラス基板(以下基板と記す)上の金属薄膜に微細なパターンを加工しているため、マスクパターンと設計パターンとは完全に同一形状ではなく、寸法差やコーナー部の丸みなど、微小な違いが存在する。この違いはマスク上で数十〜数百ナノメートル程度の大きさであるが、近年の超LSIの微細化の進展によって、これが半導体回路の特性に影響を与えることが懸念され始めている。すなわち、微細なパターンであるほど、パターン自体に対して前記のパターン形状の違いが相対的に大きくなり、特性値に影響するようになってきた。
【0004】
また、近年の急激な微細化に伴い、投影露光技術において光学原理を積極的に利用することで前記のパターン形状の問題を改善しようという試みが盛んになってきている。その代表例は光近接効果補正マスク(以下OPCマスクと称する)である。ここでOPCマスクについて説明する。OPCマスクは、ウェハ露光転写時に回路パターン形状が精度良く転写されるように、本来の回路パターンに近接あるいは接触するようにして微細な光近接効果補正パターン(以下OPCパターンと称する)が付加されているマスクである。OPCパターンは、投影露光転写時に光学的近接効果が原因で生じる転写パターン形状の劣化に対して、近接するパターン同士の光干渉効果を利用して形状補正し、本来の設計パターンを精度よく転写可能にすることを目的とするパターンであり、本来の回路パターンの四隅や隣接するパターンと最も近接する部分に配置されることが多い。また最近では回路パターン全体を複雑に変形させるような種類のOPCパターンも提案されている。ただし、本来の回路パターンとしては不要なため、OPCパターン自身は転写されない程度に微細でなければならない。従って、OPCパターンは従来のパターンよりもかなり微細であるため、マスクパターンの寸法ルールが従来のマスクよりも飛躍的に微細化することになり、マスク製造技術の点では非常に高度な微細加工技術を必要とする。もちろん、微細化の点では従来型のフォトマスクも同様に進展していくことは確実であり、やはり高度な微細加工技術が要求されるようになっている。そこでフォトマスク製造及び検査技術の課題として重視されるようになったのが、前述のパターン形状精度の問題である。一方、フォトマスクを利用してリソグラフィ工程によってウェハ上に形成されたパターンについてもフォトマスクと同様に形状の精度が問題となってきている。
【0005】
基板上のフォトマスクやウェハのパターン形状を計測する手段として従来は、光学顕微鏡や電子顕微鏡(以下SEM)を用いてパターンの画像を取得した後、画像計測用のソフトを利用して計測を行っていた(例えば、特許文献1を参照)。画像計測の手法としては、パターン画像からパターンのエッジ部分を輪郭線として抽出して、その輪郭線の座標情報をもとにパターンの特性を計測する手法や、パターン画像の濃度分布情報からある閾値を決め、該閾値を基準にして線幅を計測する手法などがある。一般的にフォトマスクやウェハの非常に微細なパターンを高精度に計測するには、光学顕微鏡の画像では解像度が足りないため、SEMのパターン画像が利用されることが多い。
【0006】
下記に公知文献を記す
【特許文献1】特開2002−92595号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
フォトマスクやウェハのパターンをSEMで撮影し、パターンの大きさやコーナーラウンディング、エッジラフネスといった特性を計測する際、SEM特有のチャージアップによる画像の変動やフォーカスずれによる画像のボケが問題となる。特に画像のボケは、パターンを計測する際に利用するエッジの濃度分布が変化してしまうため、計測結果に直接影響を及ぼす。通常、SEMでパターン画像を撮影する際にはオートフォーカス機能やマニュアルによる微調整により、なるべくフォーカスずれが少ない条件で画像を取得するようにしている。しかしながら、全ての画像についてフォーカスをきちんと合わせ込むのは非常に難しく、また1枚の画像中にもフォーカスがあっているところとずれているところが存在することがある。これまでは、SEMで取得した画像がよほど変化してしまっていない限り、フォーカスが合っていてもずれていても構わずに計測が行われていた。そのため、同じパターンであるのにSEMのパターン画像の画質の善し悪しによって計測値が変わってしまうことが多々見られ、SEMのパターン画像からパターン計測することの信頼性が低かった。
