説明

パドルタイプの攪拌翼

【課題】腐食性、磨耗性を有するスラリー液の攪拌において長期間使用でき、攪拌翼の腐食および磨耗による運転停止時間を短縮し、補修コストを低減できる耐磨耗性パドルタイプの攪拌翼を提供する。
【解決手段】攪拌反応槽内で腐食作用および磨耗作用のあるスラリー液を攪拌するパドルタイプの攪拌翼1であって、攪拌翼がチタン製翼板3で構成され、該攪拌翼表面のうちで腐食性、磨耗性が強い表面の実質的全面に、断面L型セラミックス製部材7、断面コ型セラミックス製部材又は平板形状のセラミックス製部材から選ばれるいずれかの耐磨耗性部材が固定されており、攪拌翼の端部表面が、断面L型7又は断面コ型形状のセラミックス製部材で覆われている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パドルタイプの攪拌翼に関し、より詳しくは、腐食性、磨耗性を有するスラリー液の攪拌において長期間使用でき、攪拌翼の腐食および磨耗による運転停止時間を短縮し、補修コストを低減できる耐磨耗性パドルタイプの攪拌翼に関するものである。
【背景技術】
【0002】
非鉄製錬工業では、例えば銅やニッケルの硫化物や鉱石等に含まれる有価金属を塩素で浸出する際などに、攪拌機付き反応槽が用いられる。例えば、特許文献1では、図1に実施に用いた装置の一例を示す概略図が示されており、マットからニッケル等の金属を浸出するための攪拌機を設けた第1、第2、第3の反応槽が具体的に示されている。
【0003】
上記したニッケルや銅の硫化物や鉱石等に含まれる有価金属を塩素により浸出する方法では、従来から、ニッケル及び銅を含む硫化物原料として、硫化鉱を熔錬して得られるニッケルマットが主に使用されている。ニッケルマットは、熔錬工程において熔融された硫化物が冷却により固形化されたものであり、主成分であるNi相とニッケルを主とする金属相が緻密に析出した組織を有している。
また、ニッケルマットの塩素浸出法では微粉砕して所定の粒度分布にした原料が用いられている。それは塩素浸出反応により、イオウを固形の元素状イオウとして分離でき、かつ高いニッケル及びコバルトの浸出率が得られるからである。
【0004】
このような微粉砕して所定の粒度分布にした原料スラリーを投入した反応槽では、攪拌機の材料に高い耐食性と耐摩耗性とが要求される。そのため高い耐食性と耐摩耗性を得るのに、チタンのような耐食性と耐摩耗性とを有する金属でシャフトや攪拌羽根を構成し、更に、摩耗の激しい部分には保護カバーや犠牲板をボルト・ナットで固定して取り付けていた。
【0005】
しかし、攪拌羽根にこのような保護カバーや犠牲板を取り付けても、磨耗性の高い浸出条件下では、攪拌翼自体、およびその保護カバー、犠牲板、それらを固定するボルト・ナットの磨耗は避けられず、定期的に攪拌機を攪拌反応槽から取出し、磨耗状況を確認して、補修していた。というのは、補修時期を逸すると、保護カバーや犠牲板自体の磨耗もさることながら、これらを取り付けているボルト・ナットが磨耗し、脱落して攪拌羽根自体が腐食するなどのトラブルが発生し、膨大な補修費用が必要とされるからである。またこうしたトラブルは、予定外の設備休止を引き起こすことになるからである。
【0006】
こうした問題の発生を防止する手段として、本出願人は、特許文献2で、攪拌反応槽内で腐食作用および磨耗作用のあるスラリー液を攪拌するプロペラ型の攪拌翼において、攪拌翼の翼板磨耗条件の厳しい箇所に、耐腐食および耐磨耗性を兼ね備え、予め加工成形したL型またはコ型のセラミックス製のピースを取付け、耐磨耗性能を向上させることを提案した。
【0007】
具体的には、攪拌反応槽内で腐食作用および磨耗作用のあるスラリー液を攪拌するプロペラ型の攪拌翼において、攪拌翼をチタン製の翼板とし、このチタン製翼板の進行方向側前縁部に、セラミックス製のL型形状ピースをそのL型形状内面で固定するとともに、L型形状ピースの後部となる翼板の翼面に、その終端部で鋭角に傾斜するセラミックス製の平板形状ピースを固定するものである。あるいは、セラミックス製のコ型形状ピースをそのコ型形状内面で固定するとともに、コ型形状ピースの後部となる翼板の翼面に、その終端部で鋭角に傾斜するセラミックス製の平板形状ピースを固定するものである。
特許文献2の方法に従えば、従来よりもプロペラ型の攪拌翼の寿命延長が可能となり、ランニングコストの圧縮と休止損失の低減が達成できる。
