説明

パルス式集塵装置

【課題】装置の大型化及び消費空気量の上昇等の問題を生じることなく、開閉弁の開操作に伴うインジェクターチューブ内の圧力上昇速度を極めて迅速なものとし、圧力波のフィルタ部内への伝播による塵埃の払い落とし性能を向上するパルス式集塵装置を提供する。
【解決手段】パルス式集塵装置の圧縮空気噴出部において、圧縮空気源からの圧縮空気Hを複数のフィルタに各別に噴出させる複数の噴出孔17を長手方向に備え、かつ、基端が開閉弁を介して圧縮空気源に接続されるとともに先端が閉塞されたインジェクターチューブ15における、開閉弁が設けられる基端と複数の噴出孔17のうち基端に最も近接する噴出孔17aが設けられる箇所との間である基端側領域Pに、開閉弁を介してインジェクターチューブ15内に基端側から先端側に向けて供給された圧縮空気Hの空気流により、外部空気OAをインジェクターチューブ15内に誘引可能な誘引部30を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、区画壁により内部が含塵空気導入室と浄化空気室とに区画された筐体と、区画壁のうち含塵空気導入室と浄化空気室とを連通する複数の連通部のそれぞれに設けられ、含塵空気導入室側から浄化空気室側に通流する含塵空気中に含まれる塵埃を捕集する複数のフィルタを有するフィルタ部と、浄化空気室側からフィルタ部を介して含塵空気導入室側に圧縮空気を噴出させて、フィルタ部に付着した塵埃を清掃する圧縮空気噴出部とを備えたパルス式集塵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記パルス式集塵装置は、筐体内において含塵空気導入室側から浄化空気室側に通流する含塵空気中に含まれる塵埃をフィルタ部にて捕集して、焼却炉や破砕設備等から供給される含塵空気を浄化する装置であり、さらに、フィルタ部に捕集され付着した塵埃を、圧縮空気噴出部により浄化空気室側からフィルタ部を介して含塵空気導入室側に圧縮空気を噴出させて払い落とし、清掃することができるように構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1に記載のパルス式集塵装置では、圧縮空気噴出部は、基端が圧縮空気源に接続されるとともに先端が閉塞されたインジェクターチューブ(管部材)と、圧縮空気源から圧縮空気をインジェクターチューブ内へ断続的に供給可能な開閉弁と、インジェクターチューブの長手方向に複数設けられ、インジェクターチューブ内に供給された圧縮空気を複数のフィルタに各別に噴出させる噴出孔とを備えている。
これにより、フィルタ部に塵埃が捕集され付着して当該フィルタ部における圧力損失が大きくなった場合であっても、フィルタ部への塵埃の捕集を継続したままの状態で開閉弁を開操作し、インジェクターチューブを介して複数の噴出孔から圧縮空気を複数のフィルタの内部に噴出させることで、浄化空気室側からフィルタを介して含塵空気導入室側に圧力波(パルス波)を伝播させることができ、フィルタの外表面(含塵空気導入室側)に付着した塵埃を払い落とすことができる。
【0004】
ここで、例えば、特許文献1に記載のパルス式集塵装置においては、フィルタ部が区画壁の連通部に垂下された複数のバグフィルタ、すなわち、かご型形状の支持体に被せられた袋状のフィルタ(濾布)で構成されている。このバグフィルタの清掃時には、噴出孔から圧縮空気を噴出させることで、その噴出方向に伝播する圧力波がバグフィルタ内において開口端部側から先端部側に向けて伝播し、濾布自身が瞬間的に外径方向に膨張させられて、当該濾布の外表面に付着していた塵埃が外径方向に向けて払い落とされて清掃され、目詰まりを解消することができる。なお、取り除かれた塵埃は、筐体の下部に落下し回収される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平6−15713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記パルス式集塵装置においては、インジェクターチューブは、基端が開閉弁を介して圧縮空気源に接続されるとともに先端が閉塞されて構成されているため、このインジェクターチューブ内は、圧縮空気源から開閉弁を介した圧縮空気の供給のみにより昇圧され、その昇圧により噴出孔から圧縮空気が噴出されることとなる。そのため、フィルタ部に付着した塵埃の払い落とし効果の向上を図るためには、インジェクターチューブ内の圧力(静圧)をできるだけ短時間で上昇させ、噴出孔から一気に圧縮空気をフィルタ部内に噴出させることで、高エネルギ状態の圧力波を形成することが重要である。
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に記載のパルス式集塵装置では、インジェクターチューブ内の昇圧が開閉弁を介した圧縮空気の供給のみによるものであるから、開閉弁における圧力損失等の制限により、インジェクターチューブ内の圧力上昇速度を向上させるには限度がある。
また、インジェクターチューブの長手方向に複数の噴出孔が設けられているので、必然的にインジェクターチューブの長さが長くなり、インジェクターチューブ内の圧力上昇速度が低下する傾向にある。
