説明

パラメトリックシミュレーションシステム

【課題】各種パラメータの組合せの変動領域と目標値を設定してシミュレーションを実行することにより、最適なパラメータ値の組合せを少ないシミュレーション回数で実現するパラメトリックシミュレーションシステムを提供する。
【解決手段】基本シミュレーションプログラムファイル設定部11a、パラメータ設定入力部11b、及び目標値設定入力部11cから成る設定入力部11と、シミュレーションを実行するパラメータ値の組合せとそのシミュレーションプログラムを作成するパラメータ値組合せ作成部12と、連続シミュレーションを実行して、シミュレーション結果をDB16に保存する連続シミュレーション実行部13と、目標値情報とシミュレーション結果とをDB16から取得し、目標値を満たしているかどうかを評価する目標値評価部14と、評価結果を一覧表にして表示する評価結果表示部15とで構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイスの開発・設計におけるプロセス/デバイスシミュレーションといったシミュレーションによる、複数のパラメータを振った評価検討を行うパラメトリックシミュレーションシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数のパラメータを振った評価検討を行うためのシミュレーションが様々な分野で利用されている。例えば、半導体製品の開発・設計におけるプロセス/デバイスシミュレーションでは、プロセスシミュレーションにおけるドーズ量やデバイスシミュレーションにおけるエピ層厚さ等をパラメータとして振って評価検討を行い、目標とするデバイス特性を満足するパラメータ値を抽出する。
【0003】
従来、パラメータを振るシミュレーションでは、異なるパラメータごとにシミュレーションプログラムを作成し、シミュレーションを実行していた。特に複数のパラメータが存在する場合、パラメータの組合せ数は膨大になり、それにあわせて作成する必要のあるシミュレーションプログラムと実行するシミュレーション回数も膨大となっていた。さらに、出力される膨大の数のシミュレーション結果に対して、人手作業で目標値を満足しているかの判断を行っていたため、判断ミスも生じ易く、また判断結果を得るのに多くの時間を要していた。
【0004】
下記特許文献1には、複数の入力パラメータ値を会話型で入力し、グラフィカルに表示することで大量の入力パラメータ値の組合せを把握したうえで複数のシミュレーションプログラムを実行し、実行結果に基づいてユーザに適切な情報を提供するシミュレーションプログラム実行装置が開示されている。特許文献1記載の装置では、並列計算機上で、シミュレーションプログラムを複数実行することで、効率よくシミュレーションを実行しているが、会話型で入力した複数種の入力パラメータの全組合せについて、シミュレーションを実行しているため、実行するシミュレーション回数は膨大になってしまう。また、シミュレーション実行後の結果データの表示に関しては、全シミュレーション実行後に、ユーザに表示用の補助データを入力させ、目的にあった結果の表示を行うようにしている。
【0005】
また下記特許文献2には、乱数発生プログラムによってモデル式のパラメータの初期値を多数のパターンにわたって生成し、それぞれの初期値に対して自動パラメータ抽出を実行し、最終的な計算値と実測値の差が最も小さくなるようなパラメータの組み合わせを選ぶことで最適解を求めるパラメータ抽出方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−267890号公報
【特許文献2】特開2007−310873号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
パラメータを振ってシミュレーションによる評価検討を行い、評価の指標となる目標値を満足するパラメータ値を抽出する場合、従来は、異なるパラメータ値ごとにシミュレーションプログラムを作成し、作成したプログラムに基づいてシミュレーションを実行していた。特に、複数のパラメータが存在する場合、パラメータ値の組合せは膨大になり、作成する必要のあるシミュレーションプログラムと該プログラムに基づいて実行するシミュレーション回数も膨大となっていた。
【0008】
新規開発による評価検討では、目標値を満足するパラメータ値のおおよその予測も困難なときがあり、その場合はパラメータ値の目星をつけるために実行するシミュレーションの回数もさらに膨大となっていた。
【0009】
また、膨大な数のシミュレーションから出力されるシミュレーション結果に対して、人手作業で目標値を満足しているかの判断を行っていたため、判断ミスも生じ易く、また判断結果を得るのに多くの時間を要していた。
【0010】
