説明

パレット用ICタグ、及びパレットに対するICタグの取付方法

【課題】パレットに専用取付穴等を設けたりすることなく、パレットに取り付けることのできるIDタグを提供する。
【解決手段】パレット2に設けられた挿入穴10の中に装着されて樹脂材料からなるパレット用ICタグ20であって、ICタグインレット21が配設される基体22であって、挿入穴の内壁面に対向する側に第一支持部23を有する基体と、基体の外側に延在して変形により弾性支持力を発生させる弾性支持体30,40であって、挿入穴の内壁面に対向する側に第二支持部34,44を有する弾性支持体と、を備えて、挿入穴の中に挿入されると、基体の第一支持部と弾性支持体の第二支持部とが弾性支持力で挿入穴の内壁面に対して圧接されることにより、挿入穴の内壁面に対して弾性的に係止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品の運搬、移送、保管等に使用されるパレットに対して装着固定されるIDタグ、及び、パレットへのICタグの取付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
木製パレットの中央桁に取付用の穴を形成し、その穴の中にICタグを挿入したあと、樹脂を注入・固化させることにより、パレットの穴の中にICタグを取り付けることが開示されている(例えば、特許文献1を参照。)。
【0003】
また、パレットの側面において、中央部が狭開口で外側開口部が広開口である貫通孔を形成し、貫通孔の中にICタグを取り付けることが開示されている(例えば、特許文献2を参照。)
【0004】
さらにまた、パレットのデッキボードの桟又はパレットの側面部において通孔を形成し、通孔の中にICタグを取り付けることが開示されている(例えば、特許文献3を参照。)
【0005】
さらにまた、パレットの桁内にICタグホルダー収納部材を配置し、ICタグホルダー収納部材に対してICタグホルダー部材を係合状態で取り付けることが開示されている(例えば、特許文献4を参照。)
【0006】
上記従来のいずれの取付方法においても、パレットに取付専用の穴や孔を設けたり、又は、ICタグとは別体の専用取付部材を用いたりすることにより、ICタグがパレットに取り付けられている。したがって、従来のICタグ及びパレットに対するICタグの取付方法においては、専用の取付穴等を有していないパレットに対しては何らかの特別な加工を必要とするので、汎用性が乏しい、言い換えればパレットに対するICタグの取付に関する自由度が低いという問題がある。
【0007】
【特許文献1】特開平05−85545号公報
【特許文献2】特開2005−119670号公報
【特許文献3】特開平09−254983号公報
【特許文献4】特開2005−280784号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の解決すべき技術的課題は、パレットに専用取付穴等を設けたりすることなく、パレットに取り付けることのできるIDタグ、及び、パレットに対してICタグを取り付ける方法を提供することである。
【課題を解決するための手段及びその作用と効果】
【0009】
上述の技術的課題を解決するために、本発明に係るパレット用ICタグ、及びパレットへのICタグの取付方法は、以下の特徴を有する。
【0010】
すなわち、本発明に係るパレット用ICタグは、
パレットに設けられた挿入穴の中に装着されて樹脂材料からなるパレット用ICタグであって、
ICタグインレットが配設される基体であって、挿入穴の内壁面に対向する側に第一支持部を有する基体と、
基体の外側に延在して変形により弾性支持力を発生させる弾性支持体であって、挿入穴の内壁面に対向する側に第二支持部を有する弾性支持体と、を備えて、
挿入穴の中に挿入されると、基体の第一支持部と弾性支持体の第二支持部とが前記弾性支持力で挿入穴の内壁面に対して圧接されることにより、挿入穴の内壁面に対して弾性的に係止されることを特徴とする。
【0011】
ところで、一般に、パレットには、専用の取付穴を設けなくとも、桁部のデッキ面や側面において貫通孔が既に設けられている。そこで、本願発明においては、既設の貫通孔をICタグの取付に利用しようとするものである。
【0012】
