説明

パワーコンディショナ

【課題】安全性に優れ、簡単に構成できてコストダウンが図れるパワーコンディショナを提供する。
【解決手段】発電設備21からの発電に基づく直流出力を交流変換するインバータ12と、インバータ12を系統22に接続する系統連系スイッチ13と、インバータ12の交流変換動作および系統連系スイッチ13の開閉動作を制御する制御部15と、を備え、制御部15は、インバータ12および系統連系スイッチ13の制御状態、系統連系スイッチ13の系統22側に生じる第1の電圧、系統連系スイッチ13のインバータ12側に生じる第2の電圧、および、系統22の系統電圧に関連する閾値に基づいて、系統連系スイッチ13の故障を診断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電設備と商用電源系統(系統)とを連系させるパワーコンディショナに関するものである。
【背景技術】
【0002】
太陽光パネル等の発電設備を備えた発電システムは、発電設備からの直流を交流に変換し、系統と連系して家屋内の負荷に電力を供給したり、余剰電力を系統へ逆潮流させたりするパワーコンディショナを備えている。このようなパワーコンディショナは、発電設備からの直流を交流に変換するインバータと、インバータを系統に接続するための系統連系スイッチとを備えている。
【0003】
系統連系スイッチは、停電などによって系統電圧に異常が発生した場合、パワーコンディショナ自身に故障が発生した場合、ユーザ操作によって運転動作が停止された場合などにオフとなる。これにより、インバータを系統から解列して、発電システムおよび系統の安全性を確保するようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかし、系統連系スイッチは、接点間のアーク放電により溶着して、開路できなくなることが想定される。そこで、従来のパワーコンディショナとして、系統連系スイッチの故障による安全性の低下を回避するため、資源エネルギー庁のガイドラインに従って、インバータと系統との間に2個の系統連系スイッチを直列に接続することで、信頼性を向上させるようにしたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−027764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、2個の系統連系スイッチを設ける場合、1個の系統連系スイッチを設ける場合と比較して、構成が複雑になるとともに、コストアップを招くことになる。また、2個の系統連系スイッチを用いても、それらが同時に溶着する可能性は皆無でないことから、2個の系統連系スイッチが溶着した状態でパワーコンディショナの運転が開始される場合が生じることが懸念される。
【0007】
したがって、かかる点に鑑みてなされた本発明の目的は、安全性に優れ、しかも簡単に構成できてコストダウンが図れるパワーコンディショナを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する第1の観点に係るパワーコンディショナの発明は、
発電設備からの発電に基づく直流出力を交流変換するインバータと、
該インバータを商用電源系統に接続する系統連系スイッチと、
前記インバータの交流変換動作および前記系統連系スイッチの開閉動作を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記インバータおよび前記系統連系スイッチの制御状態、前記系統連系スイッチの前記商用電源系統側に生じる第1の電圧、前記系統連系スイッチの前記インバータ側に生じる第2の電圧、および、前記商用電源系統の系統電圧に関連する閾値に基づいて、前記系統連系スイッチの故障を診断する、
ことを特徴とするものである。
【0009】
第2の観点に係る発明は、第1の観点に係るパワーコンディショナにおいて、
前記制御部は、前記系統連系スイッチの開成制御状態で、かつ、前記インバータの交流変換動作の停止状態において、前記第1の電圧の電圧値が前記第1の閾値を超え、かつ、前記第2の電圧の電圧値が前記系統電圧公称値よりも低い第2の閾値を超える場合に、前記系統連系スイッチを故障と判定する、
ことを特徴とするものである。
【0010】
第3の観点に係る発明は、第2の観点に係るパワーコンディショナにおいて、
前記第1の閾値は、前記第2の閾値よりも小さく設定されている、ことを特徴とするものである。
【0011】