以上の問題を解決するために本発明は、各種パラメータの組合せの変動領域と目標値を設定してシミュレーションを実行することにより、最適なパラメータ値の組合せを少ないシミュレーション回数で実現するパラメトリックシミュレーションシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために本発明のパラメトリックシミュレーションシステムの一態様は、あらかじめパラメータとする変数を選択し、変動領域(最小値、最大値、最小ステップ値)を設定するパラメータ変動領域設定手段と、シミュレーション結果の評価の指標となる目標値を設定する目標値設定手段と、シミュレーション後に該シミュレーション結果が前記設定した目標値を満たしているかを評価するシミュレーション結果評価手段と、を備え、該シミュレーション結果評価手段によるシミュレーション結果評価から目標値を満たすパラメータ値の組合せを抽出することを特徴とする。
【0012】
また本発明のパラメトリックシミュレーションシステムの別態様は、上記において、前記シミュレーション結果評価手段によるシミュレーション結果評価から目標値を満たしたパラメータ値の組合せが抽出できた場合、該抽出できたパラメータ値の組合せに隣接する組合せ(1パラメータにつき、1ステップのみ変更した組合せ)について、シミュレーションの実行とシミュレーション結果の評価を行い、目標値を満たすパラメータ値の組合せを絞り込むパラメータ値組合せ絞込み手段をさらに備えていることを特徴とする。
【0013】
また本発明のパラメトリックシミュレーションシステムの更に別の態様は、全目標数が2以上のシミュレーションで、前記シミュレーション結果評価手段によるシミュレーション結果評価から全目標数-1の目標を満たしたパラメータ値の組合せが抽出できた場合、前記組合せのうち1つのパラメータについては、その直前のシミュレーション済みパラメータ値との間と直後のシミュレーション済みパラメータ値との間の領域(前後の変動領域)をそれぞれ分割し、他のパラメータの値は固定した組合せを、次回シミュレーション対象のパラメータ値の組合せとするパラメータ値組合せ作成手段をさらに備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一態様によれば、シミュレーション結果評価手段によるシミュレーション結果評価から目標値を満たすパラメータ値の組合せを抽出するので、人手作業による評価ミスをなくし、評価に要する時間を短縮することができる。
【0015】
また本発明の別態様によれば、目標値を満たす隣接するパラメータ値の組合せをパラメータ値組合せ絞込み手段で設定するので、目標値を満たすパラメータ値の組合せが絞り込まれ、目標値を満たすパラメータ値の組合せ全てを、少ないシミュレーション回数で抽出することができる。
【0016】
また本発明のさらに別の態様によれば、全目標数が2以上のシミュレーションで、前記シミュレーション結果評価手段による評価結果から全目標数-1の目標を満たしたパラメータ値の組合せが抽出できた場合には、1つのパラメータについてはその直前のシミュレーション済みパラメータ値との間と直後のシミュレーション済みパラメータ値との間の領域(前後の変動領域)をそれぞれ分割したうえで、他のパラメータ値との組合せを作成することができるのでさらに少ないシミュレーション回数でパラメータ値の組合せを抽出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係るパラメトリックシミュレーションシステムの機能的構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態に係るパラメトリックシミュレーションシステムをプロセス/デバイスシミュレーションに適用した場合における実行フローチャートである。
【図3】図2に示したプロセス/デバイスシミュレーションにおけるパラメトリックシミュレーションシステムの基本シミュレーションプログラム設定インターフェイス例を示す図である。
【図4】図2に示したプロセス/デバイスシミュレーションにおけるパラメトリックシミュレーションシステムのパラメータ設定インターフェイス例を示す図である。
【図5】図2に示したプロセス/デバイスシミュレーションにおけるパラメトリックシミュレーションシステムの目標値設定インターフェイス例を示す図である。
【図6】図2に示したプロセス/デバイスシミュレーションにおけるパラメトリックシミュレーションシステムの評価結果表示インターフェイス例を示す図である。
【図7】本発明の実施例に基づくトレンチ型ショットキーダイオードの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
