パネル構造材
【課題】 剛性に優れるとともに、従来のハニカム構造のものや、多数の凸部を有するパネル板を2枚以上重ね合わせた構造のものに比べて生産性に優れたパネル構造材を提供すること。
【解決手段】 凸部とその裾野周りの平面部とから形成されるユニットセル部が多数規則的に配列されてなる1枚の裏打ち板300と、前記裏打ち板の前記凸部側又は両面に接合された平滑な表面板200とを備え、前記ユニットセル部の平面視投影面積Aに対する前記凸部の平面視投影面積Dの比が、0.3≦D/A≦0.8の範囲を満たすように、前記ユニットセル部が形成されていることを特徴とするパネル構造材100。
【解決手段】 凸部とその裾野周りの平面部とから形成されるユニットセル部が多数規則的に配列されてなる1枚の裏打ち板300と、前記裏打ち板の前記凸部側又は両面に接合された平滑な表面板200とを備え、前記ユニットセル部の平面視投影面積Aに対する前記凸部の平面視投影面積Dの比が、0.3≦D/A≦0.8の範囲を満たすように、前記ユニットセル部が形成されていることを特徴とするパネル構造材100。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物、車両及び航空機などの構造物の床面、あるいは壁面に構造材として好適に使用されるパネル構造材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のパネル構造材においては、いわゆるハニカム構造のものが広く利用されている。このハニカム構造のパネルは、極めて薄肉の金属材料で多数のセルを形成した六角形状のハニカムコアの両面に平面板を接合した構造になっており、軽量でありながら高剛性という優れた特性を有している。しかし、このハニカム構造のパネル(ハニカムパネル)は、例えばアルミニウム製のリボンをコルゲート加工して凹凸を形成したものを多数積層し、ロウ付け又は接着剤で接着してハニカム形状にするため、生産性が低く、製造コストが高いという問題があった。しかも、緻密に配置されたハニカムコアを通して音が伝わりやすく、防音性能の面でも問題があった。
【0003】
そこで、前記生産性問題を解決すべく、パネル構造材として、図9に示すように、多数の凸型部分52aが形成された1枚の薄肉金属製の構造材(裏打ち板)52とその両面に接着された薄肉金属製の表面材51からなる金属パネル50が提案されている(特開平6−316015号公報)。この金属パネル50の構造材52の加工は、アルミニウムなどの薄手の金属材料に絞り加工又はプレス加工などの方法で多数の凸型部分52aを一体形成するといったように、ハニカムコアに比べて著しく部材点数を少なくすることができ、高い生産性が実現できるようにしている。なお、構造材52と表面材51との接合をスポット溶接などで点接合した場合には、表面板51と構造材52の接触点をハニカム構造のパネルに比べて大幅に減らすことによって、防音性能を著しく高めることができると考えられる。
【0004】
しかし、この金属パネル50は、次に述べるように、剛性に欠けるという問題点がある。図10は前記従来の金属パネルに荷重を加えた場合の変形状態を示す図であって、その(a)はパネル下面の全面が支持された状態で分布荷重Pを加えた場合の変形状態を示す図であり、その(b)はパネル下面の端部のみが支持された状態で分布荷重Pを加えた場合の変形状態を示す図である。
【0005】
図10(a)に示すように、パネル下面が安定した状態で分布荷重Pを加えた場合には、金属パネル50は優れた強度を示す。しかし、図10(b)のように、パネル下面の周端部のみが支持された状態では、分布荷重Pにより、凸型部分52a間の平面部52bが容易にせん断変形するために、構造材として剛性の低いものとなる。
【0006】
そこで、剛性を高めるため、図11に示すように、多数の凸部62aを有するパネル62を2枚積層してパネル積層体63を形成し、パネル積層体63の上面及び下面に表面材61を接合してなるパネル構造材(高剛性パネル)60が提案されている(特開平9−141769号公報)。この場合、2枚のパネル62の凸部62a同士の接合はスポット溶接によって行い、上下面への各表面材61の張り付けはビス止めによって行うようにしている。
