説明

パラシュート式アンカー及びそれを使用した地盤改良施工方法

【課題】1回のボーリングで磁気探査と地盤改良を同時に施工することを可能にするパラシュート式アンカー及びそれを使用した地盤改良施工方法を提供する。
【解決手段】折り曲げ可能な複数のアンカリングアーム1が軸方向に収納されたパラシュート式アンカー100にペーパードレーン20を取り付け、中空パイプ11を必要深度まで引き上げ、次に中空パイプ11を磁気探査用掘削孔に挿入し、次にパラシュート式アンカー100を中空パイプ11の内部に挿通し、次にプッシュロッド12によってパラシュート式アンカー100を押し込みながら中空パイプ11から押し出し、スプリング6の弾性力によってアンカリングアーム1がシャフト3を中心にして放射状に開き土中にアンカリングするようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パラシュート式アンカー及びそれを使用した地盤改良施工方法、特に1回のボーリングで磁気探査と地盤改良を同時に施工することを可能にするパラシュート式アンカー及びそれを使用した地盤改良施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
沖縄県のように、戦時中に投下された多くの不発弾が現在も地中に埋没している地域では、地盤改良・造成工事等を施工する際、その地盤下に不発弾が無いことを確認する磁気探査(不発弾調査)を行う必要がある。
この磁気探査は、その工程を図11に示す通り、ロータリ式ボーリングによって地中を掘削しながら、例えば50kg爆弾の場合は50cm掘削する毎に、或いは250kg爆弾の場合は1m掘削する毎に、磁気を持たないステンレスの筒状ケーシングを掘削孔に挿入し、次にその筒状ケーシング中に磁気センサを挿入して掘削孔下部に不発弾が無いことを確認し、また再びロータリ式ボーリングによって地中を掘削するという作業を必要深度(予定深度)に達するまで繰り返すことにより行われる。
【0003】
そのような磁気探査を所定間隔毎に行って全面積の地盤下に不発弾が無いことを確認した(磁気探査が完了した)後、図12に示す工程に従って、ペーパードレーン工法による地盤改良を施工する。ペーパードレーン工法とは、吸水性の素材から成る可撓性の帯状シート材を、地盤に所定間隔毎にその大部分を地中に埋没させる一方、その一端部を地表に露出させて打設し、そのシート材が地中の水分を吸収して地表へ排水(ドレーン)し、軟弱地盤の圧密沈下を促進する工法である。
このペーパードレーンによる土質安定処理(地盤改良)は、粘土やシルト粘土のような圧縮性のある場所や飽和土のある所で使用される。これらの土質は、非常に弱い土粒子や大きな間隙によって構成されており、いつも間隙水で一杯である。そのような土質が道路(用)堤防、載荷盛土、提などのような所に配置されると、土質は荷重により圧密沈下を生じ重大な問題を引き起こすことになるので、予め圧密沈下を促進させるため、縦ドレーンの打設を行い土中の水分を排出している。縦ドレーンの打設は間隙水のための流動道の長さを縮める役割を果たす。
【0004】
一方、従来、ペーパードレーン工法は、軸方向所定長さの中空ケーシングを地盤内に打ち込む大型の専用装置を用いて行なっており、中空ケーシング(打設管)内にペーパードレーンを挿通した状態で、打設管を垂直に地盤に打設し、ペーパードレーン先端が所定深さに達した状態でケーシングを引き抜くことによって、ペーパードレーンのみが地中に残ってその上端部が地表に飛び出す状態で打設される。そのため、ケーシングを引き抜くときにペーパードレーンがケーシングと共に引き抜かれないようにその先端部を地中に固定する必要があり、ペーパードレーンの先端部に引き抜きに対する抵抗を与えるためのアンカー部材を取り付けている。従来、そのためのアンカー部材として、ペーパードレーンの先端部をケーシングの先端部から突出させて該突出部にケーシングの開口端よりも大きい面積の矩形状の鋼板などの板材からなるアンカープレートを取り付けて、ケーシングを介して地中に打設し、ケーシングを引き抜くときアンカープレートは土壌から受ける抵抗によって土中に止められ、ケーシングだけが土中から抜かれるようにしたものが知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
このような従来の工法では、アンカープレートをケーシングの下端外方に位置した状態で打ち込みが行なわれるので、アンカープレートの面積が大きいとその分打ち込み抵抗が増大し、面積を小さくするとケーシング引き抜き時の充分なアンカー効果がえられないという問題点があり、充分なアンカー効果を得るためには、大きな加圧力を備えた大型の専用装置を用いて所定面積のアンカープレートを打設する必要があった。
このように、従来のペーパードレーン工法は、地盤にケーシングを介して打設装置によって所定間隔毎にペーパードレーンを敷設していく必要があり、前記磁気探査を行なう場合には、磁気探査のためのボーリングによる掘削とは全く別に新たな打設管の打設を必要としていた。
なお、ペーパードレーン工法におけるアンカー部材とは、まったく逆の作用をするものであるが、軟弱地盤への基礎支持杭打設工法において杭の沈下を防止するためのアンカーとして、ねじ送りされた圧入棒がスライド鋼管を押し下げることによって、スライド鋼管がネジ山付き主柱鋼管の内周面を摺動しながら相対変位し、スライド鋼管の先端部に放射状に配設された矢板が、輪環棒によって引っ張られパラシュート状に開き、軟弱地盤に頑丈で堅牢な基礎構築を可能にするパラシュートアンカーが知られている(例えば、特許文献3を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平5−57028号公報
【特許文献2】特開2000−20451号公報
