説明

パージ装置

【課題】本発明は、最小限の設備投資で簡便に作製することができ、置換ガスの供給タイミングを好適に制御することのできる新規なパージ装置を提供することを目的とする。
【解決手段】容器を載置するための台座に開口部を形成し、置換ガスを放出するためのエアガンを、そのノズルと引き金に固定されたピンを開口部から突出させた状態で固定する。台座の上に注ぎ口を下にして容器を載置すると、上記ピンの先端部が容器の上面に当接し押圧される。その結果、上記ピンに連結した引き金が後退し置換ガスが放出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状製品の充填ラインに適用されるパージ装置に関し、より詳細には、既存のエアガンを流用して簡便かつ低コストで作製することができるパージ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタンの合成に用いられる有機ポリイソシアネート系の組成物製品は、一般に、ブリキ缶などの金属容器に充填されて出荷されるが、これらの製品は、分子構造の末端に活性の大きいイソシアネート基を持つ成分を多く含んでいるため、空気中の水分と素早く反応し、それが原因で製品に着色や濁り等が生じる虞がある。よって、従来、これらの製品の充填ラインでは、製品を充填する前に容器内の空気を窒素や乾燥空気で置換する、いわゆるパージ作業が行なわれている。
【0003】
図9は、手動でパージ作業を行なうライン100を示す。ここで、パージ作業自体は、容器に窒素などの置換ガスを強制的に封入することによって容器内の空気を排出させるという単純な工程であるため、図9に示すように、適当な台座102にガス供給管104を固定しただけの簡単な装置によって行なわれることが多く、図9に示す例では、置換ガスが常にガス供給管104から放出されている。
【0004】
ライン100では、まず、図9(a)に示すように、作業員は、注ぎ口を下にして金属缶106を持ち、注ぎ口にガス供給管104を挿入する形で金属缶106を台座102の上に載置する。その結果、ガス供給管104から放出される窒素などの置換ガスによって金属缶106内の空気が強制的にパージされる。パージが完了すると、作業員は、図9(b)に示すように、金属缶106をガス供給管104から抜き去った後、注ぎ口を上にして金属缶106を製品吐出口108の直下に載置し、製品を充填する。
【0005】
金属缶106に製品が充填される間、作業員は、別の空の金属缶を上述したのと同じ手順でガス供給管104に対してセットする。ライン100においては、金属缶に対して製品を充填するのに要する時間と、金属缶内の空気をパージするのに要する時間とがほぼ同じになるように置換ガスの流量が制御されているため、金属缶に製品を充填する間に次の金属缶をパージし、当該パージされた金属缶に製品を充填する間にさらに次の金属缶をパージするという作業が一人の作業員によって繰り返される。
【0006】
しかしながら、図9に示した例の場合、作業の効率性に鑑みて、置換ガスの供給の制御を省略し、常時、置換ガスをガス供給管104から放出するようにしているため、金属缶106の入れ替えの際、図9(b)に示すように、置換ガスが大気中に無駄に放出されてしまうという問題があった。このようにして浪費される置換ガスの量は総使用量の半分以上に至り、製造コストを上げる原因となっていた。そこで、有機ポリイソシアネート系の組成物製品の充填ラインにおいて、置換ガスの供給タイミングを制御することのできるパージ装置の導入が要請され、また、それに伴う追加の設備投資を最小限に抑えることが求められていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来技術における課題に鑑みてなされたものであり、本発明は、最小限の設備投資で簡便に作製することができ、置換ガスの供給タイミングを好適に制御することのできる新規なパージ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、最小限の設備投資で簡便に作製することができ、置換ガスの供給タイミングを好適に制御することのできるパージ装置につき鋭意検討した結果、既存のエアガンを流用して簡便に作製することができる新規な装置構成を着想し、本発明に至ったのである。
【0009】
すなわち、本発明によれば、注ぎ口を備える容器をパージする装置であって、前記注ぎ口を下にして前記容器を載置するための台座と、前記台座を支持する支持部と、置換ガスを放出するためのエアガンと、前記エアガンの引き金に固定されたピンとを備え、前記台座には少なくとも1つの開口部が形成され、前記エアガンがノズルおよび前記ピンの先端部を前記開口部から前記台座の表面上に突出させた状態で固定されることを特徴とするパージ装置が提供される。本発明においては、前記台座の上に前記注ぎ口を下にして前記容器を載置する際に、前記ピンの先端部が前記容器の上面に当接するように構成することが好ましい。また、本発明においては、前記台座は、前記エアガンのノズルが前記注ぎ口に挿入されるように前記容器を載置した場合に、前記容器の取手を逃がすように形成された開口部を備えることができる。さらに、本発明においては、前記エアガンの引き金には、さらに重りを固定し、前記重りの固定位置と前記引き金の回動支点との離間距離を変更自在に構成することができ、前記エアガンの引き金には、ネジ溝が有する棒状部材を連結し、前記重りを前記棒状部材に嵌合されるWナットとすることができる。さらに加えて、本発明においては、前記台座の表面の前記ノズルおよび前記ピンの少なくとも一方に近接した位置に磁石を配設することができる。
