パティキュレートフィルタの故障検出装置
【課題】DPFの故障を精度良く検出できる故障検出装置を提供すること。
【解決手段】DPFの下流にPM量を検出する電極式のPMセンサを設ける。DPFに流入される流入PM量を推定する(S11)。故障時におけるDPFによるPMの捕集率を推定する(S12)。流入PM量及び捕集率に基づいて故障時におけるDPFから流出される流出PM量を推定する(S13)。電極温度等に基づいてPMセンサのPM付着率を推定する(S14)。流出PM量及びPM付着率に基づいて故障時におけるPMセンサのPM付着量を推定する(S15)。PM付着量の積算値がPMセンサの通電が開始される通電付着量以上か否かを判断する(S16)。通電付着量以上の場合には(S16:Yes)、PMセンサの出力の有無を確認する(S17)。出力されている場合には(S17:Yes)DPFが故障していると判定する(S18)。
【解決手段】DPFの下流にPM量を検出する電極式のPMセンサを設ける。DPFに流入される流入PM量を推定する(S11)。故障時におけるDPFによるPMの捕集率を推定する(S12)。流入PM量及び捕集率に基づいて故障時におけるDPFから流出される流出PM量を推定する(S13)。電極温度等に基づいてPMセンサのPM付着率を推定する(S14)。流出PM量及びPM付着率に基づいて故障時におけるPMセンサのPM付着量を推定する(S15)。PM付着量の積算値がPMセンサの通電が開始される通電付着量以上か否かを判断する(S16)。通電付着量以上の場合には(S16:Yes)、PMセンサの出力の有無を確認する(S17)。出力されている場合には(S17:Yes)DPFが故障していると判定する(S18)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気に含まれるパティキュレートマターを捕集するパティキュレートフィルタの故障検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ディーゼルエンジン等の内燃機関から排出される煤を抑制するために、煤を構成する粒状物資、いわゆるパティキュレートマター(PM)を捕集するディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF、パティキュレートフィルタ)が排気通路に設けられることがある。そのDPFは、DPFに堆積されたPMを燃焼除去する再生処理が定期的に行われることで、繰り返し使用できるようになっている。しかし、その再生処理などが原因でDPFが過昇温する場合があり、その過昇温が原因でDPFが溶損したり割れたりする場合(DPFの故障)がある。DPFが故障すると、そのDPFを通過してしまうPMが多くなってしまうので、排ガス規制を満たさなくおそれがでてくる。また、近年、車両に搭載されるコンピュータが行う自己故障診断(OBD:On−board−diagnostics)の要請により、DPFの故障を検出する故障検出装置の開発が望まれている。そして、従来、その故障検出装置として、PM量を検出する電極式のPMセンサ(特許文献1、2参照)を利用した故障検出装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
電極式のPMセンサは、絶縁基板上に一対の電極が設けられる形で構成される。そのPMセンサは、排気通路に設けられ、一対の電極間に電圧が印加されて使用される。排気に含まれるPMは、PMセンサの一対の電極間に付着する。PMはカーボン粒子から構成されており導電性を有するので、PMの付着量が多くなると電極間に電流が流れる(通電する)。その電流の値は、PMの付着量に応じた値、つまり、排気に含まれるPM量に応じた値となるので、その電流値(電流値に相当する電極間の抵抗値)を読み取ることでPM量を検出するというものである。DPFが故障するとDPFを通過するPM量が多くなり、PMセンサの電極間の抵抗値が小さくなることから、特許文献1の故障検出装置では、PMセンサの抵抗値(PMセンサの出力)が所定基準より小さくなったことを検出した場合に、DPFが故障したと判定している。つまり、特許文献1の故障検出装置では、PMセンサの出力の絶対値に基づいて、DPFの故障を検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−144577号公報
【特許文献2】特開昭62−35252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、PMセンサの電極間に付着したPMの電気抵抗は温度の影響によって大きく変化するので、PMセンサの出力の絶対値からPM量を推定することは困難である。つまり、特許文献1の故障検出装置では、DPFが正常であるにも関わらず故障と判定したり、反対に、故障しているにも関わらず正常であると判定したりする可能性があり、精度良くDPFの故障を検出しているとは言えない。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、パティキュレートフィルタの故障を精度良く検出できるパティキュレートフィルタの故障検出装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係るパティキュレートフィルタの故障検出装置は、内燃機関の排気通路に設けられた、排気に含まれるパティキュレートマターを捕集するパティキュレートフィルタと、
前記排気通路の前記パティキュレートフィルタの下流に設けられ、前記パティキュレートフィルタの下流の排気に含まれるパティキュレートマターの量であるPM量を検出するPMセンサであって、電極を有し、その電極に付着したパティキュレートマターを流れる電流によって前記PM量を検出するPMセンサと、
前記電極に付着したパティキュレートマターによって通電が開始される時期を通電時期として、前記パティキュレートフィルタが故障した場合における前記通電時期である故障時通電時期を推定する時期推定手段と、
実際の前記通電時期が前記故障時通電時期よりも先の場合に、前記パティキュレートフィルタが故障していると判定する故障判定手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
これによれば、時期推定手段が、パティキュレートフィルタが故障した場合におけるPMセンサの通電時期(故障時通電時期)を推定する。PMセンサの通電時期は、電極間に付着したPMの付着量に影響されるものであり、電極間に付着したPMの温度変化(PMの電気抵抗変化)にはそれほど影響されない。また、パティキュレートフィルタが故障している場合には、パティキュレートフィルタを通過するPMが多くなるので、正常時に比べて早くPMセンサが通電する。よって、故障判定手段が、実際の通電時期が推定の故障時通電時期よりも先の場合にパティキュレートフィルタが故障していると判定しているので、電極間に付着したPMの温度変化に関わらず、パティキュレートフィルタの故障を精度良く検出できる。
【0009】
また、本発明におけるPMセンサは、前記PMセンサを加熱して前記電極に付着したパティキュレートマターを燃焼除去するヒータを含み、
前記時期推定手段は、前記ヒータによる前記燃焼除去後における前記故障時通電時期を推定するものであることを特徴とする。
【0010】
これによれば、PMセンサはPMを燃焼除去するヒータを含んでいるので、そのヒータによってPMを燃焼除去することにより、PMセンサを継続的に使用することができる。この場合、時期推定手段が燃焼除去後における故障時通電時期、つまり、燃焼除去されて電極間にPMが付着されていない状態からの故障時通電時期を推定しているので、精度の高い故障時通電時期の推定値を得ることができる。
【0011】
また、本発明における時期推定手段は、前記パティキュレートフィルタに流入するPM量である流入PM量を推定する流入PM量推定手段と、
前記パティキュレートフィルタが故障した場合における前記パティキュレートフィルタによる前記パティキュレートマターの捕集率である故障時捕集率を推定する捕集率推定手段と、
前記流入PM量推定手段が推定した前記流入PM量と前記捕集率推定手段が推定した前記故障時捕集率とに基づいて、前記パティキュレートフィルタが故障した場合における前記パティキュレートフィルタから流出される前記PM量である故障時流出PM量を推定する流出PM量推定手段と、を含み、
前記時期推定手段は、前記流出PM量推定手段が推定した前記故障時流出PM量に基づいて前記故障時通電時期を推定することを特徴とする。
【0012】
これによれば、パティキュレートフィルタが故障すると、正常時に比べてPMの捕集率が低下してDPFから流出される流出PM量が増加するところ、捕集率推定手段がパティキュレートフィルタの故障時における故障時捕集率を推定し、流出PM量推定手段が流入PM量とその故障時捕集率とに基づいて故障時流出PM量を推定するので、精度の高い故障時流出PM量の推定値を得ることができる。PMセンサの通電時期はその故障時流出PM量に影響され、時期推定手段が故障時流出PM量に基づいて故障時通電時期を推定しているので、精度の高い故障時通電時期の推定値を得ることができる。
【0013】
さらに、本発明における時期推定手段は、前記パティキュレートフィルタの下流の排気に含まれる全パティキュレートマターのうち、前記電極に付着されるパティキュレートマターの比率を示すPM付着率を推定する付着率推定手段と、
その付着率推定手段が推定した前記PM付着率と前記故障時流出PM量とに基づいて、前記パティキュレートフィルタが故障した場合における前記電極へのパティキュレートマターの付着量である故障時PM付着量を時間の経過にともなって積算して算出する付着量算出手段と、を含み、
前記時期推定手段は、前記付着量算出手段が算出した前記故障時PM付着量が前記通電時期の付着量として予め定められた通電付着量以上となった時期を前記故障時通電時期と推定するものであることを特徴とする。
【0014】
これによれば、通電時期は電極間に付着したPM付着量の積算値に影響されるところ、付着量算出手段が時間の経過にともなって積算して故障時PM付着量を算出し、時期推定手段がその故障時PM付着量が通電付着量以上となった時期を故障時通電時期と推定するので、精度の高い故障時通電時期の推定値を得ることができる。この場合、PM付着量はPM付着率に影響されるところ、付着率推定手段がPM付着率を推定し、付着量算出手段がそのPM付着率と故障時流出PM量とに基づいて故障時PM付着量を算出するので、精度の高い故障時PM付着量の推定値を得ることができる。
【0015】
また、本発明における捕集率推定手段は、前記パティキュレートフィルタに堆積されているPM堆積量を算出する堆積量算出手段を含み、その堆積量算出手段が算出した前記PM堆積量に基づいて前記故障時捕集率を推定するものであることを特徴とする。
【0016】
これによれば、捕集率はPM堆積量に応じて変化するという知見を得ているところ、捕集率推定手段がPM堆積量に基づいて故障時捕集率を推定するので、精度の高い故障時捕集率の推定値を得ることができる。
【0017】
また、本発明における捕集率推定手段は、排気流量を算出する排気流量算出手段を含み、その排気流量算出手段が算出した前記排気流量に基づいて前記故障時捕集率を推定するものであることを特徴とする。
【0018】
これによれば、捕集率は排気流量に応じて変化するという知見を得ているところ、捕集率推定手段が排気流量に基づいて故障時捕集率を推定するので、精度の高い故障時捕集率の推定値を得ることができる。
【0019】
また、本発明における付着率推定手段は、前記電極の温度を推定する電極温度推定手段を含み、その電極温度推定手段が推定した前記電極の温度が高いほど小さくなる前記PM付着率を推定するものであることを特徴とする。
【0020】
これによれば、PMセンサの電極の温度が高いほど熱泳動の影響によってPM付着率が低下するという知見を得ているところ、電極温度推定手段が電極の温度を推定し、付着率推定手段がその電極の温度が高いほど小さくなるPM付着率を推定するので、精度の高いPM付着率の推定値を得ることができる。
【0021】
また、本発明において、前記ヒータの電気抵抗であるヒータ抵抗を測定するヒータ抵抗測定手段を備え、前記電極温度推定手段は、前記ヒータ抵抗測定手段が測定した前記ヒータ抵抗に基づいて前記電極の温度を推定するものであることを特徴とする。
【0022】
これによれば、電極の温度はヒータ抵抗に応じた温度となるという知見を得ているところ、ヒータ抵抗測定手段がヒータ抵抗を測定し、電極温度推定手段がそのヒータ抵抗に基づいて電極の温度を推定するので、精度の高い電極の温度の推定値を得ることができる。
【0023】
また、本発明における電極温度推定手段は、前記電極と排気との間の熱交換量を算出する熱交換量算出手段を含み、その熱交換量算出手段が算出した前記熱交換量と前記電極の熱容量とに基づいて前記電極の温度を推定するものであることを特徴とする。
【0024】
これによれば、熱交換量算出手段が電極と排気との間の熱交換量を算出するので、電極が排気によってどの程度の熱が奪われるかを把握できる。電極の温度は、その奪われた熱の量(熱交換量)と電極の熱容量とによって変化するところ、電極温度推定手段がその熱交換量と電極の熱容量とに基づいて電極の温度を推定しているので、精度の高い電極の温度の推定値を得ることができる。
【0025】
また、本発明における付着率推定手段は、排気流量が大きいほど小さくなる前記PM付着率を推定するものであることを特徴とする。
【0026】