【特許文献3】特開2002−121735号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図11及び図12から分かる通り、従来の磁気探査・地盤改良施工方法では、磁気探査のボーリングをした後に地盤改良の為のボーリングを新たに実施しなければならなかった。
このように、従来の工法は磁気探査と地盤改良を別々に施工するため、時間とコストがかかると共に、それぞれ専用の装置を用いて行っているため、設備コストも増大するという問題点があった。
また、上記パラシュートアンカーは、軟弱地盤上の建物を固定する固定手段であり、地盤改良用のペーパードレーンの固定手段としてはサイズ的に大き過ぎて使用することが出来ない。
従って、本発明は、かかる従来技術の問題点に鑑みなされたものであって、1回のボーリングで磁気探査と地盤改良を同時に施工することを可能にするパラシュート式アンカー及びそれを使用した地盤改良施工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するための請求項1に記載のパラシュート式アンカーは、中空パイプを介して地中の所定深さ位置まで打設してペーパードレーンを地中に固定するアンカーロックとしてのペーパードレーン用のパラシュート式アンカーであって、垂直方向に延びるシャフトを備えたアンカー本体と、該シャフト下端部に形成された取付部に放射状に開くことができるように基端部が枢着されている複数のアームとからなり、前記アンカー本体はペーパードレーン取付部を有し、前記アームは前記パイプ内では閉じた状態に保持され、前記アームが前記中空パイプを貫通すると地中に放射状に開いて引き抜き方向に対して抵抗を与えるように構成されていることを特徴とする。
本願発明者は、磁気探査においてボーリングされた掘削孔、すなわち筒状ケーシング(中空パイプ)を介して磁気センサを通すために使用された掘削孔を、地盤改良用のペーパードレーンを布設するための掘削孔として利用することが出来るならば、1回のボーリングで磁気探査と地盤改良を行うことが出来ることを思いながら、その磁気探査で使用した筒状ケーシング(中空パイプ)内部を通過することが出来るアンカーであって、筒状ケーシング(中空パイプ)を通過した後に開くことが出来るアンカーであるならば、1回のボーリングで磁気探査と地盤改良を行うことが出来ることを思いつき、上記構成のパラシュート式アンカーを考案するに至った。
【0008】
前記目的を達成するための請求項2に記載のパラシュート式アンカーでは、地中の所定深さ位置まで打設してペーパードレーンを地中に固定するアンカーロックとしてのペーパードレーン用のパラシュート式アンカーであって、垂直方向に延びるシャフトを備えたアンカー本体と、該シャフト下端部に形成された取付部に放射状に開くことができるように基端部が枢着されている複数のアームとからなり、前記アンカー本体はペーパードレーン取付部を有し、前記アームはロック手段によって予めロックされて閉じた状態に保持され、ロックを解除することにより前記アームが自動的又は手動的に地中に放射状に開いて引き抜き方向に対して抵抗を与えるように構成されていることを特徴とする。
本願発明者は、アンカーが開かないように予め軸方向に収納・ロックされた長軸(縦長)形状であるならば、上記筒状ケーシングを通過させることはせずに、棒状の物で圧力をかけ押し込み、必要深度に達すると、ロックを解除してアンカーを開くようにすれば、同様に1回のボーリングで磁気探査と地盤改良を行うことが出来ることを思いつき、上記構成のパラシュート式アンカーを考案するに至った。
【0009】
請求項3に記載のパラシュート式アンカーでは、前記アームは、弾性体によって前記シャフト下端部に放射状に開く方向に付勢されていることとした。
上記パラシュート式アンカーでは、アームが弾性体によって上記形態で付勢されているため、アンカー本体が筒状ケーシングを通過する時またはロック手段が解除される時に、自動的に全アームがシャフトを中心にして放射状に開いて引き抜き方向に対して抵抗を与えるようになる。
【0010】
請求項4に記載のパラシュート式アンカーでは、前記弾性体が前記シャフトに取り付けられた弾性ゴムであり、前記アームは該弾性ゴムを径方向に圧縮変形させて閉じた状態にあることとした。
上記パラシュート式アンカーでは、弾性ゴムはアームによって径方向に圧縮変形された状態でシャフトに取り付けられ、アームは筒状ケーシング又はロック手段によって閉じられた状態にあるため、アンカー本体が筒状ケーシングを通過する時またはロック手段が解除される時に、弾性ゴムの弾性力によって全アームが自動的にシャフトを中心にして放射状に好適に開いて引き抜き方向に対して抵抗を与えるようになる。
【0011】
前記目的を達成するための請求項5に記載のパラシュート式アンカーでは、中空パイプを介して地中の所定深さ位置まで打設して被固定物を地中に固定するアンカーロックとしてのパラシュート式アンカーであって、垂直方向に延びるシャフトを備えたアンカー本体と、該シャフト下端部に形成された取付部に放射状に開くことができるように基端部が枢着されている複数のアームとからなり、前記アンカー本体は被固定物取付部を有し、前記アームは前記パイプ内では閉じた状態に保持され、前記アームが前記中空パイプを貫通すると地中に放射状に開いて引き抜き方向に対して抵抗を与えるように構成されていることを特徴とする。
上記パラシュート式アンカーでは、前記アンカー本体は被固定物取付部を有しているため、ペーパードレーン以外の繋留手段を取り付けることが可能となる。そのため、その繋留手段が取り付けられたアンカー本体が中空パイプを貫通することにより、アームがシャフトを中心にして放射状に開いて引き抜き方向に対して抵抗を与え、陸上または海上における構造物または資材等に対する固定手段として使用することが出来るようになる。
【0012】
