説明

パーキン基質およびアッセイ

本発明は、Sept4タンパク質のパーキン媒介性のユビキチン化を測定する、パーキン活性についてのインビトロ、エクスビボおよびインビボアッセイを提供する。該アッセイはパーキンタンパク質のリガーゼ活性を調節する剤についてスクリーニングするのに使用しうる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の交差引用]
本出願は、2007年5月21日に出願された米国仮出願第60/939,335号明細書(その完全な内容は引用することにより本明細書に組み込まれる)の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
パーキンソン病(PD)は、黒質のドーパミンニューロンの減少を神経病理学的特徴とする神経学的障害である。このニューロン減少は、動作緩慢、強直および/若しくは振戦のような運動の変化として臨床的に現れる(非特許文献1)。ヒト遺伝子データはPDの発症に関連づけられる遺伝子を同定した。これらの遺伝子の1種は、若年発症患者のコホートを使用して第6染色体に位置を突き止められ、そしてパーキンタンパク質として同定された(非特許文献2)。パーキンタンパク質はユビキチン−プロテアソーム経路(UPS)で機能するE3リガーゼタンパク質である(非特許文献3)。UPSは、分解のためのタンパク質の標的を定めた除去、ならびに細胞プロテアソーム(非特許文献4)若しくはリソソーム(非特許文献5)による分解のための基質を同定および標識するためのE3リガーゼ機能に関与する主細胞経路である。
【0003】
PDの別の特質は、レビー小体として知られる不溶性のタンパク質性細胞封入体の存在である。レビー小体は多くのタンパク質から構成され、最も顕著なものはα−シヌクレインタンパク質である(非特許文献6)。α−シヌクレイン遺伝子中の点突然変異若しくは遺伝子の多重化がPDをもたらす(非特許文献7;非特許文献8)。
【0004】
パーキンソン病を処置するための新たな治療薬が緊急に必要とされる。本発明は、こうした新たな治療薬を同定かつ検証するのにおよび他の用途に有用な新たな方法および物質を提供する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Gelbら、Arch.Neurol.、56:33−39(1999)
【非特許文献2】Kitadaら、Nature、392:605−608(1998)
【非特許文献3】Shimura、Nature Genetics、25:302−305(2000)
【非特許文献4】Hereshkoら、Ann.Rev.Biochem.、67:425−479(1998)
【非特許文献5】Hicke、Trends in Cell Biology、9:107−112(1999)
【非特許文献6】Spillantiniら、Nature、388:839−40(1997)
【非特許文献7】Polymeropoulosら、Science、276:2045−7(1997)
【非特許文献8】Krugerら、Nature Genetics、18:106−8(1998)
【発明の概要】
【0006】
[発明の要約]
本発明は、セプチン4(Sept4)タンパク質がパーキンのリガーゼ活性によりユビキチン化され得る条件下でパーキンタンパク質およびSept4タンパク質を組合せること、ならびにSep4tタンパク質のユビキチン化の存在、速度若しくは程度を測定することを包含する、パーキン活性の検出方法を提供する。いくつかの態様において、パーキンタンパク質およびセプチン−4タンパク質はインビトロで組合せる。いくつかの態様において、パーキンタンパク質およびセプチン−4タンパク質は、E1、E2、Mg−ATPおよびユビキチンを含有する緩衝反応媒体中で組合せられる。該アッセイのいくつかの態様において、パーキン活性は細胞中で検出される。該アッセイのいくつかの態様において、パーキン活性はエクスビボの細胞中で検出される。該アッセイのいくつかの局面において、細胞は内因性Sept4を発現する。いくつかの局面において、細胞は初代(非形質転換)細胞である。いくつかの局面において、該アッセイで使用される細胞はSHSY−5Y細胞(ATCC−2266)若しくはヒト胎児脳細胞である。
【0007】
本発明はパーキン活性のモジュレーターについてのアッセイを提供する。該アッセイは、(1)セプチン−4タンパク質がユビキチン化され得る条件下でパーキンタンパク質およびセプチン−4タンパク質をインビトロで一緒にインキュベートすること;(2)パーキンタンパク質およびセプチン−4タンパク質を試験剤の存在下で(1)の条件下で一緒にインキュベートすること;(3)試験剤の存在下でのセプチン−4ユビキチン化の速度若しくは程度を試験剤の非存在下でのSept4ユビキチン化の速度若しくは程度と比較すること(試験剤の存在下でのセプチン−4ユビキチン化の相対的増大は該試験剤がパーキンのユビキチン化活性を高めることを示し、また、試験剤の存在下でのSept4ユビキチン化の相対的減少は該試験剤がパーキンのユビキチン化活性を阻害することを示す)を包含する。該アッセイのいくつかの態様において、パーキンタンパク質およびセプチン−4タンパク質を、E1タンパク質、E2タンパク質、ユビキチンおよびATPを含有する組成物中で組合せる。該アッセイのいくつかの態様において、E2タンパク質はUbcH5、UbcH7、UbcH13およびUbcH13/Uev1よりなる群から選択される。
【0008】
本発明は、付加的に、(a)パーキンを発現しかつSept4を発現する哺乳動物細胞を提供すること、および(b)該細胞中でのSept4ユビキチン化の速度若しくは程度を測定することを包含する、パーキン活性の細胞に基づく測定方法を提供する。該方法のいくつかの局面において、Sept4タンパク質は細胞中で内因的に発現される。該アッセイのいくつかの他の局面において、Sept4タンパク質は細胞中で組換え発現される。該方法のいくつかの局面において、パーキンタンパク質はパーキンタンパク質のバリアント若しくはフラグメントである。いくつかの局面において、パーキンタンパク質は、位置167のセリンの代わりにアスパラギン;位置212のシステインの代わりにチロシン;位置240のトレオニンの代わりにメチオニン;位置275のアルギニンの代わりにトリプトファン;位置289のシステインの代わりにグリシン;若しくは位置437のプロリンの代わりにロイシンを有するバリアントである。
【0009】
いくつかの態様において、本発明はパーキン活性のモジュレーターについてのエクスビボの細胞に基づくアッセイを提供し、前記アッセイは、(a)パーキンを発現しかつSept4を発現する哺乳動物細胞を提供すること、(b)該細胞を試験剤に曝露すること、および(c)試験剤の存在下でのSept4ユビキチン化の速度若しくは程度を試験剤に曝露されない対照細胞中でのSept4ユビキチン化の速度若しくは程度と比較すること(試験剤の存在下でのSept4ユビキチン化の相対的増大は該試験剤がパーキンのユビキチン化活性を高めることを示し、また、試験剤の存在下でのSept4ユビキチン化の相対的減少は該試験剤がパーキンのユビキチン化活性を阻害することを示す)を包含する。いくつかの態様において、Sept4タンパク質は細胞中で内因的に発現される。いく
つかの態様において、Sept4タンパク質は細胞中で組換え発現される。いくつかの態様において、パーキンタンパク質はバリアント若しくはフラグメントである。いくつかの態様において、パーキンタンパク質は、位置167のセリンの代わりにアスパラギン;位置212のシステインの代わりにチロシン;位置240のトレオニンの代わりにメチオニン;位置275のアルギニンの代わりにトリプトファン;位置289のシステインの代わりにグリシン;若しくは位置437のプロリンの代わりにロイシンを有するバリアントである。
【0010】
本発明はパーキン活性のモジュレーターの同定方法を提供し、前記方法は、(a)神経細胞中でパーキンを共発現しかつSept4を発現するヒト以外の動物を提供すること;(b)該動物に試験剤を投与すること;(c)試験剤を投与した動物の前記神経細胞中でのSept4ユビキチン化の速度若しくは程度を、該剤を投与されていない対照動物でのSept4ユビキチン化の速度若しくは程度と比較すること(治療薬の存在下でのSept4ユビキチン化の相対的増大は該治療薬がパーキンのユビキチン化活性を高めることを示し、また、該治療薬の存在下でのSept4ユビキチン化の相対的減少は、該治療薬がパーキンのユビキチン化活性を阻害することを示す)を包含する。一態様において、動物はげっ歯類(例えばマウス)若しくはヒト以外の霊長類である。一態様において、該動物は前記細胞中で導入遺伝子(1種若しくは複数)を発現し、前記導入遺伝子(1種若しくは複数)はセプチン−4およびパーキンのいずれか若しくは双方をコードする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1A】パーキンおよびSept4タンパク質ドメインを示す。パーキンは、完全長タンパク質として、若しくはパーキンのアミノ酸1−237を使用してのいずれかで酵母2ハイブリッドスクリーニングでバイトとして使用した。最も頻繁なヒットSept4が双方のスクリーニングから合計82回同定され、最初の117アミノ酸を除きSept4の配列全体にわたった。破線はパーキンおよびSept4の相互作用ドメインを示す。
