説明

パッケージ用積層体、パッケージ用積層体の製造方法、及びパッケージ用積層体によって作られた包装容器

本発明は、液体食品包装のための非フォイル型パッケージ用積層体に関する。該積層体は、紙又は板紙からなるコア層と、ポリオレフィンからなり且つ前記紙又は板紙の層の外側に適用される最も外側の液密で熱シール可能な層と、液体ガスバリア組成物を液体膜コーティングされそれに続いて乾燥されることによって形成された酸素ガスバリア層とを備えており、前記液体組成物は、液体媒体内に分散せしめられるか又は溶解された重合体バインダを含んでいる。該積層体は更に、無機充填材粒子が内部に分散せしめられ且つ前記液体ガスバリア組成物から前記ガスバリア層内へと分散せしめられた無機粒子をも含んでいるポリオレフィン系マトリックス重合体の層をも有している。本発明はまた、該パッケージ用積層体の製造方法及び該パッケージ用積層体によって作られた包装容器に関するものでもある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体食品の長期無菌包装のための非フォイル型パッケージ用積層体に関する。該パッケージ用積層体は、紙又は板紙からなるコア層と、ポリオレフィンからなり且つ前記紙又は板紙からなる層の内側面上に適用される最も外側の液密の熱シール可能な層と、液体ガスバリア組成物を液体膜コーティングし続いて乾燥させることによって形成される酸素ガスバリア層とを備えており、前記液体組成物は、水性媒体又は溶媒型媒体内に分散せしめられるか又は溶解された重合体バインダを含んでいる。本発明はまた、該パッケージ用積層体の製造方法及び該パッケージ用積層体によって作られる包装容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液体食品のための一回使用の使い捨て型の包装容器は、板紙又はカートンを基材とするパッケージ用積層体によって製造される場合が多い。このような一般的に生産される包装容器の一つは、Tetra Brik Aseptic(登録商標)という商品名で市販され、主として長期定常保存用として販売されるミルク、フルーツジュース等のような液体食品の殺菌包装用として使用されている。この公知の包装容器における包装材料は、典型的には、紙又は板紙からなる大きなコア層と、熱可塑性樹脂からなる外側の液密な層とを含んでいる。例えば、ミルク又はフルーツジュースの殺菌包装及び包装のために包装容器を気密特に酸素ガス密にするためには、これらの包装容器内の積層体は、一般的には、少なくとも1つの付加的な層最も一般的にはアルミ箔を備えている。
【0003】
該積層体の内側の面、すなわち、該積層体によって作られた容器に充填された食品内容物に面するように意図されている側の面上には、アルミ箔に適用された最も内側の層があり、該最も内側の層は、熱シール可能な接着性重合体及び/又はポリオレフィンを含む1つ又は幾つかの部分層によって構成される。コア層の外側にはまた、最も外側の熱シール可能な重合体からなる層も設けられている。
【0004】
包装容器は、一般的には、包装材料のウェブ又は、予め調製されたブランクからパッケージを形成し、充填し、シールするタイプの近代的な高速包装マシーンによって製造される。従って、包装容器は、積層された包装材料のウェブを該ウェブの2つの長手方向端縁を重ね合わせ結合によって相互に結合してチューブ状に再加工することによって製造される。重ね合わせられた結合状態にある最も内側と最も外側の熱シール可能な熱可塑性ポリマー層同士は、熱をかけて相互に溶着される。前記のチューブには、意図されている食品が充填され、その後にチューブ内の内容物の液面より下で相対的に所定距離のところでチューブの横方向シールを繰り返すことによって、個々のパッケージに分割される。これらのパッケージは、前記の横方向シールに沿って切断することによってチューブから分離され且つ包装材料に形成されている折り目線に沿った折り曲げ形成構造によって所望の幾何学的形状通常は平行六面体形状を付与される。
【0005】
パッケージ用積層体内のアルミ箔からなる層は、大部分の重合体からなるガスバリア材料よりも遙かに優れたガスバリア特性を提供する。該液体食品殺菌包装のための従来のアルミ箔を基材とするパッケージ用積層体は、その性能レベルが、今日市場において入手できる最もコスト効率の高い包装材料である。競合する他の如何なる材料も、原材料に関してコスト効率がより高く、匹敵する食品保存性能を有し且つ完成されたパッケージ用積層体に置き換える際にも比較的簡素でなければならない。
【0006】
これまでのところ、信頼性のあるレベルのバリア特性と3カ月を超える期間に亘る食品保存性を有するアルミ箔積層体に匹敵するコスト効率の良い非フォイル型パッケージ用積層体は、市場において入手可能な上記した種類の長期定常保持のための殺菌された紙又は板紙を基材とするパッケージはほとんど存在しない。良好なバリア特性を提供する幾つかの重合体材料が存在するけれども、これらは、積層体内に誤った機械特性を有するか又は、例えば、費用のかかる同時結合層を必要とする積層体内に薄い層に置き換え処理するのが難しく、又は、これらは、更に、良好な厚みとするにはアルミニウムよりもかなり費用がかかり、従って、例えばミルク又はジュースの包装に対してはコスト的に効率的ではない。
【0007】
極めてコスト効率が良い一つのタイプの重合体ガスバリア層、すなわち、基材上に液体又は溶媒状の分散液又は溶液の形態でコーティングされ、これに続いて乾燥されて薄いバリアコーティングとされるバリア重合体がある。しかしながら、均一なバリア特性を有する平坦なコーティングをもたらすためには、前記の分散液又は溶液は均一で安定していることが極めて重要である。水性組成物のための適切な重合体の例としては、ポリビニルアルコール(PVOH)、水分散性エチレンビニルアルコール(EVOH)、又はポリサッカライド系の水分散性又は溶解性重合体がある。このような分散コーティングされた層又はいわゆる液体膜コーティング(LFC)された層は、1グラム/mの数十分の一まで極めて薄くすることができ、分散液又は溶液が均一で安定している場合、すなわち良好に調製され且つ混合されている場合には、高品質の均一な層を提供することができる。長年に亘って、例えば、PVOHは乾燥環境下では優れた酸素バリア特性を有することが知られてきた。PVOHはまた、極めて良好な臭気バリア特性、すなわち、臭気性物質が周囲環境例えば冷蔵庫又は貯蔵室から包装容器内へ侵入するのを防止する機能を提供し、この機能はパッケージの長期保存において重要となる。更に、水分散性の又は溶解性の重合体によって形成されたこのような液体膜コーティングされた層は、更に、このような水分散性又は溶解性重合体によって形成された液体膜をコーティングされた重合体の層は、隣接する層に対する良好な内部接着を提供することが多く、このことは、最終的な包装容器の良好な一体性に貢献する。パッケージの一体性は、一般的にパッケージの寿命すなわち包装容器の漏れに対する耐性を意味する。しかしながら、このような水分散性バリア重合体は重大な欠点を有している。すなわち、これらの重合体は、一般的に水分に対して感応性があり且つ酸素ガスバリア特性はパッケージ用積層体内での高い相対湿度において急速に劣化する点である。結局、PVOHはEVOH又はこれらに類似の薄い分散液をコーティングされた層は、乾燥した環境内で乾燥製品を包装するのには適しているが、長期保存のための液体及び湿度のある製品の包装にはそれほど適していない。
【0008】
従って、重合体を改質するか又は重合体組成物内に他の物質を含有させること、すなわち重合体を架橋結合することによって、より良好な初期酸素バリア特性を備えると共に耐湿性を高くさせて感湿性の重合体の層を提供することが試みられて来た。しかしながら、物質のこのような改質及び添加は、液体膜コーティングプロセスの制御を比較的難しくし、重要なことには更に費用がかかることが多い。このような物質はまた、食品包装のための現存の食品安全法の観点においては、注意深くスクリーニングする必要もある。例えば、分散液コーティングされたPVOHの層をその乾燥と関連付けて100℃を超える温度まで加熱することによって熱硬化させることも試みられて来た。しかしながら、熱への曝露は、コーティングされた板紙からなる基材を損傷させたり、例えば、酸素バリアコーティング内に膨れ及び亀裂のような欠陥を生じさせることによってコーティング特性に悪影響を及ぼすかも知れない。更に、このような試み単独では、殺菌パッケージの全寿命に亘って十分なレベルの酸素の遮蔽を維持するための十分な耐湿性及び堅牢性を提供しないことが確認された。
【0009】
従って、無菌長期保存のための最終的な包装容器において必要とされるレベルの酸素バリア特性に到達するためには、液体膜コーティング可能なガスバリア重合体バインダ例えばPVOHは、新しい手段又は少なくとも費用のかかる公知の改造方法の幾つかすなわち架橋結合物質の付加によって改良しなければならないことが予想されていた。
【0010】
更に、無菌長期保存のための包装容器に使用するためのパッケージ用積層体は、それ自体の内部に、包装された食品の保護のための水蒸気バリア特性を有する必要がある。
【0011】
水蒸気バリアと層の耐水蒸気性との間に違いがあることを理解することは重要である。耐水蒸気性又は耐湿性は、湿度に曝されたときにもそのバリア特性を維持する機能、すなわち、重合体の特性に対する湿度の悪影響に耐えることを意味している。
【0012】