【発明の効果】
【0010】
上述したように、本発明によれば、最小限の設備投資で簡便に作製することができ、置換ガスの供給タイミングを好適に制御することのできる新規なパージ装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を図面に示した実施の形態をもって説明するが、本発明は、図面に示した実施の形態に限定されるものではない。
【0012】
本実施形態のパージ装置10の詳細について説明する前に、有機ポリイソシアネート系の組成物製品の充填工程について図1を参照して概説する。図1の紙面左側には、製品が充填される前の金属缶12がパレットの上に積載されている。作業員は、まず、この金属缶12の注ぎ口に装着された仮キャップを外し、注ぎ口を下にして金属缶12をパージ装置10にセットする。所定時間経過後にパージが完了すると、次に、作業員は、金属缶12をパージ装置10から外して注ぎ口が上になるように金属缶12をひっくり返し、製品吐出口14の直下にこれを載置して製品を充填する。
【0013】
一方、作業員は、これに平行して、別の空の金属缶12を上述したのと同じ手順でパージ装置10に対してセットし、先の金属缶12への製品充填時間を利用してこれをパージする。製品が充填された金属缶12は、ローラコンベア16で紙面右側の作業スペースに送られ、別の作業員がガス封入装置18を用いて注ぎ口から手作業で追加の置換ガスを封入したのち、注ぎ口に口金を嵌合して密閉する。
【0014】
以上、有機ポリイソシアネート系の組成物製品の充填工程の概略を説明したが、本実施形態のパージ装置10においては、金属缶12がセットされたことを契機にして置換ガスの供給が開始し、金属缶12の入れ替えの際に置換ガスの供給が自動的に停止されるため、置換ガスが大気中に無駄に放出されることが防止される。以下、この点について図2〜図8を参照して説明する。なお、図2〜図8においては、共通する要素については同じ符号を用いて示し、その説明を適宜省略する。
【0015】
図2は、本実施形態のパージ装置10の要部を示す図であり、図2(a)は、上面図を示し、図2(b)は、図2(a)に示す方向(S)からみた側面図を示し、図2(c)は、図2(a)に示す方向(F)からみた正面図を示す。
【0016】
図2(a)〜(c)に示されるように、パージ装置10は、金属缶などの容器をその注ぎ口を下にして載置するための台座20と、台座20を支持する支持部22と、支持部22に固定される引き金式のエアガン24とを含んで構成されている。
【0017】
図2(a)に示されるように、台座20には、エアガン24のロングノズル26を台座20の表面上に突出させるための開口部28が設けられている。なお、開口部28は、パージの際、容器中の空気が下方に好適に排出されるように、容器の注ぎ口よりも大きく形成することが好ましい。
【0018】
さらに、台座20には、エアガン24の引き金24tに連結されたピン30の先端部を台座20の表面上に突出させるための開口部32が設けられている。なお、図2には、開口部28と開口部32とを別々の開口部として設けた態様について示したが、本発明においては、これらを連続した一つの開口部として設けることもできる。
【0019】
さらに加えて、台座20の中央近傍には、大きめの開口部34が設けられている。一般に、金属缶12がブリキの一斗缶等である場合、その持ち運びを考慮して、図3(a)に示されるように取手12hがついているが、台座20の上に注ぎ口12iを下にして金属缶12を載置する場合、この取手12hを逃がすための開口部34が設けられている。
【0020】
図3(b)は、金属缶12を台座20にセットした際の様子を上から見た図である。図3(b)においては、説明の便宜のため、金属缶12を破線で描き、これを透視する形で示している。本実施形態においては、注ぎ口12iに対してエアガン24のロングノズル26が挿入された際、図3(b)に示されるように、取手12hが開口部34に入り込むため、取手12hが台座20と干渉することが回避される。その結果、金属缶12を安定的に台座20の上に載置することができ、作業性が向上する。以上、本実施形態のパージ装置10の物理的構成について説明したが、次に、本実施形態のパージ装置10の作製方法について図4を参照して説明する。
【0021】