【図1B】HEK293細胞中のパーキンおよびSept4の相互作用を具体的に説明するウエスタンブロットである。パーキンを過剰発現する安定なHEK293細胞株をpcDNA(C)若しくはSept4 cDNA(S4)いずれかでトランスフェクトした。パーキンを細胞ライセートから免疫沈降し、そして、結合された物質をSept4に対する抗体を用いるイムノブロッティングにより分析した。細胞抽出液(CE)を参照のため示す。
【図1C】ヒト皮質細胞中でパーキンおよびSept4が相互作用することを示すウエスタンブロットである。空のレンチウイルスでトランスフェクトしたヒト皮質ニューロン(HCC)若しくはパーキンレンチウイルスでトランスフェクトしたHCCいずれかから調製したライセートを、パーキンに対する抗体およびプロテインGビーズと3時間インキュベートした。ビーズを洗浄し(W)、そして未結合(FT)および結合タンパク質(E)をイムノブロッティングにより分析した。
【図1D】26Sプロテアソームを阻害した細胞中でSept4がユビキチン化される(より高分子量バンドにより明示されるとおり)ことを示すウエスタンブロットである。HEK293細胞およびパーキンを過剰発現するHEK293細胞をpcDNA若しくはpSept4いずれかでトランスフェクトし、DMSO若しくはエポキソミシンで処理し、そして細胞ライセートをSept4に対する抗体でイムノブロットした。
【図2】パーキンがインビトロでのSept4のユビキチン化を媒介することを示すウエスタンブロットである。精製したSept4をGST−E1、UbcH8、Ub、ATPおよびGST−パーキンと37℃で示された時間インキュベートした。サンプルを10%SDS−PAGEで泳動しかつウエスタンブロットした。図2Aは抗Sept4抗体での染色を示し、および図2Bは抗パーキンでの染色を示す。
【図2C】Sept4ユビキチン化が特定のパーキン−E2の組合せに特異的でないことを示すウエスタンブロットである。多様なE2酵素を使用するインビトロユビキチン化アッセイを利用してユビキチン化Sept4を評価した。サンプルを37℃で0、30若しくは60分間インキュベートし、そしてSept4に対する抗体を使用してイムノブロットした。は交差反応するバンドを示す。
【図2D】Sept4ユビキチン化がE3リガーゼ、パーキンに特異的であることを示すウエスタンブロットである。Sept4のユビキチン化を評価するための多様なE3ユビキチンリガーゼを使用するインビトロユビキチン化アッセイ。サンプルを37℃で0若しくは30分間インキュベートし、そしてSept4に対する抗体を使用してイムノブロットした。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[発明の詳細な記述]
I.緒言
遺伝子データは、ヒトにおけるパーキンタンパク質活性の低下が黒質のドーパミン作動性ニューロンの進行性の減少および最終的にパーキンソン病(PD)をもたらすことを確立した。パーキンタンパク質は、E1ユビキチン活性化酵素およびE2ユビキチン結合酵素とともに作動するE3(ユビキチン)リガーゼタンパク質である。E1酵素はユビキチンを結合のため活性化しかつそれをE2酵素に転移するのにATPを使用する。パーキンはE2と相互作用し、そしてユビキチンをタンパク質基質上のリシンのε−アミノ基に転移する。ユビキチン部分の基質への連続的付加はポリユビキチン鎖を生成する。パーキン活性は、基質若しくは「標的タンパク質」へのユビキチンの転移の速度若しくは程度を測定することによりアッセイし得る。
【0013】
既知のパーキン基質はα−シヌクレインおよびパーキンタンパク質それ自体(自己ユビキチン化)を包含する。セプチン 4(Sept4)もまたパーキンリガーゼの基質であることが今や発見された。Sept4タンパク質は雑多なユビキチン化基質ではなくしかしパーキンにより特異的にユビキチン化されることを発明者が示していたため、この発見は特別の重要性を有する。従ってSept4のユビキチン化はパーキンのリガーゼ活性の直接の尺度として使用し得る。例えば、パーキンの活性は、インビトロ、エクスビボ若しくはインビボでのSept4のユビキチン化の速度若しくは程度を測定することによりアッセイし得る。
【0014】
パーキンのリガーゼ活性のアッセイは多様な応用で有用であり、そしてPDおよび他の神経学的疾患の処置における使用のための薬物候補をスクリーニングおよび評価するためにとりわけ貴重である。アッセイは、生物学的サンプル中のパーキンの存在若しくは活性を検出する、組換え若しくは精製されたパーキンタンパク質の完全性を評価する、改変若しくはバリアントパーキンタンパク質のリガーゼ活性を評価する、および本開示を鑑みて明らかであろう他の用途のためにもまた有用である。
【0015】
II.パーキンのリガーゼ活性のインビトロアッセイ
一局面において、本発明は、(1)Sept4タンパク質がユビキチン化され得る条件下でパーキンタンパク質およびSept4タンパク質を一緒にインキュベートすること、ならびに(2)Sept4タンパク質のユビキチン化の速度若しくは程度を測定することによるパーキン活性のインビトロ測定方法を提供する。
【0016】
パーキンおよび他のE3リガーゼによるユビキチン化を検出するための多数のアッセイ
が当該技術分野で公知であり、そして本発明で使用し得る。パーキンのリガーゼ活性が保持される緩衝液、試薬およびアッセイ条件を、基質としてSept4タンパク質を使用する本発明のパーキン活性アッセイで使用しうる。従って、本開示(パーキンの基質としてのSept4タンパク質の同定を包含する)により導かれる当業者は、パーキンによるSept4ユビキチン化を測定するためにこうしたアッセイを適応することが可能であろう。例えば、パーキンおよびSept4をE1(例えばUBA1 Genbank受託番号X55386)、E2(例えばUbcH7)、Mg−ATP、ユビキチンおよび水性緩衝液(例えば50mM HEPES/50mM NaCl pH8.8)の存在下で組合せかつインキュベートすることができ、そしてSept4タンパク質へのユビキチンの結合の速度若しくは程度を測定し得る。本明細書で使用されるところの「インキュベートする」は、成分を組み合わせることおよび通常は室温若しくは生理学的温度で酵素反応(1種若しくは複数)を進行させることというその通常の意味を有する。例示的アッセイ条件を具体的説明のためかつ制限のためでなく本明細書に記述する。
【0017】
Sept4タンパク質のユビキチン化の速度若しくは程度は多様な方法で測定し得、そして本発明は特定の一方法に制限されない。Sept4ユビキチン化の一測定方法は、ユビキチン化反応を実施すること、反応混合物中のタンパク質を電気泳動により分離すること、分離されたタンパク質を支持体に転写すること(ウエスタンブロッティング)、ウエスタンブロットを抗Sept4抗体でプロービングすること、およびSept4基質へのユビキチンの結合を反映するSept4の移動度の変化を検出することを伴う(実施例を参照されたい)。免疫学的に基づくアッセイ(ELISA、免疫沈降、HarlowとLane、Antibodies,A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Publications、ニューヨーク、1988(本明細書に引用することにより組み込まれる)を参照されたい)、質量分析法、電磁スペクトル分光法、クロマトグラフィー法、検出可能に標識したユビキチンを使用するユビキチン化、および当業者に明らかであろう他のアプローチを制限なしに包含するユビキチン化の他の測定方法を使用し得る。例えば、プレートアッセイにおいて、蛍光標識ユビキチンを蛍光プレートリーダーを使用して直接検出し得、ビオチン標識ユビキチンは標識ストレプトアビジン(例えばストレプトアビジン−HRP若しくは5000倍Neutravidin−HRP[Pierce Chemical Comp.イリノイ州ロックフォード])を使用して検出し得、そしてエピトープ標識ユビキチンは抗標識抗体を使用するイムノアッセイで検出し得る。ユビキチン化されたSept4の検出方法は使用される標識(label)若しくは標識(tag)に依存することができる。
【0018】
多数のインビトロアッセイ形式を本発明の実務で使用し得る。例えば、アッセイ成分は溶液中にあり得るか、または1種若しくはそれ以上を固定しうる。ユビキチン化アッセイは、例えば、パーキンおよび他の試薬を包含するユビキチン化反応混合物をウェル、チューブ若しくはチャンバーに添加することにより実施することができ、そしてユビキチン化反応が起こる。生じるユビキチン化されたSept4タンパク質(「uSept4」)のレベルは、免疫学的方法(例えば検出可能に標識した抗ユビキチン若しくは抗Sept4抗体を複合体に結合すること)、他の結合方法(例えば反応中でビオチニル化ユビキチンを使用すること、およびアビジンに結合したプローブを使用してuSept4を検出すること)を使用して、または検出可能に標識したユビキチンをアッセイで使用することにより測定する。
【0019】
1アプローチにおいて、Sept4を固定する。具体的説明のため、1アッセイにおいて、Sept4タンパク質を表面(マイクロウェルプレート、Sepharoseビーズ、磁性ビーズなどのような)に固定し、そしてパーキン、E1、E2、ユビキチンおよびATPを包含するリガーゼ反応混合物とインキュベートする。一態様において、Sept4タンパク質は、96ウェル若しくは386プレート(例えばImmulon[マサチュ
