説明

パーマネントウェーブ、縮毛矯正用後処理剤組成物

【課題】
毛髪への美容処理の代表的なものとして、パーマネントウェーブ法や縮毛矯正法がある。パーマネントウェーブ剤や縮毛矯正用のパーマ剤は、施術後、メルカプタン臭や硫化水素臭はいわゆるパーマ臭と呼ばれる不快な独特の臭気が数週間にわたって毛髪に残るという欠点を有するが、十分な抑制効果を有するパーマネントウェーブ、縮毛矯正用後処理剤組成物はなかった。
【解決手段】
硫酸銅及び/又はグルコン酸銅、炭を必須成分として含有することにより、相乗効果による高いパーマ臭抑制効果を有するパーマネントウェーブ、縮毛矯正用後処理剤組成物が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はパーマネントウェーブ、縮毛矯正用後処理剤組成物に関する。さらに詳しくは、本発明は毛髪にパーマネントウェーブ処理や縮毛矯正処理を施す際に発生するメルカプタン臭や硫化水素臭の残臭を効率的に抑制することができるパーマネントウェーブ、縮毛矯正用後処理剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
毛髪は美容上非常に重要な部分であり、種々の美容処理が行われている。このうち毛髪をセットする上で最も効果のあるものはパーマネントウェーブ法や縮毛矯正法である。パーマネントウェーブ剤や縮毛矯正用のパーマ剤は、還元剤等を含有する第一剤と、酸化剤等を含有する第二剤とからなる。第一剤に含有される還元剤は毛髪のタンパク質であるシスチンのジスルフィド結合を化学的に切断する機能を有し、また第二剤に含有される酸化剤は新たな部位でジスルフィド結合を再生して毛髪の形状を安定化するという機能を有する。
【0003】
そして上記還元剤としては、チオグリコール酸又はその塩、システイン又はその塩、アセチルシステイン又はその塩、チオ乳酸又はその塩、システアミン又はその塩、チオグリセロール、チオグリコール酸グリセリンエステル等の有機チオール化合物等が使用されている。
【0004】
これらの有機チオール化合物は毛髪中のジスルフィド結合を切断させるだけでなく、毛髪中のシスチン等の硫黄化合物に対し、あるいはチオール化合物自体で化学反応を起こして、低分子硫黄化合物を生成させる。この低分子化合物のメルカプタン臭や硫化水素臭はいわゆるパーマ臭と呼ばれる不快な独特の臭気で、施術後数週間にわたって毛髪に残り、洗髪や発汗時に脱離拡散し被施術者に極度の不快感を与えるといった欠点を有している。
【0005】
このようなパーマ処理の際に発生する不快臭に対し、いくつかの技術が開示されている。例えば、パーマネントウェーブや縮毛矯正処理後の毛髪に、酸性の後処理剤を施し不快臭を抑制する処理剤(特許文献1参照)、特定の重合体を含有した消臭剤(特許文献2参照)、二価の金属イオンを配合した毛髪用消臭処理剤(特許文献3参照)の報告があるが、いずれも不快臭低減という問題点を十分に満足させるものではなく、また毛髪にごわつき感やきしみ感といった好ましくない感触を生じ、仕上がり感が損なわれるといった問題があった。
【0006】
このように、従来のパーマネントウェーブや縮毛矯正処理用の後処理剤は、不快臭を抑制する効果は満足できるものではなく、メルカプタン臭や硫化水素臭といったパーマ臭を抑制する効果の高い後処理剤の開発が望まれていた。
【0007】
【特許文献1】特開平3−271214号公報
【特許文献2】特開2004−339181号公報
【特許文献3】特開2003−261425号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の目的は、パーマネントウェーブや縮毛矯正処理された毛髪に対し、その後発生するメルカプタン臭や硫化水素臭を効果的に抑制することが可能な、パーマネントウェーブ、縮毛矯正用後処理剤組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、硫酸銅及び/又はグルコン酸銅、炭を必須成分として配合することにより、パーマネントウェーブ処理や縮毛矯正処理を施す際に発生するメルカプタン臭や硫化水素臭の残臭を効率的に抑制するパーマネントウェーブ、縮毛矯正用後処理剤組成物を見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち本発明は、パーマネントウェーブ、縮毛矯正用後処理剤に硫酸銅及び/又はグルコン酸銅、炭を必須成分として含有することにより、相乗効果による高いパーマ臭抑制効果を有するパーマネントウェーブ、縮毛矯正用後処理剤組成物を提供するものである。以下に、本発明の構成について述べる。
【0011】
本発明のパーマネントウェーブ、縮毛矯正用後処理剤組成物に用いられる硫酸銅及び/又はグルコン酸銅は、二価の銅イオンの硫酸塩及び/又はグルコン酸塩であり、これらの配合量は特に限定されないが、好ましくは0.05〜3重量%である。又、充分にパーマ臭の抑制効果が得られ、経済性を考慮すれば、0.1〜1重量%がさらに好ましい。配合量が0.05重量%未満ではパーマ臭抑制効果を発揮することができないことがあり、3重量%を越えて配合しても、配合量に見合うだけの効果が得られなく経済的でないことがある。
【0012】
本発明のパーマネントウェーブ、縮毛矯正用後処理剤組成物に用いられる炭とは木材等の炭化物であり、例えば備長炭、ナラ白炭、カシ白炭、クヌギ黒炭、コナラ黒炭、カシ黒炭、ヒノキ木炭等の木炭、竹炭、薬用炭、活性炭などを挙げることができる。これらのうち薬用炭が好ましい。
【0013】
本発明のパーマネントウェーブ、縮毛矯正用後処理剤組成物に用いられる炭の配合量は特に限定されないが、0.1〜10重量%が好ましい。又、充分にパーマ臭の抑制効果が得られ、経済性を考慮すれば、0.3〜3重量%がさらに好ましい。配合量が0.1重量%未満ではパーマ臭抑制効果を発揮することができないことがあり、10重量%を越えて配合すると、毛髪への伸びやなじみといった使用感が悪くなることがある。
【0014】
