説明

ヒアルロン酸加水分解酵素及び該酵素を用いた低分子化ヒアルロン酸の製造方法

【課題】ヒアルロン酸をエンド型で加水分解する活性を有するヒアルロン酸加水分解酵素及び該酵素低分子化ヒアルロン酸の製造方法を提供する。
【解決手段】微生物由来のヒアルロニダーゼを探索し、ヒアルロン酸をエンド型で加水分解する活性を有する新規なヒアルロン酸加水分解酵素を得、該酵素で加水分解された低分子化ヒアルロン酸の製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物由来であり、かつ、ヒアルロン酸をエンド型で加水分解する活性を有する新規なヒアルロン酸加水分解酵素、該酵素をコードする遺伝子、該酵素の製造方法、及び該酵素を用いた低分子化ヒアルロン酸の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒアルロン酸は、D−N−アセチルグルコサミン(以下「GlcNAc」と称する)及びD−グルクロン酸(以下「GlcUA」と称する)の2糖による繰り返し構造[…GlcNAc(β−1,4)GlcUA(β−1,3)GlcNAc(β−1,4)GlcUA(β−1,3)…]からなる直鎖の多糖であり、その高い保湿機能により、医薬品、飲食品、化粧品の分野で広く用いられている。
【0003】
ヒアルロン酸の体内への吸収性を高めるためには、低分子化ヒアルロン酸の使用が有用である。低分子化の方法としては、アルカリや酸で処理する方法(例えば、特許文献1参照)や酵素的に分解する方法(例えば、特許文献2参照)が挙げられる。酵素的に分解する方法としては、ヒアルロニダーゼによりヒアルロン酸を低分子化する方法が知られている。既知のヒアルロニダーゼは、反応様式により以下の3つの種類に分類される。

反応様式1:ヒアルロノグルコサミニダーゼ(EC 3.2.1.35)
GlcNAcとGlcUAを結ぶβ−1,4グリコシド結合をエンド型で加水分解する。例えば、哺乳類(ヒト、ウシ等)の精巣、血清由来や、ヘビ、ハチの毒液由来等(例えば、非特許文献1、2、特許文献3参照)が知られている。

反応様式2:ヒアルロノグルクロニダーゼ(EC 3.2.1.36)
GlcUAとGlcNAcを結ぶβ−1,3グリコシド結合をエンド型で加水分解する。例えば、ヒル由来等(例えば、特許文献4参照)が知られている。

反応様式3:ヒアルロン酸リアーゼ(EC 4.2.2.1)
GlcNAcとGlcUAを結ぶβ−1,4グリコシド結合を、β脱離反応を利用してエンド型で分解する。例えば、ストレプトミセス属やストレプトコッカス属等の微生物由来(例えば、非特許文献3参照)が知られている。
【0004】
しかしながら、従来のヒアルロニダーゼには以下のような課題があった。まず、反応様式1の加水分解型ヒアルロノグルコサミニダーゼ(EC 3.2.1.35)及び反応様式2の加水分解型ヒアルロノグルクロニダーゼ(EC 3.2.1.36)については、動物由来のものしか見出されておらず、酵素の大量生産が困難であり、高価であった。
一方、反応様式3のヒアルロン酸リアーゼ(EC 4.2.2.1)は、微生物由来であり、生産効率の観点からは有利である。しかしながら、この酵素により生成する低分子化ヒアルロン酸は、非還元末端に4,5−不飽和ウロン酸を有しており、生体内に存在するヒアルロン酸の非還元末端構造(飽和型)とは構造的に異なる。
医薬品、飲食品、化粧品の用途を考慮すれば、加水分解で生成する低分子化ヒアルロン酸の使用が好ましく、このような技術的背景から、加水分解型であり、かつ、微生物由来のヒアルロニダーゼが強く求められていた。
【0005】
【特許文献1】特開2006−265287号公報
【特許文献2】特開2006−271351号公報
【特許文献3】特開2006−119号公報
【特許文献4】特表2003−502045号公報
【非特許文献1】「The Enzymes,2nd edn」,(米国),1960年,4巻,p.447−460
【非特許文献2】「Biochemal and Biophysical Research Communications」,(米国),1997年,236巻,p.10−15
【非特許文献3】「Biochimica et Biophysica Acta」,(蘭国),1997年,1337巻,p.217−226
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、ヒアルロン酸をエンド型で加水分解する活性を有する微生物由来の酵素及び該酵素で加水分解された低分子化ヒアルロン酸の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで本発明者らは、前記課題解決のために鋭意研究を重ねた結果、真菌等の微生物由来のヒアルロニダーゼを見出した。そして、本酵素が微生物由来としては新規である、ヒアルロン酸をエンド型で加水分解する活性を有する酵素であることがわかった。さらに本酵素をコードする遺伝子、本酵素の製造方法を明らかにし、本酵素を用いた低分子化ヒアルロン酸の製造方法を見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の発明を提供するものである。