【0008】
本発明は以上の問題点を鑑みてなされたもので、フォトマスク又はウェハのSEMによるパターン画像を計測する際に、そのパターン画像の画質を定量的に把握することで、パターン計測結果の信頼性を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明が提供する方法とは、本発明の請求項1に係る発明は、基板上に形成されたパターンを電子顕微鏡から撮像し、得られたパターン画像を計測する方法において、計測対象の、濃度分布情報を具備したパターン画像からパターンの輪郭線を抽出する輪郭線抽出工程と、該抽出された輪郭線の少なくとも一部を構成する各画素において、その近傍領域の濃度値に基づいてパターン部と背景部の分離度を求める判別分析工程と、各画素における分離度に対して、統計解析処理を行い、分離度の平均を求める統計解析工程と、該分離度の平均値と予め定めた基準値とを比較して、パターン画像計測の可否を判定する定量化判定工程と、前記定量化判定工程によって計測が可能と判定されたパターン画像から抽出された輪郭線に対して、輪郭線の座標情報から計測箇所を特定する工程と、前記各計測箇所において、座標情報及び濃度分布情報を用いて計測を行う計測工程とを有するパターン画像計測方法である。
【0010】
本発明の請求項2に係る発明は、前記統計解析工程において、分離度の大きさの分布を求め、該分離度の分布に基づいて、パターン画像計測に計測エラーが含まれる可能性を判定する工程を有する請求項1記載のパターン画像計測方法である。
【0011】
本発明の請求項3に係る発明は、基板上に形成されたパターンを電子顕微鏡から撮像し、得られたパターン画像を計測するパターン画像計測装置において、計測対象の、濃度分布情報を具備したパターン画像からパターンの輪郭線を抽出する輪郭線抽出手段と、該抽出された輪郭線の少なくとも一部を構成する各画素において、その近傍領域の濃度値に基づいてパターン部と背景部の分離度を求める判別分析手段と、各画素における分離度に対して、統計解析処理を行い、分離度の平均を求める統計解析手段と、該分離度の平均値と予め定めた基準値とを比較して、パターン画像計測の可否を判定する定量化判定手段と、前記定量化判定工程によって計測が可能と判定されたパターン画像から抽出された輪郭線に対して、輪郭線の座標情報から計測箇所を特定する手段と、前記各計測箇所において、座標情報及び濃度分布情報を用いて計測を行う計測手段とを有するパターン画像計測装置である。
【発明の効果】
【0012】
フォトマスク又はウェハのパターン形状の計測において、本発明のパターン画像計測方法を用いることにより、SEMで撮影されたパターン画像を計測する際、チャージアップやフォーカスずれによる画質の変動を数値的に捉え、その善し悪しを定量評価した上でパターン計測を行うことが可能となるため、パターン計測結果の信頼度を向上させることが可能となる。また、パターン画像の撮像条件にフイードバックすることで、SEM画像の撮影を安定できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の具体的な形態を一実施形態に基づいて以下説明する。
【0014】
図1は、本発明のパターン画像計測のフロー図である。計測では、工程1〜6を実行する。まず、SEM画像の取得1では、フォトマスク又はウェハの計測対象パターンをSEMで撮影し、パターン画像のSEM画像を得る。このSEM画像の取得1では、画像の濃淡の情報が256階調で画素単位に記録されたものである。フォトマスク又はウェハのパターンを撮影したSEM画像のパターン画像の例を図3(a)に示す。SEM画像のパターン画像10は、ホールパターンと呼ばれるもので、パターン部11の部分がガラス、その周辺の背景部12がクロムで形成されている。