まず本発明の実施形態に係るパラメトリックシミュレーションシステムの機能的構成について説明する。図1は本発明の実施形態に係るパラメトリックシミュレーションシステムの機能的構成を示すブロック図である。図1においてパラメトリックシミュレーションシステムは、設定入力部11と、パラメータ値組合せ作成部12と、連続シミュレーション実行部13と、目標値評価部14と、評価結果表示部15から構成されている。
【0019】
設定入力部11は、基本シミュレーションプログラムファイル設定部11aと、パラメータ設定入力部11bと、目標値設定入力部11cから構成されている。基本シミュレーションプログラムファイル設定部11aは、ユーザが指定した各シミュレータにおける基本シミュレーションプログラムファイル名をデータベース16に保存する。パラメータ設定入力部11bは、ユーザが指定した複数のパラメータとする項目、各パラメータの変動領域(最小値、最大値、最小ステップ値)をデータベース16に保存する。目標値設定入力部11cは、ユーザが指定した目標項目、各目標項目の目標値(最小値と最大値による領域指定)をデータベース16に保存する。
【0020】
パラメータ値組合せ作成部12は、パラメータ設定入力部11bで設定したパラメータ情報をデータベース16から取得し、シミュレーションを実行するパラメータ値の組合せとそのシミュレーションプログラムを作成し、データベース16に保存する。
【0021】
連続シミュレーション実行部13は、パラメータ値組合せ作成部12で作成した各シミュレーションプログラムをデータベース16から取得し、連続シミュレーションを実行して、シミュレーション結果をデータベース16に保存する。
【0022】
目標値評価部14は、目標値設定入力部11cで設定した目標値情報と、連続シミュレーション実行部13から得られたシミュレーション結果をデータベース16から取得し、目標値を満たしているかどうかを評価する。そして、評価結果表示部15は、その評価結果を一覧表にして表示する。
【0023】
また目標値評価部14において目標を満たすパラメータ値の組合せが抽出できた場合は、パラメータ値組合せ作成部12は、目標を満たすパラメータ値組合せのうち、1パラメータにつき、1ステップのみ変更し、他のパラメータの値は固定した組合せを作成する。
【0024】
図2は、本発明の実施形態に係るパラメトリックシミュレーションシステムをプロセス/デバイスシミュレーションに適用した場合の例を示すもので、パラメトリックシミュレーションシステムの動作を図2に示す実行フローチャートを用いて具体的に説明する。図2においてユーザは、最初に、「基本シミュレーションプログラムファイルの設定」ステップ21にて、図3に示すような基本シミュレーションプログラム設定インターフェイス2aを介し、モデル構成やプロファイル条件が記述された基本シミュレーションプログラムファイルを図1に示す基本シミュレーションプログラムファイル設定部11aで設定する。
【0025】
次いでユーザは、「パラメータ設定の入力」ステップ22にて、図4に示すようなパラメータ設定インターフェイス2bを介し、パラメータを図1に示すパラメータ設定入力部11bで設定する。ここで、パラメータとする変数は、あらかじめ上述したシミュレーションプログラムファイル内で定義しておくことで、設定が可能である。パラメータは、複数の設定が可能であり、パラメータとする変数を選択し、変動領域(最小値、最大値、最小ステップ値)を設定する。
【0026】
そしてユーザは、「目標値設定の入力」ステップ23にて、図5に示すような目標値設定インターフェイス2cを介し、目標値を図1に示す目標値設定入力部11cで設定する。目標として設定できる項目は、複数の設定が可能であり、デバイスシミュレーション結果から抽出できる各コンタクトにおける電気特性項目(電流値、電圧値、電荷量等)、あるいは、これらの電気特性項目から算出できる項目(オン抵抗値、スイッチング損失等)とする。また、目標値は、最小値、最大値(どちらか一方でも可)による領域指定により設定し、目標を満たす上での条件(他の電気特性)の設定も可能である。
【0027】
図2のフローチャートに戻り、各設定の入力後、本パラメトリックシミュレーションシステムは、「実験計画法に基づくパラメータ値の組合せ生成」ステップ25にて、最初にシミュレーションを実行するパラメータ値の組合せを図1に示すパラメータ値組合せ作成部12で作成する。上記の如くユーザが設定したパラメータの変動領域より、各パラメータの初期パラメータ値を設定する。初期パラメータ値は、パラメータの変動領域である最小値(Min)、最大値(Max)、最小ステップ値(step)より、
Min, Min+step, Min+step+2*step, Min+step+2*step+4*step, ・・・・, Max