(1)微生物由来であり、かつ、ヒアルロン酸をエンド型で加水分解する活性を有するヒアルロン酸加水分解酵素。
(2)アミノ酸配列にGEIDI若しくはGEIDVモチーフを有することを特徴とする、上記(1)記載のヒアルロン酸加水分解酵素。
(3)下記(a)〜(e)の理化学的性質を有する上記(1)又は(2)記載のヒアルロン酸加水分解酵素:
(a)作用:ヒアルロン酸をエンド型で加水分解し、偶数単位のオリゴ糖ユニットを産生する;
(b)至適pH:2.5〜3.5;
(c)至適温度:35〜50℃;
(d)熱安定性:50℃以下;
及び
(e)分子量:約30,000(SDS−PAGE法)。
(4)以下の(f)、(g)又は(h)で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質であることを特徴とする、上記(1)〜(3)のいずれかに記載のヒアルロン酸加水分解酵素:
(f)配列番号3若しくは4で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質;
(g)配列番号3若しくは4で表されるアミノ酸配列において、1から複数個のアミノ酸が欠失、置換及び/又は付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質;
(h)配列番号3若しくは4で表されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を示すアミノ酸配列からなるタンパク質。
(5)上記(1)〜(4)のいずれかに記載のヒアルロン酸加水分解酵素の生産能を有する微生物の培養物から該酵素を回収することを特徴とする、ヒアルロン酸加水分解酵素の製造方法。
(6)以下の(i)、(j)、(k)又は(l)のDNAからなる遺伝子:
(i)配列番号1若しくは2で表される塩基配列からなるDNA;
(j)配列番号1若しくは2で表される塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、ヒアルロン酸加水分解活性を有するタンパク質をコードするDNA;
(k)配列番号1若しくは2で表される塩基配列からなるDNAと80%以上の相同性を示し、かつ、ヒアルロン酸加水分解活性を有するタンパク質をコードするDNA;
(l)配列番号1若しくは2で表される塩基配列からなるDNAにおいて、1から複数個のDNAが欠失、置換及び/又は付加され、かつ、ヒアルロン酸加水分解活性を有するタンパク質をコードするDNA。
(7)上記(1)〜(4)のいずれかに記載のヒアルロン酸加水分解酵素を含有することを特徴とする、ヒアルロン酸を低分子化するための酵素製剤。
(8)ヒアルロン酸に上記(1)〜(4)のいずれかに記載のヒアルロン酸加水分解酵素を作用させて、低分子化ヒアルロン酸を生成させることを特徴とする、低分子化ヒアルロン酸の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ヒアルロン酸をエンド型で加水分解する活性を有する微生物由来の酵素及び該酵素で加水分解された低分子化ヒアルロン酸の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
まず、本発明の酵素(以下、「本酵素」と称する)について説明する。本酵素は、ヒアルロン酸をエンド型で加水分解する反応を触媒する酵素である。ヒアルロン酸の分解部位は、特に限定されないが、例えばGlcNAcとGlcUAを結ぶβ−1,4グリコシド結合が挙げられる。
本酵素は、非還元末端に4,5−不飽和ウロン酸を有する低分子化ヒアルロン酸を生成させるリアーゼ反応ではなく、生体内に存在するヒアルロン酸と同じ非還元末端構造(飽和型ウロン酸)を有する低分子化ヒアルロン酸を生成する加水分解反応を触媒するため、産業上、特に有用である。
【0011】
酵素反応の確認、酵素活性の測定は、例えば、以下のように行うことができる。
HPLC法(例えば、実施例1の5「低分子化ヒアルロン酸の分析」に記載)を用いて生成物の分子量を測定することにより、エンド型の加水分解が起こっていることが示される。
また、GlcNAcとGlcUAを結ぶβ−1,4グリコシド結合が分解されているかどうかを調べるためには、Morgan−Elson法、「The Journal of Biochemistry」,(米国),1955年,217巻,p.959−966の手順を参照することにより、GlcNAcの還元末端が生成していることを確認すればよい。
また、本酵素反応が脱離反応ではなく加水分解反応であることを調べるためには、分解生成物において不飽和ウロン酸に特有の232nmの吸収がないことを確認すればよい(「糖鎖工学と医薬品開発」,(日本),医薬品副作用被害救済・研究振興基金編,薬業時報社,平成5年12月,p.37参照)。