水蒸気バリア特性は、水蒸気分子が材料を通ってゆっくりと浸透することに対するバリア性を意味しており、すなわち、物質の特性を維持するために水分又は湿度に耐える能力を意味しておらず、物質が短期間の貯蔵においてすなわち迅速に又はほぼ迅速に湿潤することを防止する迅速な液体バリア特性を意味していない。一つの例として、好ましい低密度ポリエチレン(LDPE’s又はLLDPE’s)のような熱シール可能なポリオレフィンは、液体バリアであり且つ積層体の内側の板紙を充填されている液体製品から保護するか又は高湿度又は冷凍保存におけるようなパッケージの外部の湿潤状態から保護するための最も外側の層として適している。しかしながら、低密度ポリエチレンの水蒸気バリア特性は比較的低く、すなわち、輸送及び貯蔵中に積層体を水蒸気が長期間に亘ってゆっくりと浸透することに対して耐えるために合理的な厚みでの機能は実際には極めて低い。
【0013】
水蒸気バリア特性は長期保存において重要である。なぜならば、水蒸気バリア特性は、包装された液体食品の水分が包装容器から逃げるのを防止し、これは、需要者が最終的に開いたときに、各包装容器内に予想されるよりも液体食品の内容量の低下をもたらし得る。おそらく、比較的濃くなることによって組成物及び製品の風味もまた変化し得る。更に、水蒸気が包装された食品から紙又は板紙からなる層内へ浸透し且つ逃げ出すことを防止することによって、パッケージ用積層体は、長期間に亘ってその堅牢性を維持することができる。従って、パッケージ材料はまた、液体製品の長期無菌パッケージに適する十分な水蒸気バリア特性をも有することが大切である。
【0014】
液体膜コーティング又は分散液コーティングに適している水分散可能な又は溶解可能なバリア重合体は、一般的に、水及び水分に対する耐性が低い。これらの重合体は、水分に曝されたときにそれらの酸素バリア特性を容易に失う。これらの重合体は、何らかの方法で架橋結合されるか又は改質されない限り、耐水蒸気性を有するものとして知られていない。これらの重合体は、そのガスバリア特性を維持するために耐湿性を得るように改質されたときにも、通常は依然として如何なる注目すべき水蒸気バリア特性をも得ることが出来ない。
【0015】
無菌液体食品のための市販されている包装容器に今日使用されている一般的なアルミニウム箔は、水蒸気バリア特性と酸素バリア特性との両方を有している。アルミニウム箔に匹敵す信頼性の高い酸素バリア特性及び水蒸気バリア特性の両方を提供する適切なコスト効率の良い材料の代替例はほとんど存在しない。アルミニウム箔は、実際には、アルミ箔の層が無傷であり且つ損傷されていない限り、パッケージの周りの環境内又は包装された製品内に存在する分子が箔内のあらゆる方向に浸透するのを効果的に防止する。
【0016】
しかしながら、コスト効率及び堅牢性のために、すなわち、製造及び取扱い条件における適度の変形態様における信頼性の高さのために、例えば、ミルク又はその他の飲料のような無菌液体食品のための非アルミニウム箔系の包装用材料であって、周囲条件下での長期無菌保存のための包装容器内に十分なトータルのバリア特性を提供する材料が必要とされている。本発明に関連する“長期保存”という用語は、包装材料が包装された食品の品質、すなわち少なくとも3カ月好ましくはそれ以上の長い期間に亘る周囲条件下での栄養価、衛生的安全性及び風味を保持することが出来なければならないことを意味している。
【発明の概要】
【0017】
従って、本発明は、液体又は水分のある食品の長期無菌包装のためのフォイルではない紙又は板紙製のパッケージ用積層体を製造する際の上記した問題点を解決し又は軽減することを目的としている。
【0018】
本発明は、良好なパッケージの完全性を有する無菌の気密且つ水蒸気密な包装容器を製造するために、コスト効率の良いフォイルではない紙又は板紙を基材とするパッケージ用積層体であって、良好なガスバリア特性、良好な水蒸気バリア特性、及び良好な内部接着特性を有しているパッケージ用積層体を提供することを目的としている。当然のことながら、アルミニウム箔からなるバリア層を有する紙を基材とするパッケージ用積層体のみならず非フォイル性のパッケージ用積層体を提供する他の公知の試みと比較してもコスト効率が良いことも意図している。
【0019】
本発明は更に、栄養上の品質が維持された状態にある液体食品を周囲条件下で長期保存するための無菌包装容器を製造するために、コスト効率が良く且つ丈夫な非フォイル性の紙又は板紙を基材とする熱シール可能なパッケージ用積層体であって、良好なガスバリア特性、良好な水蒸気バリア特性、及び良好な内部接着特性を有しているパッケージ用積層体を提供することをも目的としている。
【0020】
本発明の実施例の少なくとも幾つかによれば、本発明の更に特定の目的は、ミルクを周囲条件下で長期保存するための、良好なガス及び水蒸気バリア特性、良好な臭気バリア特性、及び無菌包装のための良好な完全性を備えたコスト効率が良く且つ丈夫な非フォイル性の紙又は板紙を基材とする液体包装容器を提供することである。
【0021】
これらの目的は、本発明に従って、添付の特許請求の範囲に規定されている積層された包装材料、包装容器、及び包装材を製造する方法によって達成できる。
【0022】
本発明の第一の特徴によれば、上記の主な目的は、非フォイル型のパッケージ用積層体であって、紙又は板紙からなるコア層と、第一の最も外側の液密で熱シール可能なポリオレフィンからなる層と、前記紙又は板紙からなるコア層の内側の面上に適用された前記第二の最も内側の液密で熱シール可能なポリオレフィンからなる層と、液体ガスバリア組成物を液体膜コーティングされ且つそれに続いて乾燥されることによって形成される酸素ガスバリア層とを備え、前記液体ガスバリア組成物は、水性又は溶液型媒体内に分散又は溶解されている重合体バインダを含んでおり、前記水性又は溶液型媒体内にはまた無機粒子も分散せしめられており、該媒体は更に、適用された酸素ガスバリア層と前記最も内側の熱シール可能なポリオレフィンからなる層との間に配置されている水蒸気バリア層を備えており、前記水蒸気バリア層は、内部に無機充填材粒子が分散せしめられたポリオレフィン系重合体マトリックスを備えている。
【0023】
本発明に従って液体膜コーティングされたバリア内に使用される分散可能な又は溶解可能な重合体バインダは、均一にコーティングされ且つ乾燥された層内に形成された場合にガスバリア特性を提供する重合体である。
【0024】
前記分散可能な又は溶解可能な重合体バインダは、PVOH、水分散性EVOH、例えばデンプン又はデンプン誘導体のような多糖、水分散性ポリ塩化ビニリデン(PVDC)若しくは水分散性ポリエステル、又はこれらの2以上の組合せからなる群から選択されるのが好ましい。
【0025】
前記重合体バインダは、PVOH、水分散性EVOH、デンプン若しくはデンプン誘導体、又はこれらのうちの2以上の組合せからなる群から選択されるのが更に好ましい。
【0026】
液体膜コーティングバリア重合体としてのPVOHは、アルミニウム箔と比較して多くの望ましい特性を有しており、その結果、多くの状況において最も好ましいバリア材料である。とりわけ、高い酸素ガスバリア特性と共に、良好な膜形成特性、食品との適合性、及び経済的価値について言及する。特に、PVOHは、ミルクの包装にとって特に重要である高い臭気バリア特性を備えたパッケージ用積層体を提供する。
【0027】
例えばデンプン又はデンプン誘導体のような多くの他の想定できるバリア重合体と同様に、ポリビニルアルコールは、液体膜コーティングプロセス、すなわち適用の際に基材上に薄い均一な層となるように塗布されてその後に乾燥される水性又は溶媒型の分散液又は溶液の形態によって適切に適用される。しかしながら、このプロセスにおける一つの欠点は、紙又は板紙からなるコア層上に適用される液体重合体分散液又は重合体溶液は、該コア層の液体吸収性繊維内へ浸透することであることを発見した。適用される層が薄すぎる場合には、適用されたバリア層を乾燥させるための水又は溶液の除去に伴い、板紙の特性に応じてピンホールが形成される虞がある。
【0028】
水性系は一般的にある種の環境に対する利点を有している。液体ガスバリア組成物は水性であるのが好ましい。なぜならば、このような組成物は通常は溶媒系よりも更に良好な作業環境の優しさを有しているからである。
【0029】
上に概略的に述べたように、PVOHコーティングの耐水性及び酸素バリア特性を改良するために、カルボン酸官能基を有する重合体又は化合物を含有させることが知られている。カルボン酸官能基を有する重合体は、エチレンアクリル酸共重合体(EAA)及びエチレンメタクリル酸共重合体(EMAA)又はこれらの混合物から選択されるのが適切である。EAA共重合体は、乾燥コーティング重量で約1〜20重量%の量で酸素バリア層内に含まれる。
【0030】
高い乾燥温度におけるPVOHとEAAとの間のエステル化反応によってPVOHに疎水性のEAA高分子鎖が架橋結合されてPVOHの構造内に形成され、改良された耐酸素特性及び耐水性がもたらされると考えられる。しかしながら、このような混合物は添加物のコストが高いことにより、かなり費用が高い。更に、高い温度での乾燥及び硬化は、板紙基材上のバリアコーティング内に亀裂及び膨れが形成される虞があるために好ましくない。架橋結合はまた、多価化合物例えば金属酸化物のような金属化合物の存在によって惹き起こされる。しかしながら、このような改良された液体膜がコーティングされたガスバリア層自体は依然として、大気保存のための信頼性の高い長期保存無菌包装のための十分なバリア特性を有し且つコスト効率が良くて形の良い包装容器を提供することができない。