【0007】
しかし、このパネル構造材60は、材料コストが増えるとともに、製造も極めて手間がかかり、コスト的に見てハニカム構造に大きく見劣りしており、非実用的と言わざるを得ないものである。
【特許文献1】特開平6−316015号公報(第2頁、図1)
【特許文献2】特開平9−141769号公報(第2−第4頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明の課題は、剛性に優れるとともに、従来のハニカム構造のものや、多数の凸部を有するパネル板を2枚以上重ね合わせた構造のものに比べて生産性に優れたパネル構造材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の課題を解決するため、本願発明では、次の技術的手段を講じている。
【0010】
請求項1の発明は、凸部とその裾野周りの平面部とから形成されるユニットセル部が多数規則的に配列されてなる1枚の裏打ち板と、前記裏打ち板の前記凸部側又は両面に接合された平滑な表面板とを備え、前記ユニットセル部の平面視投影面積Aに対する前記凸部の平面視投影面積Dの比が、0.3≦D/A≦0.8の範囲を満たすように、前記ユニットセル部が形成されていることを特徴とするパネル構造材である。
【発明の効果】
【0011】
請求項1のパネル構造材は、凸部とその裾野周りの平面部とから形成されるユニットセル部が多数規則的に配列されてなる1枚の裏打ち板と、この裏打ち板の前記凸部側又は両面に接合された平滑な表面板とを備えており、前記ユニットセル部の平面視投影面積Aに対する前記凸部の平面視投影面積Dの比が、0.3≦D/A≦0.8の範囲を満たすように、前記ユニットセル部が形成されている。このように、ユニットセル部の平面部の面積を適切に設定することにより、平面部の面積が適正範囲より大きい場合に生じる大きなせん断変形によるパネル構造材のたわみの発生と、平面部の面積が適正範囲より小さい場合に生じる大きな曲げ変形によるパネル構造材のたわみの発生とをともに回避することができる。よって、高い剛性を持つことができるとともに、従来のハニカム構造のものや、多数の凸部を有するパネル板を2枚以上重ね合わせた構造のものに比べて構成が簡易で優れた生産性を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は本発明の一実施形態によるパネル構造材を示す図であって、その(a)はパネル構造材の一部分を切り離した後におけるパネル構造材の全体構成を示す斜視図、その(b)はパネル構造材の裏打ち板を示す斜視図、その(c)は裏打ち板のユニットセル部を示す平面図である。
【0013】
本実施形態のパネル構造材100は、図1に示すように、平らな薄肉の本例ではアルミニウム合金製の表面板200と、中空の凸部311とその裾野周りの平面部312とから形成されるユニットセル部310が多数規則的に配列された周期構造を有する薄肉の本例ではアルミニウム合金製の裏打ち板300とを備え、表面板200と裏打ち板300とが、裏打ち板300の凸部311の平らな頂部でスポット溶接にて接合されている。
【0014】
裏打ち板300は、中空の凸部311とその裾野周りの平面部312とから形成されるユニットセル部310が多数規則的に連なって配列されており、図1(b)に示すように、凸部311は、この例では中空四角錐台状をなしており、また、平面部312は、この例では凸部311のほぼ正方形をなす裾野周縁から外側へ延びて正方形の外側輪郭を有している。
【0015】
そして、ユニットセル部310は、図1(c)に示すように、ユニットセル部310の平面視投影面積A(図1(c)の場合は正方形)に対する凸部311の平面視投影面積D(図1(c)の場合はほぼ正方形)の比が、0.3≦D/A≦0.8の関係を満たすように、形成されている。
【0016】
図2は本発明のパネル構造材の作用を説明するための図であって、その(a)はD/A<0.3の場合のパネル構造材のたわみを説明するための図、その(b)は0.3≦D/A≦0.8の場合のパネル構造材のたわみを説明するための図、その(c)は0.8<D/Aの場合のパネル構造材のたわみを説明するための図である。
