説明

パンク修理装置

【課題】シーリング剤の注入中に一時的に圧力上昇が生じても装置の動作を中断することなく、タイヤ内の圧力を実際に所定値に到達させられるパンク修理装置を提供する。
【解決手段】パンク修理装置は、可動子36と、可動子36の一面側にタイヤ内の空気圧を導く主管50と、主管50と可動子36の他面側空間を連通させるバイパス管54と、主管50内が目標空気圧よりも大きくなったときに開弁し開弁後は開弁状態を維持する主弁56と、主管50内が目標空気圧以下のときに閉弁して主管50とバイパス管54との連通を遮断し、目標空気圧より大きくなったときに開弁して主管50とバイパス管54を連通させて可動子36の一面側と他面側を同圧にするカット弁58と、主管50の空気圧が目標空気圧以下のときに開弁してバイパス管54に大気圧を導入し、目標空気圧より大きくなったときに閉弁して大気圧の導入を遮断する大気取込弁60を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パンク修理装置、特に、タイヤの空気充填を目標空気圧にて完了させることのできるパンク修理装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特許文献1、特許文献2に示されるように、シーリング剤を収容する容器と、電動モータを内蔵したポンプ装置とを備えたパンク修理装置が知られている。このパンク修理装置は、ポンプ装置を動作させることにより、シーリング剤をパンクしたタイヤ内に注入した後、タイヤ内に高圧空気を供給してパンク修理を行う。このパンク修理装置は、タイヤ内の空気圧を検出する圧力センサを備え、圧力センサによって検出された空気圧が所定の空気圧を超えたときに、電気制御装置を制御してポンプ装置の動作を停止させている。また、特許文献3には、規定量のシーリング剤をタイヤ内部へ注入完了したら、ポンプ装置を自動的に停止させると同時に、三方弁によりホースの接続先をコンプレッサ側に切り換えてコンプレッサを動作させている。これにより、コンプレッサに圧縮空気を吐出させている。この圧縮空気は、ホースを介してタイヤ内に供給すると共に空気圧を圧力センサで監視しながらタイヤを膨張させて所定の圧力になったらコンプレッサを停止させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−1269号公報
【特許文献2】特開2006−103144号公報
【特許文献3】特開2007−132294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述した各特許文献に記載された装置は、空気の送り込み終了時期をタイヤ内圧力を圧力センサにより検出することにより決定している。この場合、シーリング剤注入に引き続いて実施されるタイヤへの空気充填もタイヤ内圧力が所定の圧力になったときに終了させている。つまり、シーリング剤の注入およびそれに続く空気充填の一連のパンク修理作業を終了をタイヤ内圧力の監視により決定している。ところで、空気の充填に先立ち注入されるシーリング剤は粘性を有するため、シーリング剤をタイヤに導く注入管での流動速度が低下したり管の一部に詰まりが生じてしまう場合がある。この場合、圧力センサの検出圧力値も上昇することになり、シーリング剤の注入中であるにも拘わらず、タイヤ内空気圧が所定値を越えたシーリング剤注入後の空気圧上昇処理が終了したと誤認識して、コンプレッサの動作を停止させてしまう場合がある。その結果、実際にはタイヤの空気圧が所定値に達していない場合でも装置が停止してしまう場合があった。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、シーリング剤の注入からタイヤへの空気充填の一連の作業中、シーリング剤の注入中に一時的に圧力上昇が生じた場合でも、装置の動作を中断することなくタイヤ内の圧力を実際に所定値に到達させることのできるパンク修理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様は、シーリング剤を収容する容器と、電動モータによって駆動されるポンプとを備え、前記ポンプを駆動することにより、シーリング剤をタイヤ内に注入した後、タイヤ内に高圧空気を供給して、パンクしたタイヤを修理するパンク修理装置であって、前記電動モータへの電力