【0008】
しかしながら、銅やニッケルの硫化物や鉱石等に含まれる有価金属を塩素により浸出する反応槽にこのパドルタイプの攪拌羽根を適用すると、攪拌羽根の進行方向の面はセラミックス部材で保護されるものの、その背面側は保護されずチタンがむき出しとなっているために、攪拌羽根の背面側では強い渦流が発生し、局部磨耗が激しくなるという問題が生じる。
【0009】
このような状況下、ニッケルマットの塩素浸出法のように、厳しい磨耗条件でも攪拌羽根の表面が保護されるパドルタイプの攪拌羽根が必要とされている。
【特許文献1】特開平10−140257号公報
【特許文献2】特開2005−87876号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、こうした問題点を解消し、摩耗対策の強化によりパドルタイプの攪拌翼の寿命延長を図り、攪拌羽根の補修にかかる費用を圧縮し、予定外の設備休止に伴う休止損失を低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記の課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、攪拌反応槽内で腐食作用および磨耗作用のあるスラリー液を攪拌する攪拌機に、パドルタイプの攪拌翼を採用し、攪拌翼の翼板磨耗条件の厳しい部分全面に、予め加工成形した耐腐食性および耐磨耗性を兼ね備える特定形状のセラミックス製部材を取り付けることで、耐磨耗性能を向上できることを見出して本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、攪拌反応槽内で腐食作用および磨耗作用のあるスラリー液を攪拌するパドルタイプの攪拌翼であって、攪拌翼がチタン製翼板で構成され、該攪拌翼表面のうちで腐食性、磨耗性が強い表面の実質的全面に、断面L型セラミックス製部材、断面コ型セラミックス製部材又は平板形状のセラミックス製部材から選ばれるいずれかの耐磨耗性部材が固定されていることを特徴とするパドルタイプの攪拌翼が提供される。
【0013】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、攪拌翼の端部表面が、断面L型又は断面コ型形状のセラミックス製部材で覆われていることを特徴とするパドルタイプの攪拌翼が提供される。
また、本発明の第3の発明によれば、第1の発明において、セラミックス製部材が、固定金具を用いて翼板と溶接されるか、ボルトとナットで翼板に固定されることを特徴とするパドルタイプの攪拌翼が提供される。
さらに、本発明の第4の発明によれば、第1の発明において、スラリー液が、銅、ニッケル又はコバルトのいずれかを含む硫化物、あるいは鉱石を含有することを特徴とするパドルタイプの攪拌翼が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、翼板磨耗条件の厳しい攪拌条件でパドルタイプの翼板を使用し、耐腐食及び耐磨耗性が必要とされる翼板の全表面に、特定形状のセラミックス製の部材を取付け、耐磨耗性能を向上させているから、攪拌翼の寿命延長が可能となり、ランニングコストの圧縮と休止損失の低減が達成できる。
また、翼板に取り付けるセラミックス製の部材を複数の分割状態として翼板に固定するので、いずれかのセラミックス製部材が部分的に磨滅しても、その一部を交換することにより、攪拌翼が再使用可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は、攪拌反応槽内で腐食作用および磨耗作用のあるスラリー液を攪拌するパドルタイプの攪拌翼であって、攪拌翼がチタン製翼板で構成され、該攪拌翼表面のうちで腐食性、磨耗性が強い表面の実質的全面に、断面L型セラミックス製部材、断面コ型セラミックス製部材又は平板形状のセラミックス製部材から選ばれるいずれかの耐磨耗性部材が固定されていることを特徴とする。
【0016】
以下、本発明のパドルタイプの攪拌翼について、図1〜図8を用いて詳細に説明する。
【0017】
銅やニッケルの硫化物や鉱石等に含まれる有価金属を塩素により浸出する方法では、前記したように、微粉砕した硫化物や鉱石の粉末原料が用いられている。これは、塩素浸出反応により、イオウを固形の元素状イオウとして分離でき、かつ高いニッケル及びコバルトの浸出率が得られるからである。例えば、粒度を100メッシュ(篩目開き:150μm)以下にまで粉砕したニッケルマット原料では、粉砕粒度を細かくするほど、浸出速度が上昇するとされている。
