説明

パラキシレン選択吸着剤組成物および方法

パラキシレンに対して選択的である気相吸着プロセス用の吸着剤組成物。このような組成物は、混合キシレン類からのパラキシレンの分離またはC8芳香族混合物からのパラキシレンおよびエチルベンゼンの分離のための気相吸着プロセスにおいて用いることができる。吸着剤組成物は、一般に、モレキュラーシーブ物質およびバインダからなる物質を含み、吸着剤組成物は少なくとも約0.20cc/gのマクロポア容積および約0.20cc/g未満のメソポア容積を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して吸着剤組成物に関し、特にパラキシレンに対して選択的で且つ気相吸着プロセスに有用な吸着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
C8+芳香族化合物を含有する炭化水素混合物もしくはフラクションは、限定されるものではないが接触改質プロセスを含むある種の油精製(oil refinery)プロセスの副産物であることが多い。これらの炭化水素混合物は、典型的には、約30wt.%以下のC9+芳香族化合物、約10wt.%以下の非芳香族化合物、約50wt.%以下のエチルベンゼンを含み、残余は(例えば約100wt.%以下の)キシレン異性体群の混合物である。C8芳香族化合物中に最も一般的に存在するのは、エチルベンゼン(EB)、およびメタキシレン(mX)、オルソキシレン(oX)およびパラキシレン(pX)を含むキシレン異性体群である。典型的には、C8芳香族化合物中に存在する場合には、エチルベンゼンはC8芳香族化合物の総量を基準として約20wt.%以下の濃度で存在する。3種のキシレン異性体は、典型的にはC8芳香族化合物の残りを構成し、典型的には約1:2:1(oX:mX:pX)の平衡質量比で存在する。よって、本明細書において、用語「キシレン異性体群の平衡混合物」とは、約1:2:1(oX:mX:pX)の質量比で異性体を含む混合物をいう。
【0003】
C8芳香族化合物フラクションを個々の構成成分に効率的に分離することは、個々の単離されたC8芳香族構成成分が有用な商品化学物質であるので興味あることである。例えば、エチルベンゼンはスチレン類を作るために有用であり;メタキシレンはイソフタル酸を作るために有用であり;オルソキシレンは無水フタル酸を作るために有用であり;パラキシレンはテレフタル酸を作るために有用であり、これらは、ポリブテンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートおよびポリプロピレンテレフタレートなどのポリエステルを含む多くの商業的に重要な樹脂の合成に有用である。
【0004】
しかし、特定の源から入手可能とされるC8芳香族化合物を単純に分離することは、市場の要求に合致する所望のC8芳香族構成成分の満足する品質を与えないかもしれない。例えば、特定のC8芳香族混合物からのパラキシレン製品を増量または最大化することが一般に望ましい。なぜなら、一般に、他のC8芳香族構成成分と比較してパラキシレンの需要が高いからである。よって、パラキシレンの分離は、キシレン異性体間の平衡を再確立することにより、メタキシレン異性体およびオルソキシレン異性体の一部を所望のパラキシレンに変換するメタキシレン異性体およびオルソキシレン異性体を含む残りのストリームの異性化と結びつけられることが多い。慣用のC8芳香族化合物分離方法は、さらに、エチルベンゼンを蒸留によりキシレン異性体からより容易に分離することができるベンゼンに変換する方法を含み得る。
【0005】
典型的には、このような炭化水素混合物を分離塔もしくは分留塔に通過させて、より高沸点のC9+炭化水素群を除く。第二に、残りのフラクションが主としてC8芳香族炭化水素混合物であるように、より低沸点のフラクションを先行する塔もしくは後続の塔から除くことができる。
【0006】
一般に、パラキシレンは、C8芳香族混合物を1以上の分離工程に供することにより回収される。エチルベンゼン、メタキシレン、オルソキシレンおよびパラキシレンは似たような沸点(約136℃〜約144℃の間に入る)を有するので、C8芳香族混合物において分留を行うことは、実用的ではない。よって、パラキシレンの分離は、一般に、晶析および/または液相吸着クロマトグラフィーによってなされる。
【0007】
晶析プロセスは、種々のキシレンの凍結または晶析温度の差を利用する。パラキシレンは、約13.3℃で晶析し、オルソキシレンおよびメタキシレンは約-25.2℃および約-47.9℃でそれぞれ晶析する。3種のキシレン異性体の物理系において、2種の重要な二成分共晶:パラキシレン/メタキシレン二成分共晶およびパラキシレン/オルソキシレン二成分共晶がある。パラキシレンが混合物から晶析するにつれ、残りの混合物は、混合物の初期組成に応じて、これらの二成分共晶の一方に近づく。したがって、商業規模のプロセスにおいて、得られるパラキシレンの純度を低下させるであろう他のキシレン異性体の共晶析を避けるために、二成分共晶に近づくが到達はしないように、パラキシレンを晶析させる。これらの二成分共晶ゆえに、1回の晶析プロセスで回収可能なパラキシレンの量は、一般に、晶析ユニットへ供給されたストリーム中に存在するパラキシレンの量の約65%以下である。さらに、種々のキシレン異性体が非常に低温で晶析するので、晶析は非常に高価となり得る。
【0008】
Swiftの米国特許第5,329,060号明細書(1994年6月12日)は、晶析の前に吸着工程でキシレン異性体を分離することにより、パラキシレンの回収を増加させることを開示する。Swiftは、温度要求が減少し、副反応の機会が減少するので、液相吸着が好ましいことを開示する。吸着工程において、約2〜約6の間にあるケイ素:アルミニウム比を有する結晶ゼオライトのアルミノシリケート吸着剤は、メタキシレンおよびオルソキシレン(あるいはパラキシレン)を選択的に吸着して、続いて晶析装置に送られるパラキシレンに富むストリームを与える。パラキシレン枯渇ストリームは一般に加圧され、異性化触媒の存在下で反応して、キシレン異性体の平衡混合物を得る。この混合物は次いで、液体吸着塔に再循環されてもよい。
【0009】
