説明

パネルおよび液体貯留槽

【課題】外表面の変形を抑制できるパネルおよび液体貯留槽を提供する。
【解決手段】パネル20は、補強部11と、充填部12と、耐食層13とを備えている。補強部11は、一方の面に形成された凹部11cを有している。充填部12は、補強部11の凹部11cに充填されている。補強部11と充填部12とは、同一平面上に位置付けられている。耐食層13は、同一平面10cを覆うように形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パネルおよび液体貯留槽に関し、より特定的には、組立式の液体貯留槽に用いられるパネルおよび液体貯留槽に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、貯水を目的とした大型の液体貯留槽は、平板状の複数のパネル同士をボルトで連結することにより、または、複数のパネルを溶接することにより、組み立てられている。このようなパネルは、たとえば特開平10−7189号公報(特許文献1)に開示されている。この特許文献1に開示の水槽用パネルは、パネルと、このパネルの内面側に形成された発泡合成樹脂層と、この発泡合成樹脂層の表面に形成した被膜とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−7189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の水槽用パネルを複数用いて組み立てた水槽に水を貯留すると、水槽用パネルに水圧が加えられる。しかしながら、上記特許文献1の水槽用パネルのパネルは平板状である。このため、水槽内に貯留された水の量に応じて、水槽用パネルに水圧が加えられる。その結果、外表面の変形が大きくなるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の目的は、外表面の変形を抑制できるパネルおよび液体貯留槽を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のパネルは、補強部と、充填部とを備えている。補強部は、一方の面に形成された凹部を有している。充填部は、補強部の凹部に充填されている。補強部と充填部とは、同一平面上に位置付けられている。
【0007】
本発明のパネルによれば、補強部と充填部とは同一平面上に位置付けるように、補強部の凹部に充填部を充填している。これにより、充填部が内周側に位置するように本発明のパネルを複数用いて液体貯留槽を組み立てると、液体と接する面は平坦になる。このため、この液体貯留槽に液体を貯留すると、補強部および充填部に液圧が局所的に加えられることを抑制できる。さらに、補強部は、凹部を有している。これにより、充填部が内周側に位置するようにパネルを複数用いて組み立てた液体貯留槽に液体を貯留すると、凹部は液圧により変形する方向に形成されているので、凹部において液圧と均衡をとる成分の力を、小さな変形で発生させることができる。したがって外表面の変形を抑制することができる。
【0008】
上記パネルにおいて好ましくは、同一平面を覆うように形成された耐食層をさらに備えている。
【0009】
これにより、耐食層が内周側になるように本発明のパネルを複数用いて液体貯留槽を組み立てると、液体による腐食を抑制することができる。このため、耐食性を向上することができる。
【0010】
上記パネルにおいて好ましくは、同一平面と、耐食層との間に形成された断熱材をさらに備えている。
【0011】
これにより、補強部が外周側に位置するように本発明のパネルを複数用いて液体貯留槽を組み立てると、断熱性を向上することができる。
【0012】
本発明の液体貯留槽は、上記いずれかのパネルを複数備え、補強部が外周側に位置している。
【0013】
本発明の液体貯留槽によれば、外表面の変形を抑制することができる。このため、耐久性を向上した液体貯留槽を実現することができる。
【0014】
上記液体貯留槽において好ましくは、隣接するパネルの内周側の境界上を覆うカバー部をさらに備えている。
【0015】
これにより、隣接するパネル間から液体が侵入することを抑制することができる。このため、液体による腐食を抑制することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上より、本発明のパネルおよび液体貯留槽によれば、外表面の変形を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態1におけるパネルを概略的に示す平面図である。
【図2】本発明の実施の形態1におけるパネルを概略的に示し、図1における線分II−II線に沿った断面図である。
