説明

パネル取付け制御機器

【課題】制御機器の取付けパネルへの取付け作業を一人で行うことのできるパネル取付け制御機器を提供することを課題とする。
【解決手段】制御機器本体の背面側にフランジ部および外周にねじの切られた円筒状の胴部を設け、この制御機器本体の胴部を取付けパネルの表面側からこのパネルに形成した取付け穴に挿入し、前記取付けパネルの裏面側から前記制御機器本体の胴部に形成したねじに締付けナットをねじ込み、前記制御機器本体を前記取付けパネルに締付け結合するようにしたパネル取付け制御機器において、前記制御機器本体の胴部の外周に均等な間隔で、前記胴部の外周から前記取付けパネルの取付け穴の内径より大きく突出した微小の突起を複数設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、配電盤や制御盤等の各種のパネルに取付けて使用する操作ボタンスイッチや表示器等のパネル取付け制御機器に関する。
【背景技術】
【0002】
配電盤や制御盤等のパネルに取り付けて使用するパネル取付け制御機器としては、特許文献1に示すようなものが知られている。
【0003】
図6にこのような制御機器の1つであるパネル取付け押しボタンスイッチの従来例を示す。パネル取付け押しボタンスイッチは、パネル20の取付け穴21に挿入して取り付けるための押しボタンスイッチ本体10を有する。この押しボタンスイッチ本体10には、操作用の押しボタン11と、この押しボタン11の装着される基端部にフランジ部12を備えた円筒状の胴部13と、この胴部13の外周に刻まれたねじ14にねじ込まれる締付けナット15とを有する。押しボタンスイッチ本体10の胴部13の先端に、押しボタン11によって操作される着脱自在のスイッチユニットを結合して、押しボタンスイッチが構成される。ここでは簡単のためにスイッチユニットの図示を省略している。
【0004】
押しボタンスイッチを、配電盤や制御盤のパネル2に取り付ける場合は、押しボタンスイッチ本体10の胴部13から締付けナット15を外して、胴部13をパネル20に設けた取付け穴21にパネル2の表側から挿入する。そして、このパネル20に挿入された押しボタンスイッチ本体10の胴部13にパネル20の裏側から締付けナット15を被嵌し、胴部13の外周のねじ14にねじ込み、図7に示すように、締付けナット15と胴部13のフランジ部12とによりパネル20を挟み込んで締め付けることにより、押しボタンスイッチ本体10をパネル20に固定的に取付ける。このように押しボタンスイッチ本体10をパネル20に取り付けた後、胴部13の先端に図示しないスイッチユニットを結合する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−108537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このようにパネルに取り付けて使用する押しボタンスイッチ等のパネル取付け制御機器は、制御機器本体の円筒状胴部が、パネルの取付け穴に挿入するため、その外径が取付け穴の内径よりも小さく形成される。
【0007】
このため、このようなパネル取付け制御機器を、配電盤や、制御盤のパネルに取り付けるために、制御機器本体を、パネルの取付け穴に挿入しただけでは、制御機器本体をパネルにより安定して支持することができない。特に、大形の配電盤のパネルでは、パネル表面から裏面へ手を回すことができないため、一人では制御機器本体をパネルの表面から取付け穴に挿入して、この取付け穴に挿入した制御機器本体を手で支持しながらパネルの裏面側から締付けナットを締め付ける作業を行うことができないので人手による支持をはずす必要がある。このため、パネルに挿入した制御機器本体の支持が不安定となり、少しの振動や、接触などにより制御機器本体がパネルから脱落する不都合があった。このような不都合を除くためには、取付け作業を2人で行う必要があり、人手を要する不便がある。
【0008】
この発明は、このような不都合を解消し、一人で取付け作業のできるパネル取付け制御機器を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、前記の課題を解決するため、制御機器本体の背面側にフランジ部および外周にねじの切られた円筒状の胴部を設け、この制御機器本体の胴部を、取付けパネルの表面側からこのパネルに形成した取付け穴に挿入し、前記取付けパネルの裏面側から前記制御機器本体の胴部に形成したねじに締付けナットをねじ込み、前記制御機器本体を前記取付けパネルに締付け結合するようにしたパネル取付け制御機器において、前記制御機器本体の胴部の外周にほぼ均等な間隔で、前記胴部の外周から前記取付けパネルの取付け穴の内径よりも大きく突出した微小の突起を複数設けたことを特徴とするものである。
