説明

ヒトβアミロイドタンパク質の組み換え形態の調製方法及びこれらのタンパク質の使用

本発明は、N末端メチオニン(又は1つ若しくはそれ以上の他のアミノ酸残基)を含有するβアミロイドタンパク質の組み換え形態のクローニング、発現及び単離並びに、治療用抗体の作製において、治療用小分子の同定において、及び診断アッセイの実施においてこの組み換えタンパク質を使用する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、N末端メチオニン(及び/又は1つ若しくはそれ以上の他のアミノ酸残基を)を含有するアミロイドβタンパク質の組み換え形態のクローニング、発現及び単離並びにこれらの組み換えタンパク質を用いた方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アミロイドβ(1−42)タンパク質(Aβ(1−42)とも称される。)は、1−39、1−40、1−41、1−42及び1−43の残基長にわたるタンパク質のファミリーである。1−42形態は、アルツハイマー及びダウン症候群患者の脳内において、タンパク質、脂質、炭水化物及び塩から構成される不溶性細胞外沈着(老人斑又は神経突起斑)の中心成分である(Masters et al., PNAS 82, 4245−4249, 1985)。特に、アミロイドβ(1−42)及び類似の誘導体タンパク質は、タンパク質分解プロセッシングによって、アミロイド前駆体タンパク質(APP)に由来する、42アミノ酸を有するポリペプチドである。これには、ヒトバリアントに加えて、ヒト以外の生物、特に、他の哺乳動物、特にラット中に存在するアミロイドβ(1−42)タンパク質のイソフォームも含まれる。水性環境中で重合する傾向があるこのタンパク質は、極めて異なる分子形態で存在し得る。
【0003】
例えば、アルツハイマー病などの認知症疾患の発生又は進行と、不溶性タンパク質の沈着との単純な相関は、疑わしいことが判明している(Terry et al., Ann.Neurol.30.572−580(1991),Dickson et al.,Neurobiol.Aging 16,285−298(1995))。これに対して、シナプスの喪失及び認知知覚は、Aβ(1−42)の可溶性形態とよりよく相関するようである(Lue et al.,Am.J.Pathol.155,853−862(1999);McLean et al.,Ann.Neurol.46,860−866(1999))。
【0004】
Aβ(1−42)の可溶性形態については、アルツハイマー病などの認知症疾患を引き起こすと推定される分子形態に関して、本質的に2つの異なる仮説が存在する。第一に、Aβ(1−42)前原繊維(protofibril)の細胞毒性作用が推定されている。Aβ(1−42)前原繊維は、150から250kDaの範囲の分子量を有するなお可溶性の、比較的高度に凝集された繊維性Aβ(1−42)形態であり(Arispe et al.PNAS 90,567(1993),Lashuel et al.,Nature 418,291(2002))、孔形成特性のために、神経細胞の膜を通じた制御されないカルシウム流入を引き起こすようである。第二に、15から30kDaの範囲の分子量を有するオリゴマーAβ(1−42)誘導体が記載されている(M.P.Lambert et al.PNAS 95,6448−6453(1998))。アミロイド由来拡散性及び痴呆性リガンド又はADDL(amyloid derived, diffusible and dementing ligand)とも称されるこれらの非繊維性オリゴマー(U.S.Patent No.6,218,506;International Application No.WO01/10900;及びLambert et al、上記)は、海馬切片中の神経細胞の長期増強の速度に対して阻害的影響を示す調製物中に見出すことができる。しかしながら、オリゴマー関する従来の研究状況は、実際に関与している種がほとんど不明であることを特徴とする。文献中の情報は、大幅に異なっている。例えば、U.S. Patent No.6,218,506は、3から12個のサブユニットを有するADDLを記載するのに対して、International Application No.WO01/10900に記載されているADDLは、最大24のサブユニットを有し得る(Luhrs et al., PNAS 102(48),17342−17347(2005)も参照されたい。)。
【0005】
さらに、アルツハイマー病に関連して、Aβ(1−42)タンパク質のN末端切断形態が発生することが報告されている。早くも1985年に、死亡したアルツハイマー病患者の脳の沈着内に、Aβ(1−42)以外に、N末端切断された形態も検出された(C.Masters et al.,PNAS 82,4245−4249(1985))。従って、ネプリリシン(NEP24.11)又はIDE(インシュリン分解酵素の略号)など、脳内に存在する特定のプロテアーゼが、Aβ(1−42)を分解できることも知られている(D.J. Selkoe,Neuron 32,177−180,(2001))。しかしながら、アルツハイマー病の発病におけるN末端切断形態の重要性は、明確でない(Lee et al., JBS 278,4458−4466(2003))。興味深いことに、散発性若しくは家族性アルツハイマー病又はダウン症候群に罹患している患者には、これらの末端切断された形態を優先的に蓄積している者がいる(J. Naslund et al, PNAS 91,8378−8382,(1994),C.Russo et al.,Nature 405,531−532,(2000),T.C.Saido et al, Neuron 14, 457−466,(1995))。比較的最近の研究によって(Sergeant et al.,J.of Neurochemistry 85,1581−1591,(2003))、死亡したアルツハイマー患者の脳内の全ての不溶性Aβペプチドの60%が、N末端切断された形態に基づいていることが示された。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記に照らして、ヒトにおけるアルツハイマー病の検出に関連する研究及び得られるアッセイ、さらに重要なことには、アルツハイマー病の予防又は治療用の生物試薬及び小分子の開発における研究及び得られるアッセイの要求を満たすために、(様々な形態の)アミロイドβタンパク質の大量を生産することが確実に必要とされている。さらに、このような生産は、アルツハイマー病の発病に関連するタンパク質の特性に関するさらなる研究を可能とする。従って、このタンパク質を、十分な量で、及び自然状態類似の機能的な形態で産生する方法は、極めて高い価値を有する。
【0007】
さらに、インビトロでの従来の研究は、ペプチドの天然切断点から生じる化学的に合成された配列に依存してきた。また、インビボでの研究は、通例、天然の切断点での切断から生じたことが自明である、生物学的に合成されたアミロイドβに依拠している。従って、イー・コリ(E.coli)などの原核生物組み換え系内で自然状態及び変異体アミロイドペプチドの大量を生産する能力を有することは、現存する生産方法より確実に好ましい。
【0008】