なお、これらの測定方法は、一例を示したものであり、測定の試薬や種類や濃度、pHについて何ら制限するものではない。
【0012】
本酵素は、微生物を由来とする。通常の培養で安価に生産させることができ、既知の動物由来の酵素と比較して製造が容易であり、産業上有利である。
ここでいう微生物とは、真菌[キノコ、糸状菌(カビ)、酵母]又は原核生物(バクテリア)を指す。
真菌としては、例えば、ペニシリウム属(アオカビ)、アスペルギルス属(コウジカビ)、リゾプス属等の糸状菌、サッカロミセス属、キャンディダ属、デバリオミセス属等の酵母が挙げられる。好ましくはペニシリウム属を由来とするものが挙げられる。具体的には、例えば、ペニシリウム パープロゲナム(Penicillium purpurogenum)やペニシリウム フニクロスム(Penicillium funiculosum)であり、さらに具体的にはペニシリウム パープロゲナム IAM 13753株、IAM 13754株、IAM 7095株、ペニシリウム フニクロスム IAM 13752株などが挙げられる。
【0013】
また、本酵素は、例えば、配列番号3及び4においては、112〜116番目の位置に示されるように、微生物由来の多糖加水分解酵素(EC 3.2.1.−)に特徴的な5つのアミノ酸からなるアミノ酸配列モチーフ(GEIDI若しくはGEIDV)を有している(「Applied Environmental Microbiology」,(米国),1998年,64巻,p.385−391参照)。これらのアミノ酸配列モチーフは、動物由来のヒアルロニダーゼには存在せず、これらのモチーフを有する酵素が微生物由来、かつ、反応が加水分解型であることを示す。従来から知られていた本モチーフを有する微生物由来の多糖加水分解酵素にはヒアルロン酸分解活性は見出されていない。本酵素は、ヒアルロン酸加水分解活性を有し、かつ、本モチーフが存在する酵素として初めて見出された。
【0014】
また、本酵素の一形態として、例えば、以下の(a)〜(e)に記載の理化学的性質をそれぞれ若しくはそれらを適宜併せて有するヒアルロニダーゼ等が挙げられる。
(a)作用:ヒアルロン酸をエンド型で加水分解し、偶数単位のオリゴ糖ユニットを産生する。
(b)至適pH:2.5〜3.5
(c)至適温度:35〜50℃
(d)熱安定性:50℃以下
(e)分子量:約30,000(SDS−PAGE法)
さらに、本酵素として、例えば、以下の(f)、(g)又は(h)で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質などが挙げられる。
(f)配列番号3若しくは4で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(g)配列番号3若しくは4で表されるアミノ酸配列において、1から複数個のアミノ酸が欠失、置換及び/又は付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質。
(h)配列番号3若しくは4で表されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を示すアミノ酸配列からなるタンパク質。
【0015】
ここで、「1から複数個のアミノ酸が欠失、置換及び/又は付加された」とは、例えば、1〜30個、好ましくは1〜20個、さらに好ましくは1〜10個の任意の数のアミノ酸が欠失、置換及び/又は付加されたことを意味する。特に酵素のN末端における複数個のアミノ酸は、プロセッシングを受けて除去されることがあるため、このような考慮が必要である。
また、アミノ酸配列の相同性を評価するために、各種相同性検索プログラムやソフトが提供されており、いずれを用いてもよい。相同性の評価以外にも、好ましくは、同一性の評価も用いられる。相同性と同一性の違いは、同じ性質を持つアミノ酸(例えば、グルタミン酸とアスパラギン酸など)は相同性があるとみなされるが、同一性では区別される。「80%以上の相同性を示す」とは、配列番号3若しくは4で表されるアミノ酸配列との相同性若しくは同一性が、例えば、80%以上、好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上である。
【0016】
次に、本酵素の製造方法に関して説明する。
本酵素含有組成物は、例えば、上記に例示した微生物を培地で培養することにより製造される。本酵素含有組成物が得られる限り、微生物の培養方法及び酵素組成物の採取方法は特に限定されないが、例えば、以下の方法が採用できる。
ペニシリウム属(アオカビ)、アスペルギルス属(コウジカビ)、リゾプス属等の糸状菌、サッカロミセス属、キャンディダ属、デバリオミセス属等の酵母を、適当な培地に植菌し、25〜35℃、2〜10日間、静置培養する。