【0017】
図2において、10は表面板、20は中空の凸部21と平面部22とからなるユニットセル部が多数規則的に配列された裏打ち板であり、裏打ち板20の全周端が支持された状態で表面板10の全領域に等分布荷重Pが加えられている。表面板10と裏打ち板20とは、裏打ち板20の凸部21の頂部で接合されている。
【0018】
図2(a)のように、平面部22の面積が広い場合(D/A<0.3)、パネル構造材においては、隣り合う凸部21間のせん断力が伝わり難いために、全体としてせん断変形を生じやすく、たわみが大きくなる。一方、図2(c)のように、平面部22の面積が非常に小さい場合(0.8<D/A)、凸部21間のせん断力は伝わり易いので、せん断変形そのものは小さいものの、全体としての曲げ剛性が小さくなって、曲げ変形が大きくなり、結果として全体のたわみはやはり大きくなる。これに対して、0.3≦D/A≦0.8を満足するユニットセル部とすることで、平面部22の面積が適正範囲より大きい場合に生じる大きなせん断変形によるパネル構造材のたわみの発生と、平面部22の面積が適正範囲より小さい場合に生じる大きな曲げ変形によるパネル構造材のたわみの発生とをともに回避することができて、高い剛性を持つことができる(図2(b))。なお、本発明のパネル構造材では、そのたわみについては、ユニットセル部の凸部の形状や平面部の形状に対して比較的鈍感であり、D/Aの比率に非常に敏感である。したがって、ユニットセル部の形状は幅広く選択することが可能である。
【0019】
図3は本発明に係る裏打ち板のユニットセル部の形状例を示す斜視図である。
【0020】
前述したように、本発明のパネル構造材では、0.3≦D/A≦0.8の規定を満たす範囲においてユニットセル部の形状は比較的幅広く選択することが可能である。図3(a)に示すユニットセル部320は、中空円錐台形をなす凸部321と、この凸部321の円形の裾野周縁から外側へ延びて正方形の外側輪郭を有する平面部322とから形成されている。図3(b)に示すユニットセル部330は、中空多重四角錐台形をなす凸部331と、この凸部331の正方形の裾野周縁から外側へ延びて正方形の外側輪郭を有する平面部332とから形成されている。また、図3(c)に示すユニットセル部340は、中空多重円錐台形をなす凸部341と、この凸部341の円形の裾野周縁から外側へ延びて正六角形の外側輪郭を有する平面部342とから形成されている。
【実施例】
【0021】
図4は本発明の実施例で用いたパネル構造材の裏打ち板を示す斜視図、図5は図4のパネル構造材の要部を拡大して示す切欠き斜視図、図6は本発明の実施例で用いた別のパネル構造材の裏打ち板を示す斜視図、図7は図6のパネル構造材の要部を拡大して示す切欠き斜視図である。
【0022】
ユニットセル部の形状が異なる2種類のパネル構造材について、荷重をかけたときのたわみ度合いの解析を行った。No.1のパネル構造材400は、図4及び図5に示すように、表面板500と、中空円錐台形をなす凸部611と正方形の外側輪郭を有する平面部612とから形成されているユニットセル部610が多数規則的に配列された裏打ち板600とを備え、表面板500と裏打ち板600とが、裏打ち板600の凸部611の平らな頂部で接合(スポット溶接)されている。また、No.2のパネル構造材700は、図6及び図7に示すように、表面板800と、中空四角錐台形をなす凸部911と正方形の外側輪郭を有する平面部912とから形成されているユニットセル部910が多数規則的に配列された裏打ち板900とを備え、表面板800と裏打ち板800とが、裏打ち板990の凸部911の平らな頂部で接合(スポット溶接)されている。
【0023】
No.1,No.2のパネル構造材400,700において、表面板500,800及び裏打ち板600,900の辺長Lは1000mm、ユニットセル部611,911の辺長pは111mm(=1000mm/9)である。また、表面板500,800の板厚中心と平面部612,912の板厚中心との距離hは19.25mmであり、アルミニウム合金製の表面板500,700の板厚は3.5mm、アルミニウム合金製の裏打ち板600,900の板厚は1.4mmである。