【図3】比較例におけるパネルを概略的に示す断面図である。
【図4】比較例におけるパネルを液体貯留槽に用いて、内部に液体を貯留したときの状態を概略的に示す断面図である。
【図5】本発明の実施の形態1におけるパネルを液体貯留槽に用いて、内部に液体を貯留したときの状態を概略的に示す断面図である。
【図6】本発明の実施の形態2におけるパネルを概略的に示す断面図である。
【図7】本発明の実施の形態3におけるパネルを概略的に示す断面図である。
【図8】本発明の実施の形態4における液体貯留槽を概略的に示す斜視図である。
【図9】本発明の実施の形態4における液体貯留槽を構成するパネルの接続状態を示し、図8における線分IX−IXに沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰返さない。
【0019】
(実施の形態1)
図1および図2を参照して、本発明の一実施の形態におけるパネルについて説明する。図1および図2に示すように、本実施の形態におけるパネル10は、補強部11と、充填部12とを備えている。
【0020】
また、パネル10は、表面10aと、表面10aと反対側の裏面10bとを有している。パネル10を複数用いて液体貯留層を組み立てたときに、表面10aは外周側に位置し、裏面10bは内周側に位置し、液体と接する。本実施の形態におけるパネル10の平面形状は四角形としているが、形状は特に限定されない。
【0021】
補強部11は、表面11aと裏面11bとを有している。パネル10を複数用いて液体貯留層を組み立てたときに、表面11aは外周側に位置し、裏面11bは内周側に位置する。一方の面である裏面11bには凹部11cが形成されている。
【0022】
また、補強部11は、平坦部11dと、平坦部11dに接続され、裏面11bに形成された凹部11cと、平坦部11dにおいて凹部11cと反対側に接続された突起部11eとを有している。平坦部11dは、配管などを取り付けることができる。凹部11cは、内周が凹状をなす曲面である。凹部11cは、補強部11の中央部に設けることが好ましい。突起部11eは、パネル10を用いて液体貯留槽を組み立てる際に、隣接するパネル10を接続する部分である。補強部11における平坦部11dと凹部11cとの境界近傍の厚みを他の部分の厚みよりも大きくすることが好ましい。この場合、急激な曲率の変化があるこの境界近傍に応力が集中した場合であっても、この境界近傍の応力を他の部分に近づける(この境界近傍の部分で材料の降伏応力を超えない様に制御する)ことができる。
【0023】
充填部12は、補強部11の凹部11cに充填されている。パネル10の裏面10b側において、補強部11と充填部12とは、同一平面10c上に位置付けられている。つまり、補強部11の裏面11bの平坦部11dと、充填部12の裏面12bとで、パネル10の裏面10bを構成する。このため、パネル10を複数用いて同一平面10cが内周側に位置するように液体貯留槽を形成し、液体貯留槽に液体を貯留したときに、同一平面10c(内周側)からの圧力を、そのまま円滑に補強部11(外周側)に伝達することができる。つまり、液圧などの応力を吸収することができる。また、充填部12により、パネル10が撓みにくくなる。
【0024】
続いて、補強部11および充填部12の材料などについて説明する。
補強部11は、たとえばステンレス、鉄などの金属、若しくは低品位のFRP(繊維強化プラスチック:Fiber Reinforced Plastics)などよりなる。内部に貯留する液体が飲料水のような腐食性および反応性の低い液体の場合には、これらの材料が直接液体に接触する場合でも、問題なく使用することができる。
【0025】
補強部11としてFRPを用いる場合には、オルソフタル酸系不飽和ポリエステル樹脂、イソフタル酸不飽和ポリエステル樹脂などをマトリックスに使用することができる。また、液体が腐食性の高い薬液類の場合には、耐食FRPを用いることが好ましい。耐食FRPに用いられている樹脂としては、イソフタル酸系、テレフタル酸系、ビスフェノール系、ヘット酸系の各不飽和ポリエステル、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂、フラン樹脂、フェノール樹脂などが挙げられる。このような補強部11を構成する材料は、シート状のFRPを用いて加工される。
【0026】
