説明

パック電池

【課題】外装ケースと蓋体とを確実に超音波溶着することにより、良好な電池性能を発揮することの可能なパック電池を提供する。
【解決手段】保護回路基板3の側部と対向する蓋体5の内部主面50の領域において、ストライプ状に複数の基板固定リブ51(51a〜51h)を形成する。パック電池1の内部において、当該形成した基板固定リブ51(51a〜51h)の頂部と保護回路基板3の側部とが互いに近接、または当接するように設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外装ケースと蓋体の間に素電池を内部封止してなるパック電池に関し、特に、外装ケースと蓋体を超音波で良好に溶着するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、繰り返し充電して使用が可能な二次電池をパッケージングしてなるパック電池が広く普及している。パック電池はノートブック型パーソナルコンピュータや携帯電話、PDA、その他各種電子機器の主電源またはバックアップ電源等として広く用いられている。
従来の代表的なパック電池は、薄型で角型のリチウム二次電池を素電池とし、素電池に保護回路基板を電気的に接続し、これを合成樹脂からなる外装体(外装ケース及び蓋体)の内部に収納したのち、外装体を内部封止した構成を持つ。
【0003】
外装体を内部封止する方法は、一例として電池内部に配向される蓋体の内部主面の周囲に溶着リブを立設し、外装ケースの底面周囲に、頂部に溝(溶着溝)を持つ側壁を配設する。そして、外装ケースに素電池と保護回路基板とを収納した状態で、前記溶着リブが前記溶着溝に挿入されるように蓋体を外装ケースに被せる。そして蓋体の外部主面に超音波ホーンを押し当て、溶着リブを溶着溝に超音波溶着させる。
【0004】
ここで図4(b)は、従来のパック電池1xの保護回路基板3周辺の断面図を示す。当図では、素電池2及び保護回路基板3を外装ケース4に収納し、蓋体5xの周囲に形成した溶着リブ53bx、53dxを外装ケース4の溶着溝43に挿入して、蓋体5xの外部主面50xの主に溶着リブ53bx、53dx等の上に超音波ホーンを押し当てて超音波溶着する様子を示している。
【0005】
次に図8は、従来の外装ケース4の端子窓41a、41bと、溶着リブ53axとの配置関係、及び形状を示す部分拡大図である。当図に示すように、外装ケース4には、保護回路基板3上に設けられた出力端子等を外部に露出するための開口部(端子窓41a、41b等)が間隔をおいて設けられている。溶着リブは、基本的には蓋体の周囲を帯状に囲繞するように設けられるが、図8の図示の如く、端子窓41a、41bの周辺では当該端子窓41a、41bに近接する溶着リブ領域A1、A2が切り欠かれることにより、短冊状リブ530exが形成されている。これは、仮に、超音波溶着時に端子窓41a、41b上に溶着リブがあると、端子窓41a、41b上の溶着リブには超音波が伝達しにくい等の理由により、上からの超音波ホーンを押し当てられたとき、溶接リブを介して、端子窓41a、41bが変形することがあるので、これを防止するために、上記切り欠きを設けたものである。また、これは、超音波溶着時に端子窓41a、41b周辺で溶着リブが溶融し、比較的多くの溶融材料が発生して端子窓41a、41b周辺に負荷が及び、端子窓が変形・閉塞するおそれがあるので、これを避けるべく工夫されたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−313317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のパック電池の製造工程では、外装体の外装ケースと蓋体とを超音波溶着する際に問題が存在する。