さらに、インジェクターチューブ内の圧力上昇速度を向上させるために、開閉弁等を大型化することが考えられるが、装置の大型化、消費空気量の上昇やコストの増大等の問題が生じる。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、装置の大型化及び消費空気量の上昇等の問題を生じることなく、開閉弁の開操作に伴うインジェクターチューブ内の圧力上昇速度を極めて迅速なものとして、噴出孔からの圧縮空気の噴出により極めて高エネルギ状態の圧力波を形成し、その圧力波のフィルタ部内への伝播による塵埃の払い落とし性能を向上することが可能なパルス式集塵装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明に係るパルス式集塵装置は、区画壁により内部が含塵空気導入室と浄化空気室とに区画された筐体と、前記区画壁のうち前記含塵空気導入室と前記浄化空気室とを連通する複数の連通部のそれぞれに設けられ、前記含塵空気導入室側から前記浄化空気室側に通流する含塵空気中に含まれる塵埃を捕集する複数のフィルタを有するフィルタ部と、前記浄化空気室側から前記フィルタ部を介して前記含塵空気導入室側に圧縮空気を噴出させて、前記フィルタ部に付着した塵埃を清掃する圧縮空気噴出部とを備え、
前記圧縮空気噴出部が、基端が圧縮空気源に接続されるとともに先端が閉塞されたインジェクターチューブと、前記圧縮空気源から前記圧縮空気を前記インジェクターチューブ内へ断続的に供給可能な開閉弁と、前記インジェクターチューブの長手方向に複数設けられ、前記インジェクターチューブ内に供給された前記圧縮空気を前記複数のフィルタに各別に噴出させる噴出孔とを備えたパルス式集塵装置であって、その特徴構成は、
前記圧縮空気噴出部の前記インジェクターチューブにおいて、前記開閉弁が設けられる基端と前記複数の噴出孔のうち前記基端に最も近接する噴出孔が設けられる箇所との間である基端側領域に、前記開閉弁を介して前記インジェクターチューブ内に前記基端側から前記先端側に向けて供給された前記圧縮空気の空気流により、外部空気を前記インジェクターチューブ内に誘引可能な誘引部を備えた点にある。
【0010】
本特徴構成によれば、インジェクターチューブにおける基端側領域に、外部空気をインジェクターチューブ内に誘引可能な誘引部を備えるので、開閉弁を開操作することにより圧縮空気源から開閉弁を介して圧縮空気の空気流が高速でインジェクターチューブ内に供給された際には、基端側領域を当該高速の空気流が通流することによるベンチュリー効果により当該空気流の周りに陰圧が生じて、この基端側領域に設けられた誘引部を介して外部空気がインジェクターチューブ内に強制的に誘引される。なお、上記高速の空気流の流速は、例えば、音速程度、すなわち、300〜350m/sec程度である。
つまり、インジェクターチューブ内の誘引部よりも先端側には、開閉弁を介して供給された圧縮空気のみならず、誘引部を介して強制的に誘引された外部空気も瞬時に供給されることとなり、当該インジェクターチューブ内の圧力を極めて迅速に上昇させることが可能となる。
また、開閉弁の構成を改変等することなく従来と同様の構成の開閉弁を用いた場合でも、上記のように誘引部から外部空気を強制的に誘引することにより、インジェクターチューブ内の圧力を極めて迅速に上昇させることが可能となる。
よって、装置の大型化及び消費空気量の上昇等の問題を生じることなく、開閉弁の開操作に伴うインジェクターチューブ内の圧力上昇速度を極めて迅速なものとして、噴出孔からの圧縮空気のフィルタ部内への噴出により極めて高エネルギ状態の圧力波を形成し、その圧力波のフィルタ部内への伝播による塵埃の払い落とし性能を向上することが可能となる。
【0011】
本発明に係るパルス式集塵装置の更なる特徴構成は、前記インジェクターチューブが、前記基端側に設けられる基端側管部材と、前記先端側に設けられる先端側管部材とを備えて構成され、前記誘引部が、前記基端側管部材と前記先端側管部材との間に径方向の隙間を形成した状態で前記基端側管部材が前記先端側管部材に内挿されることにより構成されている点にある。
【0012】
本特徴構成によれば、インジェクターチューブに設けられる誘引部が、基端側に設けられる基端側管部材と先端側に設けられる先端側管部材との間に径方向の隙間を形成した状態で基端側管部材が先端側管部材に内挿されているので、非常に単純な構成で、ベンチュリー効果を利用して外部空気を誘引する誘引部を形成することが可能となる。また、誘引される外部空気の通流方向が、圧縮空気Hの空気流の通流方向と略同一の先端側方向となるので、ベンチュリー効果による外部空気の誘引を良好に行うことができる。なお、両管部材間の径方向での隙間は、誘引部近傍を通流する圧縮空気の空気流の速度、空気量、誘引部の形状、管部材の径等にも影響されるが、当該空気流の周りにベンチュリー効果で生じた陰圧により外部空気をインジェクターチューブ内に誘引可能な程度の比較的狭い間隔に形成されている。
【0013】
本発明に係るパルス式集塵装置の更なる特徴構成は、前記先端側管部材の基端部が基端側ほど拡径する拡径部を有し、拡径された前記先端側管部材の基端部に前記基端側管部材が内挿されている点にある。
【0014】
本特徴構成によれば、拡径部により拡径された先端側管部材の基端部に基端側管部材が内挿されているので、インジェクターチューブ内において先端側管部材の拡径部よりも先端側(拡径されていない部分)の断面積を基端側管部材の先端部の断面積と同等程度とすることができる。よって、圧縮空気の空気流が基端側管部材を通過した後、先端側管部材を通流する際において、先端側管部材の断面積の拡大に伴う空気流の速度の減速を抑制することができ、当該空気流によるインジェクターチューブ内の圧力上昇速度の低下を防止することができる。
【0015】
本発明に係るパルス式集塵装置の更なる特徴構成は、前記基端側管部材の先端部には、前記基端側管部材の先端部の先端側ほど縮径する先細部が形成されている点にある。
【0016】