【0031】
別の方法として、特別な種類の水分散性エチレンビニルアルコール重合体(EVOH)が最近開発されて来ており、これは本発明による酸素バリア液体コーティング組成物のためのものとして想定できる。しかしながら、一般的なEVOH重合体は、通常は押出成形されることを意図されており、6g/m以下好ましくは4g/m以下の薄い液体膜コーティングバリア膜を製造するためには、水性媒体内に分散させ/溶解させることができない。EVOHは、かなり多量の水分散性又は溶解性であるビニルアルコール単量体を含有しておらず且つその特性は液体膜コーティング等級のPVOHの特性に可能な限り近くなければならないと考えられる。押出成形されたEVOHの層は、液体膜をコーティングされたEVOHに代替物ではない。なぜならば、押出成形されたEVOHの層は、本質的に、押出コーティング用に意図されているグレードのEVOHほどPVOHに似た特性を有していないからであり且つ押出コーティング又は押出積層によって単一の層として5g/m未満の量で費用効率良く適用することができない、すなわち、一般的に極めて高価な重合体である同時押出される連結層を必要とするからである。更に、極めて薄い押出成形された層は、極めて迅速に冷却して隣接する層に対する十分な積層接合を持続するのに十分な熱エネルギを含むことができない。
【0032】
液体膜コーティングに適した酸素バリア特性を付与する重合体バインダの他の例としては、多糖、特にデンプン又はデンプン誘導体があり、例えば酸化デンプン、カチオン性デンプン、及びヒドロキシプロピレート化デンプンが好ましい。このような変性デンプンの例としては、次亜塩素酸酸化ポテトスターチ(RaisoによるRaisamyl 306)、ヒドロキシプロピレート化コーンスターチ等がある。しかしながら、他のデンプン形態及びデンプン誘導体もまたある程度のレベルのガスバリア特性を付与するものとして知られている。
【0033】
重合体バインダの更に別の例としては、アクリル酸重合体又はメタクリル酸重合体のような重合体及びPVOH又はデンプンのような多価アルコール重合体の混合物を含んでいるガスバリアコーティングがある。これらは、例えば、EP−A−608808、EP−A−1086981、WO2005/037535に記載されている。これらの重合体バインダの架橋結合反応は、上記したように高湿度に対する耐性のためには好ましい。
【0034】
構成要素のうちの一つの少しの混合比のみを有する混合物、及びこれらの構成要素単独の組成物でさえ、水性コーティング組成物内に酸素バリア特性を付与する。
【0035】
しかしながら、ガスバリア重合体はPVOHであるのが最も好ましい。なぜならば、PVOHは上記した良好な特性、すなわち、しっかりした形状特性、ガスバリア特性、コスト効率、食品との適合性と共にミルクの包装のためには極めて常用である臭気バリア特性の全てを有しているからである。
【0036】
PVOHを基材とするガスバリア組成物は、PVOHが少なくとも98%このましくは少なくとも99%の鹸化度を有する場合に良好に機能するが、より低い鹸化度のPVOHもまた酸素バリア特性を付与できる。
【0037】
鉱物充填材を溶融処理された熱可塑性重合体の層例えば通常は耐水性ポリオレフィン系重合体の層内へ混ぜ合わせることによって層内を通るゆっくりとした水蒸気の浸透が著しく低減される。しかしながら、例えばタルカム又は炭化カルシウムのような一般的な鉱物充填材は、このような層に対して大きな酸素バリア特性を付与しない。
【0038】
PVOH層は最初はかなり良好な酸素バリア特性を積層体に付与するけれども、無機粒子が内部に均一に分散せしめられている溶融押出成形されたポリオレフィンの層を積層することによって、例えばPVOHからなる薄い液体膜をコーティングされたバリア層を保護することを試みているときには、長期間保存状態中の十分なレベルの酸素バリアは相応の層厚によって維持することができることがわかる。従って、酸素バリア特性も水蒸気バリア特性も十分ではなく且つ積層構造内に更に別の層及び材料が必要とされ、これは次いで対応するアルミニウム箔を基材とする包装材料に匹敵する良好なものよりも更に高価な積層体となる。
【0039】
しかしながら、極めて驚くべきことには、同じく無機粒子を含んでいる液体膜によるコーティングを施されたPVOHバリア組成物によって得られる層を積層し、ポリオレフィン系の重合体マトリックスを無機粒子と共に溶融処理することによって得られる別の層を有するようにすることによって包装容器を製造する場合には、十分な酸素バリア特性が得られるだけでなく、完成された包装積層体及び完成されたパッケージの水蒸気バリア特性は驚くほど改良され且つ遙かに高くて十分なものであることが判明した。実際には、両方の層内に充填材を含ませることによって、相乗作用する驚くほど改良された水蒸気バリア特性が得られた。
【0040】
完成されたパッケージ用積層体の酸素バリア特性全体に対する充填されたポリオレフィンからなる層の寄与はゼロであるはずであるが、積層体の長期間に亘る酸素の透過もまた、液体膜コーティングされた酸素バリア層内に無機粒子を含んでいない対応する材料において得られ且つ測定された完全に不十分な酸素透過の値と比較して予想しなかったほど改良された。
【0041】
この想定外の相乗作用は例えば極めて乾燥した気候のような極端な条件下でもまたこのようなパッケージ用積層体に頼ることができるために必要である。なぜならば、包装されている製品の内側の100%の湿度から包装容器の壁を通って包装容器の壁の外側に向かう水分の浸透は、パッケージの外側が乾燥した気候であるときには比較的大きい。相対湿度(RH)の比較的大きな差により、包装容器の材料を通過する水分の移動のための駆動力は、乾燥した砂漠気候条件の下では遙かに大きく、従って、パッケージ用積層体のトータルの水蒸気バリア特性は更に高くなる必要がある。
【0042】
従って、本発明によると、例えばミルクの長期保存無菌包装のために必要とされる食品貯蔵特性の全てを備えたコスト効率の良い積層体は、板紙を液体膜コーティングされた酸素バリア層及びその内側の別の充填されたポリオレフィンを基材とする層と組み合わせることによって達成され、この場合に、液体バリア組成物は更に無機粒子を含んでもいる。
【0043】
液体膜としてコーティングされる分散液又は溶液の重合体バインダ材料は、層状であるか又は薄片状に形成されているのが好ましい無機化合物と混ぜ合わせられる。薄片状の無機粒子を層状に配列することによって、酸素ガス分子は、バリア層を横切る通常の真っ直ぐな経路とは異なり、酸素バリア層を通る曲がりくねった経路を介して長い経路をたどって浸透しなければならない。
【0044】
層状の無機化合物は、剥離状態に分散せしめられた所謂ナノ粒子又はナノ粘土化合物であるのが好ましい。すなわち、層状の無機化合物の層は、液体媒体によって相互に分離されているのが好ましい。従って、層状化合物は、重合体分散液又は溶液によって膨潤せしめられるか又は剥がされ、分散せしめられたとき無機材料の層状構造を貫通する。従って、層状の無機化合物は、液体ガスバリア組成物及び乾燥されたバリア層内で離層状態に分散せしめられる。粘土材料という用語は、カオリナイト、アンチゴライト、スメクタイト、バーミキュライト、ベントナイト、又はマイカ型、の鉱物を包含している。特に、ラポナイト、カオリナイト、ジッカイト、ナクライト、ハロイサイト、アンチゴライト、クリソタイル、パイロフィライト、モンモリロナイト、ヘクトライト、サポナイト、サウコナイト、テトラケイ酸ナトリウムマイカ、タエニオライトナトリウム、白雲母、マーガライト、バーミキュライト、フロゴバイト、脆雲母等が適切な粘土材料として挙げることができる。特に好ましいナノ粒子はモンモリロナイトからなる粒子であり、精製されたモンモリロナイト又はナトリウム置換モンモリロナイト(Na−MMT)が最も好ましい。ナノサイズの層状の無機化合物又は粘土鉱物は、縦横比が50〜5000であり且つ薄片状態で約5μm以下の粒子サイズであるのが好ましい。
【0045】
無機粒子は、主として縦横比が50〜5000の層状ベントナイト粒子からなる。
【0046】
液体膜をコーティングされた酸素バリア層は、乾燥重量基準で、好ましくは約5〜40重量%、より好ましくは約10〜40重量%、最も好ましくは約20〜30重量%の層状無機化合物を含んでいる。この量が少なすぎる場合には、コーティングされ且つ乾燥されたバリア層のバリア特性は、層状無機化合物が使用されない場合と比較して著しく改良されないであろう。この量が多すぎる場合には、液体組成物はコーティングとして適用することがより難しくなり且つアプリケータ装置の貯蔵タンク及び導管内で処理することがより難しくなるであろう。このバリア層は、乾燥されたコーティング重量で、好ましくは約99〜60重量%、より好ましくは約95〜70重量%、最も好ましくは約95〜80重量%の重合体を含んでいる。分散安定剤等のような添加剤を、乾燥コーティングを基準として約1重量%以下の量でガスバリア組成物内に含ませるのが好ましい。該組成物の全乾燥成分は、5〜15重量%であるのが好ましく、7〜12重量%であるのがより好ましい。
【0047】