これによれば、PM付着率は排気流量が大きいほど低下するという知見を得ているところ、付着率推定手段が排気流量が大きいほど小さくなるPM付着率を推定するので、精度の高いPM付着率の推定値を得ることができる。
【0027】
また、本発明における付着率推定手段は、前記ヒータによる燃焼除去終了からの経過時間が短いほど小さくなる前記PM付着率を推定するものであることを特徴とする。
【0028】
これによれば、ヒータによる燃焼除去終了からの経過時間が短いほど電極の温度は高くなっており、電極の温度が高いと上記したように熱泳動に影響によってPM付着率が低下するという知見を得ているので、付着率推定手段が経過時間が短いほど小さくなるPM付着率を推定することで、精度の高いPM付着率の推定値を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】車両のエンジンシステム1の構成を示した図である。
【図2】PMセンサ41を説明する図である。
【図3】DPF30の故障を検出する故障検出処理の手順を示したフローチャートである。
【図4】図3のS12の詳細手順を示したフローチャートである。
【図5】PM堆積量、排気流量と捕集率との関係を示した図である。
【図6】図3のS14の詳細手順を示したフローチャートである。
【図7】電極温度とPM付着率との関係を説明する図である。
【図8】電極温度の推定方法を説明する図である。
【図9】ヒータ抵抗を測定する測定回路70を示した図である。
【図10】経過時間、排気流量とPM付着率との関係を示した図である。
【図11】故障時通電時期の推定方法及びその故障時通電時期に基づいてDPFの故障判定方法を説明する図である。
【図12】変形例1に係る故障検出処理の手順を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
次に、本発明に係るパティキュレートフィルタの故障検出装置の実施形態を図面を参照して説明する。図1は、本発明が具現化された車両のエンジンシステム1の構成を示した図である。エンジンシステム1は、内燃機関としてのディーゼルエンジン10(以下エンジンという)を備えている。そのエンジン10には、燃焼室内に燃料を噴射するインジェクタ11が設けられている。エンジン10は、そのインジェクタ11から噴射された燃料が燃焼室で自己着火することで、動力を生み出すものである。
【0031】
エンジン10の排気通路21には、ディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)30が設置されている。DPF30は公知の構造のセラミック製フィルタであり、例えば、コーディエライト等の耐熱性セラミックスをハニカム構造に成形して、ガス流路となる多数のセルを入口側または出口側が互い違いとなるように目封じして構成される。エンジン10から排出された排気は、DPF30の多孔性の隔壁を通過しながら下流へ流れ、その間に排気に含まれるパティキュレートマター(PM)が捕集されて次第に堆積する。そのPMは、煤を構成するものであり、カーボン粒子から構成されている。
【0032】
DPF30は無尽蔵にPMを捕集できるわけではないので、DPF30に堆積されたPMの量(PM堆積量)が多くなると、堆積されたPMを燃焼除去してDPF30を再生させる再生処理が実行されるようになっている。その再生処理は、例えば、エンジン10の動力を得る(出力トルクを生成する)ためになされるメインの燃料噴射(主噴射)から所定時間遅れた時期に1回又は多段噴射のポスト噴射を実行することによって行われる。詳しくは、このポスト噴射により、排気温度を上昇させるとともに、DPF30の上流側に設けられた酸化触媒(DOC、図示外)に対して未燃燃料(炭化水素、HC)を添加してその反応熱でPMを燃焼させる。
【0033】
DPF30の再生処理が原因で、DPF30が過昇温する場合がある。詳しくは、再生処理からアイドル状態に変わったときに、アイドル状態では吸気が絞られているためにDPF30内にPM燃焼に伴い発生した熱がこもってしまい、それによって、DPF30が過昇温する場合がある。そして、その過昇温によって、DPF30が溶損したり、DPF30内の温度差による熱応力によってDPF30が割れたりする場合(DPF30の故障)がある。DPF30が故障すると、PMの捕集能力が落ちてしまい、車外に排出されるPM量が増加してしまう。そこで、本実施形態のエンジンシステム1では、車外に排出されるPM量が一定以上になる場合をDPF30の故障として、そのDPF30の故障を検出している。その検出方法の詳細は後述する。
【0034】
排気通路21のDPF30よりも下流側21aには、PM量を検出するPMセンサ41が設けられている。ここで、図2は、PMセンサ41の構造や機能等を説明する図である。図2(a)は、図1のPMセンサ41付近の領域Aの拡大図を示している。なお、図2(a)では、ケース411内に設けられた基板412を透視して示している。また、図2(a)では、基板412を横から見た図を示している。図2(a)に示すように、PMセンサ41は、内部が中空にされたケース411を備えており、そのケース411が排気通路21a内に露出される形で設けられている。そのケース411には、ケース411内外を連絡する複数の孔411aが形成されており、排気の一部がそれら孔411aからケース411内に侵入できるようになっている。また、ケース411にはケース411内に侵入した排気が排出される排出孔411bが形成されている。なお、図2(b)では、ケース411の先端に排出孔411bが形成されている例を示している。
【0035】
ケース411内には基板412が設けられる。その基板412はアルミナ等の絶縁性の材料から形成された基板である。図2(b)は、基板412の一方の基板面412a(以下、表面という)を上から見た図を示している。図2(b)に示すように、基板412の表面412aには、互いに離間し、かつ対向する形で設けられた一対の電極413(電極413a、413b)が設けられている。それら電極413a、413b間には一定の電圧が印加されている。ケース411内に侵入した排気に含まれるPMの一部は基板412の表面412a(厳密には、電極413a、413b間)に付着する。基板412に付着しなかったPMは、ケース411に形成された排出孔411bから排出される。
【0036】
図2(c)は、基板412の他方の基板面412b(以下、裏面という)を上から見た図を示している。図2(c)に示すように、基板412の裏面412bには、基板412を加熱する白金Pt等の電熱線から構成されたヒータ414が設けられている。そのヒータ414は、基板412を加熱して、基板412に設けられた電極413a、413b間に付着されたPMを燃焼除去するためのものである。これによって、PMセンサ41で繰り返しPM量を検出できるようにしている。
【0037】
図2(d)は、PMセンサ41の出力信号を測定する測定回路を示した図である。図2(e)は、PMセンサ41の出力信号を示した図であり、具体的には、PMセンサ41の出力信号Vの時間変化を示したライン101、102を示している。第一のライン101は、DPF30が正常時の場合におけるラインであり、第二のライン102は、DPF30が故障時の場合におけるラインである。図2(d)に示すように、PMセンサ41の一対の電極413a、413b間に一定の電圧を印加する電圧源E1が設けられる。基板412は絶縁性の材料で形成されており、二つの電極413a、413bは離間されているので、PMが付着されていない状態では、それら電極413a、413b間は絶縁されている。つまり、それら電極413a、413b間には電流I1は流れない。
【0038】
この状態で、二つの電極413a、413b間にPMが付着すると、その付着量が少ないうちは電極413a、413b間には電流I1が流れない。しかし、時間の経過にともなって一定の量以上のPMが付着すると、PMはカーボン粒子から構成されており導電性を有するので、二つの電極413a、413b間に付着されたPMに電流I1が流れる。つまり、二つの電極413a、413b間が導通する。図2(d)に示すように、その電流I1が流れるライン上には電流検出用の抵抗R1(シャント抵抗)が設けられている。そして、そのシャント抵抗R1の両端電圧を測定することで、電流I1に応じた出力信号Vを得ている。
【0039】
図2(e)に示す時間t=0が基板412にPMの付着が開始される時間とすると、時間t=0から間もないうちは出力信号Vはゼロとされている。これは、上述したように、PM付着量が未だ少ないために電極413a、413b間が導通されていないためである。時間tの経過にともなってPM付着量が増えてくると、ある時期から出力信号Vが現れ始める。この時期を通電時期とすると、図2(e)では、正常時における通電時期をta、故障時における通電時期をtcで示している。
【0040】
以下、正常時におけるライン101を参照して説明すると、通電時期taの後、時間の経過にともなってPM付着量が増加していくので、電流I1、すなわち出力信号Vが増加していく。その出力信号Vは基板412に付着したPM付着量に応じた値となり、そのPM付着量は排気に含まれるPM量に応じた値となるので、出力信号Vを読み取ることで排気に含まれるPM量を検出することができる。ただし、上記「発明が解決しようとする課題」の欄で説明したように、基板412に付着したPMの電気抵抗は温度の影響によって大きく変化するので、出力信号Vの絶対値からPM量の正確な値を検出するのは困難とされる。
【0041】
また、前回のPM量の検出時に付着されたPMが基板412にそのまま残っていると、今回の検出時に正確なPM量を検出できなくなってしまう。そこで、PMセンサ41では、定期的に、ヒータ414(図2(c)参照)で基板412を加熱して、基板412に付着されたPMを燃焼除去している。なお、ヒータ414は、PMが燃焼除去される温度として例えば約700℃で基板412を加熱している。この場合、図2(e)に示す点Pの時点tbでPMが燃焼除去されたとすると、時点tbにおいて出力信号Vはゼロにリセットされる。その後、再度、PMが基板412に付着し始め、時点tbを基準とした通電時期taから出力信号Vが現れ始める。
【0042】
また、排気に含まれるPM量が多いと、基板412に付着する付着量が多くなるので、早く通電する。よって、DPF30の故障時には、正常時に比べてDPF30を通り抜けるPM量が多くなるので、図2(e)に示すように、故障時の通電時期tcは正常時の通電時期taに比べて先とされている。
【0043】
図1の説明に戻り、エンジンシステム1には、DPF30の前後差圧を検出する差圧センサ42が設けられている。その差圧センサ42は、一端側がDPF30上流の排気通路21に、他端側はDPF30下流の排気通路21にそれぞれ接続される。また、排気通路21のDPF30の上流側には、排気温を検出する排気温センサ43が設けられている。エンジンシステム1の吸気通路52には、新気量を検出するエアフロメータ44やエンジン10に取り込まれる新気量の増減を調整するスロットル弁45(吸気絞り弁)が設けられている。また、エンジンシステム1には、エンジン10の回転数を検出する回転数センサ46が設けられている。その回転数センサ46は、例えばエンジン10から連結されたクランク12の回転角度を計測するクランク角センサとすればよい。また、エンジンシステム1には、運転者の要求トルクを車両側に知らせるための運転操作部に相当するアクセルペダルの状態(変位量)を検出するアクセルセンサ47も設けられている。それら各センサ41〜47の信号は、後述するECU60に送られるようになっている。さらに、エンジンシステム1は、排気の一部を吸気系に再循環することにより燃焼温度を下げてNOxの発生を低減するEGRシステム50も備えている。
【0044】
エンジンシステム1は、そのエンジンシステム1の全体制御を司るECU60を備えている。そのECU60は、通常のコンピュータの構造を有するものとし、各種演算を行うCPU(図示外)や各種情報の記憶を行うメモリ61を備えている。ECU60は、例えば、上記各種センサからの検出信号を基に運転状態を検出し、運転状態に応じた最適な燃料噴射量、噴射時期、噴射圧等を算出して、エンジン10への燃料噴射を制御する。また、ECU60は、DPF30の故障を検出する故障検出処理を実行する。以下、その故障検出処理の詳細を説明する。
【0045】
図3は、ECU60が実行する故障検出処理の手順を示したフローチャートを示している。この図3の処理は、PMセンサ41のヒータ414(図2(c)参照)によるPMの燃焼除去が終了された直後(図2(e)では時点tb)に開始される。先ず、DPF30に流入されるPM量である流入PM量を推定する(S11)。この流入PM量はエンジン10から排出されるPM量であり、そのPM量はエンジン10の回転数及び燃料噴射量に関係する。そこで、このS11では、例えばエンジン10の回転数及び燃料噴射量に基づいて、流入PM量を推定する。具体的には、エンジン10の回転数及び燃料噴射量をパラメータとして流入PM量のマップを予めメモリ61に記憶しておく。そして、回転数センサ46(図1参照)で検出された今回の回転数及びインジェクタ11(図1参照)で噴射される噴射量の指令値に対応する流入PM量を、そのマップから読み出す。
【0046】
次いで、DPF30が故障した場合におけるDPF30によるPMの捕集率(故障時捕集率)を推定する(S12)。なお、ここで言う「DPF30が故障した場合」とは、具体的には、故障によりDPF30の捕集率が著しく低下し、OBD(On−board−diagnostics)の規制値を満足することができない場合を言う。OBDの規制値は、EURO6等の法による規制値より厳しめに設定される。例えば、特定の走行モードにおいて、法による規制値がPM=4.5mg/kmとしたときに、OBDの規制値は例えばその2倍のPM=9.0mg/kmに設定される。
