説明

パーアクセプター置換芳香族アニオンに基づくDUV、MUV及び光リソグラフィ用イオン性有機光酸発生剤

【課題】 新規な光酸発生剤(PAG)及びこれらのPAGを用いたリソグラフィ像形成の改良された方法を提供すること。
【解決手段】
光酸発生剤化合物Pは、光と相互作用するとプロトンを発生するカチオンを含むアンテナ基Pと、フッ素、又はホウ素のような半金属元素を含まない弱配位性のパーアクセプター置換芳香族アニオンを含むAとを含む。1つの実施形態において、そのようなアニオンは、以下の化合物4、5、6及び7
【化1】


を含み、式中、Eは、電子吸引性基を含み、プロトンの除去により芳香族性を生じる。Pは、光子との相互作用でプロトンと他の成分とに分解するオニウムカチオンを含む。Pは、有機カルコゲンオニウムカチオン又はハロニウムカチオンを含むことができ、カルコゲンオニウムカチオンは、他の実施形態において、オキソニウム、スルホニウム、セレン、テルル、又はオニウムカチオンを含むことができ、ハロニウムカチオンは、ヨードニウム、塩素又は臭素オニウムカチオンを含むことができる。新規化合物は、TPS CN5を含む。フォトリソグラフィ調合物は、光酸発生剤をフォトリソグラフィポリマーのようなフォトリソグラフィ組成物との組み合わせにおいて含む。調合物が基板上にあるときに、フォトリソグラフィ用放射光又はArF(193nm)若しくはKrF(248nm)放射光に露光し、現像する。生成物は、本発明の方法により製造される製品を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、パーアクセプター(peracceptor)置換芳香族アニオンに基づく光リソグラフィ用イオン性有機光酸発生剤(PAG)を含む。
【背景技術】
【0002】
半導体製造の分野において、光リソグラフィは、半導体デバイスのパターン形成において用いられる主要な手法である。典型的な従来技術のフォトリソグラフィプロセスにおいては、UV光が、特定の回路パターンを画定するマスクを通して、光感受性レジスト(フォトレジスト)の薄い層でコートされたシリコンウェハ上に投影される。UV光への露光と、その後のベーキングが、フォトレジストの露光領域の溶解度を変化させる光化学反応を引き起こす。その後、通常は塩基性水溶液である適当な現像剤を用いて、露光領域(ポジ型フォトレジスト)又は非露光領域(ネガ型フォトレジスト)のいずれかの中の光化学反応により影響を受けたフォトレジストの部分が選択的に除去される。このように画定されたパターンはその後、フォトレジストによって保護されていない領域を乾式又は湿式エッチングプロセスを用いてエッチングして除去することにより、シリコンウェハ上にインプリントされる。
【0003】
従来技術において用いられてきたフォトレジストの1つのタイプは、酸触媒を用いる化学増幅型フォトレジスト(CAR)である(非特許文献1、非特許文献2)。典型的な従来技術の化学増幅型フォトレジストは、例えば、キャスティング溶液中に酸感受性ポリマー及び光酸発生剤(PAG)を溶解させることによって調合される(非特許文献3、非特許文献4)。化学増幅型フォトレジストは、150−350nm波長の遠UV放射光(DUV)、及び、例えば350−450nm波長の中波長UV放射光(MUV)を含む比較的に短波長の放射光が用いられる場合に特に有用である。解像度を高め、それにより半導体デバイスの構造部のサイズを小さくするためには、典型的には、より短波長が好ましいが、所与のエネルギー線量では、より少ない光子しか照射されない。
【0004】
従って、UV放射光を用いる場合、フォトレジスト内で十分な光化学応答を得るためには、化学増幅型フォトレジストを用いない限り、より高い照射線量が典型的には必要とされる。化学増幅型フォトレジストにおいては、ベース・ポリマーの酸感受性は、酸感受性の側鎖基がポリマー骨格に結合していることにより存在する。PAGは、光との相互作用によって分解するときに酸を形成する非酸性分子を含む。従って、酸は、レジストの照射領域においてのみ形成される。ポジ型フォトレジストをこのような露光後に加熱した場合には、発生した酸は、酸感受性の側鎖基の触媒的開裂を引き起こす。このような様式で発生した単一の酸触媒分子が多数の側鎖基の開裂を可能にすることができるので、それゆえ、必要とされる光化学応答のために、より少ない照射線量が許容される。
【0005】
イオン性PAGは、一般式Pを有し、Pは光が照射されるとプロトン(H)に分解し、一方、Aは変化せずに酸Hを形成する。従って、効率的なPAGにおいて、Pは当該光子を高度に吸収し、一方、Aは、光子相互作用に対して幾分不活性である。ArFレーザ源(193nm)が比較的低強度であること、及びArFフォトレジスト内の酸不安定部分の結合エネルギーが比較的高いことから、高い感受性で強いブレンステッド酸を生成することができるPAGは、工業用リソグラフィにおいてそのような化学増幅を実現させるために好ましい酸を含む。PAGの酸強度を増大させる従来の方法は、カルボン酸(R−COOH)ではなくスルホン酸(R−SOH)を用いること、及び酸部分に隣接するR基に強い電子吸引性置換基を結合することである。この目的を達成する最も単純な方法は、Rとしてパーフルオロ置換されたアルキル基を用いることであり、この場合、フッ素は強い電子受容体として作用する。従って、パーフルオロアルキルスルホネート(PFAS)、より具体的にはパーフルオロオクチルスルホネート(PFOS)又はパーフルオロブタンスルホネート(PFBuS)のようなフッ素含有アニオンAを有するオニウム塩が、ひとつには強酸を発生させるという理由で、ArFフォトレジスト系において光酸発生剤を構成する。
【0006】
そのような市販のPAGの例としては、例えば、ノナフルオロブタンスルホン酸トリフェニルスルホニウム(1、「TPS PFBuS」)又はノナフルオロブタンスルホン酸ビス(4−t−ブチル−フェニル)ヨードニウム(2、「DTBPIO PFBuS」)が含まれる。
【化1】

