説明

パッケージングカバーの製造方法

【課題】接着剤を用いることなくウエハと強固に接合するパッケージングカバーを容易に製造することができるパッケージングカバーの製造方法を提供する。
【解決手段】接合面でウエハに接合するパッケージングカバー10の製造方法であって、プレス加工装置12によりパッケージングカバー10の接合面に空隙部を形成する空隙部形成工程と、空隙部形成工程の終了後、空隙部が形成された接合面を大気圧又はその近傍の圧力下において大気圧プラズマ処理装置14のプラズマ処理により改質する表面改質工程と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエハに接合するパッケージングカバーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のウエハレベルパッケージング(ウエハレベルMEMSパッケージングともいう)は、例えば、図6に示すように、ウエハ接合工程S300と、薄板化工程S310と、貫通孔形成工程S320と、孔内絶縁層形成工程S330と、貫通電極・配線形成工程S340と、バンプ形成工程S350と、からなっている。
【0003】
図6及び図7に示すように、ウエハ接合工程S300では、接着樹脂をガラスで構成されたパッケージングカバー100の接合面に塗布し、パッケージングカバー100にキャビティ(空隙部)形状のパターニング102を行い、ウエハW(例えば、シリコンウエハ)と位置合せしながら、パッケージングカバー100をウエハWに加圧して接合する。このとき、接着樹脂の厚さ分がキャビティ空間の高さになる。なお、パッケージングカバー100にキャビティ(空隙)形状のパターニング102を行う方法として、パッケージングカバー100をガラスで構成し、これをエッチングすることにより実行している。
【0004】
薄板化工程S310では、貫通配線を形成するために、ウエハWの厚さを200μmまでに研削する。研削は、バックグラインド後に、CMP(Chemical Mechanical Polish)加工を行うことで完成する。
【0005】
貫通孔形成工程S320では、シリコンの深掘りエッチング装置にて貫通孔をウエハWのI/Oパッドに向けてウエハWの裏面から形成する。
【0006】
孔内絶縁層形成工程S330では、酸化膜層としてSiOを成膜し、貫通孔内及びウエハW全面に絶縁層を形成する。
【0007】
貫通電極・配線形成工程S340では、ウエハW全面にスパッタによりシード層を形成し、電解めっきにより貫通電極及びウエハW裏面側の配線(Cu)を一括形成する。
【0008】
バンプ形成工程S350では、感光性樹脂を用い、ウエハ裏面のオーバーコート層をパターン形成する。このとき、貫通電極の内部空間も感光性樹脂を充填する。そして、印刷法にて鉛フリーはんだを印刷し、次いでリフローすることでバンプを形成する。
【0009】
以上のような、各工程を経て、ウエハレベルパッケージングが行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−294571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、上記従来のウエハレベルパッケージングの方法では、パッケージングカバーとウエハとを強固に接合するために、接着剤を用いている。ところが、この接着剤に不純物が含まれると、電気的接続の障害などが発生し、ウエハの機能に悪影響を及ぼすことになる。
【0012】
また、パッケージングカバーに空隙部を形成するために、パッケージングカバーをガラスで構成し、これをエッチングしているが、パッケージングカバーをガラスで構成すると、破損し易くなり、また、エッチング処理が必要になるため、工程の手間とコストが増大する傾向にある。
【0013】
そこで、本発明は、接着剤を用いることなくウエハと強固に接合するパッケージングカバーを容易に製造することができるパッケージングカバーの製造方法を提供することを目的とする。
【0014】
また、本発明は、破損し難いパッケージングカバーを低コストで容易に製造することができるパッケージングカバーの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
請求項1に記載の発明は、接合面でウエハに接合するパッケージングカバーの製造方法であって、空隙部形成手段により前記パッケージングカバーの前記接合面に空隙部を形成する空隙部形成工程と、前記空隙部形成工程の終了後、前記空隙部が形成された前記接合面を大気圧又はその近傍の圧力下において表面改質手段のプラズマ処理により改質する表面改質工程と、を有することを特徴とする。
【0016】
