説明

パパイヤ発酵食品

【課題】ヒトの唾液と混ぜ合わせると、水と混ぜ合わせる場合に比べてマルトースとマルトトリオースが増加し、新たな生理活性を有するパパイヤ発酵食品を提供すること。
【解決手段】ヒトの唾液と混ぜ合わせると、水と混ぜ合わせる場合に比べ、マルトースとマルトトリオースが増加することを特徴とするパパイヤ発酵食品。2型糖尿病患者の血糖値の上昇を抑制する作用を有することを特徴とする前記のパパイヤ発酵食品。2型糖尿病患者の創傷の治癒を促進する作用を有することを特徴とする前記のパパイヤ発酵食品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パパイヤの未熟果を発酵させたパパイヤ発酵食品に関し、詳細にはヒトの唾液と混ぜると、水と混ぜ合わせる場合に比べ、マルトースとマルトトリオースが増加するパパイヤ発酵食品に関する。
【背景技術】
【0002】
パパイヤ(学名:Carica Papaya Linn)は、中南米を原産とするパパイヤ科(Papayaceae)に属する植物で、果実はトロピカルフルーツとして食用に供されている。パパイヤの有する生理活性について、例えば、ビフィズス菌を増殖する活性のあることが報告されている(特許文献1参照)。一方、発酵とは、微生物が食品や化学物質を有用な成分に変化を起こすことをいい、発酵を利用した飲食物は数多くあり、パパイヤについても、パパイヤに含まれる成分を有用な成分に変化させ、あるいはパパイヤに含まれる有用な成分を高めるべく発酵物の提案がある。例えば、パパイヤに乳酸菌を作用させることにより得られる発酵物で、チロシナーゼ阻害活性、リパーゼ阻害活性及び抗酸化活性を有する発酵物の提案がある(特許文献2参照)。また、高いヒドロキシルラジカル消去活性を有するパパイア果実発酵物及びパパイア加工食品の提案がある(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−23777号公報
【特許文献1】特開2006−75086号公報
【特許文献2】特開2008−200026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来、パパイヤの発酵物が、ヒトの唾液と混ぜ合わせると、水と混ぜ合わせる場合に比べてマルトースとマルトトリオースを増加させることについての報告はない。特許文献2は、パパイヤの発酵物が2型糖尿病患者の血糖値の上昇を抑制する作用や創傷の治癒を促進する作用を有することについての記載がない。特許文献3は、パパイア果実発酵物のヒドロキシルラジカル消去活性により2型糖尿病患者の諸症状の予防、改善に有効であるとの記載があるが、ヒドロキシルラジカル消去活性によるどのような作用で2型糖尿病患者の諸症状の予防、改善ができるのか明らかではなく、また、2型糖尿病患者の血糖値の上昇を抑制することについて具体的なデータも記載もない。さらに、創傷の治癒を促進する作用を有することについての記載がない。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みなされたもので、ヒトの唾液と混ぜ合わせると、水と混ぜ合わせる場合に比べてマルトースとマルトトリオースが増加し、新たな生理活性を有するパパイヤ発酵食品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するための発明は、ヒトの唾液と混ぜ合わせると、水と混ぜ合わせる場合に比べ、マルトースとマルトトリオースが増加することを特徴とするパパイヤ発酵食品を要旨とする。
【0007】
上記の発明において、パパイヤ発酵食品は、2型糖尿病患者の血糖値の上昇を抑制する作用及び創傷の治癒を促進する作用を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明のパパイヤ発酵食品は、経口摂取することにより唾液でマルトースとマルトトリオースが増加するので、該オリゴ糖により腸内環境を整える働きを期待できる。また、血糖値の上昇を抑制できるので、食品として毎日摂取することにより、2型糖尿病の改善を期待できる。さらに、2型糖尿病患者の創傷の治癒を促進する作用を有するので、食品として摂取することにより、創傷を治癒し難い2型糖尿病患者の創傷の早期の治癒を期待できる。本発明のパパイヤ発酵食品は、エネルギー源として必要な単糖を含んでいるにも拘わらず、上記の効果を奏するので、2型糖尿病患者にとって大きな福音となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】パパイヤ発酵食品の摂取の直前における値を100%とした、パパイヤ発酵食品の強制経口投与の開始8週間後の試験群と対照群の血糖値の%変化率を示すグラフである。