【0007】
近年、マイクロエレクトロニクス産業において、PFOS及びPFASのようなパーフルオロ化炭素(PFC)の使用を制限する要望がある。それゆえ、リソグラフィプロセスの性能に悪影響を与えることなく用いることができる代替の光酸発生剤を見出すことが要望されている。ひとつには、この要望は、PFCの生物分解性が限られているため、パーフルオロアルキルスルホン酸を発生させるPAGを用いる製造場所から出る廃水を浄化することが困難であるといった、環境的影響についての懸念が高まっていることに起因する。インターネット(非特許文献5)にも、パーフルオロ化炭素に基づくPAGの使用に関する環境問題を取り扱っている。加えて、耐エッチング性及びリソグラフィ像形成プロセスの他の側面を改良するために、フォトレジスト中のフッ素含有量を最小化するか又は排除することが要望されている。
【0008】
パーフルオロ化炭素含有光酸発生剤を用いないフォトレジスト調合物を開発するためにいくつかの試みがなされてきたが、PFOSを用いた調合物に匹敵する性能を達成することはほとんど成功していない。例えば、カンファースルホン酸TPS(3)は、そのアニオンA中にフッ素を有さない。しかしながら、対応する酸であるカンファースルホン酸は、パーフルオロアルキルスルホン酸ほど強くはなく、それゆえ、ArFレジストの脱保護、即ち、ポリマーに結合した酸不安定部分を開裂し、照射区域におけるレジストの溶解度の変化をもたらすのには適していない。
【化2】

【0009】
一般に、酸の強度は、対応するアニオンがプロトンを結合する能力に支配され、アニオンが弱配位性であるほど、酸は強くなる。R.P.Meagleyの特許文献1は、酸発生カチオンに会合したカルボランアニオンに基づく、フッ素を含まないPAGを開示する。しかしながら、そこで提案されたカルボラン化合物のようなホウ素含有物質の、チップ製造におけるリソグラフィ後のステップ(例えば、エッチング)に対する影響は、現時点では知られていない。
【0010】
関連技術
以下の参考文献は、関連技術の教示を含む。
非特許文献1
非特許文献2
非特許文献3
非特許文献5
R.P. Meagley、特許文献1(2007年)
非特許文献6
非特許文献7
非特許文献8
非特許文献9
O. Webster、特許文献2
非特許文献10
S. Ebata, et al.、特許文献3(2005年)
E. Yoneda, et al.、特許文献4(2007年)
Glodde、米国特許出願第11/970827号、2008年1月8日出願
【0011】
Ebata, et al.(上記)(特許文献3)及びYoneda, et al.(上記)(特許文献4)は、
【化3】

を含む基を含有するPカチオンを記載し、式中、Arは、一般的置換基で置換され得るアリール基を表す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許番号第7,192,686号
【特許文献2】米国特許番号第3,853,943号
【特許文献3】米国特許番号第6,908,722号
【特許文献4】米国特許番号第7,217,492号
【特許文献5】米国特許出願公開第2006/0216643A1号
【特許文献6】米国特許第7,087,356号
【特許文献7】米国特許第7,063,931号
【特許文献8】米国特許第6,902,874号
【特許文献9】米国特許第6,730,452号
【特許文献10】米国特許第6,627,391号
【特許文献11】米国特許第6,635,401号
【特許文献12】米国特許第6,756,180号
【特許文献13】米国特許第4,855,017号
【特許文献14】米国特許第5,362,663号
【特許文献15】米国特許第5,429,710号
【特許文献16】米国特許第5,562,801号
【特許文献17】米国特許第5,618,751号
【特許文献18】米国特許第5,744,376号
【特許文献19】米国特許第5,801,094号
【特許文献20】米国特許第5,821,469号
【特許文献21】米国特許第5,948,570号
【特許文献22】米国特許第7,193,023号
【特許文献23】米国特許第7,232,640号
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】H. Ito、Adv.Polym. Sci.、2005年、第172巻、第37号
【非特許文献2】G. Wallraff、W. Hinsberg、Chem. Rev.、1999年、第99巻、p.1801
【非特許文献3】J. Crivello、J.Polym. Sci. Part A: Polym. Chem.、1999年、第37巻、p.4241
【非特許文献4】H. Ito、 C.G. Wilson、Polym.Eng.Sci.、1983年、第23巻、p.1012
【非特許文献5】インターネット<http://www.itrs.net>
【非特許文献6】R. Vianello、Z. Maksic、Tetrahedron、2005年、第61巻、p.9381
【非特許文献7】O. Webster、J. Am. Chem. Soc.、1966年、第88巻、p.4055
【非特許文献8】H.E. Simmons, et al.、J. Org. Chem.、1980年、第45巻、p.5113
【非特許文献9】C. Richardson、C. Reed、Chem. Commun.、2004年、p.706
【非特許文献10】R.D. Miller、A.F. Renaldo、H. Ito、J.Org. Chem.、1988年、第53巻、p.5571
【非特許文献11】Wayne Moreau著、「Semiconductor Lithography,Principles, Practices, and Materials」Plenum Press、1988年、第12章及び第13章
【非特許文献12】R. Vianello、J.F. Liebman、Z.B. Maksic、Chem. Eur. J.、2004年、第10巻、p.5751
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従って、上述のことから、リソグラフィ像形成、特にDUV(約150乃至約350nmの波長)、MUV(約350乃至約450nmの波長)又は可視光(約450nmより長い波長)を用いたリソグラフィ像形成のためのPAGにおいて、パーフルオロアルキルスルホン酸アニオンの代替となる弱配位性の純粋な有機アニオンを用いた、化合物、組成物及びプロセスが産業上必要とされていることが示される。
【0015】
従って、本発明は、関連技術を越える利点を提供する要求のみならず、フォトリソグラフィにおいて用いられるいくつかのPAGの副生成物の過剰に高いフッ素含有量といった、関連技術の1つ又は複数の上記又は他の制限及び欠点を実質的に除去する要求に対処する、化合物、組成物及びプロセスを提供する。以下に続く、明細書本文、特許請求の範囲、本開示の要約書、及び図面が、本発明の種々の特徴、目的及び利点、並びにそれらを実現し、入手する方法を記述するのみならず、それらは、発明を実施することによっても明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
これら及び他の利点を達成するために、かつ、本明細書中で具体化され、広範に記載されているような本発明の目的に従い、本発明は、新規のPAG及びこれらのPAGを用いた、光リソグラフィ又はDUV若しくはMUV照射を用いたリソグラフィのような、リソグラフィ像形成の改良された方法を含む。
【0017】
1つの態様において、本発明は、光と相互作用するとプロトンを発生する、パーアクセプター置換芳香族アニオンに弱配位するカチオンのオニウム塩を含む、フォトレジスト化合物、組成物およびプロセスを含む。本発明のいくつかの実施形態において、そのようなアニオンのプロトン化は、理論的に約−13乃至約−22の範囲のpKa計算値を示す、フッ素を含有しない超酸を形成する(非特許文献6)。得られたオニウムPAGは、フォトレジスト調合物に配合されると、ArF(193nm)又はKrF(248nm)DUV放射光に露光されたときに、優れた光学的透明度、熱安定性及びリソグラフィ性能を示す。
【0018】
これらのPAGは、フッ素、又はホウ素若しくは他の半金属元素を含まない超酸、即ち、硫酸より強い酸を発生させる。半金属元素はこの関連において、ホウ素に加えて、ケイ素、ゲルマニウム、砒素、セレン、アンチモン及びテルルを含む。更に、この新規なクラスのPAGは、酸発生カチオンをスルホン酸に基づかない弱配位性アニオンと組み合わせることにより、従来のものとは異なる純粋な有機PAGを創出する実現可能性を示す。
【0019】
この明細書に取り込まれる添付の図は、本明細書の詳細な説明と共に、種々の実施形態を更に例証し、本発明の種々の原理及び利点を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】PAGとしてポリ([N−(トリフルオロメチルスルホニル)メタクリルアミド]−コ(co)−[メタクリル酸2−メチル−2−アダマンチル]−コ−[5−メタクリロイルオキシ−2,6−ノルボルナンカルボラクトン])(「S1」)である化合物10及び塩基クエンチャ(quencher)としてN−ター(tert)−ブトキシカルボニル−ピロリジンを含むレジスト膜のArF(193nm放射光)露光から得られるリソグラフィパターンを含む。図1(a)は、245nmピッチ(2つの隣接ライン間の間隔として定義されるピッチサイズ、即ち、ライン及びその隣接スペースのサイズの合計)での75nmラインを示し、図1(b)は、560nmピッチでの75nmラインを示し、図1(c)は、BARC膜(AR40[Rohm&Haas Electronic materials]底面反射防止コーティング又はBARC)の上に像形成されたレジスト・ラインを有する、セクション(a)において示されるライン−スペース・アレイの断面SEM像を示す。
【図2】市販のDTBPIO PFBuS(2)及びDTBPIO CN5(11)を調合したESCAP(ポリ(4−ヒドロキシスチレン−コ−ターアクリル酸ブチル)65/35)レジストについての、KrF(248nm放射光)下でのコントラスト曲線を含む。
【発明を実施するための形態】
【0021】
これら及び他の利点を達成するために、かつ本明細書中で具体化され、広範に記載されている本発明の目的に従い、以下の詳細な実施形態は、種々の形態で具体化することができる開示された例を含む。本明細書で述べられる特定の化合物、組成物、プロセス及び構造の詳細は、特許請求の範囲の根拠、及び当業者が本発明をいずれかの新規かつ有用な方法で用いるための教示の根拠を含む。本明細書中に記述された用語、語句及び図面も、本発明をどのように行い使用するかの説明を与える。
【0022】
本発明は、光リソグラフィ又はDUV光子を用いたリソグラフィプロセスにおいて有用なポリマー組成物中に調合される、新規な光酸発生剤を含む。本発明の実施に際して、従来の材料、処理技術及び露光技術を利用することができるので、それゆえ、そのような従来の態様は本明細書中では詳細に述べず、例えば、適切なレジストポリマー、酸、塩基クエンチャ、溶媒、及び、例えば、光増感剤、溶解性改良剤又は界面活性剤のような随意の添加成分の選択は、従来の方法で行われる。
【0023】
関連技術における当業者であれば、ひとたび本開示を認識すれば、過度の実験をおこなうことなく、適切な調合物、コーティング及び露光技術を使用することができるはずである。
【0024】
1つの態様において、本発明は、フォトリソグラフィ像を形成するための方法を含み、この方法は、
a)元は水性アルカリ現像剤に不溶性であるが、加熱の補助により又はなしに、プロトンとの反応で可溶性となる、酸感受性像形成ポリマーと、
b)光子を照射されると分解して酸Hになる光酸発生剤Pと、
c)少量の塩基クエンチャと
を含むフォトレジスト調合物を形成すること、調合物を基板に塗布して処理基板を得、処理基板を可視光でパターン状に露光すること、フォトレジスト層の一部を選択的に除去して材料表面の一部を露出すること、及び、材料の露出部分をエッチング又はイオン注入し、それによりパターン形成された1つ又は複数の材料構造部を形成することを含み、ここで、Aは、フッ素又は半金属元素を含有しない、環式のパーアクセプター置換有機アニオンを含む。1つの実施形態において、そのようなアニオンAは、4、5、6又は7、すなわち
【化4】


