説明

パン類、麺類、菓子類向けブレンド用米粉

【課題】画期的に製パン性、製麺性、製菓特性を示すブレンド用米粉を提供する。
【解決手段】米粒、米粉の適当なアルカリ処理とその前後のタンパク質、損傷澱粉、非澱粉性糖類の分離、除去処理、操作により、従来の米粉に比べ粒径が非常に小さく、タンパク質、損傷澱粉及び非澱粉性糖類含量の非常に少ない画期的に製パン性、製麺性、製菓特性の優れた米粉が調製できる。本米粉をブレンド粉として用いた場合、従来の米粉に比べ格段に高品質の米粉含有パン類、麺類、菓子類を製造できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、従来の米粉に比べ格段に製パン性、製麺性、製菓特性の優れたアルカリ処理米粉とその製造方法に関するものである。更に詳しくは、本発明は、米粒、米粉の適当なアルカリ処理とその前後のタンパク質、損傷澱粉、非澱粉性糖類の分離、除去、処理、操作により、従来の米粉に比べ粒径が非常に小さく、タンパク質、損傷澱粉及び非澱粉性糖類含量の非常に少ない画期的に製パン性、製麺性、製菓特性の優れた米粉とその製造方法に関するものである。さらに本発明は、上記米粉を用いたパン類、麺類または菓子類の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、米は米飯として、粒食の用途が大部分であり、粉食用途としては団子、米菓、打物等の和菓子に限られ、小麦粉の様な広範囲の加工利用は行われてこなかった。しかしながら、最近、多量の損傷澱粉を出すことなく米を微粉砕する技術が開発され、米粉の広範囲の加工利用が可能になりつつある。
【0003】
しかしながら、これまでの検討は主に米粉の製粉方法の改善と得られた米粉をパン、麺、菓子に利用するための製パン法、製麺法、菓子製造法の改良について行われてきた。そして、具体的な開示例として、前者については特許文献1〜4があり、後者については、特許文献5〜19等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−287652号公報
【特許文献2】特開平5−68468号公報
【特許文献3】特開平11−32706号公報
【特許文献4】特開2000−175636号公報
【特許文献5】特開平5−15298号公報
【特許文献6】特開平5−268890号公報
【特許文献7】特開平6−7071号公報
【特許文献8】特開平7−184576号公報
【特許文献9】特開平11−346690号公報
【特許文献10】特開2001−169740号公報
【特許文献11】特開2001−327242号公報
【特許文献12】特開2002−95404号公報
【特許文献13】特開2003−158990号公報
【特許文献14】特開2004−65250号公報
【特許文献15】特開2005−73632号公報
【特許文献16】特開2006−129789号公報
【特許文献17】特開2006−136257号公報
【特許文献18】特開2007−135574号公報
【特許文献19】特開2010−104306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の技術によって米粉を色々な食品に添加した場合の製パン性、製麺性、菓子適性はかなり向上した。しかし、上記の技術を用いても米粉の添加により本来の小麦粉等の製パン性、製麺性、製菓適性がかなり低下してしまうのが現状である。そのため、米粉を用いて米粉の特徴を活かし小麦粉100%からのパン類、麺類、菓子類と同等かそれ以上の品質のこれらの食品が開発・製造されていない状況にある。
【0006】
このような状況から、小麦粉等にブレンドした場合に製パン性、製麺性、菓子適性を低下させない画期的な品質の米粉の製造技術が強く望まれていると共に、本米粉を用いた小麦粉製品並み又はそれ以上の品質で、且つ、米粉の良好な特徴が発揮された特徴的パン類、麺類、菓子類の製造技術と開発が強く求められている。
【0007】
そこで本発明の目的は、小麦粉等にブレンドした場合に、製パン性、製麺性、菓子適性を低下させない画期的な品質を有する米粉を製造できる新たな技術を提供することにある。さらに本発明は、本米粉を用いて、小麦粉製品並み又はそれ以上の品質を有し、且つ、米粉の良好な特徴が発揮された特徴的パン類、麺類および菓子類の新たな製造技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の問題を解決するために、米粉の調製法について鋭意研究し、さらに得られた米粉の粒径、損傷澱粉量、タンパク質含量、非澱粉性糖類量について研究した結果、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明は以下のとおりである。
[1]
(1)生米粒をアルカリ性水溶液とともに粉砕処理するか、または生米粒を粉砕した米粉をアルカリ性水溶液に浸漬処理し、処理後の米粉とアルカリ性水溶液とを分離する工程、
(2)分離した米粉をアルカリ性水溶液に浸漬処理し、処理後の米粉とアルカリ性水溶液とを分離する工程、但し、この工程は、1回または2回以上行う、
(3)得られた米粉を、任意に水洗及び/又は中和した後に、脱水及び/又は乾燥して米粉製品を得る工程
を含む米粉製品の製造方法。
[2]
工程(1)及び(2)で用いるアルカリ性水溶液は、それぞれ独立に
アルカリ濃度が、0.2〜1.5規定の範囲であり、かつ
生米粒または米粉の質量の6から10倍量である[1]に記載の製造方法。
[3]
工程(3)で得られた米粉を粉砕して微粉を得る工程をさらに含む[1]または[2]に記載の製造方法。
[4]
工程(2)のアルカリ処理の前後、または工程(3)の中和処理の前後で、タンパク質分解酵素または細胞壁溶解酵素を含有した溶液中で米粉を処理する工程をさらに含む[1]〜[3]のいずれかに記載の製造方法。
[5]
工程(3)で得られる米粉製品は、平均粒径が3.0μm以上20.0μm以下、損傷澱粉量が0.5質量%以上5.0質量%以下、タンパク質含量が0.01質量%以上1.0質量%以下で、且つ、非澱粉性糖類が1.0質量%以上2.0質量%以下である[1]〜[4]のいずれかに記載の製造方法。
[6]