液相吸着クロマトグラフィーは、混合物が固定相および液体移動相と接触するようになるクロマトグラフィープロセスをいう。混合物成分の分離は、クロマトグラフィー系の固定相と移動相との親和性の違いゆえに生じる。液相吸着クロマトグラフィー分離は、典型的なバッチプロセスである。模擬移動床吸着クロマトグラフィー(SiMBAC)は、分離を達成するために同じ原理を利用する連続操作である。しかし、SiMBACは、多量の種々の炭化水素脱着物質の内部再循環を必要とするので制限があり運転費用が高価である。さらに、吸着工程からの流出物ストリームは、下流の蒸留工程において所望の生成物から分離されなければならない。よって、慣用の液相吸着クロマトグラフィープロセスは、資本投資およびエネルギーコストが膨大であるという欠点を有する。
【0010】
上述の晶析およびSiMBAC工程のための供給原料を平衡濃度よりも高い濃度のパラキシレンを含有するように改質すれば、上述の晶析およびSiMBAC工程をより魅力的なものとすることができることがわかっている。例えばWO 00/69796パンフレット(2000年11月23日)およびWO 93/17987パンフレット(1993年9月16日)に記載されているように、平衡濃度よりも高い濃度のパラキシレンは選択的トルエン不均化により得ることができる。
【0011】
さらに、晶析およびSiMBAC工程は、後続の精製工程のためにパラキシレンストリームを濃縮するように設計し運転することができる。しかし、このような濃縮工程は、典型的には、晶析およびSiMBACプロセスに関して上述した欠点の多く(またはすべて)に悩まされている。
【0012】
平衡濃度よりも高いパラキシレン濃度を有する供給原料は、圧力スィング吸着("PSA")プロセスを含む気相吸着プロセスによって製造することもできる。PSAプロセスは、空気の窒素および酸素への分離、空気からの水の除去、水素精製などの気体分離に広範囲に実施されており、Ralph T. Yang, "Gas Separation by Adsorption Processes" pp. 237-274 (Butterworth Publishers, Boston, 1987) (TP242. Y36)に一般的に記載されている。PSAプロセスは、一般に、混合物中の他の成分全体の混合物からある成分を優先的に吸着する固体吸着剤を使用する。典型的には、系の総圧力を減少させて、吸着質を回収する。対照的に、部分圧力スィング吸着(PPSA)は、実質的に減少しない圧力で運転して、水素または窒素などの不活性ガスを使用して、吸着質を吸着剤からパージまたは掃引する。よって、 PPSAプロセスは、伝統的に行われているPSAプロセスでのように総ユニット圧力を低下させるよりはむしろ、「部分的な」圧力でのスィングに基づいている。熱スィング吸着(TSA)プロセスは、気相吸着プロセスであり、吸着質は吸着剤床の温度を上昇させることにより回収される。典型的には、吸着質回収は、吸着剤床を予め加熱された気体でパージすることにより達成される。
【0013】
Longらの中国特許公開第1,136,549A(1996年11月27日)は、パラキシレンおよびエチルベンゼンに対して選択的な吸着剤を含有する吸着床に気体状C8炭化水素混合物を通過させることにより、適切な脱着後に、メタ−およびオルソ−キシレンを含有するストリームとパラキシレンおよびエチルベンゼンを含有するストリームとを得る、パラキシレン製造方法を開示する。吸着は、140℃〜370℃の間の温度、大気圧〜300kPaの間の圧力にて、ZSM-5(ExxonMobil Chemicalsから入手可能) を含むMobil-5 (MFI)タイプモレキュラーシーブ吸着剤、フェリエライトおよびシリカライト-1 ゼオライトモレキュラーシーブ、特にバインダ不含シリカライト-1 ゼオライトモレキュラーシーブを使用して行われる。パラキシレンおよびエチルベンゼンの脱着は、吸着の場合と同じ範囲の温度および大気圧〜1000kPaの間の圧力において、水蒸気脱着剤で行われる。あるいは、脱着は、脱着剤なしに行われ、1kPa〜4kPaの間の圧力にて単に減圧することにより達成することもできる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、気相吸着プロセス用の吸着剤組成物、およびパラキシレンに対して選択的な吸着プロセスに関する。一実施形態において、気相吸着プロセスに適する吸着剤組成物は、モレキュラーシーブ物質およびバインダを含み、吸着剤組成物は少なくとも約0.20cc/gのマクロポア容積および約0.20cc/g未満のメソポア容積を有する。
【0015】
別の実施形態において、吸着剤組成物は、モレキュラーシーブ物質およびクレイ、シリカ、シリケート、ジルコニア、チタニア、アルミナおよびリン酸アルミナからなる群より選択されるバインダを含み、吸着剤組成物はメソポアに対するマクロポアの容積比が少なくとも約2である。
【0016】
別の実施形態において、吸着剤組成物はモレキュラーシーブ物質を含み、吸着剤組成物は少なくとも約0.20cc/gのマクロポア容積を有し、吸着剤組成物は約0.20cc/g未満のメソポア容積を有し、吸着剤組成物は約2 wt.%未満のγ−アルミナからなる物質を有する。
【0017】
また別の実施形態において、吸着剤組成物はモレキュラーシーブ物質を含み、吸着剤組成物はメソポアに対するマクロポアの容積比が少なくとも約2であり、吸着剤組成物は約2 wt.%未満のγ−アルミナからなる物質を有する。
【0018】
本発明はまた、パラキシレン選択吸着剤を製造する方法にも関する。本発明のこの側面の一実施形態において、本方法は、モレキュラーシーブ物質を含む組成物から粉末を形成する工程と、該粉末から水性混合物を形成する工程と、該混合物を押出して押出物を形成する工程と、該押出物を乾燥させて少なくとも約0.20cc/gのマクロポア容積および約0.20cc/g未満のメソポア容積を有する吸着剤を形成する工程と、を含む。
【0019】
別の実施形態において、本方法は、モレキュラーシーブ物質を含む組成物から粉末を形成する工程と、該粉末から水性混合物を形成する工程と、該混合物を押し出して押出物を形成する工程と、押出物を乾燥させてメソポアに対するマクロポアの容積比が少なくとも約2である吸着剤を形成する工程と、を含む。
【0020】
追加の改良点として、本発明は、パラキシレンに対して選択的な吸着プロセスに関する。一実施形態において、本方法は、キシレン異性体を含む混合物をモレキュラーシーブ物質およびバインダを含むパラキシレン選択吸着剤と接触させる工程と、パラキシレンが豊富な生成物を含む流出物をパラキシレン選択吸着剤から脱着させる工程と、を含み、吸着剤は少なくとも約0.20cc/gのマクロポア容積および約0.20cc/g未満のメソポア容積を有する。