代替的な好ましい実施例によれば、無機粒子は、主として縦横比が10〜500である層状のタルカム粒子からなる。該組成物は、乾燥重量で、好ましくは10〜70重量%、より好ましくは20〜70重量%、更に好ましくは20〜60重量%、最も好ましくは30〜50重量%の量でタルカム粒子を含んでいる。20重量%未満の場合にはガスバリア特性に著しい増大がなく、70重量%を超えると、層内の粒子間の内部凝集力が少なくなるので、コーティングされた層は比較的脆くなり且つ壊れやすくなる。重合体バインダの量は、粒子を取り巻き且つ分散させて層内で相互に積層させるには極めて少ない量であると考えられる。PVOH及びタルカムからなるこのような液体バリア組成物の全乾燥成分量は、5〜25重量%である。
【0048】
本明細書に参考として組み込まれているWO 03/031720号によると、3〜150nm、好ましくは4〜10nm、更に好ましくは5〜70nmの粒子サイズを示し且つ非晶質で球状のコロイド状のシリカ粒子が使用されている場合には、驚くほど良好な酸素バリア特性が達成されることも知られている。コロイド状のシリカ粒子を使用すると、液体バリア組成物は、15〜40重量%、好ましくは20〜35重量%、更に好ましくは24〜31重量%の乾燥成分で適用して強制的な乾燥の必要性を少なくすることができるという利点を更に有する。
【0049】
本発明による代替的な無機粒子は、カオリン、マイカ、炭化カルシウム等である。
【0050】
酸素バリア特性を付与するために無機粒子が採用されている場合にはまた、好ましい重合体バインダは、部分的にその上記した有利な特性に因りPVOHとされる。更に、PVOHは、混合の観点からも有利である。すなわち、無機粒子をPVOHの水溶液内に分散させるか薄片状に剥離させてPVOHと粒子との安定した混合物を形成し、それによって均一な組成物及び形態を備えた良好にコーティングされた膜の形成を可能にすることは一般的に容易である。
【0051】
本発明によると、前記酸素ガスバリア層は、乾燥重量で、0.5〜6g/m、好ましくは3〜5g/m、より好ましくは3〜4g/mの全量で適用されるのが好ましい。1g/m未満の場合には達成されるガスバリア特性が低すぎ、一方、バリア用重合体のコストは一般的に高く且つ液体を蒸発させて飛ばすのに高いエネルギコストを必要とするので、6g/mを超えると、コーティングされる層がパッケージ用積層体に良好なコスト効率をもたらさない。更に、コーティングされた層は、無機粒子がガスバリア組成物内にどの程度の量で含まれるかに応じて、6g/mを超える厚みにおいては極めて脆くなる。3〜5g/mによって比較的好ましい程度の酸素バリアが達成され、3〜4g/mによってバリア特性とコストとの最も好ましいバランスが達成される。
【0052】
本発明の好ましい実施例によると、酸素ガスバリア層は、中間に乾燥ステップを含む2つの連続したステップによって、2つの部分的な層として適用される。2つの部分層として適用される場合には、各層は、1.0〜3.0g/m、より好ましくは1.5〜2.0g/mの量で適用され、比較的少ない量の液体ガスバリア組成物によって全体として高品質の層が可能になる。
【0053】
本発明によれば、酸素ガスバリア層は、直にすなわち紙又は板紙からなるコア層に隣接すなわち連続させてコーティングされて適用されるのが好ましい。前記の紙からなる層は、積層されたパッケージ用材料を通って外部を浸透する水分が水分感応液体膜をコーティングされた酸素ガスバリア層内にトラップされないが紙からなる層を介して包装容器の外側へ更に移動せしめられるのを確保する。この紙からなる層は、呼吸することによって水分を隣接しているバリア層から逃がしてバリア層内の水分を長期間に亘ってほぼ一定の低いレベルに保つ。
【0054】
本発明において使用するための紙又は板紙からなるコア層は、通常は、厚みが約100μm〜約600μmであり且つ表面重量が約100〜500g/m好ましくは200〜300g/mであり且つ適切な包装特性の一般的な紙又は板紙からなる。
【0055】
液体食品の低コストの無菌の長期保存パッケージのためには、比較的薄いコア層を備えている比較的薄いパッケージ用積層体が使用される。このようなパッケージ用積層体によって作られた包装容器は、折り曲げて形成されず且つ枕形状の可撓性のポーチに比較的似ている。このようなポーチ型のパッケージに適した紙の面重量は、通常は、約50〜約140g/m好ましくは約70〜120g/m更に好ましくは70〜約110g/mである。
【0056】
本発明による水蒸気バリア層に適したポリオレフィン系マトリックス重合体は、高密度ポリオレフィン(HDPE)に基づくか、高密度ポリオレフィンを含むか、好ましくは高密度ポリオレフィンからなるものである。他の必要とされるパッケージ特性と組み合わせた任意の水蒸気バリア特性は、HDPE及びマトリックス重合体内に均一に分散せしめられた無機充填材粒子とからなるマトリックス組成物を使用すると得ることができる。しかしながら、このようなポリエチレン(LDPE,MDPE)及びポリプロピレン(PP)のような他のポリオレフィン並びにその共重合体又は混合物もまた、本発明の範囲内に含まれる好適なマトリックス重合体である。しかしながら、本発明によると、該マトリックス重合体は主としてHDPEを含むか又はHDPEを基材とすることが好ましい。該マトリックス重合体はHDPEからなるのが最も好ましい。
【0057】
本発明に従って使用される無機充填材は、可能な最良の水蒸気バリア特性を付与するためには、形状及び構造が層状であるのが好ましい。このような層状の充填材粒子の例としては、タルカム、マイカ、及びナノサイズの粘土粒子、例えば、モンモリロナイト、スメクタイト、ベントナイト等がある。層状のタルカム粒子が最も好ましい。しかしながら、カオリン、炭化カルシウム、ドロマイト、及びその他のものもまた、多量(50重量%より多いのが好ましい)に使用される場合には十分良好に機能する。
【0058】
水蒸気バリア層の厚みは、15〜30μm好ましくは15〜25μm最も好ましくはμmg/mであるのが有利である。
【0059】
本発明の代替的な実施例によると、ポリオレフィン系マトリックス及び無機充填材粒子を含んでいる水蒸気バリア層は、マイクロ多層同時押出技術によって同時押出成形され、充填されたポリオレフィンより堅牢性又は衝撃吸収性が高く、その結果、該水蒸気バリア層が充填されたポリオレフィンと堅牢性又は衝撃吸収性の重合体との幾つかの薄い交互の層からなるようにされる。このようにして、充填されたポリオレフィンの層の両方の水蒸気バリア特性が維持され、一方、衝撃吸収性の交互の層もまた、同時押出成形された膜に何らかの堅牢性を付与する。このように、充填されたポリオレフィンからなる層の本質的な脆さが、交互の衝撃吸収性重合体によって付与された衝撃吸収特性によって補償される。このような比較的堅牢な重合体は、LLDPE重合体から見つけることができ、衝撃吸収性重合体は、m−LLDPE(メタロセン−触媒によって重合された直鎖状低密度ポリエチレン)、VLDPE(超低密度ポリエチレン)、ULDPE(超極低密度ポリエチレン)、並びに溶融押出成形可能な等級のエラストマ、プラストマ、及びTPE(熱可塑性エラストマ)からなる群から選択される。
【0060】
マイクロ多層同時押出成形技術においては、いわゆる多層給送ブロックが使用される。該多層給送ブロックは、2つの異なる重合体の流れを多数のマイクロメータの薄い交互の層に分割して薄い交互の重合体からなる層の膜を形成する。このようにする際に、2つの異なる重合体を含む膜は、特別に調製され且つ層の厚み及び所望の特性に関して最適化される。マイクロ多層同時押出整形された水蒸気バリア膜の厚みは10〜20μmであるのが適切である。
【0061】
必要とされる場合にパッケージ用積層体の光バリア特性を増大させるためには、黒又は光吸収性色素を重合体のうちの一つに混ぜ、一方、白又は光反射性色素をマイクロ多層同時押出成形される層の別の重合体内に混ぜる。このようにして、予め製造されたマイクロ多層膜はグレーがかった外観を得る。
【0062】
最も外側及び最も内側の熱シール可能な液密層用の適切な熱可塑性樹脂は、ポリオレフィン、好ましくはポリエチレン、最も好ましくは低密度ポリエチレン、例えば、LDPE、直鎖状LDPE(LLDPE)若しくは単一サイト触媒メタロセンポリエチレン(m−LLDPE)、又はこれらの共重合体若しくは混合物である。該最も内側の熱シール可能なポリオレフィンからなる層の厚みは10〜30μmである。
【0063】
水蒸気バリア層は、紙又は板紙からなる層に、中間の熱可塑性重合体からなる層によって結合される。該中間の熱可塑性重合体は、ポリオレフィン及びポリオレフィン系接着性重合体、特にLDPE又はポリエチレン系接着性重合体から選択される。該中間の熱可塑性接合層の厚みは、10〜20好ましくは12〜15μmであるのが好ましい。
【0064】
必要とされる場合に、本発明によるパッケージ用重合体の光バリア特性を更に改良するためには、光吸収性粒子又は色素が前記の中間の熱可塑性接合層内に混ぜられる。このような光吸収性粒子の好ましい例は“カーボンブラック”である。前記中間接合層の黒色は、板紙からなる層によって外側が隠され且つ積層体の内側が水蒸気バリア層よって覆われるのが有利である。
【0065】
代替的な好ましい実施例によると、中間の熱可塑性接合層は、パッケージ用積層体の光バリア特性を改良するために、代替的に又は付加的に光反射性の白色色素を含んでいる。
【0066】
本発明の更に別の特徴に従って、本発明によるパッケージ用積層体によって製造された長期保存無菌包装に適した包装容器が提供される。この包装容器は、酸素及び水蒸気の遅い浸透速度、パッケージの完全性、及び積層体層間の内部接合性のような特性を備えており、これらの特性は、添付の特許請求の範囲の請求項19に記載されており、市販によって入手可能な従来のアルミニウム箔からなる包装容器の特性に匹敵するものである。本発明の更に別の特徴に従って、特許請求の範囲の請求項13〜18に規定されているパッケージ用積層体の製造方法が提供される。