【0047】
ここで、図4は、S12の処理の詳細手順のフローチャートを示している。DPF30が故障すると、正常時に比べてPMの捕集率が低下することになるが、本発明者らは、DPF30内に堆積されているPM堆積量や排気流量によって捕集率が変化するという知見を得ている。そこで、故障時捕集率を推定するために、先ず、DPF30内に堆積されているPM堆積量を算出する(S121)。PM堆積量が多くなるとDPF30の前後差圧が大きくなるので、S121では、例えばその前後差圧に基づいてPM堆積量を算出する。具体的には、DPF30の前後差圧とPM堆積量との関係のマップを予めメモリ61に記憶しておく。そして、差圧センサ42(図1参照)で検出された今回の前後差圧に対応するPM堆積量を、そのマップから読み出す。
【0048】
次いで、排気流量を算出する(S122)。なお、ここでは排気の体積流量を算出する。具体的には、例えば、エアフロメータ44によって吸気量を算出する。そして、その吸気量を、排気温センサ43で検出される排気温に応じた排気の膨張分や、圧力センサ(図示外)で検出される圧力に応じた排気の圧縮分で補正することで、排気流量を算出する。
【0049】
次いで、それらPM堆積量、排気流量に基づいて故障時捕集率を算出する(S123)。ここで、図5は、それらPM堆積量、排気流量と捕集率との関係を示した図であり、具体的には、図5(a)はPM堆積量と捕集率との関係を示したグラフ110を示している。そのグラフ110には、DPF30の正常時におけるPM堆積量と捕集率との関係を示したライン111と、DPF30の故障時におけるPM堆積量と捕集率との関係を示したライン112を示している。また、図5(b)は排気流量と捕集率との関係を示したグラフ120を示している。そのグラフ120には、DPF30の正常時における排気流量と捕集率との関係を示したライン121と、DPF30の故障時における排気流量と捕集率との関係を示したライン122を示している。
【0050】
図5(a)のライン111が示すように、正常時の場合のPM堆積量が少ない領域Bにおいては、捕集率はそれほど高くなっておらず、PM堆積量の増加にしたがって捕集率が増加する傾向とされている。その領域Bを超えると捕集率は、PM堆積量に関わらず高いレベル(例えば99%以上)に維持されている。これに対して、ライン112が示すように、故障時の場合には正常時の捕集率と比べて捕集率が全体的に低下している。より具体的には、PM堆積量が少ない領域Bにおいては、正常時の場合と同様の傾向とされている。また、その領域Bを超えると、PM堆積量が増加するにしたがって捕集率が低下していく傾向とされている。これは、PM堆積量が多くなると、DPF30内において、PMが堆積している部分の圧損が高くなり、相対的に圧損が低いDPF30の破損部を通り抜けるPM量が多くなると考えられるためである。
【0051】
なお、正常時、故障時のどちらも領域Bで捕集率が低くされているのは、PMがDPF30に捕集されると、その捕集されたPMが別のPMを捕集するという性質に基づくものである。つまり、PM堆積量が少ないと、捕集されたPMによって別のPMが捕集されるということが少なくなるので、捕集率は低くなると考えられる。
【0052】
次に、排気流量と捕集率との関係を説明すると、図5(b)のライン121が示すように、正常時の場合には、排気流量に関わらず捕集率は高いレベル(例えば99%以上)に維持されている。これに対して、ライン122が示すように、故障時に場合には、排気流量が増加するにしたがって捕集率が低下していく傾向とされている。これは、排気流量が多くなると、DPF30の破損部を通り抜けるPM量が多くなると考えられるためである。ただし、排気流量による影響はDPF30の故障形態によっても異なると考えられる。
【0053】
S123では、図5の関係に基づいて故障時捕集率を算出する。具体的には、図5(a)、(b)の故障時のライン112、122が反映されたPM堆積量及び排気流量と捕集率との関係を示したマップを予めメモリ61に記憶しておく。そして、S121で算出されたPM堆積量及びS122で算出された排気流量に対応する捕集率を、そのマップから読み出す。S123の処理の後、図4のフローチャートの処理を終了して、図3のフローチャートの処理に戻る。
【0054】
図3において、次いで、DPF30が故障した場合におけるDPF30から流出される(DPF30を通り抜ける)PM量である故障時流出PM量を推定する(S13)。具体的には、S11で推定された流入PM量とS12で推定された故障時捕集率とを乗算することで、故障時流出PM量を推定する。
【0055】
次いで、DPF30の下流の排気に含まれる全PMのうちPMセンサ41の基板412(電極413)に付着されるPMの比率を示したPM付着率を推定する(S14)。図6は、S14の処理の詳細手順のフローチャートを示している。また、図7は、電極413の温度(電極温度)とPM付着率との関係を説明する図であり、具体的には、図7(a)は時間の経過にともなって電極温度がどのように変化するかを示したライン210を示しており、図7(b)は電極温度とPM付着率との関係を示したライン211を示している。
【0056】
先ず、図7を参照して、S14で推定するPM付着率の推定方法の考え方について説明する。上述したように、PMセンサ41へのPM付着量が多くなると、ヒータ414(図2(c)参照)によって基板412(電極413)が加熱されて付着されたPMが燃焼除去される。その加熱が開始される時間をt=t0とすると、図7(a)に示すように、時間t0を境にして電極温度が徐々に上昇していく。そして、PMが燃焼除去される温度である約700℃で加熱(PMセンサ41の再生)が終了される。その終了された時間をt=t1とすると、電極温度は時間t1を境にして徐々に減少していく。時間t1から一定の期間t2経過すると、電極温度は加熱される前の元の温度に戻る。図3の故障検出処理は、PMセンサ41の再生が終了された直後(図7(a)ではt=t1)から開始されるので、その故障検出処理が実行される間では、電極温度は700℃から元の温度の間で大きく変化することになる。この場合、図7(b)のライン211に示すように、電極温度が高くなるにしたがってPM付着率が小さくなる傾向とされている。これは、電極温度が高い場合には、電極温度とケース411内に侵入したガスの温度(電極温度>ガスの温度)との温度差による熱泳動の影響が大きくなると考えられるためである。
【0057】
このように、PM付着率は電極温度によって変化するので、PM付着率を推定するために、先ず、現時点の電極温度を推定する(S141)。ここで、図8は、電極温度の推定方法を説明するための図である。具体的には、図8(a)は、ヒータ414のヒータ抵抗に基づいて電極温度を推定する方法を説明する図として、そのヒータ抵抗と電極温度の関係を示したライン212を示している。また、図8(b)は、電極413と排気との間の熱交換を考慮して電極温度を推定する方法を説明する図として、PMセンサ41付近の拡大図を示している。以下、図8を参照して、電極温度の推定方法を説明する。
【0058】
(ヒータ抵抗に基づいて電極温度を推定する方法)
先ず、ヒータ抵抗に基づいて電極温度を推定する方法について説明する。電極413は、ヒータ414に流れる電流によってヒータ414が発熱し、その熱によって加熱される。つまり、電極温度は、ヒータ414の発熱量と関係する。ヒータ414の発熱量が大きくなるほど、ヒータ414を構成する分子が活発に振動するので、ヒータ抵抗が大きくなる。よって、図8(a)のライン212が示すように、ヒータ抵抗が大きいほどヒータ414の発熱量が大きくなって、その結果電極温度は高くなると考えられる。なお、ヒータ414を白金Ptで構成した場合には、ヒータ抵抗と電極温度の関係はほぼリニア(比例)の関係となる。
【0059】
そこで、S141では、先ずヒータ抵抗を測定する。図9は、ヒータ抵抗を測定する測定回路70を示している。その測定回路70は、ヒータ抵抗414(ヒータ414)に電圧を印加する電圧源E2を有する。その電圧源E2による電圧によって、ヒータ抵抗414にはヒータ抵抗414に応じた電流I2が流れる。その電流I2が流れるライン上には電流検出用の抵抗R2(シャント抵抗)が設けられている。そのシャント抵抗R2の両端電圧Vを測定することで、電流I2、すなわちヒータ抵抗414を測定することができる。S141では、図8(a)のライン212を示したマップを予めメモリ61に記憶しておく。そして、測定したヒータ抵抗に対応する電極温度を、そのマップから読み取る。
【0060】
(電極と排気との間の熱交換を考慮して電極温度を推定する方法)
次に、電極413と排気との間の熱交換を考慮して、電極温度を推定する方法について説明する。図8(b)に示すように、排気通路21aに、排気温Te(具体的には例えば100℃)、排気流量Feの排気eが流れていると仮定する。その排気eの一部が、PMセンサ41のケース411に形成された孔411aからケース411内に侵入される。排気eのうちのケース411内に侵入される排気(PM)の率を侵入率αとする。また、電極413の初期温度がTi(具体的には例えば700℃)、熱容量がQであるとする。また、ケース411内(図8(b)の領域C)の熱の伝達率がβであるとする。
【0061】
以上のようなモデルを考えた場合、高温側の電極413と低温側の排気eとの間で熱交換がなされる。この場合、電極413の電極温度は、その熱交換量及び電極413(+基板412)の熱容量Qに応じた値とされる。例えば、熱交換量が多いほど、電極温度は小さくなる。また、熱容量Qが大きいほど、奪われた熱量に対して、温度が下がりにくくなるので、電極温度は大きくなる。よって、S141では、先ず、上記の各パラメータ(Te、Fe、α、Ti、β)を考慮して熱交換量Xを算出する。具体的には、各パラメータ(Te、Fe、α、Ti、β)と熱交換量Xとの関係を示したマップを予めメモリ61に記憶しておく。そして、今回のパラメータ(Te、Fe、α、Ti、β)に対応する熱交換量Xを、そのマップに基づいて算出する。この際、排気温Teは排気温センサ43(図1参照)で検出する。排気流量Feは、上述のS122で算出したときの値を使用する。侵入率αは、孔411aの形状等を考慮して予め定めておく。電極413の初期温度Tiは、予め定められた値(具体的には例えば700℃)を使用する。伝達率βは、予め定められた値(例えば空気の伝達率)を使用する。なお、二つの物質間の熱交換のモデルは公知であるので、さらに詳細な説明はここでは省略する。
【0062】
熱交換量Xを算出した後、その熱交換量Xと電極413の熱容量Qとに基づいて、電極温度を算出する。具体的には、熱交換量X及び熱容量Qと電極温度の関係を示したマップを予めメモリ61に記憶しておく。そして、今回の熱交換量X及び熱容量Qに対応する電極温度を、そのマップから算出する。この際、熱容量Qは、電極413の面積に応じた値となるので、その面積に基づいて予め算出された値を使用する。
【0063】
S141で電極温度を推定した後、次いで、その電極温度に基づいてPM付着率を推定する(S142)。具体的には、上述した図7(b)の電極温度とPM付着率との関係を示したライン211を予めメモリ61に記憶しておく。そして、今回の電極温度に対応するPM付着率を、そのライン211から読み取る。S142の処理の後、図6のフローチャートの処理を終了して、図3のフローチャートの処理に戻る。
【0064】
なお、以上では、電極温度に基づいてPM付着率を推定する方法を説明したが、他の方法でPM付着率を推定することもできる。以下、他の方法について説明する。
【0065】
(経過時間に基づいてPM付着率を推定する方法)
図7(a)の電極温度の時間変化を示したライン210が示すように、電極温度は、ヒータ414による加熱(ヒータ414による再生)が終了した時間t1を境にして、時間が経過するにしたがって徐々に減少していく。つまり、ヒータ414による再生終了からの経過時間に応じて、電極温度が変化し、電極温度が変化するとPM付着率も変化するので(図7(b)参照)、その経過時間から直接PM付着率を推定することができる。ここで、図10(a)は、経過時間とPM付着率との関係を示したライン213を示している。そのライン213が示すように、経過時間が短いほどPM付着率が小さくされている。これは、経過時間が短いほど電極温度が高いためである。
【0066】
そこで、図3のS14では、図10(a)のライン213を予めメモリ61に記憶しておく。そして、今回の経過時間に対応するPM付着率をそのライン213から読み取るようにしてもよい。なお、経過時間は、タイマー(図示外)で計測すればよい。経過時間からPM付着率を推定する方法は、上述の図6の処理に代えて実行される方法である。
【0067】
(排気流量に基づいてPM付着率を推定する方法)
また、経過時間からPM付着率を推定する方法の他に、排気流量からPM付着率を推定することもできる。ここで、図10(b)は、排気流量とPM付着率との関係を示したライン214を示している。ライン214が示すように、排気流量が大きいほどPM付着率が小さくされている。これは、排気流量が大きいと、排気の流速が速くなるからである。
【0068】