外装ケースに蓋体を超音波溶着する際、溶着が十分に行えない問題がある。保護回路基板は、その側部の一部を外装ケースと蓋体の各々の内部主面に一定のクリアランスをおいて対向するように近接配置されるが、製造誤差(公差)等の理由で寸法精度にばらつきが生じ、前記側部が蓋体の内部主面に接触(接地)することがある。この状態で蓋体に超音波を与えると、保護回路基板が蓋体の正常な沈み込み(蓋体の溶着リブが外装ケースの溶着溝に正しく挿入されること)が妨げられるとともに、超音波振動のエネルギーが保護回路基板に吸収・拡散され、溶着リブに超音波振動のエネルギーが適切に伝達されず、溶着リブと溶着溝を正しく溶着することができない。また、強い振動が保護回路基板に加わることで、基板に実装された素子が破壊されるおそれもある。
【0008】
このように現在のパック電池では、外装ケースと蓋体からなる外装体を超音波溶着により内部封止する際において、いまだ解決すべき課題が存在する。
本発明は以上の課題に鑑みてなされたものであって、外装ケースと蓋体とを確実に超音波溶着することにより、良好な電池性能を発揮することの可能なパック電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は、素電池と、当該素電池に電気的に接続された基板が外装ケースに収納され、外装ケースに蓋体が超音波溶着されて内部封止されたパック電池であって、該パック電池内部において、前記基板は、その側部が前記外装ケースと蓋体の各々の内部主面に対向して配置され、前記蓋体の内部主面にはリブが突設されており、前記側部のうち蓋体と対向する部分が前記リブの頂部と当接または近接している構成とした。
【0010】
ここで、前記基板は矩形状主面を有し、当該主面の一対の辺に対応する前記側部が、前記外装ケースと前記蓋体の各々の内部主面に対向して配する構成とすることもできる。
また、前記リブの長手方向は、前記基板の長手方向と直交する構成とすることもできる。
また前記蓋体には、前記内部主面の周縁を囲繞するように溶着リブが立設されており、前記外装ケースには、底面の周縁を囲繞するように側壁が立設されてなるとともに、前記側壁の頂部に溝が形成されており、前記蓋体の溶着リブが前記外装ケースの側壁の溝に挿入され、前記溶着リブが前記溝と超音波溶着されている構成とすることもできる。
【発明の効果】
【0011】
以上の構成を有する本発明のパック電池では、電池内部に配向された蓋体の内部主面にリブ(基板固定リブ)が突設され、当該リブの頂部に保護回路基板等の基板の側部が当接または近接するように配設される。このため、製造誤差(公差)等の寸法ばらつきによって当該基板の側部が蓋体と接触する場合があっても、基板の側部は蓋体の前記リブの頂部で接触するので、少なくとも蓋体の内部主面に直接密着して接触(接地)することがない。従って、蓋体を外装ケースと超音波溶着する際に、超音波振動のエネルギーが基板側に広く拡散・吸収されるのが抑制され、当該エネルギーが蓋体と外装ケースの接合部(蓋体の溶着リブと外装ケースの側壁上の溶着溝周辺)に集中する。これにより、良好な超音波溶着を実施できる。また、これによって基板側に超音波振動の影響が強く及ぶことがないので、基板に実装された各種素子が超音波振動で損傷するのを抑制する効果も奏される。
【0012】
また、このような本発明の構成は蓋体の内部主面に所定形状のリブ(基板固定リブ)を形成することで実現できるため、比較的低コストで実現できるメリットも有する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施の形態におけるパック電池の構成を示す外観図と展開図である。
【図2】実施の形態におけるパック電池の組図である。
【図3】蓋体の内部主面の構成を示す正面図である。
【図4】外装ケースと蓋体の超音波溶着時の様子を示す電池断面図である。
【図5】外装ケースと蓋体の超音波溶着時の様子を示す電池断面図である。
【図6】外装ケースと蓋体の構成を示す電池側面図である。
【図7】外装ケースと蓋体の構成を示す部分拡大図である。