【0015】
次に、得られたSEMのパターン画像に輪郭抽出処理2を行い、パターン画像の輪郭線13を生成する(図3b参照)。この輪郭抽出処理には様々な方法がある。一般的には、閾値を定めて画像を2値化することでパターンと背景を分離しておき、そのパターンの輪郭をエッジ抽出処理で抽出する方法がある。しかしながら、SEMのパターン画像ではこのような一般的な方法でパターンの輪郭線を抽出できることが少ない。そのため、本発明ではSEMのパターン画像に特化したパターン輪郭抽出方法を用いている。まず、パターン画像からパターンのエッジ情報を抽出する。このエッジ情報は画素の濃度値の差分を計算したものであるが、本方法では差分を計算する距離を変化させて各距離ごとの差分データを作成する。次にこの差分データを利用して追跡開始点を特定し、輪郭追跡処理を行うことで輪郭データを抽出する。ここで求められた輪郭データにはノイズが多く含まれているため、次に動的輪郭モデルという手法を用いてノイズを除去する。動的輪郭モデルとは、輪郭線全体の滑らかさと元のパターンエッジとの一致度の双方のバランスをとりながら、輪郭データを構成する個々の画素を動かして輪郭線を変化させる手法である。以上の方法により、パターン画像にノイズや濃淡ムラがある場合においても、元のパターン画像と一致し、且つ滑らかな輪郭線を抽出することが可能である。図3(a)のパターン画像から輪郭線を抽出した結果を図3(b)に示す。
【0016】
次に、パターン画像10の輪郭線12上の各座標の画素とその近傍領域の各々画素の濃度値データを利用して、判別分析処理3を行う。判別分析処理の具体的な手順は以下の通
りである。輪郭線13を構成している各点の画素(以下輪郭線画素と記す)について、一つの輪郭線画素を中心とする9×9の正方形領域(以下9×9近傍と記す)の全画素(81ヶ)の濃度値データを元のSEM画像から取得し、前記9×9近傍の画素を256階調の濃度値データと画素の度数のヒストグラム(図4参照)を作成する。図4では、横軸に濃度、縦軸に該濃度を持つ画素数(度数)を示し、画素数nは81である。続いて判別分析法により、9×9近傍を輪郭抽出処理2時に用いた2値化する閾値と、濃度値データより最適な閾値を用いてパターン部・背景部の分離度を示すη値の関係(図5)を調べ、η値の最大値をその輪郭線画素でのη値とする。この判別分析処理3を順次に、全ての輪郭線画素で行う。図5では、横軸に9×9近傍の画素を濃度値データによりパターン部・背景部を分離する濃度の閾値と、該閾値による分離度を示すη値の変動の関係を示し、前記閾値を低い場合及び高い場合共にη値は低くなる。
【0017】
ここで、前記η値とこれを算出する判別分析法について説明する。一般的に、9×9近傍において、中心に輪郭線画素を持つSEM画像は、パターンと背景の両方を含み、画素の濃度のヒストグラムは、2つの山が形成される。すなわち、パターン部と背景部とを分離するということは、ヒストグラムの2つの山を分離することに等しい。そこで、2つの山AとBとの分離度は、もっとも適切な閾値kを求める方法と考える。それには、Aの平均値aとBの平均値bと閾値kとの間の分散を最大にするkの値を求めれば良い。判別分析法は、9×9近傍の画像の濃度値のヒストグラムにおいて、濃度値の集合を閾値kで2つのクラス(k以上とk未満)に分割したと仮定したとき、2つのクラスの分離が最も良くなるように閾値kを決めるという考え方に基づいている。実際には、2つのクラスの平均値の分散と、画像全体での分散の比を最大にするという基準によりkを決める。
【0018】
さらに具体的に説明すると、与えられた9×9近傍の画像の画素が、1,2,…,iのiレベルの濃度値をもつとする。ここで閾値をkとして、kより大きな濃度値をもつ画素と、それ以下の濃度値をもつ画素の2つのグループに分け、クラス1、クラス2とする。濃度レベルiの画素数をniとし、全画素数をNとすると、下記の数式1に示すように、クラス1及び2間の分散σB2(k)は、(1)で与えられる。画像全体での分散σT2は、(2)で与えられる。また、(3)で与えられる評価基準値ηは、クラス1及び2間の分散を9×9近傍画像の画素全体での分散で正規化したものである。