【0021】
本発明の追加の特徴は、添付図面、実施例および特許請求の範囲を参照しながら以下の詳細な説明を読むことにより当業者には明らかになるはずである。
【好ましい実施形態】
【0022】
本発明をより完全に理解するために、以下の詳細な説明および添付図面を参照すべきである。
図1は、本発明の吸着剤組成物および方法を利用するに適する典型的な2床吸着系を示す。図2は、実施例3〜11の吸着剤組成物に対するスループット対マクロポア容積を示すグラフである。図3は、実施例7〜11の吸着剤組成物に対する(pX+EB)純度対マクロポア容積を示すグラフからみた(pX+EB)純度対実施例3〜6の吸着剤組成物のマクロポア容積を示すグラフである。図4は、実施例7-11の吸着剤組成物に対する(pX+EB)純度対P多孔度ファクターを示すグラフから見た実施例3〜6の吸着剤組成物に対する(pX+EB)純度対P多孔度ファクターを示すグラフである。
【0023】
本発明の特定の実施形態が図面に示され、以下に説明されるが、これらは本発明を何ら限定するものではない。
本発明は、気相吸着プロセス用の吸着剤組成物およびパラキシレンに選択的な吸着プロセスを提供する。一般に、本発明による吸着剤組成物は、モレキュラーシーブ物質およびバインダを含む。
【0024】
一実施形態において、吸着剤組成物は、モレキュラーシーブ物質およびバインダを含み、吸着剤組成物は少なくとも約0.20cc/gのマクロポア容積および約0.20cc/g未満のメソポア容積を有する。
【0025】
範囲は、「約」または「およそ」1種の特定の値からおよび/または「約」または「およそ」別の特定の値までとして表現することができる。このような範囲で表現される場合には、別の実施形態は1種の特定の値からおよび/または別の特定の値までを含む。同様に、値が「約」を用いて概数として表現される場合には、特定の値は別の実施形態を形成する。
【0026】
別の実施形態において、吸着剤組成物はモレキュラーシーブ物質およびクレイ、シリカ、シリケート、ジルコニア、チタニア、アルミナおよびリン酸アルミニウムからなる群より選択されるバインダを含み、吸着剤組成物はメソポアに対するマクロポアの容積比が少なくとも約2である。
【0027】
別の実施形態において、吸着剤組成物はモレキュラーシーブ物質を含み、吸着剤組成物は少なくとも約0.20cc/gのマクロポア容積を有し、吸着剤組成物は約0.20cc/g未満のメソポア容積を有し、吸着剤組成物は約2wt.%未満のγ−アルミナからなる物質を有する。
【0028】
また別の実施形態において、吸着剤組成物はモレキュラーシーブ物質を含み、吸着剤組成物はメソポアに対するマクロポアの容積比が少なくとも約2であり、吸着剤組成物は約2wt.%未満のγ−アルミナからなる物質を有する。
【0029】
本発明は、また、パラキシレン選択吸着剤の製造方法も提供する。本発明のこの側面による一実施形態において、本方法は、モレキュラーシーブ物質を含む組成物から粉末を形成する工程と、該粉末から水性混合物を形成する工程と、該混合物を押し出して押出物を形成する工程と、該押出物を乾燥させて少なくとも約0.20cc/gのマクロポア容積および約0.20cc/g未満のメソポア容積を有する吸着剤を形成する工程と、を含む。
【0030】
別の実施形態において、本方法は、モレキュラーシーブ物質を含む組成物から粉末を形成する工程と、該粉末から水性混合物を形成する工程と、該混合物を押し出して押出物を形成する工程と、該押出物を乾燥させてメソポアに対するマクロポアの容積比が少なくとも約2である吸着剤を形成する工程と、を含む。
【0031】
追加の精製において、本発明は、パラキシレンに選択的である吸着プロセスを提供する。一実施形態において、本方法は、キシレン異性体群を含む混合物をモレキュラーシーブ物質およびバインダを含むパラキシレン選択吸着剤と接触させる工程と、パラキシレン選択吸着剤からパラキシレンに富む生成物を含む流出物を脱着させる工程と、を含む。ここで、パラキシレン選択吸着剤は、少なくとも約0.20cc/gのマクロポア容積および約0.20cc/g満のメソポア容積を有する。
【0032】
形成された吸着剤組成物(例えば、押出物またはペレット)は、典型的には商業用途に好ましい。粉末モレキュラーシーブは、一般に、大きな圧力降下と床流動化のために、このような分離用の吸着剤としては使用されない。
【0033】
本明細書において、メソポアとは約600Å未満の半径を有する本発明による吸着剤のポアをいう。同様に、本明細書において、マクロポアとは約600Åを越える半径を有する吸着剤のポアをいう。
【0034】
少なくとも約0.20cc/gのマクロポア容積および約0.20cc/g未満のメソポア容積を有する吸着剤は、主題のパラキシレン選択吸着プロセスに有用である。さらに、メソポアに対するマクロポアの容積比が少なくとも約2である吸着剤はこのような分離に効果的であることも知見された。
【0035】
[モレキュラーシーブ物質]
好ましくは、吸着剤は、メタキシレンおよびオルソキシレンを効果的に吸着しないが、モレキュラーシーブ物質のチャネルおよびポア内にパラキシレンを選択的に吸着する(すなわち、メタキシレンおよびオルソキシレンの排除がより大きく、またはパラキシレンに比して他のキシレン異性体は非常に緩慢な吸着である)モレキュラーシーブを含む。混合キシレン群からのパラキシレンの分離またはC8芳香族化合物の混合物からのパラキシレンおよびエチルベンゼンの分離に有用なモレキュラーシーブ物質は、米国特許出願公開公報U. S. Patent Publication 2002/0107427(2001年7月10日)(全体の開示が本明細書に参照として組み込まれる)に記載されている。
【0036】
一般に、用語「モレキュラーシーブ」とは、分子寸法のチャネル、籠およびキャビティを有する広範な種々の天然および合成の結晶多孔性物質を含む。モレキュラーシーブとしては、アルミノシリケート(ゼオライト)、アルミノホスフェートおよびシリコアルミノホスフェートなどの関連する物質を挙げることができる。アルミノシリケート(ゼオライト)は、典型的には、アルミニウム、硼素、チタン、鉄、ガリウムなどの四面体的置換元素との組み合わせにおけるシリカ四面体に基づく。アルミノホスフェートは、アルミニウムなどの四面体的置換元素との組み合わせにおけるホスフェート四面体に基づく。