前記目的を達成するための請求項6に記載のパラシュート式アンカーでは、地中の所定深さ位置まで打設して被固定物を地中に固定するアンカーロックとしてのパラシュート式アンカーであって、垂直方向に延びるシャフトを備えたアンカー本体と、該シャフト下端部に形成された取付部に放射状に開くことができるように基端部が枢着されている複数のアームとからなり、前記アンカー本体は被固定物取付部を有し、前記アームはロック手段によって予めロックされて閉じた状態に保持され、ロックを解除することにより前記アームが自動的又は手動的に地中に放射状に開いて引き抜き方向に対して抵抗を与えるように構成されていることを特徴とする。
上記パラシュート式アンカーでは、前記アンカー本体は被固定物取付部を有しているため、ペーパードレーン以外の繋留手段を取り付けることが可能となる。そのため、その繋留手段が取り付けられたアンカー本体を必要深度まで押し込みロック手段を解除することにより、アームがシャフトを中心にして放射状に開いて引き抜き方向に対して抵抗を与え、陸上または海上における構造物または資材等に対する固定手段として使用することが出来るようになる。
【0013】
前記目的を達成するための請求項7に記載のパラシュート式アンカーを使用した地盤改良施工方法は、請求項1〜4の何れか1項に記載されたパラシュート式アンカーを使用した地盤改良施工方法であって、前記パラシュート式アンカーに土中の水分を吸収するペーパードレーンを取り付け、掘削孔に筒状ケーシングを挿入し、該筒状ケーシング内に前記アンカー本体を挿通し、次にロッドによって前記アンカー本体を押し込みながら、前記アンカー本体を前記筒状ケーシングから押し出し、前記アームを放射状に開き前記ペーパードレーンをアンカリングすることを特徴とする。
上記パラシュート式アンカーを使用した地盤改良施工方法では、掘削孔内に設けられた筒状ケーシングの内部を上記請求項1〜4の何れか1項に記載のパラシュート式アンカーを貫通させることにより、アームがシャフトを中心にして放射状に開いて引き抜き方向に対して抵抗を与え、地中にペーパードレーンを打設することが出来るようになる。
【0014】
前記目的を達成するための請求項8に記載のパラシュート式アンカーを使用した地盤改良施工方法は、請求項1〜4の何れか1項に記載されたパラシュート式アンカーを使用した地盤改良施工方法であって、前記パラシュート式アンカーに土中の水分を吸収するペーパードレーンを取り付け、前記アームを固定リングによって予め開くことが出来ないようにロックし、掘削孔に前記アンカー本体を挿入し、次にロッドによって前記アンカー本体に圧力をかけながら必要深度まで押し込み、該ロックを解除することにより前記アームを放射状に開き前記ペーパードレーンをアンカリングすることを特徴とする。
上記パラシュート式アンカーを使用した地盤改良施工方法では、掘削孔内を上記請求項1〜4の何れか1項に記載のパラシュート式アンカーを必要深度まで押し込みロックを解除することにより、全アームがシャフトを中心にして放射状に開いて引き抜き方向に対して抵抗を与え、地中にペーパードレーンを打設することが出来るようになる。
【0015】
請求項9に記載のパラシュート式アンカーを使用した地盤改良施工方法は、前記掘削孔が磁気探査用のボーリング孔であり、前記筒状ケーシングが磁気探査で使用した掘削孔に打設された状態にある磁気探査用の非磁性体の筒状ケーシングであり、磁気探査用掘削孔と非磁性体筒状ケーシングをペーパードレーンの敷設に兼用したことを特徴とする。
上記地盤改良施工方法では、上記請求項1〜4の何れか1項に記載のパラシュート式アンカーを使用することにより、磁気探査用掘削孔を、地盤改良用のペーパードレーンを敷設するための掘削孔として利用することが出来るようになるため、1回のボーリングで磁気探査と地盤改良を行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のパラシュート式アンカーによれば、ボーリングした掘削孔、例えば磁気探査用掘削孔をそのまま流用して地盤改良用のペーパードレーンを敷設することが出来るようになる。その結果、1回のボーリングで磁気探査と地盤改良を同時に施工することが出来るようになる。
また、従来のアンカーは硬質地盤のみでのアンカリングしか出来なかったが、本発明のパラシュート式アンカーは従来のアンカーと異なり硬質地盤及び軟弱層でもアンカリングすることが出来ると共に、必要深度に到達すると自動的又は手動的に各アームが折れて又は締結具を支点に回転し全アームがシャフトを中心にして放射状に開きアンカリングするパラシュート式のため、地表面から深部まで幅広く対象物を固定することが出来るようになる。
また、本発明の地盤改良施工方法によれば、本発明のパラシュート式アンカーを使用することにより、磁気探査用掘削孔を利用して、地盤改良用のペーパードレーンを好適に敷設することが出来るようになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施例1に係るパラシュート式アンカーを示す要部説明図である。
【図2】本発明の実施例1に係るパラシュート式アンカーを利用した地盤改良施工方法を示す説明図である。
【図3】本発明の実施例2に係るパラシュート式アンカーを示す要部説明図である。
【図4】本発明の実施例2に係るパラシュート式アンカーを利用した地盤改良施工方法を示す説明図である。
【図5】本発明の実施例3に係るパラシュート式アンカーを示す要部説明図である。
【図6】本発明の実施例3に係るパラシュート式アンカーを利用した地盤改良施工方法を示す説明図である。
【図7】本発明の実施例4に係るパラシュート式アンカーを示す要部説明図である。
【図8】本発明の実施例4に係るパラシュート式アンカーを利用した地盤改良施工方法を示す説明図である。
【図9】ペーパードレーンを布設した後の地盤状態を示す説明図である。