図4は、本実施形態のパージ装置10の作製工程を時系列的に示す図である。本実施形態においては、まず、エアガン24の引き金24tの先端部にピン30を固着する。ピン30の固着は、溶接等によって行なうこともできるが、図4に示すように、ピン30を中継部材36に固着した上で、引き金24tの先端部に対し中継部材36を介して着脱可能に固定することもできる。次に、ピン30を連結したエアガン24のグリップ24gを、グリップ24gの形状に合わせて形成された支持板37の上に設置する。その際、ロングノズル26およびピン30が、それぞれ台座20の開口部28および34から表面上に突出させる。最後に、押え板38およびネジなどの締結部材39を用い、グリップ24gを挟むようにして締結してエアガン24を支持部22に固定する。
【0022】
以上、本実施形態のパージ装置10の作製方法について説明したが、上述した構成は例示にすぎないことを理解されたい。本発明においては、上述した構成に限らず、ロングノズル26およびピン30が、それぞれ台座20の開口部28および34から表面上に突出した状態でエアガン24を固定することができる構成であればよく、例えば、ピン30と中継部材36を一体成形する、引き金24tとピン30を一体成形する、エアガン24を支持部22ではなく台座20に固定する等、当業者であれば種々の設計変更が可能であろう。以上、本実施形態のパージ装置10の物理的構成およびその作製方法について説明してきたが、次に、図5を参照して、本実施形態のパージ装置10の機能について説明する。
【0023】
図5は、本実施形態のパージ装置10に金属缶12がセットされる態様を時系列的に示す。なお、図5においては、説明の便宜のため、金属缶12の内部を透視して示す。図1について上述したように、金属缶12の注ぎ口12iにエアガン24のロングノズル26を挿入する形で、金属缶12を台座20の上に載置すると、図5(a)に示されるように、ピン30の先端が金属缶12の上面12uに当接する。
【0024】
その際、金属缶12の自重によってピン30が押圧され、図5(b)に示されるように、ピン30に連結した引き金24tが後退する。その結果、ロングノズル26から金属缶12の内部に置換ガスGが放出され、同時に金属缶12内の空気Aが注ぎ口12iおよび開口部28を経て下方に排出され、パージが実施される。パージが完了した後、作業員によって金属缶12が取り去られると、これに同期して引き金24tが元の位置に復帰するため、置換ガスGの放出は速やかに停止され、ピン30が再び台座20の表面上に突出する。
【0025】
なお、ピン30をどの程度、台座20の表面上に突出させるかについては、エアガン24の引き金24tの引きしろを考慮して適宜決定することができる。すなわち、本発明においては、金属缶12内の上面12uが台座20の表面に当接した際に、引き金24tを充分に後退させることができるように、ピン30を台座20の表面上に突出させ、その状態でエアガン24を支持部22または台座20の少なくとも一方に固定する。
【0026】
以上説明したように、本発明の本実施形態のパージ装置は、容器の自重を利用してエアガンの引き金を引く構成を採用しているが、使用する容器によってその自重も変わるため、例えば、軽い容器をパージする場合、押圧力が不足して、ピン30が充分に下がらない(すなわち、エアガンの引き金24tが引かれない)といったことがおこる可能性がある。そこで、そのような場合にも対応可能な実施形態を図6に示す。
【0027】
図6は、自重補完機構を備えるパージ装置40を示す。本実施形態において、自重補完機構42は、ピン30が固設され、所定の長さを有する棒状部材である中継部材44と二つのナット46,46とを含んで構成される。中継部材44にはネジ溝が切られており、これに二つのナット46,46が嵌合している。
【0028】
例えば、図6(a)に示す状態でパージを行なった後、パージ対象がより軽い容器に変更された場合、図6(b)に示すように、ナット46,46を回して矢印方向に後退させる。すると、ナット46,46の自重による重力の力点が、エアガン24の引き金24tの回動支点Pから遠ざかるため、その分、引き金24tに対して鉛直方向に追加の力が作用することになり、その結果、容器の自重の不足分が補われる。なお、本実施形態においては、所望の位置でナットを固定することができるようにWナットを採用している。以上、本実施形態における自重補完機構42について説明したが、本発明における自重補完機構は上述した構成に限定されるものでなく、エアガン24の引き金24tに固定される重りを備え、重りの固定位置と引き金24tの回動支点Pとの離間距離を変更自在にすることができる構成であればよく、その具体的な構成については種々の設計変更が可能である。
【0029】
さらに図7および図8を参照して、別の自重補完機構を備えるパージ装置50について説明する。図7(a)は、パージ装置50の上面図を示し、図7(b)は、その側面図を示す。図7に示されるように、パージ装置50においては、台座20の表面上であって、開口部28と開口部32との間に磁石52が配設されている。本実施形態においては、ロングノズル26およびピン30の少なくとも一方に近接した位置に磁石52が配設することが好ましい。パージ装置50の自重補完機構は、磁石52の磁力によって実現される。この点について、図8を参照して以下説明する。