【0037】
本発明による吸着剤組成物において用いるための代表的なアルミノシリケートは、下記単位セル式(I):Mx/n[(A)x(B)yO2x+2y](式中、Mは競合カチオンであり、nはカチオン価であり、AはIIIA族元素であり、BはIVA族元素であり、y/xは少なくとも約1である)により記載することができる。代表的なIIIA族元素としては、例えば硼素、アルミニウムおよびガリウムなどの3価元素を挙げることができる。代表的なIVA族元素としては、例えばケイ素およびゲルマニウムなどの4価元素を挙げることができる。チタンはアルミノシリケート骨格構造に置換し得る別の4価元素であり、上記単位セル式に関してはIVA族元素であると考えることができる。典型的には、IIIA族元素はアルミニウムであり、IVA族元素はケイ素である。
【0038】
アルミノシリケートモレキュラーシーブは、SiO2(シリカ)格子から派生すると考えることができる。例えばアルミノシリケートモレキュラーシーブ構造におけるケイ素に代えてのアルミニウムなどのIIIA族元素の置換は、競合カチオンと平衡であるべき負の骨格電荷を発生させる。IIIA族元素がモレキュラーシーブ骨格中で置換される場合、モレキュラーシーブはナトリウムなどの非酸性カウンターイオンと交換して、実質的に非酸性シーブを提供するはずである。適切なモレキュラーシーブは好ましくは実質的に非酸性である。なぜなら、本発明による吸着剤組成物はC8芳香族供給ストリームに関する接触異性化もしくは変換の活性を有していないはずだからである。本発明にとって、接触反応性ではないモレキュラーシーブは、本発明による吸着剤組成物を利用するパラキシレン分離プロセスに対する運転温度において、パラキシレンのメタキシレンもしくはオルソキシレンへの変換率が10%未満を示し、より好ましくは5%未満の変換率であり、最も好ましくは1%未満の変換率である。
【0039】
単位セル式(I)における比率y/xは、酸性度および疎水性/親水性を含む種々のモレキュラーシーブ特性の指標を提供する。比率y/xが増加するほど、モレキュラーシーブ物質の酸性度および親水性は減少する。本発明で用いるためのモレキュラーシーブ物質の比率y/xは、一般に1よりも大きい。好ましくは、比率y/xは少なくとも約200であり、より好ましくは 少なくとも約500であり、最も好ましくは少なくとも約1000である。
【0040】
本発明による吸着剤として使用するために適するモレキュラーシーブとしては、5Å〜6Åの範囲、好ましくは5.1Å〜5.7Åの範囲、より好ましくは5.3Å〜5.6Åの範囲にあるポア寸法を有するゼオライト性物質を挙げることができる。これらの物質は、典型的には、10環四面体構造を含み、一般に「中度ポアゼオライト」と呼ばれる。適切な中度ポアモレキュラーシーブとしては、限定されるものではないが、Mobil-23(MTT)、フェリエライト(FER)、Edinburgh University-1(EUO)、Mobil-57(MFS)、theta-1(TON)、アルミノホスフェート-11(AEL)、new-87(NES)およびMeierおよびOlsonの"Atlas of Zeolite Framework Types," International Zeolite Association (2001)に分類されているような他の小さなポア寸法を有するものからなる群より選択される構造タイプを有するシーブを挙げることができる。好ましくは、モレキュラーシーブ物質は、Mobil-5(MFI)およびMobil-11(MEL)構造タイプから選択される。より好ましくは、モレキュラーシーブ物質はMFI構造タイプのものである。
【0041】
吸着剤組成物において用いるに好ましいモレキュラーシーブとしては、ZSM-5(MFI構造タイプ)、ZSM-11(MEL構造タイプ)および関連する同形の構造を挙げることができる。さらに、モレキュラーシーブ物質は、シリカライトを含み得る。より好ましくは、モレキュラーシーブ物質は、シリカライト-1を含み得る。シリカライト(MFI構造タイプを有するモレキュラーシーブ)は、少量のアルミニウムその他の元素を含むが本質的に全量がシリカモレキュラーシーブである。
【0042】
8-環構造を含むタイプAゼオライトなどの小さなポアのモレキュラーシーブは、モレキュラーシーブ内にパラキシレンを効果的に吸着するために十分大きなポアを有していない。モルデン沸石、β、LTL、またはYゼオライトなどの12-環構造を含む最も大きなポアのモレキュラーシーブは、選択性化(selectivation)、イオン交換などの後合成修飾なしには、オルソキシレンおよびメタキシレンに比較してパラキシレンを選択的に吸着しない。しかし、より小さな効果的なポアサイズを有するいくつかの12-環構造は、例えば、環パッカリングゆえに、本発明による吸着剤組成物に有用である。このような有用な大きなポアのモレキュラーシーブとしては、Mobil-12(MTW)およびアルミノホスフェート-31(ATO)構造タイプを挙げることができる。ZSM-12はMTW骨格を有する適切なシーブ物質の一例であり、AIPO-31はATO骨格を有する適切なシーブ物質の一例である。さらに、12-環モレキュラーシーブの後合成処理を用いて、合成されたままの物質中に観察されるよりもパラキシレン選択性の増加を達成することができる。例えば、カリウムもしくはバリウム形態にイオン交換されたYもしくはXゼオライトは、液相SiMBACプロセスに対するキシレン選択性を発現する。ファジャサイト(FAU)骨格のこのような修飾モレキュラーシーブもまた、本発明で用いるに適切であろう。
【0043】
MFIおよびMELシーブ(および上記に列挙した骨格構造を有するシーブ)は、実質的に非触媒作用的活性である程度まで用いることができる。MFI-系モレキュラーシーブは特に好ましい。シリカライト、特にシリカライト-1が最も好ましい。シリカライト(MFI構造タイプを有するモレキュラーシーブ)は、少量のアルミニウムまたは他の置換元素を含むが本質的に全量がシリカモレキュラーシーブである。好ましくは、適切なシリカライトのケイ素/アルミニウム比は、少なくとも約200であり、より好ましくは少なくとも約500である。
【0044】
本発明による吸着剤組成物のケイ素/アルミニウム比は、適切には約1000よりも大きいものであってもよい。
【0045】
[バインダ]
