説明

パン様加熱食品用のための食品生地の製造方法及びパン様加熱食品

【課題】風味と食感に優れ、かつ、優れた風味と食感を長期間維持することが可能な、穀物を含有した食品生地の製造方法及び加熱食品を提供する。
【解決手段】穀物を炊飯することにより穀物に含まれる澱粉をα化する。この炊飯した穀物を食品生地に含有させることにより、食品生地及び加熱食品に甘みを持たせることができる。また、生地に含まれる炊飯した穀物は食品生地及び加熱食品の水分保持に寄与するので、食品生地及び加熱食品の弾力及び水分を長期間にわたって保つことができる。得られた食品生地及び加熱食品は、風味と食感に優れ、かつ、優れた風味と食感が長期間維持される。なお、穀物として米を使用することにより、米の消費を拡大することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炊飯した穀物を含有する食品生地の製造方法及び加熱食品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、米の消費拡大を意図して、米粉を主成分としパンの代替品となる米粉製パンを製造する試みがなされている。従来のパンは、小麦粉に含まれているグルテンというたんぱく質の作用に加え、糖類、油脂類、乳製品、塩、乳化剤等によりふっくらとした柔らかい食感を生み出しているが、米粉を原料とした米粉製パンは小麦粉の代わりに米粉が使用されているため、強化グルテンを添加するもグルテンが不足し生地の膨化が不十分となる。その結果、パン本来のふっくらとした食感を生み出すことが難しく、硬いパンとなってしまう。このため、米粉製パンの主原料である米粉に、グルテンの代わりとしてキサンタンガム等の増粘多糖類などを添加して、米粉製パンの生地を膨化させる手法が採られている(特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−72099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の手法では、糖類が過剰に添加されることとなる。また、米粉製パンは、一般的に、β化の進みが速く、食感の悪化が速いことが知られている。
即ち、従来は、グルテン、糖類、油脂類、乳製品、塩、乳化剤等の添加物を添加することなく風味と食感に優れた、米を利用したパン様食品を製造することは困難であった。
本発明の課題は、風味と食感に優れ、かつ、優れた風味と食感を長期間維持することが可能な、穀物を含有した食品生地の製造方法及び加熱食品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するために、本発明の一態様に係る食品生地の製造方法は、
穀物を炊飯する炊飯工程と、前記炊飯工程において炊飯した穀物に酵母を混合し混捏する混捏工程と、前記混捏工程において得られた混捏物を発酵させる発酵工程と、を含むことを特徴とする。
また、上記製造方法においては、
小麦粉、澱粉、米粉、白玉粉、長芋を乾燥させ粉末としたもの、ヤマトイモを乾燥させ粉末としたもの、ゲンコツイモを乾燥させ粉末としたもののうち1以上のものを添加して混捏することが好ましい。
【0006】
また、上記製造方法においては、
前記炊飯した穀物の各粒の一部分をすり潰してペースト状とし、残部を粒状のまま残すように混捏し、前記炊飯した穀物の20〜40質量%をペースト状とすることが好ましい。
また、上記製造方法においては、
前記穀物に対して1〜2.2質量倍の水を添加して炊飯することが好ましい。
また、本発明の一態様に係る、加熱食品は、
上記食品生地の製造方法により製造された食品生地を加熱したことを特徴とする。
また、上記加熱食品は、