耐食樹脂は、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂とを含む。熱硬化性樹脂としては、たとえば、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂、フラン樹脂などが挙げられる。熱可塑性樹脂としては、たとえばポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、フッ素樹脂などが挙げられる。耐食樹脂としては、熱硬化性樹脂を用いることが好ましい。また、耐食樹脂としては、液体を貯留する温度が常温であっても、高温であっても、軟化点が高いことが好ましく、たとえば35℃以上であることが好ましい。この場合、軟化点を超える温度でパネル10を使用することができるので、耐熱性を向上することができる。また、補強部11が使用する耐食樹脂の軟化点を超える温度に晒されないように、補強部11と液体との間に温度勾配を確保するための断熱層をさらに形成することが好ましい。
【0027】
有機繊維としては、たとえばガラス繊維、綿、羊毛、絹、レーヨン、ナイロン、ポリエステル、ポリアクリロニトリル、ビニロン、麻、ポリプロピレン、アラミドなどが挙げられる。
【0028】
凹部11cを有する補強部11の形成方法は特に限定されないが、たとえばハンドレイアップ法、レジンインジェクション法などの接触圧成型法、低圧成形型法などを用いることができ、高圧プラス成型法を用いることが好ましい。
【0029】
充填部12は、補強部11を構成する材料との接着性が高く、液圧による変形が小さい材料であることが好ましい。このような充填部12の材料として、たとえば、硬質の発泡材、木質系の素材、樹脂パテ、コーキング材などが挙げられる。木質系の素材としては、コルクなどを用いることができる。樹脂パテ、コーキング材は、充填部12の高さ(厚み)が小さい場合に用いることができる。
【0030】
硬質の発泡材としては、硬質発泡スチレン、硬質硬質ウレタン、硬質発泡アクリルなどを用いることができ、硬質ウレタン、硬質発泡アクリルなどを用いることが好ましい。硬質であれば変形を小さくでき、発泡材であれば断熱性能を有する。硬質ウレタン、硬質発泡アクリルは、硬質発泡スチレンよりも溶剤に対する溶解性が低いため、好ましい。硬質発泡スチレンを用いる場合には、溶剤で溶けないように、特殊な表面処理を行うことが好ましい。硬質発泡ウレタンとしては、たとえばアキレスボードAGノンフロンなどを用いることができる。硬質発泡アクリルとしては、たとえば積水化学のフォーマックなどを用いることができる。
【0031】
このような充填部12は、予め補強部11の凹部11cの形状に合わせて成型することにより、形成することができる。成型法としては、充填部12を構成する樹脂を注入することにより充填部12を凹部11cに充填する方法、平板から凹部11cの形状に合わせて削り出すことにより充填部12を形成し、この充填部12を貼り付ける方法などが挙げられる。コストを低減できる観点から、樹脂を注入する方法が好ましい。また、 また、充填部12は、凹部11cに充填されていれば、補強部11に接着されていてもよく、接着されていなくてもよい。
【0032】
ここで、パネル10の具体的寸法の一例を示すと、補強部11の縦および横の長さは1.0mであり、液体貯留槽の高さが1m〜4mの場合の厚さは、5mm〜20mmである。充填部12の最大厚みは、たとえば50mmである。
【0033】
突起部11eは、裏面11bよりも表面10a側に突出していることが好ましい。この場合、パネル10を積層したときに、凹部11cが変形することを抑制できる。このため、安定してパネル10を重ねることができるので、搬送に便利である。
【0034】
続いて、図3〜図5を参照して、本実施の形態におけるパネル10の効果について説明する。図3に示すように、比較例のパネル100は、凹部を有していない平板状の補強部111である。つまり、比較例のパネル100は、充填部を備えていない。
【0035】
比較例のパネル100を複数用いて裏面100bが内周になるように液体貯留槽を組み立て、内部に液体を貯留すると、パネル100に液圧Pが加えられる。パネル100は平板状であるので、液圧Pと均衡をとる力(図4における力F1)を成分として有する力Fを発生させるために大きく撓む。このため、外表面100aの変形が大きくなる。
【0036】
なお、パネル100に生じる力Fは、液圧Pと均衡をとる水平成分の力F1と、この水平成分の力F1に垂直な方向の鉛直成分の力F2とに分解することができる。
【0037】
一方、本発明のパネル10によれば、補強部11は、凹部11cを有している。これにより、パネル10を複数用いて組み立てた液体貯留槽に液体を貯留すると、図5に示すように、凹部11cは、予め液圧Pにより変形する方向へ膨らんでいる。このため、液圧Pが加えられると、液圧Pと均衡をとる力(図5におけるF1)を成分として有する力Fを発生させるために撓む量(追加変形量)を低減できる。このため、外表面10aの変形が小さくなる。つまり、面外変形を抑制することができる。