【0019】
【数1】

この分散σT2は、0≦η≦1の範囲の値をもち、1に近いほど1及び2クラスの分離度が高い、あるいはヒストグラムの双峰性が高いことを示す有効な評価尺度である。
【0020】
続いて、輪郭線画素の全ての点で算出したη値に対して統計解析処理4を行う。本処理では、η値のデータからノイズを除去するため移動平均処理を行う。図3のパターン画像から輪郭線画素の全点でη値を算出し、移動平均処理した結果を図6のグラフに示す。次に移動平均処理後のデータからη値の平均値を算出するとともに、η値の大きさの分布を解析する。
【0021】
次に、η値の解析結果をもとに画質の定量化判定処理5を行う。一般的に判別分析の結果、η値が0.7未満となる場合は、ノイズやフォーカスずれの影響によりその領域においてパターン部と背景部とが正しく分離されないことが多い。つまり、η値が、0.7未満となるところではパターン計測の精度が悪くなる。画質の定量化判定処理では、統計解析処理で算出したη値の平均値を100倍した数値をパターン画像の画質の善し悪しを示す評価値として出力する。これが70点未満の場合には、画質が不良のため計測できない、又は計測した値の信頼性が低い旨のメッセージをユーザーに知らせる処理を行う。
【0022】
また、平均値が70点以上となる場合でも、パターン画像の画質が局所的に悪くなって
いることもありえるため、統計解析処理の結果をもとにη値が0.7未満となるデータ個数を調べ、それがある規定量を越えている場合には、0.7未満のデータ数の全データ数に対する割合とともに計測エラーが含まれる可能性がある注意メッセージをユーザーに知らせる処理を行う。一方、平均値が70点以上でη値が0.7未満となるデータ数がある規定値未満の場合には、その画像の点数のみを表示する処理を行う。この点数が大きいほど、パターン計測結果の信頼度が高いことを示している。
【0023】
次に、図1のフロー図の工程6のパターン計測処理について図2を参照し、説明する。図2は、パターン計測処理6の手順を示すフロー図で、マスク形状計測アルゴリズムの構成を示すブロック図ある。図2では、k1〜k6まであり、k1は、パターン画像入力部であって、計測の対象となるパターンを含む画像を入力する。入力する画像は、検査機、SEM、光学顕微鏡等によって撮影された画像となる。
【0024】
次にk2は、パターンを指定して計測モードを選択する。パターンの指定は、マウス等のポインティングデバイスにより矩形領域(以下ROIと記す)を生成して行う。図7に示すようにROI17でパターンを囲み、パターンに対応した計測モードを選択する。計測モードは、フォトマスクに一般的にみられる形状別に10種類程度登録されている。具体的には、コーナーパターン、エッジラフネス、ホールパターン、突起、欠け、バッテングエラー、OPCパターン(セリフ、ハンマーヘッド)と、歪みなどがある。計測モードはパターン形状に応じた計測プログラムを作成することで追加することができる。
【0025】
次にk3は選択したパターンの輪郭線を抽出する。輪郭線の抽出方法は、図1の工程3と同様である。図8(a)に示すS1は、元のパターン画像であり、図8(b)のS2はその輪郭線を抽出した輪郭線画像を示す。
【0026】
次にk4では、抽出された輪郭線の座標情報から計測箇所を自動で特定する。そして、k5は各計測箇所において、濃度分布データを用いて計測を行う。ここでは、ホールパターンの計測モードでの計測を説明する。計測する項目は、幅、高さとコーナーの丸み量である。まず、ホールパターンの輪郭線の座標情報から幅、高さを算出する。ここで幅、高さは、輪郭線画像の画素単位で求められるため、その精度が不十分である。そこで実際の計測は、輪郭抽出前の元画像の濃度分布データを利用する。図9(a)のT1に示すように、ホールパターンの幅、高さの1/3程度の領域を決め、この領域の濃度分布データを元画像から取得する。この領域の範囲は、パターンの大きさより小さければよく、ホールパターンのコーナー部分の丸みの影響を避けるため、今回は1/3程度とした。