説明

パネル・ユニット併用パラペット型庇の骨組み構造

【課題】 現場施工性に優れ、重複部材の削減が図れ、現場での作業の安全性が高く、かつ建物毎に要求される種々の庇長さへの対応も容易なパラペット型庇の骨組み構造を提供する。
【解決手段】 鉄骨造の建物本体1の外壁面1aから箱形に突出するパラペット型庇2の骨組み構造である。パラペット型庇2の両端部がそれぞれ庇ユニット3,4からなり、中間に庇パネル5を配置する。庇ユニット3,4は、パラペット型庇2の正面および各片方の側面の骨組みをそれぞれ構成する正面枠組体6および側面枠組体7を互いに一体に組み立て、かつ正面枠組体7の裏面から建物本体1側へ延びる庇内部鉄骨を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、店舗建物等となる鉄骨造の建物本体の外壁面から箱形に突出するパラペット型庇における骨組み構造であるパネル・ユニット併用パラペット型庇の骨組み構造に関する。
【背景技術】
【0002】
コンビニエンスストア等の店舗建物では、図14に伏せ図および側面図を示すように、建物本体81から箱形に突出するパラペット型庇82を設けることが多い。従来、このパラペット型庇82は、建物本体81と同様に、正面部および側面部の庇パネル83,84と下地鉄骨89(図16)とで構成されている。その施工は、建物本体81の外壁パネルおよび小屋鉄骨85を施工した後、庇の下地鉄骨89を施工し、そこへ庇パネル83,84を設置する。母屋86や水平ブレース87は単独部材であり、個別に取付ける。
現場の状況にもよるが、地組する作業スペースがあれば、下地鉄骨89を現場で組立て、それをレッカー車で揚重し、建物本体81の小屋鉄骨85に設置することもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−191966号公報
【特許文献2】特開平9−217455号公報
【特許文献3】特開平10−252139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
施工性につき説明すると、建物本体81の外壁パネル(図示せず)は、ベースプレート付きの柱を両端に有する両柱パネルを基礎の上に建て、間に無柱パネルを入れ込む形式等とすることで、レベルを決めたり、外壁パネルを入れ込むことが容易に行える。これに対して、庇パネル83,84は、空中に浮かせた状態で全ての庇パネル83,84を設置するため、施工性が悪い。特に、パラペット型庇82のコーナ部82aは、下地鉄骨が混み合い、また庇パネル83,84同士の取り合い部にも下地鉄骨89と取り合うための部材があるため、作業性が悪い。
安全性については、下地鉄骨89に庇パネル83,84を取り合う際に、安全性に欠ける作業が発生する。現場によっては、外部足場を設けて対応することもあるが、外部足場を設けるとコストとなる。
【0005】
なお、パラペット型庇82の全体をユニット化することも試みられており、ユニット化によって現場作業性の向上や、重複部材の削減等が図れる。しかし、パラペット型庇82の長さは、建物毎に種々の全長が要求される。そのため、パラペット型庇82の全体をユニット化すると、建物毎に種々異なる全長の庇ユニットを製造することが必要となり、庇ユニットの工場生産性が悪い。
【0006】
この発明の目的は、現場施工性に優れ、重複部材の削減が図れ、現場での作業の安全性が高く、かつ建物毎に要求される種々の庇長さへの対応も容易なパネル・ユニット併用パラペット型庇の骨組み構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明のパネル・ユニット併用パラペット型庇の骨組み構造は、鉄骨造の建物本体の外壁面から箱形に突出するパラペット型庇の骨組み構造であって、前記パラペット型庇の長さ方向の両端部が、このパラペット型庇の正面および各片方の側面の骨組みをそれぞれ構成する正面枠組体および側面枠組体を互いに一体に組み立てた一対の庇ユニットを設け、両側の庇ユニットの間に、前記パラペット型庇の正面の骨組みを構成する庇パネルからなり、前記庇ユニットは、前記正面枠組体の裏面から建物本体側へ延びる庇内部鉄骨を有し、前記各庇ユニットは、前記建物本体の鉄骨に、前記側面枠組体および前記庇内部鉄骨の先端で取付金具組により接合され、前記庇パネルは、前記建物本体の鉄骨に庇内部鉄骨を介して接合されることを特徴とする。