【図8】外装ケースと蓋体の従来構成を示す部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の実施の形態を説明するが、当然ながら本発明はこれらの形式に限定されるものでなく、本発明の技術的範囲を逸脱しない範囲で適宜変更して実施することができる。
<実施の形態>
図1(a)は、本発明の実施の形態におけるパック電池1の構成を示す外観図である。図1(b)はパック電池1の展開図である。図2は、パック電池1の組図である。
【0015】
パック電池1はいわゆる薄型直方体状の角型パック電池であり、その構成は、大別すると図1及び図2に示すように、素電池2、保護回路基板3、外装ケース4、蓋体5等で構成されている。パック電池1のサイズ例としては、縦(Y方向長さ)40.35mm×横(X方向長さ)35.4mm×厚み(Z方向長さ)5.9mmとすることができる。
素電池2には薄型の各種二次電池が使用でき、ここでは高エネルギー密度・容量及び出力に優れる角型リチウム二次電池を利用している。素電池2は、正極板と負極板をセパレータを介して積層してなる所定の電極体が、所定の電解液とともに角型のアルミニウム又はアルミニウム合金からなる有底外装缶2bの内部に収納され、当該有底外装缶2bの開口部に封口板2aが嵌合されてレーザー溶接で内部封止されてなる。外装缶2bの側面は、滑らかな曲線状の表面をなすように加工されている。素電池2のサイズ例としては、縦(Y方向長さ)34.7mm×横(X方向長さ)33.7mm×厚み(Z方向長さ)5.25mmとすることができる。
【0016】
なお、素電池2のY方向底部(図1(a)の紙面奥側端部)には、落下などで素電池2に加わる衝撃を和らげるための樹脂製のボトムカバー(不図示)が配設されることがある。
素電池2の封口板2aには、図2に示すように、その中央および右寄りに正極端子21及び負極端子22がそれぞれ配設され、左寄りに安全弁23が配設されている。正極端子21にはPTC31のリード板311がスポット溶接により接続される。封口板2aには電解液注入穴を塞ぐ封止栓22を備え、封口板2aの一端側上に、クラッド板36を介して、ニッケル材等のリード板34が順次接続される。
【0017】
安全弁23は素電池2が異常内圧を発生した際の安全機構であって、比較的厚みの薄い金属板で構成され、一定以上の圧力を受けると破れて電池内部のガスを外部に放出する仕組みになっている。
保護回路基板3は、コンポジット材料からなる短冊状の基板本体30に各種電気素子が実装されて構成される。基板本体30の主面形状及びサイズは素電池2の封口板2aとほぼ同様である。図2では、基板本体30に実装されるリード板34、36、PTC31を示す。基板本体30の表側主面(矩形状主面)には、パック電池1の出力を給電対象の電子機器に給電するとともに、外部より充電するための外部端子部33a、33b、33cが配設される。また、電池の検査時に使用する信号端子部35a、35bも併せて配設されている。基板本体30の裏側主面にはPTC31、リード板34、36等が配設される。
【0018】
PTC31は、パック電池1の充放電時において、万一、素電池2が過度に温度上昇した際に通電を遮断する安全機構として設けられ、ここではリード板311にPTC素子312を接続して構成されている。素電池2に保護回路基板3を取り付ける際には、リード板311が素電池2の封口板2a側と接触して短絡を起こさないように、封口板2aとの間に一定のスペースを介して板状の絶縁カバー32を配設し、この上にPTC31が載置されるようにする(図2参照)。パック電池1の内部において、保護回路基板3はその長手方向(X方向)に沿った一対の側部が外装ケース4と蓋体5の各々の内部主面(底面40と内部主面50)に近接して対向配置される。
【0019】
リード板34、311は、通電性及び溶接特性に優れる金属材料(ここではニッケル)で構成される。リード板34の下に接続されるリード板36は、クラッド材で構成される。なお、いずれのリード板34、36もこれ以外の公知の導電性材料で構成することが可能である。