【0024】
荷重としては、表面板500,800の全領域に等分布荷重を載荷した。また、境界条件としては、裏打ち板600,900の全周端を鉛直方向に固定し、回転は自由とした。ユニットセル部610,910の前記D/Aを変えるためのパラメータは、表1に示す通りであって、No.1のパネル構造材400では、中空円錐台形の凸部611の円錐角度θ(図5参照)を採用し、No.2のパネル構造材700では、中空四角錐台形の凸部911の底辺長さd(図7参照)を採用した。「たわみ」の値については、最小のたわみ(No.1のパネル構造材でD/Aの値が0.478のとき)を1.0として相対値を無次元化表示してある。解析結果を表1と図8に示す。
【0025】
【表1】
【0026】
表1及び図8からわかるように、No.1,No.2のパネル構造材400,700において、ユニットセル部610,910のD/Aの値が本発明で規定する0.3≦D/A≦0.8の範囲を満たすものでは、たわみは1.35以下となり(図8参照)、高い剛性が得られることが確認できた。0.3≦D/A≦0.8の範囲を外れると、たわみが急激に大きくなっている。また、中空円錐台形の凸部611を持つものと中空四角錐台形の凸部911を持つものとでは、凸部形状の相違によってたわみが大きく異なるということはなく、たわみに対してはD/Aの値が支配的であることもわかる。なお、本解析結果は、表面板及び裏打ち板の材質のヤング率に関係なく成立するので、表面板及び裏打ち板の材質がアルミニウム合金、鋼、樹脂などによらず、同一の結果になるものである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態によるパネル構造材を示す図であって、その(a)はパネル構造材の一部分を切り離した後におけるパネル構造材の全体構成を示す斜視図、その(b)はパネル構造材の裏打ち板を示す斜視図、その(c)は裏打ち板のユニットセル部を示す平面図である。
【図2】本発明のパネル構造材の作用を説明するための図であって、その(a)はD/A<0.3の場合のパネル構造材のたわみを説明するための図、その(b)は0.3≦D/A≦0.8の場合のパネル構造材のたわみを説明するための図、その(c)は0.8<D/Aの場合のパネル構造材のたわみを説明するための図である。
【図3】本発明に係る裏打ち板のユニットセル部の形状例を示す斜視図である。
【図4】本発明の実施例で用いたパネル構造材の裏打ち板を示す斜視図である。
【図5】図4のパネル構造材の要部を拡大して示す切欠き斜視図である。
【図6】本発明の実施例で用いた別のパネル構造材の裏打ち板を示す斜視図である。
【図7】図6のパネル構造材の要部を拡大して示す切欠き斜視図である。
【図8】実施例でのたわみ解析結果を示すグラフである。
【図9】従来の金属パネルを示す切欠き斜視図である。
【図10】従来の金属パネルに荷重を加えた場合の変形状態を示す図であって、その(a)はパネル下面の全面が支持された状態で分布荷重Pを加えた場合の変形状態を示す図であり、その(b)はパネル下面の端部のみが支持された状態で分布荷重Pを加えた場合の変形状態を示す図である。
【図11】従来のパネル構造材を示す一部切欠き斜視図である。
【符号の説明】
【0028】
100…パネル構造材
200…表面板
300…裏打ち板
310,320,330,340…ユニットセル部
311,321,331,341…凸部
312,322,332,342…平面部
400…No.1のパネル構造材
500…表面板
600…裏打ち板
610…ユニットセル部
611…凸部
612…平面部
700…No.2のパネル構造材
800…表面板
900…裏打ち板
910…ユニットセル部
911…凸部
912…平面部