前記食品生地を水蒸気存在下で加熱したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の食品生地の製造方法により製造した食品生地は、炊飯した穀物を含有する。炊飯されることにより穀物に含まれる澱粉はα化して、食品生地及び加熱食品に甘みを持たせることができる。また、生地に含まれる炊飯した穀物は、食品生地及び加熱食品の水分保持に寄与するので、食品生地及び加熱食品の弾力及び水分を長期間にわたって保つことができる。したがって、本発明の食品生地の製造方法により製造した食品生地及び加熱食品は、風味と食感に優れ、かつ、優れた風味と食感が長期間維持される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本実施形態の食品生地の製造方法及び加熱食品の実施形態について説明する。
本実施形態の食品生地は、炊飯工程、混捏工程、一次発酵工程、分割工程、ベンチタイム工程、二次発酵工程を、該順序で行うことによって製造される。また、本実施形態の加熱食品は、前記のようにして製造した食品生地を加熱することにより得られる。
炊飯工程は、穀物に水を加え炊飯釜等で炊飯する工程である。そして、炊飯が終了した後に、炊飯した穀物の蒸らしを行うことが好ましい。
【0009】
ここで、本発明において、「炊飯」とは、米を炊くことだけでなく、穀物を炊くことも意味する。
本発明に使用される穀物としては、米、あわ、ひえ、きび、ハト麦、ライムギ、大麦、シコクビエ、そば類、アマランサス、とんぶり、ごま、えごま、その他の雑穀類が挙げられる。使用される穀物はこれらに限定されることはないが、特に米を用いることは加熱食品の食感の面から好ましい。また、穀物として米を使用することにより、米の消費を拡大することができる。
【0010】
炊飯時に穀物に加える水の量は、穀物の1〜2.2質量倍であることが好ましい。これにより、混捏工程において、穀物に含まれる澱粉のα化が容易となり、食品生地及び加熱食品に甘みを与えることができるからである。
炊飯工程においては、吸収し得る限界量の水を穀物に吸収させることが最も好ましいので、炊飯時に穀物に加える水の量は穀物の2.2質量倍とすることが最も好ましい。2.2質量倍超過であると、炊飯した穀物全体が粘液状となった後に澱粉のβ化により固形化するため、混捏工程において混合する酵母が十分に分散しない恐れがある。一方、炊飯時に穀物に加える水の量が穀物の1質量倍未満であると、穀物に含まれる澱粉が混捏工程において十分にα化せず、食品生地及び加熱食品に十分に甘みを与えることが困難となる恐れがある。
【0011】
なお、前述したように、炊飯した穀物全体が粘液状になることなく穀物が吸収し得る水の限界量は、穀物の2.2質量倍であるが、例えば特殊な炊飯釜を使用することにより、炊飯した穀物全体が粘液状にならないように穀物の2.2質量倍超過の水を穀物に吸収させることができるならば、炊飯時に穀物の2.2質量倍超過の水を加えてもよい。
また、穀物として例えば玄米を用いる場合には、炊飯時に加えた水の量が異なるもの複数を混合したものを、炊飯した穀物として使用してもよい。例えば、一般的に「玄米御飯」といわれるもので、炊飯時に加えた水の量が異なるもの数種類と、炊飯時に加えた水の量が多く、一般的に「玄米御粥」といわれるものを、所定の比率で混合したものを、炊飯した穀物として使用してもよい。
【0012】
なお、澱粉のα化とは、澱粉に水を加えて加熱して澱粉粒を崩壊させ、澱粉を糊化(ペースト化)することを意味する。澱粉のα化は、澱粉を構成しているアミロースとアミロペクチンの強固な結合が、水と熱によって崩れるために起きる現象である。α化した澱粉をα化澱粉といい、元の澱粉をβ化澱粉という。澱粉がα化すると、澱粉中のアミロースが水分中に溶け出すため、食品生地及び加熱食品に甘みを持たせることができる。
【0013】
