説明

パック電池

【課題】保護回路基板にコネクターを適切に接着して配設することで、出力端子の通電不良を回避するとともに良好な外観品質を確保することのできるパック電池を提供することを目的とする。
【解決手段】基板本体30の表面と対向するコネクター35の内側表面において、外部端子を囲繞するように隔壁353A〜353Cを設け、各隔壁353A〜353Cの頂部が前記表面と対向するようにする。隔壁353A〜353Cの頂部の少なくとも一部に、接着剤glが流れ込んだ際にこれを毛細管現象で液溜めするための流し込み溝353a、353bを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、出力端子を内包したコネクターを備えるパック電池に関し、特にコネクター配設時に出力端子への接着剤の流れ込みを防止して、外部機器との接触不良を防止する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、繰り返し充電して使用が可能な2次電池をパッケージングしてなるパック電池が広く普及している。パック電池はノートブック型パーソナルコンピュータや携帯電話、PDA、その他各種電子機器の主電源またはバックアップ電源等として広く用いられている。
図7(a)は、従来のパック電池の構成例を示す図である。当図に示されるパック電池は、薄型で角型のリチウム二次電池を素電池とし、下面側に樹脂製のボトムカバー、上面側に保護回路基板が配設されている。保護回路基板には、出力端子を備えるコネクターや、異常温度発生時に通電を遮断するPTC(いずれも不図示)等が実装され、コネクターを露出した状態で前記基板と素電池の一部が低温溶融樹脂からなるモールディング樹脂(ホットメルトモールディング樹脂)により被覆される。その後は、素電池とモールディング樹脂の表面にわたり外装ラベルが貼られる。なお図中では、モールディング樹脂の上面に水没判定ラベルが配設されている。
【0003】
ここで、前記コネクターは保護回路基板をなす基板本体の表面に載置した状態で、当該コネクターの周囲に対し、エポキシ系接着剤などのシール剤(以下、単に「接着剤」という。)を塗布し、これを固着させることにより配設される。
【特許文献1】特開2008−140711号公報
【特許文献2】特開2006−66289号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のパック電池においては、製造工程でコネクターを保護回路基板に接着する際に、過剰な接着剤がコネクターの内部に浸入し、出力端子に付着するおそれがある。ここで図7(b)はコネクターの部分拡大図である。過剰な接着剤は、主としてコネクターと基板本体との境界を伝い、コネクターの内部に侵入する。接着剤は絶縁性であるため、これが図のように出力端子のコンタクト部(外部機器と接触する部位)に付着すると、良好な通電が行えずに接触不良を生じ、電池性能を著しく低下させる原因となる。また、接着剤がコンタクト部に付着しなくとも、コンタクト部を含む金属端子および回路基板(または、その他の部品)に付着するとコンタクト部の動作を妨げることになり、この場合も良好な通電および導通が行えなくなる。
【0005】
また、出力端子はコネクターの開口部から外部に露出しているので、外観からコネクターの内部が見えるパック電池の場合は、コネクターの内部に接着剤が存在すると、外観品質を低下させる原因にもなる。
このように現在のパック電池では、コネクターを接着する際において解決すべき課題が存在する。
【0006】
本発明は以上の課題に鑑みてなされたものであって、保護回路基板にコネクターを適切に接着して配設することにより、通電不良の問題を回避することのできるパック電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、絶縁部材に出力端子が配設されてなるコネクターが、前記絶縁部材の周囲に配されたシール剤により基板に固着され、前記基板が前記出力端子および素電池の電極と電気的に接続された状態で、前記基板と前記素電池がモールディング樹脂に被覆されてなるパック電池であって、前記絶縁部材における前記基板との対向面には、前記出力端子の配設領域とその外側領域とを隔てるように隔壁が形成され、前記基板と対向する隔壁の頂部には、前記基板と前記隔壁の間を通って浸入した前記シール剤を液溜めするための溝が形成されている構成とした。