供給路に介装され、第1位置にあるときに電力供給路を接続し、第2位置にあるとき電力供給路を遮断する可動子を内蔵した電力遮断器と、前記可動子の一面側に前記タイヤに対して供給する空気圧と同等の空気圧を導く主管と、前記可動子の一面側空間と前記可動子の他面側空間とを連通させるバイパス管と、前記主管に設けられ、前記可動子が第1位置にある状態で当該主管に導かれる空気圧がタイヤの目標空気圧よりも大きな所定の空気圧になったときに開弁し、開弁後は開弁状態を維持する主弁と、前記主管と前記バイパス管との間に設けられ、前記主管に導かれる空気圧が前記目標空気圧以下のときに閉弁して前記主管とバイパス管との連通を遮断すると共に、前記目標空気圧より大きくなったときに開弁して前記主管とバイパス管とを連通させて前記可動子の一面側と他面側を同圧にするカット弁と、前記バイパス管に設けられ、前記主管に導かれる空気圧が前記目標空気圧以下のときに開弁して前記バイパス管に大気圧を導入し、前記目標空気圧より大きくなったときに閉弁して大気圧の導入を遮断する大気取込弁と、を含み、前記可動子が前記第1位置にあり前記主弁が開弁状態で、前記カット弁が閉弁状態で、前記大気取込弁が開弁状態のときに、前記主管に導かれた空気圧が前記目標空気圧に達したときに前記可動子が前記第2位置に切り換えられるように構成したことを特徴とする。
【0007】
この態様によれば、シーリング剤の注入中に一時的に圧力がタイヤの目標空気圧を越えてしまった場合でも、主弁とカット弁とが開弁してバイパス管を介して可動子の一面側と他面側を同圧にする。その結果、可動子は第1位置に留まり、電動モータへの電力供給を維持しポンプを駆動し続けてパンク修理装置の動作を継続させる。その後、可動子が第1位置にあり主弁が開弁状態で、カット弁が閉弁状態で、大気取込弁が開弁状態のときに、主管に導かれた空気圧が目標空気圧に達したときに可動子が第2位置に切り換えられるので、タイヤ内の圧力が実際に目標空気圧に到達して始めて電動モータへの電力供給を遮断しポンプを停止してパンク修理装置の動作を終了させる。
【発明の効果】
【0008】
本発明のパンク修理装置によれば、シーリング剤の注入からタイヤへの空気充填の一連の作業中、シーリング剤の注入中に一時的に圧力上昇が生じた場合でも装置の動作を中断することなく、タイヤ内の圧力を実際に所定の目標空気圧に到達させるまでパンク修理装置を動作し続けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施形態のパンク修理装置の全体構成を説明する概略構成図である。
【図2】本実施形態のパンク修理装置における電源ユニットの構造を説明する説明図である。
【図3】本実施形態のパンク修理装置を用いた場合に電源ユニットへ接続された管に導かれる空気圧の変化を説明する説明図である。
【図4】図4(a)〜図4(e)は、図3における注入期間Aおよび充填期間B中の電源ユニットの可動子の動作を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態(以下実施形態という)を、図面に基づいて説明する。
【0011】
図1は、本実施形態のパンク修理装置の全体構成を説明する概略構成図である。パンク修理装置100は、ケース10内に容器11、ポンプ12、電動モータ13、電気制御装置14、電源ユニット30を含んでいる。
【0012】
容器11は、ほぼ円筒状に構成されるとともに上板部及び底板部を有して密閉空間を形成して、内部にシーリング剤を収容している。容器11の側壁は、上部が円筒状に形成され、下部がテーパ状に形成されて下方に向うに従ってその直径が上部に比べて徐々に小さくなるように構成されている。容器11の上板部には、注入口11aが設けられている。注入口11aには、キャップ11bが着脱自在に設けられている。そして、キャップ11bを取り外した状態で、シーリング剤が容器11内に注入される。また、キャップ11bで注入口11aを塞いだ状態で、容器11内から空気が漏れないように密閉される。シーリング剤は、タイヤのパンク孔をシールするもので、通常の状態では粘性が低い。そして、タイヤ内に注入されてタイヤ内の空気圧が高圧力になると粘性が高められ、パンク孔に侵入した後に車両の予備走行により完全に固化する。
【0013】
