説明

パルプの処理装置および処理方法

【課題】連続的に効率良く紙料を叩解・離解処理することができるようにする。
【解決手段】本発明に係るパルプの処理装置において、二軸スクリュ押出機E1 は、シリンダ8と、シリンダ内に回転自在に配設された2本のスクリュ7と、2本のスクリュ7を回転させる回転駆動機構6とを備えている。シリンダの上流側に設けられ供給口8aには、計量・排出手段4によって定量供給された紙料1をシリンダ内へ送り込む強制投入手段5が付設されている。シリンダには供給口8aと叩解スクリュ9との間に第1の液体添加ノズル11aが、叩解スクリュ9と離解スクリュ10との間に第2の液体添加ノズル11bがそれぞれ配設されている。供給口より投入された紙料に水を添加して叩解させて繊維を分離・フィブリル化し、ついで多量の水を添加して離解させて繊維を水に均一に分散させた抄紙用パルプスラリー15をスラリー排出手段14より排出させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙料の叩解・離解処理を連続的に行うことができるパルプの処理装置および処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、シートパルプやスラッシュパルプを叩解する際には、離解機あるいは高速離解機を用いてあらかた繊維を離解した後、専用の叩解機を使用し、水と共に適度な剪断力をかけてフィブリル化を促進している。離解に使用される装置例としては、様々な羽根を持った縦型や横型のパルパーが挙げられる。また、高速離解機の例としては、固定歯と回転歯との間で生じる剪断力で離解するトップファイナーが挙げられる。
【0003】
叩解に使用する装置としては、例えばビーター、コニカルリファイナー、円筒型リファイナー、ディスクリファイナーなどが使用されており、これらの装置の詳細については、紙パルプ技術協会編「紙料の調成」(1992)P.3〜P.43に記載されている。また、最近では、叩解前に酵素処理を施して叩解効率を向上させる方法(特開平7−331588号公報)や、叩解棒を備えた回転する叩解ロールに紙料を投入し、高粘稠な原料を叩解する方法(特開2001−348791号公報)が示されており、より効率よく叩解する方法が開発されている。
【非特許文献1】紙パルプ技術協会編「紙料の調成」(1992)P.3〜P.43
【特許文献1】特開平7−331588号公報
【特許文献2】特開2001−348791号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の技術では、離解度を高めるために10分単位での時間が必要になるため効率が悪い。また、高速離解機を用いた場合も多量の水と共に処理するために、装置の電動機のサイズを大きくする必要があったり、装置の設置に広い面積が必要であったりするなど、処理効率が悪い。一方、ビーターやリファイナーを用いた叩解においても、多量の水とともに処理するために、処理効率が悪いという問題点がある。また、酵素処理についても叩解処理前に酵素処理を施す処理槽に一定時間保持する必要があるため効率が悪い。
【0005】
本発明は上記従来の技術の有する問題点に鑑みてなされたものであって、連続的に効率良く紙料を叩解・離解処理することができるパルプの処理装置および処理方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係るパルプの処理装置は、上流側に供給口を有するとともに下流端に排出口を有するシリンダと、前記シリンダ内に回転自在に配設された2本のスクリュと、前記2本のスクリュを回転させる回転駆動機構を有する二軸スクリュ押出機と、前記供給口へ紙料を定量供給する計量・排出手段が付設された紙料貯留槽とを備えたパルプの処理装置であって、前記スクリュは、上流側より下流側へ順次、フルフライト、叩解スクリュ、フルフライト、離解スクリュ、フルフライトを有し、前記シリンダは、前記供給口と前記叩解スクリュの間に配設された第1の液体添加ノズルおよび前記叩解スクリュと前記離解スクリュの間に配設された第2の液体添加ノズルを有し、前記供給口より前記シリンダ内へ供給された紙料が、前記スクリュの回転によって下流へ移送される途中において前記第1の液体添加ノズルより水が添加されて叩解され、ついで前記第2の液体添加ノズルより水が添加されて離解されてパルプスラリーが生成されること、を特徴とする。