本発明のパーマネントウェーブ、縮毛矯正用後処理剤組成物には上記の必須成分に加えて、化粧料成分としては特に制約はなく、カチオン、アニオン、非イオン、両性等の各種界面活性剤、多価アルコール、糖類、金属イオン封鎖剤、増粘剤、油剤、pH調整剤、各種ポリマー、保湿剤、高級アルコール、紫外線吸収剤、尿素、防腐剤、動植物の抽出エキス、香料、色素、水等一般に化粧品、医薬品、食品に用いられるすべての原料が本発明を達成する範囲内で適宜配合することができる。
【0015】
即ち、界面活性剤としては、例えば、パルミチン酸ナトリウム等の脂肪酸セッケン、ラウリル硫酸ナトリウム等の高級アルキル硫酸エステル塩、POEラウリル硫酸トリエタノールアミン等のアルキルエーテル硫酸エステル塩、ラウロイルサルコシンナトリウム等のN−アシルサルコシン酸、ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム等の高級脂肪酸アミドスルホン酸塩、POEステアリルエーテルリン酸等のリン酸エステル塩、ジ2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム等のスルホコハク酸塩、N−ラウロイルグルタミン酸モノナトリウム等のN−アシルグルタミン酸塩、硬化ヤシ油脂肪酸グリセリン硫酸ナトリウム等の高級脂肪酸エステル硫酸塩等のアニオン性界面活性剤。
【0016】
塩化ステアリルトリメチルアンモニウム等のアルキルトリメチルアンモニウム塩、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム等のジアルキルジメチルアンモニウム塩、塩化セチルピリジウム等のアルキルピリジウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等のカチオン性界面活性剤。
【0017】
2−ココイル−2−イミタゾリニウムヒドロキサイド−1−カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等のイミタゾリン系両性界面活性剤、2−ヘプタデシル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等のベタイン系界面活性剤等の両性界面活性剤。
【0018】
ソルビタンモノステアレート、ソルビタンセスキオレエート等のソルビタン脂肪酸エステル類、モノステアリン酸グリセリン等のグリセリン脂肪酸類、モノステアリン酸プロピレングリコール等のプロピレングリコール脂肪酸エステル類、硬化ヒマシ油誘導体、グリセリンアルキルエーテル、POEソルビタンモノオレエート等のPOEソルビタン脂肪酸エステル類、POEソルビットモノステアレート等のPOEソルビット脂肪酸エステル類、POEグリセリンモノイソステアレート等のPOEグリセリン脂肪酸エステル類、POEモノオレエート等のPOE脂肪酸エステル類、POE2−オクチルドデシルエーテル等のPOEアルキルエーテル類、プルロニック等のプルロニック型類、POE・POPセチルエーテル等のPOE・POPアルキルエーテル類、テトロニック等のテトラPOE・テトラPOPエチレンジアミン縮合物類、POEヒマシ油等のPOEヒマシ油誘導体、POE硬化ヒマシ油、POE硬化ヒマシ油モノイソステアレート等のPOE硬化ヒマシ油誘導体、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグルコシド等の非イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0019】
また、多価アルコール及び糖類は湿潤剤としての機能を持ち、例えば、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、キシリトール、ソルビトール、マルチトール、マンニトール、エリトリトール等が挙げられる。
【0020】
また、金属イオン封鎖剤としては、例えば、ジエチレントリアミン五酢酸五ナトリウム、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジフォスフォン酸四ナトリウム塩、エデト酸二ナトリウム等が挙げられる。
【0021】
また、増粘剤としては、例えば、カラギーナン、キサンタンガム、グアーガム、アラビアガム、ペクチン、マンナン、キチン、キトサン、寒天、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、サクシノグルカン、ポリアクリル酸ナトリウム、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、ラウリン酸モノエタトールアミド、脂肪酸イソプロパノールアミド等のアルカノールアミド等が挙げられる。
【0022】
また、油剤としては、例えば、流動パラフィン、スクワラン等の炭化水素、ホホバ油、液状ラノリン等のロウ類、ミリスチン酸イソプロピル、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、ジイソステアリン酸ジグリセリル、トリ2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン等のエステル、ヒマシ油、マカデミアナッツ油等の油脂類、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等の鎖状ポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等の環状ポリシロキサン等のシリコーン油等が挙げられる。
【0023】
また、高級アルコールとしては、例えば、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール等が挙げられる。
【0024】
その他、L−アスパラギン酸、グルタミン酸等のアミノ酸、コラーゲン、ケラチン、絹、大豆タンパク、小麦タンパク等動植物由来のタンパク質の加水分解物やその誘導体等が挙げられる。
【0025】
また、本発明のパーマネントウェーブ、縮毛矯正用後処理剤組成物の剤形は、特に限定されないが、一般に化粧料として用いられている剤形であればよく、例えば液状やクリーム状、ジェル状、泡状、エアゾールタイプ等が挙げられる。
【0026】
次に実施例によって、本発明をさらに詳細に説明する。ただし本発明は実施例に限定されるものではない。なお、配合量は重量%である。
【0027】
【表1】