ーセッツ州ウォルサム];Maxisorb[Life Technologies、独国カールスルーエ]などから入手可能)のウェルに固定する。ユビキチン化を妨害しないSept4タンパク質のいかなる固定方法も使用し得る。例えば、1アプローチにおいて、エピトープ標識Sept4タンパク質を標識を介して支持体に固定する。別のアプローチにおいて、Sept4エピトープを認識する抗体を使用する抗体結合系を使用してSept4を固定しうる。あるいは、抗体はSept4タンパク質に融合したエピトープ標識を認識し得る。いくつかのアプローチにおいて、固定は抗体媒介性相互作用以外の相互作用を必要とする。例えば、1アプローチにおいて、N末端の6His標識をもつSept4タンパク質をニッケル被覆アッセイプレートを使用して固定する。1アプローチにおいて、ビオチニル化成分をアビジンとの相互作用を介して固定する。
【0020】
ブロッキング段階後に、E1(ユビキチン活性化酵素)、E2(ユビキチン結合酵素)、ATP−Mg、ユビキチン(通常は標識ユビキチン)およびパーキン(パーキンE3リガーゼ)を包含するリガーゼ反応混合物を、固定したSept4タンパク質と組合せる。場合によってはE1をエピトープ標識する(例えばGST若しくはHisで)。反応成分はいかなる所望の順序でも添加し得る。ATPは所望の場合は反応を開始するために最後に添加し得る。当業者は、該アッセイの機能的効果に影響を及ぼすことなく反応混合物に対する変更を行い得ることを認識するであろう。例えば、トリス、Bicineおよび他の緩衝液をHEPESの代わりに使用し得る。
【0021】
例示的一反応混合物は
・パーキンタンパク質(例えば2〜10μg)
・500nM 1:1 ビオチン:ユビキチン(ビオチニル化ユビキチン)
・2〜6nM GST−E1
・300nM E2(UbcH7)
・10mM MgATP
・50mM HEPES/50mM NaCl pH8.8
である。
【0022】
1反応成分、典型的にはATPを陰性対照としてのある種のサンプルから省略し得る。一態様において、該アッセイは96若しくは384ウェルプレート形式で実施する。プレートをある期間インキュベートする(例えば室温で60分若しくは37℃で10〜90分のような)。プレートを洗浄して可溶性試薬を除去し、そしてユビキチンの存在若しくは量(すなわちユビキチン化されたSept4のユビキチン成分)を測定する。洗浄溶液は例えば50mM HEPES/50mM NaClでありうる。
【0023】
反応成分の添加前に、表面をブロッキング溶液で処理してタンパク質とりわけE1のプレートへの非特異的結合を低下させうる。ブロッキング剤は、SuperBlock(Pierce Chemical Company、イリノイ州ロックフォード);SynBlock(Serotec、ノースカロライナ州ローリー);SeaBlock(CalBiochem、独国ダルムシュタット);金属キレートブロック(Pierce Chemical Company、イリノイ州ロックフォード);1%カゼイン;グルタチオン;およびこれらの多様な組合せを包含する。ブロッキング段階後にウェルをSuperBlock洗浄液(Pierce Chemical Company、イリノイ州ロックフォード)若しくはリガーゼ緩衝液洗浄液(50mM HEPES/50mM NaCl)で洗浄し得る。一態様において、Immulon 96若しくは384ウェルプレートを50mM HEPES/50mM NaCl中1%カゼインでブロッキングし、そして50mM HEPES/50mM NaCl/4mM DTTを使用して洗浄する。
【0024】
別のアプローチにおいて、ユビキチン化アッセイを溶液中で(すなわちSept4タンパク質若しくは他の成分を固定することなく)実施し得、そして反応溶液(若しくはそのアリコート)をその後捕捉プレートに移す。例示的一反応において、反応成分を50マイクロリットル容量に集成し、そしてアッセイを37℃で10〜90分(例えば60分)間実施する。アッセイの終了時かつ/若しくはアッセイの多様な時点で、反応混合物若しくはそのアリコートを、Sept4を結合する(例えば抗Sept4抗体若しくはHis標識Sept4についてニッケル)またはユビキチンを結合する(例えば抗ユビキチン抗体、His標識ユビキチンについてニッケル)あるいはエピトープ標識ユビキチンについて抗エピトープ標識抗体(抗FLAG、GST、His、Myc、MBPのような)を含有する固定された部分を含有する捕捉プレート(例えば96若しくは384ウェルプレート)に移す。
【0025】
アッセイは、特定の終点でのSept4の単位量あたりの総ユビキチン化(ユビキチン化の「程度」)を測定するようにかつ/若しくはSept4分子のポリユビキチン化の程度(すなわちユビキチン鎖の長さ)を測定するように設計し得る。アッセイは、複数の時点でユビキチン化を測定して(実施例2を参照されたい)単位時間あたり若しくは変動する条件下のユビキチン化のレベル(ユビキチン化の「速度」)を決定するように設計し得る。
【0026】
上に示されるとおり、一般に、本発明のインビトロアッセイは、Sept4(例えばSept4var3)のパーキンに基づくユビキチン化が起こる条件下で実施する。例えば、該反応は一般にパーキンタンパク質、Sept4タンパク質、E1(例えばUBA1、UBA2)、E2(例えばUbcH2、UbcH5、UbcH6、UbcH7、UbcH8、UbcH13)、Mg−ATPおよびユビキチンを緩衝溶液(例えば生理学的pHおよびモル浸透圧濃度のHEPES、トリス若しくはBICINE緩衝液)中に包含する。アッセイ成分は当該技術分野で既知の方法を使用して、若しくは下述されるとおり作成しうるか、または購入しうる。例えば、精製ユビキチン経路酵素はBoston Biochem Inc.(840 Memorial Drive,Cambridge,MA
02139)から得ることができる。Weeら、J.Protein Chemistry、19:489−98(2000)もまた参照されたい。パーキン、Sept4、E1、E2およびユビキチンは精製されかつ/若しくは組換えであることができ、そして哺乳動物(例えばヒト、ウサギ若しくはマウス)または他の真核生物からでありうる。本明細書で論考されるところの多様なパーキンバリアントを使用しうる。該アッセイのいくつかのバージョンにおいて、反応成分は同一種由来である(例えばヒトのパーキン、Sept4、E1、E2およびユビキチン、若しくはマウスのパーキン、Sept4、E1、E2およびユビキチン)。具体的説明のためかつ制限のためでなく、特定のアッセイ成分を下でさらに論考する。
【0027】
アッセイのアプローチの一選択を上述したとは言え、ユビキチン化されたSept4(uSept4)を作成および検出することに対する多数の可能なアプローチが存在することが認識されることができ、そして上述されたアッセイの多くの変形を同定することは当業者の能力内に十分にあることができる。
【0028】
a)パーキン
哺乳動物パーキンタンパク質を本アッセイで使用する。該アッセイで使用するパーキンタンパク質は精製された若しくは組換えのタンパク質調製物であり得る。あるいは、パーキンを含有すると考えられる患者サンプル(例えば生検)若しくは他の起源中のパーキンのリガーゼ活性を測定し得る。好ましい一態様において、パーキンはマウス若しくはヒトである。パーキン(例えばヒトおよびマウスパーキン)のアミノ酸配列は既知である。ヒトパーキンタンパク質の例示的一配列は例えばNCBI受託番号BAA25751で見出
される。マウスパーキンタンパク質の例示的一配列は例えばNCBI受託番号AAI13205で見出される。本発明のアッセイで使用するパーキンは野生型配列を有し得る。あるいは、パーキンは対立遺伝子バリアント、別の天然に存在するバリアント、若しくは組換え製造バリアントでありうる。該アッセイで使用するパーキンは、バリアントが少なくとも若干のリガーゼ活性を保持する限りは1個若しくはそれ以上の残基の置換、挿入若しくは欠失により野生型配列から逸脱するバリアントであり得る。いくつかのバージョンにおいて、野生型と異なる活性レベルを有するパーキンバリアントを使用する(例えば、位置167のセリンの代わりにアスパラギン;位置212のシステインの代わりにチロシン;位置240のトレオニンの代わりにメチオニン;位置275のアルギニンの代わりにトリプトファン;位置289のシステインの代わりにグリシン;若しくは位置437のプロリンの代わりにロイシンを有するバリアント)。場合によっては、細胞若しくは生物体中で発現される場合に野生型パーキンと異なる表現型を与えるバリアントを使用する。本アッセイで適するパーキンの一形態は、一般に、同一のモル量の野生型ヒトパーキンのリガーゼ活性の最低50%、好ましくは最低75%、しばしば最低80%、および最も非常に最低90%を保持することができる。加えて、パーキンフラグメントを使用し得るが、但しそれらは最も少なく若干のリガーゼ活性を保持する。しばしば、こうしたフラグメントは長さが最低100、最低200、最低300若しくは最低400アミノ酸であり、そして天然に存在するパーキンタンパク質の最低200、最低300若しくは最低400残基を含みうる。いくつかの態様において、本発明で使用するパーキンのバリアントは、天然に存在する形態のパーキンと最低80%の配列同一性、最低90%の配列同一性、およびときに最低95%の配列同一性を共有する。