【0008】
ここで前記絶縁部材には前記出力端子が複数個、間隔をおいて配され、前記隔壁は全ての出力端子の配設領域を囲むように形成された構成とすることもできる。
また前記隔壁は、その頂部を見下ろした状態において、対向する2辺と当該2辺を繋ぐ1辺の3辺からなるコの字型をしている構成とすることもできる。
この場合、前記3辺のうち、前記対向する2辺の隔壁部分は、前記2辺を繋ぐ1辺の隔壁部分よりも肉厚に形成され、前記溝は、前記対向する2辺の隔壁部分に形成されている構成とすることもできる。
【0009】
あるいは前記溝は、前記隔壁の頂部の全長にわたり形成された構成とすることもできる。
【発明の効果】
【0010】
以上の構成を有する本発明のパック電池では、基板表面と対向する前記コネクターの部分には、基板に頂部を向けるように隔壁(連続的なリブ)が形成されており、この隔壁の前記頂部には、シール剤を液溜めするための流し込み溝が形成されている。
したがって、製造工程において、基板側にコネクターを実装する際に接着剤を塗布する場合、コネクターと基板本体との間に過剰な接着剤が入り込んでも、毛細管現象等により接着剤が前記流し込み溝中に誘導されて液溜めされ、溝を超えてコネクターの内部に接着剤が浸入するのが低減、防止される。その結果、従来のようにコネクターに内包された出力端子に対し、外部から過剰な接着剤が侵入して付着し、外部機器への通電性が低下する接触不良の問題を防止できる。また、外観からコネクター内部が確認できる構造のパック電池に本発明を適用すれば、コネクター内への接着剤が付着することによる外観品質の低下の問題も良好に防止できる効果が奏される。
【0011】
また、本発明はコネクターの隔壁の頂部に所定の溝を形成するだけで実施することができるので、比較的低コストでの実現が可能であり、高い有用性を発揮できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明の実施の形態を説明するが、当然ながら本発明はこれらの形式に限定されるものでなく、本発明の技術的範囲を逸脱しない範囲で適宜変更して実施することができる。
<実施の形態1>
図1は、本発明の実施の形態1におけるパック電池1の構成を示す展開図である。図2はモールディング樹脂成型前のパック電池1の構成を示す図である。図3は、モールディング樹脂成型後のパック電池1(ラベル6は省略)の構成を示す図である。
【0013】
パック電池1の構成は、大別すると図1に示すように、素電池2、保護回路基板3、ホットメルトモールディング(以下、単に「モールディング」という。)樹脂4、ボトムカバー5、およびラベル6等で構成される。パック電池1のサイズ例としては、縦(y方向長さ)48mm×横(x方向長さ)38mm×厚み(z方向長さ)4mmとすることができる。
【0014】
素電池2は角型の有底外装缶の内部に、正負両極板をセパレータを介して積層してなる所定の電極体と、電解液が収納され、外装缶の開口部が上面2a(封口板)を用いてレーザー溶接により内部封止されてなる。素電池2には薄型の各種二次電池が使用できるが、ここでは充電容量に優れる角型リチウム二次電池を利用している。外装缶の側面は、滑らかな曲線状の表面をなすように加工されている。素電池2のサイズ例としては、縦(y方向長さ)43mm×横(x方向長さ)38mm×厚み(z方向長さ)4mmとすることができる。
【0015】
素電池2の下面2bには、落下などで素電池2に加わる衝撃を和らげるための樹脂製のボトムカバー5が配設される。
素電池2の上面2aは、図1に示すように、その中央および右寄りに正極端子21及び負極端子22が配設され、左寄りに安全弁23が配設されている。正極端子21にはPTC31のリード板311がスポット溶接により接続される。負極端子22には同様にリード板36、リード板34が順次接続される。