【0008】
この構成によると、パラペット型庇の両端部が庇ユニットとしてユニット化されているため、現場施工性の悪いパラペット型庇の正面部分と側面部分間のコーナ部やその他の部分を工場から組み立てて来ることができる。そのため、現場作業が少なくなって、施工性が向上する。現場作業の低減は、高所作業の低減となり、安全性も向上する。ユニット化することにより、特にコーナ部をユニット化することにより、コーナ部の束となる鉄骨やその他の部材の重複をなくし、重複部材の削減によるコスト低下が得られる。庇ユニットによるユニット化により、水平面剛性も高まる。
また、パラペット型庇の中間部分を庇パネルとしたため、桁行方向の庇全長が種々異なる建物に対しても、庇パネルの長さを調整することで対応でき、汎用性がある。庇パネルは、平面状の部材であるため、庇ユニットと異なり、種々異なる長さのものが容易に工場生産できる。両側の庇ユニット間の部分が庇パネルであると、パラペット型庇の全体をユニット化した場合に比べて、力の伝達もスムーズになり、水平面での剛性についても有利となる。両端のみをユニット化することで、パラペット型庇の全体をユニット化する場合に比べて運搬時の容積が低減でき、運搬コストを上げずに済むという利点も得られる。
このように、両端を庇ユニットとし、中間を庇パネルとしたため、現場施工性の特に悪いコーナ部を予め工場生産できて現場施工性が工場するうえ、庇長さの種々異なる建物につき、同じ構成の庇ユニットを用いることができて、庇長さの違いへの対応が容易となる。
【0009】
この発明において、前記庇ユニットの前記庇内部鉄骨の先端の前記取付金具組は、前記庇ユニットに設けられた庇側取付金具と、前記建物本体の鉄骨に設けられた本体側取付金具とを、庇突出方向に延びる平面で互いに重ね、前記庇側取付金具と本体側取付金具とにそれぞれ設けられたボルト挿通穴に挿通したボルトとこのボルトに螺合するナットとにより締め付けて接合するものであって、前記庇側取付金具のボルト挿通穴と本体側取付金具のボルト挿通穴とのいずれか一方または両方を、庇突出方向に延びる長穴としても良い。このように長穴を用いて接合することで、庇ユニットの建ちを調整することができる。
【0010】
この場合に、前記庇ユニットにおける前記庇側取付金具の近傍、またはこの庇側取付金具に、先端が建物本体の鉄骨に当接する出入り調整ボルトを、雌ねじ部材を介して取付けても良い。その場合、ボルトで建物本体の鉄骨を押すことで、庇ユニットの建ちを調整できて、建ち調整が容易に行える。
【発明の効果】
【0011】
この発明のパネル・ユニット併用パラペット型庇の骨組み構造は、鉄骨造の建物本体の外壁面から箱形に突出するパラペット型庇の骨組み構造であって、前記パラペット型庇の長さ方向の両端部が、このパラペット型庇の正面および各片方の側面の骨組みをそれぞれ構成する正面枠組体および側面枠組体を互いに一体に組み立てた一対の庇ユニットからなり、両側の庇ユニットの間に、前記パラペット型庇の正面の骨組みを構成する庇パネルを設け、前記庇ユニットは、前記正面枠組体の裏面から建物本体側へ延びる庇内部鉄骨を有し、前記各庇ユニットは、前記建物本体の鉄骨に、前記側面枠組体および前記庇内部鉄骨の先端で取付金具組により接合され、前記庇パネルは、前記建物本体の鉄骨に庇内部鉄骨を介して接合されるため、現場施工性に優れ、重複部材の削減が図れ、現場での作業の安全性が高く、かつ建物毎に要求される種々の庇長さへの対応も容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の一実施形態に係るパネル・ユニット併用パラペット型庇の骨組み構造を備える建物の平面図および側面図である。
【図2】同パラペット型庇の骨組み構造に用いられる庇ユニットおよび庇パネルの概略斜視図である。
【図3】同パラペット型庇の骨組み構造の平面図および正面図である。
【図4】同庇ユニットの平面図および正面図である。
【図5】(A)は図3のVA通り部の側面図、(B)はVB通り部の破断側面図である。
【図6】(A)は図3のVIA通り部の破断側面図、(B)はVIA通り部の側面図である。
【図7】図3のVII部の拡大断面図である。
【図8】図5(B)のVIII部の拡大図である。
【図9】図5(A)のIX部部分拡大図である。
【図10】図6(A)のX部の拡大図である。
【図11】同庇ユニットの斜視図である。