【0010】
この発明においては、前記突起は、幅の狭い、微小な突起とし、これが、前記操作部本体の胴部の1つの直径線と並行に突出するようにし、また、突起の前端面には、この前端面の下端から上端に向かって突起の前端面側から後端面側へ後退する傾斜面を設けるのがよい。さらに、この傾斜面に前端面の一側端から他側端に向かって突起の前端面側から後端面側に後退する傾斜を設けることもできる。
【0011】
そして、突起の形状としては、円錐形又は角錐形のように上端が細くなる形状がよい。
【発明の効果】
【0012】
この発明においては、パネル取付け制御機器の本体の、取付けパネルの取付け穴に挿入される胴部の外周に取付け穴の内径よりも大きく突出した複数の微小の突起を設けているので、パネルに取り付ける際に制御機器本体の胴部をパネルの取付け穴に挿入するとき、前記胴部の突起がパネルの取付け穴によってこの突起を弾性変形又は塑性変形させ、その先端がパネルの取付け穴の内周壁面に圧接するまで押し込むようにする。突起の先端が取付け穴の内壁を圧接することにより、取付けパネルの取付け穴に挿入された制御機器本体が取付けパネルに係止され、仮固定される。このため、制御機器本体は、外部からの支持なしで、取付けパネルにより安定支持することができ、多少の振動、衝撃を受けても取付けパネルから外れることがないので、制御機器のパネル取付けを作業者一人で行うことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明の実施例の押しボタンスイッチの構成を示す分解斜視図である。
【図2】この発明の実施例の押しボタンスイッチの微小の突起を拡大して示す斜視図である。
【図3】この発明の実施例の押しボタンスイッチの操作部本体を示すもので、(a)は平面図、(b)は(a)におけるb−b線に沿う断面図、(c)は、(b)におけるc部を拡大して示す断面図である。
【図4】この発明の実施例の押しボタンスイッチのパネル取付け状態を示す平面図である。
【図5】この発明の制御機器に設ける突起の形状の変形例を示す図である。
【図6】従来の制御機器の構成を示す分解斜視図である。
【図7】従来の制御機器のパネル取付け状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
この発明の実施の形態を図に示す実施例について説明する。
【実施例1】
【0015】
図1にこの発明の実施例を示す。この図1において、10は、制御機器の1つである押しボタンスイッチの操作部本体である。この押しボタンスイッチの操作部本体10は、配電盤などのパネル20に取付け可能に構成されており、操作用の押しボタン11と、これを支持するフランジ部12と、このフランジ部12に連設された円筒状の胴部13とを備える。
【0016】
胴部13の外周のフランジ部12側に締付けナット15をねじ込むためのねじ14が刻まれている。さらに、ねじ14のフランジ部12に隣接する部分にねじの一部を切り欠いて形成された切欠き凹部14aの中に微小の突起16が設けられている(図2参照)。
【0017】
この突起16は、図3に詳細を示すように、円筒状の胴部13の外周にほぼ均等な間隔(90°間隔)で、4個(16a〜16d)設けられている。この突起16は、この実施例では、図3(b)に示すように、円筒状の胴部13の外周から、これの垂直な直径線Vと並行に突出し、図5(a)に示すような形状に形成されている。
【0018】
すなわち、突起16は、胴部13の周方向の厚さtが薄く、胴部13の軸方向の幅wおよび高さhは、厚さtより十分大きくされている。そして、突起16のパネル20と対向する前端面Fには傾斜面Sが設けられている。この傾斜面Sは、下端D側から上端U側へ向って前端面F側から後端面B側へ後退し、かつ左側端L側から右側端R側へ向かって前端面F側から後端面B側へ後退する、2方向の傾斜を有する。このように形成された突起16は、周方向の厚さtが薄いため、円周方向に湾曲変形しやすい形状となる。また、前端面Fに傾斜面Sを設けたことにより、押しボタンスイッチの操作部本体の胴部13をパネル20の取付け穴21に挿入した際、傾斜面Sに取付け穴21の内周壁が摺接して突起16に円周方向、すなわち図5(a)に示す矢印C方向に変形する力を加えるので、突起16が、この方向へ湾曲変形するようになる。
【0019】