炊飯した穀物を蒸らす作業は、炊飯した穀物に水分を均一に吸収させるために行う。したがって、穀物全体に均一に水分を吸収させることができる方法であれば、蒸らす作業に限定されず、他の方法を用いてもよい。穀物全体に均一に水分を吸収させる方法としては、例えば、炊飯釜を炊飯時とは天地逆にして放置することが挙げられる。水分が均一に穀物に吸収されていない場合は、炊飯した穀物が混捏工程において均一に混捏されない恐れがある。
【0014】
蒸らし作業における放置時間は6〜24時間が好ましい。これは、6〜24時間放置をすれば水分が均一に穀物に吸収されるからである。放置時間が6時間未満であると、水分が均一に穀物に吸収されない場合があり、炊飯した穀物が均一に混捏されない恐れがある。また、24時間超過放置すると、炊飯した穀物の水分が乾燥してしまうとともに、炊飯した穀物が劣化する恐れがある。
【0015】
次に、混捏工程は、炊飯した穀物に酵母を混合し、混捏する工程である。
混捏工程においては、炊飯した穀物と酵母に、小麦粉、澱粉、米粉、白玉粉、長芋を乾燥させ粉末としたもの、ヤマトイモを乾燥させ粉末としたもの、ゲンコツイモを乾燥させ粉末としたもののうち1以上のものを添加することが可能である。澱粉を多く含有するものであれば、穀類、根菜、豆、野菜等を添加することが可能である。また、小麦粉から作られるグルテンを添加することも可能である。
【0016】
ここで、使用される炊飯した穀物の質量を100質量部とした場合、添加する小麦粉等の質量は、0〜100質量部の範囲で調節することができる。これにより、食品生地及び加熱食品の食感を変えることが可能となる。食品生地及び加熱食品の食感を柔らかくしたい場合には、添加する小麦粉等の質量を、60〜100質量部に調節することが好ましい。
具体的には、炊飯した穀物100質量部に小麦粉等を60〜100質量部添加して混捏した場合には、食品生地の食感は弱くて柔らかくなり、加熱食品はパン様の柔らかい食感となる。
【0017】
一方、炊飯した穀物100質量部に小麦粉等を60質量部未満添加して混捏した場合には、食品生地及び加熱食品の柔らかさは低くなり、歯ごたえの強い餅のような食感となる。
また、炊飯した穀物100質量に小麦粉等を100質量部超過添加して混捏した場合には、食品生地及び加熱食品がパサついた食感となる。
【0018】
なお、混捏工程において小麦粉等を添加する場合には、小麦粉等と共に水を混合して混捏することが好ましい。水を混合することにより、炊飯した穀物と小麦粉等が均一に混捏されやすくなるからである。ここで加える水の量は、加熱食品の食感を柔らかく、しっとりとしたい場合は、小麦粉等の質量の55〜68質量%が好ましく、60〜65質量%がより好ましく、62質量%が特に好ましい。混合する水の量が小麦粉等の質量の55質量%未満であると、添加した小麦粉等が炊飯した穀物と均一に混捏されない場合があり、68質量%超過であると、食品生地が柔らかくなりすぎて、形成が困難となる恐れがあるからである。
【0019】
混捏工程において混捏作業は、炊飯した穀物の各粒の一部分をすり潰してペースト状とし、残部を粒状のまま残すように行う。具体的には、炊飯した穀物の20〜40質量%をペースト状とする。炊飯した穀物をペースト状とすることで、炊飯した穀物中の澱粉がα化し、穀物の甘みが引き出されるため、糖類を添加することなく、食品生地及び加熱食品に甘みを持たせることができる。また、ペースト状となった玄米等の穀物に含まれるアミロペクチンが、添加した小麦粉等に含まれる澱粉中のα−アミロースを包み込むため、加熱食品及び食品生地のパサつき感を抑えしっとりとした食感にすることができる。なお、ペースト状にする割合が多くなるにしたがって、食品生地及び加熱食品の食感は歯ごたえが強く餅に近くなる。
【0020】
例えば、食品生地及び加熱食品の食感を、柔らかく、しっとりとしたい場合には、炊飯した穀物の20〜40質量%をペースト状とすることが好ましく、炊飯した穀物の20〜35質量%をペースト状とすることがより好ましい。ペースト状とした炊飯した穀物が20質量%未満であると、食品生地及び加熱食品の食感にパサつき感が出てしまう恐れがあり、40質量%超過であると、ペースト状とした炊飯した穀物中のアミロペクチンが、後述するグルテンの形成を阻害し、食品生地及び加熱食品に柔らかさを出すことが困難となるからである。