請求項1に記載の発明によれば、空隙部形成工程において、空隙部形成手段によりパッケージングカバーの接合面に空隙部が形成される。空隙部形成工程の終了後、表面改質工程において、空隙部が形成されたパッケージングカバーの接合面が大気圧又はその近傍の圧力下において表面改質手段のプラズマ処理により改質される。これにより、接着剤を用いることなくウエハに対して強固に接合可能なパッケージングカバーを容易に製造することができる。
【0017】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のパッケージングカバーの製造方法において、前記パッケージングカバーは、駆動手段により所定方向に移動し、前記表面改質手段は、前記空隙部形成手段に対して前記パッケージングカバーの移動方向下流側に配置され、前記空隙部形成手段により前記接合面に前記空隙部を形成した後、前記パッケージングカバーを前記駆動手段によって所定方向に移動して、前記表面改質手段により前記パッケージングカバーの前記接合面を改質することを特徴とする。
【0018】
請求項2に記載の発明によれば、空隙部形成手段によりパッケージングカバーの接合面に空隙部が形成された後、パッケージングカバーが所定方向に移動されて、表面改質手段によるプラズマ処理でパッケージングカバーの接合面が改質される。このように、パッケージングカバーをライン上で所定方向に沿って移動させるだけで、パッケージングカバーに対する空隙部形成工程及び表面改質工程を、同一ライン上であたかも流れ作業のように実行することができる。この結果、接着剤を用いずウエハと強固に接合するパッケージングカバーを容易に製造することができる。
【0019】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のパッケージングカバーの製造方法において、前記表面改質手段は、前記接合面に対して加圧して前記接合面に前記空隙部を形成するプレス加工装置であり、前記空隙部形成工程で、前記プレス加工装置が前記接合面に対して加圧して前記接合面に前記空隙部を形成することを特徴とする。
【0020】
請求項3に記載の発明によれば、空隙部形成工程では、プレス加工装置がパッケージングカバーの接合面に対して加圧することにより、接合面に空隙部が形成される。これにより、パッケージングカバーをガラスで構成する必要がなく、また、空隙部を形成するためのエッチングが不要になる。このため、パッケージングカバーを破損にし難い物質で構成することができるとともに、空隙部形成工程を簡素化でき、低コストを実現することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、接着剤を用いることなくウエハと強固に接合することが可能なパッケージングカバーを容易に製造することができる。また、破損し難いパッケージングカバーを低コストで容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施形態に係るパッケージングカバーの製造方法を実現するシステムを示した説明図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るパッケージングカバーの製造方法の一工程である空隙部形成手段による空隙部形成工程を示した説明図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係るパッケージングカバーの製造方法の一工程である表面改質手段による表面改質工程を示した説明図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係るパッケージングカバーの製造方法の工程図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係るパッケージングカバーの製造方法で製造したパッケージングカバーとウエハとの接合手段よる接合工程を示した説明図である。
【図6】従来のウエハレベルパッケージングの工程図である。
【図7】従来のウエハレベルパッケージングの概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、本発明の第1実施形態に係るパッケージングカバーの製造方法について、図面を参照して説明する。
【0024】