2種のタンパク質間の配列同一性は該2タンパク質配列を最適に整列することにより決定しうる。タンパク質は、人的に、若しくは、デフォルトのパラメータを使用してClustalWおよびNCBI(国立生物工学情報センター(National Center for Biotechnology Information)、ncbi.nlm.nih.gov/)アライメントプログラムのようなコンピュータに実装されるアルゴリズムを使用して整列し得る。配列同一性および配列類似性パーセントを決定するのに適するアルゴリズムの例は、それぞれAltschulら(1990)J.Mol.Biol.215:403−410およびAltschulら(1977)Nucleic Acids Res.25:3389−3402に記述されるBLASTおよびBLAST 2.0アルゴリズムである。該アルゴリズムは、最初に、データベース配列中の同じ長さのワード(word)と整列される場合に何らかの正の値の閾値スコアTに一致するか若しくはそれを満足するかのいずれかである、問い合わせ配列中の短いワード長(short words of length)Wを同定することにより高スコアリング配列対(high scoring sequence pair)(HSP)を同定することを必要とする。BLASTアルゴリズムのパラメータW、TおよびXはアライメントの感度および速度を決定する。アミノ酸配列について、BLASTPプログラムは、デフォルトとして、3のワード長(word size)(W)、10の期待(expectation)(E)およびBLOSUM62スコアリングマトリックスを使用する(HenikoffとHenikoff、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915(1989)を参照されたい)。
【0029】
パーキンの組換え発現方法は当該技術分野で公知である。具体的説明のためかつ制限のためでなく、Marrら、2003、J.Neurosci.、23:1992−6を参照されたい。パーキンは融合タンパク質として発現させることができ、そして、例えば精製および/若しくはマイクロタイターウェルのような支持体への結合を容易にするためのエピトープ標識を包含しうる。パーキンは、「パーキンソン病治療薬および酵素的に活性のパーキン製剤についてのアッセイ(Assay for Parkinson’s Disease Therapeutics and Enzymatically Active Parkin Preparations)」(引用することにより本明細書に組み込まれる)についての同時係属出願第11/638,242号明細書に記述される
とおり、大腸菌(E.coli)若しくは他の細菌中で組換え発現しかつ精製しうる。この精製法は、タンパク質がアルギニン含有溶液中で再フォールディングされる透析段階を包含する。細胞からのパーキンタンパク質の精製方法もまた既知である。
【0030】
b)セプチン4
セプチン4の3種のスプライスバリアント、すなわちSept4var1(NCBI受託番号NP_004565)、Sept4var2(「ARTS」としてもまた知られる)(NP_536340)およびSept4var3(NP_536341)が今日まで同定されている。Sept4var1およびSept4var3は、Sept4var1がN末端に付加的な21アミノ酸を含有することを除き同一配列を有する。Sept4var2(ARTS)は残基1−247についてバリアント1および3と配列同一性を共用し、そしてその後アミノ酸247−274の配列が異なる(Larischら、2000、Nature Cell Biol 2:915−20(本明細書に引用することにより組み込まれる)を参照されたい)。また、Chanceら、2006、”Inherited focal,episodic neuropathies:hereditary neuropathy with liability to pressure
palsies and hereditary neuralgic amyotrophy”Neuromolecular Med.8(1−2):159−74;Spiliotisら、2006”Here come the septins:novel polymers that coodinate intracellular functions and organization”J Cell Sci.119(Pt 1):4−10;Hallら、2004、”The pathobiology of the septin gene family”J Pathol.204(4):489−505(それぞれ本明細書に引用することにより組み込まれる)もまた参照されたい。
【0031】
下の実施例に示されるとおり、Sept4var3はパーキンの基質である。本発明のアッセイにおいて、Sept4タンパク質はSept4var3でありうる。あるいはSept4タンパク質はSept4var1でありうる。あるいはSept4タンパク質はSept4var2でありうる。アイソフォームのバリアント、フラグメントおよび混合物もまた使用しうる。Sept4のアイソフォーム1およびアイソフォーム3はアミノ末端の21アミノ酸残基のみ異なり、そしてパーキンと同等の相互作用を有すると考えられる。Sept4var2(ARTS)はアミノ末端1−247残基で相同性を有する。神経細胞からの共免疫沈降実験は、Sept4var2およびパーキンが相互と相互作用することを示した。Sept4var3に対する類似性により、Sept4var2はパーキンによりユビキチン化されると考えられる。パーキンによるSept4var2のユビキチン化は、本明細書に記述されるインビトロアッセイを使用して、またはSept4var2ユビキチン化をインビボ若しくはエクスビボで測定することにより、容易に検出し得る。
【0032】
天然に存在するアイソフォームの配列から逸脱するSept4バリアントを、あるいは、パーキンのユビキチン化基質としてはたらくそれらの能力をそれらが保持する限りは、使用し得る。特定の一Sept4バリアントがパーキンのユビキチン化の基質として作用し得るかどうかは、本発明に記述される方法を使用して試験し得、例えば、パーキンによるSept4バリアントのユビキチン化を実施例5に記述されるとおり評価し得る。
【0033】
いくつかの態様において、切断型のSept4を本発明の方法とともに使用し得る。例えば、下の実験実施例に示されるとおり、N末端から117アミノ酸を欠くSept4バリアントはパーキンによりユビキチン化されるそれらの能力を保持し、そして従って本発明のアッセイで使用し得る。切断型バリアントは、いくつかの態様において、長さが最低
100、最低150、最低157若しくは最低200アミノ酸でありうる。いくつかの態様において、Sept4の他のバリアントを使用して本発明の方法を実施し得る(例えば挿入、欠失若しくは置換によりSept4var1、Sept4var2若しくはSept4var3と異なるSept4バリアント)。有用なバリアントはパーキンのユビキチン化の基質であるという特性を保持し、それは本明細書に記述される形式のような慣例のアッセイを使用して試験し得る。本発明で使用し得るSept4の他のバリアントは、Sept4タンパク質と最低80%の配列同一性、最低90%の配列同一性若しくは最低95%の配列同一性を共有するバリアントを包含する。当業者は、2タンパク質配列を最適に整列することにより、バリアントと親タンパク質の間で共有される配列同一性を容易に決定し得る。上述されたClustalWおよびNCBIアライメントプログラムのようなアライメントプログラムは、2タンパク質を最適に整列するのに使用し得る例示的プログラムである。
【0034】
Sept4タンパク質は融合タンパク質として発現させることができ、そして例えば精製および/若しくはマイクロタイターウェルのような支持体への結合を容易にするためのエピトープ標識を包含しうる。細菌、昆虫および哺乳動物系での他のタンパク質発現方法は当業者に既知であり、そしてSept4を発現かつ精製するのに応用し得る。例えば、Iharaらは、バキュロウイルス系を使用して、ヒトおよびマウスからクローン化したヒスチジン標識Sept4タンパク質を発現している(Iharaら、2007、Nauron、53:519−33)。
【0035】
c)ユビキチン、ユビキチン活性化酵素(E1)およびユビキチン担体タンパク質(E2)
ユビキチン、ユビキチン活性化酵素(E1)およびユビキチン担体タンパク質(E2)は、慣例の組換え法を使用して製造しうるか、若しくはBoston Biochem(マサチューセッツ州ケンブリッジ)のような商業的供給元から購入しうる。本発明のユビキチン化反応で使用し得るE2の例は、限定されるものでないがUbcH2、UbcH5、UbcH7、UbcH8、UbcH10およびUbcH13を挙げることができる。ユビキチン活性化酵素(E1)およびユビキチン担体タンパク質(E2)は、ヒト、ヒト以外の哺乳動物から、若しくは異なる真核生物(例えばS.セレビシエ(S.cerevisiae))からでありうる。
【0036】