さらに、炊飯した穀物の残部を粒状のまま残すことにより、水分を多く含んだ穀物の各粒が食品生地及び加熱食品の保湿に貢献するため、食品生地及び加熱食品の弾力及び水分を長期間保つことができる。
【0021】
また、加熱食品の食感を柔らかいパン様としたい場合には、混捏工程において前述の小麦粉等を添加することが好ましい。例えば小麦粉を添加した場合は、混捏によって小麦粉からグルテンが形成されるが、添加した小麦粉から形成することが可能な最大のグルテン量の20〜70%の量のグルテンが形成されるように、混捏を行うことが好ましい。小麦粉に含まれるグリアジンとグルテニンは、水分の存在下で混捏され、物理的な力が加えられることにより結合して、グルテンを形成する。したがって、前述の「20〜70%の量のグルテンを形成する」とは、小麦粉に含まれるグリアジンとグルテニン全体のうち、20〜70%を結合させることを意味する。グルテンの形成が20%未満及び70%超過では、加熱食品の形状を維持することが困難となり、パン様の柔らかい食感を出すことが困難となる。
【0022】
次に、一次発酵工程は、混捏工程において得られた混捏物を発酵させる工程である。一次発酵工程は、温度26〜28℃、湿度75〜80%の条件下で25〜40分間行うことが好ましい。
分割工程は、一次発酵させた混捏物を、所望の大きさに分割し、丸形等の所望の形状に仮成形するための工程である。
ベンチタイム工程は、分割工程後の混捏物を熟成させるための工程である。
【0023】
二次発酵工程は、分割して熟成させた混捏物を発酵させる工程である。二次発酵工程は、温度26〜28℃、湿度75〜80%の条件下で25〜40分間行うことが好ましい。
加熱工程は、二次発酵工程において十分に発酵された混捏物を加熱する工程である。
加熱の方法は、焼成、蒸し、油調、炒め、茹で等の一般的な加熱方法の少なくとも1種を用いることができる。加熱機器としては、スチームオーブン、オーブン、蒸し器、フライヤー、フライパン、鍋等のうちの少なくとも1種を用いることができる。
【0024】
加熱は、例えば、オーブンを用いた場合には、温度150〜300℃、好ましくは温度180〜250℃、より好ましくは温度200〜220℃の条件下で15〜28分間行うことが好ましい。また、スチームオーブンを用いた場合には、温度150〜300℃、好ましくは温度180〜250℃、より好ましくは温度200〜220℃、所定の水蒸気存在下で15〜28分間行うことが好ましい。
なお、本発明の食品生地は、加熱して加熱食品とするだけでなく、乾燥して乾燥食品とすることも可能である。
【実施例】
【0025】
以下、実施例を示して本発明をさらに詳細に説明する。
本実施例では、穀物として玄米を用いて本発明の食品生地の製造方法により食品生地を製造し、該食品生地を用いて加熱食品を製造する。
(材料と器具・機械について)
玄米・・・・・・・・・自家栽培米(品種は「あさひの夢」)470g
強力粉・・・・・・・・日清製粉株式会社製のカメリヤ1000g
生イースト・・・・・・オリエンタル酵母工業株式会社製のオリエンタルイースト25g
炊飯時に使用する水・・・996.4ml
混捏時に混合する水・・・620ml
ミキサー・・・・・・・・関東混合機工業株式会社製ミキサー(製品番号:HMK50)
オーブン・・・・・・・・戸倉商事株式会社製 TOKUオーブン(製品番号:TOU−431SUUU−SSS−MS−M−FDR−N)
ホイロ・・・・・・・・・戸倉商事株式会社製 パルテ(製品番号:PDDI−S2K−QQRX54NS)
炊飯器・・・・・・・・・株式会社パロマ製 ガス釜(製品番号:PR−402・SP)
【0026】
(食品生地の製造工程及び加熱食品の製造工程について)