図1に示すように、パッケージングカバー10の製造は、パッケージングカバー10に空隙部(凹部、あるいは溝部)を形成するプレス加工装置(空隙部形成手段)12と、パッケージングカバー10の接合面をプラズマ処理により改質する大気圧プラズマ処理装置(表面改質手段)14と、が用いられる。また、パッケージングカバー10は、樹脂製部材(例えば、フッ素樹脂)がシート状に形成されたフッ素樹脂シートSで構成されている。フッ素樹脂シートSは、処理前の状態(初期状態)で送出装置(駆動手段)16に巻き取られている。そして、フッ素樹脂シートSは、送出装置16が回転駆動することにより、巻取装置(図示省略)側に直線方向に沿って移動して、最終的には、巻取装置に巻き取られる。なお、送出装置16及び巻取装置は、図示しないモータなどの駆動源に接続されている。また、送出装置16、巻取装置、プレス加工装置12及び大気圧プラズマ処理装置14の駆動は、図示しない制御装置により制御されている。
【0025】
ここで、送出装置16と巻取装置との間には、上述したプレス加工装置12と、大気圧プラズマ処理装置14と、が設けられている。具体的には、送出装置16のフッ素樹脂シートSの移動方向下流側には、プレス加工装置12が位置しており、プレス加工装置12に対してフッ素樹脂シートSの移動方向下流側には、大気圧プラズマ処理装置14が位置している。このように、プレス加工装置12と大気圧プラズマ処理装置14とは、フッ素樹脂シートSの移動方向に沿って並んで設けられている。このため、送出装置16に巻き取られていたフッ素樹脂シートSが巻取装置側に移動していくと、先ず、プレス加工装置12を通過し、その後、大気圧プラズマ処理装置14を通過する。
【0026】
次に、プレス加工装置12について説明する。
図2に示すように、プレス加工装置12は、フッ素樹脂シートSの上方側に位置する平面テーブル(凹面テーブル(樹脂特性に応じた必要な加熱機構を持ったプレステーブル))18と、フッ素樹脂シートSの接合面11に空隙部13を形成するプレステーブル20と、で構成されている。平面テーブル18及びプレステーブル20は、図示しない駆動機構により上下方向に移動可能に構成されている。プレステーブル20の加工面には、フッ素樹脂シートSの接合面11に空隙部13を形成するための凸部22が設けられている。このプレス加工装置18によれば、平面テーブル18が上方停止位置で停止し、かつプレステーブル20が下方停止位置で停止している状態で、フッ素樹脂シートSの移動が可能になる。そして、平面テーブル18が下方停止位置に移動して停止し、かつプレステーブル20が上方停止位置に移動することにより、プレステーブル20の凸部22がフッ素樹脂シートSの接合面11にくい込んで空隙部13を形成する。なお、プレステーブル20の凸部22がフッ素樹脂シートSの接合面11にくい込んだ状態では、フッ素樹脂シートSが平面テーブル18で位置決め支持されているため、フッ素樹脂シートSがプレステーブル20からの圧力を受けて、撓んだり、曲がることがない。この結果、フッ素樹脂シートSの接合面11に空隙部13を正確かつ確実に形成することができる。
【0027】
次に、大気圧プラズマ処理装置について説明する。
図3に示すように、大気圧プラズマ処理装置14は、印加電極24を備えている。この印加電極24と対向する位置には接地電極26が配置されている。なお、印加電極24と接地電極26の一方または両方の電極は、誘電体で覆われている。接地電極26は、地面にアース接続されている。
【0028】
ここで、パッケージングカバー10であるフッ素樹脂シートSは、フィルム状又はシート状に形成されていることが好ましいが、これに限られるものではなく、例えば、板状、チューブ状、バルク状など、改質表面が平面となるものであれば、種々の形状のものを用いることができる。また、フッ素樹脂シートSは、分子内にフッ素原子を含むものであれば、特に限定されるものではない。具体的には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)などが挙げられる。
【0029】
また、印加電極24には、マッチング回路28を介して高周波電源30が電気的に接続されている。この高周波電源30により印加電極24と接地電極26との間に高周波電圧が印加される。また、印加電極24には、導管32により混合器34が接続されている。
【0030】
混合器34には、導管32によりガス流量計測装置38を介して第1の処理ガス源40が接続されている。また、混合器34には、導管32により気化器42及びガス流量計測装置44を介して第2の処理ガス源46が接続されている。この気化器42には、導管32により電磁バルブ48を介してエタノール供給源50が接続されている。
【0031】
ここで、第1の処理ガス源40及び第2の処理ガス源46の内部には、ヘリウム(He)、アルゴン(Ar)、ネオン(Ne)などの希ガスや、窒素(N)などの不活性ガスが充填されている。第1の処理ガス源40及び第2の処理ガス源46の内部には、これら単体の不活性ガスが充填されていてもよく、また数種類の不活性ガスが混合したガスが充填されていてもよいが、改質の効果が高いヘリウム(He)ガスが充填されていることが特に好ましい。