培地としては、例えば、合成培地、米飯等の穀物蒸煮物が使用できる。得られた培養物は、そのまま本酵素含有組成物として利用できるが、0.2M NaCl水溶液を用いて抽出することもできる。さらに通常の酵素精製方法を用いて、本酵素含有組成物中の酵素の純度を高めることができる。このようにして得られた本酵素含有組成物は、ヒアルロン酸の低分子化を行う製剤として使用してもよい。
【0017】
次に、本酵素をコードする遺伝子(以下、「本遺伝子」という)としては、例えば、以下の(i)、(j)、(k)又は(l)のDNAからなる遺伝子などが挙げられる。
(i)配列番号1若しくは2で表される塩基配列からなるDNA。
(j)配列番号1若しくは2で表される塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、上記本酵素活性を有するタンパク質をコードするDNA。
(k)配列番号1若しくは2で表される塩基配列からなるDNAと80%以上の相同性を示し、かつ、上記本酵素活性を有するタンパク質をコードするDNA。
(l)配列番号1若しくは2で表される塩基配列からなるDNAにおいて、1から複数個のDNAが欠失、置換及び/又は付加され、かつ、上記本酵素活性を有するタンパク質をコードするDNA。
これらのDNAは、本酵素活性をもたらすポリペプチドをコードしている蓋然性が高く、形質転換体を作製し、活性を持つものを選択することができる。本遺伝子と実質的に同一な遺伝子を取得するためには、配列番号1若しくは2の塩基配列を有するDNA又はその相補鎖、又はそれらの一部を含むプローブによりストリンジェントな条件でハイブリダイゼーションし、本酵素活性を有するポリペプチドをコードするものを選択することができる。
【0018】
ここでいうストリンジェントな条件とは、特異的なハイブリッドのみが選択的に形成され、シグナルが検出されるが、非特異的なハイブリッドは形成されない条件である。このような条件は、個々の生物種により若干異なるが、常法によりハイブリダイゼーションと洗浄の際の塩濃度又は温度をいくつか検討するのみで容易に決定することができる。このような条件としては、例えば、ハイブリダイゼーションは、DIG Easy Hyb試薬(ロシュ・ダイアグノスティクス社製)を用いて37〜42℃で一晩行う。洗浄は、0.5×SSC、0.1% SDSを用い、15分間、2回行う。洗浄の温度は、45℃以上、好ましくは52℃以上、さらに好ましくは57℃以上である。このような条件でハイブリダイズするようなDNAは、本酵素活性を有するタンパク質をコードしている蓋然性が高いが、活性を失うような変異を有するものも含まれる。しかし、それらについては、形質転換を行った後に、形質転換体の酵素産生能を測定することにより容易に取り除くことが可能である。
また、遺伝子配列の相同性の評価はアミノ酸配列の相同性評価と同様に行うことができる。本発明における、「80%以上の相同性を示す」とは、例えば、80%以上、好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上である。
【0019】
本遺伝子の取得方法としては、通常一般的に用いられている遺伝子のクローニング方法が用いられる。例えば、前述した本酵素生産能を有する微生物菌体から常法、「Current Protocols in Molecular Biology」 ,WILEY Interscience,1989に記載されている方法を参照して、染色体DNA又はmRNAを抽出することができる。さらにmRNAを鋳型としてcDNAを合成することができる。このようにして得られた染色体DNA又はcDNAのライブラリーを作製する。ついで、上記本酵素のアミノ酸配列に基づき、適当なプローブDNAを合成して、これを用いて染色体DNA又はcDNAのライブラリーからスクリーニングする方法、あるいは、上記アミノ酸配列や取得した遺伝子の部分配列情報に基づき、適当なプライマーDNAを作製して、Degenerate PCR法、Inverse PCR法、5’−RACE法、3’−RACE法などの適当なポリメラーゼ連鎖反応(PCR法)により、目的の遺伝子断片を含むDNAを増幅させ、これらを連結させて全長の本遺伝子を含むDNAを得ることができる。さらに、既知である類似酵素の遺伝子配列やその周辺の配列、アミノ酸の配列の情報を利用して適当な混合塩基プライマーを作製し、PCR法により、目的の遺伝子断片を含むDNAを増幅させることもできる。
【0020】
上記のようにして得られた本遺伝子を、「The Operon」,p.227, Cold Spring Harbor Laboratory, 1980に記載されている手順を参照にして、大腸菌ラクトースオペロンやトリプトファンオペロン等に由来するプロモーター、オペレーター及びリボゾーム結合部位等の発現領域を含むDNA配列を保有するベクターDNAに挿入し、得られた組み換え体DNAを用いて、例えば、大腸菌等に形質導入して本酵素高生産株を得ることができる。
【0021】