1.玄米470g及び水996.4mlを炊飯器に入れ、炊飯する。炊飯後、炊飯釜を炊飯時とは天地逆にして、室温で12時間放置する。
2.上記工程1で得た炊飯した玄米1000gに、水620cc、生イースト25g及び強力粉1000gを加え、ミキサーに投入して混合し、回転速度130〜275min−1で5〜8分間混捏する。混捏は、炊飯した玄米の20質量%がペースト状となり、小麦粉に含まれるグリアジンとグルテニン全体のうち、30%を結合させてグルテンを形成するように行う。よって、混捏終了後の混捏物には、炊飯した玄米の20質量%がペースト状となって含まれており、80質量%が粒状のままで含まれている。
【0027】
3.上記工程2で得られた混捏物の形状を丸形に成形して、温度28℃、湿度78%に設定したホイロに入れて、30分間、一次発酵を行う。
4.上記工程3で得られた混捏物を1人前に分割する。
5.上記工程4で得られた混捏物を、蒸気室内に15分間静置して熟成させる。
6.上記工程5で得られた混捏物を、温度28℃、湿度78%に設定したホイロに入れて、20〜30分間、二次発酵を行う。これにより、実施例1の食品生地が完成する。
【0028】
7.上記工程6で得られた食品生地を、オーブン内で200〜220℃に加熱して焼成する。焼成時のオーブン内には、ボイラーで別途製造した220〜250℃の水蒸気を導入することによって、高温の水蒸気を充満させる。ただし、水蒸気が充満したオーブン内は常圧である。このように水蒸気存在下で焼成することによって、焼成中の食品生地の表面に水の被膜が生成するため、澱粉のβ化による食品生地の表面の硬化が抑制されると共に、食品生地の表面に水が付着するため、加熱食品のクラストに艶が出る。焼成時間は、上記工程6で得られた食品生地の質量に応じて4〜30分間の間で調整すればよい。
なお、本実施例では酵母として生イーストを用いたが、ドライイーストを用いてもよい。また、本実施例では小麦粉として強力粉を用いたが、薄力粉、中力粉を用いてもよい。
【0029】
また、本実施例においては小麦粉を添加して食品生地を製造したが、本発明の食品生地の製造方法によれば、小麦粉、塩、糖類、乳製品、油脂類、乳化剤等の一切の添加物を添加することなく、酵母の添加のみによって、風味のある食品生地及び加熱食品を製造することが可能である。
食品生地の材料の配合、及び、混捏工程において炊飯した穀物の各粒のうちペースト状とした割合を、表1,2に示すように変更した点を除いては、実施例1と全く同様にして実施例2〜4の加熱食品を製造した。そして、実施例2〜4の加熱食品の食感を評価した。結果を表2に示す。
【0030】
【表1】

【0031】
【表2】

【0032】
本実施例の加熱食品の食品生地は、炊飯した玄米を含む。炊飯した玄米中にはアミロペクチンが含まれているので、食品生地を製造する際に砂糖等を添加しなくても、自然な甘みを加熱食品にもたせることができる。
また、本実施例の食品生地の製造方法においては、混捏工程において小麦粉を添加しグルテンを形成させているため、加熱食品の食感をパン様とすることができる。
【0033】
さらに、本実施例の食品生地の製造方法においては、炊飯した玄米の20質量%をペースト状とする。そのため、本実施例の加熱食品は、ペースト状となった玄米に含まれるアミロペクチンが小麦澱粉中のα−アミロースを包みこむので、一般的な小麦粉を主原料とするパンで発生する加熱食品のパサつき感を抑えることができ、柔らかく、しっとりしてもちもちする食感を出すことができる。
【0034】
また、本実施例の加熱食品の食品生地は、塩、糖類、乳製品、油脂類、乳化剤等の添加物を含まない。特に、塩、糖類、油脂類の過剰摂取は生活習慣病の発症の原因の一つであることが知られている。そのため、本実施例の加熱食品は、塩、糖類、乳製品、油脂類、乳化剤等の摂取を控える必要がある者(例えば生活習慣病患者等)でも安心して食することができる。