そこで、S14では、図10(b)のライン214を予めメモリ61に記憶しておく。そして、今回の排気流量に対応するPM付着率をそのライン214から読み取るようにしてもよい。なお、排気流量は、上述のS122で算出したときの値を使用する。排気流量からPM付着率を推定する方法は、上述の図6の処理に代えて、又は図6の処理に加えて実行される方法である。図6の処理に加えて実行する場合、つまり、電極温度と排気流量の両方を考慮してPM付着率を推定する場合には、電極温度と排気流量の両方が考慮されたPM付着率のマップを予め用意しておけばよい。
【0069】
図3の説明に戻り、S14の処理の後、次いで、DPF30が故障した場合におけるPMセンサ41に付着しているPM付着量(故障時PM付着量)を推定する(S15)。具体的には、S13で推定された故障時流出PM量とS14で推定されたPM付着率とを乗算することで、故障時PM付着量を算出する。
【0070】
ここで、S16以降の処理を説明する前に、DPF30が故障した場合における通電時期である故障時通電時期の推定方法を説明する。図11は、その推定方法を説明するための図であり、具体的には、図11(a)は、S13で推定された故障時流出PM量の積算値の時間変化を示したライン310を示している。また、図11(b)は、S15で推定された故障時PM付着量の積算値の時間変化を示したライン320を示している。なお。図11(b)では、PMセンサ41の通電が開始される付着量として予め定められた通電付着量のライン330を示している。また、図11(c)は、PMセンサ41の出力信号の時間変化を示したライン(正常時のライン340、故障時のライン350)を示している。なお、図11において、時間t=0は、ヒータ414によるPMの燃焼除去が終了された直後の時点、すなわち図3の処理が開始される時点を示している。
【0071】
図11(a)、(b)に示すように、時間の経過にともなって故障時流出PM量の積算値は徐々に増加していき(ライン310)、それにともなって、故障時PM付着量の積算値も時間の経過にともなって徐々に増加していく(ライン320)。図11(b)に示すように、DPF30が故障した場合であっても、故障時PM付着量の積算値が通電付着量に達するまで(ライン320がライン330に交差するまで)にはある程度の時間を要する。そして、故障時PM付着量の積算値が通電付着量に達した場合(ライン320がライン330に交差した場合)に、PMセンサ41が通電する。この通電時期を、DPF30が故障した場合における通電時期tx(故障時通電時期)とする。上述したように、本実施形態では、DPF30が故障した場合として例えばOBD規制値を満たさなくなる場合を想定しており、その場合の故障時通電時期txを推定することになる。そして、本実施形態では、故障時通電時期txに対して、実際のPMセンサ41の通電時期が先か後かによって、DPF30が故障しているか否かを判定している。
【0072】
そのために、図3のS15の処理の後、次いで、S15で推定された故障時PM付着量が、PMセンサ41の通電が開始される通電付着量以上になったか否かを判断する(S16)。未だ通電付着量に達していない場合には(S16:No)、S15の処理に戻る。この場合、S15において、次の時点における故障時PM付着量を、次の時点におけるS11〜S14の処理結果に基づいて算出する。そして、その故障時PM付着量を前回までの故障時PM付着量に積算する(S16)。つまり、故障時PM付着量の積算値が通電付着量に達するまでは、図11(b)に示すように、時間の経過にともなって徐々に増加していく故障時PM付着量の積算値が算出されることになる(S15)。
【0073】
故障時PM付着量の積算値が通電付着量に達した場合には(S16:Yes)、その達した時点を故障時通電時期(図11の故障時通電時期tx)と推定して、実際のPMセンサ41の出力の有無を確認する。すなわち、PMセンサ41の出力が、所定値以上か否かを判断することで、PMセンサ41が通電されているか否かを判断する(S17)。S17における所定値は、PMセンサ41が通電されているか否かを判断するためのものであるので、図11(c)の縦軸のゼロ点付近に設定されている。
【0074】
PMセンサ41の出力が所定値未満の場合、つまり未だ通電されていない場合には(S17:No)、図3のフローチャートの処理を終了する。この場合には、実際のPMセンサ41の通電時期が故障時通電時期よりも後であるので、DPF30は正常と判定されることになる(図11(c)のライン340参照)。この場合には、DPF30はOBD規制値を満たしていることになる。
【0075】
これに対して、PMセンサ41の出力が所定値以上の場合、つまり既にPMセンサ41が通電されている場合には(S17:Yes)、処理をS18に進める。この場合には、実際のPMセンサ41の通電時期が故障時通電時期よりも先であるので、S18において、DPF30が故障していると判定する(S18、図11(c)のライン350参照)。この場合には、DPF30はOBD規制値を満たしていないおそれがあることになる。その後、図3のフローチャートの処理を終了する。
【0076】
以上説明したように、本実施形態では、PMセンサ41の通電時期に基づいて、DPF30が故障しているか否かを判定しているので、PMセンサ41に付着したPMの温度変化に関わらず、DPF30の故障を精度良く検出できる。この際、DPF30が故障した場合における通電時期(故障時通電時期)を、各種の条件を考慮して、具体的には流入PM量、捕集率、流出PM量、PM付着率、PM付着量(S11〜S15)を考慮して推定しているので、精度の高い故障時通電時期の推定値を得ることができる。
【0077】
(変形例1)
上記実施形態では、故障時通電時期の到来を待って、PMセンサ41の出力の有無を確認していたが(図3のS16:Yes→S17)、PMセンサ41の出力を待ってから故障時通電時期が到来しているか否かを確認するようにしてもよい。この場合、図3の処理に代えて、例えば図12のフローチャートの処理を実行すればよい。この図12は、変形例1に係る故障検出処理の手順を示したフローチャートである。なお、図12において、図3の処理と同じ処理には同一符号を付している。
【0078】
図12の処理は、S11〜S15の処理の後、先にS17の処理を実行し、その後、S16の処理を実行する点が図3の処理と異なっている。すなわち、S11〜S15で故障時PM付着量を推定した後、PMセンサ41の出力が所定値以上か否かを判断して、PMセンサ41の出力の有無を確認する(S17)。所定値未満の場合、すなわち未だPMセンサ41の出力が無い場合には(S17:No)、S17の処理に戻って、PMセンサ41の出力を待つ。PMセンサ41の出力が所定値以上の場合、すなわちPMセンサ41の出力が有る場合には(S17:Yes)、処理をS16に進める。この場合には、PMセンサ41の実際の通電時期が到来したことになる。次いで、故障時PM付着量の積算値が通電付着量以上か否かを判断する(S16)。故障時PM付着量の積算値が通電付着量以上の場合には(S16:Yes)、図12のフローチャートの処理を終了する。この場合には、先に故障時通電時期が到来して、その後に実際の通電時期が到来したことになるので、DPF30は正常と判定されることになる。
【0079】
これに対して、故障時PM付着量の積算値が通電付着量に未だ達していない場合には(S16:No)、処理をS18に進める。この場合には、故障時通電時期よりも先に実際の通電時期が到来したことになるので、DPF30が故障していると判定する(S18)。その後、図12のフローチャートの処理を終了する。
【0080】
なお、上記実施形態において、図3又は図12のS11〜S16の処理を実行するECU60が本発明の「時期推定手段」に相当する。図3又は図12のS18の処理を実行するECU60が本発明の「故障判定手段」に相当する。図3又は図12のS11の処理を実行するECU60が本発明の「流入PM量推定手段」に相当する。図3又は図12のS12の処理を実行するECU60が本発明の「捕集率推定手段」に相当する。図3又は図12のS13の処理を実行するECU60が本発明の「流出PM量推定手段」に相当する。図3又は図12のS14の処理を実行するECU60が本発明の「付着率推定手段」に相当する。図3又は図12のS15の処理を実行するECU60が本発明の「付着量算出手段」に相当する。図4のS121の処理を実行するECU60が本発明の「堆積量算出手段」に相当する。図4のS122の処理を実行するECU60が本発明の「排気流量算出手段」に相当する。図6のS141の処理を実行するECU60が本発明の「電極温度推定手段」及び「熱交換量算出手段」に相当する。図9の測定回路70が本発明の「ヒータ抵抗測定手段」に相当する。
【符号の説明】
【0081】
1 エンジンシステム
10 ディーゼルエンジン(内燃機関)
21 排気通路
30 ディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)
41 PMセンサ
411 ケース
411a 孔
412 基板
413、413a、413b 電極
414 ヒータ
60 ECU
61 メモリ
70 測定回路
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気に含まれるパティキュレートマターを捕集するパティキュレートフィルタの故障検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ディーゼルエンジン等の内燃機関から排出される煤を抑制するために、煤を構成する粒状物資、いわゆるパティキュレートマター(PM)を捕集するディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF、パティキュレートフィルタ)が排気通路に設けられることがある。そのDPFは、DPFに堆積されたPMを燃焼除去する再生処理が定期的に行われることで、繰り返し使用できるようになっている。しかし、その再生処理などが原因でDPFが過昇温する場合があり、その過昇温が原因でDPFが溶損したり割れたりする場合(DPFの故障)がある。DPFが故障すると、そのDPFを通過してしまうPMが多くなってしまうので、排ガス規制を満たさなくおそれがでてくる。また、近年、車両に搭載されるコンピュータが行う自己故障診断(OBD:On−board−diagnostics)の要請により、DPFの故障を検出する故障検出装置の開発が望まれている。そして、従来、その故障検出装置として、PM量を検出する電極式のPMセンサ(特許文献1、2参照)を利用した故障検出装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
電極式のPMセンサは、絶縁基板上に一対の電極が設けられる形で構成される。そのPMセンサは、排気通路に設けられ、一対の電極間に電圧が印加されて使用される。排気に含まれるPMは、PMセンサの一対の電極間に付着する。PMはカーボン粒子から構成されており導電性を有するので、PMの付着量が多くなると電極間に電流が流れる(通電する)。その電流の値は、PMの付着量に応じた値、つまり、排気に含まれるPM量に応じた値となるので、その電流値(電流値に相当する電極間の抵抗値)を読み取ることでPM量を検出するというものである。DPFが故障するとDPFを通過するPM量が多くなり、PMセンサの電極間の抵抗値が小さくなることから、特許文献1の故障検出装置では、PMセンサの抵抗値(PMセンサの出力)が所定基準より小さくなったことを検出した場合に、DPFが故障したと判定している。つまり、特許文献1の故障検出装置では、PMセンサの出力の絶対値に基づいて、DPFの故障を検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−144577号公報
【特許文献2】特開昭62−35252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、PMセンサの電極間に付着したPMの電気抵抗は温度の影響によって大きく変化するので、PMセンサの出力の絶対値からPM量を推定することは困難である。つまり、特許文献1の故障検出装置では、DPFが正常であるにも関わらず故障と判定したり、反対に、故障しているにも関わらず正常であると判定したりする可能性があり、精度良くDPFの故障を検出しているとは言えない。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、パティキュレートフィルタの故障を精度良く検出できるパティキュレートフィルタの故障検出装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係るパティキュレートフィルタの故障検出装置は、内燃機関の排気通路に設けられた、排気に含まれるパティキュレートマターを捕集するパティキュレートフィルタと、
前記排気通路の前記パティキュレートフィルタの下流に設けられ、前記パティキュレートフィルタの下流の排気に含まれるパティキュレートマターの量であるPM量を検出するPMセンサであって、電極を有し、その電極に付着したパティキュレートマターを流れる電流によって前記PM量を検出するPMセンサと、
前記電極に付着したパティキュレートマターによって通電が開始される時期を通電時期として、前記パティキュレートフィルタが故障した場合における前記通電時期である故障時通電時期を推定する時期推定手段と、
実際の前記通電時期が前記故障時通電時期よりも先の場合に、前記パティキュレートフィルタが故障していると判定する故障判定手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
