パッケージ
【課題】 準マイクロ波帯域から数十GHz帯域にわたって充分なキャビティ共振抑制効果を発揮し、小型化、軽量化、薄型化が図られ、イオンによる電子デバイスへの影響がないパッケージを提供する。
【解決手段】 電子デバイス11が搭載された回路基板12と、回路基板12との間にキャビティ13が形成されるように、電子デバイス11を覆う筐体14とを具備するパッケージ10において、キャビティ13に、有機高分子を含有する基体と、該基体の一部と磁性体とが一体化してなる複合層とを有する電磁波抑制体20を配置する。
【解決手段】 電子デバイス11が搭載された回路基板12と、回路基板12との間にキャビティ13が形成されるように、電子デバイス11を覆う筐体14とを具備するパッケージ10において、キャビティ13に、有機高分子を含有する基体と、該基体の一部と磁性体とが一体化してなる複合層とを有する電磁波抑制体20を配置する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波電子デバイスのパッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
IC等の高周波電子モジュール、これらを組み合わせたモジュール等を搭載するパッケージにおいては、パッケージ内部のキャビティ(空間)の空間寸法によって定まる基本および高次モードに対応する固有の共振周波数で、キャビティ共振が発生する。このキャビティ共振が、搭載された電子デバイス、モジュール、回路等の動作に対応する周波数において高周波ノイズとなり、誤動作の原因となっている。
このキャビティ共振を抑制する手段としては、共振を発生させる周波数の電磁波を抑制する効果を有する電磁波吸収体を用い、パッケージ内部の電子デバイス、モジュール等と、キャビティを形成する筐体との間に配置することが知られている。
【0003】
この電磁波吸収体としては、フェライトシート、磁性体粉等を含有したシート等が知られている。特許文献1には、フェライトシート、液状フェライト塗料等を、パッケージ内部のキャビティのコーナー部位に配置したマイクロ波回路用パッケージが開示されている。また、特許文献2には、樹脂に磁性体粉を分散してなる電磁波吸収体をパッケージ内に配置した高周波回路用パッケージが開示されている。
【0004】
近年、電子デバイスの高性能化にともなって高周波化が進み、パッケージのキャビティ共振周波数も高周波帯域に広がってきている。すなわち、準マイクロ波帯域であるGHz帯域でのキャビティ共振抑制が望まれている。高周波帯域でのキャビティ共振が抑えられたパッケージとしては、特許文献3に、Fe2O3を主たる材料とした焼成体からなる電磁波吸収体をパッケージ内に配置した高周波回路用パッケージが開示されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1〜3に記載のパッケージでは、準マイクロ波帯域(1〜3GHz)から数十GHz帯域におけるキャビティ共振抑制効果は、充分に満足できるものではなかった。
パッケージのキャビティ共振抑制効果に大きく影響する電磁波吸収体の電磁波抑制効果は、電磁波吸収体の有する磁気損失に大きく起因し、複素透磁率(μ=μ’−jμ”)の虚数部透磁率μ”が、大きいほど優れた抑制効果が得られ、良好な電磁波吸収体となる。すなわち、磁気共鳴を起こす周波数(磁気共鳴周波数)が大きく、異なる周波数帯域に現れるμ”が重畳され、μ”が広い帯域にわたって大きな値である電磁波吸収体が望まれる。
【0006】
このような電磁波吸収体としては、特許文献4に、軟磁性体粉末の混合体、すなわち形状磁気異方性を有する軟磁性体粉末を、有機結合剤中に分散した電磁干渉抑制体が開示されている。この電磁干渉抑制体は、互いに異なる大きさの磁性体粉による異方性磁界を有することで、それにともなった複数の磁気共鳴が現れ、異なる周波数帯域に現れる虚数部透磁率μ”が重畳され、その結果、μ”が広帯域にわたっているとされている。しかしながら、この電磁干渉抑制体は、虚数部透磁率μ”を部分的に大きくしただけであり、しかもその磁気共鳴周波数は、2GHzよりも低いものであった。よって、準マイクロ波帯域から数十GHz帯域にわたって充分な電磁波抑制効果があるとは言えない。
【0007】
また、別の電磁波吸収体としては、特許文献5に、窒化鉄(Fe16N2 )の扁平粉を樹脂と複合化した電磁波吸収体が開示されている。この電磁波吸収体は、磁性体の飽和磁化Isが高いと透磁率の限界を示すf(μ’−1)の項が大きくなり、限界ラインが高周波側に移行するとされている。また、共鳴周波数は、樹脂の組成、熱処理条件、窒化鉄粒子の形状、またはアスペクト比等を変化させて、数百MHzから10GHz近傍まで自由に調整可能であるとされている。しかしながら、この電磁波吸収体は、磁性体の組成が特定の組成に限定され、また窒化鉄を扁平形状に加工する工程が必要であり、煩雑である。
【0008】
また、虚数部透磁率μ”を大きくする手段としては、回路の銅線、電子デバイス等の表面に直接メッキして、NiZnフェライト薄膜を作製する例がある。しかしながら、メッキ液には、Naイオン、塩素イオン、亜硝酸イオン等が含まれ、半導体デバイスに用いる場合には、十分な洗浄が必要となり、作業工程が増えるという不利がある。
【0009】
また、パッケージには、高密度実装の実現のために、小型化、軽量化、薄型化が望まれており、内部に配置される電磁波吸収体にも小型化、軽量化、薄型化が望まれている。また、共振抑制対策の作業が簡便で、容易に配置部位を変更可能なリワーク性に優れた電磁波吸収体が求められている。
【0010】
しかしながら、磁性体を樹脂に充填した電磁波吸収体においては、高い電磁波抑制効果を得るために、扁平形状の磁性体粉末を樹脂中に高充填する必要がある。このため、電磁波吸収体の抵抗値が低下してしまい、電磁波の反射性能が増大してパッケージのキャビティ共振抑制効果が低下する。この対策として、磁性体粉末の表面を酸化させる工程などによって絶縁性を向上させる加工が必要となる。この加工は、煩雑であり、制約の多い条件の設定が必要となる。また、磁性体粉末を扁平形状に加工する工程が必要であり、煩雑である。
【0011】
また、樹脂中に多量の扁平形状の磁性体粉末を高密度に充填するため、磁性体は通常90質量%前後の量となり、電磁波吸収体の厚さが約1mm程度となる。また、磁性体粉は比重が大きいことから、電磁波吸収体が重いものになってしまう。このように電磁波吸収体が、厚く重いものであると、パッケージの小型化、軽量化、薄型化が図りにくくなる。また、結合剤である樹脂がわずかとなることから、物性面で脆いという欠点をもち、リワーク時に破損するなどの問題が残されている。
【特許文献1】特開平06−236935号公報
【特許文献2】特開2003−078277号公報
【特許文献3】特開2004−006591号公報
【特許文献4】特開平9−35927号公報
【特許文献5】特開2001−53487号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
よって本発明の目的は、準マイクロ波帯域から数十GHz帯域にわたって充分なキャビティ共振抑制効果を発揮し、小型化、軽量化、薄型化が図られ、イオンによる電子デバイスへの影響がないパッケージを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記課題を解決するために鋭意検討し、磁性体の磁気損失特性である、複素透磁率の虚数部透磁率のμ”を大きくするため、形状異方性等の磁気異方性効果を期待して、磁性体を原子状態で有機高分子の基体の一部に分散一体化させることを検討した。その結果、準マイクロ波帯域から数十GHz帯域で高い共鳴周波数を有することによる電磁波抑制効果を持ち、これに伴い、充分なキャビティ共振抑制効果を示す良好な電磁波抑制体を見出し、これを用いたパッケージを得るに至った。
【0014】
本発明のパッケージは、電子デバイスが搭載された回路基板と、回路基板との間に空間が形成されるように、電子デバイスを覆う筐体と、該空間に配置された電磁波抑制体とを具備し、前記電磁波抑制体が、有機高分子を含有する基体と、該基体の一部と磁性体とが一体化してなる複合層とを有するものであることを特徴とするものである。
【0015】
ここで、前記複合層は、物理的蒸着法により前記基体に磁性体を分散させた層であることが望ましい。
また、基体に磁性体を物理的蒸着させる時の有機高分子の剪断弾性率は、1×104 〜5×1010Paであることが望ましい。
さらに、物理的蒸着法は、対向ターゲット型マグネトロンスパッタリング法であることが望ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明のパッケージは、パッケージ内の空間(キャビティ)に配置された電磁波抑制体が、有機高分子を含有する基体と、該基体の一部と磁性体とが一体化してなる複合層とを有するものであるため、準マイクロ波帯域から数十GHz帯域にわたって充分なキャビティ共振抑制効果を発揮し、小型化、軽量化、薄型化が図られ、イオンによる電子デバイスへの影響がない。
【0017】
ここで、前記複合層が、物理的蒸着法により前記基体に磁性体を分散させた層であれば、軽量化、薄型化がさらに図られ、電磁波抑制体の物性が良好となり、より高いキャビティ共振抑制効果を得ることができる。
また、基体に磁性体を物理的蒸着させる時の有機高分子の剪断弾性率が、1×104 〜5×1010Paであれば、軽量化、薄型化がさらに図られ、電磁波抑制体の物性が良好となり、より高いキャビティ共振抑制効果を得ることができる。
さらに、物理的蒸着法が、対向ターゲット型マグネトロンスパッタリング法であれば、軽量化、薄型化がさらに図られ、電磁波抑制体の物性が良好となり、より高いキャビティ共振抑制効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明について詳細に説明する。