平均粒径が3.0μm以上20.0μm以下、損傷澱粉量が0.5質量 %以上5.0質量%以下、タンパク質含量が0.01質量%以上1.0質量%以下で、且つ、非澱粉性糖類が1.0質量%以上2.0質量%以下である米粉製品。
[7]
平均粒径が4.0μm以上10.0μm以下、損傷澱粉量が0.8質量%以上3.0質量%以下、タンパク質含量が0.1質量%以上0.5質量%以下で、且つ、非澱粉性糖類が1.2質量%以上1.9質量%以下である[6]に記載の米粉製品。
[8]
平均粒径が5.0μm以上7.0μm以下、損傷澱粉量が1.0質量%以上2.5質量%以下、タンパク質含量が0.15質量%以上0.2質量%以下で、且つ、非澱粉性糖類が1.3質量%以上1.8質量%以下である[6]に記載の米粉製品。
[9]
パン類、麺類または菓子類の原料へのブレンド用である[6]〜[8]のいずれかに記載の米粉製品。
[10]
パン類またはケーキ類の原料へのブレンド用である[6]〜[8]のいずれかに記載の米粉製品。
[11]
[1]〜[5]のいずれかに記載の方法により製造した米粉製品または[6]〜[8]のいずれかに記載の米粉製品を、他のパン類、麺類または菓子類用原料と併用して、パン類、麺類または菓子類を製造することを含む、パン類、麺類または菓子類の製造方法。
[12]
[1]〜[5]のいずれかに記載の方法により製造した米粉製品または[6]〜[8]のいずれかに記載の米粉製品を、原料総質量の5〜60%の範囲で他のパン原料と併用して、パン類を製造することを含む、パン類の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、米粒、米粉の適当なアルカリ処理とその前後のタンパク質、損傷澱粉、非澱粉性糖類の分離、除去処理、操作により、従来の米粉に比べ粒径が非常に小さく、タンパク質、損傷澱粉及び非澱粉性糖類含量の非常に少ない画期的に製パン性、製麺性、製菓特性の優れた米粉が調製できる。さらに、この米粉を用いることによって小麦粉製品並み又はそれ以上の品質で、且つ、米粉の良好な特徴が発揮された特徴的パン類、麺類、菓子類を提供することができる。
【0011】
本発明のパン類、麺類、菓子類ブレンド用米粉によれば、本発明の米粉を添加した生地の製パン性、製麺性、菓子適性を飛躍的に改善することができる。この効果は主に本発明の米粉が従来の米粉に比べ非常に小さな粒径、非常に少ないタンパク質、損傷澱粉及び非澱粉性糖類含量を示すことがその理由である。これにより、市販強力粉、準強力粉、薄力粉からのそれぞれパン類、麺類、菓子類と同等かそれ以上の高品質の各種パン類、麺類、菓子類を米粉添加生地を用いて製造することが可能になる。その結果、従来外麦強力粉、準強力粉、薄力粉を主に用いて製造されていたパン類、麺類、菓子類を国内産、地域産の米粉を多く使用して製造することが可能になり、従来粒食に限られていた国内産米の粉食消費の拡大に多大の寄与が期待される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[米粉製品の製造方法]
本発明の米粉製品の製造方法は、以下の工程(1)〜(3)を含む。
(1)生米粒をアルカリ性水溶液とともに粉砕処理するか、または生米粒を粉砕した米粉をアルカリ性水溶液に浸漬処理し、処理後の米粉とアルカリ性水溶液とを分離する工程、
(2)分離した米粉をアルカリ性水溶液に浸漬処理し、処理後の米粉とアルカリ性水溶液とを分離する工程、但し、この工程は、1回または2回以上行う、
(3)得られた米粉を、任意に水洗及び/又は中和した後に、脱水及び/又は乾燥して米粉製品を得る工程
【0013】
工程(1)
工程(1)では、生米粒をアルカリ性水溶液とともに粉砕処理するか、または生米粒を粉砕した米粉をアルカリ性水溶液に浸漬処理する。米原料の種類は特に限定は無く、例えば、粳種、糯種、長粒種、中粒種、短粒種など種々のものが使用できる。また、米粒は、通常精米が使用され、例えば、70〜90質量%の精米歩合のものを使用することができる。70〜90質量%の精米歩合のものを使用することで、アルカリ処理の効果が首尾良く発揮され、望ましい特性の米粉を効率的に調製することができるという利点がある。
【0014】
アルカリ性水溶液としては、例えば、NaOH水溶液が用いられるがそれに限定されるものではない。食品製造に使用可能なアルカリ性の物質溶液でNaOH水溶液と同様の塩基度、効果を発揮するアルカリ物質の水溶液であればいずれのも使用することができる。アルカリ物質としては、Na、K、Caなどのアルカリ金属、アルカリ土類金属の水酸化物や炭酸塩等いずれも用いることができる。米粒をアルカリ性水溶液に浸漬して米粉を調製する場合は、浸漬処理した米粒を水挽き方式の粉砕機(グラインダー方式粉砕機、石臼製粉機、胴搗粉砕機等)を用いて粉砕する。生米粒を粉砕した米粉をアルカリ性水溶液に浸漬処理する場合には、事前に、生米粒を乾式または湿式粉砕し、得られた米粉をアルカリ性水溶液に浸漬処理する。
【0015】
アルカリ性水溶液としては、例えば、0.5質量%(1.25規定)以下、好ましくは0.1(0.25規定)から0.3質量%(0.75規定)のNaOH溶液相当の塩基度のアルカリ水溶液を用いる。上記濃度範囲のアルカリ性水溶液を用いることで、米粉の澱粉が糊化することなく、タンパク質、損傷澱粉、非澱粉性糖類が容易に除去されるというという利点がある。このアルカリ性水溶液中に、米粒または米粉を、1℃から40℃の温度範囲、好ましくは3℃から10℃の範囲で8から24時間好ましくは10から15時間浸漬することで行うことができる。この範囲の温度及び時間とすることで、本発明の所望の米粉を得ることができる。米粒または米粉のアルカリ処理用のアルカリ性水溶液の量は、米粒または米粉に対して6から10倍量、好ましくは7から9倍量である。この範囲の量とすることで、本発明の所望の米粉を得ることができる。但し、アルカリ処理効果が十分に発揮できる割合であれば、温度、時間及び量には、特に制限はない。
【0016】
浸漬処理後、遠心分離、デカンテーション等の操作でアルカリ性水溶液の上清を除去する。
【0017】
工程(2)
