説明

パラアミノフェノールの単一工程での触媒による調製

本発明は、パラアミノフェノールの1工程での調製のための2機能触媒の使用に関し、該触媒は水素添加貴金属触媒および硫酸ジルコニウムの混合物を含んでいる。また、本発明は、前記の2機能触媒を用いた、水性媒体中での、ニトロベンゼンからのパラアミノフェノールの改善された単一工程での調製方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パラアミノフェノールの単一工程での調製のための2機能触媒の使用に関する。また、本発明は、改善された単一工程での2機能触媒によるパラアミノフェノールの調製方法に関する。より詳しくは、本方法は、2機能で、環境に優しい触媒を用いた、水性媒体中でのニトロベンゼンからのパラアミノフェノールの調製に関する。
【背景技術】
【0002】
パラアミノフェノール(以下の明細書中では「p−アミノフェノール」もしくは「PAP」)はよく知られており、そして非常に有用な工業的化学物質である。これは例えば、医薬、例えばパラセタモールの製造において、染料、例えば硫化染料の製造において、そして写真用の化学薬品の製造において、中間体として用いられる。
【0003】
p−アミノフェノールの酢酸でのアシル化によるパラセタモールの合成が、例えば米国特許第6215024号明細書中に報告されている。最も困難な工程は、PAPの合成である。これは工業的には2工程:ニトロベンゼンのフェニルヒドロキシルアミンへの水素添加、これに続くPAPへの異性化、で成し遂げられている。
【0004】
従来は、PAPは、パラニトロクロロベンゼンをパラニトロフェノールへと加水分解することによって調製されている。パラニトロフェノールのPAPへの水素添加が、次いでFe/HCl触媒を用いて行なわれる。この多工程式の方法は非常に大量の鉄(触媒前駆体)を必要とする。従って、鉄−酸化鉄スラッジの生成は、大きな、深刻な排出物を生成する問題である。反応未精製品の後処理は厄介である。用いられる鉄の量は、より速い還元速度のために非常に重要である。
【0005】
パラアミノフェノールの調製の重要な商業的方法としては、担持された白金を主成分とする触媒を用いた、酸性媒体中でのニトロベンゼン(「NB」)の、触媒による水素添加が挙げられる。この方法では、フェニルヒドロキシルアミン(「PHA」)が最初に形成され、そしてこの中間体は、酸の存在の下で、よく知られたバンベルガー転位によって、直ちにPAPへと転位する。しかしならが、これらの条件下では、副生成物として著しい量のアニリンが生成される。
【0006】
最初の改善はRylanderら(独国特許第2118334号明細書)によって発表されており、ニトロベンゼンおよびPt/C触媒(5%Pt)を含む反応媒体へのジメチルスルホキシド(DMSO)の添加によってアニリン生成の同時発生の反応を抑制することに基づいている。硫酸(HSO)溶液中で行われるこの反応はPAPを生じている。
【0007】
Ryong Ryooらによる最近の研究は(Stud. Surf. Sci. Cat,、第135巻、2001年、p.4710)、高表面積のメソ多孔性炭素上の5%Ptが有利であり、そしてHSO溶液中で行われる反応において、PAPへの72%の選択率とニトロベンゼンの81%の転化に達することが可能であることを報告している。この反応の動力学がRode、VaidyaおよびChaudhariによって研究され、そしてモデル化されている(Org. Proc. Res. Devel.,、第3巻、第6号、1999年、p.465〜470)。
【0008】
Caskeyら(欧州特許第85890号明細書および欧州特許第85511号明細書)は、同じPt/C触媒で、DMSOをジエチルスルフィドで置き換え、そして2工程での反応を行なったが、1段目は18〜20℃で、DMSOおよびNHの存在下で、2段目は70℃でのHSOによるフェニルヒドロキルアミンの異性化からなっている。PAPへの選択率は90%に達している。
【0009】
Leeら(米国特許第4885389号明細書)は、有機酸の使用を報告しており、比較的に低い結果である。Mecalf(米国特許第4051187号明細書)は、ロジウム触媒の使用を報告している。Le Ludec(米国特許第3927191号明細書)は、塩基性添加物、例えばピリジンの存在の下でのニトロ芳香族化合物のヒドロキシルアミンへの選択的水素添加を報告している。Sharma(米国特許第5166435号明細書)はニトロ芳香族化合物をヒドロキシルアミンへと選択的に水素添加するのにホスフィンまたは亜リン酸塩を用いている。
【0010】
Dunn(米国特許第4264529号明細書)は、PAPを生成するためのニトロベンゼンの水素添加のために、硫酸とともにγ−アルミナ上の白金の使用することを報告している。Derrenbacker(米国特許第4307249号明細書)は、気液界面を増大させるために反応媒体に界面活性剤を加えている。Klausener(米国特許第5545754号明細書)は、硫酸および混合可能な有機溶媒を含む反応混合物を用いている。
【0011】
ニトロベンゼンのp−アミノフェノールへの転化のための、純粋な不均一触媒を用いる最初の試みは、Chaudhariら(米国特許第6028227号明細書)によるものであり、彼らは酸性樹脂からなる固体酸によって担持された白金触媒を用いた。p−アミノフェノールの調製は単一工程で達成されている。しかしながら、ニトロベンゼンの転化率が高い(97%)場合には、PAPの選択率は低く(15%)、そしてアニリンの選択率は85%であった。この著者らは、イオン交換樹脂、ヘテロポリ酸、合成および天然酸性クレイ、ならびに酸性ゼオライト、主にケイ素−アルミン酸塩およびゼオライトからなる群から選ばれる多くの固体酸を特許請求している。ニッケル触媒を用いると、転化率は14%に、そして選択率は14%に低下する。また、同じ著者らはニトロフェノールのPAPへの選択的水素添加を報告している(Org. Proc. Res. Dev.、第7巻、2003年、p.202)。
【0012】
Komatsuら(Applied Catalysis、第276巻、2004年、p.95〜102)は、酸性ゼオライト上に担持された金属粒子からなる固体触媒を用いることによるp−アミノフェノールの合成のための気相での方法を報告している。H−ZSM−5ゼオライトを用いることによって、選択率は66%である。しかしながら、アニリンおよびo−アミノフェノールがこの反応の副生成物として記述されている。
【0013】
今までに報告されている不均一触媒を用いる全ての試みは、収率および選択率が低いために期待に反するものである。これらの文献に報告されている、ニトロベンゼンのp−アミノフェノールへの水素添加のために用いられる触媒は、Pt、Pd、RuおよびPtOである。しかしながら、これらの触媒の中では、この系ではPtが最も活性であるが、しかしながらこれは非常に高価である。これらの全ては貴金属であるために、この方法は高コストになる。また、この方法を経済的にするために、この方法では、同じ触媒を数回使用し、また不活性化された触媒からこの金属を回収することが必要となる。
【0014】