のうちの少なくとも1つを含み、式中、Eは、電子吸引性基を含み、1つのプロトンの除去により芳香族性が生じる。1つの実施形態において、置換基Eは、シアノ(CN)、アルキル、アルキルオキシ、水素、ニトロ、アルキルカルボニルオキシ、アルキルオキシカルボニル、塩素、臭素、ヨウ素、アリール、アリールオキシ、アリールカルボニルオキシ、又はアリールオキシカルボニル基のうちの少なくとも1つを含むことができる。他の実施形態において、光酸発生剤PのAは、
【化5】


を含むことができ、式中、Eは、CN、COCH、CO、CO(CHOH、NO、又はHを含み、例えば、光酸発生剤PのAが、
【化6】


を含むアニオン8である。
【0025】
更なる実施形態において、光酸発生剤PのPは、カルコニウム(chalconium)カチオンRChを含むことができ、Chは、Te以外のカルコゲンを含む。1つの実施形態において、カルコゲンは、硫黄を含む。本発明の光酸発生剤は、いずれかの特定のカルコニウムカチオンに限定されない。1つの実施形態において、スルホニウムカチオン構造は、1つ又は複数のペンダント基R、R又はRの中に芳香族部分を含む。他の実施形態において、スルホニウムカチオン構造は、
【化7】


を含み、式中、それぞれのRは、独立して、H;直鎖、分岐鎖、第三級若しくは環式アルキル;直鎖、分岐鎖、第三級若しくは環式アルコキシ;無置換及び置換フェニル;無置換及び置換ナフチル;又は無置換及び置換フルオレニルのうちの少なくとも1つを含み、例えば、
【化8】


を含む。
【0026】
その他の実施形態において、スルホニウムカチオンR及びRは、H;直鎖、分岐鎖、第三級若しくは環式アルキル;直鎖、分岐鎖、第三級若しくは環式アルコキシ;無置換及び置換フェニル;無置換及び置換ナフチル;又は無置換及び置換フルオレニルのうちの少なくとも1つを含み、又は、R及びRは、ひとまとまりでC−C30直鎖又は分岐アルキレン(CH鎖を含む。Rは、Ar及びAr−CO−CH−のうちの少なくとも1つを含み、Arは、OH、分岐鎖、直鎖若しくは環式アルキル、又は分岐鎖、直鎖若しくは環式アルキルオキシのような一般的な置換基で随意に置換された、アリール基を含む。1つの実施形態において、カチオンは、フッ素を含まないカチオンを含む。それらの化合物の1つの例は、
【化9】


