説明

パン組成物

【課題】小麦粉に発芽玄米粉を添加し、良好な製パン性を得るパン組成物を開発する。
【解決手段】小麦粉に発芽玄米粉を添加した組成物において、発芽玄米粉の添加量に比例してパン製造時に膨張性が低下する性質を、酵素であるフィターゼおよびヘミセルラーゼを併用し、あるいは更に乳化剤であるシュガーエステルを添加することで改良することを可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能性付与を高め栄養価の高いパンを製造するために、小麦粉に発芽玄米を添加し、さらに製パン改良剤である酵素や乳化剤を添加することで製パン性を改良する発明に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、食生活が近代化されており、食品素材の多様化、簡便化が進んでいる。その中で、ガンや肥満、生活習慣病などが増加し、さらに食品添加物に対する安全性などが問題とされてきた。人々は、健康管理の保持増進を心がけるようになり、健康志向が高まった。日ごろの食生活を通じて健康を維持できるように、機能性食品や栄養が多く含まれている食材が注目されており、さまざまな健康食品が市販されている。
【0003】
玄米は白米に比べ機能性物質を多く持ち、栄養が豊富に含まれている。しかし、玄米は
調理がしにくく、消化吸収も悪く、おいしく炊き上げることができないものである。そこで、玄米の弱点を克服しさらに多くの栄養物質を増加させた発芽玄米が注目を浴びており、発芽玄米を用いた多種の加工品が売り出されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発芽玄米は玄米を24時間約30℃の水に浸漬し0.5〜1.0mmほど発芽させるだけで簡単に調製することができる。さらにγ−アミノ酪酸(GABA)、フェラル酸、イノシトール6リン酸(IP6)などの機能性物質、ビタミン、ミネラル、食物繊維も増加し、体内にも吸収されやすく、脳疾患や肌の老化予防、生活習慣病を改善すると報告されている。
【0005】
しかし、この発芽玄米を粉にして、日常よく食されているパンに利用することが望まれているが、玄米は小麦のようにタンパク質のグルテニンやグリアジンを含有していないのでグルテンを形成することができず、生地形成時に十分にガスを蓄えることができないため、小麦粉に添加しても良好な製パン性は得られない。また、玄米粉中に存在するヘミセルロースあるいはキレート作用を持つフィチン酸もパンの膨らみを阻害するため、製パン性が劣ることになる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発芽玄米粉を添加すると、小麦粉のみで製造したパンに比べ、比容積が小さくなり膨らみが不足する。改良剤として酵素を添加し、さらに乳化剤を添加することでパン生地を安定化することができることを特徴とする。
【0007】
本発明において添加する発芽玄米粉の量は、小麦粉に対して10%〜50%、好ましくは15%〜40%、更に好ましくは20%〜30%である。また発芽玄米粉の添加方法は、最初に小麦粉および調味料と所定量混合することが好ましい。
【0008】
本発明において使用する酵素としては、フィターゼおよびヘミセルラーゼが好適で、これらは2種類併用することが好ましい。本発明におけるフィターゼの添加量としては、粉100に対し50ppm〜300ppmであることが好ましく、更に好ましくは150〜200ppmである。また本発明におけるヘミセルラーゼの添加量としては、粉100に対し20ppm〜100ppmであることが好ましく、更に好ましくは40〜70ppmである。更にフィターゼおよびヘミセルラーゼの添加方法としては、最初に粉および調味料と所定量同時に混合することが好ましいが、水を加えて混錬する前であればいつでも、また別々に添加することが可能である。
【0009】
本発明において使用する乳化剤としてはシュガーエステルが好適に用いられる。またシュガーエステルの添加量としては、粉100に対し0.1〜1%であることが好ましく、更に好ましくは0.3〜0.8%である。更にシュガーエステルの添加方法としては、最初に粉および調味料と所定量同時に混合することが好ましいが、水を加えて混錬する前であればいつでも添加することが可能である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の効果を以下の実施例で説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0011】