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物、車両及び航空機などの構造物の床面、あるいは壁面に構造材として好適に使用されるパネル構造材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のパネル構造材においては、いわゆるハニカム構造のものが広く利用されている。このハニカム構造のパネルは、極めて薄肉の金属材料で多数のセルを形成した六角形状のハニカムコアの両面に平面板を接合した構造になっており、軽量でありながら高剛性という優れた特性を有している。しかし、このハニカム構造のパネル(ハニカムパネル)は、例えばアルミニウム製のリボンをコルゲート加工して凹凸を形成したものを多数積層し、ロウ付け又は接着剤で接着してハニカム形状にするため、生産性が低く、製造コストが高いという問題があった。しかも、緻密に配置されたハニカムコアを通して音が伝わりやすく、防音性能の面でも問題があった。
【0003】
そこで、前記生産性問題を解決すべく、パネル構造材として、図9に示すように、多数の凸型部分52aが形成された1枚の薄肉金属製の構造材(裏打ち板)52とその両面に接着された薄肉金属製の表面材51からなる金属パネル50が提案されている(特開平6−316015号公報)。この金属パネル50の構造材52の加工は、アルミニウムなどの薄手の金属材料に絞り加工又はプレス加工などの方法で多数の凸型部分52aを一体形成するといったように、ハニカムコアに比べて著しく部材点数を少なくすることができ、高い生産性が実現できるようにしている。なお、構造材52と表面材51との接合をスポット溶接などで点接合した場合には、表面板51と構造材52の接触点をハニカム構造のパネルに比べて大幅に減らすことによって、防音性能を著しく高めることができると考えられる。
【0004】
しかし、この金属パネル50は、次に述べるように、剛性に欠けるという問題点がある。図10は前記従来の金属パネルに荷重を加えた場合の変形状態を示す図であって、その(a)はパネル下面の全面が支持された状態で分布荷重Pを加えた場合の変形状態を示す図であり、その(b)はパネル下面の端部のみが支持された状態で分布荷重Pを加えた場合の変形状態を示す図である。
【0005】
図10(a)に示すように、パネル下面が安定した状態で分布荷重Pを加えた場合には、金属パネル50は優れた強度を示す。しかし、図10(b)のように、パネル下面の周端部のみが支持された状態では、分布荷重Pにより、凸型部分52a間の平面部52bが容易にせん断変形するために、構造材として剛性の低いものとなる。
【0006】
そこで、剛性を高めるため、図11に示すように、多数の凸部62aを有するパネル62を2枚積層してパネル積層体63を形成し、パネル積層体63の上面及び下面に表面材61を接合してなるパネル構造材(高剛性パネル)60が提案されている(特開平9−141769号公報)。この場合、2枚のパネル62の凸部62a同士の接合はスポット溶接によって行い、上下面への各表面材61の張り付けはビス止めによって行うようにしている。
【0007】
しかし、このパネル構造材60は、材料コストが増えるとともに、製造も極めて手間がかかり、コスト的に見てハニカム構造に大きく見劣りしており、非実用的と言わざるを得ないものである。
【特許文献1】特開平6−316015号公報(第2頁、図1)
【特許文献2】特開平9−141769号公報(第2−第4頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明の課題は、剛性に優れるとともに、従来のハニカム構造のものや、多数の凸部を有するパネル板を2枚以上重ね合わせた構造のものに比べて生産性に優れたパネル構造材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の課題を解決するため、本願発明では、次の技術的手段を講じている。
【0010】
請求項1の発明は、凸部とその裾野周りの平面部とから形成されるユニットセル部が多数規則的に配列されてなる1枚の裏打ち板と、前記裏打ち板の前記凸部側又は両面に接合された平滑な表面板とを備え、前記ユニットセル部の平面視投影面積Aに対する前記凸部の平面視投影面積Dの比が、0.3≦D/A≦0.8の範囲を満たすように、前記ユニットセル部が形成されていることを特徴とするパネル構造材である。
【発明の効果】
【0011】