第4の観点に係る発明は、第1の観点に係るパワーコンディショナにおいて、
前記制御部は、前記系統連系スイッチの閉成制御状態で、かつ、前記インバータの交流変換動作の停止状態において、前記第1の電圧の電圧値が前記第1の閾値を超え、かつ、前記第2の電圧の電圧値が前記系統電圧公称値よりも低い第3の閾値を超えない場合に、前記系統連系スイッチを故障と判定する、
ことを特徴とするものである。
【0012】
第5の観点に係る発明は、第4の観点に係るパワーコンディショナにおいて、
前記第1の閾値は、前記第3の閾値よりも小さく設定されている、ことを特徴とするものである。
【0013】
第6の観点に係る発明は、第1の観点に係るパワーコンディショナにおいて、
前記インバータと前記系統連系スイッチとの間に接続された出力フィルタ回路を、さらに備え、
前記制御部は、前記系統連系スイッチの閉成制御状態で、かつ、前記インバータの交流変換の停止状態において、前記第1の電圧の電圧値が前記第1の閾値を超え、かつ、前記第1の電圧と前記第2の電圧との位相差が第4の閾値を超える場合に、前記系統連系スイッチを故障と判定する、
ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、安全性に優れ、しかも簡単に構成できてコストダウンが図れるパワーコンディショナを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施の形態に係るパワーコンディショナの要部の構成を示すブロック図である。
【図2】図1のパワーコンディショナによる故障診断動作を示すフローチャートである。
【図3】本発明の第2実施の形態に係るパワーコンディショナによる故障診断動作を示すフローチャートである。
【図4】本発明の第3実施の形態に係るパワーコンディショナの要部の構成を示すブロック図である。
【図5】図4の出力フィルタ回路の一例の構成を示す図である。
【図6】図4のパワーコンディショナによる故障診断動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して説明する。
【0017】
(第1実施の形態)
図1は、本発明の第1実施の形態に係るパワーコンディショナの要部の構成を示すブロック図である。このパワーコンディショナ10は、DC/DCコンバータ11、インバータ12、系統連系スイッチ13、系統接続端子部14、および制御部15を備える。
【0018】
DC/DCコンバータ11は、太陽光パネル、風力発電機、燃料電池や自家発電機等の発電設備21からの直流(DC)を入力し、その入力電圧を所要の直流電圧に変換する。このDC/DCコンバータ11の出力は、インバータ12に入力される。
【0019】
インバータ12は、DC/DCコンバータ11からの直流入力を交流変換して出力する。インバータ12からの交流変換出力は、系統連系スイッチ13に供給される。系統連系スイッチ13は、リレースイッチで構成され、インバータ12からの交流変換出力を系統接続端子部14に供給する。系統接続端子部14には、商用電源系統(系統)22が接続される。
【0020】
制御部15は、DC/DCコンバータ11に入力される発電設備21の出力電圧および電流を検出して監視するとともに、系統連系スイッチ13の系統22側に生じる電圧(第1の電圧)を検出して監視し、それらの監視結果に基づいてDC/DCコンバータ11の動作、インバータ12の交流変換動作、系統連系スイッチ13の開閉動作を制御する。
【0021】
例えば、発電設備21が太陽光パネルで、DC/DCコンバータ11がMPPT(Maximum Power Point Tracking:最大電力点追従)機能を有する場合、制御部15は、発電設備21から最大電力が得られるようにDC/DCコンバータ11を制御する。これにより、発電設備21の発電電力によって、系統22に接続された交流負荷(図示せず)が稼動され、余剰の電力が系統22へ逆潮流される。なお、発電設備21の発電量が所要の発電量に満たない場合、交流負荷は、系統22の商用電源によって稼動される。また、系統22の停電時、発電設備21が発電していない時、パワーコンディショナ10の故障発生時等において、制御部15は、系統連系スイッチ13を開成(開路)するように制御するとともに、インバータ12の交流変換動作を停止するように制御する。
【0022】