【図10】本発明の磁気探査(不発弾調査)及び地盤改良同時施工の手順を示すフロー図である。
【図11】従来施工法の磁気探査(不発弾調査)の手順を示すフロー図である。
【図12】従来施工法の地盤改良(ペーパードレーン工法)の手順を示す説明図である。
【図13】本発明の実施例5に係るパラシュート式アンカーの閉状態を示す要部説明図である。
【図14】本発明の実施例5に係るパラシュート式アンカーの開状態を示す要部説明図である。
【図15】本発明の実施例6に係るパラシュート式アンカーの開状態を示す要部説明図である。
【図16】本発明の実施例7に係るパラシュート式アンカーの開状態を示す要部説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図に示す実施の形態により本発明をさらに詳細に説明する。
【実施例1】
【0019】
図1は、本発明の実施例1に係るパラシュート式アンカー100を示す要部説明図である。なお、図1(a)はアームが閉じた状態を示す斜視図であり、同(b)はアームが折れて全アームが放射状に開いた状態を示す斜視図である。
このパラシュート式アンカー100は、垂直方向に延びるシャフトを備えたアンカー本体10と、シャフトの下端部に形成された取付部としてのヘッドに放射状に開くことができるように基端部が枢着されている複数のアームとから成り、アンカー本体10にアンカリングする土中の水分を吸収するペーパードレーン20が取り付けられるように構成されている。
このパラシュート式アンカー100では、図1(b)に示される通り、上記複数のアームは、公知のリンク・ジョイント機構によって軸方向に沿って折り曲げ可能に構成された、土中にアンカリングする互いにリンク結合された一対のリンクアームからなるアンカリングアーム1と、その一端をアンカリングアーム1に回転自由に取り付けられ、アンカリングアーム1を支持するサポートアーム2とを具備して構成され、他方、アンカー本体10はアンカリングアーム1の一端を回転自由に支持しながらシャフト3上を移動するスライダー4と、サポートアーム2の一端を回転自由に支持しながらシャフト3上を移動するサブスライダー5と、スライダー4とサブスライダー5を連結するスプリング6と、アンカリングアーム1の他端を回転自由に支持するヘッド7と、アンカー本体10を押し込むロッドを受けるプッシュプレート8とを具備して構成される。
【0020】
なお、このパラシュート式アンカー100では、スプリング6が圧縮状態から解放されて弾発してスライダー4を押し出すことにより、サブスライダー5がヘッド7の方向に移動(ジャンプ)してアンカリングアーム1を圧縮し、その結果アンカリングアーム1が「くの字」状に折れ全アームが放射状に開くことになる。図1(a)のスプリング6は圧縮された状態であり、従ってアンカリングアーム1は「くの字」状に折れる方向に付勢された状態にある。また、詳細については、図2を参照しながら後述するが、このパラシュート式アンカー100は、中空パイプ(筒状ケーシング)の内部に挿通されて、ロッドによって押し込まれ、中空パイプを抜け出ると、スプリング6の弾性力によってアンカリングアーム1が「くの字」状に折れ全アームが放射状に開いて引き抜き方向に対して抵抗を与えるように(アンカリングするように)構成されている。
【0021】
図2は、本発明の実施例1に係るパラシュート式アンカー100を利用した地盤改良施工方法を示す説明図である。図2(a)から同(d)にかけて時系列順にその要部が示されている。
先ず、図2(a)に示す通り、磁気探査においてボーリングされた掘削孔に中空パイプ11を挿入する。ここでは、この中空パイプ11として、同じく磁気探査において磁気センサを通すガイドとして使用されたもの(磁気を持たないステンレスのケーシング)を再度使用するが、ペーパードレーン20が取り付けられたパラシュート式アンカー100がその内部を通過することが出来る程度の内径を有する中空パイプであれば、特にその種類は問わない。しかしながら、本実施例は磁気探査の為に打ち込まれたステンレスケーシングを磁気探査後引き抜かないでそのままペーパードレーン打設用のケーシングとして使用するものである。
【0022】
また、この地盤改良施工方法では、中空パイプ11を貫通したパラシュート式アンカー100の全アームが開くことができるように、予め図2(a)に示すように中空パイプ11をアンカリングする必要深度まで引き上げて、中空パイプ11の出口下方に空洞を形成する必要がある。
【0023】
次に、ペーパードレーン20が取り付けられたパラシュート式アンカー100を中空パイプ11の内部に挿通し、プッシュロッド12によってパラシュート式アンカー100を鉛直下方へ押し込む。
【0024】
次に、プッシュロッド12によって、パラシュート式アンカー100が中空パイプ11から押し出されるまでアンカー本体10を鉛直下方へ更に押し込む。
【0025】
パラシュート式アンカー100のアンカリングアーム1が開くと、中空パイプ11及びプッシュロッド12を引き抜いて、ペーパードレーン20の布設を完了する。
【0026】
以上の方法は、磁気探査においてボーリングされた掘削孔を利用して、中空パイプ11とプッシュロッド12によってペーパードレーン20が取り付けられたパラシュート式アンカー100を必要深度まで送り出し、そこでアンカリングアーム1をスプリング6の弾性力によって放射状に開きアンカリングする、いわゆるケーシング打設法(ジャンプ式)である。この方法によれば、ペーパードレーン20を布設するためのボーリングが不要となるため、1回のボーリングで磁気探査と地盤改良を行うことが出来るようになる。
【実施例2】
【0027】
図3は、本発明の実施例2に係るパラシュート式アンカー200を示す要部説明図である。なお、図3(a)はアームが閉じた状態を示す斜視図であり、同(b)はアームが放射状に開いた状態を示す斜視図である。