【0032】
また、エタノール供給源50にはエタノール(COH)が充填されているが、エタノール(COH)に限られるものではなく、例えば、メタノール(CHOH)など、炭素数4以下の第1級アルコール又は第2級アルコールである低級アルコールであればよい。さらに、エタノール(COH)などのアルコールに限定されるものではなく、アンモニアやケトン類、水等を用いてもよい。
【0033】
次に、本発明の第1実施形態に係るパッケージングカバー10の製造方法について説明する。
【0034】
図4に示すように、第1実施形態に係るパッケージングカバーの製造方法は、プレス加工装置12による空隙部形成工程S100と、大気圧プラズマ処理装置14による表面改質工程S200と、で構成されている。
【0035】
プレス加工装置12による空隙部形成工程S100では、図1及び図2に示すように、送出装置16から送り出されたフッ素樹脂シートSに対して、平面テーブル18が上方から接近して下方停止位置で停止し、プレステーブル20が上方に向けて押し上げられる。これにより、フッ素樹脂シートSの一方の面が平面テーブル18に面接して位置決めされた状態で、フッ素樹脂シートSの接合面11にプレステーブル20の凸部22がくい込む。これにより、フッ素樹脂シートSの接合面11には、凹部状の空隙部13が複数形成される。また、フッ素樹脂シートSの接合面11にプレステーブル20の凸部22がくい込み、空隙部13を形成した後、平面テーブル18は上方停止位置に移動して停止し、プレステーブル20は、下方停止位置に移動して停止する。これにより、フッ素樹脂シートSの移動に支障が生じない。
【0036】
大気圧プラズマ処理装置14による表面改質工程S200では、図1及び図3に示すように、プレス加工装置12による空隙部形成工程S100の次の工程になる。プレス加工装置12による空隙部形成工程S100が終了すると、フッ素樹脂シートSが直線方向に沿って移動する。やがて、フッ素樹脂シートSが印加電極24と接地電極26との間に送り出される。
【0037】
ここで、エタノール供給源50から液体のエタノールが導管32を通って気化器42に供給される。この気化器42によりエタノールが気化される。また、第2の処理ガス供給源46から不活性ガスが所定の流量だけ導管32を通って気化器42に供給される。気化器42で気体にされたエタノールは、第2の処理ガス供給源46から供給された不活性ガスによりバブリングされ、このバブリングされたガスが混合器34に供給される。このとき、第2の処理ガス供給源46から気化器42に供給される不活性ガスの流量がガス流量計測装置44により計測され、その計測値に基づいて電磁バルブ48が制御されることにより、エタノール供給源50から気化器42に供給されるエタノールの流量が制御される。このように、気化器42では、エタノールが気化されるとともに、第2の処理ガス源46から供給された不活性ガスと気化されたエタノールとが混合されて混合ガスとなる。
【0038】
また、第1の処理ガス源40からは所定の流量の不活性ガスが導管32を通って混合器34に供給される。この第1の処理ガス源40から供給される不活性ガスは、キャリアガスとして作用する。混合器34では、第2の処理ガス源46から供給された不活性ガスと気化されたエタノールとが混合された混合ガスと、第1の処理ガス源40から供給された不活性ガスとが混合される。これにより、混合器34では、希釈ガス(処理ガス)が生成される。混合器34で生成された希釈ガス(処理ガス)が導管32を通って印加電極24と接地電極26との間に供給される。
【0039】
一方、印加電極24と接地電極26との間には、高周波電源30から高周波電圧が印加される。このときの周波数は、高周波(数百kHzから数十MHz)が用いられるが、特に、工業用周波数である13.56MHzとすることがコスト面で好ましい。また、印加電極24と接地電極26との間は、大気圧(1013hPa)の近傍の圧力(900hPa以上1013hPa以下)となっている。
【0040】
なお、印加電極24と接地電極26との間に作用する圧力を900hPaよりも小さくすると、真空ポンプや真空容器が必要となり、設備の製造コスト及び設備のランニングコストが増大するため、不具合となる。また、印加電極24と接地電極26との間に作用する圧力を1013hPaよりも大きくすると、処理ガスが外部に漏れてしまうことを防止するために耐圧容器あるいはより高い気密性が必要となり好ましくない。
【0041】
印加電極24と接地電極26との間に希釈ガス(処理ガス)が供給されるとともに高周波電圧が印加されると、印加電極24と接地電極26との間の放電空間内の希釈ガス(処理ガス)が電離してプラズマが発生し、希釈ガス(処理ガス)が電離した励起状態となって活性化される。そして、放電空間内に発生したプラズマがフッ素樹脂シートSの接合面11に接することにより、フッ素樹脂シートSの接合面11の表面改質が行われる。