上記パレット用ICタグによれば、ICタグを構成する樹脂材料が変形するときに発生する弾性支持力を利用して、基体の第一支持部と弾性支持体の第二支持部とが挿入穴の内壁面に対して圧接されるので、基体及び弾性支持体とが挿入穴の内壁面に対して弾性的に係止される。したがって、パレットに専用取付穴を形成することなく、パレット自身に予め設けられている挿入穴に取り付けることのできる。
【0013】
このような弾性支持力を発生させるためには様々な構成を用いることが可能であるが、例えば、弾性支持体が薄肉支持部を介して基体に接続されていて、薄肉支持部を基点にして弾性支持体を折曲させることである。
【0014】
あるいは、弾性支持体が、側面に沿ってアーム状に延在するとともに周囲の側面よりも外側に突出するように構成されていて、アーム状の弾性支持体を内側に湾曲させることである。
【0015】
あるいは、弾性支持体がU字形状をしていて、弾性支持体を湾曲させることである。
【0016】
あるいは、弾性支持体が基体から立体的に放射状に延在して、弾性支持体を湾曲させることである。
【0017】
ICタグの確実な係止を得るために、弾性支持体が少なくとも一つ設けられている。
【0018】
ICタグのより確実な係止を得るために、挿入穴の断面形状が方形形状である場合には、前記弾性支持体が四つ設けられていることが好適である。
【0019】
挿入穴の内壁面に対して線接触する構成でも可能であるが、ICタグのより確実な係止を得るために、第二支持部が対向する内壁面と並行になるように加工されていて、挿入穴の中に挿入されると挿入穴の内壁面に対して面接触することが好適である。
【0020】
挿入穴の中に挿入されたときに挿入穴の内壁面に接触する部分には、摩擦力を向上させる摩擦力向上体が形成されていることが好適である。
【0021】
上述したパレット用ICタグは、
前記弾性支持体を圧縮縮小状態で保持しながらパレットの挿入穴の中に挿入するステップと、
圧縮縮小状態で保持された弾性支持体を解放して弾性支持力を発生させるステップと、
弾性支持体が弾性支持力により伸張拡大するステップと、
基体の第一支持部と弾性支持体の第二支持部とが弾性支持力で挿入穴の内壁面に対して圧接されることにより、挿入穴の内壁面に対して弾性的に係止されるステップと、に従って、パレットに設けられた挿入穴の中に装着固定される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に、本発明の第一実施形態に係る樹脂製ICタグ20(以下、ICタグ20という。)、及びICタグ20をパレット2に設けられた挿入穴10の中に装着固定する方法について、図1乃至4を参照しながら詳細に説明する。
【0023】
図1は、本発明の第一実施形態に係るICタグ20を説明する正面図である。図2は、ICタグ20をパレット2の挿入穴10に装着した状態を示す断面図である。図3は、図2に示した装着状態を他の方向から見た断面図である。図4は、図2に示した装着状態を上面から見た図である。
【0024】
適度な弾力性や柔軟性や可撓性を有する材料、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド等の樹脂材料の射出成形等の各種成形方法によって作成されているICタグ20は、図1に示すように、上下方向に延在する大略方形形状をした縦長の基体22と、基体22の外側に延在する大略台形形状をした上下の折曲フィン30,40と、基体22の外側に延在する大略小丘状に突出した左右の弾性支持体24,26と、を備えている。装着前のICタグ20は、全体としてフラットな形状をしている。
【0025】
基体22はICタグインレット21を配設するためのものであり、ICタグインレット21が基体22の表面又は内部に配設される。ICタグインレット21は、接着又は熱熔着や超音波熔着等の各種固定方法によって基体22に固定される。基体22は、ICタグインレット21を配設して支持するための支持部材でもあるから、少なくともICタグインレット21が配設される部分及びその周辺部分においては、基体22自身が変形しにくいように肉厚に構成されていることが好ましい。
【0026】
ICタグインレット21は、シリコンチップからなるICチップが基材上に搭載された構成をしている。ICチップには、パレット上に載置される物品に関する情報(例えば、製造者特定情報、生産管理情報、品番情報、製品特性情報等)、パレットに関する情報(例えば、材質情報、配送先情報等)といった電子的な情報が格納されている。このようなICチップは、半導体集積回路であるICチップ又はさらに集積度のアップしたLSIチップである。
【0027】