請求項1のパネル構造材は、凸部とその裾野周りの平面部とから形成されるユニットセル部が多数規則的に配列されてなる1枚の裏打ち板と、この裏打ち板の前記凸部側又は両面に接合された平滑な表面板とを備えており、前記ユニットセル部の平面視投影面積Aに対する前記凸部の平面視投影面積Dの比が、0.3≦D/A≦0.8の範囲を満たすように、前記ユニットセル部が形成されている。このように、ユニットセル部の平面部の面積を適切に設定することにより、平面部の面積が適正範囲より大きい場合に生じる大きなせん断変形によるパネル構造材のたわみの発生と、平面部の面積が適正範囲より小さい場合に生じる大きな曲げ変形によるパネル構造材のたわみの発生とをともに回避することができる。よって、高い剛性を持つことができるとともに、従来のハニカム構造のものや、多数の凸部を有するパネル板を2枚以上重ね合わせた構造のものに比べて構成が簡易で優れた生産性を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は本発明の一実施形態によるパネル構造材を示す図であって、その(a)はパネル構造材の一部分を切り離した後におけるパネル構造材の全体構成を示す斜視図、その(b)はパネル構造材の裏打ち板を示す斜視図、その(c)は裏打ち板のユニットセル部を示す平面図である。
【0013】
本実施形態のパネル構造材100は、図1に示すように、平らな薄肉の本例ではアルミニウム合金製の表面板200と、中空の凸部311とその裾野周りの平面部312とから形成されるユニットセル部310が多数規則的に配列された周期構造を有する薄肉の本例ではアルミニウム合金製の裏打ち板300とを備え、表面板200と裏打ち板300とが、裏打ち板300の凸部311の平らな頂部でスポット溶接にて接合されている。
【0014】
裏打ち板300は、中空の凸部311とその裾野周りの平面部312とから形成されるユニットセル部310が多数規則的に連なって配列されており、図1(b)に示すように、凸部311は、この例では中空四角錐台状をなしており、また、平面部312は、この例では凸部311のほぼ正方形をなす裾野周縁から外側へ延びて正方形の外側輪郭を有している。
【0015】
そして、ユニットセル部310は、図1(c)に示すように、ユニットセル部310の平面視投影面積A(図1(c)の場合は正方形)に対する凸部311の平面視投影面積D(図1(c)の場合はほぼ正方形)の比が、0.3≦D/A≦0.8の関係を満たすように、形成されている。
【0016】
図2は本発明のパネル構造材の作用を説明するための図であって、その(a)はD/A<0.3の場合のパネル構造材のたわみを説明するための図、その(b)は0.3≦D/A≦0.8の場合のパネル構造材のたわみを説明するための図、その(c)は0.8<D/Aの場合のパネル構造材のたわみを説明するための図である。
【0017】
図2において、10は表面板、20は中空の凸部21と平面部22とからなるユニットセル部が多数規則的に配列された裏打ち板であり、裏打ち板20の全周端が支持された状態で表面板10の全領域に等分布荷重Pが加えられている。表面板10と裏打ち板20とは、裏打ち板20の凸部21の頂部で接合されている。
【0018】
図2(a)のように、平面部22の面積が広い場合(D/A<0.3)、パネル構造材においては、隣り合う凸部21間のせん断力が伝わり難いために、全体としてせん断変形を生じやすく、たわみが大きくなる。一方、図2(c)のように、平面部22の面積が非常に小さい場合(0.8<D/A)、凸部21間のせん断力は伝わり易いので、せん断変形そのものは小さいものの、全体としての曲げ剛性が小さくなって、曲げ変形が大きくなり、結果として全体のたわみはやはり大きくなる。これに対して、0.3≦D/A≦0.8を満足するユニットセル部とすることで、平面部22の面積が適正範囲より大きい場合に生じる大きなせん断変形によるパネル構造材のたわみの発生と、平面部22の面積が適正範囲より小さい場合に生じる大きな曲げ変形によるパネル構造材のたわみの発生とをともに回避することができて、高い剛性を持つことができる(図2(b))。なお、本発明のパネル構造材では、そのたわみについては、ユニットセル部の凸部の形状や平面部の形状に対して比較的鈍感であり、D/Aの比率に非常に敏感である。したがって、ユニットセル部の形状は幅広く選択することが可能である。