<パッケージ>
図1および図2は、本発明のパッケージの一例を示す図である。このパッケージ10は、電子デバイス11が搭載された回路基板12と、回路基板12との間にキャビティ13(空間)が形成されるように、電子デバイス11を覆う筐体14と、キャビティ13に配置された電磁波抑制体20とを具備して概略構成されるものである。
【0019】
電子デバイス11としては、MIC(マイクロ波集積回路)、MMIC(モノリシックMIC)、HMIC(ハイブリッドMIC)等;これらに、フィルター、アンプ、L/C/R受動部品等を組み合わせたモジュール等が挙げられる。
筐体14は、電子デバイス11から発振される不要な高周波ノイズを遮蔽し、他の回路への電磁波障害を防止するためのシールドボックスであり、電子デバイス11に電気的に接続される入力用外部リード15および出力用外部リード16が設けられている。
筐体14の材質としては、アルミニウム、銅、鉄、SUS等の金属;金属メッキを有するプラスチック、金属が蒸着されたプラスチック等が挙げられる。
【0020】
<電磁波抑制体>
電磁波抑制体20は、図3に示すように、有機高分子を含有する基体21と、該基体21の一部と磁性体とが一体化してなる複合層22とを有するものである。
【0021】
(基体)
基体21を構成する有機高分子としては、例えば、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリエーテル、ポリケトン、ポリイミド、ポリウレタン、ポリシロキサン、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂等の樹脂;天然ゴム、イソブレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム等のジエン系ゴム;ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム等の非ジエン系ゴム等が挙げられる。これらは熱可塑性であってもよく、熱硬化性であってもよく、その未硬化物であってもよい。また、上述の樹脂、ゴム等の変性物、混合物、共重合物であってもよい。
【0022】
有機高分子は、硬化剤、補強剤、その他改質剤等の各種機能性充填剤を含有していてもよい。
また、有機高分子は、無機物であるエアロジル、発泡シリカ、セライト等の充填剤を含有し、剪断弾性率が調整されたものであってもよい。また、超微粒子の捕獲がされるようなポーラスな表面による活性を持つようなものであってもよい。
【0023】
また、熱伝導性の良好な充填剤を含有した有機高分子を基体21とすれば、放熱特性を兼ね備えた電磁波抑制体となる。
さらに、誘電体粉末を含有した有機高分子を基体21とすれば、空間とのインピーダンス整合が図られるために、電磁波の不要輻射の反射が起こり難くなる。誘電体としては、高周波領域での誘電率が大きく、かつ誘電率の周波数特性が比較的平坦なものが好ましく、例えば、チタン酸バリウム系セラミック、チタン酸ジルコン酸系セラミック、鉛ペロブスカイト系セラミック等が挙げられる。
【0024】
有機高分子の剪断弾性率が低いほど、後述する磁性体の物理的蒸着の際に、磁性体が基体21に入り込みやすくなる。すなわち、磁性体の有機高分子への侵入または磁性体の衝突による有機高分子の変形、流動により、磁性体が基体21表面から数ミクロンに渡り分散しやすくなる。よって、有機高分子の剪断弾性率は、後述の磁性体の物理的蒸着時に、1×104 〜5×1010Paであることが好ましい。この範囲の剪断弾性率を有する有機高分子を含有する基体21に磁性体が物理的蒸着されることで、磁性体が原子状態で基体21に均一に分散し、基体21の一部と磁性体が一体化した複合層22を容易に形成することができる。そして、このような複合層22は、より高い電磁波抑制効果を発揮することができる。また、電磁波抑制体の軽量化、薄型化がさらに図られ、電磁波抑制体の物性が良好となる。
【0025】
有機高分子の剪断弾性率は、1×104 〜1×108 Paがより好ましく、1×104 〜1×107 Paがさらに好ましく、1×104 〜106 Paが特に好ましい。また、磁性体を物理的蒸着する時に、所望の剪断弾性率とするために、必要に応じて、分解または蒸発を起こさない温度、例えば100〜300℃に加熱することもできる。このような剪断弾性率を有する有機高分子としては、おおよそゴム硬度で90°(JIS−A)以下の弾性体が挙げられる。有機高分子の剪断弾性率が1×108 Paを超えても、5×1010Pa以下であれば、軽度の変形または流動が可能となるので、表面に凹凸を付けた基体を用いる、または一度の蒸着量を下げて、磁性体が連続層を形成しない程度の蒸着量の複合層を複数層積層して合計の蒸着量を稼ぐことにより、良好な電磁波抑制効果を有するものとすることができる。
【0026】
剪断弾性率の測定方法としては、以下のような方法が知られている。
(1)JIS K7113に規定されている引張応力と歪との関係から引張り弾性率を求め、これをもとに下記式から剪断弾性率を求める。
剪断弾性率=引張り弾性率/(2×(1+ポアソン比))
ここで2×(1+ポアソン比)の値は、剛直な高分子からゴム状の弾性体まで、おおよそ2.6〜3.0である。
(2)温度特性を把握できる粘弾性率測定装置を用い、試験モードを剪断モードにして剪断弾性率を測定する。
(3)粘弾性率測定装置を用い、試験モード引張りモードにして貯蔵弾性率G’および損失弾性率G”を測定し、下記式から複素弾性率G* を求め、複素弾性率を引張り弾性率として、上記式から剪断弾性率を求める。
G* =√((G’)2 +(G”)2)
本発明における剪断弾性率は、粘弾性率測定装置として、レオメトリック・サイエンティフィック社製ソリッドアナライザーRSA−IIを用い、剪断モードにて、測定周波数1Hzの条件で測定した値とする。
【0027】
基体21は、樹脂、ゴム等の有機高分子を含有するものであるため、可撓性を有し、軽く、薄い、強靭なものとなり、配置の作業性の良好な電磁波抑制体となる。さらに、有機高分子を含有する基体が、硬化性樹脂であれば、磁性体が未硬化の樹脂中に均一分散され、樹脂が硬化した後では、磁性体が結晶化して微粒子に成長することなく、磁性体が原子状態で分散一体化した複合層とすることができる。
【0028】
(複合層)
複合層22は、物理的蒸着法により基体21に磁性体を分散させた層であることが好ましい。このような層とすることで、磁性体が原子状態で基体21と複合一体化されて、磁気異方性が高められ、高周波帯域における電磁波抑制効果を発揮するものとなる。
【0029】
物理的蒸着法により基体21に磁性体を分散させて形成される複合層22は、物理的蒸着された磁性体が均質膜を形成することなく、原子状態で基体21中に分散一体化してなるものである。
図4の透過型電子顕微鏡写真に示すように、複合層22は、非常に小さな結晶として数Å間隔の磁性体原子が配列された結晶格子が観察される部分と、非常に小さい範囲で磁性体が存在しない有機高分子のみが観察される部分と、磁性体原子が結晶化せず有機高分子中に分散して観察される部分からなっている。すなわち、磁性体が明瞭な結晶構造を有する微粒子として存在を示す粒界は観察されず、ナノメーターレベルで磁性体と有機高分子とが一体化した複雑なヘテロ構造(非均質・不斉構造)を有しているものと考えられる。
【0030】
複合層22を有する電磁波抑制体20は、磁気共鳴周波数が8GHz以上となり、周波数8GHzにおける複素透磁率の虚数部透磁率μ”は周波数5GHzにおける複素透磁率の虚数部透磁率μ”よりも大きく、虚数部透磁率μ”が重畳されて、準マイクロ波帯域の全域のわたって大きな虚数部透磁率μ”を示すものとなる。(実施例の図10参照。)
【0031】
(磁性体)
物理的蒸着に用いられる磁性体としては、金属系軟磁性体、酸化物系軟磁性体、窒化物系軟磁性体等が主に用いられる。これらは、1種類を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0032】
金属系軟磁性体としては、鉄、コバルト、ニッケル、それらの合金が挙げられる。鉄合金としては、具体的には、Fe−Ni、Fe−Co、Fe−Cr、Fe−Si、Fe−Al、Fe−Cr−Si、Fe−Cr−Al、Fe−Al−Si、Fe−Pt等が挙げられる。これらの金属系軟磁性体は、1種類を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、ニッケルは、単独で用いた場合に、酸化に対して抵抗力があるので好ましい。
【0033】
酸化物系軟磁性体としては、フェライトが好ましい。具体的には、MnFe2O4、CoFe2O4、NiFe2O4、CuFe2O4、ZnFe2O4,MgFe2O4、Fe3O4、Cu−Zn−フェライト、Ni−Zn−フェライト、Mn−Zn−フェライト、Ba2Co2Fe12O22、Ba2Ni2Fe12O22、Ba2Zn2Fe12O22、Ba2Mn2Fe12O22、Ba2Mg2Fe12O22、Ba2Cu2Fe12O22、Ba3Cu2Fe24O41が挙げられる。これらのフェライトは、1種類を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
窒化物系軟磁性体としては、Fe2N、Fe3N、Fe4N、Fe16N2等が挙げられる。これらの窒化物系軟磁性体は、透磁率が高く、耐食性が高いので好ましい。
なお、基体21に磁性体を物理的蒸着させる際には、磁性体はプラズマ化あるいはイオン化された磁性体原子として、基体21に入り込むので、基体21中に微分散された磁性体の組成は、蒸発材料として用いた磁性体の組成と必ずしも同一であるとは限らない。また、基体21の一部と反応し、磁性体が常磁性体や反磁性体になるなどの変化が生じる場合もある。
【0035】
(物理的蒸着)
