説明

パンの製造方法

【課題】 パン生地に一定量のそば粉を配合し、更にアガリクス茸等を混入して健康に良い、おいしいパンを製造する方法を提供すること。
【解決手段】 強力粉190g、そば粉90g、アガリクス茸粉末10g及び小海老粉末10g、ドライイースト6g、砂糖40g及び食塩5gをボウル等に入れ全体が均一になるように混ぜ合わせ、鶏卵の卵白30g、豆乳175CCを加えて更に混ぜ合わせる。このように、混ぜ合わせた材料を粉っぽさがなくなりひとつにまとまるように、よく混ぜ合わせる。イーストが万遍なく働くように、また強力粉のグルテンがしっかりした網目状構造を形成するように、台にたたきつける。次に、このパン生地に、バターまたはマーガリン45gを加えて捏ねる。そして、一次発酵させ、ガスを抜いた後、生地を適宜の大きさとし、生地を休ませる。次に、休ませた生地を成形し、200℃に予め熱しておいたオーブンで10〜13分間焼く。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パンの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年においては、米の消費量は減少しているが、逆にパンの消費量は増加している。それに従い、多くの種類のパンが製造され、食感や味だけに留まらず栄養価をより高める工夫がされたパンも多く見られるようになってきた。そば粉には、血管の強化に役立つルチンや老化防止に役立つポリフェノール等が多く含まれていることが知られている。また、そば粉はたんぱく価の高い良質なたんぱく質を含有し、オレイン酸、リノール酸、リノレイン酸やビタミンB群、特にビタミンB1、B2その他ナイアシン、パンテトン酸、カルシウム、マグネシウム、鉄分等のミネラルやクロロフィル等を含んでいる。特に傷んだ細胞を修復する働きがあると言われているルチンが豊富に含まれていて、健康食品として見直されている。このため、特許文献1に開示されているように、小麦粉にそば粉を一定量配合してパンを製造する技術は知られている。
【特許文献1】特開平10−42778号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一方、アガリクス茸に多量に含有されている多糖類の一種であるβグルカンは白血球に含まれるNK細胞を活性化することにより、免疫力を高め、癌を抑制する効果であるとか、アレルギー症の改善に効果があるとして注目されている。
【0004】
そこで本発明は、パン生地に一定量のそば粉を配合し、更にアガリクス茸等を混入して健康に良い、おいしいパンを製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このため第1のパンの製造方法に係る発明は、30重量%以上〜90重量%以下の小麦粉と、8重量%以上〜70重量%以下のそば粉と、0.5重量%以上〜30重量%以下のアガリクス茸粉末とを含み、常法によりパンにすることを特徴とする。
【0006】
第2のパンの製造方法に係る発明は、第1の発明において、0.5重量%以上〜30重量%以下の小海老粉末を更に含むことを特徴とする。
【0007】
第3のパンの製造方法に係る発明は、第1の発明において、パン生地を製造する際に、豆乳又は牛乳を使用することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、パン生地に、ルチン等の成分を含み血圧を安定させる効果があるそば粉を一定量配合し、またNK細胞を活性化し免疫力を高める働きを持つβグルカン(高分子多糖体)を含み、抗癌作用等が期待されるアガリクス茸を混合してパンを作ることにより、そば粉とアガリクス茸の相乗効果で、健康作りに役立つパンを製造する方法を提供することができる。また、カルシウムを豊富に含み骨を丈夫にする効果が期待される小海老を丸ごと摂取できるような形でパンを作ることにより、より健康作りに役立つパンを製造する方法を提供することができる。更に、パン生地を製造する際に、豆乳などを使用することにより、強力なグルテンの網目状構造を形成する効果が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下本発明を実施するための最良の形態を説明する。先ず、原材料の比率について説明すると、強力粉は30重量%以上〜90重量%以下、そば粉は8重量%以上〜70重量%以下、アガリクス茸粉末は0.5重量%以上〜30重量%以下、小海老(オキアミ等)粉末0.5重量%以上〜30重量%以下、ドライイーストは0.5重量%以上〜20重量%以下、砂糖は1重量%以上〜30重量%以下、鶏卵の卵白は1重量%以上〜30重量%以下、豆乳は10重量%以上〜70重量%以下、食塩は0.5重量%以上〜10重量%以下、バター又はマーガリンは1重量%以上〜30重量%以下、その他艶出し用の鶏卵の溶き卵や打ち粉を適宜使用する。