【0067】
該方法は、紙又は板紙からなる層を用意するステップと、水性又は溶媒性の液体媒体内に分散せしめられるか又は溶解された重合体バインダを含んでおり更に無機粒子が分散せしめられて含まれている液体ガスバリア組成物を用意するステップと、前記紙又は板紙からなる層の第一の側の面に前記液体組成物を膜としてコーティングし、これに続いて乾燥させて前記液体を蒸発させることによって、前記重合体バインダと無機粒子とを含む薄い酸素ガスバリア層を形成するステップと、ポリオレフィン系重合体マトリックスを含み且つ無機充填材粒子が内部に分散せしめられている溶融加工可能な重合体組成物を用意するステップと、溶融押出法を使用して、溶融加工可能な重合体組成物によって水蒸気バリア層を提供するステップと、前記押出成形された水蒸気バリア層を前記酸素ガスバリア層の内側の面上に積層させるステップと、熱シール可能なポリオレフィンからなる最も内側の層を前記水蒸気バリア層の内側の面上に付与するステップと、熱シール可能なポリオレフィンからなる最も外側の層を前記コア層上に付与するステップと、からなる。
【0068】
本発明の好ましい方法においては、液体ガスバリア組成物は、前記の紙又は板紙からなる層の内側の面上に直にコーティングされる。包装された食品は液体であるか又は液体を含有しているので、積層体を通って内側から外側へと移動する水蒸気のコンスタントな移動が存在し、このことが、水蒸気を液体膜コーティングされた層を通して外部へ逃がし且つ紙からなる層を通して比較的迅速に外部へ逃げさせることがより良好であることに対する理由である。紙からなる層が重合体からなる層によってコーティングされる場合には、水蒸気は、紙からなる層の内側に長期間に亘って保持され且つトラップされて液体膜コーティングされたバリア層内の相対湿度を上昇させる。従って、液体膜コーティングされた層は紙からなる層に直に隣接しているのが好ましい。
【0069】
本発明の好ましい方法によると、酸素ガスバリア層は、乾燥重量で0.5〜6g/m好ましくは3〜5g/m更に好ましくは3〜4g/mのトータル量で適用される。本発明の更に好ましい方法によると、酸素ガスバリア層は、中間に乾燥ステップを含む2つの連続するステップによって2つの部分層として適用される。2つの部分層として適用される場合には、各層は、1.0〜3.0g/m好ましくは1.5〜2g/mの量で適用される。
【0070】
一つの実施例によると、溶融加工可能な重合体組成物からなる水蒸気バリア層は、板紙上に押出コーティング又は同時押出コーティングすることによって、酸素ガスバリア層の内側の面上に提供され且つ積層される。
【0071】
本発明の代替的な実施例によると、溶融加工可能な重合体組成物からなる水蒸気バリア層は、押出又は同時押出による注型法又は吹出成型法によって膜を提供し、これに続いて該膜を中間の熱可塑性接合層と共に押出積層することによって前記酸素ガスバリア層の内側の面上に積層させることによって付与される。
【0072】
本発明の更に別の代替的な実施例によると、上記方法は更に、適用された酸素ガスバリア層上に中間の重合体接合層を液体膜コーティングし且つ液体を蒸発させることによって乾燥させるステップと、押出又は同時押出による注型法又は吹出成型法によって溶融加工可能な重合体組成物から水蒸気バリア膜を提供し、次いで該膜を前記中間の重合体接合層に熱加圧積層することによって酸素ガスバリア層の内側の面上に前記膜を積層するステップを含んでいる。該中間の接合層の重合体は、熱可塑性接合重合体又は硬化接着性重合体例えばEB−硬化接着性重合体とすることができる。
【0073】
このような予め製造された膜は、別の方法として、上記したマイクロ多層同時押出技術によって製造しても良い。
【0074】
本発明の好ましい実施例によると、熱シール可能なポリオレフィンからなる最も内側の層は、(同時−)押出コーティングによって水蒸気バリア層の内側に付与される。該最も内側の熱シール可能な材料は、意図した熱シールプロセスに適合させるために、各々が同じか又は異なるポリオレフィン好ましくは低密度ポリエチレンからなる2以上の部分層に分割される。別の方法として、熱シール可能なポリオレフィンからなる最も内側の層は、同じステップにおいて水蒸気バリア層と一緒に同時押出によって形成されることによって、水蒸気バリア層の内側に付与される。
【0075】
一つの合理的な代替的実施例によると、中間の接合層、水蒸気バリア層、及び最も内側の熱シール層を含む全ての熱可塑性の内側層は、液体膜コーティングされた板紙上に同時押出コーティングされる。
【0076】
水蒸気バリア層は、ポリオレフィン及びポリオレフィン系の接着性重合体から選択された中間の熱可塑性重合体の層によって、バリアコーティングされた紙又は板紙からなる層に接合される。
【0077】
加熱押圧積層を含む代替的な方法のためには、中間の液体膜コーティングされた接合層は、接着性重合体、例えば、ポリオレフィン系共重合体又は(メタ)アクリル酸若しくはマレイン酸単量体とのグラフト重合体であるのが有利である。
【0078】
従って、本発明の方法は更に、水蒸気バリア層を酸素ガスバリア層の内側の面上に、中間の熱可塑性接合層によって押出積層するステップを含んでいる。液体膜コーティングされた酸素バリア層の酸素バリア性能は、熱可塑性重合体からなる隣接の層によってコーティングされるか又は該隣接の層に積層される場合に著しく改良され、このような層はまた、パッケージ用積層体の高いトータルの乱用抵抗に寄与する。このような中間の熱可塑性接合層は、ポリオレフィン及びポリオレフィン系重合体の中から選択するのが好ましい。該中間の熱可塑性接合層は、一般的なLDPEであるのが有利である。
【図面の簡単な説明】
【0079】
以下において、本発明の好ましい実施例を図面を参照しつつ説明する。
【図1a】図1aは、本発明に従って製造されたパッケージ用積層体の択一的な実施例を断面図で示している概略図である。
【図1b】図1bは、本発明に従って製造されたパッケージ用積層体の択一的な実施例を断面図で示している概略図である。
【図1c】図1cは、本発明に従って製造されたパッケージ用積層体の択一的な実施例を断面図で示している概略図である。
【図1d】図1dは、本発明に従って製造されたパッケージ用積層体の択一的な実施例を断面図で示している概略図である。
【図2−1】図2−1は、図1aに示されているパッケージ用積層体を製造する方法を示している図である。
【図2a】図2aは、図1bに示されているパッケージ用積層体を製造する方法を示している図である。
【図2b】図2bは、図1cに示されているパッケージ用積層体を製造する方法を示している図である。
【図2c】図2cは、図1dに示されているパッケージ用積層体を製造する方法を示している図である。
【図3a】図3aは、本発明によるパッケージ用積層体によって製造された包装容器の例を示している図である。
【図3b】図3bは、本発明によるパッケージ用積層体によって製造された包装容器の例を示している図である。
【図4】図4は、包装容器が、連続してなされる充填及び密封プロセスによってパッケージ用積層体から製造される方法の原理を示している図である。
【実施例】
【0080】
図1aには、本発明によって製造された一般的な環境条件下で殺菌包装し且つ長期保存するためのパッケージ用積層体10aの第一の実施例が断面図で示されている。該積層体は、320mNの曲げ力を有している板紙からなるコア層11と、コア層11上に液体ガスバリア組成物からなる液体膜をコーティングし次いで乾燥して形成した薄い酸素ガスバリア層12とを有している。該酸素ガスバリア組成物は、PVOHと無機層状粒子特に乾燥重量基準で30重量%の薄片状のベントナイトクレイの分散物との水溶液を含んでいる。従って、該コーティングされた層は、乾燥後には、PVOHの連続相内に薄片状又は層状の粒子が層形態で分布せしめられたPVOHからなる。該パッケージ用積層体は更に、前記の適用された酸素ガスバリア層12と最も内側の熱シール可能なポリオレフィン層15との間に配置された水蒸気バリア層14を備えており、該水蒸気バリア層14は、ポリオレフィン系マトリックス重合体と、該マトリックス重合体内に分散せしめられた無機充填材粒子とを備えている。水蒸気バリア層14は、液体膜をコーティングされたコア層11〜12に積層されている。この積層は、無機充填材粒子を備えている高密度ポリエチレン(HDPE)組成物であるポリオレフィン系重合体マトリックス組成物を直接押出か同時押出によるコーティングによってなされる。層14は、接着性のポリオフレイン系重合体(図示せず)からなる中間結合層と一緒にコア層上に同時押出コーティングされる。ポリオフレインからなる外側の液密で熱シール可能な層16がコア層11の外側の面に適用される。コア層の外側の面は、該パッケージ用積層体によって作られた包装容器の外側に面するように向けられる。外側の層16のポリオレフィンは、熱シール特性を有する一般的な低密度ポリエチレン(LDPE)である。最も内側の液密で熱シール可能な層15は、該パッケージ用積層体によって作られている包装容器の内側に面している水蒸気バリア層14の内側に配置されており、層15は包装された製品と接触する状態となる。最も内側の熱シール可能な層は、LDPEと直鎖状低密度ポリエチレン(LLPDE)とからなるのが好ましい。該直鎖状低密度ポリエチレンは、エチレンモノマーをC4〜C8より好ましくはC6〜C8のアルファ−オレフィンアルキレンモノマーとメタロセン触媒すなわち所謂メタロセン−LLDPE(m−LLDPE)存在下で重合させることによって作られる。この最も内側の熱シール可能な層15は、同種又は異種のLDPE’s、(m)−LLDPE又はこれらの混合物からなる2つ又は幾つかの部分層からなり且つ引き続いて行なわれる同時押出コーティングステップにおいて水蒸気バリア層14と共に同時押出コーティングされるか又は水蒸気バリア層14上に押出コーティングされる。熱シール可能な層15の秤量厚みは、約15g/mである。水蒸気バリア層の厚みは約20g/mであるのが好ましい。中間接着層の厚みは10〜15g/mあるのが好ましい。