工程(2)では、工程(1)で分離した米粉を、再度、アルカリ性水溶液に浸漬処理し、処理後の米粉とアルカリ性水溶液とを分離する。アルカリ性水溶液への浸漬処理は、工程(1)と同様の条件で実施してもよいし、工程(1)と異なる条件で実施してもよい。但し、このアルカリ性水溶液のアルカリ度や浸漬温度、時間及び量は、工程(1)の説明を参照することができる。浸漬処理後の分離は、遠心分離、デカンテーション等の操作によって上清のアルカリ水溶液を除去することが行う。工程(2)では、このアルカリ性水溶液への浸漬および分離を1回または2回以上行う。2回以上行う場合、繰り返しの回数は、米粉のアルカリ処理の度合い等を考慮して、適宜決定することができ、例えば、10回までの範囲で実施できる。但し、上限は10回に限定される意図ではない。必要により10回を超える回数のアルカリ性水溶液への浸漬および分離を実施することもできる。繰返し操作におけるアルカリ性水溶液への浸漬条件や分離条件は、各回同一でも異なってもよい。
【0018】
工程(3)
工程(3)では、工程(2)で分離した米粉を、脱水及び/又は乾燥して米粉製品を得る。脱水及び/又は乾燥前には、任意で、水洗及び/又は中和をすることもできる。中和処理に使用する酸は食品用に利用できる酸であれば特に限定はなく、例えば、塩酸、硫酸、亜硫酸などの無機酸や酢酸、乳酸、クエン酸などの有機酸やこれらの塩の単独もしくは2種以上組み合わせて用いることができる。中和処理後の水洗は、通常大過剰の水を加えた後、中和処理した米粉混合液を良く混合し、遠心分離、デカンテーション等の操作によって、上清の分離と脱水を行う。中和処理後の水洗は、一回でも目的を達成できるが、好ましくは中和処理によって生成する塩類、可溶性タンパク質、非澱粉性糖類等を極力除去するため3回程度行うことが好ましい。
【0019】
上清の分離と脱水後の乾燥は、通常行われる乾燥法(通風乾燥、棚式乾燥、チューブドライヤー乾燥、ドラムドライヤー乾燥等)のいずれの方法も採用可能であるが、米粉の澱粉の糊化が起こらない50℃以下の温度で乾燥することが好ましい。
【0020】
上記のアルカリ溶液処理により、本発明が目的とする米粉製品の調製は可能であるが、より高品質の本発明の米粉を調製するためには、アルカリ、中和処理の前後でタンパク質分解酵素または細胞壁溶解酵素を含有した溶液中での処理が有効ある。この操作により、得られる米粉のタンパク質、非澱粉性糖類の含量を効率的に低下でき、得られる米粉の品質をより向上させることができる。これらの酵素処理は、原料米粒又はその粉砕した米粉に対して、アルカリ、中和処理の前後でタンパク質分解酵素又は細胞壁溶解酵素を含有した水溶液による浸漬処理を単独又は複数組み合わせて施すことが望ましい。本処理により米粒又は米粉中のタンパク質、非澱粉性糖類が首尾良く分解され、アルカリ浸漬、洗浄工程でより効率的にタンパク質、非澱粉性糖類が除去される。
【0021】
上記タンパク質分解酵素としては、例えば、各種酸性、中性又はアルカリ性プロテアーゼなどのタンパク質を分解する作用のある酵素すべてが包含されるが、タンパク質の除去効率向上にはエンド型プロテアーゼがより効果的である。これらの酵素は、混合して使用しても良く、また、目的の活性を持っていれば純粋酵素である必要は無く、粗酵素でも使用できる。タンパク質分解酵素水溶液による浸漬条件は、米粒又は米粉の平均粒径や粒度分布、アルカリ、中和処理の前後のどちらで酵素処理を行うかによってその条件は最適化する必要があるが、基本的には約0.005〜0.5%の酵素液に20〜50℃の範囲好ましくは25〜40℃の範囲で0.5〜24時間の範囲で、更に好ましくは3〜10時間の範囲で浸漬すれば良く、個々の条件を勘案し適宜最適条件を設定する。
【0022】
上記細胞壁溶解酵素としては、例えば、ペクチナーゼ、ヘミセルラーゼ、セルラーゼ、マセレーティング酵素などの植物細胞壁を溶解する作用のある酵素を用いる。これらの酵素は、混合して使用しても良く、また、目的の活性を持っていれば純粋酵素である必要は無く、粗酵素でも使用できる。細胞壁溶解酵素水溶液による浸漬条件は、米粒又は米粉の平均粒径や粒度分布、アルカリ、中和処理の前後のどちらで酵素処理を行うかによってその条件は最適化する必要があるが、基本的には約0.005〜0.5%の酵素液に20〜50℃の範囲好ましくは25〜40℃の範囲で0.5〜24時間の範囲で、更に好ましくは3〜10時間の範囲で浸漬すれば良く、個々の条件を勘案し適宜最適条件を設定する。
【0023】
タンパク質分解酵素または細胞壁溶解酵素を含有した溶液中での処理、水洗及び/又は中和の後、150メッシュのベントシーブなどにより篩別を行い、粗粒や細胞壁成分の除去を行い、その後乾燥という操作で米粉を調製することが好ましい。
【0024】
上記の方法によって、平均粒径が3.0μm以上20.0μm以下、損傷澱粉量が0.5以上質量%5.0質量%以下、タンパク質含量が0.01質量%以上1.0質量%以下で、且つ、非澱粉性糖類が1.0質量%以上2.0質量%以下である米粉製品が得られる。好ましくは、条件を上記で説明した範囲で調整することで、平均粒径が4.0μm以上10.0μm以下、損傷澱粉量が0.8質量%以上3.0質量%以下、タンパク質含量が0.1質量%以上0.5質量%以下で、且つ、非澱粉性糖類が1.2質量%以上1.9質量%以下である米粉製品が得られる。更に好ましくは、条件を上記で説明した範囲で調整することで、平均粒径が5.0μm以上7.0μm以下、損傷澱粉量が1.0質量%以上2.5質量%以下、タンパク質含量が0.15質量%以上0.2質量%以下で、且つ、非澱粉性糖類が1.3質量%以上1.8質量%以下である米粉製品が得られる。
【0025】
平均粒径は、主に、工程(1)における粉砕と工程(3)において任意に実施される篩別の条件によって制御できる。損傷澱粉量は、主に、工程(1)及び(2)における浸漬時間、及び処理後の米粉とアルカリ性水溶液とを分離する回数によって制御できる。タンパク質含量は、主に、工程(1)及び(2)における浸漬時間、及び処理後の米粉とアルカリ性水溶液とを分離する回数によって制御できる。非澱粉性糖類量は、主に、工程(1)及び(2)における処理後の米粉とアルカリ性水溶液とを分離する回数によって制御できる。
【0026】