まず、物理的蒸着法(PVD)の一般的な説明を行う。
物理蒸着法(PVD)とは、通常、真空にした容器の中で蒸発材料(ターゲット)を何らかの方法で気化させ、近傍に置いた基板上に堆積させて薄膜を形成する方法である。
物理蒸着法を蒸発材料の気化方法で分類すると、蒸発系とスパッタリング系に分けられる。蒸発系としては、EB蒸着、イオンプレーティング等が挙げられ、スパッタリング系としては、マグネトロンスパッタリング、対向ターゲット型マグネトロンスパッタリング等が挙げられる。
【0036】
EB蒸着は、蒸発粒子のエネルギーが1eVと小さいので、基板のダメージが少なく、膜がポーラスになりやすく、膜強度が不足する傾向があるが、磁性体膜の固有抵抗は高くなるという特徴がある。
【0037】
イオンプレーティングによれば、アルゴンガスおよび蒸発粒子のイオンは加速されて基板に衝突するため、EBよりエネルギーは大きく、付着力の強い膜を得ることができる。しかし、ドロップレットと呼んでいるミクロンサイズの粒子が多数付着してしまうと放電が停止してしまう。また、酸化物系磁性体を成膜するには、酸素などの反応性ガスを導入しなければならず、膜質コントロールが難しい。
【0038】
通常のマグネトロンスパッタリングは、磁界の影響で強いプラズマが発生するため成長速度が速く、磁性体が部分的に基体の中に潜り込んだ状態となり、三次元的に偏在して均質膜を形成しない状態で蒸着されるという特徴があるが、ターゲットの利用効率が低い。
ミラートロンスパッタリングなど、対向ターゲット型マグネトロンスパッタリングは、二枚のターゲットを向かい合わせに平行に配置し、対向するターゲット間にターゲット面の垂直な磁力線を印加して、プラズマを発生させ、対向するターゲットの外に置かれた基板に所望の薄膜を生成させる方法である。そのため、薄膜を再スパッタリングすることなく、成長速度がさらに速く、スパッタリングされた原子が衝突緩和することがない。
【0039】
本発明においては、これら物理蒸着法を利用し、基体21上に磁性体の均一な薄膜を形成させることなく、磁性体を原子状態で基体21に分散させる。そのため、以下の理由から対向ターゲット型マグネトロンスパッタリングが好適である。
有機高分子の共有結合エネルギーは、約4eVであり、具体的には、C−C、C−H、Si−O、Si−Cの結合エネルギーはそれぞれ3.6、4.3、4.6、3.3eVである。これに対して、対向ターゲット型マグネトロンスパッタリングでスパッタリングされた磁性体原子は、8eV以上の高いエネルギーを持っているので、有機高分子の化学結合を切断しながら衝突する。よって、磁性体原子が有機高分子である基体21の表面からおおよそ0.005〜5μm程度まで進入することができる。これは高エネルギーの磁性体原子の基体21表面への衝突により、磁性体原子と有機高分子との局部的なミキシングが生じたためと推定される。このような現象が生ずることにより、前述の複合層22のヘテロ構造をもたらすことができ、一度に大量の磁性体を分散させることができる。すなわち、一度の蒸着で、磁性体の蒸着質量を稼ぐことができることから、吸収減衰率の大きな電磁波抑制体20を容易に得ることができる。
【0040】
また、通常のマグネトロンスパッタリングでは磁力線が磁性体ターゲット中を通るのでターゲットの厚みによってスパッタレートが決まったり、放電が起きにくくなったりするのに対し、対向ターゲット型マグネトロンスパッタリングでは、磁場をターゲットのスパッタリング面に垂直に印加するため、磁性体をターゲットに用いても磁場が保持され、ターゲット厚みに関係なく高速スパッタリングができるという特徴がある。
【0041】
また、磁性体を物理的蒸着する方法によれば、メッキなどの液によるウエット加工によらずドライ加工が可能であり、不純物イオンは存在せず、不純物イオンによる電子デバイス、モジュール、回路基板等を損傷させるおそれのない電磁波抑制体20が得られる。
【0042】
1回の物理的蒸着操作における磁性体の蒸着質量は、磁性体単品の膜厚換算値で200nm以下が好ましい。これよりも厚いと、基体21の剪断弾性率にもよるが、基体21が磁性体を包含する能力に達し、磁性体が基体21に分散した複合層22ができずに、表面に堆積し、導通性を有する連続したバルクの均質膜が生成してしまう。それゆえ、磁性体の蒸着量は、100nm以下が好ましく、50nm以下がさらに好ましい。一方、電磁波抑制効果の点からは、磁性体の蒸着質量は、0.5nm以上であることが好ましい。蒸着質量は、ガラス、シリコン等の硬質基板上に同条件で磁性体を蒸着し、堆積した膜厚を測定することによって求められる。
【0043】
蒸着質量が小さくなると、電磁波抑制効果は、低減することから、基体21および複合層22を複数積層することのよって磁性体の総質量を増やすことができる。この総質量は、要求される電磁波抑制効果にもよるが、おおよそ合計の磁性体の膜厚換算値で10〜500nmが好ましい。また、必要に応じて、積層される層の一部を導通性のあるバルクの金属層とし、電磁波の反射特性をもたせることも可能である。さらには、誘電体を含有する層を設けることによって、電磁波抑制効果を調整することも可能である。
【0044】
(支持層)
本発明における電磁波抑制体は、ハンドリングを良好とするために、図5に示すように、基体21の裏面にさらに支持体層23を設けた電磁波抑制体24であってもよい。
物理的蒸着によって磁性体原子は、基体21の表面からおおよそ0.005〜5μm程度まで進入するため、基体21の厚さは5μm以上であればよい。実際には、基体21を5〜15μmとすることが好ましいが、この厚さでは、電磁波抑制体をハンドリングすることが難しい場合には、支持層体23を設けた電磁波抑制体24が有効である。
【0045】
支持体層23としては、キャビティ13に電磁波抑制体20を配置する組立装置、手法に合致した厚さおよび物性を有する材料を選定すればよく、各種のプラスチックフィルムであれば、特に限定されるものではない。各種のプラスチックフィルムの中で、耐熱性が良好なものには、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリフェニレンサルファイド等のフィルムが挙げられる。後述する粘・接着剤層25を支持体層23上に設ける場合、その粘・接着剤に適合するようなフィルムを選定するとよい。
【0046】
支持体層23の厚さは、特に制限されるものではないが、ハンドリングに必要な最小限の厚みとしては、約5μmが下限であり、本発明の目的である薄型化および作業性からは、5〜30μm程度が好ましい。キャビティ13に充分なスペースがあれば、この厚さを超えるものであってもよい。
【0047】
(粘・接着剤層)
本発明における電磁波抑制体は、キャビティ13内面、電子デバイス、モジュールの上面に容易に固定することが可能となる点から、図6に示すように、支持体層23上に粘・接着剤層25を設け、その上にセパレータフィルム26を設けた電磁波抑制体27、または図7に示すように、複合層22上に粘・接着剤層25を設け、その上にセパレータフィルム26を設けた電磁波抑制体28であってもよい。
【0048】
粘着剤としては、アウトガスなどを考慮し、電子デバイスに影響を及ぼさないものを選定すればよく、具体的には、アクリル系、ゴム系の粘着剤が挙げられる。耐熱性または熱伝導性を考慮した粘着剤を用いてもよい。
接着剤としては、同様に電子デバイスに影響を及ぼさないものを選定すればよく、具体的には、エポキシ系、ポリイミド系、変性ポリアミド系の接着剤が挙げられる。耐熱性または熱伝導性を考慮した接着剤を用いてもよい。
複合層22上に粘・接着剤層25を設ける場合には、電磁波抑制効果を阻害せず、複合層22を物理的に破壊しないような粘・接着剤を選定する。
【0049】
(電磁波抑制体の配置)
電磁波抑制体20は、所定の形状に切り出す加工、抜き加工が容易であり、キャビティ13内部、すなわち筐体14と電子デバイス11、回路、モジュールとの間に、粘着剤または接着剤を用いた簡便な方法によって配置できる。電磁波抑制体20は、キャビティ共振の抑制が効率的に可能となる部位に配置すればよく、電磁波抑制体20に粘・接着剤層を設けてキャビティ13の内面の一部または全体、電子デバイスの表面、回路基板の回路上、モジュールの表面等に配置すればよい。電磁波抑制体20を配置する際には、熱伝導性の良好な部材をいっしょに配置してもよい。
【0050】
電磁波抑制体20のキャビティ13内における配置部位は、キャビティ共振抑制効果が発揮される部位として、通常、キャビティ13内部の天面の全てを覆うように配置される。また、抑制効果がより発揮されることから、キャビティ13の天面および回路基板12の四隅に配置してもよく、電子デバイス11、モジュールの表面の一部またはすべてに配置してもよい。電磁波抑制体20の最適な配置部位は、シミュレーション、実装測定等の結果から決定すればよい。
また、電磁波抑制体20の形状は、シミュレーション、実装測定等から最適な形状とすればよい。
【0051】
また、実装測定によって、キャビティ共振抑制の部位がずれているような場合には、粘着面を一度剥がし、再度貼付する作業を必要とするが、電磁波抑制体20は、可撓性および強靭性をもつことから、破壊せずに、容易なリワーク作業が可能となる。
【0052】
また、パッケージ10の内部に基体21をあらかじめ配置し、これに磁性体を物理的蒸着してもよい。例えば、図8に示すように、基体21を筐体14の内面のコーナー部分に塗布または粘・接着剤により配置し、これに磁性体を物理的蒸着し、複合層22を形成する。または、図9に示すように、電子デバイス11および回路基板12の表面にも基体21を配置し、これに磁性体を物理的蒸着し、複合層22を形成する。物理的蒸着法としては、低温蒸着であり、電子デバイス11、回路基板12等を破損せずに、磁性体を物理的蒸着することが可能であることから、対向ターゲット型マグネトロンスパッタリング法が好ましい。