を含む。
【0027】
更なる実施形態において、Pは、ハロニウムイオンRを含み、Xは、塩素、臭素又はヨウ素を含む。これらの化合物の1つの例において、Xは、ヨウ素を含む。本発明の光酸発生剤は、いずれかの特定のハロニウムカチオンに限定されないが、ヨードニウムカチオン構造及び他の構造のようなハロニウムイオンは、1つ又は複数のペンダント基R又はRの中に芳香族部分を含み、これは、随意に、H;直鎖、分岐鎖、第三級若しくは環式アルキル;直鎖、分岐鎖、第三級若しくは環式アルコキシ;無置換及び置換フェニル;無置換及び置換ナフチル;又は無置換及び置換フルオレニルを含む一般的な置換基で更に置換され、例えば、
【化10】


である。
【0028】
この関連でのフォトレジスト組成物は、エチレン骨格を含むポリマーを含み、例えば、ポリマーは、ビニル、アクリレート及び/又はメタクリレートモノマー単位を含む。ポリマーの骨格は、不飽和炭素結合を有さない骨格を含む。一般に、本発明のフォトレジスト組成物は、いずれかの特定の像形成ポリマーに限定されない。1つの実施形態において、像形成ポリマーは、193nm(ArF)リソグラフィに用いるのに適したものである。他の実施形態において、像形成ポリマーは、248nm(KrF)リソグラフィ、又はDUV若しくはMUVリソグラフィに用いるのに適している。
【0029】
像形成ポリマーは、ポジ型又はネガ型のいずれであってもよく、1つの実施形態において、フォトレジスト組成物をUV光に露光すると化学変換を起こすことができ、それにより露光領域又は非露光領域のいずれかにおいてポリマーの溶解度の差異が生じるようなポリマーを含む。すなわち、本発明に用いられるベース・ポリマーは、本発明の光酸発生剤によって発生する酸の存在下で触媒的開裂を起こすことができる酸感受性側基を有する、いずれかの酸感受性ポリマーを含むことができる。1つの実施形態において、ポリマーは、感受性側基のうちの少なくとも1つが多環式側基を含有するものを含む。
【0030】
以前述べたように、ポリマーの酸感受性側基は、ラクトン部分を含むこともでき、又は当該分野で周知の従来の種々の酸不安定保護基で保護されることもできる。そのような保護基は、高い活性化エネルギーを必要とする基(例えば、tert−ブチルエステル又はtert−ブチルカルボニル基)、低い活性化エネルギーを必要とする基(例えば、アセタール、ケタール、又はシリルエーテル)、又は両方の組み合わせを含む。別の実施形態において、像形成ポリマーは、ポリ([N−(トリフルオロメチルスルホニル)メタアクリルアミド]−コ−[メタクリル酸2−メチル−2−アダマンチル]−コ−[5−メタクリロイルオキシ−2,6−ノルボルナンカルボラクトン])(「S1」)、ポリ([メタクリル酸2−メチル−2−アダマンチル]−コ−[5−メタクリロイルオキシ−2,6−ノルボルナンカルボラクトン](「MADMA−NORLAC」)、及び、248nm(KrF)放射光が用いられる実施形態の場合、ポリ(4−ヒドロキシスチレン−コ−アクリル酸tert−ブチル)(65/35)(「ESCAP」)を含む。
【0031】
像形成ポリマーは、1つの実施形態において、フォトレジスト組成物を可視光、DUV、又はMUV放射光に露光すると化学変換を起こすことができ、それにより露光領域又は非露光領域のいずれかにおいてポリマーの溶解度の差異が生じる。本発明に用いられるベース・ポリマーは、本発明の光酸発生剤によって発生する酸の存在下で触媒的開裂を起こすことができる酸感受性側鎖を有する、いずれかの酸感受性ポリマーを含む。像形成ポリマーは、ポジ型像形成ポリマー又はネガ型像形成ポリマーのいずれであってもよい。そのようなポリマーにおいて、酸感受性は、ポリマー骨格に結合した酸感受性側鎖が存在することにより、存在する。酸感受性側鎖を含むそのような酸感受性ポリマーは、従来的であり当該分野において周知である。1つの実施形態において、像形成ポリマーは、193nm(ArF)リソグラフィにおける使用に適している。
【0032】
他の実施形態において、酸感受性ポリマーの酸感受性側鎖は、当業者に周知の種々の酸不安定保護基で保護される。例えば、酸感受性側鎖は、t−ブチルエステル又はt−ブチルカルボニル基のような高活性化エネルギー保護基、アセタール、ケタール、又はシリルエーテルのような低活性化エネルギー保護基で保護することができ、又は低活性化エネルギー及び高活性化エネルギー保護基の両方の組み合わせを用いることもできる。1つの実施形態において、本発明の像形成ポリマーは、ラクトン部分、例えば、ペンダントのラクトン部分を含む。ラクトン部分を含む像形成ポリマーの例は、当該分野で周知である。例えば、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9、特許文献10、特許文献11及び特許文献12を参照のこと。
【0033】
本発明のフォトレジスト組成物は、1つの実施形態において、酸感受性ポリマーを溶解することができる溶媒を含む。そのような溶媒の実例としては、エーテル、グリコールエーテル、芳香族炭化水素、ケトン、エステルなどが挙げられるが、これらに限定されない。前述の溶媒の混合物を含む溶媒系も、本明細書において意図されている。適切なグリコールエーテルとしては、2−メトキシエチルエーテル(ジグライム)、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート(PGMEA)などが挙げられる。適切な芳香族炭化水素溶媒の例としては、トルエン、キシレン、及びベンゼンが挙げられる。ケトンの例としては、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノン、シクロヘプタノン、及びシクロヘキサノンが挙げられる。エーテル溶媒の例は、テトラヒドロフランであり、一方、乳酸エチル及びプロピオン酸エトキシエチルは、ここで用いることのできるエステル溶媒の例である。PGMEAは、これらの溶媒のうちの1つを含む。
【0034】
上記の成分に加えて、フォトレジスト組成物は、光増感剤、塩基、界面活性剤又は他の添加剤のような他の成分も含むこともできる。これらの他の成分の組合せ又は混合物を用いることができる(例えば、光増感剤と塩基)。
【0035】
随意の光増感剤は、193nm(ArF)リソグラフィにおける照射を吸収することができる発色団を含む増感剤を含む。そのような化合物の実例としては、9−アントラセンメタノール、クマリン、9,10−ビス(トリメトキシシリルエチニル)アントラセン、及びこれらの発色団を含むポリマーが挙げられるが、限定されない。これらの化合物のうち、1つの実施形態は、光増感剤として9−アントラセン−メタノールを含む。