本発明は、さらに、平均粒径が3.0μm以上20.0μm以下、損傷澱粉量が0.5質量%以上5.0質量%以下、タンパク質含量が0.01質量%以上1.0質量%以下で、且つ、非澱粉性糖類が1.0質量%以上2.0質量%以下である米粉製品を包含する。本発明の米粉製品は、好ましくは、平均粒径が4.0μm以上10.0μm以下、損傷澱粉量が0.8質量%以上3.0質量%以下、タンパク質含量が0.1質量%以上0.5質量%以下で、且つ、非澱粉性糖類が1.2質量%以上1.9質量%以下である。本発明の米粉製品は、さらに好ましくは、平均粒径が5.0μm以上7.0μm以下、損傷澱粉量が1.0質量%以上2.5質量%以下、タンパク質含量が0.15質量%以上0.2質量%以下で、且つ、非澱粉性糖類が1.3質量%以上1.8質量%以下である
【0027】
本発明の米粉製品は、平均粒径が3.0μm以上20.0μm以下であることで、市販の小麦粉の例えば約4分の1量を本米粉製品で置き換えて製造したパン類、麺類、または菓子類が、市販の小麦粉のみで製造したパン類、麺類、または菓子類と同等又はそれ以上の品質で、かつ米粉が持たらす良好な食感等の特徴が付与されるという利点がある。平均粒径が3.0μm未満になると、パン類、麺類、または菓子類の製造過程で本米粉に水分を加えて生地を形成する際にまとまりにくく、製造されたパン類、洋菓子の内相はつぶれ、製造された麺類の切断面が不規則な構造となるため、品質が非常に低下するという問題があり、20.0μmを超えると、製造されたパン類、洋菓子は十分に膨らまず、内相はつぶれて食感は粗くなり、風味も劣り、製造された麺類の切断面は粗くなり食感も粗くなるため、各種パン類、麺類、または菓子類の品質が非常に低下するという問題がある。本発明の米粉製品は、損傷澱粉量が0.5質量%以上5.0質量%以下であることで、例えば市販の小麦粉の約4分の1量を本米粉製品で置き換えて製造したパン類、麺類、または菓子類が、市販の小麦粉のみで製造したパン類、麺類、または菓子類と同等又はそれ以上の品質で、かつ米粉が持たらす良好な食感等の特徴が付与されるという利点がある。損傷澱粉量を0.5質量%未満にするためには、製造工程が複雑となってコストがかかるという問題があり、5.0質量%を超えると製造されたパン類、洋菓子は十分に膨らまず、内相はつぶれて食感と風味が劣り、製造された麺類の食味は劣るため、各種パン類、麺類、または菓子類の品質が非常に低下するという問題がある。本発明の米粉製品は、タンパク質含量が0.01質量%以上1.0質量%以下であることで、例えば市販の小麦粉の約4分の1量を本米粉製品で置き換えて製造したパン類、麺類、または菓子類が、市販の小麦粉のみで製造したパン類、麺類、または菓子類と同等又はそれ以上の品質で、かつ米粉が持たらす良好な食感等の特徴が付与されるという利点がある。タンパク質含量を0.01質量%未満にするためには、製造工程が複雑となってコストがかかるという問題があり、1.0質量%を超えると製造されたパン類、洋菓子は十分に膨らまず、内相はつぶれて食感と風味は劣り、製造された麺類の食味は劣るため、各種パン類、麺類、または菓子類の品質が非常に低下するという問題がある。本発明の米粉製品は、非澱粉性糖類が1.0質量%以上2.0質量%以下であることで、例えば市販の小麦粉の約4分の1量を本米粉製品で置き換えて製造したパン類、麺類、または菓子類が、市販の小麦粉のみで製造したパン類、麺類、または菓子類と同等又はそれ以上の品質で、かつ米粉が持たらす良好な食感等の特徴が付与されるという利点がある。非澱粉性糖類が1.0質量%未満にするためには、製造工程が複雑となってコストがかかるという問題があり、2.0質量%を超えると製造されたパン類、洋菓子は十分に膨らまず、内相はつぶれて食感と風味が劣り、製造された麺類の食味は劣るため、各種パン類、麺類、または菓子類の品質が非常に低下するという問題がある。
【0028】
なお、上記の方法によって得られたアルカリ処理米粉の平均粒径は、Sympatec社(ドイツ)のHELOS Particle Size Analysisを用いて水分含量12.0%から14.0%の範囲の試料を用いて測定される平均粒径の値と定義される。また、損傷澱粉量は、乾物試料ベースでメガザイム社(アイルランド)のstarch damage assay kitを用いて測定される損傷澱粉量(質量%)と定義される。本米粉のタンパク質含量は、乾物試料ベースで標準ケルダール法で求めた値(%)と定義する。また、本米粉の非澱粉性糖類の含量は、乾燥試料ベースの値(%)であり、測定値は全乾物試料質量を100%とし、それから酵素法により求めた乾物試料ベースでの澱粉含量(質量%)と上記のタンパク質含量(%)を差し引いて求めた値(%)と定義する。
【0029】
乾物試料ベースでの試料中の澱粉含量の値(%)は以下のように測定した。試料0.1〜0.2gに50%エタノール水溶液を添加混合し上清を除去することによって低分子の糖を除去した。次に、十分量の水を添加したサンプルをほぼ100℃で3分間加熱し、完全に澱粉を糊化させた。このサンプルを冷却後グルコアミラーゼ剤(日本バイオコン株式会社製)を十分量添加し、37℃、2時間インキュベートし、澱粉を完全に分解した。この分解サンプルを適当な濾紙で濾過し濾液中のグルコース量をグルコース測定キットを用いて測定した。得られたグルコース量から以下の式によって乾物試料当たりの澱粉含量(%)を計算によって求めた。
【0030】
乾物試料当たりの澱粉含量(%)=グルコース量(g)×0.9/乾物試料質量(g)×100
本発明の米粉の特徴は、主に種々の穀物粉等(主に小麦粉)に本米粉をブレンドしたブレンド粉の製パン性、製麺性、製菓適性が従来の米粉に比べ格段に優れていることにある。この効果により、従来不可能であった米粉を利用した高品質で、且つ、米粉の良好な特徴を発揮した各種パン類、麺類、菓子類の製造が可能になる。したがって、本発明の米粉製品は、パン類、麺類、菓子類の原料へのブレンド用米粉として好適である。
【0031】
本発明は、上記本発明の方法により製造した米粉製品または本発明の米粉製品を、他のパン類、麺類または菓子類用原料と併用して、パン類、麺類または菓子類を製造することを含む、パン類、麺類または菓子類の製造方法を包含する。
【0032】
本発明のパン類、麺類、菓子類の製造方法では、本発明のブレンド用米粉に、その他の穀粉、かん粉、馬鈴薯澱粉、加工澱粉、油脂、糖類、食塩、乳製品、フルーツ、膨張剤、調味料、香料、乳化剤、イースト、イーストフード、酸化剤、還元剤、及び各種酵素類等の原料の全部または一部に、水、その他の物を加えて混合し製造された生地を蒸す、焼く、揚げる、煮る等の加熱調理をする。これによってパン類、麺類、菓子類を製造できる。