【0007】
また、請求項1に記載のパルプの処理装置の下流側に、前記パルプ処理装置により生成されたパルプスラリーを脱水して高濃度スラリーを生成する単軸スクリュ押出機を配設したパルプの処理装置であって、前記単軸スクリュ押出機は、上流側に導入口を有するとともに下流端に排出口を有するシリンダと、前記シリンダ内に配設されたフルフライトを有するスクリュと、前記シリンダの圧縮部に対応する部位に設けられた脱水スリットと、を有しており、前記二軸スクリュ押出機の排出口が送液管を介して前記導入口に接続されていること、を特徴とするものでもよい。
【0008】
本発明に係るパルプの処理方法は、請求項1に記載のパルプの処理装置を用い、前記紙料貯留槽に貯留された紙料を計量・排出手段によって前記二軸スクリュ押出機へ定量供給し、回転する2本のスクリュによって下流側へ移送する途中で水を添加して叩解し、ついでさらに水を添加して離解することによりパルプスラリーを得ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、上述のとおり構成されているので、次に記載するような効果を奏する。
【0010】
シートパルプのような叩解・離解していない紙料を、二軸スクリュ押出機内で連続的に短時間で叩解・離解することにより、繊維長が長く、フリーネス値が小さい高品質のパルプスラリーを効率よく製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
先ず、本発明に係るパルプの処理装置の一実施の形態について説明する。
【0012】
図1は本実施の形態によるパルプの処理装置の説明図である。図1に示すように、二軸スクリュ押出機E1 は、シリンダ8と、シリンダ8内に回転自在に配設された2本のスクリュ7と、2本のスクリュ7を回転させる回転駆動機構6とを備えている。
【0013】
シリンダ8の最上流部に、紙料を貯留する紙料貯留槽3が併設されており、紙料貯留槽3には、紙料を定量供給するための計量・排出手段4が付設されている。そしてシリンダ8の上流側に設けられた供給口8aには、計量・排出手段4によって定量供給された紙料を強制的にシリンダ8内に送り込むことができる強制投入手段5が付設されている。
【0014】
各スクリュ7は、上流側から下流側へ順次、フルフライト7a、紙料に強い剪断力をかけて叩解する叩解スクリュ9、フルフライト7b、多量の水と叩解されたパルプを混練して離解する離解スクリュ10、フルフライト7cを有している。
【0015】
他方、シリンダ8には、供給口8aと叩解スクリュ9との間に逆流防止機能付きの第1の液体添加ノズル11aが、叩解スクリュ9と離解スクリュ10との間に逆流防止機構付きの第2の液体添加ノズル11bがそれぞれ配設されている。これにより、水貯留槽13の水がそれぞれ水供給ポンプ12a、12bによって、第1および第2の液体添加ノズル11a、11bへ定量供給されてシリンダ8内に注入される。また、強制投入手段5と叩解スクリュ9の間に設置された逆流防止機構付きの第1の液体添加ノズル11aは、紙料に少量の水を供給する機能を持ち、叩解スクリュ9と離解スクリュ10との間に設置された逆流防止機構付きの第2の液体添加ノズル11bは、叩解されたパルプを離解するために、多量の水を供給する機能を持っている。
【0016】
シリンダ8の最下流には排出口16に連通されたパルプスラリー排出手段14が配設されており、添加剤の添加工程や、抄紙工程へと繋ぐことができるようになっている。
【0017】
本実施の形態によれば、ドライラップパルプのようなシートパルプ、ベールパルプなど、乾燥しているかまたは水分の少ないパルプの叩解・離解処理において、これらの紙料に少量の水を含ませた上で二軸スクリュ押出機E1 に投入し、スクリュ7の搬送力を利用して下流に移動させながら水を添加して叩解スクリュ9の剪断力を利用して短時間に繊維を分離・フィブリル化する。さらに、その下流で多量の水を添加して離解スクリュ10の分配力により繊維を水に均一分散させて抄紙用パルプスラリー15としてシリンダ先端に配設されたパルプスラリー排出手段14より排出させる。
【0018】