用いられるベクターDNAは、如何なるものでもよく、例えば、プラスミドDNA若しくはバクテリオファージDNA等でもよい。また、得られた組み換え体DNAを用いて、大腸菌のほか、適宜、他の細菌、酵母、糸状菌、放線菌などの微生物や動物細胞などを形質転換又はそれらに形質導入してそれぞれの形質転換体若しくは形質導入体を得ることができる。
【0022】
本酵素含有組成物が得られる限り、上記組み換え体DNAを含む形質転換体又は形質導入体の培養方法及び酵素組成物の採取方法は特に限定されないが、例えば、以下の方法が採用できる。
組み換え大腸菌を適当な培地に植菌し、20〜42℃で6〜120時間培養する。培養は通気撹拌深部培養、振とう培養、静置培養等により実施するのが好ましい。
培地としては、例えば、LB培地が使用できる。酵素生産誘導基質として、適量のイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)等を適宜添加してもよい。培養終了後、該培養物をそのまま本酵素含有組成物として利用することができる。
【0023】
上記培養物から、例えば、濾過、遠心分離等の操作により菌体を分離し、洗菌する。この菌体から本酵素を回収することが好ましい。この場合、菌体をそのまま用いることもできるが、超音波破砕機、フレンチプレス、ダイナミル等の種々の破壊手段を用いて菌体を破壊する方法、リゾチームの如き細胞壁溶解酵素を用いて菌体細胞壁を溶解する方法、トリトンX−100等の界面活性剤を用いて菌体から本酵素を抽出する方法等により、菌体から本酵素を回収することができる。
【0024】
さらに通常の酵素精製方法を用いて、本酵素含有組成物中の酵素含有量を高めることができる。例えば、硫安塩析法、有機溶媒沈澱法、イオン交換クロマトグラフ法、ゲル濾過クロマトグラフ法、疎水クロマトグラフ法等を適宜組み合わせて行うことができる。このようにして得られた本酵素含有組成物は、ヒアルロン酸の低分子化を行う際の酵素製剤として使用することができる。
【0025】
低分子化ヒアルロン酸は、本酵素含有組成物を用いて以下のように製造することができる。
ヒアルロン酸は、その由来や平均分子量は特に限定されず、各種の動物(鶏冠等)又は微生物(例えば、ストレプトコッカス属等)から得られるものが使用できる。また、ヒアルロン酸としては、各種市販品(紀文フードケミファ社製「ヒアルロン酸FCH」、キユーピー社製「ヒアルロンサンHA−F」等)を使用することもできる。
【0026】
上記ヒアルロン酸に本酵素含有組成物を作用させる際の条件は、使用するヒアルロン酸及びヒアルロニダーゼの種類に応じて適宜設定すればよい。例えば、微生物由来の平均分子量180万〜220万のヒアルロン酸に、本酵素含有組成物を作用させる場合、0.1%ヒアルロン酸溶液に対して、本酵素含有組成物を添加し、必要に応じてpHを適宜調整し、30〜40℃で1〜72時間程度反応させればよい。
【0027】
上記の反応により、低分子化されたヒアルロン酸が生成する。反応終了後の反応系から、低分子化ヒアルロン酸を分離精製する方法は任意である。分離法としては、例えば、ろ過法、透析法、抽出法、ゲルろ過、イオン交換樹脂やシリカゲル等を用いるクロマトグラフィー法、再結晶等を適宜用いることができる。
【実施例】
【0028】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明の技術的範囲は、それらの例により何ら限定されるものではない。
【0029】
〔実施例1〕
(真菌由来ヒアルロニダーゼの活性確認)
以下の方法により、ペニシリウム属の真菌がヒアルロニダーゼを生産していることを確認した。
1.試験菌株(4種)
(1)ペニシリウム パープロゲナム IAM 13753株
(2)ペニシリウム パープロゲナム IAM 13754株
(3)ペニシリウム パープロゲナム IAM 7095株
(4)ペニシリウム フニクロスム IAM 13752株
2.ヒアルロン酸の調製
ヒアルロン酸(紀文フードケミファ社製「ヒアルロン酸FCH FCH200」)を0.1%の濃度で蒸留水に溶解させ、ヒアルロン酸水溶液とした。
3.ヒアルロニダーゼ含有組成物の調製
試験菌株を米飯培地に植菌し、30℃、3日間静置培養した。培養物に0.2M NaCl水溶液を添加し、1時間振とうした後、遠心により培養上清を調製し、これをヒアルロニダーゼ含有組成物(以下、「本酵素含有組成物」という)とした。コントロールとして、米飯培地を30℃、3日間同様に静置し、0.2M NaCl水溶液を添加し、1時間振とうした後、遠心により遠心上清を得た。
4.ヒアルロン酸の低分子化処理
ヒアルロン酸水溶液に、ヒアルロニダーゼ含有組成物を任意の割合で両者を混合した後、混合物を37℃で18時間程静置し、ヒアルロン酸の低分子化処理を行った。
5.低分子化ヒアルロン酸の分析
低分子化処理後の試料中に含まれるヒアルロン酸の平均分子量について、ゲルろ過カラムを用いて分析した。ゲルろ過の条件は、以下のとおりである。
・カラム: G4000SWXL(7.8×300mm×2,東ソー社製)
・溶離液: 0.2M NaCl
・流 速: 1ml/min.