これによれば、時期推定手段が、パティキュレートフィルタが故障した場合におけるPMセンサの通電時期(故障時通電時期)を推定する。PMセンサの通電時期は、電極間に付着したPMの付着量に影響されるものであり、電極間に付着したPMの温度変化(PMの電気抵抗変化)にはそれほど影響されない。また、パティキュレートフィルタが故障している場合には、パティキュレートフィルタを通過するPMが多くなるので、正常時に比べて早くPMセンサが通電する。よって、故障判定手段が、実際の通電時期が推定の故障時通電時期よりも先の場合にパティキュレートフィルタが故障していると判定しているので、電極間に付着したPMの温度変化に関わらず、パティキュレートフィルタの故障を精度良く検出できる。
【0009】
また、本発明におけるPMセンサは、前記PMセンサを加熱して前記電極に付着したパティキュレートマターを燃焼除去するヒータを含み、
前記時期推定手段は、前記ヒータによる前記燃焼除去後における前記故障時通電時期を推定するものであることを特徴とする。
【0010】
これによれば、PMセンサはPMを燃焼除去するヒータを含んでいるので、そのヒータによってPMを燃焼除去することにより、PMセンサを継続的に使用することができる。この場合、時期推定手段が燃焼除去後における故障時通電時期、つまり、燃焼除去されて電極間にPMが付着されていない状態からの故障時通電時期を推定しているので、精度の高い故障時通電時期の推定値を得ることができる。
【0011】
また、本発明における時期推定手段は、前記パティキュレートフィルタに流入するPM量である流入PM量を推定する流入PM量推定手段と、
前記パティキュレートフィルタが故障した場合における前記パティキュレートフィルタによる前記パティキュレートマターの捕集率である故障時捕集率を推定する捕集率推定手段と、
前記流入PM量推定手段が推定した前記流入PM量と前記捕集率推定手段が推定した前記故障時捕集率とに基づいて、前記パティキュレートフィルタが故障した場合における前記パティキュレートフィルタから流出される前記PM量である故障時流出PM量を推定する流出PM量推定手段と、を含み、
前記時期推定手段は、前記流出PM量推定手段が推定した前記故障時流出PM量に基づいて前記故障時通電時期を推定することを特徴とする。
【0012】
これによれば、パティキュレートフィルタが故障すると、正常時に比べてPMの捕集率が低下してDPFから流出される流出PM量が増加するところ、捕集率推定手段がパティキュレートフィルタの故障時における故障時捕集率を推定し、流出PM量推定手段が流入PM量とその故障時捕集率とに基づいて故障時流出PM量を推定するので、精度の高い故障時流出PM量の推定値を得ることができる。PMセンサの通電時期はその故障時流出PM量に影響され、時期推定手段が故障時流出PM量に基づいて故障時通電時期を推定しているので、精度の高い故障時通電時期の推定値を得ることができる。
【0013】
さらに、本発明における時期推定手段は、前記パティキュレートフィルタの下流の排気に含まれる全パティキュレートマターのうち、前記電極に付着されるパティキュレートマターの比率を示すPM付着率を推定する付着率推定手段と、
その付着率推定手段が推定した前記PM付着率と前記故障時流出PM量とに基づいて、前記パティキュレートフィルタが故障した場合における前記電極へのパティキュレートマターの付着量である故障時PM付着量を時間の経過にともなって積算して算出する付着量算出手段と、を含み、
前記時期推定手段は、前記付着量算出手段が算出した前記故障時PM付着量が前記通電時期の付着量として予め定められた通電付着量以上となった時期を前記故障時通電時期と推定するものであることを特徴とする。
【0014】
これによれば、通電時期は電極間に付着したPM付着量の積算値に影響されるところ、付着量算出手段が時間の経過にともなって積算して故障時PM付着量を算出し、時期推定手段がその故障時PM付着量が通電付着量以上となった時期を故障時通電時期と推定するので、精度の高い故障時通電時期の推定値を得ることができる。この場合、PM付着量はPM付着率に影響されるところ、付着率推定手段がPM付着率を推定し、付着量算出手段がそのPM付着率と故障時流出PM量とに基づいて故障時PM付着量を算出するので、精度の高い故障時PM付着量の推定値を得ることができる。
【0015】
また、本発明における捕集率推定手段は、前記パティキュレートフィルタに堆積されているPM堆積量を算出する堆積量算出手段を含み、その堆積量算出手段が算出した前記PM堆積量に基づいて前記故障時捕集率を推定するものであることを特徴とする。
【0016】
これによれば、捕集率はPM堆積量に応じて変化するという知見を得ているところ、捕集率推定手段がPM堆積量に基づいて故障時捕集率を推定するので、精度の高い故障時捕集率の推定値を得ることができる。
【0017】
また、本発明における捕集率推定手段は、排気流量を算出する排気流量算出手段を含み、その排気流量算出手段が算出した前記排気流量に基づいて前記故障時捕集率を推定するものであることを特徴とする。
【0018】
これによれば、捕集率は排気流量に応じて変化するという知見を得ているところ、捕集率推定手段が排気流量に基づいて故障時捕集率を推定するので、精度の高い故障時捕集率の推定値を得ることができる。
【0019】
また、本発明における付着率推定手段は、前記電極の温度を推定する電極温度推定手段を含み、その電極温度推定手段が推定した前記電極の温度が高いほど小さくなる前記PM付着率を推定するものであることを特徴とする。
【0020】
これによれば、PMセンサの電極の温度が高いほど熱泳動の影響によってPM付着率が低下するという知見を得ているところ、電極温度推定手段が電極の温度を推定し、付着率推定手段がその電極の温度が高いほど小さくなるPM付着率を推定するので、精度の高いPM付着率の推定値を得ることができる。
【0021】
また、本発明において、前記ヒータの電気抵抗であるヒータ抵抗を測定するヒータ抵抗測定手段を備え、前記電極温度推定手段は、前記ヒータ抵抗測定手段が測定した前記ヒータ抵抗に基づいて前記電極の温度を推定するものであることを特徴とする。
【0022】
これによれば、電極の温度はヒータ抵抗に応じた温度となるという知見を得ているところ、ヒータ抵抗測定手段がヒータ抵抗を測定し、電極温度推定手段がそのヒータ抵抗に基づいて電極の温度を推定するので、精度の高い電極の温度の推定値を得ることができる。
【0023】
また、本発明における電極温度推定手段は、前記電極と排気との間の熱交換量を算出する熱交換量算出手段を含み、その熱交換量算出手段が算出した前記熱交換量と前記電極の熱容量とに基づいて前記電極の温度を推定するものであることを特徴とする。
【0024】
これによれば、熱交換量算出手段が電極と排気との間の熱交換量を算出するので、電極が排気によってどの程度の熱が奪われるかを把握できる。電極の温度は、その奪われた熱の量(熱交換量)と電極の熱容量とによって変化するところ、電極温度推定手段がその熱交換量と電極の熱容量とに基づいて電極の温度を推定しているので、精度の高い電極の温度の推定値を得ることができる。
【0025】
また、本発明における付着率推定手段は、排気流量が大きいほど小さくなる前記PM付着率を推定するものであることを特徴とする。
【0026】
これによれば、PM付着率は排気流量が大きいほど低下するという知見を得ているところ、付着率推定手段が排気流量が大きいほど小さくなるPM付着率を推定するので、精度の高いPM付着率の推定値を得ることができる。
【0027】
また、本発明における付着率推定手段は、前記ヒータによる燃焼除去終了からの経過時間が短いほど小さくなる前記PM付着率を推定するものであることを特徴とする。
【0028】
これによれば、ヒータによる燃焼除去終了からの経過時間が短いほど電極の温度は高くなっており、電極の温度が高いと上記したように熱泳動に影響によってPM付着率が低下するという知見を得ているので、付着率推定手段が経過時間が短いほど小さくなるPM付着率を推定することで、精度の高いPM付着率の推定値を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】車両のエンジンシステム1の構成を示した図である。
【図2】PMセンサ41を説明する図である。
【図3】DPF30の故障を検出する故障検出処理の手順を示したフローチャートである。
【図4】図3のS12の詳細手順を示したフローチャートである。
【図5】PM堆積量、排気流量と捕集率との関係を示した図である。
【図6】図3のS14の詳細手順を示したフローチャートである。
【図7】電極温度とPM付着率との関係を説明する図である。
【図8】電極温度の推定方法を説明する図である。
【図9】ヒータ抵抗を測定する測定回路70を示した図である。
【図10】経過時間、排気流量とPM付着率との関係を示した図である。
【図11】故障時通電時期の推定方法及びその故障時通電時期に基づいてDPFの故障判定方法を説明する図である。
【図12】変形例1に係る故障検出処理の手順を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
次に、本発明に係るパティキュレートフィルタの故障検出装置の実施形態を図面を参照して説明する。図1は、本発明が具現化された車両のエンジンシステム1の構成を示した図である。エンジンシステム1は、内燃機関としてのディーゼルエンジン10(以下エンジンという)を備えている。そのエンジン10には、燃焼室内に燃料を噴射するインジェクタ11が設けられている。エンジン10は、そのインジェクタ11から噴射された燃料が燃焼室で自己着火することで、動力を生み出すものである。
【0031】
エンジン10の排気通路21には、ディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)30が設置されている。DPF30は公知の構造のセラミック製フィルタであり、例えば、コーディエライト等の耐熱性セラミックスをハニカム構造に成形して、ガス流路となる多数のセルを入口側または出口側が互い違いとなるように目封じして構成される。エンジン10から排出された排気は、DPF30の多孔性の隔壁を通過しながら下流へ流れ、その間に排気に含まれるパティキュレートマター(PM)が捕集されて次第に堆積する。そのPMは、煤を構成するものであり、カーボン粒子から構成されている。
【0032】
DPF30は無尽蔵にPMを捕集できるわけではないので、DPF30に堆積されたPMの量(PM堆積量)が多くなると、堆積されたPMを燃焼除去してDPF30を再生させる再生処理が実行されるようになっている。その再生処理は、例えば、エンジン10の動力を得る(出力トルクを生成する)ためになされるメインの燃料噴射(主噴射)から所定時間遅れた時期に1回又は多段噴射のポスト噴射を実行することによって行われる。詳しくは、このポスト噴射により、排気温度を上昇させるとともに、DPF30の上流側に設けられた酸化触媒(DOC、図示外)に対して未燃燃料(炭化水素、HC)を添加してその反応熱でPMを燃焼させる。
【0033】
DPF30の再生処理が原因で、DPF30が過昇温する場合がある。詳しくは、再生処理からアイドル状態に変わったときに、アイドル状態では吸気が絞られているためにDPF30内にPM燃焼に伴い発生した熱がこもってしまい、それによって、DPF30が過昇温する場合がある。そして、その過昇温によって、DPF30が溶損したり、DPF30内の温度差による熱応力によってDPF30が割れたりする場合(DPF30の故障)がある。DPF30が故障すると、PMの捕集能力が落ちてしまい、車外に排出されるPM量が増加してしまう。そこで、本実施形態のエンジンシステム1では、車外に排出されるPM量が一定以上になる場合をDPF30の故障として、そのDPF30の故障を検出している。その検出方法の詳細は後述する。
【0034】
排気通路21のDPF30よりも下流側21aには、PM量を検出するPMセンサ41が設けられている。ここで、図2は、PMセンサ41の構造や機能等を説明する図である。図2(a)は、図1のPMセンサ41付近の領域Aの拡大図を示している。なお、図2(a)では、ケース411内に設けられた基板412を透視して示している。また、図2(a)では、基板412を横から見た図を示している。図2(a)に示すように、PMセンサ41は、内部が中空にされたケース411を備えており、そのケース411が排気通路21a内に露出される形で設けられている。そのケース411には、ケース411内外を連絡する複数の孔411aが形成されており、排気の一部がそれら孔411aからケース411内に侵入できるようになっている。また、ケース411にはケース411内に侵入した排気が排出される排出孔411bが形成されている。なお、図2(b)では、ケース411の先端に排出孔411bが形成されている例を示している。
【0035】
ケース411内には基板412が設けられる。その基板412はアルミナ等の絶縁性の材料から形成された基板である。図2(b)は、基板412の一方の基板面412a(以下、表面という)を上から見た図を示している。図2(b)に示すように、基板412の表面412aには、互いに離間し、かつ対向する形で設けられた一対の電極413(電極413a、413b)が設けられている。それら電極413a、413b間には一定の電圧が印加されている。ケース411内に侵入した排気に含まれるPMの一部は基板412の表面412a(厳密には、電極413a、413b間)に付着する。基板412に付着しなかったPMは、ケース411に形成された排出孔411bから排出される。
【0036】