【0081】
図1bは、図1aに示されているものと類似のパッケージ用積層体10bを示しており、両者の相異点は、水蒸気バリア層14がポリオレフィン系マトリックス重合体と、該マトリックス重合体内に分散せしめられた無機充填材粒子とを含んでおり、該水蒸気バリア層が、酸素バリアコーティングされている板紙からなる層に積層された予め調製された膜の一部分である点である。水蒸気バリア層14は、多層膜14〜15をもたらす同時押出膜吹出成型法又は同時押出膜注型法のような溶融同時押出プロセスによって、最も内側の熱シール可能な層15と一緒に予め調製される。多層膜14〜15は、次いで、ポリオレフィン系重合体好ましくは低密度ポリエチレン(LDPE)からなる中間層13によって、液体膜をコーティングされたバリア層12に積層される。従って、中間接合層13は、酸素バリアコーティングされたコア層11〜12と水蒸気バリア熱シール膜14〜15とを相互に押出し積層させることによって作られる。中間接合層の厚みは10〜20μmであるのが好ましく、水蒸気バリア熱シール膜の厚みは15〜35μmであるのが好ましい。
【0082】
図1cは、図1bに示されているものと類似のパッケージ用積層体10cを示している。すなわち、ポリオレフィン系マトリックス重合体と、該マトリックス重合体内に分散せしめられている無機充填材粒子とを含んでいる蒸気バリア層14は、酸素バリアコーティングされた板紙層に積層されている予め調製された膜である。図1bに示されているものとの相異点は、水蒸気バリア層14が、膜14をもたらす例えば押出膜吹出成型法又は同時押出膜注型法のような溶融押出プロセスによって単一層の膜として予め調製される点である。膜14は、ポリオレフィン系重合体好ましくは低密度ポリエチレン(LDPE)からなる中間層13によって液体膜コーティングされたバリア層12上に積層される。従って、中間の接合層13は、酸素バリアをコーティングされたコア層11〜12と水蒸気バリア膜14とを相互に押出し積層することによって形成される。続いて、熱シール可能の重合体層15が、水蒸気バリア層14の内側の面上に押出コーティングされる。熱シール可能な層15の秤量厚みは約15g/mである。水蒸気バリア層の厚みは、約20g/mであるのが好ましい。中間接合層の厚みは10〜15g/mであるのが好ましい。
【0083】
図1dは、図1に示されているものと類似のパッケージ用積層体10dを示しているが、ここでは、蒸気バリア層の予め調製されている膜14は、無機充填材を備えているポリウレタン系マトリックス重合体(14−1)と、比較的堅牢であるか又は衝撃吸収性が比較的高い重合体からなる層(14−2)とからなる多数のマイクロメータ薄さの交互の層、例えば、LLDPE、m−LLDPE、VLDPE、又はULDPEからなる層とを含んでいる。マイクロ−多層膜14は、ポリウレタン系重合体好ましくは低密度ポリエチレン(LDPE)からなる中間層13によって、液体膜をコーティングされたバリア層12上に積層される。従って、中間接合層13は、酸素バリアコーティングされたコア層11〜12と、水蒸気バリア膜14とを相互に押出積層することによって形成される。水蒸気バリア膜14の内側の面上には、熱シール可能な重合体好ましくはLDPEからなる最も内側の層15が同時押出コーティングされている。
【0084】
図2−1には、図1a、1b、1c及び1dのパッケージ用積層体内の層11及び12に関して示されている、紙又は板紙からなる層上に液体酸素バリア組成物を液体膜コーティングする方法が概略的に示されている。紙からなる層21aが、貯蔵リールから液体膜コーティングステーション22aへと給送され、該ステーションにおいては、コーティングされた紙が乾燥ステーション22bを通過するとコーティングされ且つ乾燥された層の量が約1〜6g/mとなるような量で、液体ガスバリア組成物が適用される。一つの好ましい実施例よれば、液体膜コーティング動作は、2つのステップ、すなわち1.0〜3.0g/mの量で最初にコーティングし、中間ステップにおいて乾燥させ、次いで二回目に1.0〜3.0g/mの量でコーティングし、最後に、液体膜をコーティングされた層全体を乾燥させることによって行われ、酸素バリアコーティングされた紙の層21bが得られる。
【0085】
図2aには、図1aのパッケージ用積層体10aの製造のための積層プロセス20aが示されており、該プロセスにおいては、酸素バリアコーティングされた層21bは多層溶融された膜24に直に同時押出されており、相互に隣接している層21bと水蒸気バリア層14とを接合させるための結合層が含まれている。水蒸気バリア層14は、HDPEであるポリオレフィン系マトリクス重合体と、該マトリックス重合体内に分散せしめられているタルカムである無機充填材粒子とを含んでいる。これに続く押出コーティングステップ26においては、低密度ポリエチレンからなる最も内側の液密で熱シール可能な層15が、水蒸気バリア層14上に更に押出コーティングされる。最も内側の層15は、フィードブロック26−2内を給送され且つローラーのニップステーション26−1において水蒸気バリア層14上に溶融カーテン膜26−3として適用される。別の方法として、最も内側の熱シール可能な層の押出コーティングは、水蒸気バリア層14と一緒に行われ、これによって、多層溶融膜24aもまた同時押出された最も内側の液密で熱シール可能な層15を水蒸気バリア層14の内側面上に有している。従って、図示された押出コーティングステーション26−1は省略されている。これに続いて、積層された紙及び膜は、第二の押出器のフィードブロック27−2と積層ニップ27−1を通過し、この場合に、LDPE16の最も内側の熱シール可能な層は、紙からなる層の外側面上にコーティングされる。最後に完成されたパッケージ用積層体28aは、貯蔵用リール(図示せず)に巻き付けられる。
【0086】
図2bには、図1bのパッケージ用積層体10bの製造のための積層プロセス20bが示されている。該積層プロセスにおいては、酸素バリアコーティングされたコア層21bが予め調製された多層重合体膜23b上に積層され、該多層重合体からなる膜23bは、ポリオレフィン系重合体好ましくはHDPEからなる水蒸気バリア層14を含んでおり、LDPE24bからなる中間接合層を押出ステーション24から押出し且つローラーのニップ25内で相互に押し付けることによって内部に無機粒子が分散せしめられる。予め調製された重合体からなる膜23bは更に、完成された包装容器の内面へと導かれる水蒸気バリア膜14の内側面上に配置される最も内側の液密な熱シール可能な層15と、同時押出膜吹出成形法又は同時押出膜注型法によって相互に同時押出溶融処理された2つの層14及び15を備えている。これに続いて、積層された紙からなるコア11〜12と多層膜14〜15とは、第二の押出フィードブロック27−2と積層ニップ27−1とを通過し、ここで、LDPEからなる最も外側の熱シール可能な層16;27−3が、紙からなる層の外側面上にコーティングされる。最後に、完成されたパッケージ用積層体28bは貯蔵用リール(図示せず)に巻き付けられる。
【0087】
図2cには、図1のパッケージ用積層体10cを製造するための積層プロセス20cが示されており、該プロセス20cは、最も内側の液密で熱シール可能な層15が別のステップにおいて予め調製され且つ積層された重合体の膜23c上に押出コーティングされる以外は、上記の図2bに示されている積層プロセスと同じである。従って、酸素バリアコーティングされた層21bは重合体の膜23cに積層されており、重合体の膜23cはポリオレフィン系重合体好ましくはHDPEの層からなり、LDPE24b(又は24c)からなる中間接合層を押出ステーション24から押出し且つローラーのニップ25内で相互に押し付けることによって内部に無機粒子が分散せしめられる。これに続いて、積層された紙と膜とは、第二の押出器のフィードブロック26−2と積層ニップ26−1とを通過し、ここで、最も内側の熱シール可能な層15;26−3が、積層体の膜側の面23上にコーティングされる。最後に、積層された紙と膜とが第三の押出機のフィードブロック27−2と積層ニップ27−1を通過し、ここでLDPEからなる最も外側の熱シール可能な層16;27−3が紙からなる層の外側にコーティングされる。完成されたパッケージ用積層体28cは貯蔵用リール(図示せず)に巻き付けられる。
【0088】
代替的な積層体1dの製造のためには、図2cに示されているものと同じ積層プロセスが使用される。相異点は、予め調製された膜14が、図1dに関連させて上記したマイクロ多層同時押出技術によって作られた膜である点である。
【0089】