【図12】同庇ユニットを建物本体に取付けた状態を示す斜視図である。
【図13】同庇ユニットと庇パネルと運搬治具との関係を示す破断正面図および破断側面図である。
【図14】従来例の平面図および側面図である。
【図15】同従来例の部分拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
この発明の一実施形態を図1ないし図13と共に説明する。このパネル・ユニット併用パラペット型庇の骨組み構造は、鉄骨造で陸屋根の建物本体1の外壁面1aから箱形に突出するパラペット型庇2の骨組み構造であって、パラペット型庇2の長さ方向の両端部がそれぞれ庇ユニット3,4からなり、両側の庇ユニット3,4の間に庇パネル5が設けられている。庇パネル5は1枚であっても、複数枚を並べて設けても良い。建物本体1は、コンビニエンスストア等の店舗建物となる平屋の建物である。建物本体1は、鉄骨造建物であれば良いが、例えば外壁パネル工法建物または軸組工法建物とされる。この実施形態では、後に説明する外壁パネル工法建物とされている。
【0014】
庇ユニット3,4は、パラペット型庇2の正面および各片方の側面の骨組みをそれぞれ構成する正面枠組体6および側面枠組体7を互いに一体に組み立てたものであり、かつ正面枠組体6の裏面から建物本体側へ延びる庇内部鉄骨20,21を有している。側面枠組体7および庇内部鉄骨20,21は、後に説明するように、それぞれ庇トラスを構成する。庇ユニット3,4は、正面枠組体6および側面枠組体7の屋外側面に面材65(図2)を張ったものであっても、面材65を現場施工で張るようにした面材未取付品であっても良い。
庇パネル5は、パラペット型庇2の正面の骨組みを構成する枠組体である。庇パネル5も、面材66を張ったものであっても、面材66を現場施工で張るようにした面材未取付品であっても良い。
【0015】
庇ユニット3,4につき、具体的に説明する。両側の庇ユニット3,4は、側面枠組体7が左右のいずれに配置されるか、また桁行方向の長さが必ずしも同じではない他は、互いに同じ構成であるため、図の左の庇ユニット3につき説明し、右側の庇ユニット4については具体的構成の説明を省略する。図3(A),(B)は、パラペット型庇2の全体の平面図および正面図であり、図2(A)(B)は、その庇ユニット3および庇パネル5の概略の斜視図である。図11は、庇ユニット3の具体例の斜視図である。
【0016】
図2(A)に示すように、庇ユニット3の正面枠組体6は、桁行方向に並ぶ複数本の束材9,10と、これら複数本の束材9,10間に渡って上下端にそれぞれ設けられた上桟11および下桟12と、隣合う各束材9,10間に設けられた庇母屋13および中桟14を有する。庇母屋13は、屋根パネル(図示せず)を受ける中桟である。屋根パネルは、パネルフレームに屋根葺材を張ったパネルである。庇母屋13の近傍に沿って、上記屋根パネルを構成する下端の屋根パネル母屋26(図5(B))が配置される。図2(A)において、下側の中桟14は、看板取付下地等となる部材である。上桟11の下面には水切り下地15が設けられる。これら束材9,10、上桟11、下桟12、庇母屋13、中桟14、および水切り下地15は、いずれも角パイプまたはC形鋼等の鋼材からなり、互いに溶接等で接合されて枠組される。
【0017】
側面枠組体7は、一対の束材9,16と、これらの束材9,16間に設けられた上桟11A、下桟12A、上弦材17、下弦材18、および上下の弦材17,18間に設けられた斜材19(図5(A)参照)を有し、庇トラスを構成する。片方の束材9は、正面枠組体6の束材を兼用する部材である。前記各部材(9,16,17,18,19)は、角パイプまたはC形鋼等の鋼材からなり、互いに溶接等で接合されて枠組される。
【0018】
図2(A)において、正面枠組体6におけるコーナ部の束材9を除く各束材10の裏面には、建物本体側1へ延びる上下複数本(図示例では2本)の庇内部鉄骨20,21が突出している。これら上下の庇内部鉄骨20,21の間には、図5(B)のように斜材22が接合され、束材10、上下の庇内部鉄骨20,21、および斜材22により庇トラスを構成する。上下の庇内部鉄骨20,21は、庇トラスの上下の弦材となる。各庇トラス間にわたり、上弦材となる庇内部鉄骨20および上弦材17は、つなぎ材23により相互に接続される。なお、庇内部鉄骨20,21は、必ずしもトラスを構成するものでなくても良く、例えば図11に示す一部(図の左から2つ目)の庇内部鉄骨20のように、正面枠組体6の裏側から独立して突出するものであっても良い。図11は、この庇トラスの部分につき、他の図とは異ならせて図示してある。また、図11は、他の部分においても、他の各図とは構成を若干異ならせて図示してある。