このパラシュート式アンカー200は、上記パラシュート式アンカー100からスプリング6を除いた機構である。従って、アンカリングアーム1は自動的に放射状に開くことは出来ないため、アンカリングアーム1が開くようにアンカー本体30(アンカー本体10からスプリング6を除いた機構)に作用する負荷を外部から別途加える必要がある。本パラシュート式アンカー200では、パラシュート式アンカー200にペーパードレーン20を取り付け、そのペーパードレーン20を鉛直上方に引くことにより、アンカー本体30が掘削孔に抗する際の土圧をアンカリングアーム1を開く負荷として利用している。
【0028】
図4は、本発明の実施例2に係るパラシュート式アンカー200を利用した地盤改良施工方法を示す説明図である。図4(a)から同(d)にかけて時系列順にその要部が示されている。
先ず、図4(a)に示す通り、磁気探査においてボーリングされた掘削孔に中空パイプ11を挿入する。なお、本実施例における中空パイプ11は、磁気探査の為に打ち込まれたステンレスケーシングを磁気探査後引き抜かないでそのままペーパードレーン打設用のケーシングとして使用するものである。また、この地盤改良施工方法でも実施例1に係る地盤改良施工方法と同様に、中空パイプ11を貫通したパラシュート式アンカー200のアンカリングアーム1が開くことができるように、予め図4(a)に示すように中空パイプ11をアンカリングする必要深度まで引き上げて、中空パイプ11の出口下方に空洞を形成する必要がある。
【0029】
次に、ペーパードレーン20が取り付けられたパラシュート式アンカー200を中空パイプ11の内部に挿通し、プッシュロッド12によってパラシュート式アンカー200を鉛直下方へ押し込む。
【0030】
次に、プッシュロッド12によって、パラシュート式アンカー200が中空パイプ11から押し出されるまでアンカー本体30を鉛直下方へ更に押し込む。パラシュート式アンカー200が中空パイプ11から押し出されると、中空パイプ11及びプッシュロッド12を掘削孔から引き抜く。
【0031】
ペーパードレーン20を鉛直上方に引いてアンカリングアーム1を放射状に開いてアンカリングする。
【0032】
以上の方法は、磁気探査においてボーリングされた掘削孔を利用して、中空パイプ11とプッシュロッド12によってペーパードレーン20が取り付けられたパラシュート式アンカー200を必要深度まで送り出すまでの工程は、上記パラシュート式アンカー100を利用した地盤改良施工方法と共通するが、アンカリングアーム1を開く負荷として、ペーパードレーン20を鉛直上方に引くことによる、アンカー本体30が掘削孔に抗する際の土圧を利用した点が相違する。この工法は、上記ケーシング打設法(ジャンプ式)に対し、いわゆるケーシング打設法(ノーマル式)である。この方法も、上記ケーシング打設法(ジャンプ式)と同様に、ペーパードレーン20を布設するためのボーリングが不要となるため、1回のボーリングで磁気探査と地盤改良を行うことが出来るようになる。
【実施例3】
【0033】
図5は、本発明の実施例3に係るパラシュート式アンカー300を示す要部説明図である。なお、図5(a)はアームが閉じた状態を示す斜視図であり、同(b)はロックピン41周りの凹凸嵌合状態を示す説明図である。
このパラシュート式アンカー300は、上記パラシュート式アンカー100に対しアンカーロック40とプレスカップ50を加えた機構である。このアンカーロック40はアンカリングアーム1が自動的に開くことを抑止する拘束リングである。図示されている通り、凸接点の半リングと凹接点の半リングが蝶番機構によって結合され、凹凸接点はロックピン41によって固定されている。プレスカップ50は、棒状の長軸物でアンカー本体10に圧力をかけて押し込む圧力受けである。従って、このパラシュート式アンカー300を必要深度まで押し込む際は、中空パイプ11は使用されない。つまり、予めアンカーロック40によってアンカリングアーム1が軸方向に収納され全体が縦長状態にあるアンカー本体10を長軸物で圧力をかけて掘削孔を強引に通しながら必要深度まで送り込む。
【0034】
図6は、本発明の実施例3に係るパラシュート式アンカー300を利用した地盤改良施工方法を示す説明図である。図6(a)から同(d)にかけて時系列順にその要部が示されている。
先ず、図6(a)に示す通り、ペーパードレーン20が取り付けられたパラシュート式アンカー300を磁気探査においてボーリングされた掘削孔に挿入する。ケーシング13によってパラシュート式アンカー300に圧力をかけて掘削孔内に押し込む。
【0035】
次に、パラシュート式アンカー300が必要深度に達すると、ケーシング13を鉛直上方へ掘削孔から引き抜く。
【0036】
次に、ロックピン41を引き抜くためのワイヤ42を鉛直上方に引いてアンカーロック40からロックピン41を引いてロックを解除する。
【0037】
パラシュート式アンカー300のアンカリングアーム1が開くと、ワイヤ42を掘削孔から引き抜いて、ペーパードレーン20の布設を完了する。
【0038】
以上の方法は、磁気探査においてボーリングされた掘削孔を利用してケーシング13によってペーパードレーン20が取り付けられたパラシュート式アンカー300を必要深度まで送り出し、そこでワイヤ42を引いてアンカーロック40からロックピン41引き抜いて、スプリング6の弾性力によってアンカリングアーム1を放射状に開きアンカリングする、いわゆる直接打設法(ジャンプ式)である。この方法もまた、上記ケーシング打設法と同様にペーパードレーン20を布設するためのボーリングが不要となるため、1回のボーリングで磁気探査と地盤改良を行うことが出来るようになる。
【実施例4】
【0039】
図7は、本発明の実施例4に係るパラシュート式アンカー400を示す要部説明図である。