【0016】
安全弁23は電池内部の内圧異常上昇時に圧力を外部に逃がすための安全機構であり、部分的に厚みの薄い金属板で構成され、所定の値まで内圧が上昇すると、その圧力で前記金属板が破れてガスを外部に逃がすようになっている。
保護回路基板3は、コンポジット材料からなる帯状の基板本体30に対し、各種電気素子が実装されて構成され、素電池2の上面2a付近に配置される。基板本体30の表面のサイズは上面2aとほぼ同様である。図1では、基板本体30に実装されるリード板34、36、PTC31、コネクター35を示し、図2でこれらが実装されている様子を示す。このうち基板本体30の表側主面には、コネクター35が実装され、裏側主面にはPTC31、リード板34、36が配設される。
【0017】
PTC31は、パック電池1の充放電時において、万一、素電池2が過度に温度上昇した際に通電を遮断する安全機構として設けられ、ここではPTC素子310にリード板311、312を接続して構成されている。素電池2にPTC31を取り付ける際には、リード板312が素電池2の上面2a側と接触して短絡を起こしたり、安全弁23がモールディング樹脂4で閉塞されて作動不良を起こさないように、図2のように、上面2aとの間に一定のスペースを介して板状の絶縁カバー32を配設し、この上にPTC31が載置されるようにする。このとき、絶縁カバー32は両面テープ33で上面2aと固定される。
【0018】
絶縁カバー32は各種樹脂材料で構成できるが、モールディング樹脂4の成型時に変形しない程度の強度を持つことが望ましく、材料としてガラス繊維で補強したエポキシ樹脂、フェノール樹脂等の硬質プラスチックが挙げられる。あるいは無機材料や、表面を絶縁材で被覆した金属板を絶縁カバー32として用いることも可能である。
リード板34、311、312は、通電性及び溶接特性に優れる金属材料(ここではNiPメッキされた金属材料)で構成される。リード板34の下に接続されるリード板36は、クラッド材で構成される。なお、いずれのリード板もこれ以外の公知材料で構成することが可能である。
【0019】
コネクター35は、パック電池1の出力を給電対象である所定の電子機器に給電するために設けられるものであって、L字型断面形状を持つ長尺状の絶縁部材(樹脂成型部材)を本体とし、これに3つの開口部354a〜354cが形成されている。その各々の開口部354a〜354cの内部には、上記各リード板と同様の金属製材料からなる出力端子355a〜355cのいずれかが配設される。
【0020】
出力端子355a〜355cの各々は、図5(b)の保護回路基板3の構成図に示すように、コンタクト部として、互いに対向する一対の突起部(出力端子355aにおける3550a、3551等)を持つように形成される。パック電池1により外部機器に給電する際には、外部機器側の端子が当該一対の突起部の間に挿入される。一対の突起部は、その間隙が狭まる方向に弾性付勢されているので、当該一対の突起部が外部機器側の端子を挟み込むように付勢された状態で、通電がなされる。
【0021】
パック電池1では、上記構成を持つ保護回路基板3が素電池2に対して電気的に接続された状態(図2)を保ちつつ、保護回路基板3と素電池2並びにモールディング樹脂4に相当する空間を備える金型内に設置して、保護回路基板3と素電池2の各々の一部領域(ここでは互いの近接領域)を覆うように、低温成型(低温溶融;ホットメルト;低温成形)樹脂材料を注入、インサートして固化させることにより、図3のようにモールディング樹脂4が形成される。モールディング樹脂4では、その上面にコネクター35が外部に露出されており、その横に水没判定ラベル7が貼着されている。なお、モールディング樹脂4は素電池2の全体を覆うように形成することも可能である。この場合はパック電池1の強度の向上が期待できるが、パック電池全体のサイズや重量がその分増す点に留意する。
【0022】