本明細書に引用されている全ての特許及び公報は、参照により、その全体が本明細書中に組み込まれる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、式[X+Y]によって表されるタンパク質に対して少なくとも70%のアミノ酸配列同一性を有する精製されたβ−アミロイドタンパク質(「X」は、メチオニン、バリン及びロイシンからなる群から選択される、前記タンパク質のアミノ末端に位置する1つ又はそれ以上のアミノ酸を含み、並びに「Y」は、自然の(native)アミロイドβタンパク質のアミノ酸配列の全部又は一部を含む。)を包含する。特に、「Y」は、自然状態のβアミロイドタンパク質の39から43の連続するアミノ酸を含み得る。「Y」は、自然状態のβアミロイドタンパク質のアミノ酸配列に対して少なくとも70%の配列同一性を有する公知のヒト家族性変異バリアントも含む。アルツハイマー病前駆体タンパク質(APP)の配列の番号付けに基づいて、これらのヒト家族性変異体には、Glu665Asp(Peacock, et al., Ann Neurol.1994 Apr;35(4):432−8);Lys/Met670/Asn/Leu(スウェーデン)(Mullan, et al., Nat Genet.1992 Aug;1(5):345−7);Ala673Thr(Peacock, et al., Neurology.1993 Jun;43(6):1254−6);His677Arg(Janssen, et al.Neurology.2003 Jan 28;60(2):235−9);Asp678Asn(Wakutani, et al.J Neurol Neurosurg Psychiatry.2004 Jul;75(7):1039−42);Ala692Gly(フランドル)(Kumar−Singh et al., Am J Pathol.2002 Aug 1;161(2):507−520);Glu693Gly(北極)Kamino, et al., Am J Hum Genet.1992 Nov;51(5):998−1014);Glu693Gln(オランダ)(Van Broeckhoven, et al.Science. 1990 Jun 1;248(4959):1120−2);Glu693Lys(イタリア)(Tsubuki, et al., Lancet.2003 Jun 7;361(9373):1957−8);Asp694Asn(アイオワ)(Grabowski, et al., Ann Neurol.2001 Jun;49(6):697−705);Ala713Thr(Carter, et al., Nat Genet.1992 Dec;2(4):255−6);Ala713Val(Jones, et al., Nat Genet.1992 Jul;1(4):306−9)が含まれるが、これらに限定されない。上述のように、「X」は、例えば、メチオニンであり得る。
【0010】
さらに、本発明は、式[X+Y]によって表されるタンパク質に対して少なくとも70%のアミノ酸配列同一性を有するβ−アミロイドタンパク質をコードする単離された核酸分子(「X」は、メチオニン、バリン及びロイシンからなる群から選択される、前記タンパク質のアミノ末端に位置する1つ又はそれ以上のアミノ酸を含み、並びに「Y」は、自然のアミロイドβタンパク質のアミノ酸配列の全部又は一部を含む。)を含む。「X」及び「Y」は、上に定義されているとおりであり得る。本発明は、単離された核酸分子を含むベクター及びこのベクターを含む宿主細胞も含む。
【0011】
さらに、本発明は、式[X+Y]によって表されるタンパク質に対して少なくとも70%の酸配列同一性を有する精製されたβ−アミロイドタンパク質を作製する方法(「X」は、メチオニン、バリン及びロイシンからなる群から選択される、前記タンパク質のアミノ末端に位置する1つ又はそれ以上のアミノ酸を含み、並びに「Y」は、自然のアミロイドタンパク質のアミノ酸配列の全部又は一部を含む。)を包含する。本方法は、a)上記β−アミロイドタンパク質をコードする核酸分子をベクター中に形質移入する段階;及びb)宿主細胞による前記β−アミロイドタンパク質の発現に十分な時間及び条件下で、段階a)の前記ベクターを宿主細胞中に形質転換する段階を含む。宿主細胞が、原核細胞(例えば、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)、バチルス種(Bacillus sp.)、ストレプトコッカス種(Streptococcus sp.)又はラクトバチルス種(Lactobacillus sp)又は真核細胞(例えば、昆虫細胞、酵母細胞又は哺乳動物細胞)であり得る。
【0012】
また、本発明は、上述のように、β−アミロイドタンパク質のMet形態に結合し、及び/又はβ−アミロイドタンパク質のMet形態に対して産生された単離された抗体を含む。前記抗体は、モノクローナル又はポリクローナル抗体であり得る。好ましくは、抗体は、モノクローナルであり、及びヒト又はヒト化されている。本抗体は、少なくとも0.50μMの特異的結合定数(K)、−30kJ/モル超の結合エンタルピー及び/又は少なくとも1つの抗体/アミロイド球状凝集体の抗体/アミロイド球状凝集体結合比を有し得る。(本抗体は、抗原の非Met形態(例えば、Aβ(1−42)又はAβ(1−40))にも結合し得ることに留意することが重要である。)。
【0013】
さらに、本発明は、アルツハイマー病の治療又は予防を必要としている患者において、アルツハイマー病を治療又は予防する方法を含む。この方法は、治療又は予防を実施するのに十分な量で、上記単離された抗体を患者に投与することを含む。抗体は、例えば、筋肉内、静脈内又は皮下など、あらゆる適切な治療経路によって投与され得る。
【0014】
さらに、本発明は、1)反平行鎖内配置で配向された残基19から21及び残基30から32並びに2)平行鎖間配置で配向された残基34から38を含む単離されたMet−β−アミロイドペプチドオリゴマーを含む。このオリゴマーは、F19(NH)−I32(NH)、F19(NH)−I32(HB)、F19(NH)−I32(HG##)、A21(NH)−A30(NH)、A21(NH)−A30(HB#)、A21(NH)−I31(HD1#)、A21(NH)−I31(HG1#)、I32(NH)−F19(HD1#)、I32(NH)−F19(HB#)及びA30(NH)−A21(HB#)からなる群から選択される原子対に対して、約1.8から6.5オングストローム内の分子内プロトン間距離を有するA−β(1−42)ペプチドも含む。
【0015】
本発明は、さらに、単離されたMet−β−アミロイドペプチドオリゴマーを含み、該オリゴマーは、G33(NH)−G34(NH)、M35(NH)−V36(NH)、G37(NH)−G38(NH)、G33(NH)−V18(CγH)、V18(NH)−V18(CγH3)、L34(NH)−L34(Cδ3)、M35(NH)−V36(CγH)、G38(NH)−V39((CγH)及びV39(NH)−V39((CγH)からなる群から選択される原子対に対して、約1.8から5.5オングストローム内のペプチド鎖Aとペプチド鎖B間の分子間プロトン間距離を有するA−β(1−42)ペプチドを含む。このオリゴマーは、少なくとも残基19から21及び30から32を含む分子内反平行βシートも含み、原子対{F19CO,I32N}、(I32CO,F19N}、{A21CO,A30N}及び{A30CO,A21N}が、3.3±0.5Åの距離であり、COが、骨格酸素原子を示し、及び前記残基のファイ(φ)角度が−180から−30の範囲であり、及び前記残基のプサイ(ψ)角度が、約60から180又は約−180から−150の範囲である。
【0016】
さらに、本発明は、単離されたMet−β−アミロイドオリゴマーであり、前記オリゴマーは、少なくとも2つのβ−アミロイドペプチド(標識されたA及びB)の少なくとも残基34から38を含む分子間平行βシートを含み、以下の原子対{G33CO(A),L34N(B)},{L34CO(B),M35N(A)},{M35CO(A),V36N(B)],{V36CO(B),G37N(A)},及び{G37CO(B),G38N(A)}(COは、骨格酸素原子を示す。)が、3.3±0.5Åの距離であり、及び前記残基のファイ(φ)角度が−180から−30の範囲であり、及び前記残基のプサイ(ψ)角度が60から180又は−180から−150の範囲である、前記単離されたβ−アミロイドオリゴマーを含む。
【0017】