本発明に用いられる紙料は、エゾマツやトドマツなどの国産の針葉樹やブラックスプルース、ホワイトスプルーフ等の外国産針葉樹から機械的方法や科学的方法で取り出したパルプ、ドノノキ、シナノキ、ポプラなどの国産の広葉樹材やコットンウッド、ユーカリなどの外国産の広葉樹材から機械的方法や科学的方法で取り出したパルプ、麻、バガス、ケナフ等の非木材から取り出したパルプなど、いずれのパルプでも良く、また、古新聞や紙製品の端材でもよい。
【0019】
紙料の形状は特に限定しないが、例えば、ドライラップパルプのようなシートパルプ、ベールパルプのような板状パルプ、裁断端材のような毛玉状パルプなどが挙げられるが、いずれも紙料貯留槽3から二軸スクリュ押出機E1 への搬送が容易で、スクリュにかみ込まれるサイズに調製されていることが必要である。
【0020】
また、これらの紙料1には絶乾重量に対して等量もしくはそれに近い量の水が含まれていることが好ましく、あるいは強制投入手段5から、あるいは二軸スクリュ押出機E1 の叩解スクリュ9より上流側で水が添加され、叩解スクリュ9に到達したときには紙料1と水の比率が重量比で等量かそれに近い比率に調製されていることが好ましい。
【0021】
これよりも水分量が多くなると安定して紙料1を搬送・投入することが難しくなるばかりでなく、叩解スクリュ9にて十分な剪断が加えられず、フリーネス値の大きなパルプスラリーとなってしまう。逆に水分量が少ない場合は、叩解スクリュ9での発熱量が多くなり、パルプに焦げが生じてしまう。したがって、初期の水分量は、紙料100重量部に対して25重量部以上1000重量部未満が良く、さらに好ましくは50重量部以上500重量部未満が良い。
【0022】
また、紙料貯留槽3に貯留されている状態で水分が多く含まれると、紙料貯留槽3内および計量・排出手段4などで紙料の動きが悪くなり、ブリッジの形成や供給不安定の原因になるため、水を添加するのは強制投入手段5の部位もしくは二軸スクリュ押出機E1 の叩解スクリュ9より上流側で行うことが好ましい。
【0023】
本発明における紙料貯留槽3は、一定時間、一定量の紙料を貯留できる物であれば特に限定はしないが、例えば撹拌機能を持った大型のホッパーなどが挙げられる。
【0024】
本発明における紙料の計量・排出手段4は、紙料を計量して、一定量を二軸スクリュ押出機E1 の強制投入手段5に排出する機能が備えられていれば特に限定されないが、例えば単軸式定容フィーダー、二軸式定容フィーダー、ベルトコンベヤー、サークルフィーダー、重量式単軸スクリュフィーダー、重量式二軸スクリュフィーダー、重量式ベルトコンベアー等が挙げられる。紙料が均一な形状でない場合は、重量を計量しながら送り能力を制御する重量式フィーダーを使用しないと、排出量が不安定になるので好ましくない。また、これらのフィーダーは単独で使用しても良いし、サークルフィーダーと重量式コンベアーを組み合わせるなど、複数を組み合わせてより精度良く紙料を計量・排出するようにしても良い。
【0025】
本発明における強制投入手段5は、紙料の形状が二軸スクリュ押出機E1 に食い込みにくい場合に使用する物であって、計量・排出手段4から排出された紙料1が安定して二軸スクリュ押出機E1 に投入されるのであれば使用する必要はない。強制投入手段5の例としては、毛玉状紙料を強制的に押し込むスクリュ式コンパクターが挙げられる。
【0026】
本発明における叩解スクリュ9は、紙料に適度な剪断力をかけられるものであれば特に限定はしないが、例えば、順フライトロータースクリュ、逆フライトロータースクリュ、順フライトニーディングスクリュ、逆フライトニーディングスクリュ、順フライトバックミキシングスクリュ、逆フライトバックミキシングスクリュ、順フライトツイストニーディングスクリュ、逆フライトツイストニーディングスクリュ、順フライト切り欠きフライトスクリュ、逆フライト切り欠きフライトスクリュ等が挙げられる。その中でも逆フライトロータースクリュは強い剪断力が得られるので好ましい。逆に逆フライトバックミキシングスクリュや逆フライト切り欠きフライトスクリュは、パルプ繊維が切り欠き部に閉塞し、かつフライト頂頭部や溝部をパルプが通過することができず、閉塞してしまう可能性があるため好ましくない。
【0027】
これらのスクリュは単品でも複数種類を組み合わせて使用してもかまわない。また、ピッチや長さについては、効果が見られる最適のものを用いる。