この突起の形状は、図3(b)における突起16aと16cに適用されるものである、突起16bと16dの場合は、突起の前端面Fに設ける傾斜面Sは、前端面Fの上端U側が下端D側へ向う方向の傾斜は突起16aおよび16cと同じであるが、左右両側端方向の傾斜が左側端Lから右側端Rへ向かって後退するようになる。
【0020】
なお、突起16は、胴部13の外周から放射状に突出するようにしても差し支えないが、この場合も、突起の前端面には前記のような傾斜面Sを設けるのがよい。
【0021】
押しボタンスイッチの操作部本体10をパネル20に取付ける場合は、本体の胴部13をパネル20の表面側からこれに設けた取付け穴21に挿入し、このパネル20の裏面側へ突出した胴部13に締付けナット15をねじ込み、この締付けナット15と本体10のフランジ部12とでパネル20を締め付けて固定する(図4参照)。パネル20に取り付けられた押しボタンスイッチ操作部本体の胴部13の先端側に図示しない着脱自在に構成されたスイッチユニットを結合することにより、パネル取付け押しボタンスイッチが完成する。
【0022】
このように押しボタンスイッチの操作部本体10は、パネル20に取り付けるために、図3(c)に示すように、胴部13の最大の外径D13は、パネル20の取付け穴21の内径D21より少し小さくして、胴部13がパネル20に設けた取付け穴21に挿通可能に構成する。
【0023】
そして、胴部13に設けた突起16は、押しボタンスイッチ本体10をパネル20に取り付ける際に、パネル20の取付け穴21に挿入した際に、本体10から人手の支えを外したとき、これがパネル20から外れないようにこれを取付け穴21に仮固定するために設けたものである。
【0024】
このため、胴部13の突起16a,16c間および16b,16d間の外径D16は、パネル2の取付け穴21の内径D21より僅かに大きく形成され、突起の先端が取付け穴21の内径より外側に突出するようになる。
【0025】
このように構成された、押しボタンスイッチの操作部本体10を、パネル20に取り付けるには、図1に示すように、胴部13をパネル20の表面側からこれに設けられた取付け穴21に挿入し、パネル20がフランジ部12に当たるまで押し込む必要があるが、その手前で胴部13に突設した突起16がパネル20の表面に当たり、ここで押し込み抵抗が大きくなる。本体10を完全にパネル20の取付け穴21に押し込むためには、ここからさらに、突起16による抵抗に抗して本体10を押し込むことにより、突起16の上端部分がパネル20の取付け穴21の内周壁により押圧されて弾性変形され、又は、圧潰され塑性変形されることにより、取付け穴21内に圧入されて内周壁面を押圧し、本体10をパネル20の取付け穴21に係止し、仮固定することができる。
【0026】
このように押しボタンスイッチの操作部本体10が、突起16によってパネル20の取付け穴21に仮固定されると、本体10から人手の支えを外しても、本体10がパネル20から外れることがないので、パネル20の裏面からの締付けナット15の本体10の胴部13へのねじ込み作業を、パネルの裏面へ手を回すことができないような大形の配電盤の取付けパネルであっても作業者一人で容易に行うことができる。
【0027】
この発明は、取付けパネル20の取付け穴21に挿入する操作部本体10の円筒状の胴部の外周に取付け穴の内径よりも僅かに大きな外径となる微小の突起16を設け、操作部本体10をパネル20の取付け穴21に挿入してこれに押し込む際に、この突起16の上端部をパネル20の取付け穴21内に変形させて圧入することにより、取付け穴21内に入りこませ、突起16の上端を取付け穴21の内周壁に圧接させることにより、操作部本体10をパネル20に係止させて、仮固定するものであるので、操作部本体10の取付け穴21への押し込みを容易にするために、胴部13の外周に設ける微小突起16は、変形しやすい形状にするのがよい。
【0028】
突起16の形状の変形例を図5に示す。図5(a)に示す突起16は、胴部13の軸方向の幅w、および胴部13の半径方向の高さhに対して、胴部13の円周方向Cの厚さtを薄く構成して胴部13の円周方向Cに湾曲変形しやすくしたものである。押しボタンスイッチの操作部本体10の胴部13の外周にこのような形状の突起16を設けた場合は、本体10の胴部13を取付けパネル20の取付け穴21に挿入し、押し込むことにより、突起16の前端が取付け穴21の内周壁により押圧されたとき、胴部10の円周方向Cに湾曲変形して取付け穴21内に入り込みやすくなる。
【0029】