【0028】
<実施例1〜8、比較例1〜3の製造方法>
本発明のパーマネントウェーブ、縮毛矯正用後処理剤組成物として、表1の組成にしたがって、(1)〜(9)を均一混合し、ローションタイプのパーマネントウェーブ、縮毛矯正用後処理剤組成物を調製した。
【0029】
これら本発明のローションタイプのパーマネントウェーブ、縮毛矯正用後処理剤組成物について下記の使用試験を行って効果を評価した。
【0030】
<パーマ臭抑制効果及び毛髪感触評価>
パーマネントウェーブや縮毛矯正等の化学的処理を施していない人毛を長さ30cmに切り揃え、重量が4gとなるように束ねてサンプル毛束を作成した。この毛束に35℃、15分の条件によりパーマネントウェーブ剤第1剤を処理し、中間水洗を30℃で15秒行い、さらに35℃、15分の条件によりパーマネントウェーブ剤第2剤で処理を行った。その後、実施例1〜8、比較例1〜3の処方のローションタイプのパーマネントウェーブ、縮毛矯正用後処理剤組成物を塗布し、数分間放置した後、30℃で15秒洗い流した。パーマネントウェーブ、縮毛矯正用後処理剤で処理した毛髪に対しパーマ臭抑制効果の官能評価を専門パネリスト30名で実施し、結果を表2に示した。官能評価における評価基準は以下のとおりである。
【0031】
<パーマ臭抑制効果>
記号 評価基準
◎ パーマ臭を抑制できていると回答した者が30名中25名以上。
○ パーマ臭を抑制できていると回答した者が30名中20〜24名。
△ パーマ臭を抑制できていると回答した者が30名中15〜19名。
× パーマ臭を抑制できていると回答した者が30名中14名以下。
【0032】
【表2】