更に、これらの方法では、固有の欠点は、過剰の硫酸の使用であり、これは中和を必要とし、反応の最後に莫大な量の塩を生成する。従って、反応媒体は高度に腐食性であり、そして特殊鋼の反応器を用いることが必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の第1の目的は、高いNB転化率およびPAPへの高い選択率を備えた、単一工程での、ニトロベンゼン(NB)のフェニルヒドロキシルアミンへの水素添加およびパラアミノフェノール(PAP)への異性化方法で使用するための2機能触媒を提供することである。
【0016】
本発明の他の目的は、2機能不均一触媒を用いたp−アミノフェノールの単一工程での調製方法に関し、この中では希硫酸は固体酸によって置き換えられている。
【0017】
Songら(Catalysis Review: Science and Engineering、第38巻、第2号、1996年、p.329〜412)は、硫酸溶液の置換のための固体触媒として、硫酸ジルコニウムの使用を報告している。それにもかかわらず、これらの著者らはニトロベンゼンからパラアミノフェノールへの1工程反応のためのこれらの触媒の使用を報告していない。
【0018】
他の目的は、パラアミノフェノールへの選択率を増加し、そしてニトロロベンゼンの高い転化率を維持することである。
【0019】
また、本発明は、低い水素添加貴金属含有量、例えば低い白金含有量を備えた触媒を提供すること、および非腐食性の反応媒体を用いて、それにより反応器への特殊鋼の使用を回避すること、そして環境に優しく、そして安価な溶媒を用いること、を目的とする。
【0020】
更なる他の目的は、調製すること、そして再生することが容易な酸性触媒を用いることである。
【0021】
更なる目的は、以下の本発明の説明に中に現れるであろう。上記の全ての目的は、本発明の全体または一部において達成される。
【課題を解決するための手段】
【0022】
第1の目的として、本発明は、ニトロベンゼンのパラアミノフェノールへの1工程反応のための2機能触媒の使用を提供し、この2機能触媒は水素添加貴金属の硫酸ジルコニウムとの混合物を含んでいる。
【発明の効果】
【0023】
本発明者らは、ここにニトロベンゼン(NB)からのPAPの調製は、担持された水素添加貴金属および硫酸ジルコニウムを含む、特定の固体酸性触媒を用いた場合に、NBの良好な転化率およびPAPの良好な選択率を与えることを見出した。
【発明を実施するための形態】
【0024】
実際に、硫酸ジルコニウムはフェニルヒドロキシルアミンのPAPへの異性化に触媒的活性があることが本発明者らによって見出され、一方で、水素添加貴金属はNBのフェニルヒドロキシルアミンへの水素添加反応を触媒することが知られている。
【0025】
本発明の特徴によれば、担持された水素添加貴金属および硫酸ジルコニウムは反応媒体中に、混合物の形態で、触媒として存在している。「混合物」との表現は、機械的な混合物を表し、そして水素添加貴金属および硫酸ジルコニウムは、反応媒体中へ、個別に、または予備混合されたものとして加えられることを意味している。
【0026】
炭素に担持された硫酸ジルコニウムは、エステル化反応のための効果的な耐水性の固体酸性触媒として記載されている(Catalysis Letters、第117巻、第3〜4号、2007年9月)。
【0027】
また、硫酸ジルコニウムは、米国特許出願公開第2004/0028589号明細書中に記載されているように、ガス流を酸化するための方法において用いられる高性能触媒を調製するために、白金族からの貴金属がその上に堆積されたAlからなる担体物質を活性化するのに用いられている。
【0028】
硫酸ジルコニウムは、購入するか、または以下の明細書中に更に記載される方法に従って調製することができる。この方法もまた本発明の一部である。
【0029】
本発明で用いられる硫酸ジルコニウムは、好ましくは結晶化状態にあり、そして2m/g〜300m/gの範囲、好ましくは2m/g〜100m/gの範囲、より好ましくは1m/g〜50m/gの範囲、例えば約3.5m/g〜10cm/gの比表面積を示す。
【0030】
硫酸ジルコニウムの細孔容積は、通常は0.6cm/g以上、好ましくは0.2cm/g以上、より好ましくは0.25cm/g以上である。その平均細孔直径は、通常は20オームストロング以上、好ましくは30オングストローム以上である。
【0031】
上記の特徴の全ては、当技術分野で既知の方法を用いて測定される。そのようなものとしては、表面積は、窒素の吸着の等温式のBET分析を用いて測定され、細孔容積はP/P0=0.98で吸着される容積に相当し、そして細孔直径は、例えば、Elliott P. Barrett、Leslie G. JoynerおよびPaul P、「多孔性物質中の細孔容積および面積分布の測定、1.窒素等温式からの計算(The Determination of Pore Volume and Area Distributions in Porous Substances. I. Computations from Nitrogen Isotherms)」、J. Am. Chem. Soc,、第73巻、第1号、1951年、p.373〜380)に記載されているように、BJH理論を用いた等温式の分析によって測定される。
【0032】
必須ではないけれども、有利には、硫酸ジルコニウムは、用いる前に、か焼によって活性化される。か焼の温度は、400℃〜700℃、好ましくは450℃〜650℃の範囲、例えば約550℃である。か焼は空気中で、最も好ましくは1〜2℃/分の温度上昇で行なわれる。
【0033】
Berkら(英国特許出願公開第610549号明細書)は、ジルコニウム源を硫酸溶液中に溶解することによる塩基性硫酸ジルコニウムの調製を報告している。
【0034】
硫酸ジルコニウムは、ジルコニア(商業的に入手できるもの、もしくは以下に規定するように調製されたもの)、または例えば、塩化ジルコニルもしくはオキシ塩化ジルコニル、酢酸ジルコニウム、ジルコニウムアルコキシドなどの中から選ばれるジルコニウム塩を、硫酸の濃厚溶液(例えば、1N水溶液)中に溶解することによって得ることができる。ジルコニアは、例えば酸性溶液中に浸漬して、数分間、好ましくは5〜30分間、例えば15分間、完全に溶解するまで、攪拌することができる。
【0035】
ジルコニア/硫酸比は変えることができ、通常は過剰の硫酸が用いられる。1gのジルコニアを15mlの1N硫酸と接触させることによって満足な結果が得られる。
【0036】
次いで、硫酸ジルコニウムはろ過され、そして脱イオン水で数回洗浄され、そして乾燥炉(約80〜120℃)中で一晩乾燥される。
【0037】
最後に、硫酸ジルコニウムは特定の直径寸法、通常は60〜100メッシュ、例えば約80メッシュに篩分けられ、そして場合によっては所望の温度、通常は450℃〜750℃の範囲、好ましくは500〜700℃の範囲に含まれる温度で、1〜2℃/分の温度上昇で、か焼される。
【0038】
Fuら(米国特許出願公開第2005/0175525号明細書)は、ジルコニア(ZrO)の調製方法において、60℃超の温度で沈殿物を熟成する工程を報告している。
【0039】
硫酸ジルコニウムは、例えばジルコニアを硫酸中に溶解することによって調製され、このジルコニアは以下の工程、i)二酸化ジルコニウム(ジルコニア)前駆体を水中に溶解させる工程、ii)この前駆体を、通常は9以上、有利には10の一定のpHで、塩基性媒体中で、加水分解させて、ジルコニアを沈殿物として与える工程、iii)この沈殿物を、50℃〜100℃、好ましくは70℃〜90℃の範囲の温度で熟成させる工程、iv)この熟成させた沈殿物を分離して、そして水で洗浄する工程、ならびにv)得られたジルコニアを乾燥し、粉末化し、そして篩分けする工程、を含む下記の方法に従って調製することができる。