図2(c)は、基板412の他方の基板面412b(以下、裏面という)を上から見た図を示している。図2(c)に示すように、基板412の裏面412bには、基板412を加熱する白金Pt等の電熱線から構成されたヒータ414が設けられている。そのヒータ414は、基板412を加熱して、基板412に設けられた電極413a、413b間に付着されたPMを燃焼除去するためのものである。これによって、PMセンサ41で繰り返しPM量を検出できるようにしている。
【0037】
図2(d)は、PMセンサ41の出力信号を測定する測定回路を示した図である。図2(e)は、PMセンサ41の出力信号を示した図であり、具体的には、PMセンサ41の出力信号Vの時間変化を示したライン101、102を示している。第一のライン101は、DPF30が正常時の場合におけるラインであり、第二のライン102は、DPF30が故障時の場合におけるラインである。図2(d)に示すように、PMセンサ41の一対の電極413a、413b間に一定の電圧を印加する電圧源E1が設けられる。基板412は絶縁性の材料で形成されており、二つの電極413a、413bは離間されているので、PMが付着されていない状態では、それら電極413a、413b間は絶縁されている。つまり、それら電極413a、413b間には電流I1は流れない。
【0038】
この状態で、二つの電極413a、413b間にPMが付着すると、その付着量が少ないうちは電極413a、413b間には電流I1が流れない。しかし、時間の経過にともなって一定の量以上のPMが付着すると、PMはカーボン粒子から構成されており導電性を有するので、二つの電極413a、413b間に付着されたPMに電流I1が流れる。つまり、二つの電極413a、413b間が導通する。図2(d)に示すように、その電流I1が流れるライン上には電流検出用の抵抗R1(シャント抵抗)が設けられている。そして、そのシャント抵抗R1の両端電圧を測定することで、電流I1に応じた出力信号Vを得ている。
【0039】
図2(e)に示す時間t=0が基板412にPMの付着が開始される時間とすると、時間t=0から間もないうちは出力信号Vはゼロとされている。これは、上述したように、PM付着量が未だ少ないために電極413a、413b間が導通されていないためである。時間tの経過にともなってPM付着量が増えてくると、ある時期から出力信号Vが現れ始める。この時期を通電時期とすると、図2(e)では、正常時における通電時期をta、故障時における通電時期をtcで示している。
【0040】
以下、正常時におけるライン101を参照して説明すると、通電時期taの後、時間の経過にともなってPM付着量が増加していくので、電流I1、すなわち出力信号Vが増加していく。その出力信号Vは基板412に付着したPM付着量に応じた値となり、そのPM付着量は排気に含まれるPM量に応じた値となるので、出力信号Vを読み取ることで排気に含まれるPM量を検出することができる。ただし、上記「発明が解決しようとする課題」の欄で説明したように、基板412に付着したPMの電気抵抗は温度の影響によって大きく変化するので、出力信号Vの絶対値からPM量の正確な値を検出するのは困難とされる。
【0041】
また、前回のPM量の検出時に付着されたPMが基板412にそのまま残っていると、今回の検出時に正確なPM量を検出できなくなってしまう。そこで、PMセンサ41では、定期的に、ヒータ414(図2(c)参照)で基板412を加熱して、基板412に付着されたPMを燃焼除去している。なお、ヒータ414は、PMが燃焼除去される温度として例えば約700℃で基板412を加熱している。この場合、図2(e)に示す点Pの時点tbでPMが燃焼除去されたとすると、時点tbにおいて出力信号Vはゼロにリセットされる。その後、再度、PMが基板412に付着し始め、時点tbを基準とした通電時期taから出力信号Vが現れ始める。
【0042】
また、排気に含まれるPM量が多いと、基板412に付着する付着量が多くなるので、早く通電する。よって、DPF30の故障時には、正常時に比べてDPF30を通り抜けるPM量が多くなるので、図2(e)に示すように、故障時の通電時期tcは正常時の通電時期taに比べて先とされている。
【0043】
図1の説明に戻り、エンジンシステム1には、DPF30の前後差圧を検出する差圧センサ42が設けられている。その差圧センサ42は、一端側がDPF30上流の排気通路21に、他端側はDPF30下流の排気通路21にそれぞれ接続される。また、排気通路21のDPF30の上流側には、排気温を検出する排気温センサ43が設けられている。エンジンシステム1の吸気通路52には、新気量を検出するエアフロメータ44やエンジン10に取り込まれる新気量の増減を調整するスロットル弁45(吸気絞り弁)が設けられている。また、エンジンシステム1には、エンジン10の回転数を検出する回転数センサ46が設けられている。その回転数センサ46は、例えばエンジン10から連結されたクランク12の回転角度を計測するクランク角センサとすればよい。また、エンジンシステム1には、運転者の要求トルクを車両側に知らせるための運転操作部に相当するアクセルペダルの状態(変位量)を検出するアクセルセンサ47も設けられている。それら各センサ41〜47の信号は、後述するECU60に送られるようになっている。さらに、エンジンシステム1は、排気の一部を吸気系に再循環することにより燃焼温度を下げてNOxの発生を低減するEGRシステム50も備えている。
【0044】
エンジンシステム1は、そのエンジンシステム1の全体制御を司るECU60を備えている。そのECU60は、通常のコンピュータの構造を有するものとし、各種演算を行うCPU(図示外)や各種情報の記憶を行うメモリ61を備えている。ECU60は、例えば、上記各種センサからの検出信号を基に運転状態を検出し、運転状態に応じた最適な燃料噴射量、噴射時期、噴射圧等を算出して、エンジン10への燃料噴射を制御する。また、ECU60は、DPF30の故障を検出する故障検出処理を実行する。以下、その故障検出処理の詳細を説明する。
【0045】
図3は、ECU60が実行する故障検出処理の手順を示したフローチャートを示している。この図3の処理は、PMセンサ41のヒータ414(図2(c)参照)によるPMの燃焼除去が終了された直後(図2(e)では時点tb)に開始される。先ず、DPF30に流入されるPM量である流入PM量を推定する(S11)。この流入PM量はエンジン10から排出されるPM量であり、そのPM量はエンジン10の回転数及び燃料噴射量に関係する。そこで、このS11では、例えばエンジン10の回転数及び燃料噴射量に基づいて、流入PM量を推定する。具体的には、エンジン10の回転数及び燃料噴射量をパラメータとして流入PM量のマップを予めメモリ61に記憶しておく。そして、回転数センサ46(図1参照)で検出された今回の回転数及びインジェクタ11(図1参照)で噴射される噴射量の指令値に対応する流入PM量を、そのマップから読み出す。
【0046】
次いで、DPF30が故障した場合におけるDPF30によるPMの捕集率(故障時捕集率)を推定する(S12)。なお、ここで言う「DPF30が故障した場合」とは、具体的には、故障によりDPF30の捕集率が著しく低下し、OBD(On−board−diagnostics)の規制値を満足することができない場合を言う。OBDの規制値は、EURO6等の法による規制値より厳しめに設定される。例えば、特定の走行モードにおいて、法による規制値がPM=4.5mg/kmとしたときに、OBDの規制値は例えばその2倍のPM=9.0mg/kmに設定される。
【0047】
ここで、図4は、S12の処理の詳細手順のフローチャートを示している。DPF30が故障すると、正常時に比べてPMの捕集率が低下することになるが、本発明者らは、DPF30内に堆積されているPM堆積量や排気流量によって捕集率が変化するという知見を得ている。そこで、故障時捕集率を推定するために、先ず、DPF30内に堆積されているPM堆積量を算出する(S121)。PM堆積量が多くなるとDPF30の前後差圧が大きくなるので、S121では、例えばその前後差圧に基づいてPM堆積量を算出する。具体的には、DPF30の前後差圧とPM堆積量との関係のマップを予めメモリ61に記憶しておく。そして、差圧センサ42(図1参照)で検出された今回の前後差圧に対応するPM堆積量を、そのマップから読み出す。
【0048】
次いで、排気流量を算出する(S122)。なお、ここでは排気の体積流量を算出する。具体的には、例えば、エアフロメータ44によって吸気量を算出する。そして、その吸気量を、排気温センサ43で検出される排気温に応じた排気の膨張分や、圧力センサ(図示外)で検出される圧力に応じた排気の圧縮分で補正することで、排気流量を算出する。
【0049】
次いで、それらPM堆積量、排気流量に基づいて故障時捕集率を算出する(S123)。ここで、図5は、それらPM堆積量、排気流量と捕集率との関係を示した図であり、具体的には、図5(a)はPM堆積量と捕集率との関係を示したグラフ110を示している。そのグラフ110には、DPF30の正常時におけるPM堆積量と捕集率との関係を示したライン111と、DPF30の故障時におけるPM堆積量と捕集率との関係を示したライン112を示している。また、図5(b)は排気流量と捕集率との関係を示したグラフ120を示している。そのグラフ120には、DPF30の正常時における排気流量と捕集率との関係を示したライン121と、DPF30の故障時における排気流量と捕集率との関係を示したライン122を示している。
【0050】
図5(a)のライン111が示すように、正常時の場合のPM堆積量が少ない領域Bにおいては、捕集率はそれほど高くなっておらず、PM堆積量の増加にしたがって捕集率が増加する傾向とされている。その領域Bを超えると捕集率は、PM堆積量に関わらず高いレベル(例えば99%以上)に維持されている。これに対して、ライン112が示すように、故障時の場合には正常時の捕集率と比べて捕集率が全体的に低下している。より具体的には、PM堆積量が少ない領域Bにおいては、正常時の場合と同様の傾向とされている。また、その領域Bを超えると、PM堆積量が増加するにしたがって捕集率が低下していく傾向とされている。これは、PM堆積量が多くなると、DPF30内において、PMが堆積している部分の圧損が高くなり、相対的に圧損が低いDPF30の破損部を通り抜けるPM量が多くなると考えられるためである。
【0051】
なお、正常時、故障時のどちらも領域Bで捕集率が低くされているのは、PMがDPF30に捕集されると、その捕集されたPMが別のPMを捕集するという性質に基づくものである。つまり、PM堆積量が少ないと、捕集されたPMによって別のPMが捕集されるということが少なくなるので、捕集率は低くなると考えられる。
【0052】
次に、排気流量と捕集率との関係を説明すると、図5(b)のライン121が示すように、正常時の場合には、排気流量に関わらず捕集率は高いレベル(例えば99%以上)に維持されている。これに対して、ライン122が示すように、故障時に場合には、排気流量が増加するにしたがって捕集率が低下していく傾向とされている。これは、排気流量が多くなると、DPF30の破損部を通り抜けるPM量が多くなると考えられるためである。ただし、排気流量による影響はDPF30の故障形態によっても異なると考えられる。
【0053】
S123では、図5の関係に基づいて故障時捕集率を算出する。具体的には、図5(a)、(b)の故障時のライン112、122が反映されたPM堆積量及び排気流量と捕集率との関係を示したマップを予めメモリ61に記憶しておく。そして、S121で算出されたPM堆積量及びS122で算出された排気流量に対応する捕集率を、そのマップから読み出す。S123の処理の後、図4のフローチャートの処理を終了して、図3のフローチャートの処理に戻る。
【0054】
図3において、次いで、DPF30が故障した場合におけるDPF30から流出される(DPF30を通り抜ける)PM量である故障時流出PM量を推定する(S13)。具体的には、S11で推定された流入PM量とS12で推定された故障時捕集率とを乗算することで、故障時流出PM量を推定する。
【0055】
次いで、DPF30の下流の排気に含まれる全PMのうちPMセンサ41の基板412(電極413)に付着されるPMの比率を示したPM付着率を推定する(S14)。図6は、S14の処理の詳細手順のフローチャートを示している。また、図7は、電極413の温度(電極温度)とPM付着率との関係を説明する図であり、具体的には、図7(a)は時間の経過にともなって電極温度がどのように変化するかを示したライン210を示しており、図7(b)は電極温度とPM付着率との関係を示したライン211を示している。
【0056】
先ず、図7を参照して、S14で推定するPM付着率の推定方法の考え方について説明する。上述したように、PMセンサ41へのPM付着量が多くなると、ヒータ414(図2(c)参照)によって基板412(電極413)が加熱されて付着されたPMが燃焼除去される。その加熱が開始される時間をt=t0とすると、図7(a)に示すように、時間t0を境にして電極温度が徐々に上昇していく。そして、PMが燃焼除去される温度である約700℃で加熱(PMセンサ41の再生)が終了される。その終了された時間をt=t1とすると、電極温度は時間t1を境にして徐々に減少していく。時間t1から一定の期間t2経過すると、電極温度は加熱される前の元の温度に戻る。図3の故障検出処理は、PMセンサ41の再生が終了された直後(図7(a)ではt=t1)から開始されるので、その故障検出処理が実行される間では、電極温度は700℃から元の温度の間で大きく変化することになる。この場合、図7(b)のライン211に示すように、電極温度が高くなるにしたがってPM付着率が小さくなる傾向とされている。これは、電極温度が高い場合には、電極温度とケース411内に侵入したガスの温度(電極温度>ガスの温度)との温度差による熱泳動の影響が大きくなると考えられるためである。