さらに、本実施例の加熱食品は、和食、中華、洋食、エスニック等の様々な料理にもあう、新たな主食となり得るものである。
また、本実施例の加熱食品は、穀物として米を使用することにより、パンの代用品としてではなく、米の消費を拡大させる新しい食感をもつ新たな主食となり得るものである。
【0035】
(室温保存試験について)
表2に記載の実施例2の加熱食品を長期保存した後の状態を検討する室温保存試験を行った。
表3は、加熱食品を容器に入れて密封し、室温で保存した後の状態を示したものである。
【0036】
【表3】

【0037】
(室温保存試験の結果について)
本実施例の加熱食品の食品生地には、炊飯した玄米の20質量%がペースト状となって含まれており、80質量%が粒状のまま含まれているので、水分を多く含んだ穀物の各粒が加熱食品の保湿に貢献する。そのため、弾力及び水分を長期間保つことができる。
(冷凍保存試験について)
表2に記載の実施例2の加熱食品を用いて、冷凍保存した後の加熱食品の状態を検討する冷凍保存試験を行った。加熱食品を容器に入れて密封し、−20℃で緩慢冷凍した後に冷凍保存した。所定の期間冷凍保存したら、出力1800ワットの電子レンジ(パナソニック株式会社製、NE−1800)を用いて加熱して解凍し、解凍された加熱食品の状態を評価した。加熱は、加熱食品100gに対して20秒間行う。例えば、加熱食品が300gである場合には、60秒間行う。結果を表4に示す。
【0038】
【表4】

【0039】
(冷凍保存試験の結果について)
本実施例の食品生地の製造方法は、炊飯した玄米と小麦粉を混合して混捏している。その結果、α化された澱粉が小麦粉中のタンパク質を包むため、加熱食品は冷凍保存後でも、電子レンジで加熱し解凍することで、焼きたてと変わらない食感を有している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀物を炊飯する炊飯工程と、
前記炊飯工程において炊飯した穀物に酵母を混合し混捏する混捏工程と、
前記混捏工程において得られた混捏物を発酵させる発酵工程と、
を含むことを特徴とする食品生地の製造方法。
【請求項2】
前記混捏工程は、小麦粉、澱粉、米粉、白玉粉、長芋を乾燥させ粉末としたもの、ヤマトイモを乾燥させ粉末としたもの、ゲンコツイモを乾燥させ粉末としたもののうち1以上のものを添加して混捏することを特徴とする請求項1に記載の食品生地の製造方法。
【請求項3】
前記混捏工程は、前記炊飯した穀物の各粒の一部分をすり潰してペースト状とし、残部を粒状のまま残すように混捏し、前記炊飯した穀物の20〜40質量%をペースト状とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の食品生地の製造方法。
【請求項4】
前記炊飯工程は、前記穀物に対して1〜2.2質量倍の水を添加して炊飯することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の食品生地の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の食品生地の製造方法により製造された食品生地を加熱したことを特徴とする加熱食品。
【請求項6】
前記食品生地を水蒸気存在下で加熱したことを特徴とする請求項5に記載の加熱食品。

【公開番号】特開2011−217618(P2011−217618A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−87069(P2010−87069)
【出願日】平成22年4月5日(2010.4.5)
【特許番号】特許第4786753号(P4786753)
【特許公報発行日】平成23年10月5日(2011.10.5)
【出願人】(310003854)有限会社菜根譚農場 (1)
【Fターム(参考)】