ICタグインレット21の基板のおもて面の上には、不図示のアンテナパターンが形成されている。アンテナパターンの中心側電極端子のそれぞれに対して、ICチップの接続端子が電気的に接続されている。使用する電波の波長に応じて様々なアンテナパターンを用いることができる。アンテナパターンは、従来から使用されている銅箔に近い導電性を持った導電性フィラーを含む低抵抗ペーストを用いて印刷又は転写によって形成されたり、銅箔やアルミ箔などの金属箔によって形成されたりすることができる。
【0028】
上折曲フィン30及び下折曲フィン40の高さ寸法は、挿入対象の挿入穴10の幅寸法(ある内壁面とそれに対向する内壁面との間の寸法)よりも長寸に構成されている。また、後述する左弾性支持部24及び右弾性支持部26を含む基体22の幅寸法も、挿入対象の挿入穴10の幅寸法(ある内壁面とそれに対向する内壁面との間の寸法)よりも長寸に構成されている。
【0029】
上折曲フィン30は、薄肉支持部32を介して基体22の上端と接続されている。また、下折曲フィン40は、薄肉支持部42を介して基体22の下端と接続されている。薄肉支持部32,42は、折曲フィン30,40の折曲方向と反対の面に溝が形成されたいわゆるハーフカットにより形成されている。薄肉支持部32,42を基点にして折曲フィン30,40を折り曲げると、元のフラットな形状に戻ろうとする弾性復元力が作用する。
【0030】
上折曲フィン30の上端面である第二当接面(第二支持部)34及び下折曲フィン40の下端面である第二当接面(第二支持部)44は、それぞれ、パレット2の挿入穴10に挿入したときに挿入穴10の内壁面と接触する部分である。折曲フィン30,40の各端面34,44を折曲フィン30,40の表面に対して直角面とすることもできるが、ICタグ20を挿入穴10の中に装着したときには、直角面の縁が線状に接触することになり、弾性係止力が不足することもありうる。内壁面に対する第二支持部の接触面積を大きくするために、折曲フィン30,40の各端面34,44を折曲フィン30,40の表面に対して傾斜した面とすることが好適である。その結果、ICタグ20を挿入穴10の中に装着したときには、傾斜した第二当接面(第二支持部)34,44が面状に接触することになり、弾性係止力が向上する。
【0031】
また、基体22の左側面部分及び右側面部分においては、左弾性支持部24及び右弾性支持部26がそれぞれ設けられている。左弾性支持部24及び右弾性支持部26は、ICタグインレット21が配設される配設部分の周辺部分よりもさらに外側に位置して外側に突出するように湾曲している。左弾性支持部24及び右弾性支持部26は、ICタグインレット21が配設される部分及びその周辺部分よりも薄肉であり、応力の印加により変形可能に構成されている。
【0032】
左弾性支持体24の左端面である第二当接面(第二支持部)25及び右弾性支持体26の右端面である第二当接面(第二支持部)27は、それぞれ、パレット2の挿入穴10に挿入したときに挿入穴10の内壁面と接触する部分である。弾性支持体24,26の各端面25,27を弾性支持体24,26の表面に対して直角面とすることもできるが、ICタグ20を挿入穴10の中に装着したときには、直角面の縁が線状に接触することになり、弾性係止力が不足することもありうる。内壁面に対する第二支持部の接触面積を大きくするために、弾性支持体24,26の各端面25,27を弾性支持体24,26の表面に対して傾斜した面とすることが好適である。その結果、ICタグ20を挿入穴10の中に装着したときには、傾斜した第二当接面(第二支持部)25,27が面状に接触することになり、弾性係止力が向上する。
【0033】
次に、このようなパレット用ICタグ20が装着固定される相手方のパレット2について説明する。
【0034】
パレット2は、上デッキ面4及び下デッキ面6が平面矩形状に成形された樹脂成形品である。パレット2の2側面(矩形の対辺となる2側面)に、それぞれ、フォークリフトの爪を差し込むためのフォーク差込口が設けられている。パレット2に対してX方向及びY方向の2方向からフォークリフトの爪を差し込むことが可能である(2方差しタイプ)。フォーク差込口は、パレット2の中心(幅方向の中心)に対して左右対称の位置に設けられている。フォークリフトの爪をX方向及びY方向から差し込むために、上デッキ4面及び下デッキ面6を支持する支柱部8は、四隅の四箇所と、各側面中央部の四箇所と、中心部の一箇所との合計九箇所に存する。各支柱部8の上デッキ面4や下デッキ面6や側面には、複数個の挿入穴10が通常配設されている。