外装ケース4は、絶縁性、機械的強度及び耐熱性に優れるエンジニアリングプラスチック材料(PCまたはABS等)で構成され、図1(b)および図2に示すように、矩形状の底面40の4辺の周囲に側壁44a〜44dが立設されてなる。このうち、底面40の一辺に配設された側壁44aの側面には、保護回路基板3の所定端子(33a〜33c、35a、35b)を外部露出させるための複数の端子窓(外部端子用の矩形状の端子窓41a〜41c、信号端子用の円形の端子窓42a、42bが間隔をおいて形成されている。このうち端子窓42a、42bには、検査後にラベル6が貼着される。蓋体5と対向する側壁44a〜44dの頂部には、図1(b)及び図2に示すように、蓋体5の溶着リブ53a〜53dを受け入れるための一条の溝(溶着溝43)が、当該溶着リブ53a〜53dの長手方向(X方向またはY方向)に沿って形成されている。
【0020】
蓋体5は、外装ケース4と同様の樹脂材料で構成されており、内部主面50の周縁の4辺を囲繞するように、溶着リブ53a〜53dが立設されている。内部主面50の形状・サイズは前記底面40とほぼ同様に設定されている。
次に示す図3は、蓋体5の内部主面50の構成を示す正面図である。当該内部主面50において、保護回路基板3の配設位置周辺の領域(図3では左側領域)には、複数の帯状リブ(基板固定リブ51a〜51h)がY方向を長手としてX方向にストライプ状に並設されている。いずれの基板固定リブ51a〜51hもZ方向高さが同じであり、各頂部を保護回路基板3側(図3では紙面手前側)に突出させている。基板固定リブ51a〜51hの長手方向(Y方向)は、保護回路基板3の長手方向(X方向)と直交するように配設される。ここで、保護回路基板3の側部と前記各頂部とは、通常は近接位置(数十分の一ミリ程度)で離間するように所定のクリアランスが設けられている。しかし、製造誤差(公差)等の寸法ばらつきが生じた場合には、蓋体5は基板固定リブ51a〜51hの各頂部において、保護回路基板3の側部と当接する。パック電池1では、保護回路基板3と基盤固定リブ51a〜51hの各頂部との多少の接触は許容される。なお、これらの基板固定リブ51a〜51hに直交するように配されているリブ(基板案内リブ52)は、保護回路基板3をその裏側主面から保持するために設けられたものである。
【0021】
続いて、図6(a)は、溶着リブ53aと側壁44aの構成を示す、パック電池1の組立時(蓋体5を外装ケース4にかぶせる直前の時)の側面図である。図6(b)は従来の溶着リブ53ax(複数の短冊状リブ530ax〜530gxが間隔をおいて配設されてなる)と側壁44axの構成、及び配置関係を示す、パック電池1xの組立時の側面図である。
【0022】
図6(a)に示すように、側壁44aには、矩形状の外部端子用端子窓41a〜41cが、各々の一辺が外装ケース4の底面40の平面に平行な方向(側壁44a上の溶着溝43の長手方向と平行な方向)と一致するように、所定間隔をおいて配設されている。また、信号端子用端子窓42a、42bは、ここでは丸い端子窓として所定間隔をおいて配設されている。ここで、パック電池1では溶着リブ53aのうち、少なくとも各端子窓41a〜41c、42a、42bの各中央部(X方向に沿った各中央部)に近接する部分を切り欠くとともに、切り欠き領域に臨んで残留するリブ部分が、Y方向から見た形状として、外装ケース4側から蓋体5の内部主面50側に向かって裾広がりになるように形成されている。図6(a)の例では、この形状の一例として台形リブ530a〜530g(外装ケース4の底面40側が上底、蓋体5の内部主面50側が下底であって、蓋体5の内部主面50側に向かってX方向両端部が裾広がりに傾斜している形状)が形成されている。これにより溶着リブ53aは、複数の台形リブ530a〜530hがX方向に所定間隔をおいて配設されてなる。
【0023】
次に、各々の台形リブ530a〜530hと外装ケース4との配置関係を説明する。ここでは説明上、図7を用いて台形リブ530eと端子窓41a、41bとの配置関係を述べるが、全ての台形リブ530a〜530gと外装ケース4の端子窓41a〜41c、42a、42bとの配置関係は同様である。