【0028】
本発明における水を二軸スクリュ押出機E1 内に供給する水供給手段は、水を定量的に安定して供給する水供給ポンプ12a、12bと、水が逆流しないようにする逆流防止機構付きの液体添加ノズル11a、11bからなるものが好ましい。水供給ポンプ12a、12bは水を供給する水貯留槽13や水供給ラインから水の供給を受け、昇圧するものであれば特に限定されないが、例えば多頭式のプランジャーポンプ、多頭式ダイヤフラムポンプ、スクリュポンプ、ロータリーポンプ、モーノポンプが挙げられる。また、逆流防止機構の液体添加ノズル11a、11bについては、例えば金属製の球やバネを利用した逆止弁が付属したノズルが挙げられる。
【0029】
本発明における水の添加量は、必要とするパルプスラリーのパルプ濃度に合わせて添加すれば、特に制限はないが、水が少ないと、離解が不十分となる。したがって、パルプの濃度が3wt%〜5wt%になるように水を添加することが好ましい。
【0030】
本発明における離解スクリュ10は、液体添加ノズル11a、11bから供給された水に叩解されたパルプを離解・分散させる機能を持ったものであれば特に限定されないが、繊維長を必要以上に短くしないためにも強い剪断力をかけることが無く、分配能力の高いスクリュが好ましい。例えばスクリュ径の約0.09倍の厚さを持ったプレートを45度ずらしで順リードで5枚結合したニーディングスクリュ、スクリュ径の約0.19倍の厚さを持ったプレートを45度ずらしで順リードで5枚結合したニーディングスクリュ、順リードツイストニーディングスクリュ、順リード切り欠きフライトスクリュが挙げられる。
【0031】
これらのスクリュは単品でも複数種類を組み合わせて使用してもかまわない。また、ピッチや長さについては、効果が見られる最適のものを用いる。
【0032】
本発明におけるパルプスラリー排出手段は特に規定しないが、パルプスラリーは流路の抵抗が大きくなると閉塞し易いため、できるだけ抵抗を持たない形状にする必要がある。特にスラリーの濃度が高い場合には、二軸スクリュ押出機内の送り機能のないデットスペースを作らず、排出手段もできるだけ接地面と直角に近い角度で下方に排出することが好ましい。
【0033】
本発明における二軸スクリュ押出機E1 のスクリュ回転数は、二軸スクリュ押出機E1 のサイズや処理量によって異なるため、詳しく規定することはできないが、例えばスクリュ径32mmの押出機で1kg/hで処理する場合は300rpm〜400rpmが好ましい。
【0034】
図2は、紙料の叩解・離解・脱水処理を行うことができる処理装置の他の実施例を示す説明図である。図2に示すように、本実施例の処理装置は、図1に示した処理装置のパルプスラリー排出手段14に代わって送液管20が接続されており、その下流側に単軸スクリュ押出機E2 が接続されている。単軸スクリュ押出機E2 は、シリンダ23とシリンダ23内に回転自在に配設されたフルフライトを有するスクリュ22と、1本のスクリュ22を回転させる回転駆動機構21を備えている。そしてスクリュ22には圧縮部24が設けられ、その部位でパルプスラリーが圧縮を受けるようになっている。この圧縮部24の構造は、スラリー液を緩やかに圧縮できる構造であれば特に限定されないが、例えば、スクリュ22の溝を徐々に浅くし、空間容積を小さくする構造や、フライトのピッチを徐々に狭くしてスクリュが1回転する間にスラリーが下流側に移動する距離を短くする構造が挙げられる。そしてこの圧縮部24に係る位置または圧縮部24よりも上流位置のシリンダ23側壁には脱水スリット25が設けられており、そこからスラリー中の水分の一部が脱水・除去されてパルプスラリーが高濃度に濃縮された後、シリンダ23の最下流に設けられた高濃度パルプスラリー排出手段27から高濃度パルプスラリー28が排出されるように構成されている。
【実施例1】
【0035】
風乾したノートを約5mm×約100mmに裁断したものを重量式コンビネーションフィーダー(日本製鋼所製 スクリュ式+ベルトコンベアー式、0.4kW+0.4kW)に投入し、1kg/hで排出した。排出されたノートは、コンパクター(日本製鋼所製 スクリュ式、0.4kWモーター、300rpm)がホッパー部に設置された二軸スクリュ式かみ合い型同方向押出機(日本製鋼所製 TEX30、L/D45.5)に投入され、300rpmのスクリュ回転数で下流に送られつつ、プランジャーポンプ(タクミナ製