【0053】
(作用)
以上説明した電磁波抑制体20にあっては、理論的には完全に明らかになっていないが、基体21と磁性体とが一体化された複合層22が形成されているので、少ない磁性体であっても、そのナノメーターレベルのヘテロ構造に由来する量子効果、材料固有の磁気異方性、形状異方性、または外部磁界による異方性等の影響で、高い共鳴周波数を持つ。これにより、優れた磁気特性を発揮し、少ない磁性体であっても、高い周波数帯域において、電磁波抑制効果を発揮することができる。このように充分な電磁波抑制効果を有する電磁波抑制体20をキャビティ13内に配置されたパッケージ10は、準マイクロ波帯域全体にわたって充分なキャビティ共振抑制効果を発揮する。
【0054】
また、電磁波抑制体20にあっては、複合層22を形成するために用いられる磁性体の量が少なく、複合層22の厚さがきわめて薄い。よって、有機高分子を含有する基体21を薄肉化できる、結果、電磁波抑制体20が薄型化される。また、複合層22を形成するために用いられる磁性体の量が少ないため、結果、電磁波抑制体20が軽量化される。このように薄型化、軽量化された電磁波抑制体20をキャビティ13内に配置されたパッケージ10は、小型化、軽量化、薄型化が可能となる。
また、電磁波抑制体20の複合層22の形成には、メッキ液を使用する必要がないので、イオンによる電子デバイスへの影響がないパッケージ10が得られる。
【実施例】
【0055】
以下に実施例を示す。
(評価)
透磁率測定:
凌和電子製、超高周波透磁率測定装置PMM−9G1を用いた。
断面観察:
日立製作所製、透過型電子顕微鏡H9000NARを用いた。
剪断弾性率:
剪断弾性率は、粘弾性率測定装置として、レオメトリック・サイエンティフィック社製ソリッドアナライザーRSA−IIを用い、剪断モードにて、測定周波数1Hzの条件で測定した。
【0056】
電磁波抑制特性:
伝送特性:キーコム(株)製、近傍界用電磁波吸収材料測定装置を用いて、Sパラメーター法によるS11(反射減衰量)およびS21(透過減衰量)を測定した。ネットワークアナライザーとしては、アンリツ(株)製、ベクトルネットワークアナライザー37247Cを用い、50Ωのインピーダンスを持つマイクロストリップラインのテストフィクスチャーとしては、キーコム(株)製、TF−3A、TF−18A を用いた。
【0057】
キャビティ共振測定:
実装デバイス:UMS社製 MMIC「CHA2069RAF」。
実装基板:Rogers基板「RF4003」(MLS基板)。
出力信号に(株)アドバンテスト製、スペクトラムアナライザR3132を接続。
【0058】
[実施例1]
支持体層である15μmのポリイミドフィルムの上に有機高分子であるBステージ状のエポキシ樹脂(硬化前の25℃における剪断弾性率8×106 Pa、硬化後の25℃における剪断弾性率2×109 Pa)を塗布し、厚さ10μmの基体を設けた。硬化前の常温(25℃)において、基体の上に膜厚換算で10nmのFe−Ni系軟磁性体金属を、対向ターゲット型マグネトロンスパッタリング法により物理的蒸着させ複合層を形成した。この際、基体の温度を25℃に保ち、蒸発粒子が8eVの粒子エネルギーを持つようにわずかに負の電圧を印加し、スパッタリングを行った。これを40℃で6時間加熱し、さらに120℃で2時間加熱し、エポキシ樹脂を硬化させて、厚さ25μmの電磁波抑制体を得た。
【0059】
電磁波抑制体の一部をミクロトームで薄片にし、断面にイオンビームポリシャーを施し、高分解能透過型電子顕微鏡により断面を観察したところ、複合層22の厚さは約30nmであった。断面観察写真を図4に示す。
【0060】
また、透磁率測定装置を用いて電磁波抑制体の透磁率を測定した結果を図10に示す。周波数が高いほどμ”も大きな値を示しており、約3GHzでのμ”の相対強度値は250であり、約8GHzでのμ”の相対強度値は3GHzの値の約7倍と大きな値となっている。また、磁気共鳴周波数(μ’のピーク値の半分の値になる周波数で、かつピーク値の周波数より大きい周波数)は、装置の測定限界の9GHzを超えていた。
【0061】
また、図11および図12にSパラメータ法による電磁波抑制体の伝送特性を示す。反射減衰量(S11)および透過減衰量(S21)は、1GHzでそれぞれ−7.5dB、−5.5dBであり、10GHzでは、−14dB、−20dBであり、電磁波抑制効果のバランスの良好なものであった。
【0062】
また、電磁波の消費エネルギーの指標を表すロス電力比は、下記式(1)〜(3)から算出される。その結果を図13および図14に示す。0.2GHz近辺から急激に立ち上がり、1GHzですでに0.54と大きな値を示し、10GHzで0.95を示している。これは、準マイクロ波帯域全体にわたって、大きな値であることを示している。
(ロス電力比)Ploss/Pin=1−(|Γ|2+|Τ|2) (1)
(反射減衰量)S11=20×log|Γ| (2)
(透過減衰量)S21=20×log|Τ| (3)
【0063】
この電磁波抑制体の支持体層表面に、アクリル系粘着剤(エマルジョンタイプ)を15μm厚となるように塗工して粘・接着剤層を設け、さらにセパレータである38μmのポリエステルフィルムを貼り付け、厚さ78μmの電磁波抑制体を得た。
【0064】
図1および図2に示す構成の、18〜31GHzの高周波低ノイズアンプのデバイスであるUMS社製のMMIC「CHA2069RAF」を搭載したMSL基板(Rogers基板)をアルミニウム筐体のシールドカバーで覆い密閉したパッケージを準備し、入力信号を外部信号源とし、出力信号にスペクトラムアナライザを接続した。
【0065】
まず、この「CHA2069RAF」は、シールドカバーで覆わない状態では、入力信号に対して、18〜31GHz帯域では、規格性能範囲の高周波発振ノイズレベル(2.5〜3.5dB)の出力信号であることをスペクトラムアナライザで確認した。結果を図15に示す。
【0066】
これに、キャビティの大きさが幅10mm×奥行15mm×高さ2.5mmであるアルミニウム筐体のシールドカバーを覆いかぶせたところ、19GHz近辺において、規格性能範囲を超える高周波発振ノイズレベルの出力信号(約5.6dB)が測定され、キャビティ共振が発生したことを確認した。結果を図16に示す。これは、シールドカバーで覆うことで、出力電力が入力電力にフィードバックされて発振されたことを示している。
【0067】
電磁波抑制体を10mm×15mmに切出し、セパレータフィルムを剥離して(貼付厚さ40μm)、デバイスの上部のキャビティ天面に粘着固定した。同様に出力信号を測定したところ、18〜20GHz近辺で発生していた発振が止まり、キャビティ共振ノイズは、規格性能範囲の約3dBに抑制されたことを確認した。結果を図17に示す。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明のパッケージは、準マイクロ波帯域のキャビティ共振の抑制に効果が高く、電子デバイスの高周波化に充分対応できるものであり、また、パッケージの小型化、軽量化、薄型化の要望に応えることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明のパッケージの一例を示す分解斜視図である。
【図2】本発明のパッケージの一例を示す概略断面図である。
【図3】本発明における電磁波抑制体の一例を示す概略断面図である。
【図4】本発明における電磁波抑制体における複合層の高分解能透過型電子顕微鏡写真である。
【図5】本発明における電磁波抑制体の他の例を示す概略断面図である。
【図6】本発明における電磁波抑制体の他の例を示す概略断面図である。
【図7】本発明における電磁波抑制体の他の例を示す概略断面図である。
【図8】パッケージ内部への電磁波抑制体の配置方法の一例を示す概略断面図である。
【図9】パッケージ内部への電磁波抑制体の配置方法の他の例を示す概略断面図である。
【図10】実施例1における電磁波抑制体の複素透磁率を示すグラフである。
【図11】実施例1における電磁波抑制体の0〜3GHzにおけるS11(反射減衰量)およびS21(透過減衰量)を示すグラフである。
【図12】実施例1における電磁波抑制体の3〜18GHzにおけるS11(反射減衰量)およびS21(透過減衰量)を示すグラフである。
【図13】実施例1における電磁波抑制体の0〜3GHzにおけるロス電力比を示すグラフである。
【図14】実施例1における電磁波抑制体の3〜18GHzにおけるロス電力比を示すグラフである。
【図15】シールドケースのない場合における、実施例1のパッケージからの出力信号を示すグラフである。
【図16】デバイスをシールドケースで覆った場合における、実施例1のパッケージからの出力信号を示すグラフである。
【図17】キャビティ内に電磁波抑制体を配置した場合における、実施例1のパッケージからの出力信号を示すグラフである。
【符号の説明】
【0070】
10 パッケージ
11 電子デバイス
12 回路基板
13 キャビティ(空間)
14 筐体
20 電磁波抑制体
21 基体
22 複合層
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波電子デバイスのパッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
IC等の高周波電子モジュール、これらを組み合わせたモジュール等を搭載するパッケージにおいては、パッケージ内部のキャビティ(空間)の空間寸法によって定まる基本および高次モードに対応する固有の共振周波数で、キャビティ共振が発生する。このキャビティ共振が、搭載された電子デバイス、モジュール、回路等の動作に対応する周波数において高周波ノイズとなり、誤動作の原因となっている。
このキャビティ共振を抑制する手段としては、共振を発生させる周波数の電磁波を抑制する効果を有する電磁波吸収体を用い、パッケージ内部の電子デバイス、モジュール等と、キャビティを形成する筐体との間に配置することが知られている。