・検 出: 吸光度(214nm)
・分子量標準物質: Shodex STANDARD P−82
【0030】
図1に、ペニシリウム パープロゲナム IAM 13753株由来のヒアルロニダーゼ含有組成物を用いて得られた低分子化ヒアルロン酸のゲルろ過カラムによる分析結果を示す。
図1上段が低分子化処理前、図1下段が処理後のヒアルロン酸のチャートである。低分子化処理前におけるヒアルロン酸の分子量のピークは、100万以上(図1上段)であったが、処理後に得られた低分子化ヒアルロン酸の分子量のピークは、約1万(図1下段)であった。
残りの3株の試験菌株全てについても、図1同様低分子化処理後の試料に含まれるヒアルロン酸の平均分子量は、処理前の平均分子量よりも小さいことが確認された。また、添加した酵素組成物の量若しくは処理時間に応じて、ヒアルロン酸の平均分子量が小さくなっていることも確認された。
【0031】
一方、上記3.でコントロールとして調製した遠心上清については、低分子化処理の前後でヒアルロン酸の平均分子量は変化しなかった。
以上のことから、4種の試験菌株の全てがヒアルロン酸をエンド型で分解するヒアルロニダーゼを生産し、これらの酵素含有組成物がヒアルロン酸の低分子化製剤として利用可能であることが示された。
【0032】
〔実施例2〕
(ペニシリウム パープロゲナム IAM 13753株により生産される本酵素の製造)
ペニシリウム パープロゲナム IAM 13753株から抽出したヒアルロニダーゼ含有組成物を20mM リン酸カリウム緩衝液(pH7.0)で平衡化したQ−セファロースFastFlow(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)カラム(5cm×18cm)に吸着させた。20mM リン酸カリウム緩衝液(pH7.0)で洗浄後、0〜1M 塩化ナトリウムを含有する同緩衝液にて直線濃度勾配法により溶出させ、ヒアルロニダーゼ活性を示す画分を回収した。
【0033】
次いで硫安を添加し、2M 硫安を含有する20mM リン酸カリウム緩衝液(pH7.0)で平衡化したトヨパールブチル−650C(東ソー社製)カラム(2.5cm×15cm)にかけた。2M 硫安を含有する20mM リン酸カリウム緩衝液(pH7.0)で洗浄後、2〜0M 硫安を含有する同緩衝液にて直線濃度勾配法により溶出した。溶出された活性画分をセントリプレップ10(アミコン社製)で濃縮し、20mM リン酸カリウム緩衝液(pH7.0)で透析した。得られた酵素は、以下の実施例3において説明する本酵素の理化学的性質を決定する際に用いた。
【0034】
〔実施例3〕
(ペニシリウム パープロゲナム IAM 13753株が生産する本酵素の理化学的性質)
実施例2により得られた本酵素の理化学的性質として、下記(a)〜(e)について調べた。
【0035】
(a)作用
以下の方法により、本酵素がヒアルロン酸のGlcNAcとGlcUAを結ぶβ−1,4グリコシド結合をエンド型で加水分解することを確認した。
1.HPLCによる低分子化ヒアルロン酸の分析
実施例1中の5番に記載の方法により、本酵素がヒアルロン酸をエンド型で加水分解することを確認した。
2.Morgan−Elson法によるGlcNAc還元末端の生成の確認
本酵素により生成した低分子化ヒアルロン酸の還元末端がGlcNAcかGlcUAのいずれであるかを調べるため、Morgan−Elson法によるGlcNAc還元末端量の定量を行った。
本酵素を作用させたヒアルロン酸溶液について、「The Journal of Biochemistry」,(米国),1955年,217巻,p.959−966に記載されている手順に沿って測定を行った。
その結果、GlcNAc還元末端が新たに生成していることが確認でき、本酵素はGlcNAcとGlcUAを結ぶβ−1,4グリコシド結合を分解していることがわかった。
3.低分子化ヒアルロン酸の吸光度分析
ペニシリウム パープロゲナム由来のヒアルロニダーゼ含有組成物を用いて低分子化処理したヒアルロン酸をゲルろ過カラムにより分離した。分子量約1万に相当する溶出時間(10分)のフラクションについて、多波長検出器(日本分光社製 MD2010plus)により吸光度スペクトルを測定した。
結果として得られた低分子化ヒアルロン酸には不飽和ウロン酸に特有の232nmの吸収が認められなかった。よって、本酵素含有組成物による低分子化反応は、リアーゼ反応ではなく、加水分解反応であることが示唆された。
【0036】
(b)至適pH
pH2.5〜6.0の範囲で、温度43℃にて酵素反応を行った。結果を図2に示す。本酵素は、pH3.0において最も高い活性を示し、pH2.5〜3.5で高い活性を示したことから、本酵素の至適pHはpH2.5〜3.5であると判断した。
【0037】
(c)至適温度
35℃以上の種々の温度にて本酵素の活性測定を行った。結果を図3に示す。最も高い活性を示した温度である43℃付近での活性に対して50%以上の活性を示す温度範囲は、35〜50℃であった。以上から、本酵素の至適温度の範囲は、35〜50℃であると判断した。
【0038】
(d)熱安定性
各温度で60分間処理した時の熱安定性の結果は、図4に示すとおりであり、本酵素は、50℃付近まで安定であった。
【0039】
(e)分子量
SDS−PAGE[PAGミニ「第一」10/20(第一化学薬品社製)、BenchMark Protein Ladder(インビトロジェン社製)]で分子量を求めた。本酵素のサブユニットの分子量は、約30,000であった。
【0040】
〔実施例4〕
(本酵素をコードする遺伝子のクローニングと大腸菌による組換え発現)