【0040】
上記の調製方法では、ジルコニア前駆体は、塩基性媒体中で水と接触した場合に、それが水酸化ジルコニウムに転換されるのであれば、当技術分野で知られているいずれの種類であってもよい。このような前駆体は、例えば塩化ジルコニルもしくはオキシ塩化ジルコニル、酢酸ジルコニウム、ジルコニウムアセチルアセトナート、ジルコニウムアルコキシドなどの中から選ぶことができる。
【0041】
ジルコニア前駆体が加水分解を受けるのに用いることができる適切な塩基は、有利には強有機もしくは無機塩基、好ましくは無機塩基であり、そのため反応媒体のpHは9以上、好ましくは10である。このような塩基の例としては、水酸化アンモニウム、水酸化ナトリウムもしくはカリウム、それらの混合物などが挙げられるが、これらには限定されない。
【0042】
次いで、加水分解生成物は、50℃〜100℃、好ましくは70℃〜90℃の範囲の温度、例えば80℃で一晩熟成される。この沈殿物は、次いで慣用の方法(ろ過、遠心分離など)に従って分離され、そして熱水で、数回洗浄される。
【0043】
工程v)において、この沈殿物は、例えば乾燥炉中で、50℃〜100℃、好ましくは70℃〜90℃の範囲の温度、例えば80℃で、1〜3日間、例えば36〜48時間、乾燥される。最終的に、ジルコニアは粉末化され、通常は粉砕機中で粉砕され、そして直径寸法、好ましくは60〜100メッシュ、典型的には約80メッシュに、既知の方法に従って篩分けられる。
【0044】
従って、本発明はまた、以下の工程、a)二酸化ジルコニウム(ジルコニア)前駆体を水中に溶解させる工程、b)この前駆体を加水分解させて、通常は9以上、有利には10である一定のpHの塩基性媒体中で、ジルコニアを沈殿物として与える工程、c)この沈殿物を、50℃〜100℃、好ましくは70℃〜90℃の範囲の温度で熟成させる工程、d)この熟成した沈殿物を分離し、そして水で洗浄する工程、e)結果として得た水和ジルコニアを硫酸と接触させる工程、f)この沈殿物を酸性媒体中に溶解させる工程、g)硫酸ジルコニウムの沈殿物が生成されるまで、反応媒体中から水を除去する工程、およびh)得られた硫酸ジルコニウムを乾燥する工程、を含む硫酸ジルコニウムの調製方法に関する。
【0045】
上記の調製方法では、前述の通り、ジルコニア前駆体は当技術分野で既知のいずれかの種類であることができる。このジルコニア前駆体に加水分解を受けさせる適切な塩基もまた上述の通りである。
【0046】
工程e)では、沈殿物は適切な量の硫酸、通常は、約1〜2gの水和ジルコニアに対して約1mlの濃硫酸、と接触させる。この混合物は、有利には沈殿物が溶解するまで攪拌される。完全な溶解が必須であり、そしてほとんどの沈殿物が溶解した時に、混濁した溶液が得られる。
【0047】
完全な溶解の後に、例えばロータリ蒸発器中で、約80℃の温度で、沈殿が得られるまで、水が溶液から取り除かれる。沈殿した硫酸ジルコニウムは収集され、そして約120℃の温度で、2、3時間の間、約5〜24時間、例えば10〜18時間、乾燥される。
【0048】
最後に、硫酸ジルコニウムは、固体触媒の技術分野の当業者によって既知の従来の条件の下で、例えば450℃〜750℃、好ましくは500℃〜700℃、より好ましくは550℃〜650℃の範囲の温度で、有利には約625℃の温度で、2〜8時間、例えば4時間の、気流中でのか焼によって活性化することができる。
【0049】
上記の方法で得られた硫酸ジルコニウムは、NBからのPAPの単一工程での調製に特に好ましく、それはこの明細書中で更に説明される。
【0050】
前述したように、本発明の方法において、硫酸ジルコニウムは、触媒量の水素添加貴金属とともに、触媒として用いられる。
【0051】
「水素添加貴金属」との表現は、触媒による水素添加反応用として当技術分野で知られているいずれかの貴金属を意味し、そして好ましくはニトロベンゼン(NB)のフェニルヒドロキシルアミン(PHA)への水素添加方法において従来用いられているものを意味する。
【0052】
従って、「水素添加貴金属」としては、白金、パラジウム、ルテニウム、二酸化白金、ニッケルなどの単独または混合物が挙げられる。好ましくは、本発明の方法で、硫酸ジルコニウムとともに用いられる「水素添加貴金属」は、白金およびパラジウムまたはそれらの混合物から選ばれ、より好ましくは「水素添加貴金属」は白金である。
【0053】
水素添加貴金属は、当技術分野で知られているいずれかの形態のように、例えば粉末で用いることができる。好ましくは、水素添加貴金属は担持された触媒として用いられる。この場合において、本発明者らは、担体は、NBからPAPへの転化の予見される反応のためのいずれかの種類のものでよいこと、すなわち、担体の性質は、前記の反応の転化率および選択率に、全く影響しないか、またはほとんど影響しないことを立証した。
【0054】
従って、都合のよい水素転化貴金属用の担体は、任意の種類のものであり、そして例としては、そして限定する訳ではないが、炭素、硫酸化ジルコニア、ジルコニア、二酸化チタン、硫酸化二酸化チタン、アルミナ、シリカ、マグネシウムおよびランタンの混合酸化物など、ならびにこれらの担体の混合物から選ばれる。
【0055】
例えば、水素添加貴金属が白金である場合には、Pt/C、Pt/ZrS、Pt/ZrO、Pt/TiO、Pt/Al、Pt/SiO、またはPt/MgLaOおよびそれらの混合物などの、種々の種類の担持された白金が言及される。
【0056】
このような担持された白金は、既知の技術、例えばJ. P. Brunelle、Pure & Applied Chemistry、第50巻、1978年、p.124またはC. MarcillyおよびJ. P. Franck、Revue lnstitut Francais du Petrole、第39巻、1984年、p.337に開示されているものに従って調製することができる。更に、種々の担体上に担持された白金の具体的な調製が、本明細書の以下の例の中に示されている。
【0057】
担体中の水素添加貴金属の量は、水素添加金属自体および担体の性質によって、大幅に変わる可能性がある。このような使用に適した量は、当業者には知られている。
【0058】
例示のために、そして限定するものではない例として、担持された触媒中の白金の含有量は、担持された触媒の0.01〜10質量%の範囲、好ましくは0.1〜5質量%の範囲、例えば0.1質量%、0.2〜2質量%、または5質量%である。
【0059】
NBからPAPを調製するのに用いられる触媒は、硫酸ジルコニウムと担持された水素添加貴金属との混合物を含んでおり、そして好ましくは、それらからからなっている。水素添加貴金属が白金である場合には、NBからPAPを調製するのに用いられる触媒は、好ましくは、Zr(SO(HO)+Pt/C、Zr(SO(HO)+Pt/ZrS、Zr(SO(HO)+Pt/ZrO、Zr(SO(HO)+Pt/TiO、Zr(SO(HO)+Pt/Al、Zr(SO(HO)+Pt/SiO、Zr(SO(HO)+Pt/MgLaOおよびそれらの混合物である。
【0060】