容器11の底板部の下面には、バルブ装置15,16が取り付けられている。バルブ装置15は、ポンプ12から管21を介して供給される高圧の空気を底板部に設けた孔11cを介して容器11内に導入する一方向性バルブで構成されている。このバルブ装置15は、管21を介して供給される空気の圧力が所定圧力を超えるときにはじめて連通するもので、容器11内のシーリシグ剤が管21内に漏れ出すことはない。バルブ装置16は、容器11内のシーリング剤及び容器11を介した高圧の空気を底板部に設けた孔11dを介して管22内に導出する一方向性のバルブで構成されている。このバルブ装置16は、容器11内の圧力が所定圧力を超えるときにはじめて連通するもので、容器11内にシーリング剤が単に収容されているだけでは、容器11内のシーリング剤が管22に漏れ出すことはない。
【0014】
管22には、分岐管23を介して管24が接続され、この管24の先端はコネクタ25に接続されている。コネクタ25には、ホース26が着脱自在に接続されている。ホース26の先端には、車両に装着されているタイヤ27のタイヤバルブに気密的に接続され得るアダプタ26aが設けられている。また、分岐管23には、一端が電源ユニット30に接続された管28の他端が接続されている。この管28を介して、電源ユニット30は管22,24に連通している。ただし、分岐管23内に設けたバルブ(不図示)により、管28へ管22,24からシーリング剤が侵入しないようになっている。なお、ポンプ12から容器11に供給される空気によって生じるタイヤ27へのシーリング剤の吐出圧力およびタイヤ27へ充填される空気圧力は、分岐管23および管28を介して、電源ユニット30側にも作用するようになっている。後述するが、このとき作用する圧力によって本実施形態の電源ユニット30が動作する。
【0015】
ポンプ12は、図示しない減速機構を介して電動モータ13の回転により駆動されて、高圧の空気を管21内に吐出する。電動モータ13は、電気制御装置14によって駆動制御されて回転する。電気制御装置14は、電源ユニット30から一対の電力供給ライン41a,41bを介して電力の供給を受けると、その電力を電動モータ13に供給して電動モータ13を回転させる。電気制御装置14は、電源ユニット30から電力供給ライン41a,41bを介した電力供給が遮断されると、電動モータ13への電力供給を遮断して電動モータ13の回転を停止させる。
【0016】
電源ユニット30は、図2に示すように、例えば方形状のケース31内に配置された樹脂等の絶縁材料で構成された円筒状の支持体32を含む。支持体32は、その底面がケース31の底面に固定され、その内部はケース31の底面に形成されたコネクタ33を介して管28に連通している。支持体32の上端部の内周面上には段差が形成されて、円筒状の薄肉部32aが形成されていると共に、環状の座部32bが設けられている。薄肉部32aには、周方向の2箇所に上方から切り欠かれた一対の切欠部が設けられている。この切欠部には、金属性の導電材料で構成された固定端子34a,34bが装着固定されている。
【0017】
固定端子34aは、ケース31に固定された固定部材42aを介してケース31内に挿入されている電力供給ライン41a,41bのうちの一方の電力供給ライン41aの端部が、半田付け等により接続されている。同様に、固定端子34bには、ケース31に固定された固定部材42bを介してケース31内に挿入されている電力供給ライン43a,43bのうちの一方の電力供給ライン43aの端部が、半田付け等により接続されている。なお、電力供給ライン41bは、電力供給ライン43bと接続されている。
【0018】
電力供給ライン41a,41bは、電源ユニット30の外部では絶縁部材により被覆されてコードを構成している。同様に、電力供給ライン43a,43bは、電源ユニット30の外部では絶縁部材により被覆されてコードを構成している。このコードを構成する電力供給ライン43a,43bの他端部には、プラグ44が設けられている(図1参照)。プラグ44は、例えば、車両のシガーソケットに接続されて、電力の供給を受けることができる。なお、シガーソケットに代えて、家庭用電源コンセントから電力供給を受けるようにしてもよい。この場合には、家庭用電源コンセントに接続されるプラグが電力供給ライン43a,43bの他端に設けられる。また、電力供給源として、バッテリを用いてもよい。
【0019】