さらに、本発明は、少なくとも1つのβ−アミロイドN−Met1−42オリゴマーに結合する別の単離された抗体を含む。このオリゴマーは、例えば、(a)少なくとも残基19から21及び30から32を含む分子内反平行βシート(以下の原子対は、{F19CO,I32N}、(I32CO,F19N}、{A21CO,A30N}及び{A30CO,A21N}(COは、骨格酸素原子を示す。)が、3.3±0.5Åの距離であり、及び前記残基のファイ(φ)角度が−180から−30の範囲であり、及び前記残基のプサイ(ψ)角度が、60から180又は−180から−150の範囲である。)並びに(b)少なくとも2つのβ−アミロイドペプチド(標識されたA及びB)の少なくとも残基34から38を含む分子間平行β−シート(以下の原子対{G33CO(A),L34N(B)},{L34CO(B),M35N(A)},{M35CO(A),V36N(B)},{V36CO(B),G37N(A)}及び{G37CO(B),G38N(A)}(COは、骨格酸素原子を示す。)が、3.3±0.5Åの距離であり、及び前記残基のファイ(φ)角度が−180から−30の範囲であり、及び前記残基のプサイ(ψ)角度が、60から180又は−180から−150の範囲である。)からなる群から選択され得る。この抗体−オリゴマー複合体は、図20及び21に示されている何れかの物理的に許容される立体構造を含む少なくとも2つのN−Met1−42βアミロイドペプチドを含む三次元構造を有し得る。(この抗体は、抗原の非Met形態に、並びにMet及び非Met形態の末端切断された部分にも結合し得る。)
【0018】
さらに、本発明は、上記単離されたβアミロイドタンパク質の少なくとも2つを含む精製されたMet含有球状凝集体及び精製された球状凝集体に結合する単離された抗体を含む。
【0019】
診断的使用に関連して、本発明は、アルツハイマー病を有することが疑われている患者において、アルツハイマー病を診断する方法を含む。本方法は、a)患者から生物学的試料を単離する段階;b)球状凝集体/抗体複合体の形成のために十分な時間及び条件下で、単離された抗体の1つ又はそれ以上と生物学的試料を接触させる段階;及びc)前記試料中の球状凝集体/抗体複合体の存在を検出する段階を含み、複合体の存在が、患者中のアルツハイマー病の診断を示唆する。
【0020】
本発明は、アルツハイマー病を有すると疑われる患者においてアルツハイマー病を診断する方法であり、a)前記患者から生物学的試料を単離する段階;b)抗体/球状凝集体複合体の形成に十分な時間及び条件下で、球状凝集体のMet含有形態と、前記生物学的試料を接触させる段階;c)結合された抗体へコンジュゲート(conjugate)が結合するのに十分な時間及び条件下で、得られた抗体/球状凝集体複合体にコンジュゲートを添加する段階(前記コンジュゲートは、検出可能なシグナルを発生することができるシグナル生成化合物に付着された抗体を含む。);並びにd)前記シグナル生成化合物によって発生されたシグナルを検出することによって、前記生物学的試料中に存在し得る抗体の存在を検出する段階を含み、前記シグナルが、前記患者中のアルツハイマー病の診断を示す、前記方法も含む。
【0021】
本発明は、アルツハイマー病を有すると疑われる患者においてアルツハイマー病を診断するさらなる方法であり、a)前記患者から生物学的試料を単離する段階;b)抗体/精製された球状凝集体複合体の形成に十分な時間及び条件下で、上記球状凝集体のMet含有形態と、前記生物学的試料を接触させる段階;並びにc)前記試料中の前記抗体/精製された球状凝集体複合体の存在を検出する段階を含み、複合体の存在が、前記患者中のアルツハイマー病の診断を示す、前記方法を含む。
【0022】
さらに、本発明は、アルツハイマー病を有すると疑われる患者においてアルツハイマー病を診断する別の方法であり、a)前記患者から生物学的試料を単離する段階;抗抗体/抗体複合体の形成を可能とするのに十分な時間及び条件下で、前記試料中の抗体に特異的な抗抗体と、前記生物学的試料を接触させる段階;b)結合された抗体へコンジュゲートが結合するのに十分な時間及び条件下で、得られた抗抗体/抗体複合体にコンジュゲートを添加する段階(前記コンジュゲートは、検出可能なシグナルを発生することができるシグナル生成化合物に付着されたMet含有球状凝集体を含む。);並びにc)前記シグナル生成化合物によって発生されたシグナルを検出する段階を含み、前記シグナルが、前記患者中のアルツハイマー病の診断を示す、前記方法を含む。
【0023】
本発明は、上記精製されたMet−β−アミロイドタンパク質及び医薬として許容されるアジュバントを含むワクチンも含む。さらに、本発明は、精製されたMet−β−アミロイドタンパク質に対して産生された抗体又は該タンパク質に結合する抗体及び医薬として許容されるアジュバントを含むワクチンを含む。
【0024】
さらに、本発明は、アルツハイマー病の予防又は治療を必要としている患者において、アルツハイマー病を予防又は治療する方法であり、前記予防又は治療を実施するのに十分な量で、前記患者に、上記ワクチンを投与する段階を含む、前記方法も含む。
【0025】
さらに、本発明は、アルツハイマー病の治療又は予防のための化合物を同定する方法を含む。本方法は、a)前記1つ又はそれ以上の化合物が前記精製された球状凝集体に結合し、又は中和するのに十分な時間及び条件下で、上記精製されたMet含有球状凝集体に、目的の1つ又はそれ以上の化合物を曝露する段階;及びb)前記精製された球状凝集体に結合し、又は中和する化合物を同定する段階を含み、前記同定された化合物がアルツハイマー病の治療又は予防において使用される、前記方法を含む。
【0026】
さらに、本発明は、患者中のアルツハイマー病の治療又は予防において有用な小分子を設計する方法を含む。本方法は、a)上記精製されたMet含有球状凝集体、上記単離されたMet含有β−アミロイドペプチドオリゴマー又は単離されたMet含有β−アミロイドタンパク質組成物の集合などのタンパク質の三次元構造を分析する段階;b)段階a)の前記選択されたタンパク質の表面上に1つ又はそれ以上のエピトープを同定する段階;及びc)段階b)の同定された1つ又は複数のエピトープに結合する小分子を設計する段階(前記小分子は、アルツハイマー病の治療又は予防において使用される。)を含む。
【0027】
本発明は、アルツハイマー病の治療又は予防において使用されるべきモノクローナル抗体を同定する方法も含む。本方法は、a)前記モノクローナル抗体の1つ又はそれ以上の前記球状凝集体への結合及び球状凝集体/抗体複合体の形成に十分な時間及び条件下で、上記精製されたMet含有球状凝集体をモノクローナル抗体のライブラリーに曝露する段階;b)前記球状凝集体/抗体複合体の存在を同定する段階;及びc)前記複合体内の1つ又はそれ以上の抗体の正体を決定する段階(前記1つ又はそれ以上の抗体は、アルツハイマー病の治療又は予防において使用される。)を含む。
【0028】
さらに、本発明は、安定化を実施するのに十分な時間(すなわち、1から2時間)及び量(すなわち、5%の水性懸濁液又は溶液)で、アルキル鎖界面活性剤又は脂質を前記試料に添加する段階を含む、Met含有(又は非Met含有)アミロイドβ(1−42)オリゴマー又はその一部の試料を安定化させる方法を含む。
【0029】
本発明は、上記単離されたアミロイドβタンパク質の少なくとも2つを含む精製されたMet含有球状凝集体も含む。
【0030】
さらに、本発明は、図21に示されているタンパク質のアミノ酸残基E22−D23−V24−G25−S26−N27−K28に結合する単離された抗体を包含する。本発明は、エピトープ自体も含む。この配列は、K28の後にG29をさらに含み得る。さらに、本発明は、A21の位置から始まる図21のタンパク質の少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9又は10の連続するアミノ酸を含む。さらに、このエピトープは、上記Aβタンパク質のMet形態の他に、Aβ(1−42)タンパク質及びAβ(1−40)の非Met形態中に見出され得ることに留意すべきである。
【0031】
さらに、本発明の小ペプチドなどの小ペプチドのイー・コリ中での発現は、微生物内に天然のプロテアーゼが存在するために、急速に分解すると予想されることに留意しなければならない。しかしながら、本発明は、アミロイドβタンパク質のメチオニン形態は、宿主細胞中で発現した際に、完全に無傷の状態を保つことを示し、産生されるタンパク質が、APPとして知られるアミロイド前駆体タンパク質中にコードされている正確なアミノ酸配列を含有するというさらなる特徴を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