本特徴構成によれば、基端側管部材の先端部には先端側ほど縮径する先細部が設けられており、この先細部がいわゆる絞りとして機能するので、基端側管部材内における圧縮空気の空気流の流速を、先細部にて加速して、基端側管部材から先端側管部材に通流させることができる。これにより、基端側管部材と先端側管部材との間に形成された誘引部近傍においてベンチュリー効果による陰圧の発生をより増大させて、当該誘引部からインジェクターチューブ内への外部空気の誘引力を増大させることができ、結果、インジェクターチューブ内の圧力上昇速度をより一層上昇させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】パルス式集塵装置の概略側断面視図
【図2】パルス式集塵装置の概略上面視図
【図3】誘引部近傍の構成を示す拡大断面視図
【図4】通常運転時における動作を示すパルス式集塵装置の概略側断面視図
【図5】清掃運転時における動作を示すパルス式集塵装置の概略側断面視図
【図6】実施例に係るパルス式集塵装置の清掃運転時におけるインジェクターチューブ内の静圧分布を示すグラフ図
【図7】比較例に係るパルス式集塵装置の清掃運転時におけるインジェクターチューブ内の静圧分布を示すグラフ図
【図8】空気開閉弁の開操作からの経過時間と、ある噴出孔位置での圧力との関係を示すグラフ図
【図9】別実施形態に係る誘引部近傍の構成を示す拡大断面視図
【図10】別実施形態に係る誘引部近傍の構成を示す拡大断面視図
【図11】別実施形態に係る誘引部近傍の構成を示す拡大断面視図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係るパルス式集塵装置Aにおいて、フィルタ部としてバグフィルタ5を用いた場合の実施形態を説明する。
図1及び図2に示すように、パルス式集塵装置Aは、区画壁4により内部が含塵空気導入室2と浄化空気室3とに区画された筐体1と、区画壁4のうち含塵空気導入室2と浄化空気室3とを連通する複数の連通部6のそれぞれに設けられ、含塵空気導入室2側から浄化空気室3側に通流する含塵空気G中に含まれる塵埃Dを捕集する複数のバグフィルタ5(フィルタ部の一例)と、浄化空気室3側からバグフィルタ5を介して含塵空気導入室2側に圧縮空気Hを噴出させて、バグフィルタ5に付着した塵埃Dを清掃する圧縮空気噴出部7と、圧縮空気噴出部7の作動等のパルス式集塵装置Aの運転を制御する制御部8等を備えて構成されている。また、パルス式集塵装置Aは、バグフィルタ5の内側と外側との圧力差を検出する圧力差検出部9を備えて構成されている。
【0019】
筐体1は、内部が上下方向で区画壁4により区画され、下部に含塵空気Gが通流する含塵空気導入室2、上部に区画壁4の連通部6に設けられたバグフィルタ5により浄化された浄化空気Cが通流する浄化空気室3が形成されている。筐体1は、含塵空気導入室2におけるバグフィルタ5が配置される箇所及び浄化空気室3が形成される箇所における外形が上面視概略矩形に形成され、含塵空気導入室2におけるバグフィルタ5が配置される箇所の下側の外形が漏斗形状に形成されている。
そして、筐体1の漏斗形状に形成された上端箇所には焼却炉等(図示せず)からの含塵空気Gを含塵空気導入室2内に導入する含塵空気導入路10が形成されており、筐体1の矩形に形成された上部箇所には、バグフィルタ5により浄化された浄化空気Cを浄化空気室3から排出する浄化空気排出路11が形成されている。この浄化空気排出路11の下流側には吸引装置(図示せず)が設けられ、浄化空気室3内の浄化空気Cを外部空間に吸引することができるように構成されている。なお、筐体1の漏斗形状に形成された箇所の下端部には、ロータリーバルブが設けられた排出口12が形成され、後述するバグフィルタ5の清掃等により生じた含塵空気導入室2内の塵埃D等を排出できるように構成されている。
したがって、焼却炉等(図示せず)で発生した含塵空気Gは、吸引装置(図示せず)の吸引力により含塵空気導入路10を介して含塵空気導入室2内に導入され、バグフィルタ5により塵埃Dが捕集されて浄化空気Cとなって、浄化空気室3内から浄化空気排出路11を介して、集塵装置Aの下流側に接続された外部空間に排出される。
【0020】
バグフィルタ5は、図1、図4、図5に示すように、有底のかご形状(例えば、複数の直線棒状体を、環状に形成された複数のリング状枠体に取り付けた有底筒状のかご形状)に形成された支持体5aの外側に、含塵空気Gを通流可能に構成された袋状のバグ5b(フィルタの一例)が被せられて構成されている。
バグ5bは、含塵空気G中の塵埃Dを良好に捕集できる濾布により構成され、例えば、内側が布で当該布の外側に貼り付けた不織布により形成される基布、或いは不織布や織布等により構成される。また、濾布の素材は、合成繊維やガラス繊維等から成る。バグ5bの下部は袋状で、上部は開口を備えて構成され、当該開口に後述する圧縮空気噴出部7の案内管13が取り付けられ、バグ5bの上端部が案内管13と支持体5aにより挟持されて区画壁4の連通部6に固定されている。
そして、バグフィルタ5は、区画壁4の連通部6に垂下状態で取り付けられる。なお、本実施形態では、縦に(図2の上下方向に)4個、横に(図2の左右方向に)5個をそれぞれ配列させた状態で20個のバグフィルタ5を設けているが、その配列箇所、配列数、支持体5aの形状、バグ5bの形状及び案内管13の有無等については、塵埃Dの処理量等との関係で適宜変更することが可能である。
【0021】
圧縮空気噴出部7は、各バグフィルタ5の内側に圧縮空気Hを断続的に(パルス状に)噴出することができるように構成されている。
圧縮空気噴出部7は、基端15Aがヘッダ部14(圧縮空気源の一例)に接続されるとともに先端15Bが閉塞されたインジェクターチューブ15と、ヘッダ部14から圧縮空気Hをインジェクターチューブ15内へ断続的に供給可能な空気開閉弁16(開閉弁の一例)と、インジェクターチューブ15の長手方向に複数設けられ、インジェクターチューブ15内に供給された圧縮空気Hを複数のバグフィルタ5の内側に各別に噴出させる複数の噴出孔17とを備えている。