本実施の形態においては、さらに、制御部15において、系統連系スイッチ13のインバータ12側に生じる第2の電圧を検出して監視する。そして、制御部15により、系統連系スイッチ13の開成制御状態で、かつ、インバータ12の交流変換動作の停止状態において、上記第1の電圧、第2の電圧、系統22の系統電圧公称値よりも低い第1の閾値Vref1および第2の閾値Vref2に基づいて、系統連系スイッチ13の故障を診断する。
【0023】
以下、本実施の形態による系統連系スイッチ13の故障診断動作について、図2に示すフローチャートを参照して説明する。
【0024】
先ず、系統連系スイッチ13が開成制御状態にあり、かつ、インバータ12が交流変換動作の停止状態にある場合において、第1の電圧の絶対値を系統電源の1周期分積算して第1の電圧の実効値V1eを取得する(ステップS201)。同様に、第2の電圧の絶対値を系統電源の1周期分積算して第2の電圧の実効値V2eを取得する(ステップS202)。そして、取得した第1の電圧の実効値V1eが、第1の閾値Vref1に対して、V1e≧Vref1にあるか否かを判定する(ステップS203)。
【0025】
その結果、V1e<Vref1の場合(NOの場合)は、系統22側が停電している、またはパワーコンディショナ10と系統22との接続が正常にされていない、といった理由で故障が発生していると判定する(ステップS204)。
【0026】
これに対し、ステップS203において、V1e≧Vref1の場合(YESの場合)は、さらに、取得した第2の電圧の実効値V2eが、第2の閾値Vref2に対して、V2e<Vref2にあるか否かを判定する(ステップS205)。ここで、系統連系スイッチ13が正常に動作している場合、インバータ12は、系統22から解列されているはずであるから、第2の電圧の実効値V2eは十分に低い値となるはずである。
【0027】
その結果、V2e<Vref2の場合(YESの場合)、制御部15は、系統連系スイッチ13が正常に開成されており、系統連系スイッチ13および系統22に故障がない(正常)と判定する(ステップS206)。これに対し、V2e≧Vref2の場合(NOの場合)、制御部15は、系統連系スイッチ13が正常に開成されておらず、系統連系スイッチ13に溶着やスイッチ機構の故障が発生していると判定する(ステップS207)。
【0028】
ここで、第2の閾値Vref2は、仮に系統連系スイッチ13が腐食や汚れによって抵抗の高い状態で閉成(閉路)されている場合や、スイッチ機構の故障により不完全な接触により閉成されている場合等に生じる電圧降下等を考慮して決定する。本実施の形態では、第1の閾値Vref1を0に近い値に設定し、第2の閾値Vref2を第1の閾値Vref1よりも充分大きな値に設定する。これにより、系統連系スイッチ13の故障(動作不良)および系統22の停電を確実に識別して判定することが可能となる。
【0029】
なお、ステップS206およびステップS207の判定結果は、例えば、表示ランプを設けて識別して表示したり、ステップS207の故障の判定結果のみをフザー等により報知したりすることができる。また、第1の閾値Vref1および第2の閾値Vref2は、制御部15の内蔵メモリ、あるいは、パワーコンディショナ10内の図示しないメモリに記憶する。
【0030】
本実施の形態によると、系統連系スイッチ13の系統22側の第1の電圧値に対して、系統22の系統電圧公称値に関連する第1の閾値を設定するとともに、系統連系スイッチ13のインバータ12側の第2の電圧値に対して、系統連系スイッチ13の故障要因である電圧降下等を考慮した系統22の系統電圧公称値に関連する第2の閾値を設定している。そして、系統連系スイッチ13の開成制御状態で、かつ、インバータ12の交流変換動作の停止状態において、第1の電圧値と第1の閾値との比較結果および第2の電圧値と第2の閾値との比較結果に基づいて系統連系スイッチ13の故障を診断している。したがって、系統連系スイッチ13が一つでも、接点溶着等の故障を確実に判定することができるので、安全性に優れ、しかも簡単に構成できてコストダウンが図れるパワーコンディショナを実現することができる。
【0031】
(第2実施の形態)
本発明の第2実施の形態においては、図1に示した構成において、制御部15により、系統連系スイッチ13の閉成制御状態で、かつ、インバータ12の交流変換動作の停止状態において、上記第1の電圧、第2の電圧、系統22の系統電圧公称値よりも低い第1の閾値Vref1および第3の閾値Vref3に基づいて、系統連系スイッチ13の故障を診断する。
【0032】
以下、本実施の形態による系統連系スイッチ13の故障診断動作について、図3に示すフローチャートを参照して説明する。