【0003】
この電磁波吸収体としては、フェライトシート、磁性体粉等を含有したシート等が知られている。特許文献1には、フェライトシート、液状フェライト塗料等を、パッケージ内部のキャビティのコーナー部位に配置したマイクロ波回路用パッケージが開示されている。また、特許文献2には、樹脂に磁性体粉を分散してなる電磁波吸収体をパッケージ内に配置した高周波回路用パッケージが開示されている。
【0004】
近年、電子デバイスの高性能化にともなって高周波化が進み、パッケージのキャビティ共振周波数も高周波帯域に広がってきている。すなわち、準マイクロ波帯域であるGHz帯域でのキャビティ共振抑制が望まれている。高周波帯域でのキャビティ共振が抑えられたパッケージとしては、特許文献3に、Fe2O3を主たる材料とした焼成体からなる電磁波吸収体をパッケージ内に配置した高周波回路用パッケージが開示されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1〜3に記載のパッケージでは、準マイクロ波帯域(1〜3GHz)から数十GHz帯域におけるキャビティ共振抑制効果は、充分に満足できるものではなかった。
パッケージのキャビティ共振抑制効果に大きく影響する電磁波吸収体の電磁波抑制効果は、電磁波吸収体の有する磁気損失に大きく起因し、複素透磁率(μ=μ’−jμ”)の虚数部透磁率μ”が、大きいほど優れた抑制効果が得られ、良好な電磁波吸収体となる。すなわち、磁気共鳴を起こす周波数(磁気共鳴周波数)が大きく、異なる周波数帯域に現れるμ”が重畳され、μ”が広い帯域にわたって大きな値である電磁波吸収体が望まれる。
【0006】
このような電磁波吸収体としては、特許文献4に、軟磁性体粉末の混合体、すなわち形状磁気異方性を有する軟磁性体粉末を、有機結合剤中に分散した電磁干渉抑制体が開示されている。この電磁干渉抑制体は、互いに異なる大きさの磁性体粉による異方性磁界を有することで、それにともなった複数の磁気共鳴が現れ、異なる周波数帯域に現れる虚数部透磁率μ”が重畳され、その結果、μ”が広帯域にわたっているとされている。しかしながら、この電磁干渉抑制体は、虚数部透磁率μ”を部分的に大きくしただけであり、しかもその磁気共鳴周波数は、2GHzよりも低いものであった。よって、準マイクロ波帯域から数十GHz帯域にわたって充分な電磁波抑制効果があるとは言えない。
【0007】
また、別の電磁波吸収体としては、特許文献5に、窒化鉄(Fe16N2 )の扁平粉を樹脂と複合化した電磁波吸収体が開示されている。この電磁波吸収体は、磁性体の飽和磁化Isが高いと透磁率の限界を示すf(μ’−1)の項が大きくなり、限界ラインが高周波側に移行するとされている。また、共鳴周波数は、樹脂の組成、熱処理条件、窒化鉄粒子の形状、またはアスペクト比等を変化させて、数百MHzから10GHz近傍まで自由に調整可能であるとされている。しかしながら、この電磁波吸収体は、磁性体の組成が特定の組成に限定され、また窒化鉄を扁平形状に加工する工程が必要であり、煩雑である。
【0008】
また、虚数部透磁率μ”を大きくする手段としては、回路の銅線、電子デバイス等の表面に直接メッキして、NiZnフェライト薄膜を作製する例がある。しかしながら、メッキ液には、Naイオン、塩素イオン、亜硝酸イオン等が含まれ、半導体デバイスに用いる場合には、十分な洗浄が必要となり、作業工程が増えるという不利がある。
【0009】
また、パッケージには、高密度実装の実現のために、小型化、軽量化、薄型化が望まれており、内部に配置される電磁波吸収体にも小型化、軽量化、薄型化が望まれている。また、共振抑制対策の作業が簡便で、容易に配置部位を変更可能なリワーク性に優れた電磁波吸収体が求められている。
【0010】
しかしながら、磁性体を樹脂に充填した電磁波吸収体においては、高い電磁波抑制効果を得るために、扁平形状の磁性体粉末を樹脂中に高充填する必要がある。このため、電磁波吸収体の抵抗値が低下してしまい、電磁波の反射性能が増大してパッケージのキャビティ共振抑制効果が低下する。この対策として、磁性体粉末の表面を酸化させる工程などによって絶縁性を向上させる加工が必要となる。この加工は、煩雑であり、制約の多い条件の設定が必要となる。また、磁性体粉末を扁平形状に加工する工程が必要であり、煩雑である。
【0011】
また、樹脂中に多量の扁平形状の磁性体粉末を高密度に充填するため、磁性体は通常90質量%前後の量となり、電磁波吸収体の厚さが約1mm程度となる。また、磁性体粉は比重が大きいことから、電磁波吸収体が重いものになってしまう。このように電磁波吸収体が、厚く重いものであると、パッケージの小型化、軽量化、薄型化が図りにくくなる。また、結合剤である樹脂がわずかとなることから、物性面で脆いという欠点をもち、リワーク時に破損するなどの問題が残されている。
【特許文献1】特開平06−236935号公報
【特許文献2】特開2003−078277号公報
【特許文献3】特開2004−006591号公報
【特許文献4】特開平9−35927号公報
【特許文献5】特開2001−53487号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
よって本発明の目的は、準マイクロ波帯域から数十GHz帯域にわたって充分なキャビティ共振抑制効果を発揮し、小型化、軽量化、薄型化が図られ、イオンによる電子デバイスへの影響がないパッケージを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記課題を解決するために鋭意検討し、磁性体の磁気損失特性である、複素透磁率の虚数部透磁率のμ”を大きくするため、形状異方性等の磁気異方性効果を期待して、磁性体を原子状態で有機高分子の基体の一部に分散一体化させることを検討した。その結果、準マイクロ波帯域から数十GHz帯域で高い共鳴周波数を有することによる電磁波抑制効果を持ち、これに伴い、充分なキャビティ共振抑制効果を示す良好な電磁波抑制体を見出し、これを用いたパッケージを得るに至った。
【0014】
本発明のパッケージは、電子デバイスが搭載された回路基板と、回路基板との間に空間が形成されるように、電子デバイスを覆う筐体と、該空間に配置された電磁波抑制体とを具備し、前記電磁波抑制体が、有機高分子を含有する基体と、該基体の一部と磁性体とが一体化してなる複合層とを有するものであることを特徴とするものである。
【0015】
ここで、前記複合層は、物理的蒸着法により前記基体に磁性体を分散させた層であることが望ましい。
また、基体に磁性体を物理的蒸着させる時の有機高分子の剪断弾性率は、1×104 〜5×1010Paであることが望ましい。
さらに、物理的蒸着法は、対向ターゲット型マグネトロンスパッタリング法であることが望ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明のパッケージは、パッケージ内の空間(キャビティ)に配置された電磁波抑制体が、有機高分子を含有する基体と、該基体の一部と磁性体とが一体化してなる複合層とを有するものであるため、準マイクロ波帯域から数十GHz帯域にわたって充分なキャビティ共振抑制効果を発揮し、小型化、軽量化、薄型化が図られ、イオンによる電子デバイスへの影響がない。
【0017】
ここで、前記複合層が、物理的蒸着法により前記基体に磁性体を分散させた層であれば、軽量化、薄型化がさらに図られ、電磁波抑制体の物性が良好となり、より高いキャビティ共振抑制効果を得ることができる。
また、基体に磁性体を物理的蒸着させる時の有機高分子の剪断弾性率が、1×104 〜5×1010Paであれば、軽量化、薄型化がさらに図られ、電磁波抑制体の物性が良好となり、より高いキャビティ共振抑制効果を得ることができる。
さらに、物理的蒸着法が、対向ターゲット型マグネトロンスパッタリング法であれば、軽量化、薄型化がさらに図られ、電磁波抑制体の物性が良好となり、より高いキャビティ共振抑制効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明について詳細に説明する。
<パッケージ>
図1および図2は、本発明のパッケージの一例を示す図である。このパッケージ10は、電子デバイス11が搭載された回路基板12と、回路基板12との間にキャビティ13(空間)が形成されるように、電子デバイス11を覆う筐体14と、キャビティ13に配置された電磁波抑制体20とを具備して概略構成されるものである。
【0019】
電子デバイス11としては、MIC(マイクロ波集積回路)、MMIC(モノリシックMIC)、HMIC(ハイブリッドMIC)等;これらに、フィルター、アンプ、L/C/R受動部品等を組み合わせたモジュール等が挙げられる。
筐体14は、電子デバイス11から発振される不要な高周波ノイズを遮蔽し、他の回路への電磁波障害を防止するためのシールドボックスであり、電子デバイス11に電気的に接続される入力用外部リード15および出力用外部リード16が設けられている。
筐体14の材質としては、アルミニウム、銅、鉄、SUS等の金属;金属メッキを有するプラスチック、金属が蒸着されたプラスチック等が挙げられる。
【0020】
<電磁波抑制体>
電磁波抑制体20は、図3に示すように、有機高分子を含有する基体21と、該基体21の一部と磁性体とが一体化してなる複合層22とを有するものである。
【0021】
(基体)