さらに、圧縮空気噴出部7は、コンプレッサ等からの圧縮空気Hを圧縮空気供給路18に設けられた圧力調整弁19を介して圧力を調整した上で、各ヘッダ部14内(図2では、14a、14b、14c、14dの4つ)に貯留することができるように構成されている。そして、圧縮空気噴出部7は、各ヘッダ部14内に貯留された圧縮空気Hを、各ヘッダ部14内にそれぞれ設けられた空気開閉弁16(図示しないが、16a、16b、16c、16dの4つ)を介して複数のインジェクターチューブ15(図2では、15a、15b、15c、15dの4本)のそれぞれに分配し、分配された圧縮空気Hをインジェクターチューブ15に設けられた複数の噴出孔17から各案内管13を介して各バグフィルタ5の内側に噴出可能に構成されている。なお、図1に示す例では、一つのインジェクターチューブ15(例えば、15d)に対し、5つの噴出孔17(例えば、17a、17b、17c、17d、17e)が設けられている。
【0022】
各空気開閉弁16の開閉は、各空気開閉弁16にそれぞれ対応して設けられた作動部20(図2では、20a、20b、20c、20dの4つ)により制御可能に構成されている。各噴出孔17は、各バグフィルタ5に一対一で対応するように当該各バグフィルタ5の上部に配置されている。なお、第1空気開閉弁16aに対応する第1インジェクターチューブ15aには5つのバグフィルタ5が並列で配置され、同様に、第2空気開閉弁16bに対応する第2インジェクターチューブ15b、第3空気開閉弁16cに対応する第3インジェクターチューブ15c、及び第4空気開閉弁16dに対応する第4インジェクターチューブ15dには、それぞれ5つのバグフィルタ5が並列で配置されている。従って、ヘッダ部14内に貯留された圧縮空気Hは、制御部8により各作動部20が制御されて、当該各作動部20に対応する各空気開閉弁16の開閉が設定された開閉状態となるように制御されることにより、各噴出孔17を介して各バグフィルタ5の内側に断続的に(パルス状に)噴出可能とされている。各ヘッダ部14内に貯留される圧縮空気Hの圧力及び空気量は、噴出することが必要な圧縮空気Hの圧力や空気量に応じて適宜設定することができるが、例えば、圧力を2MPa、容量を450cm3程度に設定することができ、空気開閉弁16を開操作した場合の圧縮空気Hの空気流は、例えば、音速程度、すなわち、300〜350m/sec程度である。
【0023】
制御部8は、中央演算処理装置(CPU)、メモリ、記憶部等(図示せず)からなり、当該CPUにより所定のプログラムを実行して情報を処理することができる公知の情報処理手段で構成され、パルス式集塵装置Aの運転を制御することができるように構成されている。
【0024】
圧力差検出部9は公知の圧力検出手段からなり、図1に示すように、含塵空気導入路10に設けられ、バグフィルタ5の外側(含塵空気導入室2側)の圧力を検出する第1圧力検出部9aと、浄化空気排出路11に設けられ、バグフィルタ5の内側(浄化空気室3側)の圧力を検出する第2圧力検出部9bとを備え、これら第1圧力検出部9a及び第2圧力検出部9bからの検出圧力に基づいて、バグフィルタ5の内外差圧を検出することができるように構成されている。検出されたバグフィルタ5の内外差圧は、制御部8に出力するように構成されている。
また、圧力差検出部9は、バグフィルタ5の内側(バグフィルタ5のバグ5bの内部)の圧力を検出する第3圧力検出部9cを備え、第1圧力検出部9a及び第3圧力検出部9cからの検出圧力の差を、バグフィルタ5の内外圧力差として測定することができる。また、バグフィルタ5の外側に塵埃Dが付着して効率よく塵埃Dを捕集できない状態となったと判断する基準となる所定の圧力差が、予め設定されている。すなわち、このバグフィルタ5の内外圧力差は、当該バグフィルタ5の外側から内側へ通流する含塵空気Gの圧力損失であり、それに対し、上記所定の圧力差はバグフィルタ5の清掃が必要な状態となった場合における圧力損失の値として設定される。なお、所定の圧力差は、制御部8に出力し、予め当該制御部8の記憶部に記憶可能に構成されている。
なお、浄化空気排出路11には、浄化空気室3から外部空間に排出される浄化空気Cの流量を検出する公知の流量検出部21が設けられ、検出された流量は、制御部8に出力するように構成されている。
【0025】
次に、本願の特徴構成である圧縮空気噴出部7の更なる構成について説明する。
本実施形態における圧縮空気噴出部7は、図1〜図5に示すように、基端15Aがヘッダ部14(圧縮空気源の一例)に接続されるとともに先端15Bが閉塞されたインジェクターチューブ15を備える。
このインジェクターチューブ15は、基端15A側に設けられる円筒状の基端側管部材31と、先端15B側に設けられる円筒状の先端側管部材32とを備えて構成されている。
そして、インジェクターチューブ15には、図3に示すように、これら基端側管部材31と先端側管部材32との間に径方向の隙間Sを形成した状態で基端側管部材31が先端側管部材32に所定部位まで内挿されることにより、誘引部30が構成されている。なお、図3では、基端側管部材31と先端側管部材32とはそれぞれの軸芯を共通にする同芯状態で内挿されている。
すなわち、このインジェクターチューブ15において、空気開閉弁16が設けられる基端15Aと複数の噴出孔17のうち基端15Aに最も近接する噴出孔17aが設けられる箇所との間である基端側領域Pに、空気開閉弁16を介してインジェクターチューブ15内に基端15A側から先端15B側に向けて供給された圧縮空気Hの空気流により、外部空気OAをインジェクターチューブ15内に誘引可能な誘引部30が形成されている。
【0026】