【0035】
パレット2の挿入穴10は、貫通穴又は有底穴のいずれであってもよく、方形形状や三角形状等の多角形形状や円筒形状のいずれであってもよい。このような挿入穴10の様々な形状や寸法に合わせて、ICタグ20の形状や寸法が予め構成される。
【0036】
一例として、方形形状をした挿入穴10に対して図1に示したパレット用ICタグ20を装着固定する方法について、図2乃至4を参照しながら説明する。
【0037】
方形形状をした挿入穴10は、第一内壁面12と、第一内壁面12に対向する第二内壁面14と、第一内壁面10に直交状態で隣接する第三内壁面16と、第三内壁面16に対向する第四内壁面18と、を備えている。なお、挿入穴10の形態は、このような方形形状に限定されるものではない。
【0038】
パレット2の挿入穴10に装着する前のICタグ20は、全体としてフラットな形状をしているが、挿入・装着作業に先だって、上折曲フィン30及び下折曲フィン40は、薄肉支持部32,42を基点にして折り曲げられて、圧縮縮小状態になる。折曲状態のICタグ20をパレット2の挿入穴10に挿入することができるくらいに、上折曲フィン30及び下折曲フィン40を折り曲げるための圧縮縮小力が印加される。このような折曲状態を保持しながらICタグ20がタグの長手方向に沿ってパレット2の挿入穴10に挿入される。
【0039】
パレット2の挿入穴10に折曲状態で挿入されたICタグ20を解放すると、折曲状態のICタグ20が元のフラットな形状に戻ろうとして、弾性復元力が発生する。したがって、弾性支持体としての上折曲フィン30及び下折曲フィン40と薄肉支持部32,42とにおいて、薄肉支持部32,42を介して上折曲フィン30及び下折曲フィン40を折曲すると、それぞれ、元の形状に戻ろうとする弾性復元力が作用する。
【0040】
発生した弾性復元力により、上折曲フィン30及び下折曲フィン40が挿入穴10の中で伸張拡大しようとする。
【0041】
上折曲フィン30及び下折曲フィン40の伸張拡大の過程で、上折曲フィン30の第二当接面34及び下折曲フィン40の第二当接面44が、それぞれ、パレット2の挿入穴10の第二内壁面14に対して弾性的に当接する、すなわち圧接する。このとき、基体22の第一当接面23も、パレット2の挿入穴10の第一内壁面12に対して弾性的に当接する、すなわち圧接する。第一内壁面12と第一内壁面12に対向する第二内壁面14との間で上折曲フィン30及び下折曲フィン40が弾性的に突っ張っているので、ICタグ20は、パレット2の挿入穴10の内壁面12,14に対して弾性的に係止される。
【0042】
上折曲フィン30及び下折曲フィン40を折り曲げてパレット2の挿入穴10に挿入する際に、あるいは、上折曲フィン30及び下折曲フィン40を折り曲げてパレット2の挿入穴10に挿入することとは別に、ICタグ20の長手直交方向を僅かに湾曲させることにより、左弾性支持体24及び右弾性支持体26は、圧縮縮小状態になる。湾曲状態のICタグ20をパレット2の挿入穴10に挿入することができるくらいに、左弾性支持体24及び右弾性支持体26を湾曲するための圧縮縮小力が印加される。このような湾曲状態を保持しながらICタグ20がタグの長手方向に沿ってパレット2の挿入穴10に挿入される。
【0043】
パレット2の挿入穴10に湾曲状態で挿入されたICタグ20を解放すると、湾曲状態のICタグ20が元のフラットな形状に戻ろうとして、弾性復元力が発生する。
【0044】
発生した弾性復元力により、左弾性支持体24及び右弾性支持体26が挿入穴10の中で伸張拡大しようとする。
【0045】
左弾性支持体24及び右弾性支持体26の伸張拡大の過程で、左弾性支持体24の第二当接面25及び右弾性支持体26の第二当接面27が、それぞれ、パレット2の挿入穴10の第三内壁面16及び第四内壁面18に対して弾性的に当接する、すなわち圧接する。第三内壁面16と第三内壁面16に対向する第四内壁面18との間で左弾性支持体24及び右弾性支持体26が弾性的に突っ張っているので、ICタグ20は、パレット2の挿入穴10の内壁面16,18に対して弾性的に係止される。
【0046】