幅、高さの計測は、図10に示すように、濃度分布データのピークの内側において極大値と極小値の50%を閾値として、エッジ位置14をサブピクセル単位で抽出することで行う。次に、ホールパターンのコーナー部分の丸みを計測する。コーナー丸みを計測する際の始点は、図9(b)のT2に示すように、ホールパターンにおける各辺のエッジ位置14を延長した交点15とする。なお、このエッジ位置14は、濃度分布データからサブピクセル単位で算出したものである。図11に示すように、この始点15(エッジ位置の交点15)から斜め45度方向に濃度分布データを取得し、ピークの外側において極大値と極小値の50%を閾値として、エッジ位置をサブピクセル単位で抽出し、該位置を終点16とする。始点15と終点16であるエッジ位置との距離がコーナーの丸み量となる。以上のように輪郭線の座標情報から計測箇所を自動的に決定することで、ユーザーが計測箇所を指定していた従来手法に比べて、計測誤差を大きく低減させることができる。また、元画像の濃度分布データを利用してサブピクセル単位で計測を行うため、高精度な計測が期待できる。
【0027】
最後に、k6では、上記アルゴリズムで計測された結果をモニター画面やデータファイルで出力する。
【0028】
以下本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0029】
ここで、本発明の1つ目の実施例を図12、図13に示す。図12は、フォトマスク上の0.6μmのホールパターンをSEMで撮影する際、基準のフォーカスからわざとプラス及びマイナス方向にずらして複数の画像を取得し、それぞれの画質を本手法で数値化した結果である。このグラフから、フォーカスのずれが大きくなるに従ってη値が小さくなっていることが分かる。図13は、フォーカスをずらした各パターン画像においてホールの幅を計測した結果である。このグラフから、フォーカスのずれに応じて計測誤差が増大していることが分かる。つまりこれらの2つのグラフから、パターン画像のη値を評価することでパターン画像の計測精度を管理することができることが分かる。例えば、あるSEMのパターン画像のパターン計測精度を2nm未満に抑えたい場合、SEMのフォーカスずれは基準±20以内である必要がある。一方、図12のグラフからフォーカスのすれが±20以内のときはη値が0.8以上になっていることが分かる。つまり、パターン画像からη値を計測し、それが0.8以上のものだけを計測対象とすれば計測誤差を2nm未満に抑えることが可能となる。
【実施例2】
【0030】
次に本発明の2つめの実施例を図14,図15に示す。図14はフォトマスク上のホールパターンをある条件で撮影したSEMのパターン画像である。図15は本発明の手法によりホールパターンの輪郭線の各ポイントでη値を算出し、プロットしたグラフである。ここでは、ホールパターンの左側のエッジの中央から右回りに輪郭線を辿っている。図14のパターン画像を見ると、ホールパターンの上辺部分がボケていることが分かる。このようなパターン画像を計測した場合、横方向の幅についてはボケがないため正しく計測できるが、縦方向の高さは正しい計測を行うことができない。そこで、図15のグラフを見てみると、ちょうどパターンの上辺部分に相当するポイント(50〜150)においてη値が大きく落ちこんでいることが分かる。つまり、輪郭線の各ポイントでのη値を監視することで、一つのパターン内において計測結果が信頼できるかどうかを局所的に判定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明のパターン画像計測方法の手順を示すフローである。
【図2】本発明のパターン計測処理の手順を示すフロー図である。
【図3】パターン画像と輪郭線抽出の例を示す平面図であり、(a)は、パターン画像であり、(b)は、その輪郭線である。
【図4】本発明のパターン画像計測方法の輪郭線上のある画素での近傍領域のヒストグラムである。
【図5】本発明のパターン画像計測方法の判別分析法によって計算した閾値とη値の関係を示すグラフである。