吸着剤組成物は、100%モレキュラーシーブを含み得る。しかし、一般に、吸着剤組成物は、バインダ物質をも含む。バインダ物質は、形成された吸着剤組成物にある種の所望の特性(例えば、改良された破壊強度)を付与するために一般に用いられる。適切なバインダは、クレイ、シリカ、シリケート、ジルコニア、チタニア、アルミナ、シリカ−アルミナ、シリカ−マグネシア、シリカ−ジルコニア、シリカ−トリア、シリカ−ベリリア、シリカ−チタニア、シリカ−アルミナ−トリア、シリカ−アルミナ−ジルコニア、シリカ−アルミナ−マグネシア、シリカ−マグネシア−ジルコニア、リン酸アルミナおよびこれらの混合物からなる群より選択される。好ましくは、バインダは、クレイ、シリカ、シリケート、ジルコニア、チタニアおよびこれらの混合物からなる群より選択される。
【0046】
吸着剤組成物は、ゼオライト結合ゼオライトをも含み得る。主題の吸着剤組成物のこの実施形態において、ゼオライトコア結晶は、より小さなゼオライトバインダ結晶によって結合されている。ゼオライト結合ゼオライトを製造する一つの手順は、シリカ結合ゼオライト凝集体中にシリカバインダとして最初に存在するシリカをゼオライトバインダに変換することを含む(すなわち、シリカバインダはゼオライトの前駆体である)。この手順は、シリカ結合凝集体を十分な時間にわたり、アルカリ水溶液中でエージングすることを含む。エージング中、マトリックスゼオライト結晶を取り巻くアモルファスシリカは、典型的にはマトリックスゼオライトとして同じタイプのゼオライト結晶に変換される。あるいは、シリカバインダは、最初に結合していたゼオライトに対して結晶学的に合致する結晶に変換されてもよい。ただし、両方の物質がパラキシレンに対して選択性であることを条件とする。初期マトリックス結晶を取り巻く新たに形成されたゼオライト結晶は、一般にマトリックス結晶よりももっと小さく、例えばサブミクロンサイズである。本発明の目的に対して、用語「バインダ」は、このようなゼオライトバインダを含む。
【0047】
典型的には、バインダは、吸着剤組成物の総量を基準として約50wt.%以下を構成する。好ましくは、バインダは吸着剤組成物の約5wt.%〜約40wt.%、より好ましくは約10wt.%〜約30wt.%、最も好ましくは約20wt.%を構成する。
【0048】
本発明による吸着剤組成物中のバインダ含量もまた、バインダに対するモレキュラーシーブ物質の質量比として表すことができる。好ましくは、バインダに対するモレキュラーシーブ物質の質量比は少なくとも約1であり、より好ましくは少なくとも約3であり、最も好ましくは少なくとも約4である。
【0049】
本発明による吸着剤組成物は、好ましくはγ−アルミナを実質的に含まない。本明細書の文脈において、「γ−アルミナを実質的に含まない」とは、吸着剤組成物がγ−アルミナからなる物質を組成物の総量を基準として約2wt.%未満だけ含むことを意味する。より好ましくは、吸着剤組成物は、γ−アルミナからなる物質を約1wt.%未満、最も好ましくは約0.20wt.%未満だけ含む。γ−アルミナ含量は、ASTM試験方法D4926-89 (2001)により測定することができる。
【0050】
さらに、吸着剤組成物は、アルミナからなる物質を好ましくは約2wt.%未満、より好ましくは約1wt.%未満、最も好ましくは約0.20wt.%未満だけ含む。また別の改良点において、吸着剤組成物は、好ましくは約2wt.%未満、より好ましくは約1wt.%未満、最も好ましくは約0.20wt.%未満のAl2O(3-x)(OH)2x(式中、xは0〜約0.8の範囲である)からなる物質を有する。このような物質としては、一般に、アルミナおよび活性アルミナ、すなわちアルミニウムトリヒドロキシドの熱分解生成物、酸化ヒドロキシド(oxide hydroxides)の熱分解生成物および非化学的量論ゼラチン状ヒドロキシドの熱分解生成物を挙げることができる。アルミナおよび/または活性アルミナを含むクレイは、上述の開示により排除されるものではない。
【0051】
[吸着剤組成物の製造方法]
本発明は、本発明によるパラキシレン選択吸着剤組成物の製造方法を提供する。一実施形態によれば、パラキシレン選択吸着剤は、モレキュラーシーブ物質を含む組成物から粉末を形成し、該粉末から水性混合物を形成し、該混合物を押し出して押出物を形成し、該押出物を乾燥させて本発明による吸着剤を形成することにより調製される。
【0052】
[吸着剤組成物特性]
本発明による吸着剤組成物のパラキシレン選択性およびスループットは、大輸送タイプマクロポア(約600Åを超える半径を有するポア)に起因するポア容積を増加させ、一方、より小さなメソポア(約600Å未満の半径を有するポア)に起因するポア容積を減少させることにより予測できない程度に改良された。同様に、本発明による吸着剤組成物の選択性およびスループットは、メソポア容積に対するマクロポア容積の比を増加させる場合に、予測できない程度に改良された。実施例12に記載するようにQuantachrome Poremaster 60ポロシメータを用いて、吸着剤組成物のポロシメータ測定を行った。
【0053】
吸着剤組成物のマクロポア容積およびメソポア容積は、当業者に知られている標準的な意味に代えることができる。マクロポアおよびメソポア容積は、例えばバインダを変更することによりおよび/または押出しの前にポア形成剤を吸着剤組成物に添加することにより、影響され得る。より多孔性のバインダ、例えばγ−アルミナからなるバインダなどを使用することにより、典型的には、開示された吸着剤のマクロポア容積を増加させる。吸着剤のマクロポア容積は、押出しの前に吸着剤組成物にNa2CO3などのポア形成剤を添加することによっても増加し得る。
【0054】
好ましくは、吸着剤組成物のマクロポア容積は約0.20cc/gよりも大きく、より好ましくは約0.30cc/gよりも大きく、最も好ましくは約0.35cc/gよりも大きい。好ましくは、吸着剤組成物のメソポア容積は約0.20cc/g未満であり、より好ましくは約0.15cc/g未満であり、最も好ましくは約0.10cc/g未満である。約0.35cc/gよりも大きなマクロポア容積および約0.10cc/g未満のメソポア容積を有する吸着剤が特に好ましい(例えば、約0.40cc/gのマクロポア容積および約0.05cc/gのメソポア容積を有する実施例7の吸着剤組成物参照)。
【0055】