台形リブ530aの上底に相当する頂部5303eは、隣接する矩形状の端子窓41a、41bに中心を合わせて配置される。そして、頂部5303eの両端に位置する傾斜端部5301e、5302eは、それぞれ端子窓41a、41bのX方向に沿った中央部に向かって、当該台形リブ530aのZ方向高さを漸減させながら近接するように形成されている(図7の点線矢印に挟まれた範囲)。
【0024】
一方、台形リブ530a〜530cは、丸い端子窓42a、42bのX方向に沿った中央部に向かって、台形リブ530eと同様に各々の傾斜端部が近接するように配されている。
(基板固定リブの効果について)
本実施の形態のパック電池1では、蓋体5の内部主面50に基板固定リブ51a〜51hを設けたことにより、製造時において蓋体5の溶着リブ53が外装ケース4の溶着溝43と良好に超音波溶着され、確実に内部封止が図られるようになっている。図4(a)は、この効果を説明するためのパック電池1の断面図(図1のA−A線断面矢視図)である。また図5(a)、(b)は、それぞれパック電池1のYZ断面図とZ部分の拡大図を示す。
【0025】
パック電池1の製造時では、外装ケース4の底面40の周囲に形成された側壁44a〜44dの溶着溝43に蓋体5の溶着リブ53a〜53dを挿入するとともに、蓋体5の外部主面側(外周)に超音波ホーンを押し当て、超音波を与える(図4(a)、図5(a)参照)。このとき、保護回路基板3が蓋体5と接触する場合には、保護回路基板3はその側部が蓋体5の基板固定リブ51a〜51hで当接し(図4(a)、図5(b)参照)、図4(b)に示す従来のように保護回路基板3の側部が蓋体5の内部主面50に直接接しない。したがって、蓋体5の正常な沈み込み(溶着リブ53a〜53dが溶着溝43に正しく挿入されること)が妨げられるのを防止できる(図4(a))。
【0026】
これにより、超音波ホーンの出力(超音波振動)は保護回路基板3側に吸収・拡散されにくいため、その分、超音波ホーンの出力(超音波振動)は効率よく溶着溝43及び溶着リブ53a〜53d周辺に集中する。この結果、溶着リブ53a〜53dは、いずれも良好に安定して溶着溝43側と超音波溶着されることとなる。
また、保護回路基板3側に超音波振動が強く及ぶのが防止できるので、基板3上に実装された各種素子の破壊を防止することもできる。
【0027】
このような本発明の効果は、蓋体5の内部主面50に基板固定リブ51a〜51hを配設し、基板固定リブ51a〜51hと保護回路基板3の側部とを近接または当接させることで、蓋体5と保護回路基板3との接触面積を従来に比べて飛躍的に低減させた結果として得られる。したがって、外装ケース4や蓋体5と保護回路基板3のクリアランスが多少の寸法ばらつきを生じても、少なくとも保護回路基板3の側部が蓋体5の内部主面50と密に接触しないため、安定した超音波溶着を実施することができる。
(溶着リブの効果について)
パック電池1では、外装ケース4の各々の端子窓41a〜41c、42a、42bに近接する溶着リブ53aの領域を切り欠くとともに、X方向に沿った各端子窓41a〜41c、42a、42bの中心に向かって、溶着リブ53aで残留している部分(台形リブ530a〜530h)の各両端部のZ方向高さを漸減させるとともに、従来の短冊状リブ530ax〜530gxに比べてX方向長さを延長し、各端子窓41a〜41c、42a、42bに近い位置に適度に台形リブ530a〜530hが存在するように調整している。この工夫により、蓋体4と外装ケース5とを超音波溶着する際には、従来に比べて各端子窓41a〜41c、42a、42bにより近い領域(図7の例では、端子窓41a、41bの丸みを帯びたX方向両端部より内側)まで超音波溶着を行えるとともに、過度の溶融材料が溶着溝43へ流れ込むのを防止することで、端子窓41a〜41c、42a、42bの周囲の変形を抑制できるようになっている。
【0028】