薄肉部32a及び固定端子34a,34bの上面には、上板部35aを有する円筒状部材35の底面が固着されている。円筒状部材35は、ゴム等の弾性を有する絶縁材料で構成することができる。円筒状部材35の軸方向の下部には、内側に張り出した環状の凸部35bが一体形成されている。この凸部35bの上面はほぼ平らに形成され、凸部35bの上面には可動子36が載置されている。可動子36は、金属製の導電材料で円盤状に形成されている。可動子36の上面と円筒状部材35の上板部35aの下面との間には、圧縮スプリング37が配置されている。なお、上板部35a内には、上板部35aの変型を避けるために、例えば円盤状の金属板38が埋め込まれている。上板部35aの上面には、作業者によって押圧操作される押圧部39が固着されている。押圧部39は、樹脂等により形成され、ケース31の上面に設けた孔31aから上方に突出している。このように構成される可動子36が電力供給路を遮断する電力遮断器を構成する。また、後述するが、圧縮スプリング37は、当該圧縮スプリング37の付勢力と大気圧との合力がタイヤ27の修理時に必要となる目標空気圧と実質的に同じになるような付勢力を発生するものが選択されている。
【0020】
ここで、電源ユニット30における押圧部39の押圧操作による可動子36の挙動について説明する。
電源ユニット30の可動子36は、操作前の初期状態では、図2に示すように、凸部35bの上面に着座している。この状態で、可動子36は圧縮スプリング37により付勢されているが、凸部35bが、図1中で下部から上方に向かうに従って内側への張り出し量が大きくなるように形成されているので、圧縮スプリング37の付勢力を受けても可動子36は下方に変位しないようになっている。すなわち、可動子36が凸部35bの上面に安定して着座するように、圧縮スプリング37の付勢力と凸部35bの形状が設定されている。この状態では、固定端子34a、34bの間には導通材である可動子36が不在となるので、電源ユニット30は電力供給を遮断する状態になっている。
【0021】
一方、この状態で、操作者が、手または器具を使って、押圧部39を押下するように外力を加えると、弾性を有する円筒状部材35は押し潰され、凸部35bの部分が拡径する。その結果、圧縮スプリング37に付勢されつつ凸部35bの上面に着座していた可動子36は凸部35bを乗り越えて下方に変位し、最終的には、支持体32の座部32bに着座する。したがって、押圧部39に対する押下力の付与による変形で可動子36が凸部35bを乗り越えられるように、凸部35bの内側への最大張り出し量が設定されている。この状態で、固定端子34a、34bの間に可動子36が存在して導通状態を形成することになり、電源ユニット30が電力供給状態になる。したがって、可動子36の直径は、固定端子34a,34bの内周面間の距離に等しく設定されている。なお、可動子36の外周面と固定端子34a,34bの内側面との確実な接触を確保するために、固定端子34a,34bの内側面に弾性を有する導電性の接点を配置してもよい。
【0022】
また、この状態で、パンク修理装置の操作者が押圧部39の押下力を解除すると、圧縮スプリング37の付勢力及び円筒状部材35の弾性復元力により、円筒状部材35が元の形状に復帰する。ただし、可動子36は圧縮スプリング37により下方に付勢されたままであり、凸部35bの上面には戻らずに薄肉部32aに位置して、固定端子34a,34bと接触し続けて導通状態を維持する。つまり、電力供給ライン41a,41bが導通状態を維持する。なお、本実施形態においては、可動子36が固定端子34a,34bと接触状態となる薄肉部32aに着座している位置を第1位置と称し、可動子36が凸部35bの上面に着座している状態を含む固定端子34a,34bと非接触状態にある位置を第2位置と称する。
【0023】
ところで、管28を介して支持体32内に供給される空気が支持体32内から円筒状部材35内に漏れ出さないように、可動子36の下面と支持体32の座部32bとの間の気密性を高く保つ必要がある。そのため、可動子36の下面と支持体32の座部32bとは密着されるようになっている。必要に応じて、シール部材を可動子36の下面または支持体32の座部32bに設けてもよい。
【0024】