【0033】
先ず、系統連系スイッチ13が閉成制御状態にあり、かつ、インバータ12が交流変換動作の停止状態にある場合において、第1実施の形態の場合と同様に、第1の電圧の実効値V1eを取得する(ステップS301)とともに、第2の電圧の実効値V2eを取得する(ステップS302)。そして、取得した第1の電圧の実効値V1eが、第1の閾値Vref1に対して、V1e≧Vref1にあるか否かを判定する(ステップS303)。
【0034】
その結果、V1e<Vref1の場合(NOの場合)は、上記実施の形態の場合と同様に、系統22側が停電している、またはパワーコンディショナ10と系統22との接続が正常にされていない、といった理由で故障が発生していると判定する(ステップS304)。
【0035】
これに対し、ステップS303において、V1e≧Vref1の場合(YESの場合)は、さらに、取得した第2の電圧の実効値V2eが、第3の閾値Vref3に対して、V2e≧Vref3にあるか否かを判定する(ステップS305)。ここで、系統連系スイッチ13が正常に動作している場合、第2の電圧の実効値V2eは、ほぼV1eに等しい十分高い値となるはずである。
【0036】
その結果、V2e≧Vref3の場合(YESの場合)、制御部15は、系統連系スイッチ13が正常に閉成されており、系統連系スイッチ13および系統22に故障がない(正常)と判定する(ステップS306)。これに対し、V2e<Vref3の場合(NOの場合)、制御部15は、系統連系スイッチ13が正常に閉成されておらず、系統連系スイッチ13に接点不良等の故障が発生していると判定する(ステップS307)。
【0037】
ここで、第3の閾値Vref3は、第1実施の形態における第2の閾値Vref2と同様に、系統連系スイッチ13による接触不良等の故障時の電圧降下等を考慮して設定して、第1の閾値Vref1と同様にメモリに記憶する。その他の構成および動作は、第1実施の形態と同様である。
【0038】
本実施の形態によると、系統連系スイッチ13の閉成制御状態で、かつ、インバータ12の交流変換動作の停止状態において、第1の電圧値と第1の閾値との比較結果および第2の電圧値と第3の閾値との比較結果に基づいて系統連系スイッチ13の故障を診断している。したがって、系統連系スイッチ13が一つでも、接触不良等の故障を確実に判定することができるので、第1実施の形態の場合と同様に、安全性に優れ、しかも簡単に構成できてコストダウンが図れるパワーコンディショナを実現することができる。
【0039】
(第3実施の形態)
図4は、本発明の第3実施の形態に係るパワーコンディショナの要部の構成を示すブロック図である。このパワーコンディショナ10は、図1に示した構成において、インバータ12と系統連系スイッチ13との間に出力フィルタ回路16を接続したものである。
【0040】
出力フィルタ回路16は、例えば図5(a)に示すように、コモンモードチョーク17と、その入出力側に接続した高周波ノイズ除去用のコンデンサ18a,18bとにより構成される。より大容量の電流を流す場合は、コンデンサが複数個並列に接続されたり、コモンモードチョークが複数個直列に接続されたりする場合もある。
【0041】
図5(a)において、コモンモードチョーク17は、ノーマルモード電流に対してはほとんど影響を与えない。したがって、インバータ12の交流変換動作が停止されている状態で、系統連系スイッチ13が閉成した場合の等化回路は、図5(b)に示すように、コンデンサ18a,18bの容量成分Cと系統連系スイッチ13の接点抵抗成分RとのRC回路とみなすことができる。
【0042】
図5(b)において、系統22側の入力電圧をVin、インバータ12側の容量成分Cの端子電圧をVcとすると、Vinに対するVcの位相差φcは、φc =tan(−ωRC)で表せる。したがって、系統周波数と出力フィルタ回路16の容量成分Cとがわかれば、系統連系スイッチ13の接点抵抗成分Rを推定することができる。ここで、接点抵抗成分Rは、例えば10Aの電流が流れる場合、R=1Ωであっても、系統連系スイッチ13で100Wの電力が消費されることになり、発熱して危険となる。
【0043】
そこで、本実施の形態においては、系統22の系統電圧に関連する第4の閾値として、系統連系スイッチ13の系統22側に生じる第1の電圧(図5(b)のVinに相当)と、インバータ12と出力フィルタ回路16との間に生じる第2の電圧(図5(b)のVcに相当)との許容位相差φ4を設定する。この第4の閾値φ4は、パワーコンディショナ10が許容する電流量を考慮して、系統連系スイッチ13が過熱するおそれのない接点抵抗成分に相当する位相差に設定して、第1の閾値Vref1と同様にメモリに記憶する。