なお、上記第一実施形態の変形例として、上折曲フィン30と基体22との間及び下折曲フィン40と基体22との間をつなぐように圧縮バネをそれぞれ介在配置する構成とすることもできる。このような構成によれば、上折曲フィン30及び下折曲フィン40を折り畳んだときに、折り畳まれた上折曲フィン30及び下折曲フィン40を押し拡げるようなバネ弾性力が発生する。このようなバネ弾性力も、湾曲状態のICタグ20が元のフラットな形状に戻ろうとする上述した弾性復元力と同じ働きをする。
【0047】
次に、本発明の第二実施形態に係るパレット用ICタグ20について、図5を参照しながら詳細に説明する。上述した第一実施形態のパレット用ICタグ20との相違点を中心に説明する。
【0048】
図5に示すように、第二実施形態に係るパレット用ICタグ20は、第一実施形態のパレット用ICタグ20と比較して、左右の側面部に設けられた弾性支持体50,60の構成が相違している。
【0049】
基体22の左側面部分及び右側面部分においては、左弾性支持部としての左支持アーム体50及び右弾性支持部としての右支持アーム体60がそれぞれ設けられている。左支持アーム体50及び右支持アーム体60は、ICタグインレット21が配設される配設部分の周辺部分よりもさらに外側に位置して外側に突出するように湾曲しているとともに、略T字状に切欠かれた切欠部52,62により応力の印加で内側に弾性的に湾曲することができる。
【0050】
弾性支持体としての左支持アーム体50及び右支持アーム体60を内側に向けて湾曲すると、それぞれ、元の形状に戻ろうとする弾性復元力が作用する。
【0051】
左支持アーム体50の左端面である第二当接面(第二支持部)25及び右弾性支持体26の右端面である第二当接面(第二支持部)27は、それぞれ、パレット2の挿入穴10に挿入したときに挿入穴10の内壁面と接触する部分である。支持アーム体50,60の各端面25,27を支持アーム体50,60の表面に対して直角面とすることもできるが、ICタグ20を挿入穴10の中に装着したときには、直角面の縁が線状に接触することになり、弾性係止力が不足することもありうる。そこで、支持アーム体50,60の各端面25,27を支持アーム体50,60の表面に対して傾斜した面とすることが好適である。その結果、ICタグ20を挿入穴10の中に装着したときには、傾斜した第二当接面(第二支持部)25,27が面状に接触することになり、弾性係止力が向上する。
【0052】
次に、本発明の第三実施形態に係るパレット用ICタグ20について、図6を参照しながら詳細に説明する。上述した第一実施形態及び第二実施形態のパレット用ICタグ20との相違点を中心に説明する。
【0053】
図6に示すように、第三実施形態に係るパレット用ICタグ20は、第一実施形態及び第二実施形態のパレット用ICタグ20と比較して、下側には第一実施形態で示した折曲フィンが設けられているとともに、上側には第二実施形態で示した支持アーム体の下半分が設けられているという構成が相違している。
【0054】
基体22の下部分においては、第一実施形態で説明したのと同様に、薄肉支持部42を介して下折曲フィン40が接続されている。また、基体22の上部分においては、第二実施形態で説明したのと同様に、左弾性支持部としての左支持アーム体50及び右弾性支持部としての右支持アーム体60がそれぞれ一つずつ設けられている。
【0055】
弾性支持体としての左支持アーム体50及び右支持アーム体60を内側に向けて湾曲する(弾性支持体の全体形状が縮小するように変形させる)と、それぞれ、元の形状に戻ろうとする弾性復元力が作用する。
【0056】
次に、本発明の第四実施形態に係るパレット用ICタグ20について、図7を参照しながら詳細に説明する。上述した第一実施形態のパレット用ICタグ20との相違点を中心に説明する。
【0057】
図7に示すように、第四実施形態に係るパレット用ICタグ20は、第一実施形態のパレット用ICタグ20と比較して、基体22の左側面部分及び右側面部分において、第一実施形態で示したのと同様の折曲フィンがそれぞれ設けられているという構成が相違している。
【0058】
基体22の上下部分においては、第一実施形態で説明したのと同様に、薄肉支持部42を介して上折曲フィン30及び下折曲フィン40がそれぞれ接続されていることに加えて、基体22の左側面部分及び右側面部分においても、第一実施形態で示したのと同様に、薄肉支持部58,68を介して左折曲フィン56及び右折曲フィン66がそれぞれ接続されている。
【0059】
弾性支持体としての左折曲フィン56及び右折曲フィン66と薄肉支持部58,68とにおいて、薄肉支持部58,68を介して左折曲フィン56及び右折曲フィン66を折曲する(弾性支持体の全体形状が縮小するように変形させる)と、それぞれ、元の形状に戻ろうとする弾性復元力が作用する。