PLSXPA2-004-STS-UWX )と逆流防止機構付き液体添加ノズルを介して含水率が紙料100重量部に対して50重量部、100重量部、1000重量部となるように注入された少量の水と混合された後、順フライトニーディングディスクと逆フライトロータースクリュを組み合わせた叩解スクリュで叩解され、さらにプランジャーポンプ(富士ポンプ製)と逆流防止機構付き液体添加ノズルを介して20L/hで注入された水と混合された後、ピッチの狭い順フライトニーディングディスク、ピッチの広い順フライトニーディングディスクおよび順フライトツイストニーディングスクリュから成る離解スクリュで離解される。そして、シリンダ先端に接続されているパルプスラリー排出手段からパルプスラリーを得た。得られたパルプスラリーは水分量を測定した後、次の方法に従ってフリーネスおよび繊維長を計測した。
【0036】
a.フリーネスの測定
JIS8121に示されている方法に準じ、0.3wt%の濃度になる様に水を添加したスラリー液を1分間家庭用ミキサーで解繊し、全量を1Lとしたものを評価原料とし、カナダ標準型フリーネステスターにてフリーネスを測定した。
【0037】
b.繊維長の測定
a.で調整したパルプスラリー0.1mLを10倍に希釈し、少量の界面活性剤を添加したのち、懸濁しているパルプ繊維長をデジタル顕微鏡(オリンパス MIC−D)で22倍に拡大し、10本の繊維を計測して長さを平均した(n=3)。
【0038】
得られた結果を表1に示す。
繊維長についてはいずれも約0.6mmで、各条件で差は見られなかった。しかし、フリーネスについては紙料の水分量が多くなるほどフリーネス値が大きくなる傾向が見られ、50重量部に水分を調整したパルプスラリーには、焦げが原因と思われる茶色の変色が見られた。
【0039】
【表1】

※水分量50重量部は未測定
【実施例2】
【0040】
実施例1と同様に風乾したノートおよび約20mm×約150mmの風乾した新聞紙を1kg/hで二軸スクリュ式かみ合い型同方向押出機(日本製鋼所製 TEX30、L/D45.5)に投入し、100〜300rpmのスクリュ回転数で下流に送りつつ、プランジャーポンプ(タクミナ製 PLSXPA2-004-STS-UWX)と逆流防止機構付き液体添加ノズルを介して含水率が紙料100重量部に対して100重量部となるように注入された少量の水と混合された後、以下実施例1と同様に処理を行い、押出機先端に接続されているパルプスラリー排出手段からパルプスラリーを得た。得られたパルプスラリーは水分量を測定した後、実施例1と同じ方法でフリーネスおよび繊維長を計測した。結果を表2および図3に示す。
【0041】
【表2】

【実施例3】
【0042】
実施例1と同様に風乾したノートを1kg/hで二軸スクリュ式かみ合い型同方向押出機(日本製鋼所製 TEX30、L/D45.5)に投入し、300rpmのスクリュ回転数で下流に送りつつ、プランジャーポンプ(タクミナ製 PLSXPA2-004-STS-UWX)と逆流防止機構付き液体添加ノズルを介して含水率が紙料100重量部に対して100重量部となるように注入された少量の水と混合された後、以下実施例1と同様に処理を行った。その際、叩解スクリュの逆フライトロータースクリュの代わりに逆フライトニーディングスクリュ、逆フライトバックミキシングスクリュ、逆フライト逆ずらしツイストニーディングスクリュを持ち、シリンダ先端に接続されているパルプスラリー排出手段からパルプスラリーを得た。得られたパルプスラリーは水分量を測定した後、実施例1と同じ方法でフリーネスおよび繊維長を計測した。結果を表3に示す。
【0043】
【表3】

※BMSはスラリーが排出されず
【実施例4】
【0044】
広葉樹さらしクラフトパルプ(LBKP)を約1cm角にちぎったものを、原料として、実施例2と同様に、スクリュ回転数300rpmでパルプスラリーの調整を行った。得られたパルプスラリーは水分量を測定した後、実施例1と同じ方法でフリーネスおよび繊維長を計測した。その結果、フリーネスは248、繊維長は0.73mmであった。
【実施例5】
【0045】