のように設定する。例えば、パラメータ設定を、以下に示す3つ、すなわち、パラメータA(Min=2, Max=30, step=2)、パラメータB(Min=3, Max=30, step=3)、パラメータC(Min=5, Max=50, step=5)とした場合、各パラメータの初期パラメータ値は、A(2, 4, 8, 16, 30)、B(3, 6, 12, 24, 30)、C(5, 10, 20, 40, 50)となる。
【0028】
続いて、本パラメトリックシミュレーションシステムは、パラメータごとに初期パラメータ値の先頭から4つを抽出し、実験計画法における因子数4水準直交表よりパラメータ値の組合せを作成する。上記の例では、3つのパラメータA、B、Cにおいて、それぞれ4水準はA(2, 4, 8, 16)、B(3, 6, 12, 24)、C(5, 10, 20, 40)となり、組合せは以下の表1に示すようになる。
【0029】
【表1】

そして本パラメトリックシミュレーションシステムは、「連続シミュレーションの実行」ステップ26にて、作成したパラメータ値の組合せ全てに対し、基本シミュレーションプログラムファイルの変数を前記パラメータ値の組合せに書き換えたシミュレーションプログラムを作成し、図1に示す連続シミュレーション実行部13でプロセスシミュレーションとデバイスシミュレーションを連続で実行する。
【0030】
作成したパラメータ値の組合せ全てのシミュレーションを実行後、本パラメトリックシミュレーションシステムは、「シミュレーション結果が目標値を満たしたかの評価」ステップ27にて、シミュレーション結果を抽出し、図1に示す目標値評価部14でその結果がユーザの設定した目標値を満たしているかの評価を行い、目標を満たしたパラメータ値の組合せを抽出する。評価した結果は、「評価結果を表示」ステップ28にて、図6に示すような評価結果表示インターフェイス2dを介し、図1に示す評価結果表示部15でシミュレーション結果の詳細(パラメータの値と目標の値)を、目標を満たした結果と満たしていない結果を色分けにより区別して一覧表に表示する。図2に示す評価結果表示インターフェイス2dは、連続シミュレーションの実行中でも、シミュレーションが完了したパラメータ値の組合せについては表示が可能である。
【0031】
ここで、設定した全目標を満たしているパラメータ値の組合せが抽出できた場合、本パラメトリックシミュレーションシステムは、「目標値を満たしたパラメータ値の組合せ近辺の組合せ生成」ステップ24にて、その組合せに隣接するパラメータ値組合せとして、その組合せのうち、1つのパラメータについては、パラメータ値の前後の値(-stepと+step)とし、他のパラメータの値は固定した組合せを図1に示すパラメータ値組合せ作成部12で作成し、次回シミュレーション対象のパラメータ値の組合せとする。前後の値とするのは、全パラメータを対象とする。なお、一度シミュレーションの実行を完了しているパラメータ値組合せが、次回シミュレーション対象となった場合、そのパラメータ値組合せのシミュレーションはスキップする。目標値を満たすパラメータ値の組合せ分布は隣接している可能性が高いため、次回シミュレーション対象に隣接するパラメータ値組合せを選ぶことで、目標値を満たすパラメータ値の組合せが絞り込まれ、目標値を満たすパラメータ値の組合せ全てを、できるだけ少ないシミュレーション回数で抽出することが可能となる。
【0032】
例えば、上記の例において、全目標を満たした組合せが、(A, B, C)=(4, 12, 40)であった場合、パラメータAについて隣接するパラメータ値組合せは、パラメータAの値を4-2=2、4+2=6 とし、パラメータBとパラメータCは固定した(2, 12, 40)、(6, 12, 40)となる。続いてパラメータBについて隣接するパラメータ値組合せは、パラメータBの値を 12-3=9、12+3=15とし、パラメータAとパラメータCは固定した(2, 9, 40)、(2, 15, 40)となる。同様にパラメータCについて隣接するパラメータ値組合せは、(2, 12, 35)、(2, 12, 45)となり、全目標を満たした組合せ(A, B, C)=(4, 12, 40)に隣接する全パラメータ値組合せは、(A, B, C)=(2, 12, 40)、(6, 12, 40)、(2, 9, 40)、(2, 15, 40)、(2, 12, 35)、(2, 12, 45)となる。
【0033】
また、全目標数が2以上のシミュレーションで、全目標数-1の目標を満たしたパラメータ値の組合せが抽出できた場合、この組合せ近辺に全目標を満たすパラメータ値の組合せが存在する可能性が高いと考え、本パラメトリックシミュレーションシステムでは、「目標値を満たしたパラメータ値の組合せ近辺の組合せ生成」ステップ24にて、以下のパラメータ値の組合せを図1に示すパラメータ値組合せ作成部12で作成する。前記組合せのうち1つのパラメータについては、その直前のシミュレーション済みパラメータ値との間と直後のシミュレーション済みパラメータ値との間の領域(前後の変動領域)を初期パラメータ値の設定と同様の手法でそれぞれ分割し、他のパラメータの値は固定した組合せを、次回シミュレーション対象のパラメータ値の組合せとする。