【図2】試験群と対照群のdb/dbマウスにそれぞれ創傷を作った後、7日経過後の創傷面を示す写真像である。
【図3】試験群と対照群のdb/dbマウスにそれぞれ創傷を作った後、0日経過後、3日経過後、7日経過後の創傷面積を示すグラフである。
【図4】db/+マウスとdb/dbマウスにそれぞれ創傷を作った後、7日経過後の創傷面を示す写真像である。
【図5】db/+マウスとdb/dbマウスにそれぞれ創傷を作った後、1日経過後、3日経過後、7日経過後の創傷面積比を0日経過後(創傷直後)の創傷面積に対する%で示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
パパイヤ発酵食品は、唾液と混ぜ合わせることにより水と混ぜ合わせる場合に比べ、マルトースとマルトトリオースが増加するものである。経口摂取することにより、該オリゴ糖が増加し腸内環境を整える働きが期待される。また、経口摂取することにより、2型糖尿病患者の血糖値の上昇を抑制する作用及び創傷の治癒を促進する作用を有する。
【0011】
パパイヤ発酵食品は、パパイヤの未熟果を糖と共に食用酵母菌で発酵させることにより製造される。パパイヤ発酵食品は、経口摂取に適するよう顆粒剤、散剤、細粒剤など種々の形態に適宜調製することができ、調製に際し、添加剤、例えば賦形剤、結合剤、滑沢剤など適宜加えることができる。
【0012】
上記のような特徴を有するパパイヤ発酵食品は、具体的には、株式会社大里ラボラトリーが製造し、株式会社大里インターナショナルが販売するもの(FPP/Fermented Papaya Preparation(登録商標)、Immun'Age(登録商標)、以下「FPP」ということがある)により容易に入手できる。また、当該FPPは、ISO9001:2000、ISO14001:2004、ISO22000:2005を取得しており、環境面、安全面及び品質面で保証がされている。
【実施例】
【0013】
次いで、本発明を実施例を挙げて説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0014】
〔実施例1〕(パパイヤ発酵食品と唾液の混合の検討)
19名のボランティアの口内を水で洗浄した後(紙コップ(90ml容)×5回)、パパイヤ発酵食品(FPP)3gを口内で唾液とよく混ぜ合わせた。口内で混ぜ合わせたFPPと唾液を新たな紙コップに回収し、また口内の甘みが感じられなくなるまで唾液を同じ紙コップに回収した。その後水で口内をよく洗浄し(紙コップ(90ml容)×5回)、その洗浄した水も先に回収した試料の中に回収した(試料1)。活性炭:セライト(1:1)を水 20L、EtOH 2Lで洗浄したものを活性炭充填剤とした。桐山ロートに専用の濾紙を敷き、活性炭充填剤を充填(厚さ2cm)したものをプレカラムとした。先の試料1をプレカラムに付し、水 150ml、EtOH 150mlで抽出し、一つにまとめ濃縮した試料(試料2)の重さを測定した。
活性炭充填剤20gを充填したカラム(30mm×300mm)に少量の水に溶解した試料2を付し、二連球ゴムで加圧し水 3L、EtOH 4Lの順に抽出した。抽出した水画分及びEtOH画分をそれぞれ濃縮しHPLC分析を行った(FPP+唾液試料:以下、「FS」という)。比較対照として、3gのFPPを乳鉢ですり潰した後、水を加えて溶かした試料についても同様の方法で抽出及びHPLC分析を行った(FPP+水試料:以下、「FW」という)。確認のため、唾液のみ15ml回収し同様の方法で抽出及びHPLC分析を行った(唾液試料:以下、「S」という)。
結果は表1に示した。
HPLC分析条件は以下の通りである。
カラム;Asahipak NH2P5E-4、溶媒;アセトニトリル:水=75:25、流速;0.6ml/min、温度;30℃、検出器;RI
【0015】
【表1】

【0016】