【0030】
図8(a)は、本実施形態のパージ装置50に金属缶12がセットされる態様を示す。本実施形態の機能を説明するために、図8(a)において丸で囲んだ部分を図8(b)に拡大して示す。金属缶12がセットされ、その上面12uがピン30に当接した状態においては、図8(b)に示されるように、上面12uが磁石52の磁力によって矢印方向に引き寄せられる。すなわち、本実施形態においては、磁石52の磁力が上面12uに作用することにより、上面12uに当接したピン30を介して引き金24tに対して鉛直方向に追加の押力が負荷される結果、容器の自重の不足分が補われる。
【0031】
なお、磁石52は、自重補完機構として機能するとともに、金属缶12の注ぎ口12iを台座20に対して速やかに当接させる機能をも同時に果たしており、作業性の向上に寄与している。また、本発明においては、磁石52の形状、数、およびその配置位置は、図8に示した態様に限定されるものではなく、金属缶の着脱の迅速性や容易性、金属缶の安定性などの作業性を総合的に勘案して適宜設計することができる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
以上、説明したように、本発明によれば、最小限の設備投資で簡便に作製することができ、置換ガスの供給タイミングを好適に制御することのできる新規なパージ装置が提供される。本発明のパージ装置を導入することによって、有機ポリイソシアネート系の組成物製品の製造コストの低減が期待される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】有機ポリイソシアネート系の組成物製品の充填工程について示す図。
【図2】本実施形態のパージ装置の要部を示す図。
【図3】金属缶を台座にセットした際の様子を上から見た図。
【図4】本実施形態のパージ装置の作製工程を時系列的に示す図。
【図5】本実施形態のパージ装置に金属缶がセットされる態様を時系列的に示す図。
【図6】自重補完機構を備えるパージ装置を示す図。
【図7】磁石を利用した自重補完機構を備えるパージ装置を示す図。
【図8】磁石を利用した自重補完機構を備えるパージ装置に金属缶がセットされる態様を示す図。
【図9】作業員によって手動でパージ作業を行なうラインを示す図。
【符号の説明】
【0034】
10…パージ装置、12…金属缶、14…製品吐出口、16…ローラコンベア、18…ガス封入装置、20…台座、22…支持部、24…エアガン、26…ロングノズル、28…開口部、30…ピン、32…開口部、34…開口部、36…中継部材、37…支持板、38…押え板、39…締結部材、40…パージ装置、42…自重補完機構、44…中継部材、46…ナット、50…パージ装置、52…磁石、100…ライン、102…台座、104…ガス供給管、106…金属缶、108…製品吐出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
注ぎ口を備える容器をパージする装置であって、
前記注ぎ口を下にして前記容器を載置するための台座と、
前記台座を支持する支持部と、
置換ガスを放出するためのエアガンと、
前記エアガンの引き金に固定されたピンとを備え、
前記台座には少なくとも1つの開口部が形成され、
前記エアガンは、ノズルおよび前記ピンの先端部を前記開口部から前記台座の表面上に突出させた状態で固定されることを特徴とする、
パージ装置。
【請求項2】
前記台座の上に前記注ぎ口を下にして前記容器を載置する際に、前記ピンの先端部が前記容器の上面に当接することを特徴とする、請求項1に記載のパージ装置。
【請求項3】
前記台座は、前記エアガンのノズルが前記注ぎ口に挿入されるように前記容器を載置した場合に、前記容器の取手を逃がすように形成された開口部を備える、請求項1または2に記載のパージ装置。
【請求項4】
前記エアガンの引き金には、さらに、重りが固定され、前記重りの固定位置と前記引き金の回動支点との離間距離が変更自在であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のパージ装置。
【請求項5】
前記エアガンの引き金には、ネジ溝が有する棒状部材が連結され、前記重りが前記棒状部材に嵌合されるWナットであることを特徴とする、請求項4に記載のパージ装置。
【請求項6】
前記台座の表面の前記ノズルおよび前記ピンの少なくとも一方に近接した位置に磁石が配設されていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のパージ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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