すなわち従来のパック電池1xでは、外装ケース周辺の部分拡大図(図8)に示すように、溶着リブ53axが複数の短冊状リブ530ax〜gxを形成するように切り欠かれ、その各両端部(図8ではリブ頂部5303exを挟む矩形端部5301ex、5302ex)が端子窓41a、41bに近接する。この矩形端部5301ex、5302exは超音波溶着時に比較的多い溶融材料を生じ、端子窓41a〜41c、42a、42bに近接する溶着溝43に流れ込んで端子窓41a〜41c、42a、42bに負荷を与え、これを変形・閉塞させる場合がある。これを避けるには、溶着リブ53axを大きく切り欠かざるを得ない(図8の例では、溶着リブ領域A1、A2を切り欠き、短冊状リブ530exのX方向長さL1を、端子窓41a、41bの各R状角にわたる範囲内に留めている)。このため、短冊状リブ530ax〜530gxを用いた構成では、パック電池1の超音波溶着の強度が不足するおそれがある。
【0029】
これに対し本発明のパック電池1では、図7に示すように台形リブ530eを採用することで、X方向に沿った端子窓41a、41bの中心に向かって当該台形リブ530eの両端部5301e、5302eのZ方向高さを低くし、当該両端部5301e、5302e由来の溶融材料が少なくなるようにしている。これにより、比較的強度の弱い端子窓41a、41b周辺の溶着溝43に過度に溶融材料が流れ込むのが防止され、前記端子窓41a、41bの変形・閉塞が抑制される。
【0030】
また、図7に示す台形リブ530eの下底のX方向長さ(L2)は、図8に示す従来の短冊状リブ530exの同方向長さ(L1)よりも長く調整されている。このように台形リブ530eの長さを従来の短冊状リブ530exの長さより長くしても、傾斜端部5301e、5302eの採用によって、端子窓41a、41b周辺の溶着溝43に溶融材料が多く流れ込むのを防止できる。すなわち図7に示すように、台形リブ530eは端子窓41a、41bの間隙L0の領域では従来の短冊状リブ530exと同様の形状・体積を有しているが、台形リブ530eの傾斜端部5301e、5302eが蓋体5の内部主面50に向かって裾広がりになっているので、台形リブ530e由来の溶融材料が傾斜端部5301e、5302eを伝い、溶着溝43の底周辺に沿って流れることで端子窓41a、41bから離間するように案内される。従って、側壁53aでは台形リブ530e〜530gのX方向長さをある程度延長しても、多量の溶融材料による端子窓41a、41bの変形や閉塞を防いで良好に超音波溶着が行える。これにより、広い範囲にわたって超音波溶着を実施することができ、溶着強度を向上させてパック電池1の封止信頼性を高めることが可能となる。
【0031】
なお、溶着リブの溶着量を部分的に増やす技術としては、リブ先端に1または複数の突部を形成し、リブの体積を増やす技術が存在する(たとえば特開2005−317391号公報)。しかしながら本発明は、リブの両端部を裾広がりにすることで、超音波溶着時に発生する溶融材料が過度に端子窓に近接しないように調整するものであり、溶融材料の流路を制御して溶着範囲を拡大できる点において非常に有用な技術である。
【0032】
図7に示す蓋体5では、傾斜端部5301e、5302eを備える台形リブ530eを形成しているが、本発明はこのような傾斜端部5301e、5302eに限定するものではない。当該リブの頂部から蓋体5の主面50側に向かって、裾広がりになる形状であればよい。当該リブの両端部のその他の主面形状としては、放物線状またはステップ状に裾広がりとなる構成が挙げられる。
<その他の事項>
上記実施の形態では、外装ケースに端子窓を合計5個にわたり並設する構成を示したが、本発明はこれに限定されず、これ以外の個数の端子窓を設けてもよい。
【0033】
本発明のパック電池は、リチウムイオン二次電池に限定するものではなく、その他、公知の二次電池(たとえばニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池等)にも適用することができる。パック電池に用いる素電池は複数個であってもよい。