【0044】
そして、制御部15により、系統連系スイッチ13の閉成制御状態で、かつ、インバータ12の交流変換動作の停止状態において、上記第1の電圧、第2の電圧、系統22の系統電圧公称値よりも低い第1の閾値Vref1、および第1の電圧と第2の電圧との位相差φcに対する第4の閾値φ4に基づいて、系統連系スイッチ13の故障を診断する。
【0045】
以下、本実施の形態による系統連系スイッチ13の故障診断動作について、図6に示すフローチャートを参照して説明する。
【0046】
先ず、系統連系スイッチ13が閉成制御状態にあり、かつ、インバータ12が交流変換動作の停止状態にある場合において、第1実施の形態の場合と同様に、第1の電圧の実効値V1eを取得する(ステップS601)。また、第1の電圧と第2の電圧との位相差φcを取得する(ステップS602)。そして、取得した第1の電圧の実効値V1eが、第1の閾値Vref1に対して、V1e≧Vref1にあるか否かを判定する(ステップS603)。
【0047】
その結果、V1e<Vref1の場合(NOの場合)は、上記実施の形態の場合と同様に、系統22側が停電している、またはパワーコンディショナ10と系統22との接続が正常にされていない、といった理由で故障が発生していると判定する(ステップS604)。
【0048】
これに対し、ステップS603において、V1e≧Vref1の場合(YESの場合)は、さらに、取得した位相差φcが、第4の閾値φ4に対して、φc<φ4にあるか否かを判定する(ステップS605)。ここで、系統連系スイッチ13が正常に動作し、接点抵抗成分が小さい場合、位相差φcは第4の閾値φ4よりも小さくなる。
【0049】
その結果、φc<φ4の場合(YESの場合)、制御部15は、系統連系スイッチ13が正常に閉成されており、系統連系スイッチ13および系統22に故障がない(正常)と判定する(ステップS606)。これに対し、φc≧φ4の場合(NOの場合)、制御部15は、系統連系スイッチ13が正常に閉成されておらず、系統連系スイッチ13に接点不良等の故障が発生していると判定する(ステップS607)。
【0050】
このように、本実施の形態においては、第1の電圧および第2の電圧の位相差φcに対して、系統連系スイッチ13が過熱するおそれのない接点抵抗成分に相当する第4の閾値φ4を設定する。そして、系統連系スイッチ13の閉成制御状態で、かつ、インバータ12の交流変換動作の停止状態において、第1の電圧値と第1の閾値との比較結果および位相差φcと第4の閾値φ4との比較結果に基づいて系統連系スイッチ13の故障を診断している。したがって、第2実施の形態の場合と同様に、系統連系スイッチ13が一つでも、接触不良等の故障を確実に判定することができるので、安全性に優れ、しかも簡単に構成できてコストダウンが図れるパワーコンディショナを実現することができる。
【0051】
なお、本発明は、上記実施の形態にのみ限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、図1において、発電設備21から所要の直流電圧が出力される場合は、DC/DCコンバータ11を省略することができる。また、第1実施の形態および第2実施の形態においても、第3実施の形態と同様に、インバータ12と系統連系スイッチ13との間に出力フィルタ回路16を接続してもよい。この場合、第2の電圧は、第3実施の形態と同様に、インバータ12と出力フィルタ回路16との間で検出してもよいし、出力フィルタ回路16と系統連系スイッチ13との間で検出してもよい。なお、出力フィルタ回路16を設ける場合、インバータ12が交流変換動作を停止していても、出力フィルタ回路16に流れる無効電力によって電圧降下が生じるので、その電圧降下を考慮して、第2の閾値Vref2や第3の閾値Vref3を設定する。また、第3実施の形態において、位相差φcを取得するための第2の電圧は、出力フィルタ回路16と系統連系スイッチ13との間で検出してもよい。
【0052】
また、第1の電圧や第2の電圧は、系統電圧の1周期分を積算した実効値に限らず、一定期間の最大値を用いてもよい。また、出力フィルタ回路16を用いる場合、該出力フィルタ回路16に流れる無効電力を考慮して、第2の電圧は系統電圧(第1の電圧)の最大値が出た瞬間の値としてもよい。
【0053】