メソポア容積に対するマクロポア容積の比を増加することは、本発明による吸着剤組成物に増加した選択性およびスループットを与える。好ましくは、吸着剤組成物は少なくとも約2より好ましくは少なくとも約5および最も好ましくは少なくとも約10のメソポアに対するマクロポアの容積比を有する。
【0056】
増加したスループット(供給物g/形成された吸着剤g/時間で測定したものとして)は、本発明による吸着剤組成物におけるマクロポアのポア容積を増加させることにより認められる追加の利点である。形成された吸着剤組成物のスループットは、所与量のC8炭化水素混合物を処理するために必要な吸着剤の量を決定する。したがって、スループットを増加することは結果的に、より小さな吸着剤組成物装填量および資本投資の削減をもたらす。
【0057】
[パラキシレン分離プロセス]
本発明は、本発明によるパラキシレン選択吸着剤を利用する、混合キシレン類(またはC8芳香族混合物)からパラキシレン(またはパラキシレンおよびエチルベンゼン)を効果的に分離する方法を提供する。吸着剤組成物を用いて、気相吸着プロセス、例えば任意の蒸気相スィング吸着プロセスにおいて効果的に分離することができる。したがって、圧力スィング吸着ユニット、部分圧力スィング吸着ユニットおよび熱スィング吸着ユニットを用いて本発明の方法を実施することができる。
【0058】
一実施形態によれば、本方法は、キシレン異性体群を含む供給混合物を本発明によるパラキシレン選択吸着剤と接触させる工程と、パラキシレン選択吸着剤からパラキシレンに富む生成物を含む流出物を脱着させる工程と、を含む。
【0059】
好ましくは、接触工程は、約145℃〜約400℃の間の運転温度および/または約345kPa〜約6895kPaの間の運転圧力にて行われる。より好ましくは、接触工程は、約200℃〜約300℃の間の運転温度および/または約448kPa〜約2068kPaの間の運転圧力にて行われる。運転温度は等温であり、および/または運転圧力は等圧であることが特に好ましい。
【0060】
一般的に、脱着工程は、掃引ガスを床に供給することを含む。典型的には、脱着工程は約145℃〜約400℃の間の運転温度および/または約345kPa〜約6895kPaの間の運転圧力にて行われる。より好ましくは、脱着工程は約200℃〜約300℃の間の運転温度および約448kPa〜約2068kPaの間の運転圧力にて行われる。
【0061】
本方法は、さらに、混合物を吸着剤と接触させてパラキシレン枯渇ラフィネートを得る工程と、パラキシレン枯渇ラフィネートの少なくとも一部を異性化して平衡キシレン異性体群を含む炭化水素混合物を得る工程とを含む。異性化工程により発生した平衡キシレン異性体群を含む炭化水素混合物は、好ましくはキシレン異性体群を含む供給混合物の少なくとも一部と組み合わせられる。
【0062】
本発明による吸着剤組成物は、キシレン異性体群を含むC8芳香族化合物の供給物からパラキシレンを吸着するための総圧力を減少させず/部分圧力をスィングする方法において用いることもできる。ここで、吸着されたパラキシレンに富む生成物は脱着され収集され、供給物の未吸着(パラキシレン枯渇)部分は異性化されて、供給物と組み合わせることができるキシレン異性体群の平衡混合物を生じさせる。この方法のより詳細は米国特許出願公開公報U. S. Patent Publication 2002/0107427(2001年7月10日)に記載されている。この方法の一実施形態は、一般に、実質的に減少しない総圧力にて、キシレン異性体群およびエチルベンゼンを含む気体状混合物をパラキシレン選択吸着剤と接触させてパラキシレン枯渇ラフィネートおよびパラキシレンに富む生成物を含む脱着流出物を得る工程を含む。この方法は、さらに、パラキシレン枯渇ラフィネートの少なくとも一部を異性化することを含む。異性化工程は、パラキシレン枯渇ラフィネートを異性化して、平衡キシレン異性体群を含む炭化水素混合物を得ることを含む。パラキシレンの收率を増加させるために、吸着剤との接触前に、異性化により得られた平衡キシレン異性体群の一部を混合物と組み合わせてもよい(すなわち、再循環)。
【実施例】
【0063】
以下の実施例は、本発明を説明するために与えられるものであって、本発明の範囲を限定するものではない。実施例1は、本発明による吸着剤組成物において用いるに適切なモレキュラーシーブ物質の調製に関する。実施例2は、本発明による吸着剤組成物を調製するための一般的手順に関する。実施例3〜11は、本発明による吸着剤組成物を調製するための特別の手順に関する。実施例12は、本発明による吸着剤組成物の多孔度を測定し計算するための手順に関する。実施例13は、実施例3〜11の吸着剤組成物に対する実験結果(例えば、選択性およびスループット)を説明する。
【0064】
[実施例1]
シリカライトは種々の標準的な手順から調製することができる。代表的な手順を用いて、18.4gの水酸化ナトリウム(NaOH)を227.6gの水に添加した。NaOHの溶解後、12.8gのテトラプロピルアンモニウムブロミド(TPABr)および122.6gのNalco 2327シリカゾル(40wt.%シリカ)を溶液に添加し、溶液を2時間撹拌した。この混合物に濃硫酸(H2SO4)をゆっくりと添加して、pHを13とした。得られる溶液をTEFLON(登録商標)裏打ちオートクレーブ内の自己圧力下で、1〜7日間、300゜F(149℃)にて加熱した。結晶を濾過し洗浄して中性pH濾過物とした。焼成の代わりに、モレキュラーシーブを329゜F(165℃)で4時間にわたり乾燥させた。
【0065】
[実施例2]
本発明による吸着剤組成物を以下の実施例に記載する成分を混合することにより一般的に調製した。
【0066】
より特定的には、実施例1に記載したように調製し乾燥させたモレキュラーシーブ物質を微小な均一粉末に粉砕した。バインダおよびポア形成剤は、場合によって添加した。適量の水を粉末(場合によっては1種以上のバインダおよび1種以上のポア形成剤をさらに含んでいてもよい)に添加して、1/16インチダイを有する4インチ単軸スクリューピン押出機で処理可能な水性混合物を形成した。少量の混合物を押出機開口部に導入した。押出物を最初に329゜F(165℃)で4時間にわたり乾燥させ、続いて950゜F(510℃)で4時間焼成して、モレキュラーシーブポアから有機鋳型イオンを除去した。
【0067】
[実施例3]