ホットメルトモールディング樹脂材料としては、低温・低圧で所望の形状に成型できるものが理想である。具体的には、溶融粘度が低く、軟化温度が比較的低いポリアミド樹脂が挙げられる。ポリアミド樹脂は固化に要する時間が短く、金型からの脱型も容易であるなど製造工程上の利点も有し、かつ、保護回路基板3に与える熱影響も小さいので、良好な電池性能を得る上でも好適である。ポリアミド樹脂を使用する際は、さらにエポキシ樹脂を添加することができる。そのほかの好適な熱可塑性樹脂としてはポリウレタン樹脂も挙げられる。なお、耐熱性の素子を用いる等、モールディング樹脂の軟化温度を比較的高くできる場合には、ポリエチレン、アクリル、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂を使用することも可能である。この場合は樹脂材料が比較的安価ですみ、製造コストの低減が期待できる。
【0023】
なお、図1では固化後のモールディング樹脂4の形状を示しているが、実際には素電池2とこれに接続された保護回路基板3に対して流動性の低温樹脂材料を流し込み、固化して形成されるので、他の構成要素と分離することはできない。
また、モールディング樹脂4が流し込まれる保護回路基板3の表面や素電池2の表面には、モールディング樹脂4の食いつきを改善するためのプライマー層をあらかじめ設けてもよい。プライマー層は公知材料が適用でき、例えばエポキシ樹脂系、変性エポキシ樹脂系、フェノール樹脂系、変性フェノール樹脂系、ポリビニルブチラール系、ポリビニルホルマール系等の各種プライマー材料が例示できる。プライマー層を利用する際には出力端子等に付着して接続不良を生じさせないように注意する。
【0024】
モールディング樹脂4が配設されたパック電池1では、その外面を覆うように所定のラベル6が配設される。なおラベル6の代わりに熱収縮シート材料を用いることもできる。
次に示す図4は、コネクター35の詳細な構成を示す図である。なお、当図ではコネクター35の樹脂成型部材の構成を説明するため、出力端子355a〜355cを省略してある。
【0025】
コネクター35は図4(g)の斜視図に示すように、帯状の主面部350及び下面部351が互いの表面を直交するように形成された長尺状としての外観形状を有する。一方、コネクター35を側面から見ると、略L字型断面形状を有する(図4(e)、(f)。)コネクター35の内面側には図4(e)のように、逆y方向に頂部を有する隔壁353A〜353Cが形成され、さらに下面部350の裏には図4(d)、(g)のように平坦な接着面部356が配設される。この隔壁353A〜353Cの頂部と接着面部356は、後に保護回路基板3において接着剤glにより基板本体30の表面と接着され、コネクター35の実装に供されるようになっている(図5(d)、(f))。
【0026】
コネクター35のサイズ例は、長手方向(主面部350のx方向長さ)19mm×幅方向(主面部350のz方向長さ)4mm×高さ方向(下面部351のz方向長さ)3mmとすることができる。
なお、接着剤glは未硬化状態では液状のシール剤であり、毛細管現象でコネクター35と基板本体30の表面との間である程度拡散できる流動性を有し、且つ、これら両者を確実に接着できる特性を有するものである。たとえばシリコン樹脂やウレタン樹脂等を用いた材料が好適である。接着剤glは未硬化状態で塗布された後に硬化される。なお、この接着剤glをコネクター35の周囲に配設することで、接着剤配設後に低温成型(低温溶融;ホットメルト;低温成形)樹脂材料を注入・インサートする際において、当該樹脂材料がコネクター35の内部に浸入するのを防止できる。
【0027】
主面部350は図4(a)、(b)に示すように、3つの開口部354a〜354cが所定間隔で並設される。そして、各々の内部における底面部352a〜352cに、適度な可撓性を有する金属材料からなる出力端子355a〜355c(不図示)が間隔をおいて配設される(図4(c)、図5(b))。この出力端子355a〜355cの配設領域は、基板本体30との対向面を見下ろす場合、コネクター35の内部において矩形状(ここでは帯状)の配設領域を占めている。ここで、出力端子355a〜355cは隔壁353A〜353Cに囲繞された内側に内包されるように配置される(図4(c))。隔壁353A〜353Cは、その頂部を見下ろした場合(図4(c))において、対向する2辺(353B、353C)と当該2辺を繋ぐ1辺(353A)の3辺からなるコの字型をなしている。そして、前記出力端子355a〜355cの配設領域をその外側領域から隔てるように形成される。
