説明

パネル

【課題】
解決すべき課題は、リーンフォースパイプとインナーリブが共にデッキボードの長手方向にほぼ平行に配置されている場合、両端の支点間の距離が大きく、その距離のほぼ3乗に反比例して減少する曲げ剛性しか得られないという問題があり、その上更なる薄肉化を図るとすれば従来の剛性を保持することは非常に難しく、軽量化のための更なる薄肉化の余地が少ないという点である。
【解決手段】
パネルの長手方向にパネル内に挿入される全部のリーンフォースメントの長さ方向と、パネル内に一体に形成される少なくとも一本のリブの長さ方向をほぼ直交させることにより前記課題を解決した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂のブロー成形によって形成され、自動車のラゲッジスペースに使用されるリーンフォースパイプ付きデッキボード等のパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年自動車の軽量化への希求は大なるものがあり、ブロー成形製デッキボードもその目標達成のため樹脂部分の薄肉化を図ることが必須要件となってきた。
そのためインナーリブ等のリブを設け、更に剛性を補うためにリーンフォースパイプを該デッキボード内に挿入するなどしていた。
【0003】
この場合、該デッキボード内でリブとリーンフォースパイプとが相互干渉しないよう、またコストアップを避けるために両者の本数を節約すべく、共にデッキボードの長手方向にほぼ平行に配置するということが行われてきた。
このような、リーンフォースパイプ付きデッキボードに関する従来技術としては特許文献1に開示されているようなものがある。
【0004】
図1は従来のパネルの斜視図であり、一部を切り欠いて中空の内部が見えるようになっている。1はパネル、2は互いにほぼ平行な複数のインナーリブ、7はリーンフォースパイプ、11はパネル上面、12はパネル下面を示す。
該リーンフォースパイプ7は長さ方向が該パネル1の長手方向13にほぼ平行になるように該パネル1内に挿入されている。
ここでインナーリブとは、別名中実リブとも、隠しリブとも呼ばれ、中空成形において通常のリブを形成するためのコア型部材を、型締め直後にスライド機構等によってキャビティー内のパリソン中より引抜き、コア型部材が引抜かれた痕のパリソン中の空間を圧縮空気によって圧縮、押し潰し、融着固化させることで中実なリブを形成させるもので、広く公知である。
尚、図2は図1中の断面A−Aを表す。5は融着固化した融着面である。
【0005】
しかしながら、共にデッキボードの長手方向にほぼ平行に配置されているリーンフォースパイプとインナーリブであるから、長手方向の両端に支点があっても支点間の距離が大きく、曲げ荷重に対してその支点間の距離のほぼ3乗に反比例して減少する剛性しか得られないという問題があり、その上更なる薄肉化を図るとすれば従来の剛性を保持することは非常に難しく、特許文献1に開示されているような方法では軽量化のための更なる薄肉化の余地が少ないという欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−205686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
解決しようとする課題は、
リーンフォースパイプとインナーリブが共にデッキボードの長手方向にほぼ平行に配置されている場合、両端の支点間の距離が大きく、その支点間の距離のほぼ3乗に反比例して減少する剛性しか得られないという問題があり、その上更なる薄肉化を図るとすれば従来の剛性を保持することは非常に難しく、軽量化のための更なる薄肉化の余地が少ないという点である。本発明は上記の点を解決するためになされた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を果たすため本発明は、
熱可塑性樹脂のブロー成形によって形成されるパネルであって、該パネルの長手方向に該パネル内に挿入される全部のリーンフォースメントの長さ方向と、該パネル内に一体に形成される少なくとも一本のリブの長さ方向がほぼ直角であることを最も主要な特徴とする。
【0009】
また、リブがインナーリブであることを第2の主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、
デッキボードの長手方向にほぼ平行に全部のリーンフォースパイプを配し、更にリーンフォースパイプにほぼ直角方向にインナーリブを配したからインナーリブの方向は必然的にパネルの短手方向にほぼ平行となるので、その長さは比較的に短くなって、剛性は大きいものが得られるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】従来のパネルの一部を切り欠いた斜視図
【図2】図1中のA−A断面図
【図3】本発明に係る、パネルの一部を切り欠いた斜視図
【図4】本発明に係る、他のパネルの一部を切り欠いた斜視図
【発明を実施するための形態】
【0012】
従来のデッキボードの剛性を保持しながら更なる軽量化を図るという目的を、
デッキボードの長手方向にほぼ平行に全部のリーンフォースパイプを配し、更にリーンフォースパイプにほぼ直角な方向に少なくとも一本のインナーリブを配することによって、ブロー成形という安価な工法を用いて、経済性を損なわずに実現した。