本実施形態の電源ユニット30は、上述した構成に加えて3種類の弁機構と可動子36の下面側と上面側の圧力を調整するためのバイパス管を備えている。具体的には、図2に示すように、管28に直結された支持体32において可動子36の下面側の空間を形成する主管50と、可動子36の上面側の空間を形成する副管52とを連通可能とする柔軟性を有するバイパス管54を備えている。主管50には、可動子36が第1位置にある状態で管28を介して主管50に導かれる空気圧がタイヤ27の目標空気圧よりも大きな所定の空気圧になったときに開弁し、開弁後は開弁状態を維持する主弁56を有する。なお、本実施形態において、タイヤ27の目標空気圧とは、シーリング剤を固化させるための予備走行に必要となる空気圧である。
【0025】
また、主管50とバイパス管54との間にはカット弁58が設けられている。カット弁58は、主管50に導かれる空気圧がタイヤ27の目標空気圧以下のときに閉弁して主管50とバイパス管54との連通を遮断すると共に、目標空気圧より大きくなったときに開弁して主管50とバイパス管54とを連通させる。そして、可動子36の下面側と上面側を同圧にする。つまり、可動子36の位置を維持するように圧力調整する。
【0026】
さらに、バイパス管54に大気取込弁60が設けられている。大気取込弁60は、主管50に導かれる空気圧が目標空気圧以下のときに開弁して大気口54aからバイパス管54に大気を取り入れ、目標空気圧より大きくなったときに閉弁して大気の取り込みを遮断する。
【0027】
本実施形態において、主弁56はカット弁58と連携して動作できるようになっている。図2に示すように、主弁56の一端に形成された開閉動作軸56aはカット弁58上に形成されている。また、他端は主管50の内壁に固定されたロック片56bで支持されている。前述したように主弁56は、主管50に導かれる空気圧がタイヤ27の目標空気圧よりも大きな所定の空気圧になったときに開弁する。したがって、ロック片56bは目標空気圧以下で主弁56による主管50の閉塞を維持できるような構造を有する。例えば、ロック片56bは弾性部材で形成され、主管50に導入される空気圧が目標空気圧に達するまで剛性により主弁56の回動による開弁を阻止し、目標空気圧に達したら変形して開弁を許容する。ただし、一度ロック片56bのロックから開放された主弁56は、所定の操作、例えば図示しない復帰機構によるロック操作が行われない限り、ロック状態に復帰しないようになっている。つまり、ロック解放後は、主弁56は開弁状態を維持して、管28側からの空気圧の導入を常時許容する。
【0028】
なお、前述したように、本実施形態の主弁56の開閉動作軸56aは、カット弁58上に形成されている。そして、後述するが、主弁56が所定角度以上開弁した場合に連動してカット弁58が開弁するようになっている。したがって、主弁56の開閉動作軸56aには所定の開弁角度まで主弁56の回動を許容する「遊び」があり、所定の開弁角度を超えて「遊び」がなくなると主弁56の開弁動作に連動してカット弁58が開弁するようになっている。
【0029】
さらに、本実施形態では、カット弁58と大気取込弁60とが、図2に示すように、所定角度で接合されて一体化弁を形成している。この場合、カット弁58が閉弁しているときに大気取込弁60が開弁し、逆にカット弁58が開弁しているときに大気取込弁60が閉弁するようになっている。
【0030】
このように構成される電源ユニット30の動作およびパンク修理装置の動作を説明する。
図3は、本実施形態のパンク修理装置100を動作させた場合の電源ユニット30に接続された管28に導かれる空気圧の変化を説明する説明図である。なお、本実施形態のパンク修理装置100には圧力センサ等の圧力計は含まれないので、図3の圧力は、説明のために圧力測定を行った結果を示している。図3において、圧力P1がパンクしたタイヤ27をシーリング剤で修理する場合に必要となる目標空気圧であり、例えば200kPaである。前述したように、パンク修理装置100で使用するシーリング剤は、粘性を有する液体である。したがって、シーリング剤を容器11から管22、分岐管23、管24、コネクタ25、ホース26で構成される流路を通過させてタイヤ27内に到達させようとする場合、シーリング剤の流動抵抗により吐出に必要な圧力は図3に示すように上昇して、目標空気圧である圧力P1を越えてしまう場合がある(流動抵抗上昇域a)。その後、流路全体におけるシーリング剤の流動抵抗を僅かに越えた圧力P2にてしばらくシーリング剤の吐出が引き続き実施される(安定域b)。そして、所定量のシーリング剤がタイヤ27内にほぼ注入されると、空気の充填領域がタイヤ27の容積分広がるため圧力低下が生じて圧力P3まで低下する(低下域c)。つまり、流動抵抗上昇域a、安定域b、低下域cを経ることによってシーリング剤のタイヤ27への注入は完了したと見なることができる(注入期間A)。その後、ポンプ12の駆動によりタイヤ27への空気の充填を継続すると、再び徐々に空気圧が上昇して圧力P1に到達するまで空気充填が実施される(充填域d)。