また、図2において、第2の電圧の実効値V2eを取得するステップS202は、第1の電圧の実効値V1eと第1の閾値Vref1とを比較するステップS203の後において、V1e≧Vref1の場合に実行するようにしてもよい。同様に、図3においても、第2の電圧の実効値V2eを取得するステップS302は、第1の電圧の実効値V1eと第1の閾値Vref1とを比較するステップS303の後において、V1e≧Vref1の場合に実行するようにしてもよい。同様に、図6においても、位相差φcを取得するステップS602は、第1の電圧の実効値V1eと第1の閾値Vref1とを比較するステップS603の後において、V1e≧Vref1の場合に実行するようにしてもよい。
【0054】
また、第1実施の形態と第2実施の形態または第3実施の形態とを組み合わせて、系統連系スイッチ13の開成制御状態および閉成制御状態の双方で、系統連系スイッチ13の故障を診断したり、第1無いし実施の形態を組み合わせて、系統連系スイッチ13の故障を総合的に診断したりすることも可能である。さらに、系統電圧に関連する第1の閾値Vref1、第2の閾値Vref2、第3の閾値Vref3は、検出される第1の電圧V1eの変動に応じて補正するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0055】
10 パワーコンディショナ
11 DC/DCコンバータ
12 インバータ
13 系統連系スイッチ
14 系統接続端子部
15 制御部
16 出力フィルタ回路
21 発電設備
22 商用電源系統(系統)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電設備からの発電に基づく直流出力を交流変換するインバータと、
該インバータを商用電源系統に接続する系統連系スイッチと、
前記インバータの交流変換動作および前記系統連系スイッチの開閉動作を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記インバータおよび前記系統連系スイッチの制御状態、前記系統連系スイッチの前記商用電源系統側に生じる第1の電圧、前記系統連系スイッチの前記インバータ側に生じる第2の電圧、および、前記商用電源系統の系統電圧に関連する閾値に基づいて、前記系統連系スイッチの故障を診断する、
ことを特徴とするパワーコンディショナ。
【請求項2】
前記制御部は、前記系統連系スイッチの開成制御状態で、かつ、前記インバータの交流変換動作の停止状態において、前記第1の電圧の電圧値が前記商用電源系統の系統電圧公称値よりも低い第1の閾値を超え、かつ、前記第2の電圧の電圧値が前記系統電圧公称値よりも低い第2の閾値を超える場合に、前記系統連系スイッチを故障と判定する、
ことを特徴とする請求項1に記載のパワーコンディショナ。
【請求項3】
前記第1の閾値は、前記第2の閾値よりも小さく設定されている、ことを特徴とする請求項2に記載のパワーコンディショナ。
【請求項4】
前記制御部は、前記系統連系スイッチの閉成制御状態で、かつ、前記インバータの交流変換動作の停止状態において、前記第1の電圧の電圧値が前記第1の閾値を超え、かつ、前記第2の電圧の電圧値が前記系統電圧公称値よりも低い第3の閾値を超えない場合に、前記系統連系スイッチを故障と判定する、
ことを特徴とする請求項1に記載のパワーコンディショナ。
【請求項5】
前記第1の閾値は、前記第3の閾値よりも小さく設定されている、ことを特徴とする請求項4に記載のパワーコンディショナ。
【請求項6】
前記インバータと前記系統連系スイッチとの間に接続された出力フィルタ回路を、さらに備え、
前記制御部は、前記系統連系スイッチの閉成制御状態で、かつ、前記インバータの交流変換の停止状態において、前記第1の電圧の電圧値が前記第1の閾値を超え、かつ、前記第1の電圧と前記第2の電圧との位相差が第4の閾値を超える場合に、前記系統連系スイッチを故障と判定する、
ことを特徴とする請求項1に記載のパワーコンディショナ。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2013−9550(P2013−9550A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−141496(P2011−141496)
【出願日】平成23年6月27日(2011.6.27)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】