基端側管部材31は、図3に示すように、基端側管部材31の先端部31aに、基端側管部材31の基端筒部31dの内径X(先端部31aの最大内径でもある)よりも先端15B側ほど縮径する先細部31bが形成され、この先細部31bは基端側管部材31内を基端側から先端側に通流する圧縮空気Hの空気流に対して、いわゆる絞りとして機能する。また、先端部31aにおける先細部31bのさらに先端15B側には、先細部31bの最小内径(図示せず)と略同じ内径の先端筒部31cが形成されている。
【0027】
先端側管部材32は、図3に示すように、先端側管部材32の基端部32aに基端15A側ほど拡径する拡径部32bが形成されている。また、基端部32aにおける拡径部32bのさらに基端15A側には、拡径部32bの最大内径Zと略同じ内径Zの基端筒部32dを備えている。さらに、先端側管部材32は、拡径部32bの先端15B側に、拡径部32bの最小内径Yと略同じ内径Yの先端筒部32cを備えている。
すなわち、先端側管部材32の基端部32aに基端側管部材31が内挿された状態で、先端側管部材32における内径が、基端15A側ほど拡径する形態で、基端側管部材31の先端部31aの内径以上、かつ、先端側管部材32の基端筒部32dの内径Z未満に設定された拡径部32bを有する。なお、図3では、先端側管部材32の拡径部32bの最小内径Yが、基端側管部材31の先端部31aの最大内径Xと略同一である場合の例を示している。
【0028】
従って、インジェクターチューブ15の誘引部30は、先端側管部材32の基端部32aに基端側管部材31を内挿することにより、これら両管部材31,32との間に径方向における所定間隔の隙間Sを形成して構成されている。これにより、誘引部30は、隙間Sを介してインジェクターチューブ15の外部とインジェクターチューブ15の内部とを連通しており、基端側管部材31と先端側管部材32とを通流する圧縮空気Hの空気流の周りにベンチュリー効果で生じた陰圧により、外部空気OAをインジェクターチューブ15内に誘引可能である。
なお、これら両管部材31,32間の径方向での所定間隔の隙間Sは、誘引部30近傍を通流する圧縮空気Hの空気流の速度、空気量、誘引部30の形状、管部材31,32の径等にも影響されるが、当該空気流の周りにベンチュリー効果で生じた陰圧により外部空気OAをインジェクターチューブ15内に誘引可能な程度の比較的狭い間隔に形成されている。また、図3では、両管部材31,32間の径方向での所定間隔の隙間Sは、基端側管部材31が内挿されている部位において、略同一間隔となるように形成されている。
【0029】
基端側管部材31の先細部31bの先端側の先端筒部31cには、この先端筒部31cと先端側管部材32の先端筒部32cとに亘って隙間Sを閉鎖するように、逆止弁としての規制部材33が設けられている。この規制部材33は、圧縮空気Hの空気流のベンチュリー効果による陰圧により誘引部30の隙間Sを介して外部空間から外部空気OAがインジェクターチューブ15内に誘引されるのを許容するが、隙間Sを介してインジェクターチューブ15内から圧縮空気Hが外部空間に通流するのを規制可能に構成されている。また、この規制部材33は、例えば、断面視で舌形状の部材であり、圧縮空気Hの空気流による陰圧が発生すると開状態となり、陰圧が発生しなくなると閉状態となる逆止弁としての機能を発揮可能な可撓性の部材により構成することができる。
【0030】
次に、制御部8の制御により制御されるパルス式集塵装置Aの運転状態について、通常運転と清掃運転について説明する。
パルス式集塵装置Aの通常運転において、制御部8は、図4に示すように、浄化空気排出路11の下流側に接続された吸引装置(図示せず)による吸引を開始させ、含塵空気導入路10の上流側に接続された焼却炉等(図示せず)から含塵空気Gを筐体1内の含塵空気導入室2に導入する。これにより、含塵空気Gを含塵空気導入室2側からバグフィルタ5を介して浄化空気室3側に(バグフィルタ5の外側から内側に)通流させ、当該含塵空気G中の塵埃Dをバグフィルタ5のバグ5bにより捕集して、含塵空気Gを浄化して浄化空気Cとして処理する。ここで、通常運転の開始前におけるバグフィルタ5は、バグ5bが支持体5aの外側に単に被さった状態となっているが、通常運転が開始されると、図4に示すように、バグ5bが支持体5aの内側に吸い寄せられて当該バグ5bが支持体5aの外側に密着した状態となる。この通常運転では、捕集された塵埃Dは、バグフィルタ5のバグ5bの外表面に付着することとなる。なお、制御部8は、通常運転において、圧力差検出部9(第1圧力検出部9a及び第2圧力検出部9b)からバグフィルタ5の内側と外側の内外差圧の情報をモニターしている。また、制御部8は、通常運転において、浄化空気排出路11から排出される浄化空気Cの流量を流量検出部21で検出し、当該検出された流量が所定の流量となるように、吸引装置等(図示せず)を制御する。
これにより、含塵空気G中の塵埃Dをバグフィルタ5により捕集して含塵空気Gを良好に浄化して浄化空気Cとすることができる。
【0031】
一方で、この通常運転が継続されると、バグフィルタ5の外表面に付着する塵埃Dが増加し、塵埃Dがバグ5bの外側に層状に付着するとともに、さらに、塵埃Dはバグ5bの外側表面のみではなく、バグ5bを形成する濾布の繊維状部分の内部にまで入り込む状態で付着する。このような状態ではバグフィルタ5において圧力損失が生じるとともに、効率よく塵埃Dを捕集することが困難となる。そこで、制御部8は、このような塵埃Dの層が形成されたことを、圧力差検出部9(第1圧力検出部9a及び第2圧力検出部9b)により検出されたバグフィルタ5の内外差圧が、上記所定の圧力差(予め設定された内外差圧)になったことにより認識し、バグフィルタ5の清掃が必要であると判定する。なお、所定の圧力差は、例えば、バグフィルタ5に塵埃Dの層が形成された状態となり、効率よく塵埃Dを捕集できない状態となったときの圧力差を予め設定しておき、制御部8の記憶部に記憶しておいたものを用いることができる。