図3aは、本発明によるパッケージ用積層体10(a,b,c)によって作られた包装容器30aの好ましい例を示している。この包装容器は特に、飲料、ソース、スープ等に適している。典型的には、このようなパッケージの容積は約100〜1000mlである。該パッケージは如何なる形状であっても良いが、各々、長手方向シール31と横方向シール32とを有しており、任意に開口具33を備えているブリック形状であるのが好ましい。別の実施例(図示せず)においては、該包装容器は楔のような形状とされても良い。このような“楔形状”を得るためには、パッケージの底部のみが折り曲げ形成されて、パッケージの横方向熱シールがパッケージ底部に対して折り曲げられ且つシールされる三角形の隅部の垂れ蓋の下に隠れるようにされる。頂部の横方向シールは折り曲げられない状態のままである。このようにして、半折り畳み包装容器は、食品店の棚上に置かれるか又はテーブルなどの上に置かれたときでも依然として取り扱いが容易で且つ形状が安定している。
【0090】
図3bは、比較的薄い紙からなるコア層を有している本発明によるパッケージ用積層体10’(a,b,c)によって作られた包装容器30bの代替的な好ましい例を示している。パッケージ用積層体10’は比較的薄い紙からなるコア層を有することによって比較的薄いので、平行六面体又は楔形状の包装容器を形成するのに十分な寸法安定性を有しておらず且つ横方向シール32bの後に折り曲げられない。従って、枕形状のポーチのような容器のままであり、このような形状で配送され且つ販売されている。
【0091】
図4は、本願明細書の導入部分に記載されている原理、すなわち、パッケージ材料が重ねられ且つ結合部43において相互に結合されているウェブの長手方向端縁42,42’によってチュ−ブ41状に形成されている。このチューブには意図されている液体食品が充填され44且つ該チューブはチューブ内に充填されている内容物の液面より下方で相対的に所定距離のところでチュ−ブの繰り返される横方向シール45によって個々のパッケージに分割される。パッケージ46は、横方向シール内の刻み目によって分割され且つ材料に設けられている折り目線に沿った折り曲げ加工によって所望の幾何学的構造を付与される。
【0092】
例1
間に乾燥過程を挟む2つの連続するステップによって、溶解され且つ分散せしめられたPVOHと乾燥質量で計算して30重量%のベントナイト粘土との水性ガスバリア組成物からなる2×1g/mの液体膜コーティングによって、Froviによる320mN CLC/C板紙上にパッケージ用積層体を形成した。
【0093】
水性ガスバリア組成物の調製:約50〜5000の縦横比を有する薄片状に剥離した層状のモンモリロナイト粒子(Kunimine工業株式会社からのKunipia F)の約5〜15重量%の水性分散液を、約10重量%のPVOH(99%を超える鹸化度を有しているMowiol 15〜99)と、1〜8時間に亘って60〜90℃で混ぜ合わせる。薄片状に剥離された層状の鉱物粒子の分散液は安定化添加物によって安定化させることができる。別の方法として、層状の鉱物粒子を、60〜90℃で1〜8時間に亘って、PVOH溶液内で直接薄片状に剥離する。
【0094】
次いで、湿潤適用されたコーティングを100〜150℃のウェブ表面温度で乾燥させる。
【0095】
このようにして、適用したガスバリア層の内側の面上に、粒子の95%が5.5mより小さく且つ粒子の50%が2.2mより小さくなるような粒子サイズ分布を有するタルカム粒子を30重量%の量で含み且つ厚みが約20g/mであるHDPEの層を積層する。充填されたHDPE層は、厚みが15g/mの一般的なLDPEからなる中間積層層と一緒に同時押出することによって酸素バリアコーティングされた板紙に積層する。
【0096】
比較のために、充填されたHDPE層を備えておらず且つ各々の厚みが15g/mである一般的なLDPEの2つの層のみを有する対応する積層体を調製する。
【0097】
更に比較するために、各々、LDPEと充填されたHDPEとからなる同じ内側層を備えているが、液体膜がコーティングされたPVOHからなる酸素バリア層を備えていない対応する積層体を調製する。
【0098】
各々の積層体の水蒸気バリア特性は、自動化された秤量装置であるGravitest 6300装置(スイスのGINTRONIC製)によって重量損失を測定することによって判定した。この判定はDIN 53122及びASTM E96/80の標準に従って23℃で50%RH(相対湿度)において6週間続けた。得られた値は1日当たりのg/mで表わされている。
【0099】
一般的な水蒸気透過法によって測定されない理由は、このような方法は、十分に正確ではなく且つ積層体サンプルをPermatran WVTR装置内に間違った方向で配置しなければならないからである。積層体内への水蒸気の浸透は積層体内で逆方向に発生し、従って、このような測定方法は、包装容器内で使用されている積層体の現実を良好に反映しない。
【0100】
従って、Gravitest 6300によって得られた測定結果は、より現実性があり、±0.1mgの精度の値をもたらした。

【0101】
積層されて層状に重ねられた構造のバリア特性を求める際に、各層(Barr 1,Barr 2,…Barr i)が積層全体のトータルのバリア値(Barr Σ1-i)に与えるバリア寄与量は、下の式によって関係付けられる。
1/Barr Σ1-i = 1/Barr 1 + Barr 2 + ---- + 1/Barr i
【0102】
従って、PVOHのLFC層とベントナイト無機粒子と内側へ向かう一般的なLDPE層とを備えた構造を有する積層体に対するトータルの水蒸気バリア値と、LDPEからなる内側層のみを有する構造の値とを式に挿入することによって、該積層体の残りの部分(すなわち、PVOH層)の計算されたWVバリア値は0.66である。
1/Total WL = 1/PVOH + bWL + 1/2 × LDPE WL 及び
1/0.49 = 1/PVOHLOPE + 1/1.88
→ PVOHLOPE = 0.66
【0103】
上記の代わりに、PVOHからなるLFC層とベントナイト無機粒子と、内側に向かう充填されたHDPE層とを備えている構造を有している積層体のトータルの水蒸気バリア値と、充填されたHDPE内側層のみを有する構造の値とを挿入すると、該積層体の残りの部分(即ち、PVOH層)の計算されたWVバリア値は0.39である。
1/Total WL = 1/PVOH + bWL + 1/(LDPE + 充填HDPE) WL
1/0.23 = 1/PVOHf-LOPE + 1/0.55
→ PVOHf-LOPE = 0.39
【0104】
この水蒸気バリア値は、予想よりもはるかに小さく、実際のところ、LDPE内側層を備えている構造と比較すると40%改良された。
【0105】
更に、驚くべきことには、酸素バリア特性は、液体食品を充填されたパッケージの長期保存に十分な程度まで改良されている。
【0106】
より厚いガスバリア組成物の層をコーティングすることによってガスバリア特性を若干更に増大させること、又はPVOH層に更に多い量の無機粒子を充填することが可能である。また、より厚く且つ更に稠密に充填したガスバリア層組成物をコーティングすることによって、臭気バリア特性において更に大きな特性の増大もある。このようなバリア組成物の優れた例は、PVOHからなり且つ10〜60重量%好ましくは20〜55重量%更に好ましくは30〜50%のタルカム粒子を含んでいる。
【0107】
本発明は、図示され且つ上に説明された実施例に限定されず、特許請求の範囲の範囲内で変更することができる。
【0108】
条項
A)本発明よるパッケージ用積層体(10a;10b)を製造する方法であり、
−紙又は板紙からなる層(21a)を用意するステップと、
−水性又は溶媒性の液体媒体内に分散せしめられるか又は溶解された重合体バインダを含んでおり更に無機粒子が分散せしめられて含まれている液体ガスバリア組成物を用意するステップと、
−前記紙又は板紙からなる層の第一の側の面に前記液体組成物を膜としてコーティング(22a)し、これに続いて乾燥させて(22b)前記液体を蒸発させることによって、前記重合体バインダと無機粒子とを含む薄い酸素ガスバリア層を形成するステップと、
−ポリオレフィン系重合体マトリックスを含み且つ無機充填材粒子が内部に分散せしめられている溶融加工可能な重合体組成物を用意するステップと、
−溶融押出法を使用して、溶融加工可能な重合体組成物によって水蒸気バリア層(24a;23b;23c)を提供するステップと、
−前記溶融加工可能な組成物による前記溶融押出された水蒸気バリア層(24a;23b;23c)を前記酸素ガスバリア層(21b)の内側の面上に積層させるステップと、
−熱シール可能なポリオレフィンの最も内側の層(15)を前記水蒸気バリア層(24a;23b;23c)の内側の面上に付与するステップと、
−熱シール可能なポリオレフィンからなる最も外側の層(16)をコア層(11)上に付与するステップと、からなることを特徴とする方法。
【0109】
B)項Aによる方法であり、前記酸素ガスバリア層(12)が紙又は板紙からなるコア層(11)の内側の面上に直にコーティングされる方法。
【0110】
C)項A又はBのうちのいずれかによる方法であり、前記液体組成物内に含まれている酸素ガスバリア重合体が、PVOH、水分散性EVOH、デンプン、デンプン誘導体、及びこれらのうちの2以上の組合せからなる群から選択されたものである、方法。
【0111】