【0010】
そば粉には、血管の強化に役立つルチンや老化防止に役立つポリフェノール等が多く含まれていることが知られている。その他にも、そば粉はたんぱく価の高い良質なたんぱく質を含有し、オレイン酸、リノール酸、リノレイン酸やビタミンB群、特にビタミンB1、B2その他ナイアシン、パンテトン酸、カルシウム、マグネシウム、鉄分等のミネラルやクロロフィル等を含んでいる。特に、ルチンは穀類の中ではそばにしか含まれないもので、傷んだ細胞を修復する作用があると言われていて、体内の血液をさらさらにし、血圧を安定させる働きがあるなど、そばは健康食品として注目されている。そば粉のたんぱく質はその半分が水溶性であるが、一度加水された水分を内部に保留する力に乏しく粘着性に欠けるため、パン生地を加工する際に生地がまとまりにくくなるという難点を有する。
【0011】
また、きのこは一般的にコレステロール値を下げる作用や、血流をスムーズにして血圧を適正に保つ効果や抗腫瘍効果があることが期待されており、本発明で使用するアガリクス茸はきのこの中でも特にその作用が大きいことで注目されており、アガリクス茸に多量に含有されている多糖類の一種であるβグルカン(高分子多糖体)は白血球に含まれるNK細胞を活性化することにより、免疫力を高め、癌を抑制する効果であるとか、アレルギー症の改善に効果があるとして注目されている。そして、きのこは有機物を分解して成長、繁殖する生物であるため、アガリクス茸をパン生地に練り込み生地の温度が上昇すると発酵し、パン生地をぼろぼろに分解してしまうのでパン生地の成形を困難にする弱点がある。
【0012】
また、オキアミ等の小海老は日本人に不足がちなカルシウムの摂取に有効であるため、本発明においても使用するが、甲殻が多いのでアガリクス茸と同様まとまりにくい材料であり、パン生地の成形を困難にする。
【0013】
そこで、先ず前記アガリクス茸、小海老という粘着性を有しない材料をパン生地をまとまりやすくし、また吸収を良くするために、アガリクス茸と小海老を小麦粉と同程度の粒子の粉末にする。アガリスク茸と小海老は乾燥したものを、先ず包丁等で小さく切ってから、ミキサー等を用いて粉砕し、篩いにかけ、という作業を2〜3回繰返し行い、粒子の直径が0.2〜0.3mm程度のパウダー状の微粉末にする。
【0014】
ここで、多種あるパンのうち、種類によって原材料の比率や製造方法において多少の差異があるが、ロールパンの製造方法を実施形態として以下説明する。
【0015】
出来上がりの大きさが50g程度のロールパン12個分の原材料として、強力粉190g、そば粉90g、アガリクス茸粉末10g、小海老(オキアミ等)粉末10g、ドライイースト6g、砂糖40g、鶏卵の卵白30g、豆乳175CC(ミリリットル)、食塩5g、油脂類としてバターまたはマーガリン45g、その他艶出し用の鶏卵の溶き卵や打ち粉を適宜用意する。
【0016】
以下、製造工程に従って順次説明する。前記材料のうち、強力粉190g、そば粉90g、前述したように下準備したアガリクス茸粉末10g及び小海老粉末10g、ドライイースト6g、砂糖40g及び食塩5gをボウル等に入れ全体が均一になるように混ぜ合わせ、鶏卵の卵白30g、豆乳175CCを加えて更に混ぜ合わせる。
【0017】
一般に、強力粉を捏ねるには水分が欠かせないが、パンを作るには粉の総重量の約60%重量の水分を加えて良く捏ねると、形成されたグルテンが網目状構造を形成し、柔らかいが弾力のある生地になる。通常では水、或いは食感や味を良くするために、水の量を減らし、その減らした水の分量に応じた牛乳や乳製品を加えたり、更に色つやを増したりふんわり感を出すために卵を使用する場合も多い。
【0018】
本発明においては、そば粉、アガリスク茸粉末、小海老粉末等の粘着力のない材料の比率が高く、パン生地のまとまりが悪く出来上がりも固くなりがちになるために、小麦粉グルテンの網目状構造の形成を助ける作用がある鶏卵の卵白や豆乳を使用する。また栄養面においても豆乳に含まれる大豆イソフラボンと小海老に含まれるカルシウム、そば粉に含まれるマグネシウムとを同時に摂取することにより、吸収しにくいと言われるカルシウムの吸収を高め、中高年以降に懸念される骨量の減少に効果が期待できる。
【0019】