【0060】
基体22の左側面部分及び右側面部分において、薄肉支持部58,68を介して左折曲フィン56及び右折曲フィン66がそれぞれ接続された構成に代えて、クルクルと巻き上げることのできる程度の長さと肉厚とを有する巻き上げ部とすることができる。大略フラットな形状をした巻き上げ部をクルクルと巻き上げた縮小変形状態にしてパレット2の挿入穴10に挿入すると、巻き上げ部が元の大略フラットな形状に戻ろうとする弾性復元力が作用するが、巻き上げ部は、挿入穴10の内壁面に規制されながら挿入穴10の内壁面に沿って伸張拡大しようとする。巻き上げ部がクルクルと巻き上げた縮小変形状態から伸張拡大状態に変化する過程で、巻き上げ部の上面又は下面は挿入穴10の内壁面に対してより大きな接触面積で当接することができるので、弾性係止力のさらなる向上を図ることができる。
【0061】
次に、本発明の第五実施形態に係るパレット用ICタグ20について、図8を参照しながら詳細に説明する。上述した第一実施形態のパレット用ICタグ20との相違点を中心に説明する。
【0062】
図8に示すように、第五実施形態に係るパレット用ICタグ20は、第一実施形態のパレット用ICタグ20と比較して、基体22の上下部分において、上湾曲体80及び下湾曲体82がそれぞれ設けられているという構成が相違している。
【0063】
基体22の上側に延在する大略U字形状をした弾性支持体としての上湾曲体80と基体22の下側に延在する大略U字形状をした弾性支持体としての下湾曲体82とを湾曲する(弾性支持体の全体形状が縮小するように変形させる)と、それぞれ、元のU字形状に戻ろうとする弾性復元力が作用する。
【0064】
上湾曲体80の外側面である第二当接面(第二支持部)34及び下湾曲体82の外側面である第二当接面(第二支持部)44は、それぞれ、パレット2の挿入穴10に挿入したときに挿入穴10の内壁面と接触する部分である。
【0065】
上湾曲体80の第二当接面(第二支持部)34及び下湾曲体82の第二当接面(第二支持部)44と基体22の第一当接面(第一支持部)23との間の高さ寸法は、挿入対象の挿入穴10の幅寸法(ある内壁面とそれに対向する内壁面との間の寸法)よりも長寸に構成されている。
【0066】
パレット2の挿入穴10に装着する前のICタグ20は、挿入に先だって、上湾曲体80及び下湾曲体82は、湾曲されて、圧縮縮小状態になる。湾曲縮小状態のICタグ20をパレット2の挿入穴10に挿入することができるくらいに、上湾曲体80及び下湾曲体82を湾曲するための圧縮縮小力が印加される。このような湾曲縮小状態を保持しながらICタグ20がタグの長手方向に沿ってパレット2の挿入穴10に挿入される。
【0067】
パレット2の挿入穴10に湾曲縮小状態で挿入されたICタグ20を解放すると、湾曲縮小状態のICタグ20が元の湾曲伸張形状に戻ろうとして、弾性復元力が発生する。
【0068】
発生した弾性復元力により、上湾曲体80及び下湾曲体82が挿入穴10の中で伸張拡大しようとする。
【0069】
上湾曲体80及び下湾曲体82の伸張拡大の過程で、上湾曲体80の第二当接面34及び下湾曲体82の第二当接面44が、それぞれ、パレット2の挿入穴10の第二内壁面14に対して弾性的に当接する、すなわち圧接する。このとき、基体22の第一当接面23も、パレット2の挿入穴10の第一内壁面12に対して弾性的に当接する、すなわち圧接する。第一内壁面12と第一内壁面12に対向する第二内壁面14との間で上折曲フィン30及び下折曲フィン40が弾性的に突っ張っているので、ICタグ20は、パレット2の挿入穴10の内壁面12,14に対して弾性的に係止される。
【0070】
次に、本発明の第六実施形態に係るパレット用ICタグ20について、図9及び10を参照しながら詳細に説明する。上述した第一実施形態のパレット用ICタグ20との相違点を中心に説明する。
【0071】
図9及び10に示すように、第六実施形態に係るパレット用ICタグ20は、第一実施形態のパレット用ICタグ20と比較して、基体22から傘骨状の骨格体72が立体的に放射状に延在していて予め立体構造を有しているという点が相違している。
【0072】
基体22の縁部から放射状に、8本の傘骨状の立体的形状を有する骨格体72が延在している。弾性支持体としての傘骨状の骨格体72を湾曲する(弾性支持体の全体形状が縮小するように変形させる)と、それぞれ、元の形状に戻ろうとする弾性復元力が作用する。