【0033】
他のパン類、麺類または菓子類用原料と併用する場合、本発明の米粉製品の併用割合は、例えば、10〜80%の範囲とすることが適当である。また、パン類、麺類及び菓子類の製造方法は、公知の方法をそのまま利用できる。
【0034】
本発明は、特に、本発明の方法により製造した米粉製品または本発明の米粉製品を、原料総質量の5〜60%の範囲で他のパン原料と併用して、パン類を製造することを含む、パン類の製造方法を包含する。米粉製品の併用量は、パン類の種類等により適宜決定できるが、好ましくは原料総質量の10〜40%の範囲である。
【0035】
例えば、食パン、イギリスパン、フランスパン、ハードロール、バターロール、マフィン、菓子パン、デニッシュペーストリー等のパン類、中華麺、冷麺、即席麺、乾燥パスタ、生パスタ、そば、素麺、うどん等の麺類、スポンジケーキ、シフォンケーキ、ホットケーキ、ロールケーキ、マドレーヌ、バームクーヘン、ドーナツ、シュークリーム、パイ、ビスケット、クッキー、クラッカー、スイートポテト、ういろう、ようかん、柏餅、饅頭、蒸しケーキ等の菓子類が包含される。これらの食品の中で、本発明の米粉の良好な特性がより発揮されるのはパン類、ケーキ類であり、特に、パン類でより効果的に本発明の効果が発揮される。
【実施例】
【0036】
次に第1〜4表に示す試験例(比較例、参考例を含む)に基づいて本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0037】
[実施例1]
以下に示す方法により、本発明の米粉製品を調製した。これらの米粉製品は実施例2〜5に使用した。
【0038】
アルカリ処理米粉A:
精米した粳米の米粒200gに4℃に冷却した0.5%のNaOH溶液(質量%)1000mlを添加し、20℃前後で、12時間放置する。次に、水挽き方式の粉砕機で米粒を粉砕する。得られた米粉懸濁液を遠心分離し、上清のアルカリ溶液を除去する。遠心分離後の米粉沈殿物に0.5%のNaOH溶液(質量%)1000mlを添加し良く混合し20℃前後で、12時間放置し、遠心分離後上清のアルカリ溶液を除去する。次に、蒸留水1000mlを米粉沈殿物に添加し塩酸でpH7前後になるように中和処理する。この米粉懸濁液を同様に遠心分離し上清を除去する。この水洗操作を更に2回繰り返す(2回目以降は中和処理無し)。最後の水洗を終了した米粉沈殿は150メッシュの篩で篩別し、粗粒や細胞壁成分の除去を行なう。最後に得られた米粉沈殿物を40℃で通風乾燥後、乾燥粉末を乳鉢でマイルドに粉砕しアルカリ処理米粉Aを得た。アルカリ処理米粉Aの物性は以下のとおり。平均粒径15.3μm、損傷澱粉量1.1%、タンパク質含量0.60%、非澱粉性糖類1.5%。
【0039】
アルカリ処理米粉B:
粳米のA製粉(株)製気流製粉米粉200gに4℃に冷却した0.2%のNaOH溶液(質量%)を1600mlを添加し、12時間、4℃の低温庫で放置する。次に、上清のアルカリ溶液をデカンテーションにより除去する。この操作を同様に更に2回繰り返えす。次に、4℃に冷却した蒸留水を1600ml加え良く混合し、塩酸でpH7前後に中和処理を行う。その後同様に12時間、4℃の低温庫で放置し上清をデカンテーションにより除去する。蒸留水添加以降(中和処理は無し)の操作を同様に更に2回繰り返し、最後の米粉沈殿は、150メッシュの篩で篩別し、粗粒や細胞壁成分の除去を行なう。最後に得られた米粉沈殿物をアルカリ処理米粉Aと同条件で乾燥、粉砕しアルカリ処理米粉Bを得た。アルカリ処理米粉Bの物性は以下のとおり。平均粒径15.3μm、損傷澱粉量2.0%、タンパク質含量0.20%、非澱粉性糖類1.8%。
【0040】
アルカリ処理米粉C:
精米した粳米の米粒200gに4℃に冷却した0.5%のNaOH溶液(質量%)の1000mlを添加し、12時間、4℃の低温庫で放置する。次に、水挽き方式の粉砕機で米粒を粉砕する。得られた米粉懸濁液を遠心分離し、上清のアルカリ溶液を除去する。遠心分離後の米粉沈殿物に0.2%のNaOH溶液(質量%)溶液1000mlを添加し良く混合後12時間、4℃の低温庫で放置する。その後この米粉懸濁液を遠心分離し上清のアルカリ溶液を除去する。次に、この遠心分離後の米粉沈殿物に蒸留水1000mlを添加し良く混合し塩酸でpH7前後になるように中和処理する。更に、この米粉懸濁液に、0.1%濃度になるように中性プロテアーゼ(天野製薬株式会社製)を添加し良く混合し、35℃で3時間保持した。次にこの酵素処理米粉懸濁液をアルカリ米粉Aの調製の場合と同様に遠心分離し上清除去する水洗操作を3回繰り返す。最後に得られた米粉沈殿物をアルカリ処理米粉Aと同条件で篩別、乾燥後、ミルで米粉を微粉砕しアルカリ処理米粉Cを得た。アルカリ処理米粉Cの物性は以下のとおり。平均粒径5.5μm、損傷澱粉量2.4%、タンパク質含量0.20%、非澱粉性糖類1.8%。
【0041】
[実施例2]
第1表に示す配合で、実施例1で製造した本発明の米粉ブレンド粉について、以下に示す製パン条件のノータイム法で山型食パンを製造し、製パン性等の評価を行なった。ノータイム法とは、パンの原材料をすべて始めにミキサーに投入し最適ミキシング後、直ぐに分割、丸め、ベンチタイム(生地一定時間放置し休ませる操作)操作を行い、一次発酵を行わず直ぐに成型操作を行い、最終発酵を取って焼成する製パン方法のことである。この方法においては、用いる穀物粉の特性の違いが、パンの比容積を初めとする製パン適性の評価の善し悪しに反映されやすい特性を持っているので採用した。
【0042】
なお、本発明のすべての実施例、比較例において、配合は水分含量13.5%ベースの米粉ブレンド粉100に対する質量部で示した。すべての実施例の官能評価は、(独)農研機構・北海道農業研究センターの職員5人のパネラーによって、第1〜4表に示された項目について4段階評価(◎:非常に良好、○:良好、△:やや劣る、×:劣る)で行った。また、実施例2ではボリューム評価を数値化するため菜種置換法による比容積により評価を行った。比容積は焼成後常温で1時間冷却した後のパン1gあたりの容積(ml)を示した値である。比容積の値が大きいパンは概して内相と外観の評価も優れるため、製パン適性の評価項目として比容積は最も重要である。