ユビキチンは例えばBoston Biochem Inc.(840 Memorial Drive,Cambridge,MA 02139)から商業的に入手可能である。ビオチニル化ユビキチンは購入し得るか、若しくは技術既知の手段を使用して製造し得る。1種のビオチニル化ユビキチン調製物は、50μgのビオチン−ユビキチン(UB−560、Boston Biochem)を29.2μlの1mMメチル化ユビキチン(U−502、Boston Biochem)溶液に再懸濁しておよそ17%ビオチニル化された約1.17mMユビキチン30μlを生じることにより調製する。ユビキチンを標識(例えばエピトープ標識で)する場合、標識は通常ユビキチンのN末端に融合するか、若しくはそうでなければユビキチン化を妨害しない方法で結合する。
【0037】
d)抗体
抗体を本発明のアッセイで検出、固定および他の目的上使用しうる。パーキン、Sept4およびユビキチンに対する抗体は商業的に入手可能である(例えば1A1抗パーキン抗体はIBL、ミネソタ州ミネアポリスから入手可能であり;抗Sept4 SC−20179抗体はSanta Cruz Biotechnology、カリフォルニア州サンタクルズから入手可能である)か、若しくは慣例の方法を使用して作成し得る。該アッセイのいくつかのバージョンにおいて、エピトープ標識タンパク質は該標識を認識する抗体を使用して認識する。
【0038】
III.パーキンのリガーゼ活性のモジュレーターについてのインビトロスクリーニング
上で示されたとおり、本発明のアッセイはパーキンタンパク質活性のモジュレーターのスクリーニングに応用を見出す。例えば、パーキンを安定化する化学的シャペロンのような剤(例えばパーキンバリアント)はパーキンソン病の処置のための潜在的な剤である。一態様において、インビトロアッセイを使用して、候補剤がパーキンソン病を処置するのに有用であるかどうかを決定する。該アッセイは、精製された(若しくは部分的に精製された)パーキンタンパク質のSept4ユビキチン化活性を該化合物の存在下で測定すること、および該化合物の存在下でのパーキンタンパク質のユビキチン化活性を該化合物の非存在下での精製されたパーキンタンパク質のユビキチン化活性と比較することを必要とし得る。Sept4タンパク質のユビキチン化を増大させる剤の能力は、パーキンソン病を処置するのに有用な剤およびさらなる試験のための候補を示す。
【0039】
従って、一局面において、本発明はパーキン活性のモジュレーターについてのアッセイを提供する。該アッセイは、(1)Sept4タンパク質がユビキチン化され得る条件下でパーキンタンパク質およびSept4タンパク質を一緒にインキュベートすること;(2)(1)の条件下でパーキンタンパク質、Sept4タンパク質および試験剤を一緒にインキュベートすること;ならびに(3)試験剤の存在下でのSept4ユビキチン化の速度若しくは程度を試験剤の非存在下でのSept4ユビキチン化の速度若しくは程度と比較することを必要とすることができ、試験剤の存在下でのSept4ユビキチン化の相対的増大は該試験剤がパーキン活性を高めることを示し、また、試験剤の存在下でのSept4ユビキチン化の相対的減少は該試験剤がパーキン活性を阻害することを示す。通常、試験剤を伴うおよび伴わない反応を同時に実施する。しかしながら対照反応を異なる時点で実施することもまた可能である。例えば、1バージョンにおいて、該アッセイは、(1)パーキンタンパク質がSept4をユビキチン化し得る条件下でパーキンタンパク質、Sept4タンパク質および試験剤を一緒にインキュベートすること、ならびに(2)試験剤の存在下でのSept4ユビキチン化の速度若しくは程度を試験剤の非存在下でのSept4ユビキチン化の速度若しくは程度(例えば予め測定された値)と比較することを必要とし、試験剤の存在下でのSept4ユビキチン化の相対的増大は該試験剤がパーキン活性を高めることを示し、また、試験剤の存在下でのSept4ユビキチン化の相対的減少は該試験剤がパーキン活性を阻害することを示す。同一反応、バッチ若しくは組合せで複数の剤をアッセイすることもまた可能である。反応成分はいずれの順序でも組合せうる。例えば、試験剤は、ライゲーション反応の開始(例えばATPの添加)前に添加しうるか、若しくはライゲーション反応が開始した後に添加しうる。
【0040】
パーキン活性を調節(阻害若しくは増大)する能力をスクリーニングし得る剤の型に関する特定の制限は存在しない。多様な分類の試験剤を使用し得る。例えば、化合物の多数の天然および合成ライブラリーを使用し得る(NCI公開合成化合物集合体(NCI Open Synthetic Compound Collection)ライブラリー、メリーランド州ベセスダ;Fodorら、Science、251:767−73(1991);Medynski、BioTechnology、12:709−710(1994);Ohlmeyerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、90:10922−10926(1993);Erbら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、91:11422−11426(1994);Jayawickremeら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、91:1614−1618(1994);およびSalmonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、90:11708−11712(1993)に記述される化学合成ライブラリーを参照されたい)。一態様において、該剤は1000未満およびしばしば500未満の分子量をもつ分子のような小分子である。好ましくは該剤は血液脳関門を横断し得る。一態様において、該剤は、パーキンを安定化する(すなわち過剰発現される場合であってもパーキンを活性
のコンホメーションに維持する)若しくはミスフォールドしたパーキンバリアントの適正なフォールディングを誘発することが可能な「化学的シャペロン」である。
【0041】
本明細書で使用されるところの「パーキンソン病を処置するのに有用な剤」若しくは「パーキンソン病の処置のための候補化合物」への言及は、パーキンソン病を伴う患者について治療的若しくは予防的利益を表すことが他の化合物よりありそうであると同定される化合物、すなわち薬物候補を指すことが理解されるであろう。薬物候補は患者に投与される前にさらなる試験(例えば動物でのインビボ試験)を受けうることが、創薬の過程になじみのある当業者により理解されるであろう。ヒトへの投与について承認された剤は該薬物候補の誘導体若しくはその化学修飾された形態でありうることもまた理解されるであろう。
【0042】
IV.パーキンのリガーゼ活性の細胞に基づく(「エクスビボ」)アッセイ
一局面において、本発明は、(a)パーキンを発現しかつSept4タンパク質を発現する哺乳動物細胞を提供すること;および(b)Sept4ユビキチン化の速度若しくは程度を測定することによるパーキン活性の細胞に基づく測定方法を提供する。該アッセイを使用して、パーキンバリアントの活性を比較するため、薬物スクリーニングアッセイにおいて、およびその他の用途のため、細胞環境(例えば共発現されたタンパク質)のパーキン活性に対する影響を比較し得る。
【0043】
パーキンおよびSept4を発現する細胞は該タンパク質の一方若しくは双方を天然に発現する細胞であり得る。HEK293細胞(ATCC CRL−1573)、SHSY−5Y細胞(ATCC−2266)、COS細胞(CRL−1651);CHO細胞(ATCC−CCL−61)若しくは他の哺乳動物細胞株を包含する多様な細胞のいずれも使用し得る。一態様において、細胞は内因性Sept4および内因性パーキンを発現する。内因性Sept4を発現する細胞は細胞株(例えばSHSY−5Yのような神経細胞株)および初代培養物(例えばヒト胎児脳細胞)を包含する。初代培養物は、Iharaら、2007、Neuron、53:519−33に記述されるとおり製造しうる。あるいは、該タンパク質のいずれか若しくは双方が細胞に対し外因性であり得かつ組換え発現し得る。細胞は安定に若しくは一過性にトランスフェクトし得る。好ましくは、細胞は複数のアッセイにわたる一貫性のため安定なトランスフェクタントである。一態様において、細胞は内因性Sept4および外因性パーキンを発現する。一態様において、細胞は内因性パーキンおよび外因性Sept4を発現する。一態様において、細胞は内因性Sept4および内因性パーキンを発現する。一態様において、細胞は外因性パーキンおよび外因性Sept4を発現する。ある好ましい態様において、細胞は内因性パーキンおよび/若しくはSept4タンパク質を発現し、そして加えて該細胞は外因性の(組換え)形態のパーキンおよび/若しくはSept4タンパク質を発現する。
【0044】
組換えパーキンを発現する細胞を使用する場合、パーキンは発現ベクターを使用して発現させうる。一態様において、発現ベクターは野生型パーキンをコードする。例えば、ヒトパーキンのcDNA(NM004562)を、このアッセイでの使用のためにベクターpcDNA3.1(Invitrogen、カリフォルニア州サンディエゴ)のHindIII/XbaI部位に挿入し得る。別の態様において、パーキン変異体をコードする発現ベクターを使用する。同時係属出願第11/638,242号明細書に記述されるとおり、ある種のパーキン変異体の発現はプロテアソーム機能の阻害をもたらす。例示的パーキン変異体は、S167N、C212Y、T240M、R275W、C289G、P437Lを包含する。いくつかの態様においてR275W、C212Y若しくはC289Gを使用する。パーキン変異体を使用するアッセイを、野生型パーキンを使用するアッセイに対する代替として、若しくはそれと組合せで使用し得る。いくつかの態様において、パーキンおよび/若しくはSept4タンパク質はバリアントおよび/若しくは融合タンパク