本発明は、アミロイドβタンパク質の組換え形態及びその製造方法に関する。より具体的には、本発明は、式[X+Y]によって表されるアミロイドβタンパク質を含む(「X」は、メチオニン(Met)、バリン(Val)及びロイシン(Leu)からなる群から選択される、前記タンパク質のアミノ酸配列のアミノ又はN末端に位置する1つ又はそれ以上のアミノ酸を含む。)。好ましくは、「X」は、Metを含む。
【0033】
さらに、「Y」は、アミノ末端の「X」アミノ酸を除く、ペプチド内のアミノ酸の数を表す。特に、「Y」は、39から43の整数を表し、及び自然状態のアミロイドβ(1−42)アミノ酸配列の一部又は全部を表す。本アミノ酸配列は、自然の1から42配列内の任意のアミノ酸「数」又は位置(例えば、アミノ酸1、アミノ酸5、アミノ酸12、アミノ酸22、アミノ酸35など)で開始し得、自然配列内の何れかのアミン酸数又は位置で終了し得るが、但し、選択される自然のアミノ酸の総数は38から43の範囲である。本発明のタンパク質の他の特性には、図X−Yに示される抗体への結合能が含まれる。結合特性は、1)0.50μM未満又は0.50μMに等しいKd;2)−30kJ/モルより大きい好ましい結合エンタルピー(負のデルタH);及び3)少なくとも1つの抗体/アミロイド球状凝集体の抗体/アミロイド結合比である。
【0034】
本発明のアミノ酸配列又はタンパク質に加えて、本発明は、本発明のタンパク質のアミノ酸配列に対して少なくとも約70%、好ましくは少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも約90%の同一性を含み、対応し、同一であり、又は相補的であるアミノ酸配列も含む。(同じく、70%と100%の間の全ての整数(及びその一部)は、パーセント同一性に関して、本発明の範囲に属するとも考えられる。)
【0035】
本発明は、本発明のタンパク質をコードする単離されたヌクレオチド配列並びに、これらのコードするヌクレオチド配列に対して少なくとも約70%、好ましくは少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも約90%の同一性を含み、対応し、同一であり、又は相補的であるアミノ酸配列も包含することに留意すべきである。(70%と100%の間の全ての整数(及びその一部)は、パーセント同一性に関して、本発明の範囲に属するとも考えられる。)このような配列は、あらゆる源に由来することができ、天然源から単離され、半合成経路を介して産生され、又は新規に合成される。特に、このような配列は、実施例に記載されている源とは別の源(例えば、細菌、真菌、藻類、マウス又はヒト)から単離され又は由来し得る。
【0036】
本発明において、ヌクレオチド配列の「断片」は、特定のヌクレオチド配列の領域に相当する、およそ、少なくとも6、好ましくは少なくとも約8、より好ましくは少なくとも約10ヌクレオチド、さらにより好ましくは少なくとも約15ヌクレオチドの連続する配列として定義される。
【0037】
「同一性」という用語は、特定の比較枠又はセグメントにわたる、ヌクレオチドごとの2つの配列の関連性を指す。従って、同一性は、2つのDNAセグメント(又は2つのアミノ酸配列)の同じ鎖(センス又はアンチセンスの何れか)間の、同一性、対応性又は同等性の程度として定義される。「配列同一性の%」は、特定の領域にわたり2つの最適にアラインされた配列を比較し、一致している位置の数を得るために両配列において同一の塩基又はアミノ酸はある位置の数を調べ、このような位置の数を比較しているセグメント中の位置の総数で割り、その結果に100を掛けることにより計算される。Smith&Waterman、Appl.Math.2:482(1981)のアルゴリズムにより、Needleman&Wunsch、J.Mol.Biol.48:443(1970)のアルゴリズムにより、Pearson&Lipman、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)85:2444(1988)の方法により、及び、関連するアルゴリズムを実行するコンピュータプログラムにより(例えば、Clustal Macaw Pileup(http://cmgm.stanford.edu/biochem218/11Multiple.pdf;Higginsら、CABIOS.5L151−153(1989))、FASTDB(Intelligentics)、BLAST(National Center for Biomedical Information;Altschulら、Nucleic Acids Research 25:3389−3402(1997))、PILEUP(Genetics Computer Group、Madison、WI)又はGAP、BESTFIT、FASTA及びTFASTA(Wisconsin Genetics Software Package Release 7.0、Genetics Computer Group、Madison、WI)、配列の最適アラインメントを行い得る。(米国特許第5,912,120号参照)。
【0038】
本発明において、「相補性」は、2つのDNAセグメント間の関連性の程度として定義される。これは、二重らせんを形成するために、適切な条件下で、一方のDNAセグメントのセンス鎖が他方のDNAセグメントのアンチセンス鎖とハイブリド形成する能力を測定することにより決定される。「相補的である」とは、規範的な塩基対形成規則に基づきある一定の配列に対して対を形成する配列として定義される。例えば、あるヌクレオチド鎖中の配列A−G−Tは、他方の鎖のT−C−Aに対して「相補的」である。
【0039】
二重らせんにおいて、アデニンが一方の鎖に現れ、チミンが他方の鎖に現れる。同様に、グアニンが一方の鎖で見られる場合は常に、他方でシトシンが見られる。2つのDNAセグメントのヌクレオチド配列間の関連性が大きいほど、2つのDNAセグメントの鎖間でのハイブリッド二本鎖形成能が大きくなる。
【0040】
2つのアミノ酸配列間の「類似性」は、一連の同一ならびに保存的アミノ酸残基が両配列において存在することとして定義される。2つのアミノ酸配列間の類似性の程度が高いほど、2つの配列の、対応性、同一性又は同等性が高くなる。(2つのアミノ酸配列の間の「同一性(identity)」は、一連の正確に等しい又は不変のアミノ酸残基が両配列において存在することとして意義される。)。「相補性」、「同一性」及び「類似性」の定義は、当業者にとって周知である。
【0041】
「によりコードされる」とは、ポリペプチド配列をコードする核酸配列を指し、このポリペプチド配列又はその一部は、その核酸配列によりコードされるポリペプチド由来の、少なくとも3アミノ酸、より好ましくは少なくとも8アミノ酸及びさらにより好ましくは少なくとも15アミノ酸のアミノ酸配列を含有する。
【0042】
さらに、核酸分子は、核酸分子の1本鎖形態が温度及びイオン強度の適切な条件下でその他の核酸分子とアニールすることができる場合、別の核酸分子にハイブリド形成可能である(Sambrookら、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版(1989)、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、New York)を参照)。温度及びイオン強度の条件は、ハイブリド形成の「ストリンジェンシー」を定める。
【0043】