【0057】
このように、PM付着率は電極温度によって変化するので、PM付着率を推定するために、先ず、現時点の電極温度を推定する(S141)。ここで、図8は、電極温度の推定方法を説明するための図である。具体的には、図8(a)は、ヒータ414のヒータ抵抗に基づいて電極温度を推定する方法を説明する図として、そのヒータ抵抗と電極温度の関係を示したライン212を示している。また、図8(b)は、電極413と排気との間の熱交換を考慮して電極温度を推定する方法を説明する図として、PMセンサ41付近の拡大図を示している。以下、図8を参照して、電極温度の推定方法を説明する。
【0058】
(ヒータ抵抗に基づいて電極温度を推定する方法)
先ず、ヒータ抵抗に基づいて電極温度を推定する方法について説明する。電極413は、ヒータ414に流れる電流によってヒータ414が発熱し、その熱によって加熱される。つまり、電極温度は、ヒータ414の発熱量と関係する。ヒータ414の発熱量が大きくなるほど、ヒータ414を構成する分子が活発に振動するので、ヒータ抵抗が大きくなる。よって、図8(a)のライン212が示すように、ヒータ抵抗が大きいほどヒータ414の発熱量が大きくなって、その結果電極温度は高くなると考えられる。なお、ヒータ414を白金Ptで構成した場合には、ヒータ抵抗と電極温度の関係はほぼリニア(比例)の関係となる。
【0059】
そこで、S141では、先ずヒータ抵抗を測定する。図9は、ヒータ抵抗を測定する測定回路70を示している。その測定回路70は、ヒータ抵抗414(ヒータ414)に電圧を印加する電圧源E2を有する。その電圧源E2による電圧によって、ヒータ抵抗414にはヒータ抵抗414に応じた電流I2が流れる。その電流I2が流れるライン上には電流検出用の抵抗R2(シャント抵抗)が設けられている。そのシャント抵抗R2の両端電圧Vを測定することで、電流I2、すなわちヒータ抵抗414を測定することができる。S141では、図8(a)のライン212を示したマップを予めメモリ61に記憶しておく。そして、測定したヒータ抵抗に対応する電極温度を、そのマップから読み取る。
【0060】
(電極と排気との間の熱交換を考慮して電極温度を推定する方法)
次に、電極413と排気との間の熱交換を考慮して、電極温度を推定する方法について説明する。図8(b)に示すように、排気通路21aに、排気温Te(具体的には例えば100℃)、排気流量Feの排気eが流れていると仮定する。その排気eの一部が、PMセンサ41のケース411に形成された孔411aからケース411内に侵入される。排気eのうちのケース411内に侵入される排気(PM)の率を侵入率αとする。また、電極413の初期温度がTi(具体的には例えば700℃)、熱容量がQであるとする。また、ケース411内(図8(b)の領域C)の熱の伝達率がβであるとする。
【0061】
以上のようなモデルを考えた場合、高温側の電極413と低温側の排気eとの間で熱交換がなされる。この場合、電極413の電極温度は、その熱交換量及び電極413(+基板412)の熱容量Qに応じた値とされる。例えば、熱交換量が多いほど、電極温度は小さくなる。また、熱容量Qが大きいほど、奪われた熱量に対して、温度が下がりにくくなるので、電極温度は大きくなる。よって、S141では、先ず、上記の各パラメータ(Te、Fe、α、Ti、β)を考慮して熱交換量Xを算出する。具体的には、各パラメータ(Te、Fe、α、Ti、β)と熱交換量Xとの関係を示したマップを予めメモリ61に記憶しておく。そして、今回のパラメータ(Te、Fe、α、Ti、β)に対応する熱交換量Xを、そのマップに基づいて算出する。この際、排気温Teは排気温センサ43(図1参照)で検出する。排気流量Feは、上述のS122で算出したときの値を使用する。侵入率αは、孔411aの形状等を考慮して予め定めておく。電極413の初期温度Tiは、予め定められた値(具体的には例えば700℃)を使用する。伝達率βは、予め定められた値(例えば空気の伝達率)を使用する。なお、二つの物質間の熱交換のモデルは公知であるので、さらに詳細な説明はここでは省略する。
【0062】
熱交換量Xを算出した後、その熱交換量Xと電極413の熱容量Qとに基づいて、電極温度を算出する。具体的には、熱交換量X及び熱容量Qと電極温度の関係を示したマップを予めメモリ61に記憶しておく。そして、今回の熱交換量X及び熱容量Qに対応する電極温度を、そのマップから算出する。この際、熱容量Qは、電極413の面積に応じた値となるので、その面積に基づいて予め算出された値を使用する。
【0063】
S141で電極温度を推定した後、次いで、その電極温度に基づいてPM付着率を推定する(S142)。具体的には、上述した図7(b)の電極温度とPM付着率との関係を示したライン211を予めメモリ61に記憶しておく。そして、今回の電極温度に対応するPM付着率を、そのライン211から読み取る。S142の処理の後、図6のフローチャートの処理を終了して、図3のフローチャートの処理に戻る。
【0064】
なお、以上では、電極温度に基づいてPM付着率を推定する方法を説明したが、他の方法でPM付着率を推定することもできる。以下、他の方法について説明する。
【0065】
(経過時間に基づいてPM付着率を推定する方法)
図7(a)の電極温度の時間変化を示したライン210が示すように、電極温度は、ヒータ414による加熱(ヒータ414による再生)が終了した時間t1を境にして、時間が経過するにしたがって徐々に減少していく。つまり、ヒータ414による再生終了からの経過時間に応じて、電極温度が変化し、電極温度が変化するとPM付着率も変化するので(図7(b)参照)、その経過時間から直接PM付着率を推定することができる。ここで、図10(a)は、経過時間とPM付着率との関係を示したライン213を示している。そのライン213が示すように、経過時間が短いほどPM付着率が小さくされている。これは、経過時間が短いほど電極温度が高いためである。
【0066】
そこで、図3のS14では、図10(a)のライン213を予めメモリ61に記憶しておく。そして、今回の経過時間に対応するPM付着率をそのライン213から読み取るようにしてもよい。なお、経過時間は、タイマー(図示外)で計測すればよい。経過時間からPM付着率を推定する方法は、上述の図6の処理に代えて実行される方法である。
【0067】
(排気流量に基づいてPM付着率を推定する方法)
また、経過時間からPM付着率を推定する方法の他に、排気流量からPM付着率を推定することもできる。ここで、図10(b)は、排気流量とPM付着率との関係を示したライン214を示している。ライン214が示すように、排気流量が大きいほどPM付着率が小さくされている。これは、排気流量が大きいと、排気の流速が速くなるからである。
【0068】
そこで、S14では、図10(b)のライン214を予めメモリ61に記憶しておく。そして、今回の排気流量に対応するPM付着率をそのライン214から読み取るようにしてもよい。なお、排気流量は、上述のS122で算出したときの値を使用する。排気流量からPM付着率を推定する方法は、上述の図6の処理に代えて、又は図6の処理に加えて実行される方法である。図6の処理に加えて実行する場合、つまり、電極温度と排気流量の両方を考慮してPM付着率を推定する場合には、電極温度と排気流量の両方が考慮されたPM付着率のマップを予め用意しておけばよい。
【0069】
図3の説明に戻り、S14の処理の後、次いで、DPF30が故障した場合におけるPMセンサ41に付着しているPM付着量(故障時PM付着量)を推定する(S15)。具体的には、S13で推定された故障時流出PM量とS14で推定されたPM付着率とを乗算することで、故障時PM付着量を算出する。
【0070】
ここで、S16以降の処理を説明する前に、DPF30が故障した場合における通電時期である故障時通電時期の推定方法を説明する。図11は、その推定方法を説明するための図であり、具体的には、図11(a)は、S13で推定された故障時流出PM量の積算値の時間変化を示したライン310を示している。また、図11(b)は、S15で推定された故障時PM付着量の積算値の時間変化を示したライン320を示している。なお。図11(b)では、PMセンサ41の通電が開始される付着量として予め定められた通電付着量のライン330を示している。また、図11(c)は、PMセンサ41の出力信号の時間変化を示したライン(正常時のライン340、故障時のライン350)を示している。なお、図11において、時間t=0は、ヒータ414によるPMの燃焼除去が終了された直後の時点、すなわち図3の処理が開始される時点を示している。
【0071】
図11(a)、(b)に示すように、時間の経過にともなって故障時流出PM量の積算値は徐々に増加していき(ライン310)、それにともなって、故障時PM付着量の積算値も時間の経過にともなって徐々に増加していく(ライン320)。図11(b)に示すように、DPF30が故障した場合であっても、故障時PM付着量の積算値が通電付着量に達するまで(ライン320がライン330に交差するまで)にはある程度の時間を要する。そして、故障時PM付着量の積算値が通電付着量に達した場合(ライン320がライン330に交差した場合)に、PMセンサ41が通電する。この通電時期を、DPF30が故障した場合における通電時期tx(故障時通電時期)とする。上述したように、本実施形態では、DPF30が故障した場合として例えばOBD規制値を満たさなくなる場合を想定しており、その場合の故障時通電時期txを推定することになる。そして、本実施形態では、故障時通電時期txに対して、実際のPMセンサ41の通電時期が先か後かによって、DPF30が故障しているか否かを判定している。
【0072】
そのために、図3のS15の処理の後、次いで、S15で推定された故障時PM付着量が、PMセンサ41の通電が開始される通電付着量以上になったか否かを判断する(S16)。未だ通電付着量に達していない場合には(S16:No)、S15の処理に戻る。この場合、S15において、次の時点における故障時PM付着量を、次の時点におけるS11〜S14の処理結果に基づいて算出する。そして、その故障時PM付着量を前回までの故障時PM付着量に積算する(S16)。つまり、故障時PM付着量の積算値が通電付着量に達するまでは、図11(b)に示すように、時間の経過にともなって徐々に増加していく故障時PM付着量の積算値が算出されることになる(S15)。
【0073】
故障時PM付着量の積算値が通電付着量に達した場合には(S16:Yes)、その達した時点を故障時通電時期(図11の故障時通電時期tx)と推定して、実際のPMセンサ41の出力の有無を確認する。すなわち、PMセンサ41の出力が、所定値以上か否かを判断することで、PMセンサ41が通電されているか否かを判断する(S17)。S17における所定値は、PMセンサ41が通電されているか否かを判断するためのものであるので、図11(c)の縦軸のゼロ点付近に設定されている。
【0074】
PMセンサ41の出力が所定値未満の場合、つまり未だ通電されていない場合には(S17:No)、図3のフローチャートの処理を終了する。この場合には、実際のPMセンサ41の通電時期が故障時通電時期よりも後であるので、DPF30は正常と判定されることになる(図11(c)のライン340参照)。この場合には、DPF30はOBD規制値を満たしていることになる。
【0075】
これに対して、PMセンサ41の出力が所定値以上の場合、つまり既にPMセンサ41が通電されている場合には(S17:Yes)、処理をS18に進める。この場合には、実際のPMセンサ41の通電時期が故障時通電時期よりも先であるので、S18において、DPF30が故障していると判定する(S18、図11(c)のライン350参照)。この場合には、DPF30はOBD規制値を満たしていないおそれがあることになる。その後、図3のフローチャートの処理を終了する。
【0076】
以上説明したように、本実施形態では、PMセンサ41の通電時期に基づいて、DPF30が故障しているか否かを判定しているので、PMセンサ41に付着したPMの温度変化に関わらず、DPF30の故障を精度良く検出できる。この際、DPF30が故障した場合における通電時期(故障時通電時期)を、各種の条件を考慮して、具体的には流入PM量、捕集率、流出PM量、PM付着率、PM付着量(S11〜S15)を考慮して推定しているので、精度の高い故障時通電時期の推定値を得ることができる。
【0077】
(変形例1)
上記実施形態では、故障時通電時期の到来を待って、PMセンサ41の出力の有無を確認していたが(図3のS16:Yes→S17)、PMセンサ41の出力を待ってから故障時通電時期が到来しているか否かを確認するようにしてもよい。この場合、図3の処理に代えて、例えば図12のフローチャートの処理を実行すればよい。この図12は、変形例1に係る故障検出処理の手順を示したフローチャートである。なお、図12において、図3の処理と同じ処理には同一符号を付している。
【0078】