【0073】
傘骨状の骨格体72の外側面である第二当接面(第二支持部)74は、それぞれ、パレット2の挿入穴10に挿入したときに挿入穴10の内壁面と接触する部分である。
【0074】
傘骨状の骨格体72の第二当接面(第二支持部)74と基体22の第一当接面(第一支持部)23との間の高さ寸法は、挿入対象の挿入穴10の幅寸法(ある内壁面とそれに対向する内壁面との間の寸法)よりも長寸に構成されている。
【0075】
パレット2の挿入穴10に装着する前のICタグ20は、挿入に先だって、各傘骨状の骨格体72は湾曲されて圧縮縮小状態になる。湾曲縮小状態のICタグ20をパレット2の挿入穴10に挿入することができるくらいに、傘骨状の骨格体72を湾曲するための圧縮縮小力が印加される。このような湾曲縮小状態を保持しながらICタグ20がタグの長手方向に沿ってパレット2の挿入穴10に挿入される。
【0076】
パレット2の挿入穴10に湾曲縮小状態で挿入されたICタグ20を解放すると、湾曲縮小状態のICタグ20が元の形状に戻ろうとして、弾性復元力が発生する。
【0077】
発生した弾性復元力により、傘骨状の骨格体72が挿入穴10の中で伸張拡大しようとする。
【0078】
傘骨状の骨格体72の伸張拡大の過程で、傘骨状の骨格体72の各第二当接面74が、それぞれ、パレット2の挿入穴10の第二内壁面14に対して弾性的に当接する、すなわち圧接する。このとき、基体22の第一当接面23も、パレット2の挿入穴10の第一内壁面12に対して弾性的に当接する、すなわち圧接する。第一内壁面12と第一内壁面12に対向する第二内壁面14との間で傘骨状の骨格体72が弾性的に突っ張っているので、ICタグ20は、パレット2の挿入穴10の内壁面12,14に対して弾性的に係止される。
【0079】
なお、図9及び10に示した実施形態では、全ての傘骨状の骨格体72が一方向(図10においては左向き)に延在しているが、傘骨状の骨格体72の延在方向を互い違いにするように構成することもできる。
【0080】
なお、上記いずれの実施形態においても、基体22及び弾性支持体は樹脂材料からなるが、各弾性支持体は、折曲又は湾曲したときに、適切な弾性支持力を作用することができるように寸法構成されていて、基体22は好ましくは湾曲変形しないように肉厚に寸法構成されている。
【0081】
なお、上記いずれの実施形態においても、第二支持部は、挿入穴10の内壁面に対して縁部が当接する線接触の構成であってもよいが、ICタグ20のより確実な係止を得るために、第二支持部が対向する内壁面と並行になるように斜面の第二当接面に加工されていて、挿入穴10の中に挿入されると挿入穴10の内壁面に対して第二当接面が面接触することが好適である。
【0082】
また、上記いずれの実施形態においても、各内壁面12,14,16,18と当接する面、すなわち、基体22の第一当接面23及び弾性支持体30,40,24,26,50,60,56,66,80,82,72の各第二当接面34,44,25,27,74に対して、摩擦力を向上させる摩擦力向上体が形成されている。摩擦力向上体として、当接面を粗面にしたり微小溝を形成したりすること、当接面を摩擦係数の大きいエラストマーで被覆すること等が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の第一実施形態に係るパレット用ICタグの正面図である。
【図2】ICタグをパレットの穴に装着した状態を示す断面図である。
【図3】図2に示した装着状態を他の方向から見た断面図である。
【図4】図2に示した装着状態を上面から見た図である。
【図5】本発明の第二実施形態に係るパレット用ICタグの正面図である。
【図6】本発明の第三実施形態に係るパレット用ICタグの正面図である。
【図7】本発明の第四実施形態に係るパレット用ICタグの正面図である。
【図8】本発明の第五実施形態に係るパレット用ICタグの断面図である。
【図9】本発明の第六実施形態に係るパレット用ICタグの正面図である。
【図10】図9に示したパレット用ICタグの断面図である。
【符号の説明】
【0084】
2:パレット
4:上デッキ面
6:下デッキ面
8:支柱部
10:挿入穴
12:第一内壁面
14:第二内壁面
16:第三内壁面
18:第四内壁面
20:パレット用ICタグ
21:ICタグインレット
22:基体
23:第一当接面(第一支持部)
24:左弾性支持体