【0031】
本実施形態のパンク修理装置100は、シーリング剤の注入後にタイヤ27への空気充填が開始され(充填期間B)、タイヤ27内の空気圧力が圧力P1に到達した場合のみポンプ12を駆動する電動モータ13が停止するように構成されている。
【0032】
図4(a)〜図4(e)は、図3における注入期間Aおよび充填期間B中の電源ユニット30の可動子36の動作を説明する説明図である。なお、図4(a)〜図4(e)は、動作を理解し易くするために図面を簡略化している。
【0033】
前述したように、パンク修理装置100の操作前は、図2に示すように、可動子36は円筒状部材35の凸部35bの上面に着座した第2位置にある。この状態で、押圧部39を押下して、可動子36を薄肉部32aに移動させた状態が図4(a)である。図4(a)の状態は、可動子36が固定端子34a,34b間に位置するので、電力供給ライン41a,41bは導通状態にあり、電気制御装置14を介して電動モータ13にプラグ44が接続された電源からの電力が供給される。したがって、ポンプ12の駆動により、まず容器11内のシーリング剤がタイヤ27へ向けて注入される。このとき、主弁56は管28を介して供給される圧力が圧力P1に到達するまでは、ロック片56bにロックされ閉弁状態を維持する。つまり、可動子36は第2位置を維持する。
【0034】
ポンプ12の駆動が継続すると、前述したようにシーリング剤がタイヤ27へ注入されるが、流動抵抗の上昇に伴い図3に示すように、管28に供給される圧力も上昇する。そして、管28を介して主弁56の下面に作用する圧力が圧力P1を越えた場合、図4(b)に示すように、ロック片56bが変形すると共に主弁56が開弁する。また、主弁56の開弁動作が開閉動作軸56aにおける「遊び角度」を越えると、主弁56に連動して、カット弁58が開弁すると共に大気取込弁60が閉弁する。その結果、管28から導入される圧力Pは、バイパス管54を介して副管52にも導入され可動子36の上側の空間にも作用する。つまり、この状態でも可動子36の上面側と下面側の圧力は実質的に同じになる。この場合、圧力が圧力P1を越えて圧力P2に達しても可動子36は図4(a)に示す第2位置から動かずに、薄肉部32aに着座して固定端子34a,34bの導通を維持する。つまり、ポンプ12が駆動し続けてシーリングの注入を継続する。
【0035】
シーリング剤の注入が終盤に近づき、管28の圧力がシーリング剤の流動抵抗と実質的に釣り合うと、圧力状態は安定域bに移行し、さらにタイヤ27内への気道が形成されるとタイヤ27内の空間分空気の充填領域が広がるため圧力状態は低下域cに移行する。管28の圧力状態が低下域cに移行して圧力P3になった状態が図4(c)である。この場合、管28内の圧力低下に伴い一時的負圧状態となり、主弁56は閉弁方向に動作するが、ロック片56bには再ロックされないので、主管50の気密状態を形成できずに実質的に開弁状態を維持する。ただし、主弁56の開弁状態が維持されても主弁56と連動するカット弁58はロック片56bにおける回動の「遊び」により閉弁状態となる。また、カット弁58の閉弁により大気取込弁60も閉弁状態となる。その結果、主管50と副管52の連通が絶たれ、管28に導入される圧力は主管50のみに導入されて可動子36の下面側のみに作用し続ける。また、大気取込弁60の開弁により大気口54aから大気がバイパス管54を介して副管52に導入され、可動子36の上面側に大気圧が作用し始める。この状態でも、可動子36は薄肉部32aに着座しているのでポンプ12の駆動は継続される。
【0036】