【0038】
また、補強部11と充填部12とが同一平面10c上に位置付けるように、補強部11の凹部11cに充填部12を充填している。これにより、充填部12が内周側に位置するように本実施の形態のパネル10を複数用いて液体貯留槽を組み立てると、液体と接する面(同一平面10c)は平坦になる。このため、この液体貯留槽に液体を貯留すると、補強部11および充填部12に力Fが局所的に加えられることを抑制できる。したがって、上述した効果を発現しやすくなる。
【0039】
このように、パネル10は外表面10aの変形を抑制できるので、パネル10の耐久性を向上することができる。また、耐久性を同程度または向上するように維持して、補強部11の厚みを比較例よりも薄くすることができる。
【0040】
さらに、パネル10を複数用いて液体貯留槽を組み立て、内部に液体を貯留すると、液体の使用などにより、液面が変化する。一般的に、時間の経過(液体の使用)につれて、液体貯留槽の上側はふくらまず、下側がふくらむようになる。本実施の形態のように、補強部11に凹部11cを設けると、液体貯留槽の外部(パネルの表面10a)から見たときには、各々のパネル10において凹部11cの表面10a側に凸部が生じることになる。これにより、液体貯留槽の外観において、下側が相対的にふくらんだ状態を視覚的に目立たないようにすることができる。このため、液体貯留層の使用者等にとって、視覚的に安心感が得られる。したがって、凹部11cを設けることにより、パネル10を複数用いて組み立てた液体貯留槽の視覚を向上することができる。
【0041】
さらには、補強部11および充填部12の材料を耐熱性の高い材料にすることにより、パネル10の耐熱性を向上することもできる。
【0042】
(実施の形態2)
本実施の形態におけるパネル20は、基本的には実施の形態1のパネル10と同様であるが、図6に示すように、耐食層13をさらに備えている点において異なる。
【0043】
具体的には、パネル20は、凹部11cを有する補強部11と、補強部11の凹部11cに充填された充填部12と、同一平面10c上に位置する補強部11および充填部12を覆う耐食層13とを備えている。言い換えると、耐食層13は、補強部11の裏面11bおよび充填部12の裏面12bを覆っている。さらに言い換えると、耐食層13は、パネル30の裏面30b側に形成されている。
【0044】
補強部11および充填部12とが同一平面10c上に位置付けられているので、耐食層13を容易に形成できる。このため、パネル20を複数用いて耐食層13が内周側に位置するように液体貯留槽を形成し、液体貯留槽に液体を貯留したときに、耐食層13(内周側)からの圧力を、そのまま円滑に補強部11(外周側)に伝達することができる。
【0045】
耐食層13は、内部に貯留する液体に対する腐食性が充填部12よりも高い材料である。このような耐食層13として、耐食性の高い樹脂(耐食樹脂)を含むFRPなどが挙げられる。耐食性の高い樹脂としては、たとえば、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂、フラン樹脂などが挙げられ、ビニルエステル樹脂を用いることが好ましい。
【0046】
なお、耐食層13は、貯留する液体の成分、濃度、温度などの性質に応じた材料を選択することが好ましい。
【0047】
耐食層13の厚さH13は、充填部12の厚さH12よりも小さい。耐食層13の具体的寸法の一例を示すと、縦および横の長さは1.0mであり、厚さは3mm〜6mmである。
【0048】
本実施の形態では、充填部12は、硬質であることが好ましい。この場合、パネル20に液圧Pが加えられたときに、変形量を抑制することができる。このため、この充填部12上に形成された耐食層13に加えられる応力を抑制することができるので、耐食層13の変形を抑制することができる。
【0049】
以上説明したように、本実施の形態におけるパネル20は、同一平面10cを覆うように形成された耐食層13をさらに備えている。これにより、耐食層13が内周側になるように本実施の形態のパネル20を複数用いて液体貯留槽を組み立てると、内周側では液体による腐食を抑制し、外周側では外表面20aの変形を抑制でき、応力の集中を緩和することができる。つまり、腐食などの化学的な負荷を内周側の耐食層13で負担し、液圧、地震力などの物理的な負荷を外周側の補強部11および充填部12で負担している。このため、パネル20は、耐久性および耐食性を向上することができる。
【0050】