このような状態において、本願では、通常運転を行ったままの状態(塵埃Dを捕集している状態)で、バグフィルタ5の清掃運転を行う。
【0032】
上述のとおり、制御部8は、図5に示すように、吸引装置(図示せず)の吸引を継続し通常運転を行った状態のまま、バグフィルタ5の内外差圧が所定の圧力差になった場合に、圧縮空気噴出部7を作動させてバグフィルタ5の清掃運転を行う。清掃運転として、まず、制御部8は、圧力調整弁19の開度を調節して、コンプレッサ(図示せず)からヘッダ部14内に圧縮空気Hを貯留し、ヘッダ部14内での圧縮空気Hの圧力が2MPa程度となるように制御する。
【0033】
そして、制御部8は、特定の空気開閉弁16(例えば、ヘッダ部14dに対応する空気開閉弁)の開閉を制御して、各バグフィルタ5の内側からバグ5bを介して外側に通流するように、圧縮空気Hを断続的に(パルス状に)噴出させる。なお、圧縮空気Hの噴出が継続する時間は、例えば、0.1〜0.5秒程度である。
具体的には、制御部8は、図5に示すように、特定の空気開閉弁16を開操作して、圧縮空気Hの空気流を、インジェクターチューブ15内に基端15A側から先端15B側に向けて一気に高速で噴出させる。
この圧縮空気Hの空気流は、基端側管部材31内を通流し、さらに、先端側管部材32内を通流して、インジェクターチューブ15内の圧力が充分に上昇することで、先端側管部材32に設けられた複数の噴出孔17から噴出され、バグフィルタ5の内側からバグ5bを介して外側に向けて通流することとなる。
【0034】
ここで、この圧縮空気Hの空気流の流れについて説明すると、ヘッダ部14から空気開閉弁16を介してインジェクターチューブ15内に一気に噴出された圧縮空気Hは、基端側管部材31内を通流し、基端筒部31dの内径Xよりも縮径した内径を有する先端部31aの先細部31bを通流するので、この先細部31bにより流速が加速されることとなる。この加速された空気流は、先細部31bの先端部の内径(図示せず)と略同じ内径の先端筒部31cを通流し、速度を維持したまま先端側管部材32内に流入する。
この際、先端側管部材32内に流入した圧縮空気Hの空気流は、非常に高速であるので、当該空気流の周りにはベンチュリー効果により陰圧が生じており、誘引部30近傍は大気圧よりも低い圧力となる。これにより、基端側管部材31と先端側管部材32との間に形成された隙間Sを介して外部空気OA(例えば、大気圧程度)がインジェクターチューブ15内の誘引部30に強制的に誘引されることとなる。この外部空気OAが誘引される際には、当該陰圧により規制部材33が開状態となっており、また、隙間Sは、比較的狭い所定の間隔であるとともに径方向で同一の間隔で形成されているので、圧縮空気Hの空気流と略同一方向に通流する外部空気OAの誘引は、より良好に行われる。
したがって、インジェクターチューブ15の誘引部30よりも先端15B側には、空気開閉弁16を介して供給された圧縮空気Hのみならず、誘引部30を介して強制的に誘引された外部空気OAも瞬時に供給されることとなり、当該インジェクターチューブ15内の圧力を極めて迅速に上昇させることが可能となる。
【0035】
このようにインジェクターチューブ15内の圧力を極めて迅速に上昇させることが可能となったことを、図6〜図8を用いて説明する。図6は、本実施形態の実施例に係るパルス式集塵装置Aの清掃運転時におけるインジェクターチューブ15内の静圧分布を示すグラフ図、図7は、比較例に係るパルス式集塵装置の清掃運転時におけるインジェクターチューブ内の静圧分布を示すグラフ図、図8は、空気開閉弁の開操作からの経過時間と、ある噴出孔位置での圧力(静圧)との関係を示すグラフ図である。なお、静圧は、インジェクターチューブ15内を通流する圧縮空気Hの空気流の速度と平行な面の圧力である。
【0036】
図6に示すように、本実施形態の実施例では、空気開閉弁16の開操作を行った直後のインジェクターチューブ15内の壁面付近での静圧分布は、負圧(陰圧)状態の基端15A側から先端15B側に向かうにつれて静圧が上昇するが、誘引部30近傍で一気に上昇して、0(大気圧)付近にまで押し上げられている。これは、基端側管部材31内において高速の圧縮空気Hの空気流により負圧となっていたものが、大気開放された隙間Sを介して誘引部30に誘引された外部空気OAにより、誘引部30近傍が瞬時に0(大気圧)付近にまで昇圧されたことによるものである。また、圧縮空気Hに加えて、外部空気OAが誘引されたことにより、インジェクターチューブ15内の静圧を全体(特に、先端側管部材32内)にわたり上昇させるために必要な空気量が供給されているので、複数の噴出孔17が配置された領域及び先端部15B付近でも既に静圧が比較的高い状態となっている。
【0037】
一方、図7に示すように、誘引部30を備えない比較例のパルス式集塵装置において、実施例と同様に清掃運転を行った場合には、空気開閉弁の開操作を行った直後のインジェクターチューブ内の壁面付近での静圧分布は、負圧(陰圧)状態の基端側から先端に向かうにつれて静圧が上昇するが、上記のように誘引部30での急激な静圧の上昇が無く、静圧が0(大気圧)付近となる箇所が先端側にずれている。すなわち、実施例では誘引部30近傍で0付近となっているのに対し、比較例では誘引部30に対応する箇所よりも先端側で静圧が0付近となっている。また、インジェクターチューブ内には、圧縮空気Hが供給されているのみであるので、インジェクターチューブ内の静圧を全体にわたり上昇させるために必要な空気量が十分に供給されていないので、複数の噴出孔が配置された領域及び先端部15B付近では静圧が比較的低い状態となっている。
【0038】