基体21を構成する有機高分子としては、例えば、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリエーテル、ポリケトン、ポリイミド、ポリウレタン、ポリシロキサン、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂等の樹脂;天然ゴム、イソブレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム等のジエン系ゴム;ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム等の非ジエン系ゴム等が挙げられる。これらは熱可塑性であってもよく、熱硬化性であってもよく、その未硬化物であってもよい。また、上述の樹脂、ゴム等の変性物、混合物、共重合物であってもよい。
【0022】
有機高分子は、硬化剤、補強剤、その他改質剤等の各種機能性充填剤を含有していてもよい。
また、有機高分子は、無機物であるエアロジル、発泡シリカ、セライト等の充填剤を含有し、剪断弾性率が調整されたものであってもよい。また、超微粒子の捕獲がされるようなポーラスな表面による活性を持つようなものであってもよい。
【0023】
また、熱伝導性の良好な充填剤を含有した有機高分子を基体21とすれば、放熱特性を兼ね備えた電磁波抑制体となる。
さらに、誘電体粉末を含有した有機高分子を基体21とすれば、空間とのインピーダンス整合が図られるために、電磁波の不要輻射の反射が起こり難くなる。誘電体としては、高周波領域での誘電率が大きく、かつ誘電率の周波数特性が比較的平坦なものが好ましく、例えば、チタン酸バリウム系セラミック、チタン酸ジルコン酸系セラミック、鉛ペロブスカイト系セラミック等が挙げられる。
【0024】
有機高分子の剪断弾性率が低いほど、後述する磁性体の物理的蒸着の際に、磁性体が基体21に入り込みやすくなる。すなわち、磁性体の有機高分子への侵入または磁性体の衝突による有機高分子の変形、流動により、磁性体が基体21表面から数ミクロンに渡り分散しやすくなる。よって、有機高分子の剪断弾性率は、後述の磁性体の物理的蒸着時に、1×104 〜5×1010Paであることが好ましい。この範囲の剪断弾性率を有する有機高分子を含有する基体21に磁性体が物理的蒸着されることで、磁性体が原子状態で基体21に均一に分散し、基体21の一部と磁性体が一体化した複合層22を容易に形成することができる。そして、このような複合層22は、より高い電磁波抑制効果を発揮することができる。また、電磁波抑制体の軽量化、薄型化がさらに図られ、電磁波抑制体の物性が良好となる。
【0025】
有機高分子の剪断弾性率は、1×104 〜1×108 Paがより好ましく、1×104 〜1×107 Paがさらに好ましく、1×104 〜106 Paが特に好ましい。また、磁性体を物理的蒸着する時に、所望の剪断弾性率とするために、必要に応じて、分解または蒸発を起こさない温度、例えば100〜300℃に加熱することもできる。このような剪断弾性率を有する有機高分子としては、おおよそゴム硬度で90°(JIS−A)以下の弾性体が挙げられる。有機高分子の剪断弾性率が1×108 Paを超えても、5×1010Pa以下であれば、軽度の変形または流動が可能となるので、表面に凹凸を付けた基体を用いる、または一度の蒸着量を下げて、磁性体が連続層を形成しない程度の蒸着量の複合層を複数層積層して合計の蒸着量を稼ぐことにより、良好な電磁波抑制効果を有するものとすることができる。
【0026】
剪断弾性率の測定方法としては、以下のような方法が知られている。
(1)JIS K7113に規定されている引張応力と歪との関係から引張り弾性率を求め、これをもとに下記式から剪断弾性率を求める。
剪断弾性率=引張り弾性率/(2×(1+ポアソン比))
ここで2×(1+ポアソン比)の値は、剛直な高分子からゴム状の弾性体まで、おおよそ2.6〜3.0である。
(2)温度特性を把握できる粘弾性率測定装置を用い、試験モードを剪断モードにして剪断弾性率を測定する。
(3)粘弾性率測定装置を用い、試験モード引張りモードにして貯蔵弾性率G’および損失弾性率G”を測定し、下記式から複素弾性率G* を求め、複素弾性率を引張り弾性率として、上記式から剪断弾性率を求める。
G* =√((G’)2 +(G”)2)
本発明における剪断弾性率は、粘弾性率測定装置として、レオメトリック・サイエンティフィック社製ソリッドアナライザーRSA−IIを用い、剪断モードにて、測定周波数1Hzの条件で測定した値とする。
【0027】
基体21は、樹脂、ゴム等の有機高分子を含有するものであるため、可撓性を有し、軽く、薄い、強靭なものとなり、配置の作業性の良好な電磁波抑制体となる。さらに、有機高分子を含有する基体が、硬化性樹脂であれば、磁性体が未硬化の樹脂中に均一分散され、樹脂が硬化した後では、磁性体が結晶化して微粒子に成長することなく、磁性体が原子状態で分散一体化した複合層とすることができる。
【0028】
(複合層)
複合層22は、物理的蒸着法により基体21に磁性体を分散させた層であることが好ましい。このような層とすることで、磁性体が原子状態で基体21と複合一体化されて、磁気異方性が高められ、高周波帯域における電磁波抑制効果を発揮するものとなる。
【0029】
物理的蒸着法により基体21に磁性体を分散させて形成される複合層22は、物理的蒸着された磁性体が均質膜を形成することなく、原子状態で基体21中に分散一体化してなるものである。
図4の透過型電子顕微鏡写真に示すように、複合層22は、非常に小さな結晶として数Å間隔の磁性体原子が配列された結晶格子が観察される部分と、非常に小さい範囲で磁性体が存在しない有機高分子のみが観察される部分と、磁性体原子が結晶化せず有機高分子中に分散して観察される部分からなっている。すなわち、磁性体が明瞭な結晶構造を有する微粒子として存在を示す粒界は観察されず、ナノメーターレベルで磁性体と有機高分子とが一体化した複雑なヘテロ構造(非均質・不斉構造)を有しているものと考えられる。
【0030】
複合層22を有する電磁波抑制体20は、磁気共鳴周波数が8GHz以上となり、周波数8GHzにおける複素透磁率の虚数部透磁率μ”は周波数5GHzにおける複素透磁率の虚数部透磁率μ”よりも大きく、虚数部透磁率μ”が重畳されて、準マイクロ波帯域の全域のわたって大きな虚数部透磁率μ”を示すものとなる。(実施例の図10参照。)
【0031】
(磁性体)
物理的蒸着に用いられる磁性体としては、金属系軟磁性体、酸化物系軟磁性体、窒化物系軟磁性体等が主に用いられる。これらは、1種類を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0032】
金属系軟磁性体としては、鉄、コバルト、ニッケル、それらの合金が挙げられる。鉄合金としては、具体的には、Fe−Ni、Fe−Co、Fe−Cr、Fe−Si、Fe−Al、Fe−Cr−Si、Fe−Cr−Al、Fe−Al−Si、Fe−Pt等が挙げられる。これらの金属系軟磁性体は、1種類を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、ニッケルは、単独で用いた場合に、酸化に対して抵抗力があるので好ましい。
【0033】
酸化物系軟磁性体としては、フェライトが好ましい。具体的には、MnFe2O4、CoFe2O4、NiFe2O4、CuFe2O4、ZnFe2O4,MgFe2O4、Fe3O4、Cu−Zn−フェライト、Ni−Zn−フェライト、Mn−Zn−フェライト、Ba2Co2Fe12O22、Ba2Ni2Fe12O22、Ba2Zn2Fe12O22、Ba2Mn2Fe12O22、Ba2Mg2Fe12O22、Ba2Cu2Fe12O22、Ba3Cu2Fe24O41が挙げられる。これらのフェライトは、1種類を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
窒化物系軟磁性体としては、Fe2N、Fe3N、Fe4N、Fe16N2等が挙げられる。これらの窒化物系軟磁性体は、透磁率が高く、耐食性が高いので好ましい。
なお、基体21に磁性体を物理的蒸着させる際には、磁性体はプラズマ化あるいはイオン化された磁性体原子として、基体21に入り込むので、基体21中に微分散された磁性体の組成は、蒸発材料として用いた磁性体の組成と必ずしも同一であるとは限らない。また、基体21の一部と反応し、磁性体が常磁性体や反磁性体になるなどの変化が生じる場合もある。
【0035】
(物理的蒸着)
まず、物理的蒸着法(PVD)の一般的な説明を行う。
物理蒸着法(PVD)とは、通常、真空にした容器の中で蒸発材料(ターゲット)を何らかの方法で気化させ、近傍に置いた基板上に堆積させて薄膜を形成する方法である。
物理蒸着法を蒸発材料の気化方法で分類すると、蒸発系とスパッタリング系に分けられる。蒸発系としては、EB蒸着、イオンプレーティング等が挙げられ、スパッタリング系としては、マグネトロンスパッタリング、対向ターゲット型マグネトロンスパッタリング等が挙げられる。
【0036】
EB蒸着は、蒸発粒子のエネルギーが1eVと小さいので、基板のダメージが少なく、膜がポーラスになりやすく、膜強度が不足する傾向があるが、磁性体膜の固有抵抗は高くなるという特徴がある。
【0037】
イオンプレーティングによれば、アルゴンガスおよび蒸発粒子のイオンは加速されて基板に衝突するため、EBよりエネルギーは大きく、付着力の強い膜を得ることができる。しかし、ドロップレットと呼んでいるミクロンサイズの粒子が多数付着してしまうと放電が停止してしまう。また、酸化物系磁性体を成膜するには、酸素などの反応性ガスを導入しなければならず、膜質コントロールが難しい。
【0038】
通常のマグネトロンスパッタリングは、磁界の影響で強いプラズマが発生するため成長速度が速く、磁性体が部分的に基体の中に潜り込んだ状態となり、三次元的に偏在して均質膜を形成しない状態で蒸着されるという特徴があるが、ターゲットの利用効率が低い。
ミラートロンスパッタリングなど、対向ターゲット型マグネトロンスパッタリングは、二枚のターゲットを向かい合わせに平行に配置し、対向するターゲット間にターゲット面の垂直な磁力線を印加して、プラズマを発生させ、対向するターゲットの外に置かれた基板に所望の薄膜を生成させる方法である。そのため、薄膜を再スパッタリングすることなく、成長速度がさらに速く、スパッタリングされた原子が衝突緩和することがない。