【0018】
このような塩素浸出では、従来、反応槽内にプロペラ型攪拌翼を有する攪拌機を設置し、浸出液として、温度60〜100℃のニッケル及び銅、コバルト、鉄を含む硫化物の塩化ニッケル水溶液のスラリー(濃度:100〜400g/L)を装入し、攪拌しながら塩素ガスを吹込み、回転数400〜500rpmで、2〜4時間かけて浸出している。この場合、プロペラ型攪拌翼を比較的高速回転させるので、攪拌翼の摩耗が激しく、2〜3ヶ月置きに補修が必要であった。
【0019】
本発明では、プロペラ型攪拌翼に代えて、より低速回転でありながら、攪拌効果が高いパドルタイプの攪拌翼1を採用している。
図1は、本発明の耐磨耗性パドルタイプの攪拌翼1を回転軸2の左側に固定した状態(A)を示している(回転軸2の右側は省略)。また、図1(B)は、(A)のa部の断面図であり、3は板状翼板であり、6はL型形状部材である。
【0020】
攪拌翼1は、例えばチタン製ないしチタン合金製の板状翼板3をベースとして構成されている。翼板3は、左右各1枚を一組として、回転軸2に設けられたブラケット4に翼板3の4つの取付け孔5aと4つのボルト5とによって鉛直方向と所定の角度をなす向きに固定され、回転軸2に連結されており、図示しないモータにより回転するようになっている。この翼板3は、一段であるが、その上に1又は2以上の翼板をさらに設けた多段パドルタイプの攪拌翼としてもよい。傾斜角は、45〜90度の間で適宜調整できる。
【0021】
本発明では、チタン製ないしチタン合金製の板状翼板3をベースとして、この翼板表面のうち腐食性、磨耗性が強い表面の実質的全面に、断面L型セラミックス製部材、断面コ型セラミックス製部材又は平板形状のセラミックス製部材から選ばれるいずれかの耐磨耗性部材が固定されている。
【0022】
図1において、a部は板状翼板3を横断面がL型形状のセラミックス製部材6で挟み込み、b部は横断面がL型形状のセラミックス製部材6と、横断面及び縦断面が何れもL型形状であるセラミックス製部材7とで前記板状翼板3の先端部を挟み込むようにしている。そして、a部は図2のように、4個のテーパ孔8があり、その中に翼板3と同材質製の固定金具が挿入され固定され、b部は図3,4のように2個のテーパ孔8があり、その中に翼板3と同材質製の固定金具が挿入され固定されている。
【0023】
このように構成したのは、回転軸に近いa部よりも、回転軸から離れた先端部b部のほうがスラリーによる腐食作用および磨耗作用が強く加わるからである。したがって、攪拌翼の端部表面が、断面L型又は断面コ型形状のセラミックス製部材で覆われていることが好ましい。また、セラミックス製の部材をa部、b部というように複数の分割状態として翼板に固定することで、翼板の複数のセラミックス製部材が部分的に磨滅しても、その一部を交換することにより、攪拌翼が再使用可能となる。
【0024】
本発明において、セラミックス製とは、窒化珪素、炭化珪素、サイアロン、酸化ジルコニウム、部分安定化ジルコニア、アルミナなどの耐磨耗性材料である。これらセラミックは、単一成分からなるものでも、必要に応じて他の成分、例えば周期律表第3a族元素の酸化物、ダイシリケートやモノシリケートなどのシリケート化合物、アルミナ、シリカ、マグネシアなどを含有したものでもよい。
セラミックスの製造方法には様々な方法があるが、窒化珪素であれば、平均粒径0.2〜0.6μm程度の窒化珪素粉末に、酸化ルテチウム、二酸化ケイ素等の焼結助剤や、必要に応じて他の成分を混合し、さらにバインダー、溶媒等を添加し混合してスラリーとし、ついで、得られたスラリーを乾燥した後、プレス成形などの方法で成形し、1800〜1900℃で5〜10時間焼成する方法が知られている。
【0025】
断面がL型形状のセラミックス製部材は、L字の短辺が翼板の厚さと略一致する長さを有し、L字の長辺が翼板の幅よりも若干大きい長さを有している。若干大きいとは、セラミックス製部材の少なくとも片方の厚さ分だけ翼板の幅より長くするということである。セラミックス製部材の厚さは、特に制限されるわけではないが、例えば、3〜10mm、好ましくは3〜5mmとする。3mmよりも薄いと耐磨耗性が不十分となり、10mmを超えると重量が大きくなり、コスト面でも好ましくない。