さらに、図8に示すように、ある噴出孔17が設けられた位置における静圧は、空気開閉弁16の開操作から時間が経過するにつれて、実施例では、グラフの傾きが急で非常に短時間で一気に圧力が上昇しており(図8の1点鎖線参照)、比較例では、グラフの傾きが比較的緩やかで圧力が上昇するまでに比較的長い時間が必要であることが判明した。
【0039】
したがって、本実施形態に係るパルス式集塵装置Aのように上記特徴構成を備えたインジェクターチューブ15を採用することにより、当該インジェクターチューブ15内の圧力を極めて迅速に上昇させることが可能となる。また、空気開閉弁16の構成を改変等することなく従来と同様の構成の空気開閉弁16を用いた場合でも、インジェクターチューブ15内の圧力を極めて迅速に上昇させることが可能となる。
【0040】
そして、空気開閉弁16の開操作に伴って供給された圧縮空気H及び誘引部30により誘引された外部空気OAは、インジェクターチューブ15内の圧力を極めて迅速に上昇させながら、インジェクターチューブ15の先端15B側に到達し、再度、基端側15Aに通流を始めることとなる。この段階では、インジェクターチューブ15内の圧力が十分に上昇しているため、この基端15A側に向かう圧縮空気Hの空気流により、先端側管部材32に設けられた複数の噴出孔17から順次各バグフィルタ5の内部に噴出されることとなる。具体的には、この圧縮空気Hは主として、図5に示す、噴出孔17e、17d、17c、17b、17aの順に噴出されることとなる。
このように極めて迅速に圧力を上昇させた状態で、噴出孔17から圧縮空気Hをバグフィルタ5内へ噴出することにより、極めて高エネルギ状態の圧力波をバグフィルタ5内へ伝播させることができる。これにより、バグ5bは内側に収縮した状態(図4に示す状態)から反転して、バグ5bが外側に向けて確実に膨張し緊張状態となり(図5参照)、バグ5bを構成する繊維状部分の目開きが大きくなって、当該バグ5bの外側表面に層状に付着した塵埃Dを払い落として良好に清掃できる。
【0041】
よって、装置の大型化及び消費空気量の上昇等の問題を生じることなく、開閉弁の開操作に伴うインジェクターチューブ15内の圧力上昇速度を極めて迅速なものとして、噴出孔17からの圧縮空気Hのフィルタ部内への噴出により極めて高エネルギ状態の圧力波を形成し、その圧力波のフィルタ部内への伝播による塵埃の払い落とし性能を向上することが可能となる。
【0042】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、インジェクターチューブ15の誘引部30を、基端側管部材31と先端側管部材32との間に径方向の隙間Sを形成した状態で基端側管部材31を先端側管部材32の基端部32aに所定部位まで内挿することにより構成し、基端側管部材31はその先端部31aに先細部31b及び先端筒部31cを、その基端部(図示せず)に基端筒部31dを備え、先端側管部材32はその先端部(図示せず)に先端筒部32cを、その基端部32aに縮径部32b及び基端筒部32dを備えるように構成したが、誘引部30に外部空気OAを良好に誘引することができる構成であれば、特にこの構成に限定されるものではない。例えば、以下の(1−A)から(1−C)の構成を例示することができる。
【0043】
(1−A)例えば、図9に示すように、内径の変化する箇所がない円筒状の先端側管部材42に、内径の変化する箇所がない円筒状の基端側管部材41を、両管部材41、42の間に径方向の隙間Sを形成した状態で所定部位まで内挿することにより、誘引部40を構成することも可能である。これにより、非常に単純な構成で、ベンチュリー効果を利用して外部空気OAを誘引する誘引部40を形成することが可能となる。
この場合には、基端側管部材41の先端部(先端側開口部、図示せず)の内周面と先端側管部材42の内周面とに亘って隙間Sを閉鎖するように、逆止弁としての規制部材43を設けることができる。
【0044】
(1−B)また、例えば、図10に示すように、上記実施形態の先端側管部材32と同様の構成の先端側管部材52における基端部52aに、内径の変化する箇所がない円筒状の基端側管部材51を、両管部材51、52の間に径方向の隙間Sを形成した状態で所定部位まで内挿することにより、誘引部50を構成することも可能である。この場合、図10の先端側管部材52において、基端部52aが先端側管部材32における基端部32aに、拡径部52bが拡径部32bに、先端筒部52cが先端筒部32cに、基端筒部52dが基端筒部32dにそれぞれ相当することとなる。
これにより、先端側管部材52の拡径部52bの最小内径及び先端筒部52cの内径が基端側管部材51の先端部(先端側開口部、図示せず)の内径以上、かつ、先端側管部材52の基端筒部52dの内径未満となっているので、圧縮空気Hの空気流が基端側管部材51を通過した後、先端側管部材52を通流する際において、先端側管部材52の断面積の拡大に伴う空気流の速度の減速を抑制することができ、当該空気流によるインジェクターチューブ15内の圧力上昇速度の低下を防止することができる。
この場合、基端側管部材51の先端部(先端側開口部、図示せず)の内周面には、当該内周面と先端側管部材52の先端筒部52cの内周面とに亘って隙間Sを閉鎖するように、逆止弁としての規制部材53を設けることができる。
【0045】