特に、耐食層13は同一平面10cに形成されているので、耐食層13が接触する面において曲率の高い箇所が抑制されている。このため、耐食層13の形成は極めて容易である。その結果、耐食層13を裏面11bに沿って形成する場合と比べて耐食層13を形成するために要する作業手間を著しく低減することができる。また、曲率の変化が少ないことから、耐食層13の成形品としての品質も管理が容易となり、耐食層13の耐食性を向上することができる。
【0051】
耐食層13のみで成型したパネルは、高コストである。しかし、本実施の形態のパネル20は、プレス成型などにより補強部11を形成し、凹部11cに充填部12を充填し、同一平面10cを覆うように耐食層13を形成することにより得られる。このため、耐食層13のみからなるパネルと比較して、本実施の形態のパネル20は耐食層13の使用量を低減できる。このため、常温の飲料水などを貯留するために用いられる安価な補強部11を用いて、耐食性を向上したパネル20を製造することができる。したがって、本実施の形態におけるパネル20は、腐食性を有する液体を貯留するための液体貯留槽用のパネルとして好適に用いることができる。
【0052】
(実施の形態3)
本実施の形態におけるパネル30は、基本的には実施の形態2のパネル30と同様であるが、図7に示すように、断熱材14をさらに備えている点において異なる。
【0053】
具体的には、パネル30は、凹部11cを有する補強部11と、補強部11の凹部11cに充填された充填部12と、同一平面10c上に位置する補強部11および充填部12を覆う断熱材14と、断熱材14を覆う耐食層13とを備えている。言い換えると、断熱材14は、補強部11と充填部12とで構成される同一平面10cと、耐食層13との間に形成されている。さらに言い換えると、断熱材14は、耐食層13における表面30a側に形成されている。なお、本実施の形態のパネル30は耐食層13を備えているが、耐食層13は省略されてもよい。
【0054】
断熱材14は、平板状であることが好ましい。また、断熱材14は、たとえば硬質の発泡材などよりなる。硬質の発泡材としては、上述した充填部12の硬質の発泡材と同様の材料を用いることができ、建材用に製造される硬質発泡ウレタン平板、発泡スチレン平板などを好適に用いることができる。これらの材料は断熱性能を有し、かつ安価である点において好ましい。
【0055】
断熱材14の厚みは、内部に貯留する液体(裏面30bに接する液体)の温度を想定し、この雰囲気により決定される厚さを有している。たとえば、液体として60℃の温泉水を貯留する場合には、断熱材14の厚みは30mm程度である。
【0056】
断熱材14は、液圧が加えられたときに圧縮することを抑制できることが好ましい。この場合、断熱材14は、断熱性の役割と、応力を緩和する役割とを担う。
【0057】
断熱材14は、補強部11および充填部12と、耐食層13とが親和して変形するように、補強部11と充填部12と耐食層13とに親和する接着剤(図示せず)により、断熱材14と接着することが好ましい。このような接着剤として、たとえば耐食層13を構成する樹脂と同じ樹脂などが挙げられる。
【0058】
断熱材14を形成する方法は特に限定されないが、たとえば、補強部11の凹部11cに充填部12を充填した後であって、耐食層13を形成する前に形成する。
【0059】
以上説明したように、本実施の形態におけるパネル30は、同一平面10cと、耐食層13との間に形成された断熱材14をさらに備えている。これにより、補強部11が外周(表面30a)側に位置するように本実施の形態のパネル30を複数用いて液体貯留槽を組み立てると、断熱性を向上することができる。このため、パネル30は、断熱性および耐久性を向上することができ、耐食層13を備えている場合には、断熱性、耐久性および耐食性を向上することができる。
【0060】
(実施の形態4)
図8および図9を参照して、本発明の一実施の形態における液体貯留槽について説明する。図8および図9に示すように、本実施の形態における液体貯留槽50は、複数の実施の形態1におけるパネル10と、枠組部51と、ボルト52とを備えている。
【0061】
枠組部51は、液体貯留槽50の安定化構造の役割を果たす。枠組部51は、強度および剛性の観点から、鉄骨型鋼、鉄骨薄板を曲げ加工した柱、梁様部材などよりなることが好ましい。液体貯留槽50の安定化を向上する観点から、不静定次数の高い(安定性の高い)ラーメン構造体とすることが好ましい。なお、ラーメン構造体とは、柱と梁との接合点が剛接合(しっかりと固定)されている構造を意味する。また、不静定次数とは、構造体を支えるために最低限の支点のみを有している静定構造物よりも多い支点を有している構造物のことを意味する。
【0062】
枠組部51は、ブレースなどの液体貯留槽50の内部を補強する補強材(図示せず)を含んでいてもよい。当該補強材としては、たとえば耐震ブレースなどを用いることが好ましい。