【0019】
側面枠組体7の上弦材17と正面枠組体6の庇母屋13との間には、図3(A)のように、火打ち材となる水平な斜材24が設けられる。他端の庇トラスを構成する上側の庇内部鉄骨20と正面枠組体6の庇母屋13との間にも、火内材となる水平な斜材25が設けられる。上記各部材20〜25も、角パイプまたはC形鋼等の鋼材からなり、互いに溶接等で接合される。
【0020】
庇ユニット3と建物本体1との接合構造につき説明する。図3(A)に平面図で示すように、建物本体1は外壁パネル工法の建物であり、外壁1Aは、複数本の鉄骨の柱27を有している。これらの柱27は、両端柱付き外壁パネル28の両端のパネルフレームを兼用するものと、独立柱とがあり、外壁1Aは、上記両端柱付き外壁パネル28と、隣合う両端柱付き外壁パネル28の間、または両端柱付き外壁パネル28と独立した柱27の間に配置される無柱外壁パネル28Aとで構成される。庇ユニット3は、前記建物本体1の鉄骨の柱27に接合される。
【0021】
図5(A)に示すように、庇ユニット3の側面枠組体7は、取付金具組31によって建物本体1の柱27に接合される。図5(A)の一部を図9に拡大して示すように、取付金具組31は、建物本体1の柱27の側面に取付けられて側面枠組体7の束材16の側面に被さる鋼板等からなる接合板32と、ボルト33とでなる。ボルト33は、接合板32に設けられた上下方向に延びる長穴等からなるボルト挿通穴34に挿通され、側面枠組体7束材16に設けられた雌ねじ穴(図示せず)にねじ込んで締め付け固定される。束材16の上記雌ねじ穴は、束材16の内面に溶接固定されたナット(図示せず)により構成される。なお、束材16に雌ねじ穴を設ける代わりに、ナットを用いても良い。
上記のようにボルト挿通穴34を上下方向に延びる長穴とすることで、建物本体1の柱27に対する庇ユニット3の上下方向の取付位置を調整可能としてある。また、同図のように、庇ユニット3の側面枠組体7の束材16を直接に建物本体1の柱27に接して接合するため、鉄骨下地が削減できる。同図の取合いは、建物本体1の外壁パネルの取り合いと同じとあるため、施工方法が明快になる。
【0022】
庇ユニット3の側面枠組体7を除く各部では、図5(B)に示すように、庇トラスの上下の弦材となる庇内部鉄骨20,21の先端が、建物本体1の柱27に対して取付金具組35により接合される。取付金具組35は、図7に示すように、庇ユニット3の庇内部鉄骨20,21の先端に設けられた庇側取付金具36と、建物本体1の鉄骨からなる柱27に設けられた本体側取付金具37とを、庇突出方向に延びる垂直な平面で互いに重ね、両取付金具36,37に設けられたボルト挿通穴に渡って挿通されたボルト38と、このボルト38に螺合するナット39とにより締め付けて接合するものである。前記取付金具36,37はガセットプレート等からなる。庇側取付金具36と本体側取付金具37のいずれかに設けられたボルト挿通穴、図示の例では、図8のように庇側取付金具36のボルト挿通穴40を、庇突出方向に延びる長穴としてある。
【0023】
図8は、庇ユニット3における下側の庇内部鉄骨21の先端に設けられた庇側取付金具36を示しており、この庇側取付金具36の近傍となる真上位置に出入り調整ボルト41が、長ナットからなる雌ねじ部材42を介して設けられている。雌ねじ部材42は、庇内部鉄骨21の先端の上面に溶接等で固定された取付台43に溶接等で固定されている。出入り調整ボルト41は、先端が建物本体1の鉄骨の柱27に当接する。柱27の出入り調整ボルト41の調整する部位には、鉄板などからなる補強板44が溶接等で固定されている。同図に示すように、庇ユニット3における下側の庇内部鉄骨21は、軒天下地65か取付けられている。
【0024】
なお、図3に示すように、庇ユニット3の庇内部鉄骨20,21は、必ずしも柱27に接合しなくても良く、建物本体1の横架材となる鉄骨、例えば外壁パネル28,28Aの横枠材52に接合しても良い。図3の例では、一部の庇内部鉄骨20,21が外壁パネル28Aの横枠材52に接合されている。