L型形状セラミックス製部材には、一辺がL型形状のものと二辺がL型形状のもの(横断面と1縦断面がL型形状のもの)、又は三辺がL型形状のもの(横断面と2縦断面がL型形状のもの)があり、いずれも使用できるが、二辺、又は三辺がL型形状のものは、翼板の端部に専ら使用する。
【0026】
断面がコ型形状セラミックス製部材は、上記L型形状のセラミックス製部材のコーナーがコ字になったものであり、L字の短辺に繋がる部分は、長さが比較的短く、例えば、1〜5cm程度とすることが望ましい。成形がやや難しく、翼板へ取り付ける際に破損しやすいからである。コ型形状セラミックス製部材は、一端がコ型形状のものと両端がコ型形状のものがある。このコ型形状セラミックス製部材を用いると、翼板の端部全体を覆うことができる。
【0027】
また、平板形状のセラミックス製部材は、三角形、四角形、五角形、六角形などの多角形であり、翼板の形状からすれば、正方形あるいは長方形などの四角形が好ましい。一枚の大きさは、翼板の大きさによって異なり、翼板が小さければ翼板とほぼ同じ大きさでよく、翼板が大きければ、複数に分割して全体が翼板とほぼ同じ大きさを有するようにする。
【0028】
また、翼板全面を同じセラミックで覆ってもよいし、異なるセラミックで覆ってもよい。すなわち、攪拌翼の端部表面が、耐磨耗性が特に優れる断面L型又は断面コ型形状のセラミックス製部材で覆われ、それ以外の部分が比較的安価なセラミックで覆われるようにすることができる。
【0029】
翼板3に対してL型形状セラミックス製部材6を固定するには、図5に示すように、翼面にL型形状セラミックス製部材6を当接させながら、それらの間にフラン樹脂などの緩衝材9を充填してから、テーパ孔8の中に翼板3と同材質製の固定金具10を挿入した後、翼板3と固定金具10とをTIG溶接などの溶接により固着し、テーパ孔8の中にセラミックスパテなどの接着剤11を充填し、さらにテーパ孔8の開口面にセラミックスキャップ12を嵌め込んで行う。
【0030】
この場合、L型形状セラミックス製部材6と翼板3とは、固定金具10の溶接によって一体化する。なお、固定金具10は、図6に示すように、割りカップ状であり、縮径方向に変形することによりテーパ孔8に弾力的に嵌まり、テーパ孔8を挿入方向に抜けないようになっている。
【0031】
また、L型形状セラミックス製部材6の固定は、図7に示すようなボルト・ナットによる方法も可能である。翼板3に座繰り加工により取付孔を設け、緩衝材9を介してL型形状セラミックス製部材6と翼板3とをチタン製ボルト・ナット13で締結し、翼板3にL型形状セラミックス製部材6を固定した後、各孔にセラミックスパテ等の接着剤14を充填後、セラミックスキャップ12を嵌め込み、蓋をして表面を平滑に仕上げる。ここには、L型形状セラミックス製部材6と翼板3との固定についてのみ説明したが、平板形状セラミックス製部材を翼板3に固定する場合も同様である。
【0032】
本発明において、L型形状セラミックス製部材の代わりに、コ型形状セラミックス製部材を用いる場合は、例えば、両端がコ型形状になっているコ型形状セラミックス製部材と平板形状セラミックス製部材を用意して、図8のように配置して、翼板の端部に取り付けることができる。
【実施例】
【0033】
鉱石のスラリー濃度200〜300g/L、温度60〜100℃のニッケルを主成分とする塩化物溶液を攪拌反応槽内に収容し、攪拌反応槽内で従来のチタン製プロペラタイプの攪拌翼を用いて、その塩化物溶液を攪拌した。すなわち、反応槽内に、浸出液として、ニッケル及び銅、コバルト、鉄を含む硫化物の塩化ニッケル水溶液のスラリーを装入し、塩素ガスを吹込みながら、回転数400rpmで、3時間かけて浸出を行った。この操作を繰り返すと、従来のプロペラタイプの攪拌翼では、1ヶ月の連続使用で補修が必要となった。
【0034】
そのため、本発明のパドルタイプの攪拌翼を採用し、図1(B)のように腐食性、磨耗性が大きい翼板(b部)の全面がL型形状セラミックス製部材で覆われるようにした。なお、図1(A)の翼板(a部)の裏側には、図2のようにL型形状セラミックス製部材で覆わなかった。それは、予備実験により、翼板(a部)は、翼板(b部)と比べると、スラリーの衝突が遥かに少なく腐食や磨耗によるダメージは極めて小さいことを把握できたためである。