【0043】
以下に製パン工程、製パン条件を示す。
・ミキシング:全原料をミキサーに入れ、ミキシングピーク時間後10秒程度後までミキシングする
・分割、丸め:生地量100gずつ手で分割、丸め
・べンチ :30℃、20分
・成型 :モルダー、シーターにて成型
・ホイロ :温度38℃、湿度85%、70分
・焼成 :200℃、25分
【0044】
【表1】

【0045】
1)アルカリ処理米粉A:平均粒径15.3μm、損傷澱粉量1.1%、タンパク質含量0.60%、非澱粉性糖類1.5%。
2)アルカリ処理米粉B:平均粒径15.3μm、損傷澱粉量2.0%、タンパク質含量0.20%、非澱粉性糖類1.8%。
3)アルカリ処理米粉C:平均粒径5.5μm、損傷澱粉量2.4%、タンパク質含量0.20%、非澱粉性糖類1.8%。
4)A製粉(株)米粉:酵素処理気流製粉米粉(現状で最も製パン性の優れた市販米粉)、平均粒径51.7μm、損傷澱粉量3.8%、タンパク質含量7.4%、非澱粉性糖類2.5%。
5)市販上新粉:B製粉(株)製上新粉、平均粒径81.8μm、損傷澱粉量11.8%、タンパク質含量6.9%、非澱粉性糖類2.5%。
6)市販凍結乾燥グルテン:H印小麦蛋白(北国フード株式会社製)。
7)製パン評価、製パン時生地状態、パンの外観、内相、食感、風味の評価基準は以下の通りである。
◎:非常に良好、 ○:良好、 △:やや劣る、 ×:劣る
なお、各評価項目の評価の主な基準は以下の通りである。
製パン時生地状態:生地の分割、丸め、成型時の生地物性が良好であり、作業中に生地がだれたり、べとついたりせずスムーズに製パン作業のできる生地を良好な生地状態と評価する。
外観:パンが均一に良く膨らんでいるか、パンの表面色が均一で良好であるか、パンの外観・形状がきれいかどうかを主な評価基準として評価する。
内相:パンの内相(キメ(パンの穴の部分)、マク(パンの穴の周りの膜の部分))か均一で膜が薄いかどうかで評価する。
食感:パンを食した時の米粉パン独特のモチモチ感があるかどうかで評価する。
風味:パンとして良好な食味、香りがあるかどうかで評価する。
【0046】
第1表の結果から、本発明の米粉ブレンド粉生地(試験例1:アルカリ処理米粉A25.5%,試験例2:アルカリ処理米粉B25.5%,試験例3:アルカリ処理米粉C25.5%)の製パン性は、従来の米粉ブレンド粉生地(比較例1:A製粉米粉25.5%,比較例2:市販上新粉25.5%)のそれに比べ全項目(製パン時生地状態、外観、内相、食感、風味)で非常に優れた結果を示した。特に、食感(モチモチ感)と内相が高く評価され、明らかに大きな比容積を示した。米粉を含まない市販強力粉100%の参考例1と比較しても、本米粉ブレンド粉生地で製作したパンの比容積は参考例1の比容積を上回り、他の官能評価の項目においても参考例1と同等かそれ以上であり、本発明の米粉の製パン性が非常に良好であることが判る。特に、試験例3(アルカリ処理米粉C25.5%)では、米粉を25.5%含有する生地にもかかわらず、比容積が最も大きく総合的に最も良好な製パン性を示した。
【0047】
以上の結果から、本発明の効果は明らかであり、本発明の米粉を用いることによって、従来の米粉添加パンに比べ飛躍的に高品質の米粉添加パンが得られ、その品質は市販強力粉のパン並みかそれ以上であることがわかる。
【0048】
[実施例3]
第2表に示すバターロール配合で種々の本発明の米粉ブレンド粉生地について、以下に示す製パン条件のノータイム法でバターロールを製造し、製パン性の評価を行なった。なお、ノータイム法の製法については、配合がバターロール配合になった以外実施例2と基本的に同様である。
【0049】
以下に製パン工程を示す。
・ミキシング:全原料をミキサーに入れ、ミキシングピーク時間後10秒程度後までミキシングする
・分割、丸め:生地量40gずつ手分割、丸め
・ベンチ :30℃、20分
・成型 :手でロール型に成型
・ホイロ発酵:38℃、湿度85%で生地が一定の大きさになるまで発酵
・焼成 :200℃、13分
【0050】
【表2】

【0051】
1)アルカリ処理米粉A:平均粒径15.3μm、損傷澱粉量1.1%、タンパク質含量0.60%、非澱粉性糖類1.5%。
2)アルカリ処理米粉B:平均粒径15.3μm、損傷澱粉量2.0%、タンパク質含量0.20%、非澱粉性糖類1.8%。
3)アルカリ処理米粉C:平均粒径5.5μm、損傷澱粉量2.4%、タンパク質含量0.20%、非澱粉性糖類1.8%。
4)A製粉(株)米粉:酵素処理気流製粉米粉(現状で最も製パン性の優れた市販米粉)、平均粒径51.7μm、損傷澱粉量3.8%、タンパク質含量7.4%、非澱粉性糖類2.5%。
5)市販上新粉:B製粉(株)製上新粉、平均粒径81.8μm、損傷澱粉量11.8%、タンパク質含量6.9%、非澱粉性糖類2.5%。
6)市販凍結乾燥グルテン:H印小麦蛋白(北国フード株式会社製)。
【0052】
7)製パン評価、製パン時生地状態、パンの外観、内相、食感、風味の評価基準は以下の通りである。
◎:非常に良好、 ○:良好、 △:やや劣る、 ×:劣る
なお、各評価項目の評価の主な基準は以下の通りである。
製パン時生地状態:生地の分割、丸め、成型時の生地物性が良好であり、作業中に生地がだれたり、べとついたりせずスムーズに製パン作業のできる生地を良好な生地状態と評価する。
外観:パンが均一に良く膨らんでいるか、パンの表面色が均一で良好であるか、パンの外観・形状がきれいかどうかを主な評価基準として評価する。
内相:パンの内相(キメ(パンの穴の部分)、マク(パンの穴の周りの膜の部分))か均一で膜が薄いかどうかで評価する。
食感:パンを食した時の米粉パン独特のモチモチ感があるかどうかで評価する。
風味:パンとして良好な食味、香りがあるかどうかで評価する。
【0053】