図12の処理は、S11〜S15の処理の後、先にS17の処理を実行し、その後、S16の処理を実行する点が図3の処理と異なっている。すなわち、S11〜S15で故障時PM付着量を推定した後、PMセンサ41の出力が所定値以上か否かを判断して、PMセンサ41の出力の有無を確認する(S17)。所定値未満の場合、すなわち未だPMセンサ41の出力が無い場合には(S17:No)、S17の処理に戻って、PMセンサ41の出力を待つ。PMセンサ41の出力が所定値以上の場合、すなわちPMセンサ41の出力が有る場合には(S17:Yes)、処理をS16に進める。この場合には、PMセンサ41の実際の通電時期が到来したことになる。次いで、故障時PM付着量の積算値が通電付着量以上か否かを判断する(S16)。故障時PM付着量の積算値が通電付着量以上の場合には(S16:Yes)、図12のフローチャートの処理を終了する。この場合には、先に故障時通電時期が到来して、その後に実際の通電時期が到来したことになるので、DPF30は正常と判定されることになる。
【0079】
これに対して、故障時PM付着量の積算値が通電付着量に未だ達していない場合には(S16:No)、処理をS18に進める。この場合には、故障時通電時期よりも先に実際の通電時期が到来したことになるので、DPF30が故障していると判定する(S18)。その後、図12のフローチャートの処理を終了する。
【0080】
なお、上記実施形態において、図3又は図12のS11〜S16の処理を実行するECU60が本発明の「時期推定手段」に相当する。図3又は図12のS18の処理を実行するECU60が本発明の「故障判定手段」に相当する。図3又は図12のS11の処理を実行するECU60が本発明の「流入PM量推定手段」に相当する。図3又は図12のS12の処理を実行するECU60が本発明の「捕集率推定手段」に相当する。図3又は図12のS13の処理を実行するECU60が本発明の「流出PM量推定手段」に相当する。図3又は図12のS14の処理を実行するECU60が本発明の「付着率推定手段」に相当する。図3又は図12のS15の処理を実行するECU60が本発明の「付着量算出手段」に相当する。図4のS121の処理を実行するECU60が本発明の「堆積量算出手段」に相当する。図4のS122の処理を実行するECU60が本発明の「排気流量算出手段」に相当する。図6のS141の処理を実行するECU60が本発明の「電極温度推定手段」及び「熱交換量算出手段」に相当する。図9の測定回路70が本発明の「ヒータ抵抗測定手段」に相当する。
【符号の説明】
【0081】
1 エンジンシステム
10 ディーゼルエンジン(内燃機関)
21 排気通路
30 ディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)
41 PMセンサ
411 ケース
411a 孔
412 基板
413、413a、413b 電極
414 ヒータ
60 ECU
61 メモリ
70 測定回路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気通路に設けられた、排気に含まれるパティキュレートマターを捕集するパティキュレートフィルタと、
前記排気通路の前記パティキュレートフィルタの下流に設けられ、前記パティキュレートフィルタの下流の排気に含まれるパティキュレートマターの量であるPM量を検出するPMセンサであって、電極を有し、その電極に付着したパティキュレートマターを流れる電流によって前記PM量を検出するPMセンサと、
前記電極に付着したパティキュレートマターによって通電が開始される時期を通電時期として、前記パティキュレートフィルタが故障した場合における前記通電時期である故障時通電時期を推定する時期推定手段と、
実際の前記通電時期が前記故障時通電時期よりも先の場合に、前記パティキュレートフィルタが故障していると判定する故障判定手段と、を備えることを特徴とするパティキュレートフィルタの故障検出装置。
【請求項2】
前記PMセンサは、前記PMセンサを加熱して前記電極に付着したパティキュレートマターを燃焼除去するヒータを含み、
前記時期推定手段は、前記ヒータによる前記燃焼除去後における前記故障時通電時期を推定するものであることを特徴とする請求項1に記載のパティキュレートフィルタの故障検出装置。
【請求項3】
前記時期推定手段は、前記パティキュレートフィルタに流入するPM量である流入PM量を推定する流入PM量推定手段と、
前記パティキュレートフィルタが故障した場合における前記パティキュレートフィルタによる前記パティキュレートマターの捕集率である故障時捕集率を推定する捕集率推定手段と、
前記流入PM量推定手段が推定した前記流入PM量と前記捕集率推定手段が推定した前記故障時捕集率とに基づいて、前記パティキュレートフィルタが故障した場合における前記パティキュレートフィルタから流出される前記PM量である故障時流出PM量を推定する流出PM量推定手段と、を含み、
前記時期推定手段は、前記流出PM量推定手段が推定した前記故障時流出PM量に基づいて前記故障時通電時期を推定することを特徴とする請求項2に記載のパティキュレートフィルタの故障検出装置。
【請求項4】
前記時期推定手段は、前記パティキュレートフィルタの下流の排気に含まれる全パティキュレートマターのうち、前記電極に付着されるパティキュレートマターの比率を示すPM付着率を推定する付着率推定手段と、
その付着率推定手段が推定した前記PM付着率と前記故障時流出PM量とに基づいて、前記パティキュレートフィルタが故障した場合における前記電極へのパティキュレートマターの付着量である故障時PM付着量を時間の経過にともなって積算して算出する付着量算出手段と、を含み、
前記時期推定手段は、前記付着量算出手段が算出した前記故障時PM付着量が前記通電時期の付着量として予め定められた通電付着量以上となった時期を前記故障時通電時期と推定するものであることを特徴とする請求項3に記載のパティキュレートフィルタの故障検出装置。
【請求項5】
前記捕集率推定手段は、前記パティキュレートフィルタに堆積されているPM堆積量を算出する堆積量算出手段を含み、その堆積量算出手段が算出した前記PM堆積量に基づいて前記故障時捕集率を推定するものであることを特徴とする請求項3又は4に記載のパティキュレートフィルタの故障検出装置。
【請求項6】
前記捕集率推定手段は、排気流量を算出する排気流量算出手段を含み、その排気流量算出手段が算出した前記排気流量に基づいて前記故障時捕集率を推定するものであることを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項に記載のパティキュレートフィルタの故障検出装置。
【請求項7】
前記付着率推定手段は、前記電極の温度を推定する電極温度推定手段を含み、その電極温度推定手段が推定した前記電極の温度が高いほど小さくなる前記PM付着率を推定するものであることを特徴とする請求項4に記載のパティキュレートフィルタの故障検出装置。
【請求項8】
前記ヒータの電気抵抗であるヒータ抵抗を測定するヒータ抵抗測定手段を備え、
前記電極温度推定手段は、前記ヒータ抵抗測定手段が測定した前記ヒータ抵抗に基づいて前記電極の温度を推定するものであることを特徴とする請求項7に記載のパティキュレートフィルタの故障検出装置。
【請求項9】
前記電極温度推定手段は、前記電極と排気との間の熱交換量を算出する熱交換量算出手段を含み、その熱交換量算出手段が算出した前記熱交換量と前記電極の熱容量とに基づいて前記電極の温度を推定するものであることを特徴とする請求項7に記載のパティキュレートフィルタの故障検出装置。
【請求項10】
前記付着率推定手段は、排気流量が大きいほど小さくなる前記PM付着率を推定するものであることを特徴とする請求項4に記載のパティキュレートフィルタの故障検出装置。
【請求項11】
前記付着率推定手段は、前記ヒータによる燃焼除去終了からの経過時間が短いほど小さくなる前記PM付着率を推定するものであることを特徴とする請求項4に記載のパティキュレートフィルタの故障検出装置。
【請求項1】
内燃機関の排気通路に設けられた、排気に含まれるパティキュレートマターを捕集するパティキュレートフィルタと、
前記排気通路の前記パティキュレートフィルタの下流に設けられ、前記パティキュレートフィルタの下流の排気に含まれるパティキュレートマターの量であるPM量を検出するPMセンサであって、電極を有し、その電極に付着したパティキュレートマターを流れる電流によって前記PM量を検出するPMセンサと、
前記電極に付着したパティキュレートマターによって通電が開始される時期を通電時期として、前記パティキュレートフィルタが故障した場合における前記通電時期である故障時通電時期を推定する時期推定手段と、
実際の前記通電時期が前記故障時通電時期よりも先の場合に、前記パティキュレートフィルタが故障していると判定する故障判定手段と、を備えることを特徴とするパティキュレートフィルタの故障検出装置。
【請求項2】
前記PMセンサは、前記PMセンサを加熱して前記電極に付着したパティキュレートマターを燃焼除去するヒータを含み、
前記時期推定手段は、前記ヒータによる前記燃焼除去後における前記故障時通電時期を推定するものであることを特徴とする請求項1に記載のパティキュレートフィルタの故障検出装置。
【請求項3】
前記時期推定手段は、前記パティキュレートフィルタに流入するPM量である流入PM量を推定する流入PM量推定手段と、
前記パティキュレートフィルタが故障した場合における前記パティキュレートフィルタによる前記パティキュレートマターの捕集率である故障時捕集率を推定する捕集率推定手段と、
前記流入PM量推定手段が推定した前記流入PM量と前記捕集率推定手段が推定した前記故障時捕集率とに基づいて、前記パティキュレートフィルタが故障した場合における前記パティキュレートフィルタから流出される前記PM量である故障時流出PM量を推定する流出PM量推定手段と、を含み、
前記時期推定手段は、前記流出PM量推定手段が推定した前記故障時流出PM量に基づいて前記故障時通電時期を推定することを特徴とする請求項2に記載のパティキュレートフィルタの故障検出装置。
【請求項4】
前記時期推定手段は、前記パティキュレートフィルタの下流の排気に含まれる全パティキュレートマターのうち、前記電極に付着されるパティキュレートマターの比率を示すPM付着率を推定する付着率推定手段と、
その付着率推定手段が推定した前記PM付着率と前記故障時流出PM量とに基づいて、前記パティキュレートフィルタが故障した場合における前記電極へのパティキュレートマターの付着量である故障時PM付着量を時間の経過にともなって積算して算出する付着量算出手段と、を含み、
前記時期推定手段は、前記付着量算出手段が算出した前記故障時PM付着量が前記通電時期の付着量として予め定められた通電付着量以上となった時期を前記故障時通電時期と推定するものであることを特徴とする請求項3に記載のパティキュレートフィルタの故障検出装置。
【請求項5】
前記捕集率推定手段は、前記パティキュレートフィルタに堆積されているPM堆積量を算出する堆積量算出手段を含み、その堆積量算出手段が算出した前記PM堆積量に基づいて前記故障時捕集率を推定するものであることを特徴とする請求項3又は4に記載のパティキュレートフィルタの故障検出装置。
【請求項6】
前記捕集率推定手段は、排気流量を算出する排気流量算出手段を含み、その排気流量算出手段が算出した前記排気流量に基づいて前記故障時捕集率を推定するものであることを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項に記載のパティキュレートフィルタの故障検出装置。
【請求項7】
前記付着率推定手段は、前記電極の温度を推定する電極温度推定手段を含み、その電極温度推定手段が推定した前記電極の温度が高いほど小さくなる前記PM付着率を推定するものであることを特徴とする請求項4に記載のパティキュレートフィルタの故障検出装置。
【請求項8】
前記ヒータの電気抵抗であるヒータ抵抗を測定するヒータ抵抗測定手段を備え、
前記電極温度推定手段は、前記ヒータ抵抗測定手段が測定した前記ヒータ抵抗に基づいて前記電極の温度を推定するものであることを特徴とする請求項7に記載のパティキュレートフィルタの故障検出装置。
【請求項9】
前記電極温度推定手段は、前記電極と排気との間の熱交換量を算出する熱交換量算出手段を含み、その熱交換量算出手段が算出した前記熱交換量と前記電極の熱容量とに基づいて前記電極の温度を推定するものであることを特徴とする請求項7に記載のパティキュレートフィルタの故障検出装置。
【請求項10】
前記付着率推定手段は、排気流量が大きいほど小さくなる前記PM付着率を推定するものであることを特徴とする請求項4に記載のパティキュレートフィルタの故障検出装置。
【請求項11】
前記付着率推定手段は、前記ヒータによる燃焼除去終了からの経過時間が短いほど小さくなる前記PM付着率を推定するものであることを特徴とする請求項4に記載のパティキュレートフィルタの故障検出装置。
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図8】
【図9】
【図12】
【図1】
【図5】
【図7】
【図10】
【図11】
【図3】
【図4】
【図6】
【図8】
【図9】
【図12】
【図1】
【図5】
【図7】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−122399(P2012−122399A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−273591(P2010−273591)
【出願日】平成22年12月8日(2010.12.8)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月8日(2010.12.8)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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