25:第二当接面(第二支持部)
26:右弾性支持体
27:第二当接面(第二支持部)
30:上折曲フィン(上弾性支持体)
32:薄肉支持部
34:第二当接面(第二支持部)
40:下折曲フィン(下弾性支持体)
42:薄肉支持部
44:第二当接面(第二支持部)
50:左支持アーム(左弾性支持体)
52:切欠部
56:左折曲フィン(左弾性支持体)
58:薄肉支持部
60:右支持アーム(右弾性支持体)
62:切欠部
66:右折曲フィン(右弾性支持体)
68:薄肉支持部
72:傘骨状の骨格体(弾性支持体)
74:第二当接面(第二支持部)
80:上湾曲体(上弾性支持体)
82:下湾曲体(下弾性支持体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パレットに設けられた挿入穴の中に装着されて樹脂材料からなるパレット用ICタグであって、
ICタグインレットが配設される基体であって、挿入穴の内壁面に対向する側に第一支持部を有する基体と、
基体の外側に延在して変形により弾性支持力を発生させる弾性支持体であって、挿入穴の内壁面に対向する側に第二支持部を有する弾性支持体と、を備えて、
挿入穴の中に挿入されると、基体の第一支持部と弾性支持体の第二支持部とが前記弾性支持力で挿入穴の内壁面に対して圧接されることにより、挿入穴の内壁面に対して弾性的に係止されることを特徴とするパレット用ICタグ。
【請求項2】
前記弾性支持体が薄肉支持部を介して基体に接続されていて、薄肉支持部を基点にして弾性支持体を折曲させることにより前記弾性支持力を発生させることを特徴とする、請求項1記載のパレット用ICタグ。
【請求項3】
前記弾性支持体が、側面に沿ってアーム状に延在するとともに周囲の側面よりも外側に突出するように構成されていて、アーム状の弾性支持体を内側に湾曲させることにより前記弾性支持力を発生させることを特徴とする、請求項1記載のパレット用ICタグ。
【請求項4】
前記弾性支持体がU字形状をしていて、弾性支持体を湾曲させることにより前記弾性支持力を発生させることを特徴とする、請求項1記載のパレット用ICタグ。
【請求項5】
前記弾性支持体が基体から立体的に放射状に延在して、弾性支持体を湾曲させることにより前記弾性支持力を発生させることを特徴とする、請求項1記載のパレット用ICタグ。
【請求項6】
前記弾性支持体が少なくとも一つ設けられていることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれかに記載のパレット用ICタグ。
【請求項7】
前記挿入穴の断面形状が方形形状である場合には、前記弾性支持体が四つ設けられていることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれかに記載のパレット用ICタグ。
【請求項8】
前記第二支持部が対向する内壁面と並行になるように加工されていて、挿入穴の中に挿入されると挿入穴の内壁面に対して面接触することを特徴とする、請求項1乃至7のいずれかに記載のパレット用ICタグ。
【請求項9】
挿入穴の中に挿入されたときに挿入穴の内壁面に接触する部分には、摩擦力を向上させる摩擦力向上体が形成されていることを特徴とする、請求項1記載のパレット用ICタグ。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載されたパレット用ICタグを、パレットに設けられた挿入穴の中に装着固定する方法であって、
前記弾性支持体を圧縮縮小状態で保持しながらパレットの挿入穴の中に挿入するステップと、
圧縮縮小状態で保持された弾性支持体を解放して弾性支持力を発生させるステップと、
弾性支持体が弾性支持力により伸張拡大するステップと、
基体の第一支持部と弾性支持体の第二支持部とが弾性支持力で挿入穴の内壁面に対して圧接されることにより、挿入穴の内壁面に対して弾性的に係止されるステップと、
を備えることを特徴とする、パレットに対するICタグの取付方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−107651(P2009−107651A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−280451(P2007−280451)
【出願日】平成19年10月29日(2007.10.29)
【出願人】(503120999)株式会社テクノリンクス (8)
【Fターム(参考)】