硫酸ジルコニウムの水素添加貴金属に対する質量比もまた、水素添加触媒(水素添加貴金属)は、異性化触媒(硫酸ジルコニウム)の量と比較して可能な限り少なくなければならないことに留意しながら、大幅に、例えば100:1〜1:100、好ましくは100:1〜1:10、より好ましくは75:1〜1:5、有利には50:1〜1:2の範囲で変わる可能性がある。
【0061】
理論によって束縛されることは意図しないが、水素添加反応および異性化反応はNBからPAPへのワンポット転化の間に競争すると想定される。第1の反応はやや早く進行する一方で、第2の反応はより遅い。過剰の量の水素添加触媒が存在している場合には、PHAをPAPに転化する異性化反応が起こり得る前に、水素添加反応は中間体のPHAをアニリンへと更に水素添加する傾向にある。
【0062】
従って、当業者は日常的な実験で、水素添加貴金属の硫酸ジルコニウムに対する適切な比率を決定することができる。例えば、用いられる触媒が硫酸化ジルコニア上に担持された2%の白金を備えた硫酸ジルコニウムである場合は、硫酸ジルコニウムの硫酸化ジルコニア上の白金に対する質量比は、100:1〜1:10、より好ましくは75:1〜1:5、有利には50:1〜1:2の範囲であることができる。以下の例は、幾つかの都合によく用いることができる硫酸ジルコニウムの担持された白金に対する比率を与えている。
【0063】
他の例として、パラジウムが白金の所で用いられた場合には、パラジウムの量は約5〜30倍多い、何故ならば、ここで記載された方法では、パラジウムの活性は白金の活性に比較してより弱いからである。
【0064】
本発明者らは、硫酸ジルコニウムの水素添加貴金属、例えば担持された白金またはパラジウムを主成分とする触媒との混合物の使用は、ニトロベンゼンから出発したパラアミノフェノールの調製プロセスにおいて、NBの転化率およびPAPへの選択率に関して非常に効率的であることを立証した。
【0065】
従って、本発明は、更なる目的として、不均一酸性触媒を用いた、環境に優しいPAPの合成のための1工程での方法を提供するものである。この方法は、硫酸の使用および硫酸塩の形成を回避し、そして非常に少量のみの水素添加貴金属を必要とする。この触媒は、上記で規定したように、硫酸ジルコニウムの水素添加貴金属、例えば白金またはパラジウムなど、との混合物を含む。
【0066】
溶媒は水であり、そしてPAPの選択率は95%以上に達する。生成物の分離は2つの要因(選択率が高いこと、および硫黄もしくはアミン添加剤が必要でない)のために単純化される。
【0067】
より具体的には、本発明は、以下の工程を含むパラアミノフェノールの調製のための単一工程での方法を提供する。
A)ニトロベンゼンと水との混合物を、水素添加貴金属と硫酸ジルコニウムとの混合物を含む、そして好ましくは水素添加貴金属と硫酸ジルコニウムとの混合物からなる2機能触媒と接触させる工程、
B)反応混合物を水素圧の下に配置する工程、
C)反応を起こさせる工程、
D)反応を停止させて、パラアミノフェノールを含む反応混合物を得る工程、および
E)反応混合物からパラアミノフェノールを分離および回収する工程。
【0068】
本発明の方法は、以下の記載によって詳述されるが、しかしながらそのようなしょうさいによって決して限定されるものではない。
【0069】
上記の方法で用いられる水素添加貴金属は、本明細書において先に述べた通りである。好ましくは、水素添加貴金属は、担持されたもしくはされていない、白金またはパラジウムである。より好ましい態様では、水素添加貴金属は担持された白金であり、そして例えば、Zr(SO(HO)+Pt/C、ZrS+Pt/ZrS、Zr(SO(HO)+Pt/ZrO、Zr(SO(HO)+Pt/TiO、Zr(SO(HO)+Pt/Al、Zr(SO(HO)+Pt/SiO、Zr(SO(HO)+Pt/MgLaOおよびそれらの混合物から選ぶことができる。
【0070】
本発明による方法は、ニトロベンゼン(NB)が水と、50:1〜1:50、好ましくは50:1〜1:1、更に好ましくは40:1〜3:1の範囲の体積比(水/NB)で混合される、第1の工程A)を含む。
【0071】
有利には、この体積比(水/NB)は15:1〜3:1の範囲である。
【0072】
本方法は、PAPの選択率を向上させるための、従来技術の中に開示されている(例えば、Rylanderらの米国特許第3715397号明細書を参照)ような、ジメチルスルホキシド(DMSO)の使用を排除しない。しかしながら、本方法の反応混合物中にはDMSOは必須ではなく、NBの良好な転化率ならびにPAPの良好な選択率はDMSOの使用なしで得られる。
【0073】
反応混合物中にDMSOが存在する場合には、NB/DMSOの体積比は通常は、2:1〜1:1の範囲である。1つの態様では、DMSOが反応混合物に加えられる。他の態様では、本発明の方法にはDMSOは用いられない。
【0074】
また、NBからのPAPの調製は、通常はアルコール溶媒中で行われる(例えば、Rylanderら、米国特許第3964509号明細書を参照)。しかしながら、アルコールはそこで用いられる固体酸性触媒に有害な作用を有する可能性があるので、アルコールは本発明の方法には適切ではない。
【0075】
また、固体触媒(水素添加貴金属)および液相の間の交換の表面を改善し、そしてその結果全体の反応プロセスを加速するために、反応混合物中での界面活性剤の使用(例えば、米国特許第3383416号明細書中で開示されている)に言及することができる。しかしながら、このような使用は、可能ではあるけれども、好ましくない、何故ならば、得られた生成物(PAP)からの界面活性剤の完全な除去は相当に時間の掛かる操作であるからである。
【0076】
前述の通り、ニトロベンゼン、水および所望によるDMSOの混合物に、水素添加貴金属の硫酸ジルコニウムとの混合物が加えられる。
【0077】
白金が水素添加貴金属である場合には、NB/白金比(体積/白金質量)は通常は、1〜600の範囲、好ましくは10〜300の範囲、より好ましくは15〜150の範囲、例えば15、30、45、50または60、有利には60である。
【0078】
NB/硫酸ジルコニウム比(体積/質量)は通常は、1〜50の範囲、好ましくは2〜30の範囲、より好ましくは3〜15の範囲、例えば3、6、9または15である。
【0079】
次いで、反応媒体は慣用の水素添加条件、例えば1〜50バール、好ましくは2〜35バール、より好ましくは3〜20バールの範囲の水素圧、通常は10バールの水素圧の下でオートクレーブ中に置かれる。反応温度は、反応の動力学に応じて、10℃〜約200℃の範囲で変えることができる。好ましくは、反応温度は50〜100℃、例えば80℃に調節される。
【0080】
水素圧、反応温度および試薬と触媒の量によって、この反応は10分間〜8時間の間、通常は2〜7時間の間進行することができる。
【0081】
この反応の進行は、反応混合物から試料を取り、そして分析することによって監視される。反応の完結後に、反応混合物はオートクレーブから取り出され、そして慣用の技術、例えばろ過を用いて固体触媒は液体から分離される。次いで、ろ液は当業者に知られている通常の方法によって、例えばトルエン、シクロヘキサン、酢酸エチルなどを含む群から選ばれる有機溶媒で、抽出される。
【0082】
反応混合物の有機溶媒での抽出および水性層の分離の後に、後者はアンモニア溶液で処理されて、溶液のpHを3〜4に調整され、ここでPAPが部分的に沈殿する。このように得た固体はろ過によって分離される。再度、ろ液は有機溶媒で抽出され、そして水性層はアンモニア溶液でpH7〜8に処理されて、PAPが実質的に沈殿する。第1および第2の抽出の後に、このようにして得られた全体の固体は、蒸留水で洗浄され、乾燥され、そして秤量される。