質である。(インビトロアッセイに適するとして)上述されたバリアントの例および特性はまた細胞中で組換え発現させ得かつSept4のユビキチン化を測定し得る。
【0045】
組換えSept4を発現する細胞を使用する場合、Sept4は野生型の形態(例えばBAA25751)若しくはバリアントでありうる。(上述された)インビトロアッセイに適するバリアントの例および特性は細胞をまた組換え発現され得、そしてパーキンによるユビキチン化を測定し得る。バリアントタンパク質は、典型的には発現ベクターを使用して細胞に導入する。例えば、Sept4バリアントをコードする発現ベクターとしてpcDNA3.1を使用し得る。あるいは、Sept4バリアントはレンチウイルス発現ベクターから発現させ得る。
【0046】
組換え発現方法は既知である。本発明の実務に適する発現ベクター、一過性トランスフェクション法および細胞培養方法は当該技術分野で公知であり、そしてここで簡潔にのみ記述する。公知であるとおり、発現ベクターは、(例えばパーキンの)コーディング配列に作動可能に連結された真核生物発現調節領域を典型的に包含する組換えポリヌクレオチド構築物である。発現調節領域は、プロモーター、リボソーム結合部位、RNAスプライス部位、ポリアデニル化部位および転写終止配列を包含し得る。発現ベクターは、典型的に、エピソーム、若しくは宿主染色体DNAの一体の(integral)一部のいずれかとして宿主生物体中で複製可能である。哺乳動物発現ベクターの例は、pcDNA 3.1(Invitrogen、カリフォルニア州サンディエゴ);pEAK(Edge Biosystems、カリフォルニア州マウンテンビュー);および他者を包含する(2005年まで補遺を付けられたところのAusubelら、Current Protocols In Molecular Biology、Greene Publishing and Wiley−Interscience、ニューヨークを参照されたい)。一般に、発現ベクターは、所望のDNA配列で形質転換された細胞の検出を可能にするための選択マーカー、例えばアンピシリン耐性若しくはハイグロマイシン耐性を含有する。細胞のトランスフェクションおよび培養方法もまた公知である。例えば、Sambrookら 1989、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory press;およびAusubel、1989、上記中を参照されたい。
【0047】
V.パーキンのリガーゼ活性のモジュレーターの細胞に基づくスクリーニング
本発明の細胞に基づくアッセイは、パーキンソン病の処置のための候補化合物を同定するためのパーキンタンパク質活性のモジュレーターについてのスクリーニングで有用である。一局面において、パーキン活性に対するある剤の効果は、(a)パーキンを発現しかつSept4を発現する哺乳動物細胞を提供すること;(b)該細胞を試験剤に曝露すること;(c)試験剤の存在下でのSept4ユビキチン化の速度若しくは程度を試験剤に曝露されない対照細胞中のSept4ユビキチン化の速度若しくは程度と比較すること(試験剤の存在下でのSept4ユビキチン化の相対的増大は該試験剤がパーキン活性を高めることを示し、また、試験剤の存在下でのSept4ユビキチン化の相対的減少は該試験剤がパーキン活性を阻害することを示す)を伴う、細胞に基づくアッセイで評価し得る。
【0048】
細胞は試験剤を細胞培地に添加することにより該剤に曝露しうる。1アプローチにおいて、Sept4タンパク質を発現する細胞をパーキンをコードする発現構築物でトランスフェクトする。該細胞を1〜10日、好ましくは2ないし5日(例えば3日)間培養することができ、そしてその後試験剤に曝露しうる。曝露の期間は変動し得るが、しかし通常は1から24時間まで、好ましくは4から16時間までであることができる。同様に、多様な濃度の剤を試験し得る。濃度は剤の性質に依存して変動することができるが、しかし典型的には1nMないし5μMの範囲にあることが認識されるであろう。典型的には、数
種の異なる濃度の試験剤(例えば1nM、10nM、100nM、1μM、10μMおよび100μM)をゼロ濃度の対照と一緒にアッセイする。試験剤(例えばポリペプチド、阻害性核酸など)はまた細胞中での組換え発現によっても導入し得る。あるいは、試験剤は細胞抽出液若しくはホモジェネートに添加する。
【0049】
本発明の一態様において、HCC細胞は6ウェル細胞培養プレートの培養ウェル中75%密度まで増殖させる(例えば各ウェル直径約30mm)。細胞を、上述されたパーキン発現ベクターでウェルあたりおよそ2.5μgのプラスミドを使用してトランスフェクトし、そして試験剤を用いる分析前に該細胞を約3日(例えば2ないし5日)間培養する。
【0050】
VI.パーキンのリガーゼ活性の動物に基づく(「インビボ」)アッセイ
アッセイはまた動物を使用しても実施し得る。いくつかの局面において、本発明はパーキンリガーゼタンパク質およびSept4タンパク質を天然に発現する動物でパーキンのリガーゼ活性を評価するためのインビボモデルを提供する。インビボサンプルからのタンパク質活性を評価するためのアッセイは当業者に既知である。該アッセイは例えばパーキンおよびSept4を発現する組織の抽出液を作成することにより実施し得る。抽出液は、典型的には該抽出液中でタンパク質の天然のユビキチン化状態を維持するため生理学的条件を使用して作成する。抽出液中のSept4タンパク質のユビキチン化のレベル若しくは存在をその後検出する。Sept4タンパク質を例えば抗Sept4抗体を使用して天然の組織サンプルから単離および検出し得る。ユビキチン化されたタンパク質の検出方法は当業者に公知である。例えば、Sept4タンパク質を抗Sept4抗体を使用することにより抽出液から単離し得、そして純粋な若しくは半純粋なSept4タンパク質をその後典型的にSDS−PAGEゲルで泳動し、次いで抗ユビキチン抗体を用いてウエスタンブロッティングして、Sept4タンパク質のユビキチン化の存在およびレベルを検出する。
【0051】
いくつかの局面において、ヒトParkおよび/若しくはヒトSept4タンパク質を発現するマウスのようなトランスジェニック動物を包含することを該アッセイで使用する。一態様において、パーキン活性は、Sept4タンパク質およびパーキンタンパク質を発現若しくは過剰発現するよう工作された動物で評価する。トランスジェニック動物の製造方法は当業者に公知である。例えば、テトラサイクリンで誘導可能な発現マウストランスジェニック系がSunら 2007、Acta Biochim Biophys Sin(Shanghai)、39(4):235−46により総説されている。
【0052】
いくつかの他の局面において、Sept4を発現するがしかしパーキンを発現しない動物;例えばパーキン遺伝子ノックアウト動物のようなパーキンを発現しないよう工作された動物を使用して、パーキンリガーゼの存在および非存在下での組換え的に若しくは内因的に発現されたSept4タンパク質のユビキチン化のレベルを比較し;かようにパーキンのリガーゼ活性の比較評価を提供する。いくつかの態様において、RNAサイレンシング技術をSept4若しくはパーキンの発現の下方制御若しくは発現の阻害に使用し得る。神経変性障害におけるRNAi技術の使用がFarahら、2007、Curr Drug Deliv.、4:161−7(2006)に記述されている。Sept4−/−ノックアウトマウスは例えばIharaら、2005、Dev Cell 8:343−352に記述されている。
【0053】
いくつかの局面において、そのSept4タンパク質基質のユビキチン化またはレベル若しくはユビキチン化に基づいてパーキン活性を測定するためのインビボ動物系を、パーキン活性に対する処置剤若しくは潜在的薬物の活性の評価において使用し得る。本発明のこうした一局面において、上述された動物系を使用して、薬物若しくは他の処置剤の存在および非存在下でSept4のユビキチン化若しくはユビキチン化のレベルを検出し得る
。試験剤は動物に該剤を給餌すること、または注入(injection)、注入(infusion)若しくは他の既知の薬物投与方法により試験動物に投与し得る。
【0054】
VII.実施例
【実施例1】
【0055】
方法および材料
プラスミドおよび細胞株ならびに抗体:HEK293細胞はATCCから得、そしてDMEM/10% FBS中で増殖させた。HCCは記述された(Malininら、2005、PNAS 102(8):3058−63)とおり調製した。パーキンcDNA(NM_004562)を細菌発現のためpGEX6P−1ベクターに、哺乳動物細胞中での発現およびレンチウイルス発現のためpCNDA3.1ベクターに、記述された(Marrら、J.Neurosci.23(6):1992−6(2003))ところの方法およびベクターを使用してクローン化した。Sept4Var3 cDNA(NM_080416.1)はOrigene,Inc(メリーランド州ロックビル)から得、そしてオープンリーディングフレームを細菌発現のためpGEX6P−1および哺乳動物発現のためpcDNA3.1にクローン化した。パーキン抗体1A1の商業的供給源(IBL、ミネソタ州ミネアポリス)およびSanta Cruz Biotechnology(カリフォルニア州サンタクルズ)からのSept4に対するSC−20179。