【実施例1】
【0013】
本発明の構成を発明の実施の形態に基づいて説明すると次の通りである。尚、従来例と同一の符号は同一の部材を表す。
【0014】
図3は、本発明の1実施例を示すパネル1の一部を切り欠いた斜視図である。
全部の鋼製リーンフォースパイプ7の長さ方向が該パネル1の長手方向13にほぼ平行の向きになるように該パネル1内に挿入されており、また長さ方向が互いにほぼ平行な複数のインナーリブ3が該リーンフォースパイプ7にほぼ直角の方向に配されている。
ここで、「全部の鋼製リーンフォースパイプ7」とはリーンフォースパイプ7が1本しかない場合も包含するものとする。
【0015】
次に該パネル1の製造方法を説明する。該パネル1用の分割金型(図示せず)内に半溶融状態にあるポリプロピレン等の熱可塑性樹脂のパリソン(図示せず)を垂下させ該分割金型を型締めする。
【0016】
尚、該パリソンに適用される熱可塑性樹脂としてはポリプロピレンに限らず、ポリエチレンや他のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、シンジオタクチックポリスチレン、ポリスチレン、ゴム改質ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、変性ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンサルファイド、ポリカーボネート等、ブロー成形が可能な樹脂であれば何でも良い。また、該熱可塑性樹脂にガラス繊維、炭素繊維、ボロン繊維、硫酸カルシウム粉末、炭酸カルシウム粉末等を混錬させた複合材であってもよい。
【0017】
その後該パリソン内に圧縮空気を吹き込んでブローアップした後冷却して離型し、該パネル1内に該リーンフォースパイプ7を挿入する。
【0018】
尚、該リーンフォースパイプ7はパイプに限るものではなく、曲げ剛性の高い断面形状を有するリーンフォースメントであれば何でもよい。
その材質も該パネル1の素材の引っ張り弾性係数より高い引っ張り弾性係数を有しているものであれば、金属でも非金属でも何でもよい。
【0019】
このように形成された該パネル1は、長さ方向が該長手方向13にほぼ平行に全部の該リーンフォースパイプ7を配し、更に該リーンフォースパイプ7の長さ方向にほぼ直角の方向に該インナーリブ3を配したから該インナーリブ3の長さ方向は必然的に該パネル1の短手方向14となるのでその長さが比較的に短いため、該長手方向13に平行に配した場合に比べて曲げ荷重に対する剛性は大きいものとなる。
【0020】
以上実施例に述べたように本発明によれば、
リーンフォースパイプの長さ方向がデッキボードの長手方向にほぼ平行に全部のリーンフォースパイプを配し、更にインナーリブの長さ方向がリーンフォースパイプの長手方向にほぼ直角な方向にインナーリブを配したため、インナーリブの長さ方向が必然的にパネルの短手方向にほぼ平行となり、その長さは比較的に短く、曲げ荷重に対する剛性の大きなデッキボードが得られるという効果がある。
【0021】
尚、上記では全部のインナーリブ3がリーンフォースパイプ7にほぼ直角な方向に配置されている例を説明したが、図4に示すように少なくとも一本以上のインナーリブ3がリーンフォースパイプ7にほぼ直角な方向に配され、残りのインナーリブ2がリーンフォースパイプ7にほぼ平行に配されてもよい。
【0022】
また、上記ではインナーリブを例にとって説明したが通常のリブであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は、自動車のラゲッジスペースに使用されるリーンフォースパイプ付きデッキボード等に限るものではなく、熱可塑性樹脂のブロー成形によって形成されるパネルなら何にでも利用可能である。
【符号の説明】
【0024】
1 パネル
2 (長さ方向がパネルの長手方向にほぼ平行な)インナーリブ
3 (長さ方向がパネルの短手方向にほぼ平行な)インナーリブ
5 融着面
7 リーンフォースパイプ
11 パネル上面
12 パネル下面
13 (パネルの)長手方向
14 (パネルの)短手方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂のブロー成形によって形成されるパネルであって、パネルの長手方向にパネル内に挿入される全部のリーンフォースメントの長さ方向と、パネル内に一体に形成される少なくとも一本のリブの長さ方向がほぼ直角であることを特徴とするパネル
【請求項2】
請求項1におけるリブがインナーリブであることを特徴とする請求項1記載のパネル

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−228808(P2012−228808A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−97950(P2011−97950)
【出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【出願人】(503233130)株式会社アイテック (96)
【Fターム(参考)】