なお、本実施の形態のパック電池は、携帯電話やデジタルカメラのような小型の電子機器への適用に限らず、パワーアシスト自転車や電動工具等、比較的大きな機器に適用しても構わない。これに伴い、パック電池のサイズも小型に限らず、大型に設計しても構わない。
【0034】
また、本発明の基板固定リブは、蓋体だけでなく、外装ケースの底面にも設けることができる。この場合、保護回路基板の一対の辺(側部)は、いずれも基板固定リブの頂部と対向配置されるので、外装ケースおよび蓋体との接触面積が飛躍的に低減され、一層、超音波溶着による内部封止を良好に行うことができる。
また、上記実施の形態では、外装ケースの側壁の頂部に一条の溶着溝を配設したが、溶着溝はこれに限定せず、側壁の頂部に複数条に形成してもよいし、断続的に形成してもよい。さらに、端子窓が設けられた側壁44aと溶着リブ53a以外の領域では、側壁頂部に溶着リブを形成し、蓋体側に溶着溝を形成することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明のパック電池は、例えばパック電池はノートブック型パーソナルコンピュータや携帯電話、PDA、その他各種デジタルハブの主電源またはバックアップ電源として広く用いることが可能である。
【符号の説明】
【0036】
A1、A2 切り欠かれる溶着リブ領域
1 パック電池
2 素電池
3 保護回路基板
4 外装ケース
5 蓋体
6 ラベル
30 基板本体
33a、33b、33c 外部端子部
40 底面
41a、41b、41c 端子窓(外部端子用)
42a、42b 端子窓(信号端子用)
43 溶着溝
44a〜44d 側壁
50 内部主面
51a〜51g 基板固定リブ
52 基板案内リブ
53a〜53d 溶着リブ
530a〜530g 台形リブ
530ax〜530gx 短冊状リブ(従来)
5301e、5302e 傾斜端部
5301ex、5302ex 矩形端部(従来)
5303e、5303ex リブ頂部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
素電池と、当該素電池に電気的に接続された基板が外装ケースに収納され、外装ケースに蓋体が超音波溶着されて内部封止されたパック電池であって、
該パック電池内部において、前記基板は、その側部が前記外装ケースと蓋体の各々の内部主面に対向して配置され、
前記蓋体の内部主面にはリブが突設されており、
前記側部のうち蓋体と対向する部分が前記リブの頂部と当接または近接している
ことを特徴とするパック電池。
【請求項2】
前記基板は矩形状主面を有し、当該主面の一対の辺に対応する前記側部が、前記外装ケースと前記蓋体の各々の内部主面に対向して配されている
ことを特徴とする請求項1に記載のパック電池。
【請求項3】
前記リブの長手方向は、前記基板の長手方向と直交している
ことを特徴とする請求項1または2に記載のパック電池。
【請求項4】
前記蓋体には、前記内部主面の周縁を囲繞するように溶着リブが立設されており、
前記外装ケースには、底面の周縁を囲繞するように側壁が立設されてなるとともに、前記側壁の頂部に溝が形成されており、
前記蓋体の溶着リブが前記外装ケースの側壁の溝に挿入され、前記溶着リブが前記溝と超音波溶着されている
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のパック電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−262756(P2010−262756A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−110674(P2009−110674)
【出願日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】