【0019】
図3は本発明に係る裏打ち板のユニットセル部の形状例を示す斜視図である。
【0020】
前述したように、本発明のパネル構造材では、0.3≦D/A≦0.8の規定を満たす範囲においてユニットセル部の形状は比較的幅広く選択することが可能である。図3(a)に示すユニットセル部320は、中空円錐台形をなす凸部321と、この凸部321の円形の裾野周縁から外側へ延びて正方形の外側輪郭を有する平面部322とから形成されている。図3(b)に示すユニットセル部330は、中空多重四角錐台形をなす凸部331と、この凸部331の正方形の裾野周縁から外側へ延びて正方形の外側輪郭を有する平面部332とから形成されている。また、図3(c)に示すユニットセル部340は、中空多重円錐台形をなす凸部341と、この凸部341の円形の裾野周縁から外側へ延びて正六角形の外側輪郭を有する平面部342とから形成されている。
【実施例】
【0021】
図4は本発明の実施例で用いたパネル構造材の裏打ち板を示す斜視図、図5は図4のパネル構造材の要部を拡大して示す切欠き斜視図、図6は本発明の実施例で用いた別のパネル構造材の裏打ち板を示す斜視図、図7は図6のパネル構造材の要部を拡大して示す切欠き斜視図である。
【0022】
ユニットセル部の形状が異なる2種類のパネル構造材について、荷重をかけたときのたわみ度合いの解析を行った。No.1のパネル構造材400は、図4及び図5に示すように、表面板500と、中空円錐台形をなす凸部611と正方形の外側輪郭を有する平面部612とから形成されているユニットセル部610が多数規則的に配列された裏打ち板600とを備え、表面板500と裏打ち板600とが、裏打ち板600の凸部611の平らな頂部で接合(スポット溶接)されている。また、No.2のパネル構造材700は、図6及び図7に示すように、表面板800と、中空四角錐台形をなす凸部911と正方形の外側輪郭を有する平面部912とから形成されているユニットセル部910が多数規則的に配列された裏打ち板900とを備え、表面板800と裏打ち板800とが、裏打ち板990の凸部911の平らな頂部で接合(スポット溶接)されている。
【0023】
No.1,No.2のパネル構造材400,700において、表面板500,800及び裏打ち板600,900の辺長Lは1000mm、ユニットセル部611,911の辺長pは111mm(=1000mm/9)である。また、表面板500,800の板厚中心と平面部612,912の板厚中心との距離hは19.25mmであり、アルミニウム合金製の表面板500,700の板厚は3.5mm、アルミニウム合金製の裏打ち板600,900の板厚は1.4mmである。
【0024】
荷重としては、表面板500,800の全領域に等分布荷重を載荷した。また、境界条件としては、裏打ち板600,900の全周端を鉛直方向に固定し、回転は自由とした。ユニットセル部610,910の前記D/Aを変えるためのパラメータは、表1に示す通りであって、No.1のパネル構造材400では、中空円錐台形の凸部611の円錐角度θ(図5参照)を採用し、No.2のパネル構造材700では、中空四角錐台形の凸部911の底辺長さd(図7参照)を採用した。「たわみ」の値については、最小のたわみ(No.1のパネル構造材でD/Aの値が0.478のとき)を1.0として相対値を無次元化表示してある。解析結果を表1と図8に示す。
【0025】
【表1】
【0026】