D)項A、B又はCによる方法であり、前記酸素ガスバリア層(12)が、中間に乾燥を伴う2以上の連続するステップにおいて2以上の部分層として、各々1〜3g/mの量、好ましくは各々1.5〜2g/mの量で適用される方法。
【0112】
E)項A,B,C,又はDのうちのいずれかによる方法であり、適用された酸素ガスバリア層(12)上に中間熱組成接合層(13’)を液体コーティングし且つ液体を蒸発させることによって乾燥させるステップと、押出又は同時押出の注型法又は吹出成形法を使用して、溶融加工可能な重合体組成物によって水蒸気バリア膜(14,14−15;23b,23c)を付与し、中間熱組成接合層(13’)に熱加圧積層することによって該膜を前記酸素ガスバリア層(21b)の内側の面上に積層させるステップと、を更に含む方法。
【0113】
F)項A,B,C,D,又はEのうちのいずれかによる方法であり、熱シール可能なポリオレフィンからなる最も内側の層が、(同時−)押出コーティングを使用して、水蒸気バリア層(24a;23c)の内側の面上に付与される方法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体食品の長期保存包装に適したバリア特性を備えた非フォイル型パッケージ用積層体(10a,10b)であって、紙又は板紙からなるコア層(11,11’)と、第一の最も外側の液密で熱シール可能なポリオレフィンからなる層(16)と、前記紙又は板紙からなるコア層の内側に適用された前記第二の最も内側の液密で熱シール可能なポリオレフィンからなる層(15)と、液体ガスバリア組成物を液体膜コーティングされ且つそれに続いて乾燥されることによって形成される酸素ガスバリア層(12)とを備え、前記液体組成物は、ガスバリア特性を付与し且つ水性又は溶液型媒体内に分散又は溶解されている重合体バインダを含んでいる前記積層体であり、
前記ガスバリア層(12)が更に前記重合体バインダ内に分散せしめられた無機粒子を含んでおり、
該積層体は、前記適用された酸素ガスバリア層(12)と前記最も内側の液密で熱シール可能なポリオレフィンからなる層(15)との間に配置された水蒸気バリア層(14)を更に備えており、該水蒸気バリア層(14)は、ポリオレフィン系マトリックス重合体と該マトリックス重合体内に分散せしめられた無機充填材粒子とを含んでいる、ことを特徴とする積層体。
【請求項2】
前記重合体バインダが、PVOH、水分散性EVOH、デンプン、デンプン誘導体、及びこれらのうちの2以上の組合せからなる群から選択されたものである、ことを特徴とする請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記液体ガスバリア組成物内に含まれている前記無機粒子が層状であるか又は薄片状である、ことを特徴とする請求項1〜2のうちのいずれか一の項に記載の積層体。
【請求項4】
前記液体ガスバリア組成物内に含まれている無機粒子が、主として、縦横比が50〜5000である層状のナノサイズの粘土粒子からなる、ことを特徴とする請求項3に記載の積層体。
【請求項5】
前記液体ガスバリア組成物内に含まれている無機粒子が、主として、縦横比が10〜500である層状のタルカム粒子からなる、ことを特徴とする請求項3に記載の積層体。
【請求項6】
前記酸素ガスバリア層(12)が、全量で0.5〜6g/m、好ましくは3〜5g/m、更に好ましくは3〜4g/mの乾燥重量で適用されている、ことを特徴とする請求項1〜5のうちのいずれか一の項に記載の積層体。
【請求項7】
前記酸素ガスバリア層(12)が前記紙又は板紙のコア層上に直に隣接して適用されている、ことを特徴とする請求項1〜6のうちのいずれか一の項に記載の積層体。
【請求項8】
前記マトリックス重合体が主として高密度ポリエチレン(HDPE)からなる、ことを特徴とする請求項1〜7のうちのいずれか一の項に記載の積層体。
【請求項9】
前記ポリオレフィン系マトリックス重合体内に含まれている前記無機充填材粒子が薄片形状とされているか又は層状構造を有している、ことを特徴とする請求項1〜8のうちのいずれか一の項に記載の積層体。
【請求項10】
前記ポリオレフィン系マトリックス重合体内に含まれている前記無機充填材粒子が、タルカム、マイカ、及び薄片状のナノサイズ粒子から選択されたものである、ことを特徴とする請求項1〜9のうちのいずれか一の項に記載の積層体。
【請求項11】
前記水蒸気バリア層(14)が、無機粒子を含んでいるポリオレフィン系マトリックス重合体からなる多数の交互のマイクロメータレベルの薄い層(14−1)と、LLDPE、m−LLDPE、VLDPE、エラストマ、及びプラストマからなる群から選択された堅牢な衝撃吸収性重合体の層(14−2)と、を含んでいる、ことを特徴とする請求項1〜10のうちのいずれか一の項に記載の積層体。
【請求項12】
前記水蒸気バリア層(14)が、ポリオレフィン及びポリオレフィン系接着剤重合体から選択された中間の熱可塑性重合体層(13)によって、前記のバリアがコーティングされている紙又は板紙からなる層に接合されている、ことを特徴とする請求項1〜11のうちのいずれか一の項に記載の積層体。
【請求項13】
請求項1〜12のうちのいずれか一の項に記載のパッケージ用積層体(10a,10b)を製造する方法であり、
−紙又は板紙からなる層(21a)を用意するステップと、
−水性又は溶媒性の液体媒体内に分散せしめられるか又は溶解された重合体バインダを含んでおり更に無機粒子が分散せしめられて含まれている液体ガスバリア組成物を用意するステップと、
−前記紙又は板紙からなる層の第一の側の面に前記液体組成物を膜としてコーティング(22a)し、これに続いて乾燥させて前記液体を蒸発させることによって、前記重合体バインダと無機粒子とを含む薄い酸素ガスバリア層を形成するステップと、
−ポリオレフィン系重合体マトリックスを含み且つ無機充填材粒子が内部に分散せしめられている溶融加工可能な重合体組成物を用意するステップと、
−溶融押出法を使用して、溶融加工可能な重合体組成物によって水蒸気バリア層(24a;23b;23c)を提供するステップと、
−前記溶融加工可能な組成物による前記溶融押出された水蒸気バリア層(24a;23b;23c)を前記酸素ガスバリア層(21b)の内側の面上に積層させるステップと、
−熱シール可能なポリオレフィンの最も内側の層(15)を前記水蒸気バリア層(24a;23b;23c)の内側の面上に付与するステップと、
−熱シール可能なポリオレフィンからなる最も外側の層(16)をコア層(11)上に付与するステップと、からなることを特徴とする方法。
【請求項14】
前記酸素ガスバリア層(12)が、乾燥重量で0.5〜6g/m好ましくは3〜5g/m更に好ましくは3〜4g/mのトータル量で適用される、ことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記溶融加工可能な重合体組成物の前記水蒸気バリア層(24a)を用意し且つ前記コーティングされた板紙上に押出コーティング又は同時押出コーティングすることによって前記酸素バリア層(21b)の内側の面上に積層させる、ことを特徴とする請求項13〜14のうちのいずれか一の項に記載の方法。
【請求項16】
前記溶融加工可能な重合体組成物からなる前記水蒸気バリア層(23b;23c)が、同時押出注型法又は吹出成型法によって膜を提供し、これに続いて該膜を中間の熱可塑性接合層(13;24b;24c)と共に押出積層することによって前記酸素ガスバリア層(21b)の内側の面上に積層させることによって付与される、ことを特徴とする請求項13〜15のうちのいずれか一の項に記載の方法。
【請求項17】
熱シール可能なポリオレフィンからなる最も内側の層(15)を、前記水蒸気バリア層(24a;23b;23c)と一緒に同じステップにおいて同時押出を使用して形成することによって前記水蒸気バリア層(24a)の内側の面上に付与する、ことを特徴とする請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
前記水蒸気バリア層(24a;23b;23c)を、ポリオレフィン及びポリオレフィン系接着剤重合体から選択された中間の熱可塑性重合体層(13)によって、前記バリアがコーティングされた紙又は板紙の層に接合させる、ことを特徴とする請求項13〜17のうちのいずれか一の項に記載の方法。
【請求項19】
請求項1〜12のうちのいずれか一の項に記載のパッケージ用積層体によって製造された包装容器(30a;30b)。

【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図1d】
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【図2−1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−512058(P2012−512058A)
【公表日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−541137(P2011−541137)
【出願日】平成21年11月23日(2009.11.23)
【国際出願番号】PCT/EP2009/008306
【国際公開番号】WO2010/069451
【国際公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(591007424)テトラ ラバル ホールデイングス エ フイナンス ソシエテ アノニム (190)
【Fターム(参考)】