【0056】
タンパク質産生および精製:GST−パーキンは記述された(Fallonら、Nat.Cell Biol 8(8)834−842(2006))とおり製造した。Sept4タンパク質はGST融合タンパク質として製造し、そして記述された(Iharaら、Neuron 53:519−533(2007))とおり切断した、E1、UbcH7(E2)およびユビキチンはBoston Biochem(マサチューセッツ州ケンブリッジ)から購入した。
【0057】
細胞トランスフェクション、エポキシミシン(epoximicin)処理:Fugne6(Roche、カリフォルニア州)を使用して、合計1μgのcDNAをHEK293細胞に導入した。24時間後、細胞をDMSO中100nMのエポキソミシン(Boston Biochem)若しくはDMSO単独で処理した。エポキソミシンの16時間後に、細胞を記述された(Johnsonら、JCB 143:1883−1898(1998))とおりIPB緩衝液に溶解し、そして等タンパク質量の可溶性ライセートを10%トリス−グリシンSDS−PAGEに負荷しかつイムノブロットした。
【0058】
共免疫沈降実験:細胞をPBSで2回洗浄し、収集しかつ−20℃で一夜保存した。融解したHEK293細胞を50mM Hepes 50mM NaCl pH7.5で溶解し、HCCをIPB緩衝液で溶解し、タンパク質含量を測定し(ブラッドフォードアッセイ、BioRad)、そして1μgの1A1パーキン抗体を、予め浄化した(pre−cleared)ライセートに3〜16時間添加した。予め浄化したプロテインG−Sepharoseビーズ(GE Healthcare)を回転を伴い追加の1時間添加し、ビーズを溶解緩衝液で3回洗浄し、そして、タンパク質をイムノブロッティング分析のためSDS−PAGEサンプル緩衝液を使用してビーズから溶離した。
【0059】
インビトロユビキチニル化(ubiquitinylation)アッセイ:50μlの反応を、以下の条件、すなわち50mM Hepes 50mM NaCl、pH8.8、5μM E2、400nM E1、200μMユビキチン、1μM Sept4および3.75μg GST−パーキン、Siah 1、Nedd、MURF1のE6−APで集成した。アッセイは氷上で集成し、そして15μlのアリコートを37℃で0、30および60分のインキュベーション後にSDS−PAGEサンプル緩衝液中に取り出した
。サンプルを10%トリス−グリシンSDS−PAGEおよびイムノブロッティングを介して分析した。
【実施例2】
【0060】
パーキンおよびSept4は2ハイブリッドスクリーニングで相互作用する
酵母2ハイブリッドスクリーニングを使用して、ヒトパーキンと相互作用するヒトタンパク質を同定した。パーキンタンパク質の最初の237アミノ酸(1−237)および完全長パーキンタンパク質(FL)を使用するスクリーニングからの結果の比較は、Sept4タンパク質(Sept4、NM_080416.1)を圧倒的に表す1つの結果を示した。多様な独立した単離物はアミノ酸117からC末端までSept4の領域全体にわたった。われわれはSept4クローンを1−237のスクリーニングから同定したため、Sept4に対するパーキンの相互作用ドメインはパーキンのアミノ末端にある(図1)。われわれはSept4の最初の117アミノ酸を包括するいかなるクローンも見出さなかった。
【実施例3】
【0061】
パーキンおよびSept4は共免疫沈降実験で相互作用する
Sept4がパーキンと相互作用することを確立するために共免疫沈降(CO−IP)実験を実施した。図1bに示されるとおり、パーキン抗体は、パーキンを安定に発現するHEK293細胞(HEK−Parkin)にSept4 cDNAをトランスフェクトする場合に、パーキンおよびSept4を特異的にCO−IPすることが可能である。pcDNAベクター対照でトランスフェクトしたHEK−Parkin細胞からのCO−IPはSept4免疫反応性物質を沈降しなかった。さらに、パーキンをコードするレンチウイルスで形質導入したヒト皮質ニューロン(HCC)を使用して、パーキン抗体はパーキンおよび内因性Sept4を特異的にCO−IPすることが可能である(図2b、HCC+Parkin)。LVベクター単独で形質導入した対照細胞からのSept4の免疫単離は存在しなかった(図2b、HCC対照)。
【実施例4】
【0062】
インビボでのSept4のユビキチン化
Sept4が細胞中でユビキチニル化され得るかどうかを決定するため、293 HEK細胞をSept4およびpcDNA若しくはSept4およびパーキンでトランスフェクトし、次いでプロテアソーム阻害剤を添加した。Sep4抗体を使用する細胞ライセートのイムノブロットは、プロテアソーム阻害剤の添加がライセート中のSept4の総量を増大させ、かつ、より高分子量種のSept4の蓄積もまたもたらしたことを示す(図1d)。さらに、パーキンの存在下で、パーキンがユビキチン化および26SプロテアソームによるSept4のターンオーバーにおいてある役割を演じうることを示唆する、より高分子量種のSept4の顕著な増大されたレベルが存在する。
【実施例5】
【0063】
Sept4のユビキチン化はインビトロでパーキンにより媒介される
Sept4およびパーキンの関係を直接示すため、Sept4およびパーキンタンパク質を精製した。酵素的に活性のパーキンの存在下でのSept4のユビキチニル化を評価するためインビトロアッセイを実施した。図2に示されるとおり、精製したSept4はパーキンによりユビキチニル化される。パーキン活性を図2bに示し、ここで図2aと同一の反応からのアリコートをパーキンに対する抗体でイムノブロットし、確実な自己ユビキチニル化を示す。これらの反応は、Sept5タンパク質に対するパーキン活性に必要とされることが報告されたE2酵素、UbcH8を使用し、そしてそれはSept4タンパク質に対し明瞭に活性である。しかしながら、パーキン−Sept4活性に対する多様なE2酵素の調査において、われわれは、UbcH5、UbcH7、UbcH13、Ub
cH13/Uev1もまたSept4をユビキチニル化し得、そして実際にUbcH8より大きい程度までそうすることを見出した(図2c)。これらの結果の意味は、パーキンが多様なE2酵素とともに多くの多様な細胞調節性の役割で機能し得るリガーゼでありうることである。多様な他のリガーゼはSept4をユビキチニル化することが可能でなかったため、Sept4ユビキチニル化はパーキンに比較的特異的である(図2d)。パーキンによるSept4のモノユビキチン化の例は観察されなかった(反応で利用されるE2に関係なく、図2c)ため、および、細胞へのプロテアソーム阻害剤の添加はSept4レベルの増大を引き起こす(図1d)ため、パーキンが26Sプロテアソームによる分解の標的をSept4タンパク質に定めていることがありそうである。
【実施例6】
【0064】
セプチン4を基質として使用する熱変性スクリーニングアッセイ
本発明の一局面において、2008年1月31日に出願されかつ引用することにより本明細書に組み込まれる米国仮出願第61/025231号明細書に記述されるところの熱変性アッセイでセプチン4をパーキン基質として使用しうる。簡潔には、熱変性アッセイは予防および処置パーキンソン病のための候補化合物を同定するためのインビトロスクリーニングアッセイである。パーキンタンパク質(「パーキン」)をパーキンのリガーゼ活性の喪失を引き起こす条件(「熱不安定化条件」)に曝露する。熱不安定化条件への曝露は試験剤の存在若しくは非存在下で実施する。パーキンのリガーゼ活性を保存する剤がパーキンソン病の処置のための候補化合物である。
【0065】
1バージョンにおいて、該スクリーニングアッセイは、a)複数の試験サンプルを熱不安定化条件に曝露すること(各試験サンプルはi)パーキンタンパク質およびii)複数の試験剤の1種を含有し);b)試験剤の非存在下で熱不安定化条件に曝露されたパーキンタンパク質を含んでなる対照サンプルに関して前記試験サンプル中のパーキンのリガーゼ活性を測定すること(パーキンのリガーゼ活性が対照サンプル中のリガーゼ活性を超える試験サンプルに含有される試験剤はパーキンソン病の処置のための候補化合物と同定される)を伴う。一態様において、試験剤の非存在下で熱不安定化条件に曝露されるパーキンはその元のE3リガーゼ活性の40〜70%を保持する。熱不安定化条件の例は45℃から60℃までの温度で30分ないし180分間のインキュベーションを包含する。具体的説明のため、インキュベーションは約57℃で約90分間若しくは約60℃で約150分間であり得る。
【0066】
該アッセイの1バージョンにおいて、パーキンのリガーゼ活性は、パーキンタンパク質、E1ユビキチン活性化酵素、E2ユビキチン結合酵素、ATP、ユビキチンおよびセプチン 4を適切な緩衝液中で組合せること、該組合せを20〜37℃でインキュベートすること、ならびにパーキン基質のユビキチン化の速度若しくは程度を測定することにより測定し得る。
【0067】
該アッセイにおいて、パーキンのリガーゼ活性は、ドナー発色団がユビキチンと会合されかつアクセプター発色団がパーキン基質と会合されるか、若しくはドナー発色団がパーキン基質と会合されかつアクセプター発色団がユビキチンと会合される蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)アッセイを使用して測定し得る。一態様において、ドナー発色団はユーロピウムクリプレート(europium cryplate)でありかつアクセプター発色団はアロフィコシアニンである。