ボウルの中で前述の如く混ぜ合わせた材料を粉っぽさがなくなりひとつにまとまるように、よく混ぜ合わせる。最初、生地がべたついて手についたりするが、練り続けるうちに次第に手につかなくなり、ひとつにまとまるようになるので、ボウルから打ち粉を振った台の上に取り出す。打ち粉には強力粉を使用するが、そばの実の芯の部分を挽いた粘りの少ない粉、即ち一番粉(内層粉)を使用してもよい。
【0020】
そして、イーストが万遍なく働くように、また強力粉のグルテンがしっかりした網目状構造を形成するように、取り出した生地の端をつかんで台にたたきつける。強力粉やそば粉等の材料がよくなじみ均一になるように生地をたたみこむように捏ねたり、生地のつかむ場所を変えながら台に強くたたきつけたりと、100回位、この作業を繰返す。
【0021】
次に、ある程度まとまり、なめらかになったパン生地に、油脂類としてバターまたはマーガリン45gを加えて練り込むように、更に7〜8分間捏ねる。十分に捏ね上がったかどうか判断するには、生地の端を少量取り、両手で延ばしてみて薄い膜のようになり、向こう側が透けて見えるほど弾力が出れば良い。生地を台上に取り出して捏ね始めてから、十分に弾力のある生地に仕上がるまでの総所要時間は15〜20分間程度かかり、捏ね上がったパン生地の温度は25〜30℃になるのが良い。
【0022】
次に、生地の表面を滑らかに丸めて、大きめのボウル等に入れ生地の表面が乾燥しないようにラップ材をかけ、30〜35℃の温度で40〜50分間発酵させる。暑い季節では外気温でも十分であるが、気温が低い時期にはこたつの中や40℃位のぬるま湯を張った、生地を入れたボウルよりひとまわり大きいボウルの中に、浮かせて入れたり、または電子レンジの発酵機能や発酵器等を利用するのも良い。発酵が進み、生地の大きさが2.5〜3倍に膨らんできたら、生地に指先を差し込み、指の穴がそのまま残り、戻らなければ一次発酵が終了したものと判断される。
【0023】
次に、一次発酵により膨らんだパン生地を軽くたたいてガスを抜いた後、二次発酵を均等に進行させるためにも、生地を40〜50g程度の一定の大きさになるようにスケッパー等で切り分け、表面が滑らかになるように丸めて、生地の表面が乾かないように水で濡らし固くしぼった布巾をかけて10〜15分間ねかせる。これを「ベンチタイム」と言い、傷んだ生地を休ませるために行う。
【0024】
次に、休ませた生地を成形する。麺棒等を使って細長い三角形にのばして、底辺から生地を引っ張りながらしっかり巻き込み、端をよく留め、巻き終わりを下にする。
【0025】
巻き終わりを下にして成形した生地は、発酵して膨らんだ時にも生地がお互いにくっつかないようにオーブン用シートを敷いた天板に、充分に間隔をあけて並べ、軽く霧を吹いて、生地の表面の乾燥を防ぐために軽くラップ材をかけて、35〜40℃の温かい場所や電子レンジ等を利用して40分間二次発酵させると、生地は約2倍に膨らむ。
【0026】
次に、生地の表面に艶出しのための鶏卵の溶き卵を、生地の表面を傷つけないように刷毛で軽く塗り、200℃に予め熱しておいたオーブンで10〜13分間焼く。溶き卵は焼き上がりのパンの艶を出すばかりでなく、生地を焼き上げの際の乾燥から守る働きもある。
【0027】
そして、オーブンから焼きあがったパンを、火傷をしないように注意して取り出し、網の上に載せて粗熱を取る。
【0028】
以上本発明の実施形態について説明したが、上記に記した原材料の比率は基本形であって、好みに応じて或いはパンの種類に応じてその比率を増減しても良い。また豆乳に替えて豆乳及び牛乳か、牛乳のみを使用し、また鶏卵の卵白に替えて全卵を使用しても良く、その場合は、加える卵あるいは牛乳の重量の合計は前述した豆乳と卵白の合計重量と等しくなるようにする。
【0029】
上述の説明に基づいて当業者にとって種々の代替例、修正又は変形が可能であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲で前述の種々の代替例、修正又は変形を包含するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
30重量%以上〜90重量%以下の小麦粉と、8重量%以上〜70重量%以下のそば粉と、0.5重量%以上〜30重量%以下のアガリクス茸粉末とを含み、常法によりパンにすることを特徴とするパンの製造方法。
【請求項2】
0.5重量%以上〜30重量%以下の小海老粉末を更に含むことを特徴とする請求項1に記載のパンの製造方法。
【請求項3】
パン生地を製造する際に、豆乳又は牛乳を使用することを特徴とする請求項1に記載のパンの製造方法。