【0033】
表2において、実施例1〜8の本発明のローションタイプのパーマネントウェーブ、縮毛矯正用後処理剤組成物を使用した場合、メルカプタン臭や硫化水素臭といったパーマ臭に対して高い抑制効果を示した。それに対して比較例1〜3のローションタイプのパーマネントウェーブ、縮毛矯正用後処理剤組成物は実施例1〜8よりもパーマ臭抑制効果が劣ることから、硫酸銅及び/又はグルコン酸銅、炭を単独で用いるよりも、併せて配合した方がパーマ臭抑制効果が高いことがわかる。
【0034】
【表3】

【0035】
<実施例9〜16、比較例4〜6>
次に、本発明のパーマネントウェーブ、縮毛矯正用後処理剤組成物として表3の組成にしたがって、(1)〜(4)を加熱溶解し、別途加熱溶解した(5)〜(9)を添加し均一にした後冷却した。冷却の途中で残りの(10)〜(13)を添加して、乳化タイプのパーマネントウェーブ、縮毛矯正用後処理剤組成物を調製した。
【0036】
これら本発明の乳化タイプのパーマネントウェーブ、縮毛矯正用後処理剤組成物について下記の使用試験を行って効果を評価した。
【0037】
<パーマ臭抑制効果及び毛髪感触評価>
パーマネントウェーブや縮毛矯正等の化学的処理を施していない人毛を長さ30cmに切り揃え、重量が4gとなるように束ねてサンプル毛束を作成した。この毛束に35℃、15分の条件により、パーマネントウェーブ剤第1剤で処理し、中間水洗を30℃で15秒行い、さらに35℃、15分の条件によりパーマネントウェーブ剤第2剤で処理を行った。その後、実施例9〜16、比較例4〜6の処方の乳化タイプのパーマネントウェーブ、縮毛矯正用後処理剤組成物を塗布し、数分間放置した後、30℃で15秒洗い流した。パーマネントウェーブ、縮毛矯正用後処理剤で処理した毛髪に対しパーマ臭抑制効果の官能評価を専門パネリスト30名で実施し、結果を表4に示した。官能評価における評価基準は以下のとおりである。
【0038】
<パーマ臭抑制効果>
記号 評価基準
◎ パーマ臭を抑制できていると回答した者が30名中25名以上。
○ パーマ臭を抑制できていると回答した者が30名中20〜24名。
△ パーマ臭を抑制できていると回答した者が30名中15〜19名。
× パーマ臭を抑制できていると回答した者が30名中14名以下。
【0039】
【表4】

【0040】
表4において、実施例9〜16の本発明の乳化タイプのパーマネントウェーブ、縮毛矯正用後処理剤組成物を使用した場合、メルカプタン臭や硫化水素臭といったパーマ臭に対して高い抑制効果を示した。それに対して比較例4〜6の乳化タイプのパーマネントウェーブ、縮毛矯正用後処理剤組成物は実施例9〜16よりもパーマ臭抑制効果が劣ることから、硫酸銅及び/又はグルコン酸銅、炭を単独で用いるよりも、併せて配合した方がパーマ臭抑制効果が高いことがわかる。
【発明の効果】
【0041】
以上記載したとおり、本発明によりパーマネントウェーブ、縮毛矯正処理後のメルカプタン臭や硫化水素臭といったパーマ臭に対して高い抑制効果を有するパーマネントウェーブ、縮毛矯正用後処理剤組成物を提供することができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫酸銅及び/又はグルコン酸銅と炭を必須成分として含有することを特徴とするパーマネントウェーブ、縮毛矯正用後処理剤組成物。
【請求項2】
硫酸銅及び/又はグルコン酸銅の配合量が0.1〜1重量%である請求項1記載のパーマネントウェーブ、縮毛矯正用後処理剤組成物。
【請求項3】
炭の配合量が0.3〜3重量%である請求項1乃至2記載のパーマネントウェーブ、縮毛矯正用後処理剤組成物。


【公開番号】特開2006−206445(P2006−206445A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−16659(P2005−16659)
【出願日】平成17年1月25日(2005.1.25)
【出願人】(592262543)日本メナード化粧品株式会社 (223)
【Fターム(参考)】