このパラシュート式アンカー400は、上記パラシュート式アンカー300からスプリング6を除いた機構である。従って、アンカリングアーム1は自動的に放射状に開くことは出来ないため、アンカリングアーム1が開くようにアンカー本体30に作用する負荷を外部から別途加える必要がある。本パラシュート式アンカー400も上記パラシュート式アンカー200と同様に、ペーパードレーン20を鉛直上方に引くことにより、アンカー本体30が掘削孔に抗する際の土圧をアンカリングアーム1を開く負荷として利用している。
【0040】
図8は、本発明の実施例4に係るパラシュート式アンカー400を利用した地盤改良施工方法を示す説明図である。図8(a)から同(d)にかけて時系列順にその要部が示されている。
先ず、図8(a)に示す通り、ペーパードレーン20が取り付けられたパラシュート式アンカー400を磁気探査においてボーリングされた掘削孔に挿入する。ケーシング13によってパラシュート式アンカー400に圧力をかけて掘削孔内に押し込む。
【0041】
次に、パラシュート式アンカー400が必要深度に達すると、ケーシング13を鉛直上方へ掘削孔から引き抜く。
【0042】
次に、ロックピン41を引き抜くためのワイヤ42を鉛直上方に引いてアンカーロック40からロックピン41を引いてロックを解除する。
【0043】
ペーパードレーン20を鉛直上方に引いてアンカリングアーム1を開き土中にアンカリングし、ペーパードレーン20の布設を完了する。
【0044】
以上の方法は、磁気探査においてボーリングされた掘削孔を利用してケーシング13によってペーパードレーン20が取り付けられたパラシュート式アンカー400に圧力をかけて必要深度まで送り込み、そこでワイヤ42を引いてアンカーロック40からロックピン41引き抜いて、更にペーパードレーン20を鉛直上方に引くことにより、アンカー本体30が掘削孔に抗する際の土圧をアンカリングアーム1を開く負荷として利用した直接打設法(ノーマル式)である。
この方法もまた、上記ケーシング打設法および上記直接打設法(ジャンプ式)と同様に、ペーパードレーン20を布設するためのボーリングが不要となるため、1回のボーリングで磁気探査と地盤改良を行うことが出来るようになる。
【0045】
図9は、ペーパードレーン20を布設した後の地盤状態を示す説明図である。
時間が経つと地盤が崩れ、ペーパードレーン20が地中の水分を吸い上げ、地中の水分を鉛直上方にドレーンして地表に放出する。ペーパードレーン20が水分を放出し続けると、地盤が圧密され、強度が増す。
【0046】
図10は、上記パラシュート式アンカーを使用した本発明の磁気探査(不発弾調査)及び地盤改良同時施工の手順を示すフロー図である。
ここでは、ペーパードレーンを布設する工法として上記パラシュート式アンカー100または上記パラシュート式アンカー200を使用した、いわゆるケーシング打設法(ジャンプ式、ノーマル式)が用いられている。
先ず、予め土質調査によって不発弾埋没深度および地盤改良深度を算出し、探査孔をボーリングするための探査孔位置を決定する。なお、このボーリングされた探査孔は、ペーパードレーンを布設するための布設孔としても使用されることになる。
次に、探査孔位置をロータリボーリングにて掘削する。なお、必要深度までの掘削は段階的に行われる。すなわち、50kg爆弾を想定する場合は50cm毎、あるいは250kg爆弾を想定する場合は1m毎掘削し、孔下に不発弾が無いことを逐次確認しながら掘削する。また、不発弾がないことの確認は、掘削孔に磁荷を有しない筒状ケーシングを挿入し、その内部に磁気センサを挿通し、磁気センサが孔下の磁気をセンシングすることにより行われる。
必要深度に達した掘削孔下に不発弾が無いことを確認する(磁気異常が無いことを確認する)と、その探査孔に対し、上記図2または図4にて示された地盤改良施工方法によって、ペーパードレーンが布設されることになる。そして、ペーパードレーンの布設確認後ケーシングが布設孔から引き抜かれて施工が完了する。
このように、この地盤改良施工方法によれば、1回のボーリングで磁気探査と地盤改良を行うことが出来るようになる。
【実施例5】
【0047】
図13は、本発明の実施例5に係るパラシュート式アンカー500を示す要部説明図である。
上記実施例1及び3に係るパラシュート式アンカー100,300においては何れもスプリング6の弾性力によってアンカリングアーム1(アンカー)をシャフト3を中心にして放射状に開く機構を採用しているが、このパラシュート式アンカー500では、ゴムの弾性力によってアンカーを放射状に開く機構を採用している。また、アンカリングアームとして、縦長プレートに捩り加工が施された捩り羽根14を採用している。
そのため、パラシュート式アンカー500は、アンカリングアームとしての捩り羽根14をシャフト3を中心にして放射状に開くゴム15を受けるスリーブ16と、そのスリーブ16の外周面に直交して設けられ、捩り羽根14を係止する係止プレート17と、係止プレート17に捩り羽根14を取り付けるネジ18及びナット19と、ゴム15の軸方向の移動を拘束するワッシャ21とを新たに具備して構成されている。
【0048】
捩り羽根14は、本実施例では縦長プレートを軸方向回りに約90°捩った捩り加工が施されている。なお、捩り角度については、90°だけに限定されるのではなく、捩り羽根14がアンカリングする地盤の土質等によって、0°〜180°の範囲内で好適に決定される。また、捩り羽根14の枚数は、本実施例では3枚であるが、3枚に限定されるのではなく、捩り羽根14がアンカリングする地盤の土質等によって、決定されることになる。
【0049】