実施例1と同様に風乾したノートを1kg/hで二軸スクリュ式かみ合い型同方向押出機(日本製鋼所製 TEX30、L/D45.5)に投入し、300rpmのスクリュ回転数で下流に送りつつ、プランジャーポンプ(タクミナ製 PLSXPA2-004-STS-UWX)と逆流防止機構付き液体添加ノズルを介して含水率が紙料100重量部に対して100重量部となるように注入された少量の水と混合された後、以下実施例1と同様に処理を行った。そして二軸スクリュ押出機先端に取り付けられた送液管を通じて結合されている単軸スクリュ押出機にパルプスラリーを導き、単軸スクリュ押出機のスクリュ回転数を15rpm〜60rpm、シリンダの脱水スリット数を1〜3箇所に変えて、スラリー濃縮を行った。結果を表4に示す。これらの条件の中では、スクリュ回転数48rpm、スリット数2枚の時に良好な運転が可能であった。そしてそのとき得られたパルプスラリー濃度は15wt%であった。
【0046】
【表4】

【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明に係る一実施の形態によるパルプ処理装置を示す説明図である。
【図2】本発明に係る他の実施の形態によるパルプ処理装置を示す説明図である。
【符号の説明】
【0048】
1 紙料
2 回転撹拌機構
3 紙料貯留槽
4 計量・排出手段
5 強制投入手段
6、21 回転駆動機構
7、22 スクリュ
8、23 シリンダ
9 叩解スクリュ
10 離解スクリュ
11a、11b 液体添加ノズル
12a、12b 水供給ポンプ
13 水貯留槽
14 パルプスラリー排出手段
15 抄紙用パルプスラリー
16、26 排出口
20 送液管
24 圧縮部
25 脱水スリット
27 高濃度パルプスラリー排出手段
28 高濃度パルプスラリー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上流側に供給口(8a)を有するとともに下流端に排出口(16)を有するシリンダ(8)と、前記シリンダ内に回転自在に配設された2本のスクリュ(7)と、前記2本のスクリュを回転させる回転駆動機構(6)を有する二軸スクリュ押出機(E1 )と、前記供給口へ紙料を定量供給する計量・排出手段(4)が付設された紙料貯留槽(3)と、を備えたパルプの処理装置であって、
前記スクリュは、上流側より下流側へ順次、フルフライト(7a)、叩解スクリュ(9)、フルフライト(7b)、離解スクリュ(10)、フルフライト(7c)を有し、
前記シリンダは、前記供給口と前記叩解スクリュの間に配設された第1の液体添加ノズル(11a)および前記叩解スクリュと前記離解スクリュの間に配設された第2の液体添加ノズル(11b)を有し、
前記供給口より前記シリンダ内へ供給された紙料が、前記スクリュの回転によって下流へ移送される途中において前記第1の液体添加ノズルより水が添加されて叩解され、ついで前記第2の液体添加ノズルより水が添加されて離解されてパルプスラリーが生成されること、
を特徴とするパルプの処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載のパルプの処理装置の下流側に、前記パルプ処理装置により生成されたパルプスラリーを脱水して高濃度スラリーを生成する単軸スクリュ押出機(E2 )を配設したパルプの処理装置であって、
前記単軸スクリュ押出機は、上流側に導入口(23a)を有するとともに下流端に排出口(26)を有するシリンダ(23)と、前記シリンダ内に配設されたフルフライトを有するスクリュ(22)と、前記シリンダの圧縮部(24)に対応する部位に設けられた脱水スリット(25)と、を有しており、前記二軸スクリュ押出機の排出口(16)が送液管(20)を介して前記導入口に接続されていること、を特徴とするパルプの処理装置。
【請求項3】
請求項1に記載のパルプの処理装置を用い、前記紙料貯留槽に貯留された紙料を計量・排出手段によって前記二軸スクリュ押出機へ定量供給し、回転する2本のスクリュによって下流側へ移送する途中で水を添加して叩解し、ついでさらに水を添加して離解することによりパルプスラリーを得ることを特徴とするパルプの処理方法。

【図1】
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【図2】
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