【0039】
本発明においては、これら物理蒸着法を利用し、基体21上に磁性体の均一な薄膜を形成させることなく、磁性体を原子状態で基体21に分散させる。そのため、以下の理由から対向ターゲット型マグネトロンスパッタリングが好適である。
有機高分子の共有結合エネルギーは、約4eVであり、具体的には、C−C、C−H、Si−O、Si−Cの結合エネルギーはそれぞれ3.6、4.3、4.6、3.3eVである。これに対して、対向ターゲット型マグネトロンスパッタリングでスパッタリングされた磁性体原子は、8eV以上の高いエネルギーを持っているので、有機高分子の化学結合を切断しながら衝突する。よって、磁性体原子が有機高分子である基体21の表面からおおよそ0.005〜5μm程度まで進入することができる。これは高エネルギーの磁性体原子の基体21表面への衝突により、磁性体原子と有機高分子との局部的なミキシングが生じたためと推定される。このような現象が生ずることにより、前述の複合層22のヘテロ構造をもたらすことができ、一度に大量の磁性体を分散させることができる。すなわち、一度の蒸着で、磁性体の蒸着質量を稼ぐことができることから、吸収減衰率の大きな電磁波抑制体20を容易に得ることができる。
【0040】
また、通常のマグネトロンスパッタリングでは磁力線が磁性体ターゲット中を通るのでターゲットの厚みによってスパッタレートが決まったり、放電が起きにくくなったりするのに対し、対向ターゲット型マグネトロンスパッタリングでは、磁場をターゲットのスパッタリング面に垂直に印加するため、磁性体をターゲットに用いても磁場が保持され、ターゲット厚みに関係なく高速スパッタリングができるという特徴がある。
【0041】
また、磁性体を物理的蒸着する方法によれば、メッキなどの液によるウエット加工によらずドライ加工が可能であり、不純物イオンは存在せず、不純物イオンによる電子デバイス、モジュール、回路基板等を損傷させるおそれのない電磁波抑制体20が得られる。
【0042】
1回の物理的蒸着操作における磁性体の蒸着質量は、磁性体単品の膜厚換算値で200nm以下が好ましい。これよりも厚いと、基体21の剪断弾性率にもよるが、基体21が磁性体を包含する能力に達し、磁性体が基体21に分散した複合層22ができずに、表面に堆積し、導通性を有する連続したバルクの均質膜が生成してしまう。それゆえ、磁性体の蒸着量は、100nm以下が好ましく、50nm以下がさらに好ましい。一方、電磁波抑制効果の点からは、磁性体の蒸着質量は、0.5nm以上であることが好ましい。蒸着質量は、ガラス、シリコン等の硬質基板上に同条件で磁性体を蒸着し、堆積した膜厚を測定することによって求められる。
【0043】
蒸着質量が小さくなると、電磁波抑制効果は、低減することから、基体21および複合層22を複数積層することのよって磁性体の総質量を増やすことができる。この総質量は、要求される電磁波抑制効果にもよるが、おおよそ合計の磁性体の膜厚換算値で10〜500nmが好ましい。また、必要に応じて、積層される層の一部を導通性のあるバルクの金属層とし、電磁波の反射特性をもたせることも可能である。さらには、誘電体を含有する層を設けることによって、電磁波抑制効果を調整することも可能である。
【0044】
(支持層)
本発明における電磁波抑制体は、ハンドリングを良好とするために、図5に示すように、基体21の裏面にさらに支持体層23を設けた電磁波抑制体24であってもよい。
物理的蒸着によって磁性体原子は、基体21の表面からおおよそ0.005〜5μm程度まで進入するため、基体21の厚さは5μm以上であればよい。実際には、基体21を5〜15μmとすることが好ましいが、この厚さでは、電磁波抑制体をハンドリングすることが難しい場合には、支持層体23を設けた電磁波抑制体24が有効である。
【0045】
支持体層23としては、キャビティ13に電磁波抑制体20を配置する組立装置、手法に合致した厚さおよび物性を有する材料を選定すればよく、各種のプラスチックフィルムであれば、特に限定されるものではない。各種のプラスチックフィルムの中で、耐熱性が良好なものには、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリフェニレンサルファイド等のフィルムが挙げられる。後述する粘・接着剤層25を支持体層23上に設ける場合、その粘・接着剤に適合するようなフィルムを選定するとよい。
【0046】
支持体層23の厚さは、特に制限されるものではないが、ハンドリングに必要な最小限の厚みとしては、約5μmが下限であり、本発明の目的である薄型化および作業性からは、5〜30μm程度が好ましい。キャビティ13に充分なスペースがあれば、この厚さを超えるものであってもよい。
【0047】
(粘・接着剤層)
本発明における電磁波抑制体は、キャビティ13内面、電子デバイス、モジュールの上面に容易に固定することが可能となる点から、図6に示すように、支持体層23上に粘・接着剤層25を設け、その上にセパレータフィルム26を設けた電磁波抑制体27、または図7に示すように、複合層22上に粘・接着剤層25を設け、その上にセパレータフィルム26を設けた電磁波抑制体28であってもよい。
【0048】
粘着剤としては、アウトガスなどを考慮し、電子デバイスに影響を及ぼさないものを選定すればよく、具体的には、アクリル系、ゴム系の粘着剤が挙げられる。耐熱性または熱伝導性を考慮した粘着剤を用いてもよい。
接着剤としては、同様に電子デバイスに影響を及ぼさないものを選定すればよく、具体的には、エポキシ系、ポリイミド系、変性ポリアミド系の接着剤が挙げられる。耐熱性または熱伝導性を考慮した接着剤を用いてもよい。
複合層22上に粘・接着剤層25を設ける場合には、電磁波抑制効果を阻害せず、複合層22を物理的に破壊しないような粘・接着剤を選定する。
【0049】
(電磁波抑制体の配置)
電磁波抑制体20は、所定の形状に切り出す加工、抜き加工が容易であり、キャビティ13内部、すなわち筐体14と電子デバイス11、回路、モジュールとの間に、粘着剤または接着剤を用いた簡便な方法によって配置できる。電磁波抑制体20は、キャビティ共振の抑制が効率的に可能となる部位に配置すればよく、電磁波抑制体20に粘・接着剤層を設けてキャビティ13の内面の一部または全体、電子デバイスの表面、回路基板の回路上、モジュールの表面等に配置すればよい。電磁波抑制体20を配置する際には、熱伝導性の良好な部材をいっしょに配置してもよい。
【0050】
電磁波抑制体20のキャビティ13内における配置部位は、キャビティ共振抑制効果が発揮される部位として、通常、キャビティ13内部の天面の全てを覆うように配置される。また、抑制効果がより発揮されることから、キャビティ13の天面および回路基板12の四隅に配置してもよく、電子デバイス11、モジュールの表面の一部またはすべてに配置してもよい。電磁波抑制体20の最適な配置部位は、シミュレーション、実装測定等の結果から決定すればよい。
また、電磁波抑制体20の形状は、シミュレーション、実装測定等から最適な形状とすればよい。
【0051】
また、実装測定によって、キャビティ共振抑制の部位がずれているような場合には、粘着面を一度剥がし、再度貼付する作業を必要とするが、電磁波抑制体20は、可撓性および強靭性をもつことから、破壊せずに、容易なリワーク作業が可能となる。
【0052】
また、パッケージ10の内部に基体21をあらかじめ配置し、これに磁性体を物理的蒸着してもよい。例えば、図8に示すように、基体21を筐体14の内面のコーナー部分に塗布または粘・接着剤により配置し、これに磁性体を物理的蒸着し、複合層22を形成する。または、図9に示すように、電子デバイス11および回路基板12の表面にも基体21を配置し、これに磁性体を物理的蒸着し、複合層22を形成する。物理的蒸着法としては、低温蒸着であり、電子デバイス11、回路基板12等を破損せずに、磁性体を物理的蒸着することが可能であることから、対向ターゲット型マグネトロンスパッタリング法が好ましい。
【0053】
(作用)
以上説明した電磁波抑制体20にあっては、理論的には完全に明らかになっていないが、基体21と磁性体とが一体化された複合層22が形成されているので、少ない磁性体であっても、そのナノメーターレベルのヘテロ構造に由来する量子効果、材料固有の磁気異方性、形状異方性、または外部磁界による異方性等の影響で、高い共鳴周波数を持つ。これにより、優れた磁気特性を発揮し、少ない磁性体であっても、高い周波数帯域において、電磁波抑制効果を発揮することができる。このように充分な電磁波抑制効果を有する電磁波抑制体20をキャビティ13内に配置されたパッケージ10は、準マイクロ波帯域全体にわたって充分なキャビティ共振抑制効果を発揮する。
【0054】
また、電磁波抑制体20にあっては、複合層22を形成するために用いられる磁性体の量が少なく、複合層22の厚さがきわめて薄い。よって、有機高分子を含有する基体21を薄肉化できる、結果、電磁波抑制体20が薄型化される。また、複合層22を形成するために用いられる磁性体の量が少ないため、結果、電磁波抑制体20が軽量化される。このように薄型化、軽量化された電磁波抑制体20をキャビティ13内に配置されたパッケージ10は、小型化、軽量化、薄型化が可能となる。
また、電磁波抑制体20の複合層22の形成には、メッキ液を使用する必要がないので、イオンによる電子デバイスへの影響がないパッケージ10が得られる。
【実施例】
【0055】
以下に実施例を示す。
(評価)
透磁率測定:
凌和電子製、超高周波透磁率測定装置PMM−9G1を用いた。
断面観察:
日立製作所製、透過型電子顕微鏡H9000NARを用いた。
剪断弾性率:
剪断弾性率は、粘弾性率測定装置として、レオメトリック・サイエンティフィック社製ソリッドアナライザーRSA−IIを用い、剪断モードにて、測定周波数1Hzの条件で測定した。
【0056】
電磁波抑制特性:
伝送特性:キーコム(株)製、近傍界用電磁波吸収材料測定装置を用いて、Sパラメーター法によるS11(反射減衰量)およびS21(透過減衰量)を測定した。ネットワークアナライザーとしては、アンリツ(株)製、ベクトルネットワークアナライザー37247Cを用い、50Ωのインピーダンスを持つマイクロストリップラインのテストフィクスチャーとしては、キーコム(株)製、TF−3A、TF−18A を用いた。
【0057】
キャビティ共振測定:
実装デバイス:UMS社製 MMIC「CHA2069RAF」。
実装基板:Rogers基板「RF4003」(MLS基板)。
出力信号に(株)アドバンテスト製、スペクトラムアナライザR3132を接続。
【0058】
[実施例1]
支持体層である15μmのポリイミドフィルムの上に有機高分子であるBステージ状のエポキシ樹脂(硬化前の25℃における剪断弾性率8×106 Pa、硬化後の25℃における剪断弾性率2×109 Pa)を塗布し、厚さ10μmの基体を設けた。硬化前の常温(25℃)において、基体の上に膜厚換算で10nmのFe−Ni系軟磁性体金属を、対向ターゲット型マグネトロンスパッタリング法により物理的蒸着させ複合層を形成した。この際、基体の温度を25℃に保ち、蒸発粒子が8eVの粒子エネルギーを持つようにわずかに負の電圧を印加し、スパッタリングを行った。これを40℃で6時間加熱し、さらに120℃で2時間加熱し、エポキシ樹脂を硬化させて、厚さ25μmの電磁波抑制体を得た。
【0059】
電磁波抑制体の一部をミクロトームで薄片にし、断面にイオンビームポリシャーを施し、高分解能透過型電子顕微鏡により断面を観察したところ、複合層22の厚さは約30nmであった。断面観察写真を図4に示す。
【0060】
また、透磁率測定装置を用いて電磁波抑制体の透磁率を測定した結果を図10に示す。周波数が高いほどμ”も大きな値を示しており、約3GHzでのμ”の相対強度値は250であり、約8GHzでのμ”の相対強度値は3GHzの値の約7倍と大きな値となっている。また、磁気共鳴周波数(μ’のピーク値の半分の値になる周波数で、かつピーク値の周波数より大きい周波数)は、装置の測定限界の9GHzを超えていた。
【0061】
また、図11および図12にSパラメータ法による電磁波抑制体の伝送特性を示す。反射減衰量(S11)および透過減衰量(S21)は、1GHzでそれぞれ−7.5dB、−5.5dBであり、10GHzでは、−14dB、−20dBであり、電磁波抑制効果のバランスの良好なものであった。
【0062】
また、電磁波の消費エネルギーの指標を表すロス電力比は、下記式(1)〜(3)から算出される。その結果を図13および図14に示す。0.2GHz近辺から急激に立ち上がり、1GHzですでに0.54と大きな値を示し、10GHzで0.95を示している。これは、準マイクロ波帯域全体にわたって、大きな値であることを示している。
(ロス電力比)Ploss/Pin=1−(|Γ|2+|Τ|2) (1)
(反射減衰量)S11=20×log|Γ| (2)
(透過減衰量)S21=20×log|Τ| (3)
【0063】
この電磁波抑制体の支持体層表面に、アクリル系粘着剤(エマルジョンタイプ)を15μm厚となるように塗工して粘・接着剤層を設け、さらにセパレータである38μmのポリエステルフィルムを貼り付け、厚さ78μmの電磁波抑制体を得た。
【0064】
図1および図2に示す構成の、18〜31GHzの高周波低ノイズアンプのデバイスであるUMS社製のMMIC「CHA2069RAF」を搭載したMSL基板(Rogers基板)をアルミニウム筐体のシールドカバーで覆い密閉したパッケージを準備し、入力信号を外部信号源とし、出力信号にスペクトラムアナライザを接続した。
【0065】
まず、この「CHA2069RAF」は、シールドカバーで覆わない状態では、入力信号に対して、18〜31GHz帯域では、規格性能範囲の高周波発振ノイズレベル(2.5〜3.5dB)の出力信号であることをスペクトラムアナライザで確認した。結果を図15に示す。
【0066】
これに、キャビティの大きさが幅10mm×奥行15mm×高さ2.5mmであるアルミニウム筐体のシールドカバーを覆いかぶせたところ、19GHz近辺において、規格性能範囲を超える高周波発振ノイズレベルの出力信号(約5.6dB)が測定され、キャビティ共振が発生したことを確認した。結果を図16に示す。これは、シールドカバーで覆うことで、出力電力が入力電力にフィードバックされて発振されたことを示している。
【0067】
電磁波抑制体を10mm×15mmに切出し、セパレータフィルムを剥離して(貼付厚さ40μm)、デバイスの上部のキャビティ天面に粘着固定した。同様に出力信号を測定したところ、18〜20GHz近辺で発生していた発振が止まり、キャビティ共振ノイズは、規格性能範囲の約3dBに抑制されたことを確認した。結果を図17に示す。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明のパッケージは、準マイクロ波帯域のキャビティ共振の抑制に効果が高く、電子デバイスの高周波化に充分対応できるものであり、また、パッケージの小型化、軽量化、薄型化の要望に応えることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明のパッケージの一例を示す分解斜視図である。
【図2】本発明のパッケージの一例を示す概略断面図である。
【図3】本発明における電磁波抑制体の一例を示す概略断面図である。
【図4】本発明における電磁波抑制体における複合層の高分解能透過型電子顕微鏡写真である。
【図5】本発明における電磁波抑制体の他の例を示す概略断面図である。
【図6】本発明における電磁波抑制体の他の例を示す概略断面図である。
【図7】本発明における電磁波抑制体の他の例を示す概略断面図である。
【図8】パッケージ内部への電磁波抑制体の配置方法の一例を示す概略断面図である。
【図9】パッケージ内部への電磁波抑制体の配置方法の他の例を示す概略断面図である。
【図10】実施例1における電磁波抑制体の複素透磁率を示すグラフである。
【図11】実施例1における電磁波抑制体の0〜3GHzにおけるS11(反射減衰量)およびS21(透過減衰量)を示すグラフである。
【図12】実施例1における電磁波抑制体の3〜18GHzにおけるS11(反射減衰量)およびS21(透過減衰量)を示すグラフである。
【図13】実施例1における電磁波抑制体の0〜3GHzにおけるロス電力比を示すグラフである。
【図14】実施例1における電磁波抑制体の3〜18GHzにおけるロス電力比を示すグラフである。
【図15】シールドケースのない場合における、実施例1のパッケージからの出力信号を示すグラフである。
【図16】デバイスをシールドケースで覆った場合における、実施例1のパッケージからの出力信号を示すグラフである。
【図17】キャビティ内に電磁波抑制体を配置した場合における、実施例1のパッケージからの出力信号を示すグラフである。
【符号の説明】
【0070】
10 パッケージ
11 電子デバイス
12 回路基板
13 キャビティ(空間)
14 筐体
20 電磁波抑制体
21 基体
22 複合層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子デバイスが搭載された回路基板と、
回路基板との間に空間が形成されるように、電子デバイスを覆う筐体と、
該空間に配置された電磁波抑制体とを具備し、
前記電磁波抑制体が、有機高分子を含有する基体と、該基体の一部と磁性体とが一体化してなる複合層とを有するものであることを特徴とするパッケージ。
【請求項2】
前記複合層が、物理的蒸着法により前記基体に磁性体を分散させた層であることを特徴とする請求項1記載のパッケージ。
【請求項3】
基体に磁性体を物理的蒸着させる時の有機高分子の剪断弾性率が、1×104 〜5×1010Paであることを特徴とする請求項2記載のパッケージ。
【請求項4】
物理的蒸着法が、対向ターゲット型マグネトロンスパッタリング法であることを特徴とする請求項2または請求項3記載のパッケージ。
【請求項1】
電子デバイスが搭載された回路基板と、
回路基板との間に空間が形成されるように、電子デバイスを覆う筐体と、
該空間に配置された電磁波抑制体とを具備し、
前記電磁波抑制体が、有機高分子を含有する基体と、該基体の一部と磁性体とが一体化してなる複合層とを有するものであることを特徴とするパッケージ。
【請求項2】
前記複合層が、物理的蒸着法により前記基体に磁性体を分散させた層であることを特徴とする請求項1記載のパッケージ。
【請求項3】
基体に磁性体を物理的蒸着させる時の有機高分子の剪断弾性率が、1×104 〜5×1010Paであることを特徴とする請求項2記載のパッケージ。
【請求項4】
物理的蒸着法が、対向ターゲット型マグネトロンスパッタリング法であることを特徴とする請求項2または請求項3記載のパッケージ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2006−93415(P2006−93415A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−277170(P2004−277170)
【出願日】平成16年9月24日(2004.9.24)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年9月24日(2004.9.24)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】
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