【0083】
本発明の方法の種々の態様によって、ニトロベンゼンの転化率は30〜97%の範囲、そしてパラアミノフェノールの選択率は60〜99%の範囲である。
【実施例】
【0084】
本発明は、以下の例の援けをもって更に説明されるが、これらの例は説明の目的のみで与えられるものであり、そして本発明の範囲を限定しようと意図ものでは決してない。
【0085】
実験の部
パートA、触媒の調整
例A1:ジルコニアの調製
48gの塩化ジルコニル(ZrOCl.XHO、MW:322.249)を375mLの水中に溶解した。機械的な攪拌機およびオンラインpH測定のためのpH電極を装備した、3L丸底フラスコ中で沈殿を行なった。
【0086】
脱イオン水(500mL)を、最初に攪拌機およびpH電極の先端が水中に浸されるように、このフラスコに加えた。pHを、水酸化アンモニウム溶液を加えることによって、10に調整した。
【0087】
水酸化ジルコニウムが、水酸化アンモニウムの援けにより、一定のpH=10で沈殿した。塩化ジルコニル溶液を、沈殿器に、15mL/分の速度で加え、そして水酸化アンモニウム溶液(100mLの濃アンモニア(30%)を脱イオン水で500mLに希釈した)の添加の援けにより、加える間中、pHを10に維持した。これらの溶液の両方とも、蠕動型ポンプの援けによりフラスコに加えた。
【0088】
完了の後に、沈殿を80℃で12時間熟成させ、その後、これを遠心分離もしくはろ過によって分離し、そして800mLの熱水(80℃)で5回洗浄して、過剰のアンモニアおよび塩化物イオンを取り除いた。次いで沈殿物をガラス皿に移し、そして乾燥炉中で80℃で36〜48時間乾燥させた。乾燥の後に、この固体を粉砕し、そして貯蔵する前に、80メッシュに篩分けした。
【0089】
例A1:硫酸化ジルコニアまたは硫酸化二酸化チタン上の白金の調製(一般的方法)
100mLの脱イオン水中に1gの塩化白金酸(HPtCl.xHO、MWが409.82)を溶解することによって原液を調製した。この溶液の適切な量(固体中の所望の白金の担持量に相当する)を丸底フラスコに移した。
【0090】
化学量論的に必要なものの1.5〜2倍に相当する水酸化アンモニウム溶液を、このフラスコに加えて、80℃に維持した油浴中に浸漬した。
【0091】
溶液の明るい褐色がかった黄色が、10〜15分間で消えた。色が消えた後に、油浴の温度を過剰のアンモニアが蒸発してしまうように上昇させた。
【0092】
アンモニアが完全に取り除かれた後に(湿潤したpH紙で試験)、この溶液を室温まで冷却し、そして所望の量の担体(硫酸化ジルコニアまたは硫酸化チタニア)をこのフラスコに加えた。
【0093】
このスラリーを15分間攪拌し、そして水を蒸発させてしまうために110℃に維持した油浴中に浸漬した。残った固体を最少量の脱イオン水でガラス皿に移し、そして乾燥炉中で80℃で一晩乾燥させた。乾燥固体を篩分けし、そしてビンに入れた。
【0094】
使用の前に、この触媒を、気流中で、400℃で4時間、1〜2℃/分の温度上昇で、か焼した。
【0095】
室温に戻した後に、空気を窒素で置換し、空気を完全に置き換えるように10〜15分間パージした。次いで窒素を水素で置換し、そして触媒を250℃で2時間、1〜2℃/分の温度上昇で、還元した。
【0096】
室温に戻した後に、水素を再度窒素で置換し、そして10〜15分間パージした。次いで、空気への最小限の暴露で、触媒を気密のビンに移した。
【0097】
担持された白金触媒はまた、任意のか焼なしで、直接に還元することもでき、そしてその場合にはより活性であるように思われる。
【0098】
例A2:硫酸化ジルコニア上に担持された2%白金の調製(具体例)
1gのHPtCl.6HO(MWが409.82)を100mLの脱イオン水中に溶解した。10.6mLの上記の溶液を、50mLの丸底フラスコ中に入れた。10mLの脱イオン水および〜10mLのアンモニア溶液をこれに加え、そしてこの溶液を80℃の油浴中で15〜20分間攪拌した。
【0099】
これの最後に、最初は色が黄色であった溶液が、無色となった。黄色が消えた後でさえも、アンモニアの存在を湿潤したpH試験紙の援けによって試験することができた。次いで、過剰のアンモニアの除去を促進するように、油浴の温度を114℃に上昇させた。湿潤したpH試験紙の援けによって、アンモニアの完全な除去が確認された。この溶液を最終的に室温まで冷却させた。
【0100】
予め650℃で4時間か焼した2gの硫酸化ジルコニアを、前記の冷却した溶液に加え、そしてこのスラリーを10〜15分間攪拌した。このフラスコを、水を蒸発させるために、110℃に維持した油浴中に浸漬した。このようにして得た固体を、最小限の脱イオン水の援けによってガラスペトリ(petry)皿に移した。次いでこの固体を乾燥炉中で、80℃で一晩乾燥した。
【0101】
このようにして得た乾燥触媒を、気流中(100mL/分)で400℃で4時間か焼した。この乾燥炉用に用いられた温度プログラムは、25℃で0時間;400℃で7時間、400℃で11時間、25℃で11.5時間である。乾燥炉の温度は、集成体を乱すことなく、最後に25℃に到達させた。
【0102】
次いで、空気を窒素で10〜15分間、次いで水素(50mL/分)で置換し、そしてこの触媒を250℃で2時間還元した。乾燥炉用に用いた温度プログラムは、25℃で0時間、250℃で4時間、250℃で6時間、25℃で11.5時間であった。乾燥炉の温度は、集成体を乱すことなく、最後に25℃に到達させた。
【0103】
水素は最終的に窒素(100mL/分)で10〜15分間置換した。次いで、還元された触媒を、大気への最小限の暴露で、気密のビンに移した。
【0104】
ここで、担持された白金触媒はまた、同様の還元手順に従って、か焼なしで直接還元することができる。
【0105】
例A3:MgLaOの調製
以下の2種類の溶液を調製した。
溶液A
・硝酸マグネシウム6水和物:99g(0.386モル)
・硝酸ランタン水和物:42g(0.129モル)
・脱イオン水:500mL
溶液B
・水酸化カリウム:56g(1.0モル)
・炭酸カリウム:36g(0.26モル)
・脱イオン水:520mL
【0106】
機械的な攪拌機およびオンラインのpH測定用のpH電極を装備した3Lの丸底フラスコ中で沈殿を行なった。
【0107】
最初に攪拌機およびpH電極の先端が水中に浸かるように、500mLの脱イオン水をこのフラスコに加えた。この水のpHを、溶液Bの必要な量を加えることによって、10に調整した。
【0108】
溶液Aを25mL/分の速度で加え、そして溶液Bの添加速度をそれに応じて調整しながら、pH10で沈殿を行なった。
【0109】
沈殿が完結した後に、スラリーを80℃で12〜15時間熟成させた。次いで、このスラリーをろ過し、そして沈殿物を脱イオン水で4〜5回洗浄した。水洗の後に、沈殿をメタノールで2回洗浄した。
【0110】
この沈殿物を、最終的に乾燥皿に移し、そして80℃で一晩乾燥した。乾燥固体をヘラで粉末に粉砕し、そして80メッシュで篩分けた。
【0111】
このようにして得た粉末を、気流(100mL/分)中で、650℃で4時間、1〜2℃/分の温度上昇で、か焼した。
【0112】
例A4:ジルコニア、二酸化チタンまたはMgLaO上の白金の調製(一般的方法)