「ハイブリド形成」という用語は、本明細書で使用する場合、当業者にとって容易に明らかになるであろうように、プローブ配列及び標的配列の性質に依存して、ストリンジェンシーの適切な条件での核酸のハイブリド形成を意味するために通常使用される。ハイブリド形成及び洗浄の条件は当技術分野で周知であり、温置時間、温度及び/又は溶液のイオン強度を変化させることによる、所望のストリンジェンシーに依存した条件の調整は容易に行われる。例えば、上述のような、Sambrook、J.ら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Press、Cold Spring Harbor、N.Y.、1989を参照のこと(これを参照により本明細書中に組み込む。)。(Short Protocols in Molecular Biology、Ausbelら編及びTijssen、Techniques in Biochemistry and Molecular Biology−Hybridization with Nucleic Acid Probes、「Overview of principles of Hybridization and the strategy of nucleic acid assays」(1983)も参照のこと。両者とも参照により本明細書中に組み込む。)。具体的に、条件の選択は、ハイブリド形成させる配列の長さ、特にプローブ配列の長さ、核酸の相対的G−C含量及び許容されるミスマッチの量による。低ストリンジェンシー条件は、相補性の程度がより低い鎖間の部分的ハイブリド形成が望ましい場合に好ましい。完全又はほぼ完全な相補性が望ましい場合、高ストリンジェンシー条件が好ましい。典型的な高ストリンジェンシー条件の場合、ハイブリド形成溶液は、6xS.S.C.、0.01M EDTA、1xDenhardt溶液及び0.5%SDSを含有する。クローン化DNAの断片の場合、約68℃で約3から4時間、全真核DNAの場合、約12から約16時間、ハイブリド形成を行う。中程度のストリンジェンシーの場合、3x塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム(SSC)、50%ホルムアミド(pH7.5で、この緩衝液の0.1M)の溶液及び5xDenhardt溶液でのフィルタープレハイブリド形成及びハイブリド形成を利用し得る。37℃で4時間プレハイブリド形成し、続いて3,000,000cpmトータルに等しい標識プローブ量と37℃で16時間ハイブリド形成し、次いで、2xSSC及び0.1%SDS溶液中で洗浄(室温で各1分間を4回及び60℃にて各30分間を4回)し得る。乾燥後、フィルムに曝露する。より低いストリンジェンシーの場合、ハイブリド形成温度を2本鎖の融解温度(T)よりも約12℃低くする。Tは、G−C含量及び2本鎖の長さならびに溶液のイオン強度の関数として知られている。
【0044】
「ハイブリド形成」には、2つの核酸が相補的配列を含有することが必要である。しかし、ハイブリド形成のストリンジェンシーによって、塩基間のミスマッチが起こり得る。上述のように、核酸をハイブリド形成させるのに適切なストリンジェンシーは、核酸の長さ及び相補性の程度に依存する。このような可変性は当技術分野で周知である。より具体的には、2つのヌクレオチド配列間の類似性又は相同性の程度が大きいほど、これらの配列を有する核酸のハイブリッドに対するT値が大きくなる。100ヌクレオチド長を超えるハイブリッドの場合、Tを計算するための式がある(Sambrookら、前出参照)。短い核酸のハイブリド形成の場合、ミスマッチの位置がより重要となり、オリゴヌクレオチドの長さによりその特異性が決まる(Sambrookら、前出参照)。
【0045】
本明細書で使用する場合、「単離核酸断片又は配列」は、1本鎖又は2本鎖であり、場合によっては合成、非天然又は改変ヌクレオチド塩基を含有する、RNA又はDNAのポリマーである。DNAのポリマーの形態の単離核酸断片は、cDNA、ゲノムDNA又は合成DNAの1以上のセグメントから構成され得る。(特定のポリヌクレオチドの「断片」とは、およそ少なくとも約6ヌクレオチド、好ましくは少なくとも約8ヌクレオチド、より好ましくは少なくとも約10ヌクレオチド及びさらにより好ましくは少なくとも約15ヌクレオチド、及び最も好ましくは少なくとも約25ヌクレオチドの、特定のヌクレオチド配列の領域と同一又は相補的な連続配列を含むポリヌクレオチド配列を指す。)。ヌクレオチド(通常、その5’−モノリン酸形態で見出される。)は、次のように1文字表記で表される:アデニル酸又はデオキシアデニル酸に対して「A」(それぞれRNA又はDNAに対して)、シチジル酸又はデオキシシチジル酸に対して「C」、グアニル酸又はデオキシグアニル酸に対して「G」、ウリジル酸に対して「U」、デオキシチミジル酸に対して「T」、プリン(A又はG)に対して「R」、ピリミジン(C又はT)に対して「Y」、G又はTに対して「K」、A又はC又はTに対して「H」、イノシンに対して「I」及び何れかのヌクレオチドに対して「N」。
【0046】
「機能的に同等の断片又はサブフラグメント」及び「機能的に同価値の断片又はサブフラグメント」という用語は、本明細書中で交換可能に使用される。これらの用語は、その断片又はサブフラグメントが活性酵素をコードするか否かに関わらず、遺伝子発現を変化させるか又はある種の表現型を生じさせる能力が保持されている、単離核酸断片の一部又は部分配列を指す。
【0047】
「相同性」、「相同の」、「実質的に同様の」及び「実質的に一致する」という用語は、本明細書中で交換可能に使用される。これらは、1以上のヌクレオチド塩基の変化が、その核酸断片の、遺伝子発現介在能力又はある種の表現型生成能に影響を与えない核酸断片を指す。これらの用語はまた、最初の、非修飾断片に対して、得られる核酸断片の機能特性を実質的に変化させない1以上のヌクレオチドの欠失又は挿入などの、本発明の核酸断片の修飾も指す。従って、当業者にとって当然のことながら、本発明は、具体的な代表的配列だけにとどまらないものを包含する。
【0048】
「遺伝子」とは、コード配列の前にある(5’非コード配列)及び後にある(3’非コード配列)制御配列を含む、特定のタンパク質を発現する核酸断片を指す。
【0049】
「ネイティブ遺伝子」とは、それ自身の制御配列とともに天然に見出されるような遺伝子を指す。一方、「キメラコンストラクト」とは、天然において通常は一緒に見出されない核酸断片の組み合わせを指す。従って、キメラコンストラクトは、異なる源由来の制御配列及びコード配列又は、同じ源由来であるが、天然で通常見られるものとは異なる方式で編成される制御配列及びコード配列を含み得る。(「単離された」という用語は、配列がその天然の環境から離されることを意味する。)。
【0050】
「外来」遺伝子とは、宿主生物において通常は見られない遺伝子を指し、遺伝子移入により宿主生物に導入される遺伝子である。外来遺伝子は、非ネイティブ生物又はキメラコンストラクトに挿入されたネイティブ遺伝子を含み得る。「トランス遺伝子」は、形質転換手順によりゲノムに導入されている遺伝子である。
【0051】
「コード配列」とは、特定のアミノ酸配列をコードするDNA配列を指す。「制御配列」とは、コード配列の上流(5’非コード配列)、コード配列内、又はその下流(3’非コード配列)に位置するヌクレオチド配列を指し、この配列は、転写、RNAプロセシング又は安定性又は関連するコード配列の翻訳に影響を及ぼす。制御配列には、以下に限定されないが、プロモーター、翻訳リーダー配列及びポリアデニル化認識配列が含まれ得る。
【0052】
「プロモーター」とは、コード配列又は機能的RNAの発現を調節することができるDNA配列を指す。プロモーター配列は、隣接及びより遠位の上流エレメントからなり、後者のエレメントはエンハンサーと呼ばれることが多い。従って、「エンハンサー」は、プロモーター活性を刺激することができ、プロモーターの生来のエレメント又はプロモーターのレベル又は組織特異性を促進するために挿入された異種エレメントであり得るDNA配列である。プロモーター配列はまた、遺伝子の転写部分内、及び/又は転写配列の下流にも位置し得る。プロモーターは、それらの全体において、ネイティブ遺伝子由来であるか、又は、天然で見られる様々なプロモーター由来の様々なエレメントからなるか、又は合成DNAセグメントを含み得る。当業者にとって当然のことながら、異なるプロモーターは、異なる組織又は細胞型において、又は発生の異なるステージにおいて、又は異なる環境条件に反応して、遺伝子の発現を支配し得る。殆どの場合に、殆どの宿主細胞型において遺伝子発現を引き起こすプロモーターは、一般に「構成的プロモーター」と呼ばれる。殆どの場合において、制御配列の正確な境界は完全に定められていないので、いくつかのバリエーションのDNA断片が同一のプロモーター活性を有し得ることがさらに認められる。