【0028】
このように、前記帯状の配設領域を取り囲む外周には、その3辺(前記帯の幅方向(逆z方向)に沿った1対の辺と、残るx方向に沿った1辺)でこれを囲繞し、且つ、各々の開口部354a〜354cの周縁を区画するように前述した隔壁353A〜353Cが配設されることによって、隣接する出力端子355a〜355cの短絡防止と位置決めが図られている(図4(c)、(g))。
【0029】
なお、前記3辺の隔壁のうち、対向する2辺をなす隔壁353B、353Cは、当該2辺を繋ぐ1辺の隔壁353Aよりも肉厚に形成されている(例えば隔壁353Aを0.2mm厚、隔壁353B、353Cを0.4mm厚とすることができる)。357と358は、それぞれ隣接する出力端子355a〜355cを区画する区画壁である。
ここで本発明の特徴として、コネクター35では隔壁353A〜353Cのうち、肉厚の隔壁353B、353Cの頂部に凹状断面形状を持つ流し込み溝353a、353bが形成されている。これによりコネクター35を接着剤glを用いて基板本体30に配設する際に、過剰な接着剤glが流し込み溝353a、353bで液溜めされ、コネクター35の内部に接着剤glが浸入しにくい構造が実現されている。流し込み溝353a、353bのサイズ例は、長手方向(z方向長さ)2mm×幅方向(x方向長さ)0.1mm×深さ(y方向長さ)0.1mmである。
【0030】
以下、この構造によって得られる効果を具体的に説明する。図5は、コネクター35が実装された保護回路基板3の様子を示す構成図である。図5(a)、(b)はそれぞれ保護回路基板3の側面図、上面図である。図5(c)は、図5(b)中のB−B線に沿った断面図である。図5(d)は、図5(c)中のC部分の拡大図である。
コネクター35を基板本体30に実装する工程では、まず、コネクター35を隔壁353A〜353Cの頂部が基板本体30の表面に対向するように配置する。この状態で、外部から隔壁353A〜353Cの周囲に沿って接着剤glを塗布する。また、接着面部356の表面と基板本体30との間にも接着剤glを塗布し、両者を固定する(図5(a)、(d)、(e))。このとき、コネクター35が使用時に脱落しないように、しっかりと基板本体30側に固定する必要があるので、コネクター35と基板本体30の境界付近(隔壁353A〜353Cの周囲と接着面部356)にも接着剤glを配設する(図5(c)、(d)、(e))。
【0031】
このとき、コネクター35と保護回路基板3との間にはわずかな隙間ができるので、接着剤glが比較的多いと図7(b)のように過剰な接着剤が前記間隙を伝ってコネクター内部に入り込み、出力端子に付着して通電性を低下させる原因となりうる。
また、金属材料からなる出力端子355a〜355cは適度な可撓性を有しており、図5(b)に示す3550a、3551a等の一対の突出部の間隙に外部機器側の端子が挿入された際には、前記間隙が拡大する方向に前記一対の突出部が撓み、当該一対の突出部が外部機器側の端子を挟み込む方向に付勢されることで良好な電気接続がなされる。しかし、図7(b)のように接着剤が出力端子355a〜355cに付着してこれを固着させると、このような突出部の動作ができなくなり、外部機器側の端子と接触不良を生じる恐れもある。
【0032】
また、コネクター35の開口部354a〜354cの内部はパック電池1の外部より視認できるため、この内部に不要な接着剤が存在すると、パック電池1の外観品質を低下させる問題もある。
そこで本発明では、各出力端子355a〜355cの配設位置を区画する隔壁353A〜353Cのうち、前記帯状配設領域の短手方向に沿った隔壁353B,353Cの頂部に微細な流し込み溝353a、353bを形成することによって、過剰な接着剤が入り込んだ際にこれを毛細管現象により流し込み溝353a、353b中に誘導して内部に液溜めし、隔壁353A〜353Cよりコネクター35の内側に接着剤glが侵入して上記各不具合が発生するのを防止している。