【0036】
本発明で用いることができる随意の塩基クエンチャとしては、ベルベリン、水酸化セチルトリメチルアンモニウム、1,8−ビス(ジメチルアミノ)ナフタレン、水酸化テトラブチルアンモニウム(TBAH)、アミン、高分子アミン、N−ブトキシカルボニルで保護されたアミンなどが挙げられるが、限定されない。塩基クエンチャが本発明の化学増幅型フォトレジスト組成物と共に用いられる場合、1つの実施形態において、TBAHは、塩基クエンチャを含む。
【0037】
フォトレジスト組成物において用いることができる随意の界面活性剤は、本発明の化学増幅型フォトレジスト組成物のコーティングの均一性を改良することができるいずれかの界面活性剤を含む。実例として、3MのFC−430(登録商標)のようなフッ素含有界面活性剤、及びUnion CarbideのSilwet(登録商標)シリーズのようなシロキサン含有界面活性剤が挙げられる。
【0038】
本発明は、本発明の組成物を、金属導電体層、セラミック絶縁体層、半導体層又は製造プロセスの段階及び最終製品のための所望の材料に応じた他の材料を含むことができる材料表面を含む基板上に、パターン形成された材料の構造部を形成するために用いるプロセスも含む。本発明の化合物及び組成物は、半導体基板上での集積回路の製造に用いられるリソグラフィプロセスに特に有用である。リソグラフィプロセスにおいて用いられる本発明の化合物及び組成物は、集積回路デバイスにおいて用いることができるような、金属配線ライン、コンタクト又はビアのためのホール、絶縁区域(例、ダマシントレンチ又はシャロートレンチ分離)、キャパシタ構造体のためのトレンチ、トランジスタのためのイオン注入された半導体構造体などのような、パターン形成された材料層の構造体を作り出す。
【0039】
いくつかの場合において、底面反射防止コーティング(BARC)及び/又は下層コーティング(例えば、平坦化下層)をフォトレジスト層と材料表面との間に塗布することができる。いくつかの場合において、上部反射防止コーティング層をフォトレジスト層の上(即ち、フォトレジスト層の材料表面から遠位の側)に塗布することができる。本発明は、反射防止反射コーティング及び/又は下層材料の使用にも、又はそれらのコーティング若しくは材料の特定の組成にも限定されない。
【0040】
露光後、ポジ型フォトレジストの場合には放射光に露光されたフォトレジストの区域(又はネガ型フォトレジストの場合においては非露光区域)を選択的に溶解するアルカリ水溶液にフォトレジスト層を接触させることによって、所望のパターンを有するフォトレジスト構造体が得られる(現像される)。いくつかのアルカリ水溶液(現像剤)は、水酸化テトラメチルアンモニウムの水溶液を含む。基板上に得られたリソグラフィ構造体は、典型的にはその後乾燥され、残留現像剤が除去される。上部反射防止コーティングが用いられた場合、それは、このステップにおいて現像剤で溶解することができる。
【0041】
フォトレジスト構造体由来のパターンは、その後、当該分野で公知の技術を用いる適切なエッチャントによるエッチングによって基板の下層材料の露出部分に転写することができ、例えば、転写は、反応性イオンエッチングを含むか又は湿式エッチングによるものである。いったん所望のパターン転写が行われると、従来のストリッピング技術を用いて残留フォトレジストを除去することができる。或いは、パターンをイオン注入によって転写して、イオン注入された材料のパターンを形成することができる。
【0042】
本発明の化合物又は組成物が有用であり得る一般的なリソグラフィプロセスの例は、特許文献13、特許文献14、特許文献15、特許文献16、特許文献17、特許文献18、特許文献19、特許文献20及び特許文献21において開示される。パターン転写プロセスの他の例は、非特許文献11に記載される。本発明はいずれかの特定のリソグラフィ技術又はデバイス構造に限定されないことが理解される。
【0043】
1つの態様において、本発明は、以下の一般式Pのイオン性光酸発生剤(PAG)を含み、
I.Pは、光子と相互作用すると分解してプロトン及び他の成分とになるオニウムカチオンを表し、即ち、Pは、それぞれ一般式RCh又はRの、カルコニウムカチオン、例えば、有機オキソニウム、スルホニウム、若しくはセレン型オニウムカチオン、又は、ハロニウムカチオン、特にヨードニウムカチオンのようなオニウムカチオンを含み、R、R、Rは、脂肪族又は芳香族部分を表し、これらは無置換であってもよく、又は、アルキル、アリール、アルコキシ、アリールオキシ、ニトロ、アルキルオキシ若しくはアリールオキシ、塩素、臭素、若しくはヨウ素、又はアルキルカルボニルオキシ、アルコキシカルボニル、アリールカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニル基のような一般的置換基で置換されてもよく、Chは、化合物R、又はR、又はRSeの場合のように酸素、硫黄又はセレンを表し、Xは、塩素、臭素、又はヨウ素のようなハロゲンを表すが、特にヨウ素である。特定のスルホニウムイオンにおいては、R及びRは、H;直鎖、分岐鎖、第三級若しくは環式アルキル;直鎖、分岐鎖、第三級若しくは環式アルコキシ;無置換及び置換フェニル;無置換及び置換ナフチル;又は無置換若しくは置換フルオレニルのうちの少なくとも1つを含み、又は、R及びRは、C−C30直鎖又は分岐鎖アルキレン(CH鎖を含む。Rは、Ar及びAr−CO−CH−のうちの少なくとも1つを含み、Arは、OH、分岐鎖、直鎖若しくは環式アルキル、又は分岐鎖、直鎖又は環式アルキルオキシのような一般的置換基で随意に置換される、アリール基を含む。
【0044】
II.Aは、非常に強い有機酸の弱配位性アニオンを表す。一般的に、このようなアニオンは、電子吸引性基Eを有するパーアクセプター置換アニオンのような環式有機化合物を含み、このような環式構造のプロトン化により芳香族性が破壊される。このクラスの例は、アニオン4、5、6及び7、すなわち
【化11】


を含み、式中、Eは、強電子吸引性置換基、特にシアノ基CNを表す。少なくとも1つの置換基Eは、水素、アルキル、アルキルオキシ、アルキルオキシカルボニル、ニトロ又は塩素、臭素若しくはヨウ素を含むそれらに限定されないその他の基で表されてもよく、1つの実施形態において、化合物4は、
【化12】