【0053】
「イントロン」は、タンパク質配列の一部をコードしない、遺伝子中の介在配列である。従って、このような配列は、RNAに転写されるが、その後切り出され、翻訳されない。この用語はまた、切り出されたRNA配列に対しても使用される。「エクソン」は、転写され、その遺伝子由来の成熟メッセンジャーRNAで見出される遺伝子配列の一部であるが、必ずしも最終遺伝子産物をコードする配列の一部である必要はない。
【0054】
「翻訳リーダー配列」とは、遺伝子のプロモーター配列とコード配列との間に位置するDNA配列を指す。翻訳リーダー配列は、完全にプロセシングされたmRNAの、翻訳開始配列の上流に存在する。翻訳リーダー配列は、mRNAに対する主要な転写産物のプロセシング、mRNA安定性又は翻訳効率に影響し得る。翻訳リーダー配列の例は、(Turner、R.及びFoster、G.D.(1995)Molecular Biotechnology 3:225)に記載されている。
【0055】
「3’非コード配列」とは、コード配列の下流に位置するDNA配列を指し、ポリアデニル化認識配列及びmRNAプロセシング又は遺伝子発現に影響を与え得る制御シグナルをコードする他の配列を含む。ポリアデニル化シグナルは、通常、mRNA前駆体の3’末端へのポリアデニル酸領域の付加に影響を与えることを特徴とする。様々な3’非コード配列の使用については、Ingelbrechtら、Plant Cell 1:671−680(1989)により例示されている。
【0056】
「RNA転写産物」とは、RNAポリメラーゼにより触媒されるDNA配列の転写により得られる産物を指す。RNA転写産物がDNA配列の完全な相補的コピーである場合、これは、一次転写産物と呼ばれるか、又は一次転写産物の転写後プロセシング由来のRNA配列であり得、成熟RNAと呼ばれる。「メッセンジャーRNA(mRNA)」とは、イントロンがなく、細胞によりタンパク質へと翻訳され得るRNAを指す。「cDNA」とは、mRNA鋳型に相補的であり、これから酵素逆転写酵素を用いて合成されるDNAを指す。cDNAは、1本鎖であるか、又はDNAポリメラーゼIのKlenow断片を用いて2本鎖形態に変換され得る。「センス」RNAとは、mRNAを含み、細胞内又はインビトロでタンパク質に翻訳され得るRNA転写産物を指す。「アンチセンスRNA」とは、標的の一次転写産物又はmRNAの全てもしくは一部に相補的であり、標的遺伝子の発現をブロックするRNA転写産物を指す(米国特許第5,107,065号)。アンチセンスRNAの相補性とは、具体的な遺伝子転写産物の何れかの部分との(即ち、5’非コード配列、3’非コード配列、イントロン又はコード配列での)ものであり得る。「機能的RNA」とは、アンチセンスRNA、リボザイムRNA又は、翻訳され得ないが、細胞性プロセスにおいて影響を有するその他のRNAを指す。「相補」及び「逆相補(reverse complement)」という用語は、mRNA転写産物に関して本明細書中で交換可能に使用され、メッセージのアンチセンスRNAを定義するものである。
【0057】
「内在性RNA」という用語は、天然であれ非天然であれ、本発明の組み換えコンストラクトにより形質転換される前に(即ち、組み換え手段、変異誘発などにより導入される。)、宿主のゲノムに存在する何らかの核酸配列によりコードされる何らかのRNAを指す。
【0058】
「非天然」という用語は、人工のものであり、天然で通常見られるものと一致しないことを意味する。
【0059】
「作用可能に連結」という用語は、一方の機能が他方により制御されるような1つの核酸断片における核酸配列の会合を指す。例えば、プロモーターがそのコード配列の発現を制御可能である場合、そのプロモーターはコード配列に作用可能に連結されている(即ち、コード配列がプロモーターの転写調節下にある。)。センス又はアンチセンス方向で、コード配列を制御配列に操作可能に連結することができる。別の例において、直接又は間接的に、標的mRNAに対して5’又は標的mRNAに対して3’に、又は標的mRNA内で、本発明の相補的RNA領域を作用可能に連結することができる、又は標的mRNAに対して、第一の相補的領域が5’であり、その相補が3’である。
【0060】
「発現」という用語は、本明細書で使用する場合、機能的最終産物の産生を指す。遺伝子の発現は、遺伝子の転写及びmRNAの前駆体又は成熟タンパク質への翻訳を含む。「アンチセンス阻害」とは、標的タンパク質の発現を抑制することができるアンチセンスRNA転写産物の産生を指す。「共同抑制」とは、同一又は実質的に同様の外来又は内在性遺伝子の発現を抑制することができるセンスRNA転写産物の産生を指す(米国特許第5,231,020号)。
【0061】
「成熟」タンパク質とは、翻訳後にプロセシングされたポリペプチド、即ち、一次転写産物において存在する何らかのプレ又はプロペプチドは除去されているものを指す。「前駆体」タンパク質とは、mRNAの転写の一次産物を指し、即ち、プレ及びプロペプチドはまだ存在するものである。プレ及びプロペプチドは、限定されないが、細胞内局在シグナルであり得る。
【0062】
「安定な形質転換」とは、結果として遺伝的に安定な遺伝形質が得られる、宿主生物のゲノムへの核酸断片の移入を指す。一方、「一時的形質転換」とは、結果として統合又は安定な遺伝なく遺伝子発現が起こる、宿主生物の核又はDNA含有細胞小器官への核酸断片の移入を指す。形質転換された核酸断片を含有する宿主生物は、「トランスジェニック」生物と呼ばれる。「形質転換」という用語は、本明細書で使用する場合、安定的形質転換及び一時的形質転換の両方を指す。
【0063】
本明細書中で使用される標準的組み換えDNA及び分子クローニング技術は当技術分野で周知であり、Sambrook、J.、Fritsch、E.F.及びManiatis、T.、Molecular Cloning:A Laboratory Manual;Cold Spring Harbor Laboratory Press:Cold Spring Harbor、1989(本明細書中で以後「Sambrook」と呼ぶ。)においてより詳細に記載されている。
【0064】
「組み換え」という用語は、例えば、化学合成による、又は遺伝子操作技術による核酸の単離セグメントの操作による、2つの異なった個別の配列のセグメントの人工的組み合わせを指す。
【0065】
「PCR」又は「ポリメラーゼ連鎖反応」は、一連の繰り返しサイクルからなる、大量の特定DNAセグメントの合成のための技術である(Perkin Elmer Cetus Instruments、Norwalk、CT)。通常、2本鎖DNAを加熱変性させ、標的セグメントの3’境界に相補的な2つのプライマーを低温でアニーリングさせ、次いで中間温度で伸長させる。これらの連続的な3段階の1セットをサイクルと呼ぶ。
【0066】
ポリメラーゼ連鎖反応(「PCR」)は、短時間で鋳型の複製を繰り返すことによってDNAを数百倍に増幅するために使用される強力な技術である。(Mullisら、Cold Spring Harbor Symp.Quant.Biol.51:263−273(1986);Erlichら、欧州特許出願第50,424号;欧州特許出願第84,796号;欧州特許出願第258,017号;欧州特許出願第237,362号;Mullis、欧州特許出願第201,184号;Mullisら、米国特許第4,683,202号;Erlich、米国特許第4,582,788号;及びSaikiら、米国特許第4,683,194号)。このプロセスは、DNA合成を開始させるために、特異的なインビトロ合成オリゴヌクレオチドのセットを利用する。これらのプライマーの設計は、分析するDNA配列に依存する。高温で鋳型を融解させ、プライマーを鋳型内の相補的配列にアニーリングさせ、次いでDNAポリメラーゼにより鋳型を複製する、多くのサイクル(通常20−50)により、この技術を行う。