【0025】
また、上記構成の庇ユニット3には、上記各部材の他に、建方用補助部材や運搬治具取付具59(図11)等が設けられていても良い。
【0026】
図2(B)において、庇パネル5は、上桟45と下桟46とを両端の縦桟47と中間の1本または複数の縦桟48とで枠組し、さらに上下の中桟49,50を設けたものである。上記各部材(45〜50)は、角パイプまたはC形鋼等からなり、溶接等で相互に接合されている。
【0027】
図3に示すように、庇パネル5は、建物本体1の鉄骨となる柱27に、庇突出方向に延びる庇内部鉄骨53を介して接合される。庇内部鉄骨53は、図6(A)に示すように上下2本設けられて、束材54および斜材55と共に庇トラス56を構成し、両端がそれぞれ庇パネル5および建物本体1の鉄骨の柱27に、取付金具組57,58を介して取付けられる。図10に示すように、庇パネル5側に接合する取付金具組57は、詳細な説明は省略するが、図8と共に前述した庇ユニット3の取付金具組35と同様な構成であって、長穴により出入り調整が可能とされている。また、取付金具組57の近傍に位置して庇トラス56に、図8と共に前述した出入り調整ボルト41と同様な出入り調整ボルト60が雌ねじ部材61を介して取付けられている。出入り調整ボルト60は、先端が庇パネル5の縦桟47,48に当接する。
【0028】
図3(A)に示すように、パラペット型庇2の庇パネル5が設けられた長さ範囲の部分では、隣合う庇トラス間に水平ブレース62が張られている。
【0029】
上記構成の庇ユニット3および庇パネル5は、工場で生産され、例えば図14に示すように、同じ運搬用治具64内に納めて、運搬用治具64ごとトラック等で建築現場に運搬される。運搬用治具64の寸法は、道路交通法規上で通常のトラックに積載可能な寸法とされ、例えば全長Lが6,500mm、幅Wが2,400mmとされる。庇ユニット3および庇パネル5は、このような運搬用治具64内に納めることができる寸法に製造される。
【0030】
建築現場に運搬された庇ユニット3は、上記のように建物本体1の柱27等の躯体となる鉄骨に、側面枠組体7の束材16、および庇内部鉄骨20,21の先端が、それぞれ取付金具組31(図9),取付金具組35(図8)によってボルト接合される。庇パネル5は、建物本体1の柱27等の躯体となる鉄骨に、庇突出方向に延びる庇内部鉄骨53を介して、取付金具組57,58(図6)により接合される。図12は、図11の庇ユニット3を建物本体1に取付けた状態を示す。
【0031】
庇ユニット3の 側面枠組体7を取付ける取付金具組31(図9)は、ボルト挿通穴34が上下方向に延びる長穴であるため、柱27に対して上下方向の取付位置の調整が可能である。また、庇内部鉄骨20,21の先端の取付金具組35(図8)は、ボルト挿通穴40が庇突出方向に延びる長穴であるため、出入り方向に誤差があっても吸収できる。また、この取付金具組35の近傍に設けられた出入り調整ボルト41によって、建物本体1の柱27に対する建ち調整が行える。
【0032】
この構成のパネル・ユニット併用パラペット型庇の骨組み構造によると、パラペット型庇2の両端部が庇ユニット3としてユニット化されているため、現場施工性の悪いパラペット型庇の正面部分と側面部分間のコーナ部2aやその他の部分を工場から組み立てて来ることができ、現場でのコーナ部2aのパネル間の取合い作業がなくなる。そのため、現場作業が少なくなって、施工性が向上する。現場作業の低減は、高所作業の低減となり、安全性も向上する。庇ユニット3は、建物本体1の鉄骨から取り合うため、内部棚足場(図示せず)からの施工が可能であり、より一層安全性が向上する。庇ユニット3には安全ネット(図示せず)を取付けておけるため、庇ユニット3間の庇パネル5を施工する際にも、庇ユニット3側から作業することで、危険作業を回避できる。
【0033】
庇ユニット3としてユニット化することにより、特にパラペット型庇2のコーナ部2aをユニット化することにより、コーナ部2aの束となる鉄骨や、取合い部材、その他の部材の重複をなくし、重複部材の削減によるコスト低下が得られる。庇ユニットによるユニット化により、水平面剛性も高まる。庇ユニット3には、母屋や軒天下地65を取付けておくことができるため、現場で取付ける作業がなくなり、現場作業のより一層の省力化ができる。庇ユニット3としてユニット化することにより、庇内部鉄骨20,21等の庇下地鉄骨とパネルを一体化することができて、片持ち梁となる庇内部鉄骨20,21と、建物本体1の柱27との偏心距離を小さくすることもできる。