80wt.%のシリケートモレキュラーシーブ(実施例1に従って調製した)を20wt.%のカルシウム交換クレイと組み合わせることにより、本発明による吸着剤組成物を調製した。適切なカルシウム交換クレイは、モンモリロナイトグレードF-2(エンゲルハード社:Engelhard Corporation、ニュージャージー:New Jersey)である。
【0068】
[実施例4]
80wt.%のシリケートモレキュラーシーブ(実施例1にしたがって調製した)を20wt.%の合成層状シリケートと組み合わせることにより、本発明による吸着剤組成物を調製した。適切な合成層状シリケートは、ECS-3(エンゲルハード社:Engelhard Corporation、ニュージャージー:New Jersey)である。
【0069】
[実施例5]
80wt.%のシリカライトモレキュラーシーブ(実施例1にしたがって調製した)を17wt.%のカルシウム交換クレイおよび3wt.%のシリカと組み合わせることにより、本発明による吸着剤組成物を調製した。適切なシリカは、CAB-O-SILO(登録商標)HS-5(キャボット社:Cabot Corporation、マサチューセッツ:Massachusetts)である。
【0070】
[実施例6]
80wt.%のシリカライトモレキュラーシーブ(実施例1にしたがって調製した)、10wt.%のカルシウム交換クレイおよび10wt.%の合成層状シリケートを組み合わせることにより、本発明による吸着剤組成物を調製した。
【0071】
[実施例7]
80wt.%のシリカライトモレキュラーシーブ(実施例1にしたがって調製した)、10wt.%のカルシウム交換クレイおよび10wt.%の疑似ベーマイト(pseudo-boehmite)アルミナを組み合わせることにより、本発明による吸着剤組成物を調製した。適切な疑似ベーマイト(pseudo-boehmite)アルミナは、Versal 300アルミナ(UOP LLC、イリノイ:Illinois)である。
【0072】
[実施例8]
80wt.%のシリカライトモレキュラーシーブ(実施例1にしたがって調製した)および20wt.%の疑似ベーマイト(pseudo-boehmite)アルミナを組み合わせることにより、本発明による吸着剤組成物を調製した。押出しの前に、マクロポア形成を促進させるために、得られた混合物に追加の5wt.%のNa2CO3を添加した。
【0073】
[実施例9]
80wt.%のシリカライトモレキュラーシーブ(実施例1にしたがって調製した)および20wt.%のベイヤライト(bayerite)アルミナを組み合わせることにより、本発明による吸着剤組成物を調製した。適切なベイヤライト(bayerite)アルミナとしては、Catapal(商標)BおよびPlural(商標)BT アルミナ(SASOL North America Inc.,Texas)を挙げることができる。
【0074】
[実施例10]
80wt.%のシリカライトモレキュラーシーブ(実施例1にしたがって調製した)を10wt.%のベーマイト(boehmite)アルミナおよび10wt.%の疑似ベーマイト(pseudo-boehmite)アルミナと組み合わせることにより、本発明による吸着剤組成物を調製した。適切なベーマイト(boehmite)アルミナは、Pural(商標)SB アルミナ(SASOL North America Inc., Texas)である。
【0075】
[実施例11]
80wt.%のシリカライトモレキュラーシーブ(実施例1にしたがって調製した)を20wt.%の疑似ベーマイト(pseudo-boehmite)アルミナと組み合わせることにより、本発明による吸着剤を製造した。マクロポア形成を促進させるために、押出しの前に、得られる混合物に追加の1wt.%のNa2CO3を添加した。
【0076】
[実施例12]
Quantachrome Poremaster 60ポロシメータ(Quantachrome Instruments, Boynton Beach, Florida)を用いてポロシメータ測定を行った。ポロシメータ測定値は、Washburn式:PD =-4γ cos θ(式中、Pは付与した圧力であり、Dは直径であり、γは水銀の表面張力(480 dyne cm-1)であり、θは水銀とポア壁との間の接触角である)から計算される。
【0077】
およそ0.3g〜0.4gの吸着剤組成物サンプルを真空炉内でおよそ12時間にわたり、約140℃〜約150℃の間の温度で乾燥させた。水銀表面張力は480.00 dyne cm-1(erg/cm2とも表すことができる)であり、水銀接触角は140.0゜であった。圧力範囲は、20psia〜60,000psia(137.9kPa〜413, 688kPa)であった。充填圧力は14.7psia(101.4kPa)であった。実施例3〜11に従って調製した吸着剤組成物のポロシメータ結果をTable 1に示す。
【0078】
【表1】

【0079】
[実施例13]
実施例3〜11の吸着剤組成物を図1に示した2床吸着装置において、195℃および35psia(241.3kPa)にて試験して、パラキシレンおよびエチルベンゼンの回収率、選択率およびスループットを決定した。実験からの結果を下記Table 3に示す。
【0080】
実験に用いた供給ストリーム(a)の組成は、5.37wt.%エチルベンゼン、22.29wt.%パラキシレン、49.06wt.%メタキシレンおよび23.28wt.%オルソキシレンであった。供給ストリーム(a)の流量は85%の回収率が得られるように必要に応じて調節し、吸着剤組成物を等しい基準で比較した。掃引フロー(e)は、標準状態(窒素SCFH)で窒素15.0ft3/時間であった。
【0081】
図1に示すように、脱着流出物(c)をこれらの実験において別個の生成物として収集した。市販ユニットにおいて、ストリーム(c)は通常、供給ストリーム(a)に再循環される。
実験は、Table 2に示す吸着/脱着プログラムスケジュールに従って行った。
【0082】
【表2】

【0083】
すべての実験において、A1工程時間は64秒であり、D1工程時間は12秒であり、D2工程時間は52秒であった。
本明細書において、パラキシレン(pX)およびエチルベンゼン(EB)の回収率は
【0084】
【数1】

【0085】
として定義される。
本明細書において、吸着剤の選択率(一定供給組成物において)は:
【0086】
【数2】

【0087】
として定義される。
本明細書において、吸着剤組成物のスループットは:
【0088】
【数3】

【0089】
(式中、HCは液体炭化水素ストリームである)