捩り羽根14は、図14に示すように、ネジ18を支点に回転することができるように構成されている。そのため、ネジ18の皿部下面からナット19の上面に到る長さは、「係止プレート17の板厚」と「捩り羽根14の板厚」との合計値よりも大きくなるように、捩り羽根14はネジ18及びナット19によって係止プレート17に回動可能に緩く締結されている。なお、捩り羽根14は地中にアンカリングする前は、中空パイプ11またはアンカーロック40等によって開動作が制限された状態(閉じた状態)にある。
【0050】
ゴム15は、捩り羽根14が閉じた状態では径方向に圧縮変形させられた状態にある。従って、捩り羽根14に対する制限が解除された時、ゴム15の径方向の弾性力によって各捩り羽根14がネジ18を支点に外側に倒れることにより、全捩り羽根14がシャフト3を中心にして放射状に開いて引き抜き方向に対して抵抗を与えるように(アンカリングするように)なる。
【0051】
シャフト3の外周面にはワッシャ21を係止する係止ビード3aが、複数箇所、例えば2箇所に設けられている。
【0052】
なお、このパラシュート式アンカー500を利用した地盤改良施工方法については、実施例1の図2に示す工法と同様に、ペーパードレーン20が取り付けられたパラシュート式アンカー500を中空パイプ11の内部に挿通し、プッシュロッド12によってパラシュート式アンカー500を鉛直下方へ押し込み、そして中空パイプ11から押し出すことによって、ゴム15の弾性力によって捩り羽根14がシャフト3を中心にして放射状に開き地中にアンカリングするケーシング打設法(ジャンプ式)を適用することが出来る。
【0053】
或いは、実施例3の図5に示す工法と同様に、ペーパードレーン20が取り付けられたパラシュート式アンカー500に対し、更にアンカーロック40及びプレスカップ50を加えた構成とし、図6に示すようにケーシング13によってパラシュート式アンカー500に圧力をかけて掘削孔内に押し込む。そして、パラシュート式アンカー500が必要深度に達すると、ワイヤ42を鉛直上方に引いてアンカーロック40からロックピン41を引いてロックを解除し、ゴム15の弾性力によって捩り羽根14がシャフト3を中心にして放射状に開き地中にアンカリングする直接打設法(ジャンプ式)を適用することが出来る。
【実施例6】
【0054】
図15は、本発明の実施例6に係るパラシュート式アンカー600を示す要部説明図である。
このパラシュート式アンカー600は、上記パラシュート式アンカー500からゴム15、係止ビード3a及びワッシャ21を取り除いた構成である。この場合、実施例2及び4のパラシュート式アンカー200,400と同様に、ペーパードレーン20を鉛直方向に引く時に捩り羽根14が掘削孔に抗する土圧を、捩り羽根14を開く負荷として利用している。
【0055】
従って、ペーパードレーン20が取り付けられたパラシュート式アンカー600を利用した地盤改良施工方法についても、実施例2の図4に示す工法と同様に、中空パイプ11及びプッシュロッド12を使用してパラシュート式アンカー600を地中に押し込み、パラシュート式アンカー600が必要深度に到達すると、中空パイプ11及びプッシュロッド12を引き抜いて、ペーパードレーン20を鉛直上方に引くことにより、捩り羽根14が掘削孔に抗する際に受ける土圧によって、捩り羽根14がシャフト3を中心にして放射状に開き地中にアンカリングするケーシング打設法(ノーマル式)を適用することが出来る。
【0056】
或いは、実施例4の図8に示す工法と同様に、ペーパードレーン20が取り付けられたパラシュート式アンカー600に対し、更にアンカーロック40及びプレスカップ50を加えた構成とし、図8に示すようにケーシング13によってパラシュート式アンカー600に圧力をかけて掘削孔内に押し込む。そして、パラシュート式アンカー600が必要深度に達すると、ケーシング13を引き抜いて、ワイヤ42を鉛直上方に引いてアンカーロック40からロックピン41を引いてロックを解除し、ペーパードレーン20を鉛直上方に引くことにより、捩り羽根14が掘削孔に抗する際に受ける土圧によって、捩り羽根14が放射状に開き地中にアンカリングする直接打設法(ノーマル式)を適用することが出来る。
【実施例7】
【0057】
図16は、本発明の実施例7に係るパラシュート式アンカー700を示す要部説明図である。
上記パラシュート式アンカー500ではゴム15の弾性力によって捩り羽根14(アンカリングアーム)をシャフト3を中心にして放射状に開く機構を採用しているが、このパラシュート式アンカー700では、ゼンマイ式バネ22の弾性力によって捩り羽根14をシャフト3を中心にして放射状に開く機構を採用している。その他の構成についてはパラシュート式アンカー500と同じである。
また、ペーパードレーン20が取り付けられたパラシュート式アンカー700を利用した地盤改良施工方法についても、ペーパードレーン20が取り付けられたパラシュート式アンカー500を利用した地盤改良施工方法と同じである。
【0058】
なお、上記実施例5から実施例7では、アンカリングアームの好ましい形状として捩り羽根としたが、必ずしも本実施例の形状に限らず、板状、棒状等の引き抜き方向に対して抵抗を与えるアンカリングアームの形状のものであれば良い。
【実施例8】
【0059】
また、上記実施例1から実施例7に係るパラシュート式アンカーは何れも、ボーリングした既設の掘削孔、例えば磁気探査用掘削孔をそのまま流用してペーパードレーンを地中に布設する布設手段として使用されているが、これだけに限定されず、新たに掘削孔をボーリングし、構造物の固定手段(繋留手段)として使用することも可能である。この場合、上記実施例1から実施例7に係るペーパードレーン20に代えて、ケーブル(ワイヤー)又はロープ等の繋留具が使用され、繋留具が取り付けられたパラシュート式アンカーが上記実施例1から6に係る施工方法と同様な方法によって地中にアンカリングされることになる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明のパラシュート式アンカーは、海上・海中でブイ等の標識及び構造物を固定する固定手段として、或いは海上・海中で地盤改良材等の資材を固定する固定手段として、或いは陸上で構造物等を固定する固定手段として好適に適用可能である。