【0067】
PCR産物は、アガロースゲルにおいて分離し、次いで臭化エチジウム染色し、UV透光で可視化することにより、分析される。あるいは、産物に標識を組み込むために、放射性dNTPをPCRに添加することができる。この場合、X線フィルムにゲルを曝露することにより、PCRの産物を可視化する。放射性標識PCR産物のさらなる長所は、個々の増幅産物のレベルを定量できることである。
【0068】
「組み換えコンストラクト」、「発現コンストラクト」及び「組み換え発現コンストラクトという用語は、本明細書中で交換可能に使用される。これらの用語は、当業者にとって周知の標準的方法を用いて細胞のゲノムに挿入することができる遺伝物質の機能的単位を指す。このようなコンストラクトは、それ自身か、又はベクターと組み合わせて使用され得る。ベクターを使用する場合、ベクターの選択は、当業者にとって周知のように、宿主植物を形質転換するために使用するであろう方法に依存する。例えば、プラスミドを使用することができる。当業者は、首尾よく形質転換し、選択し、本発明の単離核酸断片の何れかを含有する宿主細胞を増殖させるために、ベクターに存在しなければならない遺伝的エレメントを十分認識している。当業者はまた、異なる独立の形質転換事象の結果、異なるレベル及びパターンの発現が得られること(Jonesら、(1985)EMBO J.4:2411−2418;De Almeidaら、(1989)Mol.Gen.Genetics 218:78−86)及び、従って、所望の発現レベル及びパターンを示す株を得るために複数の事象をスクリーニングしなければならないことも認識する。DNAのサザン分析、mRNA発現のノザン分析、タンパク質発現のウエスタン分析又は表現型分析により、このようなスクリーニングを行い得る。
【0069】
目的のβアミロイドタンパク質をコードするヌクレオチド配列が単離されたら、次いで、ベクター又は構築物の使用を通じて、原核又は真核宿主細胞、好ましくは、イー・コリなどの原核宿主細胞の何れかの中に導入され得る。
【0070】
発現されたタンパク質のN末端をコードするヌクレオチド配列は、ベクター中にも導入されなければならない。さらに、ベクター、例えば、バクテリオファージ、コスミド又はプラスミドは、自然のアミロイドβタンパク質の関連部分をコードするヌクレオチド配列、コードされるべきN末端のヌクレオチド配列、及び宿主細胞中において機能的であり、タンパク質の発現を惹起することができる何れかの制御配列(例えば、プロモーター)を含み得る。制御配列(例えば、プロモーター)は、ヌクレオチド配列と作用可能に会合しており、又は作用可能に連結されている。(プロモーター又は制御配列がコード配列の転写又は発現に影響を与える場合に、プロモーター又は制御配列は、コード配列と「作用可能に連結されている」と称される。適切なプロモーターには、例えば、T7lacプロモーター、T7プロモーター、pBAD,tetプロモーター、Lacプロモーター、Trcプロモーター、Trcプロモーター及びPLプロモーターが含まれ、例えば、イー・コリなどの細菌細胞中でタンパク質の発現を試みる場合に、これらの全てを使用することが可能である。宿主細胞として昆虫を使用している場合には、ポリヘドリンP10、MT、Ac5及びOp1E2などのプロモーターが使用され得る。ウイルス中でタンパク質を発現させることを好む場合には、pCMV、pUbC及びpU6をプロモーターとして使用し得る。哺乳動物細胞中で使用され得るプロモーターには、例えば、CMV、U6、EF−I、pCMV−2xTetO、pUbC、SV40、b−カゼイン及びRSVが含まれる。適切な酵母プロモーターには、AOX1、GAP、AUG1、GAL1、nmt1、nmt41、nmt81及びTEF1が含まれる。構築物中に存在する配列の選択は、所望される発現産物及び宿主細胞の性質に依存する。
【0071】
上述のように、一旦ベクターが構築されたら、ベクターは、次いで、例えば、形質移入、形質転換及び電気穿孔などの、当業者に公知の方法によって、選択された宿主細胞中に導入され得る(Molecular Cloning:A Laboratory Manual, 2nd ed., Vol.1−3,ed.Sambrook et al., Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)参照)。次いで、宿主細胞は、ヌクレオチド配列の発現を可能とする適切な条件下で培養され、所望のコードされるアミロイドβタンパク質の産生をもたらし、アミロイドβタンパク質は、次いで、回収及び精製される。
【0072】
適切な原核宿主細胞の例には、例えば、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)、バチルス種(Bacillus sp.)、ストレプトコッカス種(Streptococcus sp.)及びラクトバチルス種(Lactobacillus sp)などの細菌が含まれる。適切な真核宿主細胞の例には、例えば、昆虫細胞(例えば、SF9、SF21及びHi5)、酵母細胞、S.ポンベ(S.pombe)、哺乳動物細胞及びショウジョウバエの細胞が含まれる。
【0073】
宿主細胞中での発現は、一過性又は安定的な様式で達成することができる。一過性発現は、宿主細胞中で機能的な発現シグナルを含有する導入された構築物から生じ得るが、該構築物は、宿主細胞中で、又は宿主細胞が増殖していない場合に、複製せず、稀にしか組み込まれない。一過性発現は、目的の遺伝子に作用可能に連結された制御可能なプロモーターの活性を誘導することによっても達成され得るが、このような誘導性の系は、しばしば、発現の低い基底レベルを示す。安定な発現は、宿主ゲノム中に組み込まれることができる、又は宿主細胞中で自律的に複製する構築物の導入によって達成することができる。目的の遺伝子の安定な発現は、発現構築物上に位置し、又は発現構築物とともに形質移入された選択可能なマーカーを使用した後、マーカーを発現している細胞に対する選択を通じて選択することができる。安定な発現が組み込みから生じる場合には、構築物の組み込みの部位は、宿主ゲノム内に無作為に生じ得、又は、宿主の遺伝子坐との組換えを標的とするのに十分な宿主ゲノムとの相同性を有する領域を含有する構築物の使用を通じて標的化することが可能である。構築物が内在性の遺伝子坐に標的化される場合には、転写及び翻訳制御領域の全部又は一部は、内在性の遺伝子坐によって提供され得る。
【0074】
トランスジェニック哺乳動物は、目的のタンパク質を発現するためにも使用され得る。より具体的には、上記構築物が一旦作製された時点で、構築物は、胚の前核中に挿入され得る。次いで、胚は、レシピエントの雌の中に移植され得る。あるいは、核移植法も使用することができる(Schnieke et al., Science 278:2130−2133(1997))。次いで、妊娠と出産が可能となる(例えば、U.S.Patent No.5,750,176及びU.S.Patent No.5,700,671を参照。)。宿主として使用される哺乳動物は、例えば、マウス、ラット、ウサギ、ブタ、ヤギ、ヒツジ、ウマ及びウシからなる群から選択され得る。しかしながら、目的のタンパク質をコードするDNAをそのゲノム中に取り込む能力を有していれば、あらゆる哺乳動物を使用し得る。
【0075】
上述の手順に加えて、熟練者は、巨大分子(例えばDNA分子、プラスミドなど)の構築、操作及び単離、組み換え生物の作製及びクローンのスクリーニング及び単離に対する具体的な条件及び手順を述べる標準的リソースに精通している(例えば、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Press(1989);Maligaら、Methods in Plant Molecular Biology、Cold Spring Harbor Press(1995);Birrenら、Genome Analysis:Detecting Genes、1、Cold Spring Harbor、New York(1998);Birrenら、Genome Analysis:Analyzing DNA、2、Cold Spring Harbor、New York(1998);Plant Molecular Biology:A Laboratory Manual、Clark編、Springer、New York(1997)を参照)。