表1及び図8からわかるように、No.1,No.2のパネル構造材400,700において、ユニットセル部610,910のD/Aの値が本発明で規定する0.3≦D/A≦0.8の範囲を満たすものでは、たわみは1.35以下となり(図8参照)、高い剛性が得られることが確認できた。0.3≦D/A≦0.8の範囲を外れると、たわみが急激に大きくなっている。また、中空円錐台形の凸部611を持つものと中空四角錐台形の凸部911を持つものとでは、凸部形状の相違によってたわみが大きく異なるということはなく、たわみに対してはD/Aの値が支配的であることもわかる。なお、本解析結果は、表面板及び裏打ち板の材質のヤング率に関係なく成立するので、表面板及び裏打ち板の材質がアルミニウム合金、鋼、樹脂などによらず、同一の結果になるものである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態によるパネル構造材を示す図であって、その(a)はパネル構造材の一部分を切り離した後におけるパネル構造材の全体構成を示す斜視図、その(b)はパネル構造材の裏打ち板を示す斜視図、その(c)は裏打ち板のユニットセル部を示す平面図である。
【図2】本発明のパネル構造材の作用を説明するための図であって、その(a)はD/A<0.3の場合のパネル構造材のたわみを説明するための図、その(b)は0.3≦D/A≦0.8の場合のパネル構造材のたわみを説明するための図、その(c)は0.8<D/Aの場合のパネル構造材のたわみを説明するための図である。
【図3】本発明に係る裏打ち板のユニットセル部の形状例を示す斜視図である。
【図4】本発明の実施例で用いたパネル構造材の裏打ち板を示す斜視図である。
【図5】図4のパネル構造材の要部を拡大して示す切欠き斜視図である。
【図6】本発明の実施例で用いた別のパネル構造材の裏打ち板を示す斜視図である。
【図7】図6のパネル構造材の要部を拡大して示す切欠き斜視図である。
【図8】実施例でのたわみ解析結果を示すグラフである。
【図9】従来の金属パネルを示す切欠き斜視図である。
【図10】従来の金属パネルに荷重を加えた場合の変形状態を示す図であって、その(a)はパネル下面の全面が支持された状態で分布荷重Pを加えた場合の変形状態を示す図であり、その(b)はパネル下面の端部のみが支持された状態で分布荷重Pを加えた場合の変形状態を示す図である。
【図11】従来のパネル構造材を示す一部切欠き斜視図である。
【符号の説明】
【0028】
100…パネル構造材
200…表面板
300…裏打ち板
310,320,330,340…ユニットセル部
311,321,331,341…凸部
312,322,332,342…平面部
400…No.1のパネル構造材
500…表面板
600…裏打ち板
610…ユニットセル部
611…凸部
612…平面部
700…No.2のパネル構造材
800…表面板
900…裏打ち板
910…ユニットセル部
911…凸部
912…平面部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
凸部とその裾野周りの平面部とから形成されるユニットセル部が多数規則的に配列されてなる1枚の裏打ち板と、前記裏打ち板の前記凸部側又は両面に接合された平滑な表面板とを備え、前記ユニットセル部の平面視投影面積Aに対する前記凸部の平面視投影面積Dの比が、0.3≦D/A≦0.8の範囲を満たすように、前記ユニットセル部が形成されていることを特徴とするパネル構造材。
【請求項1】
凸部とその裾野周りの平面部とから形成されるユニットセル部が多数規則的に配列されてなる1枚の裏打ち板と、前記裏打ち板の前記凸部側又は両面に接合された平滑な表面板とを備え、前記ユニットセル部の平面視投影面積Aに対する前記凸部の平面視投影面積Dの比が、0.3≦D/A≦0.8の範囲を満たすように、前記ユニットセル部が形成されていることを特徴とするパネル構造材。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−137029(P2006−137029A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−326712(P2004−326712)
【出願日】平成16年11月10日(2004.11.10)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年11月10日(2004.11.10)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】
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