【0035】
上記構成による本発明の耐磨耗性の攪拌翼を使用し、上記と同じ反応槽内に、浸出液として、鉱石のスラリー濃度200〜300g/L、温度60〜100℃のニッケルを主成分とする塩化物溶液のスラリーを装入し、塩素ガスを吹込みながら、回転数300rpmで、4時間かけて浸出を行った。この結果、5ヶ月の連続使用後でも補修の必要がなく、パドルタイプの攪拌翼の寿命が延長でき、補修のための運転休止も必要がなくなった。
【0036】
これは、特許文献2のプロペラ型攪拌翼を用いた場合よりも2ヶ月以上寿命を延長できたことになる。このプロペラ型攪拌翼では、翼板の前縁部がセラミックス製のL型形状部材で覆われているものの、前縁部ほどではないがセラミックス製の部材で覆われていない後方部がスラリーの衝突で腐食や磨耗によるダメージを受けたためと考えられる。
本発明の耐磨耗性パドルタイプの攪拌翼は、攪拌反応槽内で腐食作用および磨耗作用のあるスラリー液を攪拌するために広く用いることができ、スラリー液の種類は、上記の具体例や実施例のものに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明において、パドルタイプの攪拌翼を回転軸に固定した状態を示した側面図(A)と、そのb部の断面図(B)を示したものである。
【図2】図1のa部に用いたL型形状セラミックス製部材の平面図と正面図である。
【図3】図1のb部に用いたL型形状セラミックス製部材の三面図である。
【図4】図1のb部に用いるL型形状セラミックス製部材が、横断面と縦断面が何れもL型形状であるセラミックス製部材の三面図である。
【図5】本発明において、翼板にL型形状セラミックス製部材を固定金具で固定した部分の断面図である。
【図6】図5で使用される固定金具の詳細図である。
【図7】本発明において、翼板にL型形状セラミックス製部材をボルト・ナットで固定した部分の断面図である。
【図8】本発明において、図1(A)のb部に、コ型形状セラミックス製部材を用いたときの断面図である。
【図9】パドルタイプの攪拌翼を用いた一般的な反応槽の概略図である。
【符号の説明】
【0038】
1―――――攪拌翼
2―――――回転軸
3―――――翼板
4―――――ブラケット
5a――――取付孔
5―――――ボルト
6―――――L型形状セラミックス製部材
7―――――横断面、縦断面がL型形状のセラミックス製部材
8―――――テーパ孔
9―――――緩衝材
10―――――固定金具
11―――――接着剤
12―――――セラミックスキャップ
13―――――ボルト・ナット
14―――――接着剤
15―――――平板状セラミックス製部材
16―――――コ型形状セラミックス製部材
20―――――反応槽
21、22――原料貯槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
攪拌反応槽内で腐食作用および磨耗作用のあるスラリー液を攪拌するパドルタイプの攪拌翼であって、
攪拌翼がチタン製翼板で構成され、該攪拌翼表面のうちで腐食性、磨耗性が強い表面の実質的全面に、断面L型セラミックス製部材、断面コ型セラミックス製部材又は平板形状のセラミックス製部材から選ばれるいずれかの耐磨耗性部材が固定されていることを特徴とするパドルタイプの攪拌翼。
【請求項2】
攪拌翼の端部表面が、断面L型又は断面コ型形状のセラミックス製部材で覆われていることを特徴とする請求項1記載のパドルタイプの攪拌翼。
【請求項3】
セラミックス製部材が、固定金具を用いて翼板と溶接されるか、ボルトとナットで翼板に固定されることを特徴とする請求項1記載のパドルタイプの攪拌翼。
【請求項4】
スラリー液が、銅、ニッケル又はコバルトのいずれかを含む硫化物、あるいは鉱石を含有することを特徴とする請求項1記載のパドルタイプの攪拌翼。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−94646(P2010−94646A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−269728(P2008−269728)
【出願日】平成20年10月20日(2008.10.20)
【出願人】(000183303)住友金属鉱山株式会社 (2,015)
【Fターム(参考)】