1gの塩化白金酸(HPtCl.xHO、MWが409.82)を100mLの脱イオン水中に溶解することによって、原液を調製した。この溶液の適切な量(固体中の所望の白金担持量に相当する)を丸底フラスコに移した。
【0113】
所望の量の担体(ジルコニア、二酸化チタン(=チタニア)またはMgLaO−3)をこのフラスコに加えた。スラリーを15分間攪拌し、そして水を蒸発させてしまうように110℃に維持した油浴中に浸漬した。残った固体を最小限の量の脱イオン水でガラス皿に移し、そして80℃で一晩乾燥した。乾燥固体を80メッシュで篩分けし、そしてビンに入れた。
【0114】
使用の前に、この触媒を気流中で、400℃で4時間、1〜2℃/分の温度上昇で、か焼した。室温に戻した後に、空気を窒素で置換し、そして空気を完全に置換するように、10〜15分間パージした。次いで、窒素を水素で置換し、そして触媒を、250℃で2時間、1〜2℃/分の温度上昇で還元した。
【0115】
室温に戻した後に、水素を再度窒素で置換し、そして10〜15分間パージした。次いで、触媒を、空気への最小限の暴露で、気密のビン移動した。
【0116】
例A5:硫酸ジルコニウムの調製(本発明による)
48gの塩化ジルコニル(ZrOCl.XHO、MWが322.249)を375mLの水中に溶解した。水酸化ジルコニウムを、水酸化アンモニウムの援けによって、一定のpH=10で沈殿させた。
【0117】
この沈殿物を80℃で12時間熟成させ、その後に、これを遠心分離によって分離し、そして過剰のアンモニアおよび塩化物イオンを取り除くために熱水で数回洗浄した。
【0118】
湿潤した沈殿物を円錐形のフラスコに移した。この遠心分離ビンを3〜4回分の水(合計200mL)ですすぎ洗いをした。150mLの水中の21mLの濃硫酸の溶液を調製し、そしてこの円錐形のフラスコに加えた。スラリーを室温で1時間攪拌した。この時間の内に、沈殿物のほとんどは溶解し、そして濁った溶液を得た。
【0119】
このようにして得た濁った溶液を、ロータリー蒸発器に供給し、そして水を蒸発させた。蒸発の間は、水浴を80℃に維持した。この溶液は、蒸発の間に高温で完全に透明になり、そして最後までそのままであった。最後に、白色の沈殿物がほとんど瞬間的に現れた。この後、蒸発を15〜20分間続けた。
【0120】
次いで、この沈殿物を、最小限の量のエタノールの援けによってガラス皿に移し、そして120℃で一晩乾燥した。乾燥の後に、この沈殿物はなおやや湿潤しているように見えた。
【0121】
このようにして得た硫酸ジルコニウムを、1〜2℃/分の傾斜で、所望の温度まで上昇させてか焼し、4時間維持した。
【0122】
例B1:2%Pt/ZrOおよび例A5の硫酸ジルコニウムを用いた
75mLの水と3mLのニトロベンゼン(NB)を100mLの容量の、効率のよいガス誘導攪拌機、温度センサー、試料抜取り管および邪魔板を装備したオートクレーブに入れた。
【0123】
0.01gの2%Pt/ZrO(MELCATから、参照番号F20922/1)および例A5で得た0.5gの硫酸ジルコニウム(Zr(SO(HO)−A5)を予め650℃で4時間か焼して加え、そして反応器を閉じた。
【0124】
窒素を反応器(2.5バール)に供給し、そして3回パージした。次いで、窒素を水素(10バール)で置換し、そして3回パージした。攪拌を開始し、そして1200rpmで維持した。最終的にオートクレーブを、10バールの水素圧で、80℃に加熱した。次いで、反応の進行を監視するために、試料を周期的に抜き出した。反応は通常は7時間進行させた。
【0125】
オートクレーブを室温に冷却させ、そして次いで大気圧に戻した。反応混合物を取り出し、エタノールで希釈し、そして生成品の組成をUV検出器を用いたHPLCによって測定した。
【0126】
上記の条件の下で、NBからのPAPの調製は、4時間の反応の後に97%のNB転化率および76%のPAP選択率で達成された。
【0127】
転化率および選択率は、通常の式によって反応媒体の化学的分析から決定される。
転化率=反応したニトロベンゼンのモル数/初期のニトロベンゼンのモル数、そして
選択率=PAP(またはPHAもしくはAN)のモル数/反応したニトロベンゼンのモル数
【0128】
同様の実験を、700mLの容量の反応器中で、56mLのニトロベンゼン(NB)および490mLの水(水/NB比=7.3)で行なった。0.14gの2%PT/ZrOおよび7gの例A5で得た硫酸ジルコニウムを加え、そして20バールの水素圧の下で温度を80℃に加熱した。
【0129】
上記の条件の下で、NBからのPAPの調製は、8時間の反応の後に96.1%のNB転化率および81.1%のPAP選択率で達成された。
【0130】
同様の実験を、水およびNBとともにDMSO(2mL)を用いて行なった。この場合、99%の転化率および80%の選択率を得た。
【0131】
他の実験を、DMSOなしで、250℃で還元されたPt/ZrS+Zr(SO(HO)混合物を用いて行ない、同様の結果をもたらした。
【0132】
硫酸ジルコニウムZr(SO(HO)−A5と混合した、Pt/ZrO(硫酸化されていない)、PtTiOまたはPt/MgLaOのいずれかを用いて、同様の選択率に到達することができた。80℃で10バールの水素(H)で、2%Pt/ZrO(0.01g)+Zr(SO(HO)(0.5g)では、転化率は81%に達し、そして選択率はPAP71%に達した。同様の結果が、Pt/TiOおよびPt/MgLaOで得られており、白金の担体は決定的な影響を有していないことを示している。
【0133】
標準条件(3mLのニトロベンゼン、75mLの水、温度80℃)で行なわれた以下の実験によって示されるように、1%Ptを含む市販のPt/Cで得られた結果によって、このことが確認された。触媒として0.01gの1%Pt/C+1.0gのZr(SO(HO)−A5および10バールの水素圧を用いて、6時間後に転化率は93%に達し、PAPへの選択率は92%に達した。0.01gの1%Pt/C+0.5gのZr(SO(HO)−A5および20バールの水素圧で、6時間後に転化率は62%に達し、PAPへの選択率は98%に達した。
【0134】
例B2〜B8:触媒量の影響
担体上の白金の担持量を、Pt−アンミンからの陽イオン交換を用いて0.1%、0.5%、1%および2%に変化させ、そして80℃、3.8バールの水素で、異なる量の例A5のPt/Zr(SO(HO)触媒(Zr(SO(HO)−A5が0.01、0.1および0.3g)で、0.1gもしくは0.05gのZr(SO(HO)−A5の量で、活性を測定した。1時間の反応の後の触媒による結果を下記の表1中に報告した。
【0135】
【表1】

【0136】
(1):アニリンへの選択率(上記で示したように計算した)
(2):PAPへの選択率(上記で示したように計算した)
(3):(chlor)=ヘキサクロロ白金酸から調製された触媒
【0137】
結果として
・白金量の1%から0.5%への低下は、率または選択率のいずれにも影響しない。
・白金触媒量の0.01gから0.03gへの増加は、予想したように転化率を3増加させ、選択率は一定である。
・白金担持量の0.1%への減少は活性の増加を引き起こす。この増加は、少ない担持量での白金のよりよい分散に関連すると推定される。この提案は、塩化物塩からの湿潤含浸によって調製された触媒の低い活性の観察と矛盾しない。