【0033】
このようにパック電池1では、隔壁353A〜353Cの頂部に流し込み溝353a、353bを形成することで上記各効果が発揮され、非常に有用性が高く、優れた実現性も有するものである。
なお、隔壁353A〜353Cと基板本体30の表面との間隙はできるだけ小さくすることが望ましい。本発明においては流し込み溝353a、353bを設けることで、上記のように過剰な接着剤glがコネクター35内部へ浸入するのを効果的に防止できるが、前記間隙を小さく抑えることによって、接着剤glの浸入を一層効果的に防止することが可能である。
【0034】
<実施の形態2>
本発明の実施の形態2について、実施の形態1との差異を中心に説明する。なお、コネクター37を除くパック電池全体の構成は実施の形態1と同様である。
コネクターの流し込み溝の形状は、実施の形態1の流し込み溝353a、353bの形状に限定されない。図6は実施の形態2のコネクター37の構成を示す図である。図6(a)は斜視図、図6(b)は正面図、図6(c)は裏面図、図6(e)は側面図をそれぞれ示す。図6(d)は、図6(b)におけるD−D線に沿った断面図(隔壁373Cの長手方向に沿った断面図)である。なお図6では図4と同様に、構造の説明上、出力端子を省略している。
【0035】
コネクター37は、主面部370および下面部371の各主面が直交するように配されたL字型断面形状を有する。そして、3つの開口部374a〜374cが、これらを見下ろしたときに全体として帯状の配設領域をなすように所定間隔で並設され(図6(c))、各々の開口部の内部に不図示の出力端子が配設される。
ここで、コネクター37では35と同様に、各開口部の外周を3方から囲繞するように、隔壁373A〜373Cが形成されているが、流し込み溝375はこれらの隔壁373A〜373Cの頂部の全長にわたり形成された特徴を有する。
【0036】
このような流し込み溝375を持つコネクター37によっても、コネクター35と同様の効果が奏される。すなわちコネクター37を基板本体30に対して接着剤glで実装する際において、過剰に塗布された接着剤glがコネクター37とこれに対向する基板本体30の表面との間隙に入り込んだ場合には、毛細管現象により接着剤glが流し込み溝375内に液溜めされ、それ以上コネクター37の内部に接着剤glが侵入するのが防止される。その結果、出力端子に接着剤glが付着して通電不良を発生する問題が回避され、良好な電池性能を発揮できるほか、外部から接着剤を見えなくすることで優れた外観性能を得ることもできる。
【0037】
特にコネクター37では、流し込み溝375の内容積が比較的大きいので、コネクター35に比べてより大量の接着剤glを液溜めできる。したがって、過剰な接着剤glが出力端子側に流れ込む問題を一層効果的に防止することができるようになっている。
<その他の事項>
実施の形態1、2では、コネクターの開口部を3つ並設する構成を示したが、本発明はこれに限定されず、コネクターにこれ以外の個数の開口部を設けてもよい。
【0038】
また、隔壁の頂部に流し込み溝を形成する場合は、隔壁の厚み方向に沿って複数条の溝を形成することも可能である。このように幾条もの流し込み溝を重ねて形成することで、接着剤glの不要なコネクター内への侵入を効果的に防止できる。なお、複数条の流し込み溝を形成する場合には、隔壁の厚みを比較的厚く形成して、流し込み溝を配設する頂部のスペースを確保すべき点に留意する。
【0039】
また、実施の形態1では、隔壁頂部に2本の流し込み溝353a、353bを設ける構成を示したが、これ以外にも、破線状に複数の流し込み溝を隔壁頂部の全体にわたって形成することもできる。また、流し込み溝は上から見下ろした場合に線状のものに限定されず、例えば円形または多角形の凹みとして設けることも可能である。いずれの形状の流し込み溝も、コネクターの製造工程で用いる樹脂成型の金型において、隔壁頂部に対応する金型部分に所定の微細な凸部を形成することで得られる。
【0040】