を含む。
【0045】
アニオン4、5、6及び7を環上でプロトン化すると、それぞれ、対応する非芳香族酸4a、5a、6a及び7a
【化13】


が発生することになる。
【0046】
E=CNの場合の酸4a、5a、6a及び7aを計算すると(非特許文献6)、これらの全てが気相において約−13乃至約−22の範囲のpK値を有する超酸であることが示された。非特許文献7、非特許文献8、非特許文献9、O. Websterの特許文献2は、E=CNの場合の酸のアニオン4、即ち化合物8の合成及び特性を報告している。しかしながら、アニオン8を70%過塩素酸でプロトン化することは不可能であった(非特許文献7)。より最近になって、実験(非特許文献9)及び更なる理論計算(非特許文献12)が、アニオン4、5、6及び7のプロトン化が異なる様式で起こり得ることを示した。
【0047】
II.具体的に、本発明のPAGPは、
1.Pが、
a)
【化14】


を含むスルホニウムカチオン
b)
【化15】


を含むヨードニウムカチオン
を含み、
2.Aが、
「CN5」とも称される、
【化16】


を含む非常に強い酸のアニオンを含む、
化合物を含む。
【0048】
本発明は、2成分、3成分又は4成分の組合せのような本明細書に記載のPAGの組合せも含み、これらの組合せの中の個々のPAGは任意のモル量で存在することができ、例えば、1つのPAGが他のPAGに対して、等モル量から、約1.0mol対約0.001mol又は約1.0mol対約0.050molの範囲の量までのいずれかで存在することができる。
【0049】
同様に、本発明は、2成分、3成分又は4成分の組合せのような本明細書に記載のレジストポリマーの組合せも含み、これらの組合せの中の個々のポリマーは任意のモル量で存在することができ、例えば、1つのポリマーが他にポリマーに対して、等モル量から、約1.0mol対約0.001mol又は約1.0mol対約0.050molの範囲の量までのいずれかで存在することができ、かつ、(乾量基準で)約0.001gのPAG又はPAG混合物対約1gのレジストポリマー又はポリマーの組合せからのいずれかで、レジスト調合物中で使用される。
【実施例】
【0050】
以下の実施例は、本発明の実施形態を説明する。
【0051】
実施例1
【化17】


材料の合成(トリフェニルスルホニウムペンタシアノシクロペンタジエニド、10、[TPS CN5]):35mlジメトキシエタン中の0.45gのNaH(鉱物油中60%)にN下、0.91gのシアノ酢酸メチルを加えた。水素の発生が止んだら、文献(非特許文献9、非特許文献8)に従って調製した2.83gの2,3,5,6−テトラシアノ−1,4−ジチインを加えた。混合物を110℃で30分間撹拌し、続いて160℃まで加熱し、溶媒をエバポレートした。残留した少量の溶媒をオイルポンプ真空中で除去して、暗褐色の乾燥固体を形成した。この固体を100mLの水で溶解し、続いて5mLの濃HSOを加えた。暗褐色固体からの濾過により赤色溶液を得、10mLの6%次亜塩素酸ナトリウム水溶液を加えて脱色した。塩化トリフェニルスルホニウム(非特許文献10)水溶液の添加により黄色沈殿を得、これを濾過し、乾燥させ、アセトン/エーテルから再結晶した。TGAによるニート材料の熱安定性試験:200℃にて<1%質量減少、400℃にて〜5%質量減少。
【0052】
実施例2
【化18】