(1−C)さらに、例えば、図11に示すように、内径の変化する箇所がない円筒状の先端側管部材62に、上記実施形態の基端側管部材31の先細部31bと同様の構成を備えた基端側管部材61を、両管部材61、62の間に径方向の隙間Sを形成した状態で所定部位まで内挿することにより、誘引部60を構成することも可能である。この場合、基端側管部材61における先端部61aが上記実施形態における先端部31aに、先細部61bが先細部31bに相当し、上記実施形態における先端筒部31cに相当する構成は存在しないこととなる。これにより、基端側管部材61の先細部61bの先端側から先端側管部材62内に連通した箇所に形成された誘引部60近傍においてベンチュリー効果による陰圧の発生をより増大させて、当該誘引部60からインジェクターチューブ15内への外部空気の誘引力を増大させることができ、結果、インジェクターチューブ15内の圧力上昇速度をより一層上昇させることができる。
【0046】
(2)上記実施形態では、インジェクターチューブ15の断面が円筒状である構成について説明したが、圧縮空気Hが良好に通流することができる構成であれば、特にこの構成に限定されるものではなく、例えば、三角、矩形、多角形状等種々の形状を採用することができる。
【0047】
(3)上記実施形態では、フィルタ部としてバグフィルタ5を用いて構成したが、含塵空気G中の塵埃Dを良好に捕集することができるフィルタであれば、特に制限なく用いることができる。例えば、フィルタ部としてセラミックフィルタを採用することも可能である。この場合、セラミックフィルタは比較的硬く、圧縮空気Hが内側に噴出された場合であってもバグフィルタ5のように外側に膨張して緊張状態となることは殆どないが、圧縮空気Hによりインジェクターチューブ15内の圧力上昇速度を極めて迅速なものとすることにより、噴出孔17の圧縮空気Hのセラミックフィルタへの噴出により極めて高エネルギ状態の圧力波を形成し、その圧力波のセラミックフィルタ内への伝播による塵埃の払い落とし性能を向上することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
以上説明したように、装置の大型化及び消費空気量の上昇等の問題を生じることなく、開閉弁の開操作に伴うインジェクターチューブ内の圧力上昇速度を極めて迅速なものとして、噴出孔の圧縮空気の噴出により極めて高エネルギ状態の圧力波を形成し、その圧力波のフィルタ部内への伝播による塵埃の払い落とし性能を向上することが可能なパルス式集塵機を提供できた。
【符号の説明】
【0049】
1 筐体
2 含塵空気導入室
3 浄化空気室
4 区画壁
5 バグフィルタ(フィルタ部)
6 連通部
7 圧縮空気噴出部
14 ヘッダ部(圧縮空気源)
15 インジェクターチューブ
15A 基端
15B 先端
16 空気開閉弁(開閉弁)
17 噴出孔
30 誘引部
31 基端側管部材
31a 基端側管部材の先端部
31b 先細部(基端側管部材の先端部)
32 先端側管部材
32a 先端側管部材の基端部
32b 拡径部(先端側管部材の基端部)
A パルス式集塵装置
D 塵埃
G 含塵空気
C 浄化空気
H 圧縮空気
OA 外部空気
P 基端側領域
S 隙間
X 基端側管部材の先端部の最大内径(基端側管部材の基端筒部の内径)
Y 先端側管部材の基端部の最小内径(先端側管部材の先端筒部の内径)
Z 先端側管部材の基端部の最大内径(先端側管部材の基端筒部の内径)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
区画壁により内部が含塵空気導入室と浄化空気室とに区画された筐体と、
前記区画壁のうち前記含塵空気導入室と前記浄化空気室とを連通する複数の連通部のそれぞれに設けられ、前記含塵空気導入室側から前記浄化空気室側に通流する含塵空気中に含まれる塵埃を捕集する複数のフィルタを有するフィルタ部と、
前記浄化空気室側から前記フィルタ部を介して前記含塵空気導入室側に圧縮空気を噴出させて、前記フィルタ部に付着した塵埃を清掃する圧縮空気噴出部とを備え、
前記圧縮空気噴出部が、基端が圧縮空気源に接続されるとともに先端が閉塞されたインジェクターチューブと、前記圧縮空気源から前記圧縮空気を前記インジェクターチューブ内へ断続的に供給可能な開閉弁と、前記インジェクターチューブの長手方向に複数設けられ、前記インジェクターチューブ内に供給された前記圧縮空気を前記複数のフィルタに各別に噴出させる噴出孔とを備えたパルス式集塵装置であって、
前記圧縮空気噴出部の前記インジェクターチューブにおいて、前記開閉弁が設けられる基端と前記複数の噴出孔のうち前記基端に最も近接する噴出孔が設けられる箇所との間である基端側領域に、前記開閉弁を介して前記インジェクターチューブ内に前記基端側から前記先端側に向けて供給された前記圧縮空気の空気流により、外部空気を前記インジェクターチューブ内に誘引可能な誘引部を備えたパルス式集塵装置。
【請求項2】
前記インジェクターチューブが、前記基端側に設けられる基端側管部材と、前記先端側に設けられる先端側管部材とを備えて構成され、
前記誘引部が、前記基端側管部材と前記先端側管部材との間に径方向の隙間を形成した状態で前記基端側管部材が前記先端側管部材に内挿されることにより構成されている請求項1に記載のパルス式集塵装置。
【請求項3】
前記先端側管部材の基端部が基端側ほど拡径する拡径部を有し、拡径された前記先端側管部材の基端部に前記基端側管部材が内挿されている請求項2に記載のパルス式集塵装置。
【請求項4】
前記基端側管部材の先端部には、前記基端側管部材の先端部の先端側ほど縮径する先細部が形成されている請求項2又は3に記載のパルス式集塵装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−50824(P2011−50824A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−200644(P2009−200644)
【出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【出願人】(000229047)日本スピンドル製造株式会社 (328)
【Fターム(参考)】