本発明のパック電池は、リチウムイオン二次電池に限定するものではなく、その他、公知の二次電池(たとえばニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池等)にも適用することができる。パック電池に用いる素電池は複数個であってもよい。
なお、本実施の形態のパック電池は、携帯電話やデジタルカメラのような小型の電子機器への適用に限らず、パワーアシスト自転車や電動工具等、比較的大きな機器に適用しても構わない。これに伴い、パック電池のサイズも小型に限らず、大型に設計しても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明のパック電池は、例えばパック電池はノートブック型パーソナルコンピュータや携帯電話、PDA、その他各種デジタルハブの主電源またはバックアップ電源として広く用いることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】実施の形態1におけるパック電池の構成を示す展開図である。
【図2】実施の形態1におけるパック電池の樹脂成型前の構成を示す図である。
【図3】実施の形態1におけるパック電池の樹脂成型後の構成を示す図である。
【図4】コネクターの構成を示す図である。
【図5】保護回路基板に実装されたコネクターの様子を示す図である。
【図6】実施の形態2におけるパック電池のコネクターの構成を示す図である。
【図7】従来のパック電池の外観図とコネクターの部分拡大図である。
【符号の説明】
【0043】
gl 接着剤(シール剤)
1 パック電池
2 素電池
3 保護回路基板
4 ホットメルトモールディング樹脂
5 ボトムカバー
6 ラベル
30 基板本体
35、37 コネクター
350、370 主面部
351、371 下面部
352、372 底面部
353A〜353C、373A〜373C 隔壁
353a、353b、375 流し込み溝
354a〜354c、374a〜374c 開口部
355a〜355c 出力端子
356、376 接着面部
357、358 区画壁
3550a、3551a 突出部(コンタクト部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁部材に出力端子が配設されてなるコネクターが、前記絶縁部材の周囲に配されたシール剤により基板に固着され、前記基板が前記出力端子および素電池の電極と電気的に接続された状態で、少なくとも前記基板を覆うようにモールディング樹脂が被覆されてなるパック電池であって、
前記絶縁部材における前記基板との対向面には、前記出力端子の配設領域とその外側領域とを隔てる隔壁が形成され、
前記基板と対向する隔壁の頂部には、前記基板と前記隔壁の間を通って浸入した前記シール剤を液溜めするための溝が形成されている
ことを特徴とするパック電池。
【請求項2】
前記絶縁部材には前記出力端子が複数個、間隔をおいて配設され、
前記隔壁は、全ての出力端子の配設領域を囲むように形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載のパック電池。
【請求項3】
前記隔壁は、その頂部を見下ろした状態において、対向する2辺と当該2辺を繋ぐ1辺の3辺からなるコの字型をしている
ことを特徴とする請求項1または2に記載のパック電池。
【請求項4】
前記3辺のうち、前記対向する2辺の隔壁部分は、前記2辺を繋ぐ1辺の隔壁部分よりも肉厚に形成され、
前記溝は、前記対向する2辺の隔壁部分に形成されている
ことを特徴とする請求項3に記載のパック電池。
【請求項5】
前記溝は、前記隔壁の頂部の全長にわたり形成されている
ことを特徴とする請求項3に記載のパック電池。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−153213(P2010−153213A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−330220(P2008−330220)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】