材料の合成(ビス(4−tert−ブチル−フェニル)ヨードニウムペンタシアノシクロペンタジエニド、11[DTBPIO CN5]):35mlジメトキシエタン中の0.45gのNaH(鉱物油中60%)に、N下、0.91gのシアノ酢酸メチルを加えた。水素の発生が止んだら、文献(非特許文献9、非特許文献8)に従って調製した2.83gの2,3,5,6−テトラシアノ−1,4−ジチインを加えた。混合物を110℃で30分間撹拌し、続いて、160℃に加熱し、溶媒をエバポレートした。残留した少量の溶媒をオイルポンプ真空中で除去して、暗褐色の乾燥固体を形成した。この固体を100mLの水で溶解し、続いて5mLの濃HSOを加えた。暗褐色固体からの濾過により赤色溶液を得、2mLの30%Hを加え、80℃で60分間加熱して脱色した。その後、溶液を室温に冷却して濾過し、過剰のHをNaSOで無効化し、その間、強酸pHを維持した。酢酸ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム水溶液の添加により黄色沈殿を得、これを濾過し、乾燥させ、アセトン/エーテルから再結晶した。
【0053】
実施例3
調合物及び膜の形成:1.5gのS1ポリマー、0.0606gのTPS CN5(10)及び0.004551gのN−tert−ブトキシカルボニル−ピロリジン(非露光領域に移動する酸をクエンチして像の品質を改善するために極少量で用いられる、塩基クエンチャ)を20.82gの酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGMEA)/シクロヘキサノン(7/3)中に含有するレジスト溶液を調製した。シリコンウェハを90nmのAR40(Rohm&Haas Electronic materials)(底面反射防止コーティング又はBARC、1500rpmでコートし、その後215℃で1分間ベーキング)でコートし、続いてレジスト溶液でコートした(1600rpm、その後110℃で1分間ベーキング)。得られた膜状レジストの膜厚は、200nmであった。
【0054】
実施例4
調合物及び膜の形成:10wt%ポリ(4−ヒドロキシスチレン−コ−アクリル酸tert−ブチル)(65/35;ESCAP)、0.4wt%TPS PFBuSと等モル量のビス(2,4,6−トリフルオロフェニル)ヨードニウムペンタシアノシクロペンタジエニド(DTFPIO CN5)、10、及び水酸化テトラブチルアンモニウム(TBAH、塩基クエンチャ)の酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGMEA)溶液を調製した。TBAHは、PAG:TBAH=1:0.05モル比で用いた。シリコンウェハ(5インチ)を0.8nmのAR3−600でコートし(3000rpm、その後220℃で1分間ベーキング)、続いてレジスト溶液でコートした(1400rpm、その後130℃で1分間ベーキング)。得られた膜の厚さは、220nmであった。
【0055】
実施例5
光学的性質(193nmにて):清浄な5インチ・シリコンウェハ上にフォトレジスト溶液(実施例3に記載のように調合)を1500rpmのスピン速度で30秒間スピンコートすることによって、薄い固体膜を調製した。得られた膜を真空中で110℃にて60秒間、温和にベーキングした。厚さ、n及びkをVASE偏光解析法で測定し、OD値をkから計算した。この膜は、屈折率n=1.7026、k=0.031162及び光学濃度OD=0.88μm−1を有した。
【0056】
実施例6
リソグラフィ性能(ArF露光):底面反射防止コーティング(BARC)及び実施例3に記載のフォトレジスト調合物でコートされたシリコンウェハを、開口数0.85NAで従来の193nm放射光に露光した(ASML 1400スキャナ、0.93NA)。露光パターンは、下限で75nmまでの種々のサイズのライン及びスペースのアレイとした。露光されたウェハを、その後120℃で60秒間、真空ホットプレート上で露光後ベーキングした。続いて、ウェハを水酸化テトラメチルアンモニウムの0.26M水溶液で60秒間現像した。そのような現像溶液において用いられる塩基の機能は、反応した可溶性レジストポリマーを溶解することである。得られたフォトレジスト像形成層のパターンを走査電子顕微鏡(SEM)を用いて検査した。フォトスピード(photospeed)の結果を245nmピッチでの75nmラインの像について得ると、49mJのE(サイズに対する線量(dose to size)と呼ばれる。目標とするラインサイズを得るために必要な線量)値が得られた。図1(a)及び(b)は、PAGとして化合物10を含むそのような調合物から得られたパターンの例示的なSEM像を示す(2つの異なるピッチを示す)。図1(c)は、セクション(a)において示された、BARC膜の上に像形成されたレジスト・ラインを有するライン−スペース・アレイの断面SEM像を示す。
【0057】
実施例7
248nmにおける、クリア露光に対する線量(dose-to-clear exposure):シリコンウェハを実施例4に記載のフォトレジスト調合物でコートした。比較のため、実施例4で記載されたもの同様であるが等モル量の市販の2(DTBPIO PFBuS)を含むフォトレジスト調合物を調製し、別のシリコンウェハ上にコートした。図2は、2つの調合物について、248nm放射光に露光した場合のコントラスト曲線を示す。化合物11を含有するフォトレジストは、市販の参照材料を含有するフォトレジストよりも著しく速くクリアした。
【0058】
本発明の化合物は、種々の有機部分及び他の部分をそれ自体でも含むが、更に置換基で置換されることできる有機部分又は他の部分を含むこともまた意図され、これらの有機部分及び他の部分、及び/又は置換基は、とりわけ、アリール基、アルキル基、ハロゲン、例えば、ヨウ素、塩素又は臭素、アルキルオキシ、アルキルオキソ、アリールオキソ、アルキルカルボニルオキシ、カルボアルコキシ、アリール、アリールオキシ、アリールカルボニルオキシ、又はカルボアリールオキシ基、カルボニル、ニトロ、シアノ、ハロゲン置換アルキル又はハロゲン置換アルキルオキシ(ハロゲンは上記定義)、置換アルキル、アルキレン、脂環式、ヒドロカルビル、環式アルキル(脂環式)、ヘテロ脂環式、アラルキル又はアルカリール、アルコキシ、アシル、アシルオキシ、アルキレンオキシ、例えば、とりわけ、Allenらの特許文献22の第3段第51行乃至第6段第24行、及びMizutaniらの特許文献23の第8段第54行乃至第12段第14行によって定義されているようなもの、並びにAllenら及び/又はMizutaniらによって定義された他のすべての部分及び置換基で定義されるようなものを含む。
【0059】
本発明の目的において、部分及び/又は置換基は、2つ又はそれ以上の部分及び/又は置換基のような、部分及び/又は置換基の組合せも含む。これらの参考文献は、本発明の種々の置換基及び/又は部分に適用される炭素原子の範囲を与え、以下の議論は、これらの範囲、並びに部分及び/又は置換基の組合せにも適用される。
【0060】
この明細書、要約書を通じて、及び図面において、本発明者は均等物について述べており、この均等物は、制限なく、均等の元素、物質、化合物、部位、置換基、組成物、条件、プロセス、構造などを含み、個別に述べてはいるが、2成分、3成分、若しくは4成分又はそれ以上の組合せのようなこれらの均等物の組合せも含み、さらに、このような均等な元素、物質、化合物、部分、置換基、組成物、条件、プロセス、構造などのいかなる割合又はいかなる方式での組合せも含む。
【0061】
更に、明細書全体にわたって記述された本発明を説明する種々の数値範囲は、範囲の下端と範囲の上端とのいかなる組合せも含み、かつ、いかなる単一の数値、又は範囲の下限の適用範囲又は範囲の上限の適用範囲を減縮することになるいかなる単一の数値をも含み、かつ、これら範囲のいずれかの内に入る範囲をも含む。
【0062】
いずれかの請求項、又は本明細書中のいずれかのパラメータ、例えば数値範囲を記述するために用いられる値を含めた数値に適用される場合の、「約」、「実質的な」又は「実質的に」という用語は、そのパラメータにおけるわずかな変動を意味する。その他の実施形態において、「約」、「実質的な」又は「実質的に」という用語は、数的パラメータを定義するために用いられる場合、例えば、5パーセント、10パーセント、若しくは15パーセントまでの変動、又は5パーセント、10パーセント、又は15パーセントの上限よりいくらか高い又は低い変動を含む。数的パラメータを定義する「(上限)まで(up to)」という用語は、ゼロ又は極めて小さい数、例えば0.001を含む下限を意味する。「約」、「実質的な」及び「実質的に」という用語は、それが、ほとんど若しくは大部分又は全体として指定されていることも意味する。発明者はまた、「実質的な」、「実質的に」及び「約」という用語を、当業者がそれらを理解し又はそれらを用いるのと同様に用いる。「少なくとも」という語句は、本明細書中で指定された元素、物質、化合物、又は条件などのうちの1つ又はそれらの組合せを意味し、「組合せ」は、上記で定義される。本明細書において用いられる「明細書本文(written description)」、「明細書(specification」、「特許請求の範囲」、「図面」、及び「要約書」という用語は、最初に出願されたとおりの開示の明細書本文、明細書、特許請求の範囲、図面、及び要約書を指し、かつ、本明細書中で特に指示のない限り、その後、補正された開示の明細書本文、明細書、特許請求の範囲、図面、及び要約書を指す。
【0063】
インターネットサイトも含めて全ての科学雑誌の論文及びその他の論文、並びにこの明細書本文が言及する、発行された特許及び係属中の特許は、インターネットサイトも含めたそれらの科学雑誌の論文及びその他の論文、並びにそれらの特許において引用された参照文献を含めて、引用によりその全体が、この明細書本文において引用される目的に関して、並びに、インターネットサイトも含めたそれらの科学雑誌の論文及びその他の論文、並びに特許及びそこで引用される前述の参照文献に含まれる全ての他の開示に関して、全て又はいずれかが、前述の明細書本文のみならず、以下の特許請求の範囲、要約書、及び添付の図面に対して全体又は一部において影響を与え又は適用されることができるように、本明細書中に組み入れられる。
【0064】
発明者は自身の発明をいくつかの実施形態に言及して説明してきたが、均等の原理により定義される他の実施形態は、前述の明細書本文、及び以下の特許請求の範囲、要約書、及び添付の図面の広範な範囲及び真意の範囲内にあるものとして含まれることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光子を照射されると分解して酸Hになる光酸発生剤Pであって、
が、フッ素又は半金属元素を含まないパーアクセプター置換有機超酸のアニオンを含み、かつ
が、4、5、6又は7、すなわち
【化1】