また、この図5(a)の突起16の場合は、突起16の前端面Fに下端Dから上端Uに向かって後端面側へ後退する傾斜面Sを設けるようにすると、押しボタンスイッチの操作部本体10の胴部13を取付けパネル20の取付け穴21に挿入するとき、この突起16の傾斜面Lが取付け穴21の周壁により案内されることにより、胴部13と取付け穴21との中心位置合わせが自動的に行われるようになる。
【0030】
そして、この突起16の傾斜面Sに設けられたこの傾斜面の左側端L側から右側端Rへ向かって後端面B側へ後退するもう一つの傾斜は、押しボタンスイッチ本体10をパネル20の取付け穴21に挿入し、押し込む際に、取付け穴21の内周壁が突起16に円周方向に変形する力を加え、突起16を、図3(c)に点線で示す突起16´のように湾曲変形させる作用をする。
【0031】
図5(b)に示す突起16は、胴部13の軸方向の幅wを、胴部13の半径方向の高さh、および胴部13の円周方向Cの厚さtに対して薄く構成して胴部13の軸方向Aに湾曲変形しやすくしたものである。この形状の突起を設けた場合は、本体10の胴部13を取付けパネル20の取付け穴21に挿入し、押し込むことにより、突起16の先端が取付け穴21の周壁により押圧されたとき、胴部10の軸方向Aに湾曲変形して取付け穴21内に入り込みやすくなる。
【0032】
次に、図5(c)に示す突起16は、半球状の形状にして、突起の上端を細く形成したものである。また、図5(d)に示す突起16は、角錐状又は円錐状の形状にして突起の上端を細く形成したものである。
【0033】
図5(c)および(d)に示すように突起16の上端部が細くなるように形成すると、突起16の上端部が機械的剛性および強度が弱くなるので、押しボタンスイッチの操作部本体10の胴部13を取付けパネル20の取付け穴21に挿入したとき、突起16の先端部が取付けパネル20の取付け穴21の周壁により押圧されて容易に変形又は圧潰されるため、突起16の上端部を容易に取付けパネル20の取付け穴21内に圧入することができる。
【0034】
前記では、この発明をパネル取付け押しボタンスイッチに適用した実施例について説明したが、パネル取付けの表示器等のその他のパネル取付け制御機器にも適用できる。
【符号の説明】
【0035】
10:押しボタンスイッチの操作部本体(制御機器本体)
11:押しボタン
12:フランジ部
13:円筒状の胴部
14:ねじ
15:締付けナット
16(a〜d):微小の突起
20:取付けパネル
21:取付け穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御機器本体の背面側にフランジ部および外周にねじの切られた円筒状の胴部を設け、この制御機器本体の胴部を、取付けパネルの表面側からこのパネルに形成した取付け穴に挿入し、前記取付けパネルの裏面側から前記制御機器本体の胴部に形成したねじに締付けナットをねじ込み、前記制御機器本体を前記取付けパネルに締付け結合するようにしたパネル取付け制御機器において、前記制御機器本体の胴部の外周にほぼ均等な間隔で、前記胴部の外周から前記取付けパネルの取付け穴の内径よりも大きく突出した微小の突起を複数設けたことを特徴とするパネル取付け制御機器。
【請求項2】
請求項1に記載のパネル取付け制御機器において、前記微小の突起は、前記制御機器本体の胴部の円周方向又は、軸方向の幅を狭く形成し、前記胴部の1つの直径線と並行に突出することを特徴とするパネル取付け制御機器。
【請求項3】
請求項1に記載のパネル取付け制御機器において、前記微小の突起は、円錐形状又は角錐状をなし、先端部分を細く形成したことを特徴とするパネル取付け制御機器。
【請求項4】
請求項1に記載のパネル取付け制御機器において、前記制御機器本体の胴部に設ける突起の前端面には、この前端面の下端から上端に向かって突起の前端面側から後端面側に後退する傾斜面を設けたことを特徴とするパネル取付け制御機器。
【請求項5】
請求項4に記載のパネル取付け制御機器において、前記制御機器本体の胴部に設ける突起の前端面に設けた傾斜面に、さらに、この前端面の一側端から他側端に向かって突起の前端面側から後端面側に後退する傾斜を設けたことを特徴とするパネル取付け制御機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−64435(P2013−64435A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−202926(P2011−202926)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(508296738)富士電機機器制御株式会社 (299)
【出願人】(390021186)株式会社秩父富士 (54)
【Fターム(参考)】