・例B6およびB8の比較は、0.1g未満の硫酸ジルコニウムの量は、転化率および選択率の僅かな損失を招くことを示している。酸性触媒の量が少ないと、PHAが生成品中に現れるが、おそらくは、異性化が、全ての中間体を転化するのに十分なほど早くないという事実によるものである。
【0138】
例B9〜B15:硫酸ジルコニウムの影響
例B9〜B15は、例B1で述べた方法に従って、種々の固体酸性触媒(0.5g)、ジルコニア、硫酸化チタニア(二酸化チタン)、HBEAゼオライト、商業的に入手可能な硫酸化ジルコニア、および例A5でのように調製され、2つの異なる温度でか焼された2種の硫酸ジルコニウム(Zr(SO(HO)−A5)を伴って、0.1gの一定量の2%Pt/MgLaOを用いて行なった。
【0139】
75mLの水中の3mLのNBで、80℃および10バールの水素圧での1時間の反応後に得た結果を、下記の表2中に記載した。
【0140】
【表2】

【0141】
(4)MELケミカルズ(Magnesium Electron, Inc.)から供給された。
(5)Millenium Inorganic Chemicalsから供給されたチタニアゲルの硫酸化によって調製した。
(6)Zeolysts Internationalから供給された(Si/Al=25)。
【0142】
これらの結果は、硫酸化チタニアまたはHBEAゼオライトは、ほぼ確実に、バンベルガー転位を完結するほどに十分なほど酸性ではないことを示している。非硫酸化ジルコニアはこの転位に不活性であり(例B9)、そして最良のPAP選択率は、本発明の方法に従い、そして550〜625℃の温度でか焼して調製された硫酸ジルコニウムで得られた。
【0143】
異なる酸性触媒でのフェニルヒドロキシルアミンの異性化
固体酸の酸性度の重要性がPHAからPAPへの異性化の別個の検討によって確認され、PHA(慣用の手順に従って別個に調製した)の80℃での転化(7mLの水に加えられた109mgのPHAを0.1gの固体酸の存在下で反応させた)について得た結果をまとめた下記の表3中に報告した。生成品は、PAP、o−アミノフェノール、アニリンおよびニトロベンゼンであった。
【0144】
この結果は、HBEAゼオライト、K10またはベントナイトは非常に活性であるが、しかしながらこの反応では選択的でなく、そしてアニリンおよび他の生成物を生成することを示している。更に、異なる硫酸ジルコニウムは同様の高い選択率を示しているが、しかしながら異なる転化率の度合いを示している。
【0145】
【表3】

【0146】
(7)例えば、過酸化水素で酸化された(MeO)Si−フェニル−SHから従来通りに得た。
【0147】
例B16およびB17:白金を主成分とする触媒の量の影響
例B9〜B15におけると同様の条件下で、NBからPAPを調製した例B16およびB17を実施した。これらの例(80℃および10バールの水素圧の下で、75mLの水中の3mLのNBでの1時間の反応)において、触媒は2%Pt/MgLaO(それぞれ0.05gおよび0.01g)および0.5gのZr(SO(HO)−A5(550℃でか焼)の混合物であった。
【0148】
結果を下記の表4に記載した。
【0149】
【表4】

【0150】
これらの結果は、高水素添加速度は、速い転化をもたらすが、しかしながらPAPへではなくアニリンへの転化であり、2機能の担持された白金/硫酸化ジルコニウム触媒を用いるには、NBのフェニルヒドロキシルアミン(PHA)への水素添加とPHAのPAPへの異性化の2つの機能の均衡に注意を払わなければならないという事実を示している。
【0151】
例B18:1%Pt/ZrOおよび例A5の硫酸ジルコニウムの使用
NBのPAPへの転化を以下の条件で行なった。
・NB量:3mL、
・水の量:75mL、
・水素添加触媒:0.02gの250℃に加熱した(か焼ではない)1%Pt/ZrO
・硫酸ジルコニウム:625℃でか焼した1gのZr(SO(HO)−A5、
・反応時間:4時間、
・水素圧:10バール、および
・反応温度:80℃
結果は下記の通りである。
・NB転化率:90.2%、および
・PAP選択率:85.2%
【0152】
例B19:1%Pt/MgLaOおよびZr(SO(HO)−A5の使用
NBのPAPへの転化を以下の条件で行なった。
・NB量:3mL、
・水の量:75mL、
・水素添加触媒:0.02gの250℃に加熱された(か焼ではない)1%Pt/MgLaO、
・硫酸ジルコニウム:625℃でか焼された1gのZr(SO(HO)−A5、
・反応時間:4時間、
・水素圧:10バール、および
・反応温度:80℃
結果は下記の通り。
・NB転化率:80.2、および
・PAP選択率:97.8
【0153】
例B20:2%Pt/MgLaOおよびZr(SO(HO)−A5の使用
NBのPAPへの転化を以下の条件で行なった。
・NB量:3mL、
・水の量:75mL、
・水素添加触媒:0.01gの2%Pt/MgLaO、
・硫酸ジルコニウム:625℃でか焼された0.5gのZr(SO(HO)−A5、
・反応時間:4時間、
・水素圧:10バール、および
・反応温度:80℃
結果は下記の通り。
・NB転化率:97.2、
・PAP選択率:76.1、
・PHA選択率:0、および
・アニリン選択性:23.9
【0154】
上記の条件下では、フェニルヒドロキルアミンは得られず、従ってPAP/アニリンの分離を容易にすることに注目しなければならない。
【0155】
例B21:2%Pt/MgLaOおよびZr(SO(HO)−A5の使用
NBのPAPへの転化を以下の条件で行なった。
・NB量:25mL、
・水の量:50mL、
・水素添加触媒:0.1gの1%Pt/MgLaO、
・硫酸ジルコニウム:625℃でか焼された1gのZr(SO(HO)−A5、
・反応時間:2時間、
・水素圧:10バール、および
・反応温度:80℃
結果は下記の通り。
・NB転化率:29.8、および
・PAP選択率:87.7
【0156】
この実験では、NBの濃度が前述の例におけるよりも高い。PHAは反応媒体中に見出されず、そして2時間の反応の後に、PAPへの良好な選択率が得られた。
【0157】
また、上記の結果は、本発明の使用および方法の顕著な利点を立証しており、良好な選択率でPAPを生成するのには、少量の白金で十分である。触媒混合物中の白金の量を増加させることは、PAPの選択率に対して有害である。
【0158】
従って、本発明の方法は、安価で環境に優しい触媒を含んでおり、そして工業的応用、特にはパラセタモールおよび他の化学薬品、染料などの中間処理として、完全に適している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニトロベンゼンのパラアミノフェノールへの1工程反応のための2機能触媒の使用であって、該2機能触媒が水素添加貴金属と硫酸ジルコニウムとの混合物を含んでなる、使用。
【請求項2】
前記の水素添加貴金属が、白金、パラジウム、ルテニウム、二酸化白金、ニッケルなどの、単独もしくは混合物から選ばれ、好ましくは水素添加貴金属は、白金およびパラジウム、またはそれらの混合物から選ばれる、請求項1記載の使用。
【請求項3】
前記の水素添加貴金属が白金である、請求項1または2記載の使用。
【請求項4】
前記の水素添加貴金属が、炭素、硫酸化ジルコニア、ジルコニア、二酸化チタン、硫酸化二酸化チタン、アルミナ、シリカ、マグネシウムおよびランタンの混合酸化物など、ならびにそれらの混合物の中から選ばれる担体上に担持されている、請求項1〜3のいずれか1項記載の使用。