【0034】
この方法により、早い段階での全目標を満たしているパラメータ値組合せの抽出が可能となる。この前後の変動領域の分割は、全パラメータを対象とする。例えば、上記の例において、全目標数-1の目標を満たしたパラメータ値の組合せが、(A, B, C)=(8, 24, 10)であった場合、パラメータAについてシミュレーション済みの値は2、4、8、16であり、「8」の前後は「4」と「16」になる。したがって、分割対象となる前後の変動領域は4〜8、8〜16となる。この2領域を初期パラメータ値の設定と同様の手法で分割を行うと、((4), 6, (8))と((8), 10, 14, (16))となり、次回シミュレーション対象となるパラメータAの値は6、10、14となる。よって、パラメータAについての近辺のパラメータ値組合せは、パラメータBとパラメータCは固定した(A, B, C)=(6, 24, 10)、(10, 24, 10)、(14, 24, 10)となる。続いて、パラメータBについてシミュレーション済みの値は3、6、12、24であり、「24」の前は「12」になる。後ろの値はシミュレーション済みの値が存在しないため、Maxの「30」とする。よって、分割対象となる前後の変動領域は12〜24、24〜30となる。この2領域を初期パラメータ値の設定と同様に分割を行うと、((12), 15, 21, (24))と((24), 27, 30)となり、次回シミュレーション対象となるパラメータBの値は15、21、27、30となる。したがって、パラメータBについての近辺のパラメータ値組合せは、パラメータAとパラメータCは固定した(A, B, C)=(8, 15, 10)、(8, 21, 10)、(8, 27, 10)、(8, 30, 10)となる。同様に、パラメータCについての近辺のパラメータ値組合せは、(A, B, C)=(8, 15, 15)となり、(A, B, C)=(8, 24, 10)の近辺のパラメータ値組合せは、(A, B, C)=(6, 24, 10)、(10, 24, 10)、(14, 24, 10)、(8, 15, 10)、(8, 21, 10)、(8, 27, 10)、(8, 30, 10)、(8, 15, 15)となる。
【0035】
本パラメトリックシミュレーションシステムは、抽出した全目標を満たしているパラメータ値の組合せと全目標数-1の目標を満たしたパラメータ値の組合せすべてについて前記処理を行い、全目標を満たしているパラメータ値の組合せと全目標数-1の目標を満たしたパラメータ値の組合せが抽出できなくなるまで繰り返す。そして、全目標を満たしているパラメータ値の組合せと全目標数-1の目標を満たしたパラメータ値の組合せが抽出できなくなった時点で、図2に示す「実験計画法に基づくパラメータ値の組合せ生成」ステップ25にて、1つのパラメータについて、パラメータ変動領域のMinをstepだけ加算し、図1に示すパラメータ値組合せ作成部12で新たなパラメータ値の組合せを作成する。Minを加算するパラメータは順に変更する。
【0036】
例えば、上記の例において、全目標あるいは全目標数-1の目標を満たしたパラメータ値の組合せが抽出できなかった場合、パラメータAのMinを「2」から「4」に変更し、変動領域を(Min=4, Max=30, step=2)とした、A(4, 6, 10, 18)、B(3, 6, 12, 24)、C(5, 10, 20, 40)によるパラメータ値の組合せを作成する。
【0037】
以上、本パラメトリックシミュレーションシステムは、パラメータ値の組合せ生成とシミュレーションの実行を繰り返し、全パラメータのMinとMax間がstep以下となった場合に、パラメータ値の組合せ生成が不可能となり、終了となる。
【実施例】
【0038】
図7は、本発明の実施例に基づくトレンチ型ショットキーダイオードの構成例を示す図である。図7のトレンチ型ショットキーダイオードにおいて、エピ層であるNepiTopとNepiBottomの濃度と厚さをパラメータとし、順方向電圧印加時における電流値を目標とするプロセス/デバイスシミュレーションについて、本発明を適用した例を説明する。
【0039】