(1)本酵素のアミノ酸配列の分析
実施例2にて得られたペニシリウム パープロゲナム IAM 13753株が生産する本酵素を、50mMトリス−塩酸緩衝液(pH9.0)中で、37℃にて一晩、エンドプロテイナーゼ Asp−N(宝酒造社製)処理し、断片化した。上記断片を、Capcell Pak C18 SG300(資生堂社製)を用いた逆相HPLCにより分取した。得られた断片ペプチドのアミノ酸配列をエドマン法により分析した。
【0041】
(2)本酵素をコードするcDNA配列の解析
実施例1−3にて得られた菌体3種(ペニシリウム パープロゲナム IAM 13753株、ペニシリウム パープロゲナム IAM 13754株、ペニシリウム フニクロスム IAM 13752株)を液体窒素で凍結し、粉砕した。この菌体破砕物からISOGEN(ニッポンジーン社製)を用いてRNAを得た。
【0042】
上記(1)で得られたアミノ酸配列を基に、コドンが縮重している箇所を混合塩基としたPCR用プライマーを作製した。3種のRNAを鋳型とし、RNA PCR Kit(AMV) Ver.3.0(宝酒造社製)により増幅したDNA断片をそれぞれ単離し、塩基配列を決定した。その結果、得られたDNA断片は本酵素をコードする遺伝子の一部分(部分遺伝子)であることがわかった。
【0043】
次いで、上記の操作で得られた塩基配列に基づき、3’−RACE及び5’−RACEに必要となるオリゴヌクレオチドをそれぞれ設計した。RNA PCR Kit(AMV) Ver.3.0(宝酒造社製)及び5’−Full RACE Core Kit(宝酒造社製)を用いて3’−RACEおよび5’−RACEを行い、増幅したDNA断片をそれぞれ単離し、塩基配列を決定した。結果として、各DNA断片は本酵素をコードする遺伝子の一部分(部分遺伝子)であり、開始コドン(ATG)若しくは終止コドンを有していることが判明した。
【0044】
以上の操作により、本酵素をコードする遺伝子配列の全長を決定した。遺伝子配列情報に基づいてアミノ酸配列を推定し、上記(1)で得られたN末端アミノ酸配列を比較したところ、ペニシリウム パープロゲナム IAM 13753株由来の酵素(成熟型酵素)はN末端のMKGITLATAAVPLLLSVGVAA(配列番号5)の部分が除去されていることがわかった。これにより、ペニシリウム パープロゲナム IAM 13753株由来の本酵素の遺伝子配列及びアミノ酸配列をそれぞれ配列番号1及び配列番号3のように推定した。
ペニシリウム パープロゲナム IAM 13754株については、得られた遺伝子配列及び推定されたアミノ酸配列はそれぞれ配列番号1及び配列番号3と完全に一致していた。
また、ペニシリウム フニクロスム IAM 13752株については、ペニシリウム パープロゲナム IAM 13753株由来の酵素のアミノ酸配列と比較した結果、N末端のMKTSTLAAAVCQVFLGTRAVA(配列番号6)の部分が除去されていることが予想された。これにより、ペニシリウム フニクロスム IAM 13752株由来の本酵素の遺伝子配列及びアミノ酸配列をそれぞれ配列番号2及び配列番号4のように推定した。
【0045】
配列番号3及び配列番号4のアミノ酸配列について既知の各種ヒアルロニダーゼとの相同性を調べたが、有意な相同性は認められなかった。また、配列番号3及び配列番号4に示されるように、微生物由来の多糖加水分解酵素(EC 3.2.1.−)に特徴的な5アミノ酸配列(GEIDI)がともに112〜116番目の位置に有していることがわかった。このようなモチーフ配列を有する酵素でヒアルロニダーゼ活性を有するものはこれまでに知られていない。
よって、本酵素は、微生物由来の新規なヒアルロン酸加水分解酵素であることが本結果からも示された。
【0046】
(3)本酵素をコードする全長cDNAのクローニング
成熟型酵素の遺伝子全長を取得するために、配列番号1及び配列番号2の5’末端に開始コドン(ATG)を付加した配列を成熟型酵素の遺伝子とみなし、5’末端あるいは3’末端を含むオリゴヌクレオチド(計30塩基のオリゴヌクレオチド、3’末端側は相補鎖)を設計した。ペニシリウム パープロゲナム IAM 13753株については、プライマー中にEcoRV部位を組み込んでおき、PCRで増幅した産物を、EcoRVを作用させて消化することにより、コーディング領域が得られるようにしておいた。すなわち、5’−AGTGTGGGAGATATCATGTACAAGCTGCAA−3’(30 mer)(配列番号7)、アンチセンスプライマーとして5’−CTCCTTGAAACAGATATCTCATTGATACAG−3’(30 mer)(配列番号8)を合成した。ペニシリウム フニクロスム IAM 13752株については、プライマー中にPvuII部位を組み込んでおき、PCRで増幅した産物を、PvuIIを作用させて消化することにより、コーディング領域が得られるようにしておいた。すなわち、5’−GGGACAAGACAGCTGATGTACACGCTGCAC−3’(30 mer)(配列番号9)、アンチセンスプライマーとして5’−TGATATCATTCACAGCTGTCACTGGTACAA−3’(30 mer)(配列番号10)を合成した。先に調製したRNAを鋳型とし、それぞれ3’−Full RACE Core Kit(宝酒造社製)用いてRT−PCRを行った。得られた増幅DNA(約900bp)の塩基配列をそれぞれ解析した結果、配列番号1及び配列番号2と完全に一致した。
【0047】
(4)HAaseをコードする遺伝子の大腸菌による組換え発現