【符号の説明】
【0061】
1 アンカリングアーム
2 サポートアーム
3 シャフト
4 スライダー
5 サブスライダー
6 スプリング
7 ヘッド
8 プッシュプレート
10 アンカー本体
11 中空パイプ
12 プッシュロッド
13 ケーシング
14 捩り羽根
15 ゴム
16 スリーブ
17 係止プレート
18 ネジ
19 ナット
20 ペーパードレーン
21 ワッシャ
22 ゼンマイ式バネ
100,200,300,400,500,600,700 パラシュート式アンカー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空パイプを介して地中の所定深さ位置まで打設してペーパードレーンを地中に固定するアンカーロックとしてのペーパードレーン用のパラシュート式アンカーであって、垂直方向に延びるシャフトを備えたアンカー本体と、該シャフト下端部に形成された取付部に放射状に開くことができるように基端部が枢着されている複数のアームとからなり、前記アンカー本体はペーパードレーン取付部を有し、前記アームは前記パイプ内では閉じた状態に保持され、前記アームが前記中空パイプを貫通すると地中に放射状に開いて引き抜き方向に対して抵抗を与えるように構成されていることを特徴とするパラシュート式アンカー。
【請求項2】
地中の所定深さ位置まで打設してペーパードレーンを地中に固定するアンカーロックとしてのペーパードレーン用のパラシュート式アンカーであって、垂直方向に延びるシャフトを備えたアンカー本体と、該シャフト下端部に形成された取付部に放射状に開くことができるように基端部が枢着されている複数のアームとからなり、前記アンカー本体はペーパードレーン取付部を有し、前記アームはロック手段によって予めロックされて閉じた状態に保持され、ロックを解除することにより前記アームが自動的又は手動的に地中に放射状に開いて引き抜き方向に対して抵抗を与えるように構成されていることを特徴とするパラシュート式アンカー。
【請求項3】
前記アームは、弾性体によって前記シャフト下端部に放射状に開く方向に付勢されている請求項1又は2に記載のパラシュート式アンカー。
【請求項4】
前記弾性体が前記シャフトに取り付けられた弾性ゴムであり、前記アームは該弾性ゴムを径方向に圧縮変形させて閉じた状態にある請求項3に記載のパラシュート式アンカー。
【請求項5】
中空パイプを介して地中の所定深さ位置まで打設して被固定物を地中に固定するアンカーロックとしてのパラシュート式アンカーであって、垂直方向に延びるシャフトを備えたアンカー本体と、該シャフト下端部に形成された取付部に放射状に開くことができるように基端部が枢着されている複数のアームとからなり、前記アンカー本体は被固定物取付部を有し、前記アームは前記パイプ内では閉じた状態に保持され、前記アームが前記中空パイプを貫通すると地中に放射状に開いて引き抜き方向に対して抵抗を与えるように構成されていることを特徴とするパラシュート式アンカー。
【請求項6】
地中の所定深さ位置まで打設して被固定物を地中に固定するアンカーロックとしてのパラシュート式アンカーであって、垂直方向に延びるシャフトを備えたアンカー本体と、該シャフト下端部に形成された取付部に放射状に開くことができるように基端部が枢着されている複数のアームとからなり、前記アンカー本体は被固定物取付部を有し、前記アームはロック手段によって予めロックされて閉じた状態に保持され、ロックを解除することにより前記アームが自動的又は手動的に地中に放射状に開いて引き抜き方向に対して抵抗を与えるように構成されていることを特徴とするパラシュート式アンカー。
【請求項7】
請求項1〜4の何れか1項に記載されたパラシュート式アンカーを使用した地盤改良施工方法であって、前記パラシュート式アンカーに土中の水分を吸収するペーパードレーンを取り付け、掘削孔に筒状ケーシングを挿入し、該筒状ケーシング内に前記アンカー本体を挿通し、次にロッドによって前記アンカー本体を押し込みながら、前記アンカー本体を前記筒状ケーシングから押し出し、前記アームを放射状に開き前記ペーパードレーンをアンカリングすることを特徴とするパラシュート式アンカーを使用した地盤改良施工方法。
【請求項8】
請求項1〜4の何れか1項に記載されたパラシュート式アンカーを使用した地盤改良施工方法であって、前記パラシュート式アンカーに土中の水分を吸収するペーパードレーンを取り付け、前記アームを固定リングによって予め開くことが出来ないようにロックし、掘削孔に前記アンカー本体を挿入し、次にロッドによって前記アンカー本体に圧力をかけながら必要深度まで押し込み、該ロックを解除することにより前記アームを放射状に開き前記ペーパードレーンをアンカリングすることを特徴とするパラシュート式アンカーを使用した地盤改良施工方法。
【請求項9】
前記掘削孔が磁気探査用のボーリング孔であり、前記筒状ケーシングが磁気探査で使用した掘削孔に打設された状態にある磁気探査用の非磁性体の筒状ケーシングであり、磁気探査用掘削孔と非磁性体筒状ケーシングをペーパードレーンの敷設に兼用したことを特徴とする請求項7又は8に記載のパラシュート式アンカーを使用した地盤改良施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−57457(P2012−57457A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−172557(P2011−172557)
【出願日】平成23年8月8日(2011.8.8)
【出願人】(510218319)有限会社沖縄基礎開発 (1)
【Fターム(参考)】