【図6】図3の輪郭線上の全ての画素におけるη値を示すグラフである。
【図7】計測対象パターンを選択している図である。
【図8】計測対象パターンの輪郭抽出例を示す図である。
【図9】輪郭線から計測箇所を自動的に特定する模式図である。
【図10】計測箇所の濃度分布グラフである。
【図11】コーナー部分の計測手法の模式図である。
【図12】SEM画像のフォーカスとη値の関係を示すグラフである。
【図13】SEM画像のフォーカスと計測誤差の関係を示すグラフである。
【図14】部分的にボケがあるSEMのパターン画像の例である。
【図15】図14のパターンのη値を示すグラフである。
【符号の説明】
【0032】
1…SEM画像の取得
2…輪郭抽出処理
3…判別分析処理
4…統計解析処理
5…画質の定量化判定処理
6…パターン計測処理
10…パターン画像
11…パターン
12…背景
13…輪郭線
14…(ピークの内側で、最大最小値50%の濃度閾値で分離した)エッジ位置
15…(側面のエッジ位置を延長線の)交点、始点
16…(コーナー丸みの計測時のエッジ位置の)終点
17…矩形領域(ROI)
k1…パターン画像の入力
k2…パターンの指定と計測モード選択
k3…パターンの輪郭線抽出
k4…計測箇所の自動特定
k5…濃度分布情報による計測
k6…計測結果出力
S1…パターン輪郭線抽出前の画像
S2…パターン輪郭線抽出後の画像
T1…計測箇所自動特定の模式図
T2…エッジ位置と計測始点の図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成されたパターンを電子顕微鏡から撮像し、得られたパターン画像を計測する方法において、
計測対象の、濃度分布情報を具備したパターン画像からパターンの輪郭線を抽出する輪郭線抽出工程と、
該抽出された輪郭線の少なくとも一部を構成する各画素において、その近傍領域の濃度値に基づいてパターン部と背景部の分離度を求める判別分析工程と、
各画素における分離度に対して、統計解析処理を行い、分離度の平均を求める統計解析工程と、
該分離度の平均値と予め定めた基準値とを比較して、パターン画像計測の可否を判定する定量化判定工程と、
前記定量化判定工程によって計測が可能と判定されたパターン画像から抽出された輪郭線に対して、輪郭線の座標情報から計測箇所を特定する工程と、
前記各計測箇所において、座標情報及び濃度分布情報を用いて計測を行う計測工程とを有するパターン画像計測方法。
【請求項2】
前記統計解析工程において、分離度の大きさの分布を求め、該分離度の分布に基づいて、パターン画像計測に計測エラーが含まれる可能性を判定する工程を有する請求項1記載のパターン画像計測方法。
【請求項3】
基板上に形成されたパターンを電子顕微鏡から撮像し、得られたパターン画像を計測するパターン画像計測装置において、
計測対象の、濃度分布情報を具備したパターン画像からパターンの輪郭線を抽出する輪郭線抽出手段と、
該抽出された輪郭線の少なくとも一部を構成する各画素において、その近傍領域の濃度値に基づいてパターン部と背景部の分離度を求める判別分析手段と、
各画素における分離度に対して、統計解析処理を行い、分離度の平均を求める統計解析手段と、
該分離度の平均値と予め定めた基準値とを比較して、パターン画像計測の可否を判定する定量化判定手段と、
前記定量化判定工程によって計測が可能と判定されたパターン画像から抽出された輪郭線に対して、輪郭線の座標情報から計測箇所を特定する手段と、
前記各計測箇所において、座標情報及び濃度分布情報を用いて計測を行う計測手段とを有するパターン画像計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2006−29891(P2006−29891A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−206877(P2004−206877)
【出願日】平成16年7月14日(2004.7.14)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】