【請求項5】
前記の硫酸ジルコニウムが、Zr(SO(HO)である、請求項1〜4のいずれか1項記載の使用。
【請求項6】
前記の硫酸ジルコニウムが、2m/g〜300m/gの範囲、好ましくは2m/g〜100m/gの範囲、より好ましくは2m/g〜50m/gの範囲、例えば約3.5m/g〜10cm/gの比表面積を示す、請求項1〜5のいずれか1項記載の使用。
【請求項7】
前記の2機能触媒が、Zr(SO(HO)+Pt/C、Zr(SO(HO)+Pt/ZrS、Zr(SO(HO)+Pt/ZrO、Zr(SO(HO)+Pt/TiO、Zr(SO(HO)+Pt/Al、Zr(SO(HO)+Pt/SiO、Zr(SO(HO)+Pt/MgLaOおよびそれらの混合物の中から選ばれる混合物を含んでなる、請求項1〜6のいずれか1項記載の使用。
【請求項8】
前記の硫酸ジルコニウムの水素添加貴金属に対する質量比が、100:1〜1:100、好ましくは100:1〜1:10、より好ましくは75:1〜1:5、有利には50:1〜1:2の範囲である、請求項1〜7のいずれか1項記載の使用。
【請求項9】
以下の工程、
A)ニトロベンゼンと水との混合物を、水素添加貴金属と硫酸ジルコニウムとの混合物を含む、そして好ましくは水素添加貴金属と硫酸ジルコニウムとの混合物からなる2機能触媒と接触させる工程、
B)反応混合物を水素圧の下に配置する工程、
C)反応を起こさせる工程、
D)反応を停止させて、パラアミノフェノールを含む反応混合物を得る工程、および
E)反応混合物からパラアミノフェノールを分離および回収する工程、
を含んでなるパラアミノフェノールの調製方法。
【請求項10】
前記の水素添加貴金属が、白金、パラジウム、ルテニウム、二酸化白金、ニッケルなどの、単独もしくは混合物の中から選ばれ、好ましくは水素添加貴金属は、白金およびパラジウム、またはそれらの混合物から選ばれ、より好ましくは水素添加貴金属は白金である、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記の水素添加貴金属が、Pt/C、Pt/ZrS、Pt/ZrO、Pt/TiO、Pt/Al、Pt/SiO、Pt/MgLaOおよびそれらの混合物から選ばれる担持された白金である、請求項9または10記載の方法。
【請求項12】
水/ニトロベンゼンの体積比が、50:1〜1:50、好ましくは50:1〜1:1、より好ましくは40:1〜3:1、有利には15:1〜3:1の範囲に含まれる、請求項9〜11のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
前記の反応混合物が、更にDMSOを含んでなる、請求項9〜12のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
前記の硫酸ジルコニウムが、Zr(SO(HO)である、請求項9〜13のいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
前記の硫酸ジルコニウムが、2m/g〜300m/gの範囲、好ましくは2m/g〜100m/gの範囲、より好ましくは2m/g〜50m/gの範囲、例えば約3.5m/g〜10cm/gの比表面積を示す、請求項9〜14のいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
前記の2機能触媒が、Zr(SO(HO)+Pt/C、Zr(SO(HO)+Pt/ZrS、Zr(SO(HO)+Pt/ZrO、Zr(SO(HO)+Pt/TiO、Zr(SO(HO)+Pt/Al、Zr(SO(HO)+Pt/SiO、Zr(SO(HO)+Pt/MgLaOおよびそれらの混合物の中から選ばれる混合物を含んでなる、請求項9〜15のいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
硫酸ジルコニウムの水素添加貴金属に対する質量比が、100:1〜1:100、好ましくは100:1〜1:10、より好ましくは75:1〜1:5、有利には50:1〜1:2の範囲である、請求項9〜16のいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
ニトロベンゼン/硫酸ジルコニウム比(体積/質量)が、通常は1〜50の範囲、好ましくは2〜30の範囲、より好ましくは3〜15の範囲である、請求項9〜17のいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
前記の水素圧が、1〜50バールの範囲、好ましくは2〜35バール、より好ましくは3〜20バールに含まれ、通常は水素圧は10バールである、請求項9〜18のいずれか1項記載の方法。
【請求項20】
前記の反応温度が、10℃〜約200℃、好ましくは50〜100℃の範囲に含まれる、請求項9〜19のいずれか1項記載の方法。
【請求項21】
以下の工程、
a)二酸化ジルコニウム(ジルコニア)前駆体を水中に溶解させる工程、
b)この前駆体を加水分解させて、通常は9以上、有利には10である一定のpHの塩基性媒体中で、ジルコニアを沈殿物として与える工程、
c)この沈殿物を、50℃〜100℃、好ましくは70℃〜90℃の範囲の温度で熟成させる工程、
d)この熟成した沈殿物を分離し、そして水で洗浄する工程、
e)結果として得た水和ジルコニアを硫酸と接触させる工程、
f)この沈殿物を酸性媒体中に溶解させる工程、
g)硫酸ジルコニウムの沈殿物が生成されるまで、反応媒体中から水を除去する工程、および
h)得られた硫酸ジルコニウムを乾燥する工程、
を含んでなる硫酸ジルコニウムの調製方法。
【請求項22】
前記のジルコニア前駆体が、塩化ジルコニルもしくはオキシ塩化ジルコニル、酢酸ジルコニウム、ジルコニウムアセチルアセトナート、ジルコニウムアルコキシドなどの中から選ばれる、請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記の塩基性媒体が、水酸化アンモニウム、水酸化ナトリウムもしくはカリウム、それらの混合物などの中から選ばれる強有機塩基もしくは強無機塩基、好ましくは強無機塩基を含んでなる、請求項21または22記載の方法。
【請求項24】
得られた硫酸ジルコニウムを篩分けし、そしてか焼する工程を更に含む、請求項21〜23のいずれか1項記載の方法。

【公表番号】特表2011−502759(P2011−502759A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−532596(P2010−532596)
【出願日】平成20年11月7日(2008.11.7)
【国際出願番号】PCT/EP2008/065100
【国際公開番号】WO2009/060050
【国際公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(501089863)サントル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシェサイアンティフィク(セエヌエールエス) (173)
【出願人】(510125039)カウンシル オブ サイエンティフィク アンド インダストリアル リサーチ (1)
【出願人】(510124526)ビナティ オーガニクス リミティド(ブイ.オー.エル.) (1)
【Fターム(参考)】