3’−RACEで増幅したHAaseをコードするDNA(約900bp)を制限酵素(EcoRVもしくはPvuII)で処理し、大腸菌ラクトースオペロン等に由来するプロモーター、オペレーター及びリボゾーム結合部位等の発現領域を含むDNA配列(The Operon, p.227, Cold Spring Harbor Laboratory, 1980を参照)を保有するpKK223−3(Amersham Pharmacia Biotech社製)のクローニングサイトに挿入し、組換え体プラスミドDNA pHAaseを得た。
【0048】
D.M.Morrisonの方法(Methods in Enzymology,68,p.326−331,1979)に従い、組換え体プラスミドDNA pHAaseを用いて大腸菌(E.coli)DH5α(宝酒造社製)を形質転換し、形質転換株、E.coli DH5α(pHAase)を得た。菌体よりQIAGEN tip−100(キアゲン社製)を用いて組換え体プラスミドpHAaseを抽出して精製し、組換え体プラスミドを得た。得られたE.coli DH5α(pHAase)を、LB−IPTG−amp培地〔バクトトリプトン1%(w/v),酵母エキス0.5%(w/v),NaCl 0.5%(w/v),イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(1mM)及びアンピシリン(50μg/ml)〕にて10時間振とう培養した。結果として培養温度25℃のときに、菌体破砕液中に最大のHAase活性が確認された。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】ペニシリウム属由来のヒアルロニダーゼ含有組成物を用いて得られた低分子化ヒアルロン酸の、ゲルろ過カラムによる分析結果を示した図である。
【図2】実施例3における本酵素の至適pHを示した図である。
【図3】実施例3における本酵素の至適温度を示した図である。
【図4】実施例3における本酵素の熱安定性を示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微生物由来であり、かつ、ヒアルロン酸をエンド型で加水分解する活性を有するヒアルロン酸加水分解酵素。
【請求項2】
アミノ酸配列にGEIDI若しくはGEIDVモチーフを有することを特徴とする、請求項1記載のヒアルロン酸加水分解酵素。
【請求項3】
下記(a)〜(e)の理化学的性質を有する請求項1又は2記載のヒアルロン酸加水分解酵素:
(a)作用:ヒアルロン酸をエンド型で加水分解し、偶数単位のオリゴ糖ユニットを産生する;
(b)至適pH:2.5〜3.5;
(c)至適温度:35〜50℃;
(d)熱安定性:50℃以下;
及び
(e)分子量:約30,000(SDS−PAGE法)。
【請求項4】
以下の(f)、(g)又は(h)で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のヒアルロン酸加水分解酵素:
(f)配列番号3若しくは4で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質;
(g)配列番号3若しくは4で表されるアミノ酸配列において、1から複数個のアミノ酸が欠失、置換及び/又は付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質;
(h)配列番号3若しくは4で表されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を示すアミノ酸配列からなるタンパク質。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のヒアルロン酸加水分解酵素の生産能を有する微生物の培養物から該酵素を回収することを特徴とする、ヒアルロン酸加水分解酵素の製造方法。
【請求項6】
以下の(i)、(j)、(k)又は(l)のDNAからなる遺伝子:
(i)配列番号1若しくは2で表される塩基配列からなるDNA;
(j)配列番号1若しくは2で表される塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、ヒアルロン酸加水分解活性を有するタンパク質をコードするDNA;
(k)配列番号1若しくは2で表される塩基配列からなるDNAと80%以上の相同性を示し、かつ、ヒアルロン酸加水分解活性を有するタンパク質をコードするDNA;
(l)配列番号1若しくは2で表される塩基配列からなるDNAにおいて、1から複数個のDNAが欠失、置換及び/又は付加され、かつ、ヒアルロン酸加水分解活性を有するタンパク質をコードするDNA。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれかに記載のヒアルロン酸加水分解酵素を含有することを特徴とする、ヒアルロン酸を低分子化するための酵素製剤。
【請求項8】
ヒアルロン酸に請求項1〜4のいずれかに記載のヒアルロン酸加水分解酵素を作用させて、低分子化ヒアルロン酸を生成させることを特徴とする、低分子化ヒアルロン酸の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−60888(P2009−60888A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−40487(P2008−40487)
【出願日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願人】(000004477)キッコーマン株式会社 (212)
【Fターム(参考)】