(パンの製造方法)
小麦粉300gに砂糖18g、食塩4.5gをポリエチレンの袋に取り、左右に手動で50回混合した。これをミキサーに入れ、発芽玄米由来の酵母試料を15.0g加えた後、低速で混ぜながら蒸留水を加えた。捏ね上げ温度が26〜30℃になるように、室温と粉の温度と水温の和が40〜45℃になるように調節した。その後20分間低速でミキシングした。次いでこの試料を丸くしてボウルに移し、60分間発酵させた。(温度30℃、湿度85%)その後発酵生地中の炭酸ガスを出すのにパンチングをするため、ボウルから生地を取り出して麺棒を縦、横に転がしてから折りたたみ、再びボウルに移し30分間発酵させた。更にキャンバス布をかぶせ、室温で20分間置いた後、モルダーに2回かけた。(1回目;7.5mm、2回目;5.0mm)最後にパンケースに入れ、48分間発酵し(温度38℃、湿度90%)製造を行った。(温度200℃、20分間)出来上がったパンをパンケースから取り出し、室温で40分冷却した。
【0012】
(発芽玄米パンの製造方法)
小麦粉に発芽玄米粉を所定量添加して合計300gになるようにし、あとは上述の方法でパンを製造した。
【0013】
(比容積の測定方法)
パンの比容積の測定は、製造後、すぐにパンケースごと重量を測定し、あらかじめ測定しておいたパンケースの重量を差し引き、パンの重量W(g)を求めた。パンの体積V(cm3)は菜種置換法で求めた。菜種置換法とは、一定量の容器を用いて予め計量しておいた菜種を、製造後のパンを入れた同容器に移し、その容器からあふれ出した菜種の体積をメスシリンダーで測定することにより得られた体積をパンの体積とする方法である。
これらの結果から、以下に示す式により比容積E(cm3 /g)を求めた。
E(cm3/g)=V(cm3)/W(g)
【0014】
(実施例1、2)
発芽玄米粉と2種類の酵素を一緒に表1に示す量だけ添加した小麦粉を使ってパンを製造し、その比容積を測定した。その結果も表1に示す。
【0015】
(実施例3)
発芽玄米粉と2種類の酵素およびシュガーエステルと呼ばれる乳化剤を表1に示す量だけ添加した小麦粉を使ってパンを製造し、その比容積を測定した。その結果も表1に示す。
【0016】
(比較例1、2)
酵素、乳化剤を添加せず、小麦粉または小麦粉と発芽玄米粉を使ってパンを製造し、その比容積を測定した結果を表1に示す。
【0017】
(比較例3、4)
実施例2において、2種類の酵素を単独に表1に示す量だけ添加すること以外は実施例2とまったく同様にしてパンを製造し、その比容積を測定した。その結果も表1に示す。
【0018】
(比較例5)
実施例3において、2種類の酵素を添加せず乳化剤のみを表1に示す量だけ添加すること以外は実施例3とまったく同様にしてパンを製造し、その比容積を測定した。その結果も表1に示す。
【0019】
(比較例6、7)
実施例3において、酵素を2種類ではなく一種類のみ添加すること以外は実施例3とまったく同様にしてパンを製造し、その比容積を測定した。その結果も表1に示す。
【0020】
(比較例8)
実施例3において、乳化剤であるシュガーエステルの変わりにソルビタン脂肪酸エステルを添加すること以外は実施例3とまったく同様にして小麦粉を使ってパンを製造し、その比容積を測定した。その結果も表1に示す。
【0021】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
発芽玄米粉を添加した小麦粉に、フィターゼおよびヘミセルラーゼを添加することで膨張性が改良されたパン組成物。
【請求項2】
発芽玄米粉を添加した小麦粉に、フィターゼ、ヘミセルラーゼおよびシュガーエステルを添加することで膨張性が改良されたパン組成物。

【公開番号】特開2006−67904(P2006−67904A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−255428(P2004−255428)
【出願日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2004年3月5日 社団法人日本農芸化学会発行の「日本農芸化学会2004年度(平成16年度)大会講演要旨集」に発表
【出願人】(000205627)大阪府 (238)
【Fターム(参考)】