【0063】
パネル10は、補強部11(表面10a)が外周側に位置し、補強部11および充填部12で構成される同一平面10c(裏面10b)が内周側に位置するように、枠組部51に囲まれる領域に配置される。パネル10は、隙間を設けずに密着するように、かつ引っ張るなどの力を加えずに配置されることが好ましい。
【0064】
図9に示すように、隣接するパネル10の突起部11eをボルト52で接続している。接続する方法はボルト52に特に限定されず、接着剤、溶接などにより隣接するパネル10を接続してもよい。なお、図9は、隣接するパネル10の接続構造を明瞭にするために、枠組部51などを省略している。
【0065】
液体貯留槽50の製造方法は、特に限定されず、たとえば、枠組部51を形成し、その後、パネル10を配置する。
【0066】
また、枠組部51を形成し、その後、補強部11を配置し、その後、補強部11の凹部11cに充填部12を充填してもよい。つまり、パネル10において、充填部12を凹部11cに充填するのは、パネル10の製造時に行なってもよく、複数の補強部11を組み立てた後に、充填部12を充填してもよい。
【0067】
以上説明したように、本実施の形態における液体貯留槽50は、実施の形態1のパネル10を複数備え、補強部11が外周側に位置している。応力の集中を緩和できるパネル10を用いているので、液体貯留槽50の耐久性を向上することができる。
【0068】
ここで、本実施の形態では、液体貯留槽50は実施の形態1のパネル10を備えているが、特にこれに限定されず、実施の形態2または3のパネル20、30を備えていてもよい。
【0069】
液体貯留槽50が実施の形態2または3のパネル20、30を備えている場合には、隣接するパネル20、30の内周側の境界上を覆うカバー部(図示せず)をさらに備えていることが好ましい。カバー部は、隣接するパネル20、30の隙間に液体が侵入することを抑制できる。カバー部は、耐食性を向上する観点から、たとえば、上述した耐食層13と同じ材料よりなる。
【0070】
実施の形態2のパネル20を備えた液体貯留槽は、耐食層13が内周側に位置するので、たとえば塩酸、硫酸などの酸性溶液、アルカリ性溶液などの腐食性の高い液体などを貯留することができる。実施の形態3のパネル30を備えた液体貯留槽は、断熱材14を備えているので、高温の液体、温度制御をする必要がある液体などを貯留することができる。
【0071】
したがって、本実施の形態1〜3のパネル10、20、30を備えた液体貯留槽は、内部に貯留する液体に制限されず、塩酸、硫酸などの薬品、水などを貯留することができる。
【0072】
以上のように本発明の実施の形態について説明を行なったが、各実施の形態の特徴を適宜組み合わせることも当初から予定している。また、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0073】
10,20,30 パネル、10a,11a,30a 表面、10b,11b,12b,30b 裏面、10c 同一平面、11 補強部、11c 凹部、11d 平坦部、11e 突起部、12 充填部、13 耐食層、14 断熱材、50 液体貯留槽、51 枠組部、52 ボルト、F 力、P 液圧。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の面に形成された凹部を有する補強部と、
前記補強部の凹部に充填された充填部とを備え、
前記補強部と前記充填部とは、同一平面上に位置付けられている、パネル。
【請求項2】
前記同一平面を覆うように形成された耐食層をさらに備えた、請求項1に記載のパネル。
【請求項3】
前記同一平面と、前記耐食層との間に形成された断熱材をさらに備えた、請求項2に記載のパネル。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のパネルを複数備え、
前記補強部が外周側に位置する、液体貯留槽。
【請求項5】
隣接する前記パネルの内周側の境界上を覆うカバー部をさらに備えた、請求項4に記載の液体貯留槽。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−260569(P2010−260569A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−110751(P2009−110751)
【出願日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(505392949)CIEN株式会社 (5)
【Fターム(参考)】