として定義される。スループットのより基本的な測定は、形成された吸着剤の質量よりもモレキュラーシーブ物質の質量に基づく。しかし、この実施例中の形成された吸着剤のすべては約80wt.%のシーブを含むから、このスループットの定義は基本的な測定と基本的に等価であり直接関連する。
【0090】
本明細書において、多孔度因子P(単位なしパラメータ:a unitlessparameter)は:
【0091】
【数4】

【0092】
として定義される。
【0093】
【表3】

【0094】
さて図を参照すると、図2は実施例3〜11の吸着剤組成物に対するスループット対マクロポア容積のプロットである。図2は、吸着剤組成物のスループットは吸着剤組成物のマクロポア容積が増加するにつれて一般に増加することを示す。
【0095】
図3は、γ−アルミナの可変量を含む実施例7〜11の吸着剤組成物に対する(pX+EB)選択率対マクロポア容積を示すプロットから見た実施例3〜6の吸着剤組成物に対する(pX+EB)選択率対マクロポア容積のプロットである。図3は、同様のマクロポア容積値に対して、γアルミナ含有吸着剤組成物は実施例3〜6の吸着剤組成物よりもパラキシレンに対する選択性が低いことを示す。よって、吸着剤組成物はγ−アルミナを実質的に含まないことが好ましいことを示す。
【0096】
図4は、実施例7〜11の吸着剤組成物に対する(pX+EB)純度対Pを示すプロットから見た実施例3〜6の吸着剤組成物に対する(pX+EB)純度対Pのプロットを示す。図4は、同様のP値に対して、実施例7〜11のγ−アルミナ含有吸着剤組成物は、実施例3〜6の吸着剤組成物よりもパラキシレンに対する選択率が低いことを示す。よって、アルミナ含有吸着剤は、本発明によるアルミナを含まない吸着剤ほどに良好には分離を行わないことを示す。
【0097】
したがって、図3および4は、メソポアに対するマクロポアの容積比が2未満である実施例11は比較的不充分なC8芳香族化合物分離を行うことを示す。この吸着剤の比較的不充分な性能は、比較的低いスループットおよび選択率値(他の実施例の吸着剤のスループットおよび選択率値と比較した場合)の組み合わせで明らかとされる。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】図1は、本発明の吸着剤組成物および方法を利用するに適する典型的な2床吸着系を示す。
【図2】図2は、実施例3〜11の吸着剤組成物に対するスループット対マクロポア容積を示すグラフである。
【図3】図3は、実施例7〜11の吸着剤組成物に対する(pX+EB)純度対マクロポア容積を示すグラフからみた(pX+EB)純度対実施例3〜6の吸着剤組成物のマクロポア容積を示すグラフである。
【図4】図4は、実施例7-11の吸着剤組成物に対する(pX+EB)純度対P多孔度ファクターを示すグラフから見た実施例3〜6の吸着剤組成物に対する(pX+EB)純度対P多孔度ファクターを示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モレキュラーシーブ物質を含み、少なくとも約0.20cc/gのマクロポア容積を有し、約0.20cc/g未満のメソポア容積を有し、約2wt.%未満のγ−アルミナからなる物質を有する、吸着剤組成物。
【請求項2】
前記マクロポア容積は少なくとも約0.30cc/gである、請求項1に記載の吸着剤組成物。
【請求項3】
前記メソポア容積は約0.15cc/g未満である、請求項1に記載の吸着剤組成物。
【請求項4】
前記吸着剤組成物は、約2wt.%未満のAl2O(3-x)(OH)2x(式中xは0〜約0.8の範囲である)からなる物質を含む、請求項1に記載の吸着剤組成物。
【請求項5】
前記吸着剤組成物はメソポアに対するマクロポアの容積比が少なくとも約2である、請求項1に記載の吸着剤組成物。
【請求項6】
バインダをさらに含む、請求項1に記載の吸着剤組成物。
【請求項7】
前記バインダは、クレイ、シリカ、シリケート、ジルコニア、チタニアおよびリン酸アルミナからなる群より選択される、請求項6に記載の吸着剤組成物。
【請求項8】
前記バインダは吸着剤組成物の約50wt.%以下を構成する、請求項6に記載の吸着剤組成物。
【請求項9】
前記モレキュラーシーブ物質は、Mobil-5(MFI)、Mobil-11(MEL)、Mobil-23(MTT)、フェリエライト(FER)、Edinburgh University-1(EUO)、Mobil-57(MFS)、theta-1(TON)、アルミノホスフェート-11(AEL)、new-87(NES)、Mobil-12(MTW)およびアルミノホスフェート-31(ATO)からなる群より選択される構造タイプを有する、請求項1に記載の吸着剤組成物。
【請求項10】
前記モレキュラーシーブ物質は実質的に非酸性である、請求項1に記載の吸着剤組成物。
【請求項11】
(a)モレキュラーシーブ物質を含む組成物から粉末を形成する工程;
(b)該粉末から水性混合物を形成する工程;
(c)該混合物を押し出して押出物を形成する工程;および
(d)該押出物を乾燥させて、少なくとも約0.20cc/gのマクロポア容積および約0.20cc/g未満のメソポア容積を有する吸着剤を形成する工程
を含む方法。
【請求項12】
(a)キシレン異性体を含む混合物と、モレキュラーシーブ物質およびバインダを含むパラキシレン選択吸着剤とを接触させる工程;および
(b)パラキシレン選択吸着剤から、パラキシレンに富む生成物を含む流出物を脱着する工程を含み、
該吸着剤は少なくとも約0.20cc/gのマクロポア容積および約0.20cc/g未満のメソポア容積を有する、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2006−527068(P2006−527068A)
【公表日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−509007(P2006−509007)
【出願日】平成16年3月3日(2004.3.3)
【国際出願番号】PCT/US2004/006380
【国際公開番号】WO2004/098771
【国際公開日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【出願人】(503259381)ビーピー・コーポレーション・ノース・アメリカ・インコーポレーテッド (84)
【Fターム(参考)】