のうちの少なくとも1つを含み、式中、Eは電子吸引性基を含み、
が、フッ素を含有しないカチオンである、光酸発生剤。
【請求項2】
前記Eが、シアノ(CN)、アルキル、アルキルオキシ、水素、ニトロ、アルキルカルボニルオキシ、アルコキシカルボニル、塩素、臭素、ヨウ素、アリール、アリールオキシ、アリールカルボニルオキシ、又はアリールオキシカルボニル基のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の光酸発生剤。
【請求項3】
化学増幅型フォトレジスト調合物であって、
a)元は水性アルカリ現像剤に不溶性であるが、加熱の補助により又はなしに、プロトンとの反応で可溶性となる、酸感受性像形成ポリマーと、
b)光子を照射されると分解して酸Hになる光酸発生剤Pであって、
が、フッ素又は半金属元素を含有しないパーアクセプター置換有機超酸のアニオンを含み、かつ、
が4、5、6又は7、すなわち
【化2】

のうちの少なくとも1つを含み、式中、Eは電子吸引性基を含む、光酸発生剤と、
c)少量の塩基クエンチャと
を含み、
がフッ素を含有しないカチオンである、化学増幅型フォトレジスト調合物。
【請求項4】
パターン形成された材料の構造部を基板上に形成する方法であって、前記方法が、
a)基板上に材料表面を準備するステップと、
b)前記材料表面上にフォトレジスト層を形成するステップであって、前記フォトレジストが
(i)元は水性アルカリ現像剤に不溶性であるが、加熱の補助により又はなしに、プロトンとの反応で可溶性となる、酸感受性像形成ポリマーと、
(ii)光子を照射されると分解して酸Hになる光酸発生剤Pであって、
が4、5、6又は7、すなわち
【化3】

のうちの少なくとも1つを含み、式中、Eは電子吸引性基を含む、光酸発生剤と、
(iii)少量の塩基クエンチャと
を含む、ステップと、
c)前記フォトレジスト層を可視光、DUV又はMUV放射光にパターン状に露光するステップであって、それにより前記フォトレジスト層内に放射光露光領域のパターンを作成する、ステップと、
d)前記フォトレジスト層の一部を選択的に除去して、前記材料表面の一部を露出するステップと、
e)前記材料の前記露出部分をエッチングし又はイオン注入するステップであってそれにより前記パターン形成された材料の構造部を形成する、ステップと
を含む、方法。
【請求項5】
前記Aが、フッ素又は半金属元素を含まない、パーアクセプター置換有機超酸のアニオンを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記Eが、シアノ(CN)、アルキル、アルキルオキシ、水素、ニトロ、アルキルカルボニルオキシ、アルコキシカルボニル、塩素、臭素、ヨウ素、アリール、アリールオキシ、アリールカルボニルオキシ、又はアリールオキシカルボニル基のうちの少なくとも1つを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記光酸発生剤PのAが、
【化4】

を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記Eが、CN、COCH、CO、CO(CHOH、NO、又はHのうちの少なくとも1つを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記光酸発生剤PのAが、
【化5】

を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記光酸発生剤Pがフッ素を含まない光酸発生剤を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項11】
前記光酸発生剤PのP
Ch
を含み、ChがS、O、又はSeのうちの少なくとも1つを含み、かつR、R及びRが独立して選択された芳香族部分を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項12】
前記光酸発生剤化合物PのP
【化6】

を含み、式中、それぞれのRは、独立して、H;直鎖、分岐鎖、第三級、若しくは環式アルキル;直鎖、分岐鎖、第三級若しくは環式アルコキシ;無置換及び置換フェニル;無置換及び置換ナフチル;又は無置換及び置換フルオレニルのうちの少なくとも1つを含む
、請求項4に記載の方法。
【請求項13】
前記光酸発生剤PのP
【化7】

を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項14】
前記光酸発生剤化合物PのP

を含み、式中、R及びRは、それぞれ独立して、H;直鎖、分岐鎖、第三級、若しくは環式アルキル;直鎖、分岐鎖、第三級若しくは環式アルコキシ;無置換及び置換フェニル;無置換及び置換ナフチル;又は無置換及び置換フルオレニルのうちの少なくとも1つを含み、Rは、C−C30直鎖又は分岐鎖アルキレン(CH鎖のうちの少なくとも1つを含み、かつRは、Ar及びAr−CO−CH−を含み、式中、Arは、OH、分岐鎖、直鎖若しくは環式アルキル、又は分岐鎖、直鎖若しくは環式アルキルオキシ基で随意に置換された、アリール基を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項15】
前記光酸発生剤化合物PのP
【化8】

を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項16】
前記光酸発生剤Pが、

を含み、式中、Xは、塩素、臭素又はヨウ素のうちの少なくとも1つを含み、かつR又はRは、H;直鎖、分岐鎖、第三級、若しくは環式アルキル;直鎖、分岐鎖、第三級若しくは環式アルコキシ;無置換及び置換フェニル;無置換及び置換ナフチル;又は無置換及び置換フルオレニルのうちの少なくとも1つで随意に置換された、芳香族ペンダント基を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項17】
前記光酸発生剤PのP
【化9】

を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項18】
前記光酸発生剤がTPS CN5(10)を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項19】
前記像形成ポリマーがS1、MADMA−NORLAC、又はESCAPのうちの少なくとも1つを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項20】
前記光酸発生剤が、TPS CN5(10)、DTBPIO CN5(11)又は
【化10】

のうちの少なくとも1つを含み、かつ
前記レジストポリマーがS1及びMADMA−NORLACのうちの少なくとも1つを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項21】
前記放射光がArFレーザ放射光を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記光酸発生剤が、TPS CN5(10)、DTBPIO CN5(11)又は
【化11】

のうちの少なくとも1つを含み、かつ
前記レジストポリマーが少なくともESCAPを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項23】
前記放射光がKrFレーザ放射光を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記4、5、6、又は7を含む化合物において、前記EがCNを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項25】
TPS CN5(10)を含む光酸発生剤。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−510109(P2011−510109A)
【公表日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−541045(P2010−541045)
【出願日】平成20年12月17日(2008.12.17)
【国際出願番号】PCT/EP2008/067717
【国際公開番号】WO2009/087027
【国際公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(390009531)インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション (4,084)
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MASCHINES CORPORATION
【Fターム(参考)】