管28の圧力状態が充填域dに移行し、気密状態の主管50の圧力が上昇し、所定の目標空気圧である圧力P1に到達すると、図4(d)に示すように、可動子36は、大気圧および圧縮スプリング37の付勢力に抗して薄肉部32aの着座した第2位置から非着座の第1位置に向けて移動し始める。そして、可動子36の下面側に圧力P1が作用し続けると、可動子36は、円筒状部材35の凸部35b部分を押し広げながら上昇し、図4(e)に示すように、凸部35bの上面に着座する。この時点で、可動子36と固定端子34a,34bの導通は完全に解除され、電動モータ13への電力供給は遮断される。つまり、ポンプ12は停止する。そして、パンク修理装置100の動作が終了し、タイヤ27はシーリング剤注入後の予備走行が可能な状態になる。
【0037】
このように、本実施形態のパンク修理装置100によれば、シーリング剤の注入中(注入期間A)に一時的に圧力が装置を停止させる目標空気圧P1を超えてしまった場合でも、電動モータ13への給電を停止することがない。そして、実際にシーリング剤の注入が完了してタイヤ27の内部圧力が上昇して目標空気圧P1に達して空気の充填が完了した場合(充填期間Bの終了)のみ、電動モータ13への給電を停止するようにできる。つまり、パンク修理時のシーリング剤注入およびタイヤ27の空気充填が完了した場合のみ、パンク修理装置100が停止するようにできる。なお、パンク修理装置100は手動停止装置を備え、作業者は意図的に電動モータ13の駆動を停止することもできる。
【0038】
本発明は、上述の各実施形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を加えることも可能である。各図に示す構成は、一例を説明するためのもので、同様な機能を達成できる構成であれば、適宜変更可能であり、同様な効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0039】
11 容器、 12 ポンプ、 13 電動モータ、 14 電気制御装置、 21,22,24,28 管、 27 タイヤ、 30 電源ユニット、 36 可動子、 50 主管、 52 副管、 54 バイパス管、 56 主弁、 58 カット弁、 60 大気取込弁、 100 パンク修理装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シーリング剤を収容する容器と、電動モータによって駆動されるポンプとを備え、前記ポンプを駆動することにより、シーリング剤をタイヤ内に注入した後、タイヤ内に高圧空気を供給して、パンクしたタイヤを修理するパンク修理装置であって、
前記電動モータへの電力供給路に介装され、第1位置にあるときに電力供給路を接続し、第2位置にあるとき電力供給路を遮断する可動子を内蔵した電力遮断器と、
前記可動子の一面側に前記タイヤに対して供給する空気圧と同等の空気圧を導く主管と、
前記可動子の一面側空間と前記可動子の他面側空間とを連通させるバイパス管と、
前記主管に設けられ、前記可動子が第1位置にある状態で当該主管に導かれる空気圧がタイヤの目標空気圧よりも大きな所定の空気圧になったときに開弁し、開弁後は開弁状態を維持する主弁と、
前記主管と前記バイパス管との間に設けられ、前記主管に導かれる空気圧が前記目標空気圧以下のときに閉弁して前記主管とバイパス管との連通を遮断すると共に、前記目標空気圧より大きくなったときに開弁して前記主管とバイパス管とを連通させて前記可動子の一面側と他面側を同圧にするカット弁と、
前記バイパス管に設けられ、前記主管に導かれる空気圧が前記目標空気圧以下のときに開弁して前記バイパス管に大気圧を導入し、前記目標空気圧より大きくなったときに閉弁して大気圧の導入を遮断する大気取込弁と、
を含み、
前記可動子が前記第1位置にあり前記主弁が開弁状態で、前記カット弁が閉弁状態で、前記大気取込弁が開弁状態のときに、前記主管に導かれた空気圧が前記目標空気圧に達したときに前記可動子が前記第2位置に切り換えられるように構成したことを特徴とするパンク修理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−264610(P2010−264610A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−115985(P2009−115985)
【出願日】平成21年5月12日(2009.5.12)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】