【0042】
より具体的には、エタノールがプラズマ中で励起されると、−H、−OH、または−O−等が解離される。フッ素樹脂シートSの接合面11であるフッ素樹脂表面のC−F結合は、その結合エネルギの関係から、アルコールから解離した−Hによって切断される。Fが切断されたCの未結合手(ダングリングボンド)に、−OHまたは−O−が付き、接合面11のフッ素樹脂に親水性を与えることになる。これにより、フッ素樹脂シートSの接合面11であるフッ素樹脂表面を改質させることができる。特に、Fが切断されたCの未結合手(ダングリングボンド)に、C(炭素)やN(窒素)が結合させることにより、Oよりも結合力が高くなり、フッ素樹脂シートSの接合面11の表面改質状態(結合状態)が安定し、安定した状態を長期間維持できる。
【0043】
なお、炭素数が比較的多い高級アルコールを用いると、アルコールがプラズマ中で励起させる際、粘性が高くなり過ぎて気化させることができないか、あるいはクラスター状になるため、励起が極めて困難になる。また、多価アルコールを用いた場合も、粘性が高くなるため、励起が困難になる。さらに、第3級アルコールを用いると、第3級アルコールが酸化されないため、親水性の官能基を解離させることはできない。これらのように、エタノールを用いることにより、フッ素樹脂シートSのフッ素樹脂表面(接合面11)を都合良く改質させることができる。
【0044】
以上の工程を経て、パッケージングカバー10であるフッ素樹脂シートSを容易に製造することができる。なお、フッ素樹脂シートSの接合面11の表面改質工程S200が終了すると、フッ素樹脂シートSとウエハWとが接合される。
【0045】
そこで、次に、フッ素樹脂シートSの接合面11とウエハWとの接合工程について説明する。なお、ウエハWは、半導体ウエハ(シリコンウエハ)であり、シリコン樹脂(Si)で構成されている。
【0046】
フッ素樹脂シートSの接合面11の表面改質工程S200が終了すると、図1及び図5に示すように、フッ素樹脂シートSがさらに移動する。大気圧プラズマ処理装置14に対してフッ素樹脂シートSの移動方向下流側には、接合テーブル52が設けられている。接合テーブル52は、上側接合テーブル54と、下側接合テーブル56と、で構成されている。下側接合テーブル56の上面には、ウエハWが載せられている。また、上側接合テーブル54及び下側接合テーブル56は、上下方向に沿って移動可能に構成されている。
【0047】
接合面11の表面改質が終了したフッ素樹脂シートSが移動してくると、上側接合テーブル54及び下側接合テーブル56がフッ素樹脂シートSを上下方向から挟むように移動する。そして、下側接合テーブル56に載せられているウエハWを所定の圧力でフッ素樹脂シートSの接合面11に押圧する。これにより、フッ素樹脂シートSは、上側接合テーブル54と下側接合テーブル56との間に挟持される。この結果、プラズマにより表面改質されたフッ素樹脂シートSの接合面11がウエハWに接合される。この接合方法は、作業者が手で両者を張り合わせてもよく、また、ベルトコンベアなどでウエハWを移動させて、フッ素樹脂シートSの接合面11とウエハWとをローラを用いて接合させるようにしてもよい。また、接合時の条件として、常温及び常圧の下で、かつ不活性ガスでガスパージさせた環境で、両者を接合させることが好ましい。ここで、常温とは、例えば、15℃から25℃の範囲を意味する。これにより、フッ素樹脂シートSの接合面11とウエハWとが強固に接着される。特に、不活性ガスでガスパージさせた環境で、フッ素樹脂シートSの接合面11とウエハWとを接合させることにより、フッ素樹脂シートSの接合面11とウエハWとの間に、ゴミや埃などが入ることを防止できるため、ウエハWの品質を高精度に安定させることができる。なお、フッ素樹脂シートSの接合面11とウエハWとの接合条件として、加熱及び常圧の下の下で、両者を接合させてもよい。ここで、加熱条件は、各部材の化学的又は物理的な構造及び組成が変わらない低温が好ましい。
【0048】
また、接合時の条件として、フッ素樹脂シートS又はウエハWの少なくとも一方を加圧して、両者の間に所定の圧力が作用する状態(常温及び加圧の条件)にて接合すると、両者の接着力が向上しさらに強固に接着される。なお、ウエハWの接合面は、すでに洗浄された状態になっている。
【0049】
以上のように、本実施形態のパッケージングカバー10の製造方法によれば、プレス加工装置12のプレス加工と、大気圧プラズマ処理装置14によるプラズマ処理と、により、容易に製造することができる。これにより、接着剤を用いることなくウエハWに対して強固に接合可能なパッケージングカバー10を容易に製造することができる。