【0034】
また、パラペット型庇2の中間部分を庇パネル5としたため、桁行方向の庇全長が種々異なる建物に対しても、庇パネル5の長さを調整することで対応でき、汎用性がある。庇パネル5は、平面状の部材であるため、庇ユニット3と異なり、種々異なる長さのものが容易に工場生産できる。両側の庇ユニット3,4間の部分が庇パネル5であると、パラペット型庇2の全体をユニット化した場合に比べて、力の伝達もスムーズになり、水平面での剛性についても有利となる。パラペット型庇2の両端はユニット化することで、庇パネル5と併用していても、出隅の直角精度を高めることができる。庇ユニット3は、工場で溶接組立できるため、出隅の直角精度が出し易く、またパラペット型庇2のレベル精度の向上にも繋がる。
両端のみをユニット化することで、パラペット型庇2の全体をユニット化する場合に比べて運搬時の容積が低減でき、運搬コストを上げずに済むという利点も得られる。具体例を上げると、図14と共に前述したように、同じ運搬治具64内に庇ユニット3と庇パネル5を納めて運搬することができ、優れた運搬効率が得られる。
【0035】
このように、両端を庇ユニット3,4とし、中間を庇パネル5としたため、現場施工性の特に悪いコーナ部2aを予め工場生産できて現場施工性が大きく向上するうえ、庇長さの種々異なる建物につき、同じ庇ユニット3を用いることができて、庇長さの違いへの対応が容易となる。
【0036】
また、図7のように、庇ユニット3の庇内部鉄骨20,21の先端の取付金具組35を、図8のように長穴からなるボルト挿通穴40を用いてボルト接合する場合は、庇ユニット3の建ちを調整することができる。
この場合に、庇ユニット3に出入り調整ボルト41を設けた場合は、この出入り調整ボルト41で建物本体1の鉄骨の柱27を押すことで、庇ユニット3の建ちを調整できて、建ち調整が容易に行える。
【符号の説明】
【0037】
1…建物本体
1a…外壁面
2…パラペット型庇
3,4…庇ユニット
5…庇パネル
6…正面枠組体
7…側面枠組体
8…庇内部鉄骨
27…建物本体の柱
31…取付金具組
35…取付金具組
36…庇側取付金具
37…本体側取付金具
38…ボルト
41…出入り調整ボルト
53…庇内部鉄骨

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄骨造の建物本体の外壁面から箱形に突出するパラペット型庇の骨組み構造であって、 前記パラペット型庇の長さ方向の両端部が、このパラペット型庇の正面および各片方の側面の骨組みをそれぞれ構成する正面枠組体および側面枠組体を互いに一体に組み立てた一対の庇ユニットからなり、両側の庇ユニットの間に、前記パラペット型庇の正面の骨組みを構成する庇パネルを設け、前記庇ユニットは、前記正面枠組体の裏面から建物本体側へ延びる庇内部鉄骨を有し、前記各庇ユニットは、前記建物本体の鉄骨に、前記側面枠組体および前記庇内部鉄骨の先端で取付金具組により接合され、前記庇パネルは、前記建物本体の鉄骨に庇内部鉄骨を介して接合されることを特徴とするパネル・ユニット併用パラペット型庇の骨組み構造。
【請求項2】
請求項1において、前記庇ユニットの前記庇内部鉄骨の先端の前記取付金具組は、前記庇ユニットに設けられた庇側取付金具と、前記建物本体の鉄骨に設けられた本体側取付金具とを、庇突出方向に延びる平面で互いに重ね、前記庇側取付金具と本体側取付金具とにそれぞれ設けられたボルト挿通穴に挿通したボルトとこのボルトに螺合するナットとにより締め付けて接合するものであって、前記庇側取付金具のボルト挿通穴と本体側取付金具のボルト挿通穴とのいずれか一方または両方を、庇突出方向に延びる長穴としたパネル・ユニット併用パラペット型庇の骨組み構造。
【請求項3】
請求項2において、前記庇ユニットにおける前記庇側取付金具の近傍、またはこの庇側取付金具に、先端が建物本体の鉄骨に当接する出入り調整ボルトを、雌ねじ部材を介して取付けたパネル・ユニット併用パラペット型庇の骨組み構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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