表1に示されるように、FPPは唾液と混ぜ合わされることによりマルトースとマルトトリオースが増加すること、特にマルトトリオースは顕著に増加することが確認された。FSをFWと比較すると、FSでマルトースは約2.3倍、マルトトリオースは約12.8倍に増加していた。Sには、FPP中に存在する糖質は検出されていないことから、マルトースとマルトトリオースの増加はFPPと唾液が混合することによって起こる現象と考えられる。
【0017】
〔実施例2〕(パパイヤ発酵食品の血糖値の上昇を抑制する作用の検討)
2型糖尿病モデル動物のdb/dbマウスの40匹を試験群(20匹)と対照群(20匹)に用い、パパイヤ発酵食品の血糖値の上昇を抑制する作用について検討を行った。試験群は、パパイヤ発酵食品(FPP)を0.2mg/1g体重当て8週間(1週間に5日間投与)に亘り強制経口投与を行った。また、対照群は、パパイヤ発酵食品中に存在するグルコースの作用と調整するため、パパイヤ発酵食品中に存在するグルコース量をHPLCにより測定し、これに相当する量のグルコースを対照としてdb/dbマウスに8週間(1週間に5日間投与)に亘り強制経口投与を行った。
【0018】
FPPの強制経口投与の直前、強制経口投与の4週後、8週後にdb/dbマウスから血液を採取し血糖値の測定を行った。血糖値の測定は、グルコース酸化酵素法で行った。結果は、図1に示した(平均値±SD(n=20)、 *p<0.05VS対照)。
【0019】
図1に示されるように、試験群の血糖値の上昇は、対照群に比べ有意に抑制されていた。
【0020】
〔実施例3〕(パパイヤ発酵食品の創傷の治癒を促進する作用の検討)
実施例2の〔パパイヤ発酵食品の血糖値の上昇を抑制する作用の検討〕でパパイヤ発酵食品(FPP)を8週間に亘り強制経口投与したdb/dbマウスの試験群20匹の内8匹、対照群20匹の内8匹の各背部に、6mmの生検パンチを使ってそれぞれ全層創傷を作り、パパイヤ発酵食品の創傷の治癒を促進する作用の検討を行った。創傷は、二次治癒(組織欠損のある創傷の治癒形式で、まず肉芽が盛り上がって創傷は縮小し、表皮の増生により創傷は閉鎖すること)によって塞がるまで放置した。創傷は、0日経過後(創傷直後)、3日経過後、7日経過後にそれぞれ撮影した。創傷面積は、ImageJソフトウエア採用のデジタル面積測定器を使用した。結果は、図2及び図3(平均値±SD(n=8)、 *p<0.05VS対照群)に示した。また、正常マウスのdb/+マウスとdb/dbマウスの創傷の治癒経過について検討をするため、db/+マウス8匹とdb/dbマウス8匹について、同様に全層創傷を作り、FPP又はグルコースを投与させることなく通常の飼料で生育し、0日経過後(創傷直後)、1日経過後、3日経過後、7日経過後の創傷面積を同様に測定した。結果は図4及び図5に示した。
【0021】
図4及び図5に示されるように、db/dbマウスはdb/+マウスに比べ、創傷の治療経過が著しく低下していた。
【0022】
図2及び図3に示されるように、試験群の創傷面積は、対照群に比べ有意に縮小し、試験群による創傷の治癒の促進は顕著であった。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明のパパイヤ発酵食品は、経口摂取によりマルトースとマルトトリオースが増加し、該オリゴ糖による腸内環境を整える働きを期待でき、また2型糖尿病患者の血糖値の上昇を抑制する作用及び創傷の治癒を促進する作用を有し、健康食品として有用性がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトの唾液と混ぜ合わせると、水と混ぜ合わせる場合に比べ、マルトースとマルトトリオースが増加することを特徴とするパパイヤ発酵食品。
【請求項2】
2型糖尿病患者の血糖値の上昇を抑制する作用を有することを特徴とする請求項1に記載のパパイヤ発酵食品。
【請求項3】
2型糖尿病患者の創傷の治癒を促進する作用を有することを特徴とする請求項1に記載のパパイヤ発酵食品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−41478(P2011−41478A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−189901(P2009−189901)
【出願日】平成21年8月19日(2009.8.19)
【出願人】(509233644)株式会社大里インターナショナル (1)
【Fターム(参考)】