設定したパラメータは、NepiTopのエピ層濃度(NodeTop)を4.00E+15 〜 6.00E+15 [/cm2](1.00E+15 [/cm2] ステップ)、エピ層厚さ(AtsTop)を2 〜 3 [μm](0.5 [μm]ステップ)と、またNepiBottom のエピ層濃度(NodeBottom)を2.00E+15 〜 4.00E+15 [/cm2](1.00E+15 [/cm2]ステップ)、エピ層厚さ(AtsBottom)を6 〜 8 [μm](1 [μm]ステップ)である。また設定した目標値は、コンタクトAnodeの電流(Total Current) 2 [A]以上(コンタクトAnodeの電圧(Inner Voltage) 0.6 [V]時)である。
【0040】
本発明を適用した上記デバイスのシミュレーション結果を以下の表2に示す。
【0041】
【表2】

Judge(評価)は目標を満たした場合をSuccess(成功)と、それ以外をFailure (失敗)と表示している。本発明の適用により、最初に目標を満たすパラメータの組合せが抽出できたのは、5回目のシミュレーションであった。また、51回目のシミュレーションまでに、目標を満たす組合せである全23回のシミュレーションが完了し、実行した総シミュレーション回数は55回であった。
【0042】
比較対象として、本発明を適用せず、パラメータ値の組合せ総当りによる、同様のシミュレーションを実施した結果を以下の表3に示す。
【0043】
【表3】

表3では、実行した総シミュレーション回数は81回であった。本発明の適用により、実行する総シミュレーション回数は26回少なくなり、32%(26/81 = 0.32)の削減を実現することができた。
【符号の説明】
【0044】
11 設定入力部
11a 基本シミュレーションプログラムファイル設定部
11b パラメータ設定入力部
11c 目標値設定入力部
12 パラメータ値組合せ作成部
13 連続シミュレーション実行部
14 目標値評価部
15 評価結果表示部
16 データベース
2a 基本シミュレーションプログラム設定インターフェイス
2b パラメータ設定インターフェイス
2c 目標値設定インターフェイス
2d 評価結果表示インターフェイス
S21 「基本シミュレーションプログラムファイルの設定」ステップ
S22 「パラメータ設定の入力」ステップ
S23 「目標値設定の入力」ステップ
S24 「目標値を満たしたパラメータ値の組合せ近辺の組合せ生成」ステップ
S25 「実験計画法に基づくパラメータ値の組合せ生成」ステップ
S26 「連続シミュレーションの実行」ステップ
S27 「シミュレーション結果が目標値を満たしたかの評価」ステップ
S28 「評価結果を表示」ステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
あらかじめパラメータとする変数を選択し、変動領域(最小値、最大値、最小ステップ値)を設定するパラメータ変動領域設定手段と、シミュレーション結果の評価の指標となる目標値を設定する目標値設定手段と、シミュレーションを実行した後に該シミュレーション結果が前記設定した目標値を満たしているかを評価するシミュレーション結果評価手段とを備え、該シミュレーション結果評価手段によるシミュレーション結果評価から目標値を満たすパラメータ値の組合せを抽出することを特徴とするパラメトリックシミュレーションシステム。
【請求項2】
前記シミュレーション結果評価手段によるシミュレーション結果評価から目標値を満たしたパラメータ値の組合せが抽出できた場合、該抽出できたパラメータ値の組合せに隣接する組合せ(1パラメータにつき、1ステップのみ変更した組合せ)について、シミュレーションの実行とシミュレーション結果の評価を行い、目標値を満たすパラメータ値の組合せを絞り込むパラメータ値組合せ絞込み手段をさらに備えていることを特徴とする請求項1記載のパラメトリックシミュレーションシステム。
【請求項3】
全目標数が2以上のシミュレーションで、前記シミュレーション結果評価手段によるシミュレーション結果評価から全目標数-1の目標を満たしたパラメータ値の組合せが抽出できた場合、前記組合せのうち1つのパラメータについては、その直前のシミュレーション済みパラメータ値との間と直後のシミュレーション済みパラメータ値との間の領域(前後の変動領域)をそれぞれ分割し、他のパラメータの値は固定した組合せを、次回シミュレーション対象のパラメータ値の組合せとするパラメータ値組合せ作成手段をさらに備えていることを特徴とする請求項1記載のパラメトリックシミュレーションシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−242986(P2012−242986A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−111057(P2011−111057)
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】