【0068】
パーキン安定剤であるパーキン活性の正のモジュレーターは、前記化合物の存在および非存在下で減弱されない(unattenuated)パーキンタンパク質をインキュベートすることにより、パーキンアゴニストである候補化合物と識別することができ、ここで、パーキンのリガーゼ活性を増大させる化合物はパーキンアゴニストと同定され、また
、パーキンのリガーゼ活性を増大しない化合物はパーキン安定剤と同定される。
【0069】
本明細書で引用される全部の刊行物および特許文書(特許、公開特許出願および未公開特許出願)は、それぞれのこうした刊行物若しくは文書が引用することにより本明細書に組み込まれることを特別にかつ個別に示すかのように、引用することにより本明細書に組み込まれる。刊行物および特許文書の引用は、いかなるこうした文書も関連する従来技術であるという了解として意図しておらず、また、それはそれの内容若しくは日付に関していかなる了解も構成しない。本発明は今や書かれた記述および実施例によって記述され、当業者は、本発明を多様な態様で実施し得ること、ならびに前述の記述および実施例は具体的説明の目的上でありかつ以下の請求の範囲の制限でないことを認識するであろう。
【図1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
Sept4タンパク質がパーキンタンパク質のリガーゼ活性によりユビキチン化される条件下でパーキンタンパク質およびセプチン−4タンパク質を組み合わせること、ならびにSept4タンパク質のユビキチン化の存在、速度若しくは程度を測定することを含んでなる、パーキン活性の検出方法。
【請求項2】
パーキンタンパク質およびセプチン−4タンパク質がインビトロで組合せられる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
パーキンタンパク質およびセプチン−4タンパク質が、7と9の間のpHでE1、E2、Mg−ATPおよびユビキチンを含んでなる緩衝反応媒体中で組合せられる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
パーキン活性がエクスビボの細胞中で検出される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
細胞が内因性セプチン−4タンパク質を発現する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
細胞が初代(非形質転換)細胞である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
パーキン活性がSHSY−5Y細胞(ATCC−2266)若しくはヒト胎児脳細胞中で検出される、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
(1)セプチン−4タンパク質がユビキチン化され得る条件下でパーキンタンパク質およびセプチン−4タンパク質をインビトロで一緒にインキュベートすること;
(2)パーキンタンパク質およびセプチン−4タンパク質を試験剤の存在下で(1)の条件下で一緒にインキュベートすること;
(3)試験剤の存在下でのセプチン−4ユビキチン化の速度若しくは程度を該試験剤の非存在下でのSept4ユビキチン化の速度若しくは程度と比較することを含んでなり、
ここで、試験剤の存在下でのセプチン−4ユビキチン化の相対的増大は該試験剤がパーキンのユビキチン化活性を高めることを示し、また、試験剤の存在下でのSept4ユビキチン化の相対的減少は該試験剤がパーキンのユビキチン化活性を阻害することを示す、パーキン活性のモジュレーターのアッセイ。
【請求項9】
パーキンタンパク質およびセプチン−4タンパク質がE1タンパク質、E2タンパク質、ユビキチンおよびATPを含んでなる組成物中で組合せられる、請求項8に記載のアッセイ。
【請求項10】
E2タンパク質が、UbcH5、UbcH7、UbcH13、UbcH13/Uev1よりなる群から選択される、請求項9に記載のアッセイ。
【請求項11】
(a)パーキンを発現しかつSept4を発現する哺乳動物細胞を提供すること;
(b)該細胞中のSept4ユビキチン化の速度若しくは程度を測定すること
を含んでなる、パーキン活性の細胞に基づく測定方法。
【請求項12】
Sept4タンパク質が細胞中で内因的に発現される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
Sept4タンパク質が細胞中で組換え発現される、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
パーキンタンパク質が野生型ヒトパーキンのバリアント若しくはフラグメントである、
請求項11−13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
パーキンタンパク質が、位置167のセリンの代わりにアスパラギン;位置212のシステインの代わりにチロシン;位置240のトレオニンの代わりにメチオニン;位置275のアルギニンの代わりにトリプトファン;位置289のシステインの代わりにグリシン;若しくは位置437のプロリンの代わりにロイシンを有するバリアントである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
(a)パーキンを発現しかつSept4を発現する哺乳動物細胞を提供すること;
(b)該細胞を試験剤に曝露すること;
(c)試験剤の存在下でのSept4ユビキチン化の速度若しくは程度を該試験剤に曝露されない対照細胞中のSept4ユビキチン化の速度若しくは程度と比較することを含んでなり、
ここで、試験剤の存在下でのSept4ユビキチン化の相対的増大は該試験剤がパーキンのユビキチン化活性を高めることを示し、また、試験剤の存在下でのSept4ユビキチン化の相対的減少は該試験剤がパーキンのユビキチン化活性を阻害することを示す、
パーキン活性のモジュレーターのエクスビボの細胞に基づくアッセイ。
【請求項17】
Sept4タンパク質が細胞中で内因的に発現される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
細胞がSept4タンパク質が細胞中で組換え発現される、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
パーキンタンパク質が野生型ヒトパーキンのバリアント若しくはフラグメントである、請求項16−18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
パーキンタンパク質が、位置167のセリンの代わりにアスパラギン;位置212のシステインの代わりにチロシン;位置240のトレオニンの代わりにメチオニン;位置275のアルギニンの代わりにトリプトファン;位置289のシステインの代わりにグリシン;若しくは位置437のプロリンの代わりにロイシンを有するバリアントである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
(a)神経細胞中でパーキンおよびSept4を共発現するヒト以外の動物を提供すること;
(b)試験剤を該動物に投与すること;
(c)該試験剤を投与した動物の前記神経細胞中のSept4ユビキチン化の速度若しくは程度を該剤を投与されない対照動物でのSept4ユビキチン化の速度若しくは程度と比較することを含んでなり、
ここで、治療薬の存在下でのSept4ユビキチン化の相対的増大は該治療薬がパーキンのユビキチン化活性を高めることを示し、また、該治療薬の存在下でのSept4ユビキチン化の相対的減少は該治療薬がパーキンのユビキチン化活性を阻害することを示す、パーキン活性のモジュレーターの同定方法。
【請求項22】
動物がげっ歯類若しくはヒト以外の霊長類である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
動物がマウスである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
動物が前記細胞中で1種若しくは複数の導入遺伝子を発現し、前記1種若しくは複数の導入遺伝子はセプチン−4およびパーキンのいずれか若しくは双方をコードする、請求項21に記載の方法。

【図2】
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【公表番号】特表2010−527614(P2010−527614A)
【公表日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−509525(P2010−509525)
【出願日】平成20年5月21日(2008.5.21)
【国際出願番号】PCT/US2008/064372
【国際公開番号】WO2008/144736
【国際公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(507234519)エラン・フアルマ・インターナシヨナル・リミテツド (3)
【Fターム(参考)】