第2表の結果から、本発明の米粉ブレンド粉生地(試験例4:アルカリ処理米粉A27%,試験例5:アルカリ処理米粉B27%,試験例6:アルカリ処理米粉C27%)の製パン性は、バターロール製パン試験においても従来の米粉ブレンド粉生地(比較例3:A製粉米粉27%,比較例4:市販上新粉27%)に比べ全般に非常に良好な結果を示し、特に、食感(モチモチ感)が良好な評価となり、パンの大きさは明らかに大きくなった。市販準強力粉100%の参考例2と比較しても本発明の米粉添加生地の各項目の評価は、同等かそれ以上であり、本発明の効果が非常に大きいことが判る。特に、試験例6(アルカリ処理米粉C27%)は、米粉を27%含有する生地であるにもかかわらず、総合的に最も良好な製パン性を示した。
【0054】
以上の結果から、本発明の効果は明らかであり、本発明の米粉添加生地を用いることによって、バターロールのようなリッチな配合のパンにおいても、従来の米粉添加パンに比べ飛躍的に高品質の米粉添加パンが得られ、その品質は市販準強力粉のパン並みかそれ以上であることがわかる。
【0055】
[実施例4]
第3表に示す配合で、種々の本発明の米粉添加生地について、以下に示す方法で中華麺を製造し、生麺、ゆで麺の官能評価を行った。
【0056】
以下に中華麺の製造工程を示す。
・ミキシング:縦型ミキサー、低速1分、中低速7分
・ロール操作:荒延1回、ロール間隙 3.0mm
複合2回、ロール間隙 3.0mm
圧延1回目、ロール間隙 2.2mm
圧延2回目、ロール間隙 1.8mm
圧延3回目、ロール間隙 最終麺厚が1.4mmになるように調節
・切り出し :切刃20番、麺の長さ25cm前後
・ゆで :沸騰水中で約3分
なお、麺の評価は、生麺の場合切り出し直後、ゆで麺の場合ゆで直後にそれぞれ行った。
【0057】
【表3】

【0058】
1)アルカリ処理米粉A:平均粒径15.3μm、損傷澱粉量1.1%、タンパク質含量0.60%、非澱粉性糖類1.5%。
2)アルカリ処理米粉B:平均粒径15.3μm、損傷澱粉量2.0%、タンパク質含量0.20%、非澱粉性糖類1.8%。
3)アルカリ処理米粉C:平均粒径5.5μm、損傷澱粉量2.4%、タンパク質含量0.20%、非澱粉性糖類1.8%。
4)A製粉(株)米粉:酵素処理気流製粉米粉(現状で最も製麺性が良好と言われている市販米粉)、平均粒径51.7μm、損傷澱粉量3.8%、タンパク質含量7.4%、非澱粉性糖類2.5%。
5)市販上新粉:B製粉(株)製上新粉、平均粒径81.8μm、損傷澱粉量11.8%、タンパク質含量6.9%、非澱粉性糖類2.5%。
6)市販凍結乾燥グルテン:H印小麦蛋白(北国フード株式会社製)。
【0059】
7)製麺評価、色相、ホシの程度、食感、食味の評価基準は以下の通りである。
◎:非常に良好、 ○:良好、 △:やや劣る、 ×:劣る
なお、各評価項目の評価の主な基準は以下の通りである。
色相:鮮やかな黄色を示す生麺を良好、黒ずんでくすんだ生麺を劣ると評価する。
ホシの程度:細かい黒っぽいぶつぶつの少ない良好な生麺を良好と評価し、その逆を劣ると評価する。
食感:茹で麺に適度の弾力、硬さ、滑らかさ、モチモチ感のある茹で麺を良好と評価し、その逆を劣ると評価する。
食味:ほのかな米粉の風味、良好な中華麺の風味を示す茹で麺を良好と評価し、その逆を劣ると評価する。
【0060】
第3表の結果から、本発明の米粉ブレンド粉生地(試験例7:アルカリ処理米粉A27%,試験例8:アルカリ処理米粉B27%,試験例9:アルカリ処理米粉C27%)の中華麺製麺適性は、従来の米粉添加生地(比較例5:A製粉米粉27%,比較例6:市販上新粉27%)に比べ生麺の評価、茹で麺の食感(硬さ、弾力、滑らかさ、モチモチ感)、食味(米粉の風味、良好な中華麺の風味)が良好な評価であった。市販準強力粉100%の参考例3と比較しても本発明の米粉添加生地の製麺性は、同等かそれ以上であり、本発明の効果が非常に大きいことが判る。
【0061】
以上の結果から、本発明の効果は明らかであり、本発明の米粉添加生地を用いることによって、アルカリ麺の代表である中華麺においても、従来の米粉添加生地を用いた場合に比べ高品質の中華麺が得られ、その品質は市販準強力粉の中華麺並みかそれ以上であることがわかる。
【0062】
[実施例5]
第4表に示す配合で種々の本発明の米粉ブレンド粉生地について、以下に示す条件でスポンジケーキを製造し、スポンジケーキ適性評価を行なった。
【0063】
以下にスポンジケーキ製造工程、条件(オールインワンミックス法)を示す。なお、オールインワンミックス法とは、発泡性の高い乳化油脂を用いて簡便にガス泡を十分に包含した生地を作成し、簡便に良好な品質のスポンジを製造するスポンジケーキ製造法のことである。
ミキシング :ミキサーボールに粉以外の材料を入れ、ホイッパーを使い低速で30秒ミキシングする。次に、ミキサーボールに粉を一度に入れ生地比重が0.45±0.02になるまで中速でミキシングを行う。
生地の型入れ:生地を18cmの丸ケーキ型に350g入れ、空気抜きのため型を10cm位の高さから何度か落とし、台のうえで回転させる。
焼成 :ナショナルNE-F3オーブンにて天板を2枚ひいた160℃のオーブン45分焼成する。
冷却・保管 :焼き上がったら、15cmの高さから垂直に台の上に落とし、型から外して上向きに網にのせて約40分さまし、ポリエチレンの袋に2重に入れてシーラーでとめ、湿度70%、温度20℃で保管し、翌日官能評価を行う。
【0064】
【表4】

【0065】
1)アルカリ処理米粉A:平均粒径15.3μm、損傷澱粉量1.1%、タンパク質含量0.60%、非澱粉性糖類1.5%。
2)アルカリ処理米粉B:平均粒径15.3μm、損傷澱粉量2.0%、タンパク質含量0.20%、非澱粉性糖類1.8%。
3)アルカリ処理米粉C:平均粒径5.5μm、損傷澱粉量2.4%、タンパク質含量0.20%、非澱粉性糖類1.8%。
4)A製粉(株)米粉:酵素処理気流製粉米粉(現状で最も製菓適性が優れていると言われている市販米粉)、平均粒径51.7μm、損傷澱粉量3.8%、タンパク質含量7.4%、非澱粉性糖類2.5%。
5)市販上新粉:B製粉(株)製上新粉、平均粒径81.8μm、損傷澱粉量11.8%、タンパク質含量6.9%、非澱粉性糖類2.5%。
6)市販凍結乾燥グルテン:国産小麦蛋白(北国フード株式会社製)。
7)乳化油脂:メロディアップ(カネカ株式会社製)
【0066】
8)スポンジケーキ評価:スポンジケーキ生地調製時の状態、外観、色相、食感、風味、ボリュームの評価基準は以下の通りである。