【0050】
特に、パッケージングカバーであるフッ素樹脂シートSを同一ライン上で所定方向に沿って移動させるだけで、フッ素樹脂シートSに対する空隙部形成工程S100及び表面改質工程S200を、同一ライン上であたかも流れ作業のように実行することができる。この結果、接着剤を用いずウエハWと強固に接合するパッケージングカバー10を容易に製造することができる。
【0051】
また、空隙部形成工程S100では、プレス加工装置12がフッ素樹脂シートSの接合面11に対して加圧することにより、フッ素樹脂シートSの接合面11に空隙部13が形成される。これにより、フッ素樹脂シートSをガラスで構成する必要がなく、また、接合面11に空隙部13を形成するためのエッチングが不要になる。このため、パッケージングカバー10(フッ素樹脂シートS)を破損し難い物質で構成することができるとともに、空隙部形成工程S100を簡素化でき、低コストを実現することができる。
【0052】
さらに、大気圧プラズマ処理装置10を用いてフッ素樹脂シートSの接合面11を表面改質した後、フッ素樹脂シートSを所定方向に移動させるだけで、フッ素樹脂シートSとウエハWとを接合することができる。このように、フッ素樹脂シートSの接合面11の空隙部形成工程S100及び表面改質工程S200と同一ライン上で、接合工程をそのまま実行することができる。この結果、接着剤を用いることなく、フッ素樹脂シートSとウエハWとを容易かつ確実に接合させることができるとともに、フッ素樹脂シートSとウエハWとの接合工程を流れ作業的に容易に行うことができる。
【0053】
特に、フッ素樹脂シートSとウエハWとが常温で接合されることにより接着するため、各部材の化学的又は物理的な構造及び組成が変わることを防止できる。
【0054】
また、フッ素樹脂シートSとウエハWとの間に接着剤層が存在しないので、フッ素樹脂シートS及びウエハWの特性(例えば、電気的性質)に影響を与えることもない。さらに、大気圧プラズマ処理装置10を用いた均一な表面改質を行うので、フッ素樹脂シートSの接着強度にムラが生じてしまうことも防止できる。
【0055】
なお、フッ素樹脂シートSとウエハWとの接合工程は、表面改質工程S200の終了後に実行されるため、フッ素樹脂シートSの接合面11の洗浄が済んだ状態で実行することになる。この結果、本来ではフッ素樹脂シートSとウエハWとの接合工程の前段階で必要になっていたフッ素樹脂シートSの接合面11の洗浄工程を省略することができる。
【符号の説明】
【0056】
10 パッケージングカバー
11 接合面
12 プレス加工装置(空隙部形成手段)
13 空隙部
14 大気圧プラズマ処理装置(表面改質手段)
16 送出装置(駆動手段)
S フッ素樹脂シート(パッケージングカバー)
W ウエハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接合面でウエハに接合するパッケージングカバーの製造方法であって、
空隙部形成手段により前記パッケージングカバーの前記接合面に空隙部を形成する空隙部形成工程と、
前記空隙部形成工程の終了後、前記空隙部が形成された前記接合面を大気圧又はその近傍の圧力下において表面改質手段のプラズマ処理により改質する表面改質工程と、
を有することを特徴とするパッケージングカバーの製造方法。
【請求項2】
前記パッケージングカバーは、駆動手段により所定方向に移動し、
前記表面改質手段は、前記空隙部形成手段に対して前記パッケージングカバーの移動方向下流側に配置され、
前記空隙部形成手段により前記接合面に前記空隙部を形成した後、前記パッケージングカバーを前記駆動手段によって所定方向に移動して、前記表面改質手段により前記パッケージングカバーの前記接合面を改質することを特徴とする請求項1に記載のパッケージングカバーの製造方法。
【請求項3】
前記表面改質手段は、前記接合面に対して加圧して前記接合面に前記空隙部を形成するプレス加工装置であり、
前記空隙部形成工程で、前記プレス加工装置が前記接合面に対して加圧して前記接合面に前記空隙部を形成することを特徴とする請求項1又は2に記載のパッケージングカバーの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−258256(P2010−258256A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−107398(P2009−107398)
【出願日】平成21年4月27日(2009.4.27)
【出願人】(501114693)株式会社ウインズ (23)