◎:非常に良好、 ○:良好、 △:やや劣る、 ×:劣る
なお、各評価項目の評価の主な基準は以下の通りである。
スポンジケーキ生地調製時の状態:生地のホイップの時適度な粘度を示し、均一ガスを包含し適切な生地比重に短時間に到達する生地を調製時生地状態が良いと評価する。
外観 :スポンジケーキが均一に良く膨らんでいるか、スポンジケーキの表面色が均一で良好であるか、スポンジケーキの外観・形状がきれいかどうかを主な評価基準として評価する。
色相 :スポンジケーキをカットしたときの内面の色相が均一で色がスポンジケーキの色として適切であるかどうかで評価する。
食感 :スポンジケーキを食した時の米粉スポンジケーキ独特のモチモチ感、しっとり感があるかどうかで評価する。
風味 :スポンジケーキとして良好な食味、香りがあるかどうかで評価する。
ボリューム:一定条件で製造したスポンジケーキのボリュームを評価する。
【0067】
第4表の結果から、本発明の米粉ブレンド粉生地(試験例10:アルカリ処理米粉A27%,試験例11:アルカリ処理米粉B27%,試験例12:アルカリ処理米粉C27%)のスポンジケーキ製造適性は、従来の米粉添加生地(比較例7:A製粉米粉27%,比較例8:市販上新粉27%)に比べ全般に良好な結果を示した。特に色相と食感(モチモチ、しっとり感)が良好な評価であり、ケーキのボリューム大きさは明らかに大きかった。米粉を含まない市販薄力粉100%の参考例3と比較しても本発明の米粉添加生地のスポンジケーキ適性は、各項目において同等程度以上であり、本発明の効果が非常に大きいことが判る。特に、試験例12の本発明の米粉(アルカリ処理米粉C27%)を含有する生地のスポンジケーキ適性は、総合的に最も優れていた。
【0068】
以上の結果から、本発明の効果は明らかであり、本発明の米粉ブレンド粉生地を用いることによって、従来の米粉添加生地に比べ飛躍的に高品質の米粉添加のスポンジケーキが得られ、その品質は市販薄力粉のスポンジケーキ並であることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)生米粒をアルカリ性水溶液とともに粉砕処理するか、または生米粒を粉砕した米粉をアルカリ性水溶液に浸漬処理し、処理後の米粉とアルカリ性水溶液とを分離する工程、
(2)分離した米粉をアルカリ性水溶液に浸漬処理し、処理後の米粉とアルカリ性水溶液とを分離する工程、但し、この工程は、1回または2回以上行う、
(3)得られた米粉を、任意に水洗及び/又は中和した後に、脱水及び/又は乾燥して米粉製品を得る工程
を含む米粉製品の製造方法。
【請求項2】
工程(1)及び(2)で用いるアルカリ性水溶液は、それぞれ独立に
アルカリ濃度が、0.2〜1.5規定の範囲であり、かつ
生米粒または米粉の質量の6から10倍量である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
工程(3)で得られた米粉を粉砕して微粉を得る工程をさらに含む請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
工程(2)のアルカリ処理の前後、または工程(3)の中和処理の前後で、タンパク質分解酵素または細胞壁溶解酵素を含有した溶液中で米粉を処理する工程をさらに含む請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
工程(3)で得られる米粉製品は、平均粒径が3.0μm以上20.0μm以下、損傷澱粉量が0.5質量%以上5.0質量%以下、タンパク質含量が0.01質量%以上1.0質量%以下で、且つ、非澱粉性糖類が1.0質量%以上2.0質量%以下である請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
平均粒径が3.0μm以上20.0μm以下、損傷澱粉量が0.5質量 %以上5.0質量%以下、タンパク質含量が0.01質量%以上1.0質量%以下で、且つ、非澱粉性糖類が1.0質量%以上2.0質量%以下である米粉製品。
【請求項7】
平均粒径が4.0μm以上10.0μm以下、損傷澱粉量が0.8質量%以上3.0質量%以下、タンパク質含量が0.1質量%以上0.5質量%以下で、且つ、非澱粉性糖類が1.2質量%以上1.9質量%以下である請求項6に記載の米粉製品。
【請求項8】
平均粒径が5.0μm以上7.0μm以下、損傷澱粉量が1.0質量%以上2.5質量%以下、タンパク質含量が0.15質量%以上0.2質量%以下で、且つ、非澱粉性糖類が1.3質量%以上1.8質量%以下である請求項6に記載の米粉製品。
【請求項9】
パン類、麺類または菓子類の原料へのブレンド用である請求項6〜8のいずれかに記載の米粉製品。
【請求項10】
パン類またはケーキ類の原料へのブレンド用である請求項6〜8のいずれかに記載の米粉製品。
【請求項11】
請求項1〜5のいずれかに記載の方法により製造した米粉製品または請求項6〜8のいずれかに記載の米粉製品を、他のパン類、麺類または菓子類用原料と併用して、パン類、麺類または菓子類を製造することを含む、パン類、麺類または菓子類の製造方法。
【請求項12】
請求項1〜5のいずれかに記載の方法により製造した米粉製品または請求項6〜8のいずれかに記載の米粉製品を、原料総質量の5〜60%の範囲で他のパン原料と併用して、パン類を製造することを含む、パン類の製造方法。

【公開番号】特開2012−95535(P2012−95535A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−243123(P2010−243123)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度、経済産業省、「地域イノベーション創出研究開発事業」委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(501203344)独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 (827)
【出願人】(503308508)江別製粉株式会社 (7)
【出願人】(302024571)株式会社 山本忠信商店 (8)
【Fターム(参考)】