【0076】
「Aβ(X−Y)」という用語は、本明細書中で、ヒトアミロイドβタンパク質のアミノ酸位置Xからアミノ酸位置Y(X及びYの両方を含む。)のアミノ酸配列を指し、特に、アミノ酸配列DAEFRHDSGY EVHHQKLVFF AEDVGSNKGA IIGLMVGGVV IA又はその天然の変異体の何れかの、アミノ酸位置Xからアミノ酸位置Yのアミノ酸配列を指し、特に、A2T、H6R、D7N、A21G(「フランドル」)、E22G(「北極」)、E22Q(「オランダ」)、E22K(「イタリア」)、D23N(「アイオワ」)、A42T及びA42Vからなる群から選択される少なくとも1つの変異があるもの(ここで、数字は、Aβペプチドの開始位置に対応し、位置X及び位置Yの両方を含む。)又は3個以下のさらなるアミノ酸置換(これらの中に球状凝集体形成を妨害し得るものはない。)を有する配列を指す。「さらなる」アミノ酸置換とは、本明細書中で、自然には見られない規範的な配列からの何らかの逸脱である。
【0077】
より具体的には、本明細書中で「Aβ(1−42)」という用語は、ヒトアミロイドβタンパク質の、アミノ酸位置1からアミノ酸位置42(1及び42の両方を含む。)のアミノ酸配列を指し、特に、アミノ酸配列DAEFRHDSGY EVHHQKLVFF AEDVGSNKGA IIGLMVGGVV IA(アミノ酸位置1から42に対応する。)又はその天然の変異体の何れかを指し、特に、例えば、A2T、H6R、D7N、A21G(「フランドル」)、E22G(「北極」)、E22Q(「オランダ」)、E22K(「イタリア」)、D23N(「アイオワ」)、A42T及びA42Vからなる群から選択される少なくとも1つの突然変異を有する変異体(ここで、数字は、Aβペプチドの開始位置に対応し、位置1及び位置42の両方を含む。)又は3個以下のさらなるアミノ酸置換(これらの中に球状凝集体形成を妨害し得るものはない。)を有する配列を指す。同様に、「Aβ(1−40)」という用語は、ここで、ヒトアミロイドβタンパク質の、アミノ酸位置1からアミノ酸位置40(1及び40の両方を含む。)のアミノ酸配列を指し、特に、アミノ酸配列DAEFRHDSGY EVHHQKLVFF AEDVGSNKGA IIGLMVGGVV又はその天然の変異体の何れかの、アミノ酸位置1からアミノ酸位置40のアミノ酸配列を指し、特に、例えば、A2T、H6R、D7N、A21G(「フランドル」)、E22G(「北極」)、E22Q(「オランダ」)、E22K(「イタリア」)及びD23N(「アイオワ」)からなる群から選択される少なくとも1つの突然変異を有するもの(ここで、数字は、Aβペプチドの開始位置に対応し、位置1及び位置40の両方を含む。)又は3個以下のさらなるアミノ酸置換(これらの中に球状凝集体形成を妨害し得るものはない。)を有する配列を指す。「Aβ(X−Y)球状凝集体」(「Aβ(X−Y)球状オリゴマー」)という用語は、本明細書中で、上記で定義されるように、均一性及び個別の物理的特性を有する、Aβ(X−Y)ペプチドの可溶性の球状の非共有結合を指す。Aβ(X−Y)球状凝集体は、陰イオン性界面活性剤と温置することにより得られるAβ(X−Y)ペプチドの安定な非原線維性のオリゴマー集合体である。単量体及び原線維とは異なり、これらの球状凝集体は、サブユニットの定められた集合体数を特徴とする(例えば、PCT国際出願公開WO04/067561に記載のように、初期集合形態、n=4−6、「オリゴマーA」及び後期集合形態、n=12−14、「オリゴマーB」。)。球状凝集体は、3次元球状型構造を有する(「モルテングロビュール」、Barghornら、2005、J Neurochem、95、834−847参照)。これらはさらに、次の特性の1以上をさらに特徴とする:
−短縮型Aβ(X−Y)球状凝集体を生じる広域プロテアーゼ(サーモリシン又はエンドプロテイナーゼGluCなど)でのN−末端アミノ酸X−23の切断可能性;
−広域プロテアーゼ及び抗体とのC末端アミノ酸24−Yの非近接性;及び
−これらのAβ(X−Y)球状凝集体の短縮型が、球状凝集体の3次元コア構造(その球状凝集体配座におけるコアエピトープAβ(20−Y)の近接性がより優れている。)を維持する。
【0078】
本発明によると、及び、特に本発明の抗体の結合親和性を評価する目的のために、「Aβ(X−Y)球状凝集体」という用語は、本明細書中で、WO04/067561(参照により、本明細書中に組み込む。)に記載のようなプロセスにより得ることができる産物を指す。前記プロセスは、天然、組み換え又は合成Aβ(X−Y)ペプチドもしくはその誘導体を折り畳み解除すること;折り畳み解除したAβ(X−Y)ペプチド又はその誘導体を界面活性剤に少なくとも部分的に曝露し、その界面活性剤作用を低下させ、温置を続けることを含む。
【0079】
ペプチドの折り畳み解除のために、例えばヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)などの水素結合破壊剤をタンパク質に対して作用させ得る。作用温度が約20から50℃、特に約35から40℃である場合、数分、例えば10から60分の作用時間で十分である。蒸発乾固した残渣を、好ましくは濃縮形態で、例えばジメチルスルホキシド(DMSO)などの水性緩衝剤と混ざり合う適切な有機溶媒中で続いて溶解することにより、結果として、その後に使用できる、少なくとも部分的に折り畳み解除されたペプチド又はその誘導体の懸濁液が得られる。必要ならば、保存用懸濁液を低温、例えば約−20℃でしばらくの間保存し得る。
【0080】
あるいは、ペプチド又はその誘導体を僅かに酸性の、好ましくは水性の、溶液、例えば約10mMHCl水溶液中で溶解させ得る。通常数分間温置した後、不溶性成分を遠心により除去する。10,000gで数分が好都合である。これらの方法の段階を好ましくは室温、即ち20から30℃の範囲の温度で行う。遠心後に得られる上清は、Aβ(X−Y)ペプチド又はその誘導体を含有し、低温、例えば約−20℃でしばらくの間保存し得る。
【0081】
オリゴマー(WO04/067561、オリゴマーAと呼ばれる。)の中間型を与えるための、界面活性剤への続く曝露は、ペプチド又はその誘導体のオリゴマー化に関連する。このために、十分な中間体オリゴマーが生じるまで、少なくとも部分的に折り畳み解除されたペプチド又はその誘導体に対して界面活性剤を作用させる。イオン性界面活性剤、特に陰イオン性界面活性剤を用いるのが好ましい。
【0082】
特定の実施形態によると、式(I):
R−X
の界面活性剤が使用される(式中、基Rは、6から20、好ましくは10から14個の炭素原子を有する非分枝もしくは分枝アルキル又は6から20、好ましくは10から14個の炭素原子を有する非分枝もしくは分枝アルケニルであり、基Xは酸性基又はその塩であり、Xは好ましくは−COC、−SOの中から選択され、特に−OSOであり、Mは、水素陽イオン又は無機もしくは有機陽イオンであり、好ましくは、アルカリ金属及びアルカリ土類金属陽イオン並びにアンモニウム陽イオンから選択される。)。最も有利であるのは、特にRが非分枝アルキルである(そのalk−l−yl基を言及しなければならない。)、式(I)の界面活性剤である。特に好ましいのは、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)である。ラウリン酸及びオレイン酸も有利に使用できる。界面活性剤ラウロイルサルコシンのナトリウム塩(サルコシルNL−30又はGardol(R)としても知られている。)もまた特に有利である。
【0083】
界面活性剤作用時間は、特に、折り畳みされていないならば、オリゴマー化に供されるペプチド又はその誘導体がどの程度まで折り畳みされていないかに依存する。折り畳み解除段階に従い、ペプチド又はその誘導体が水素結合破壊剤で(即ち、特にヘキサフルオロイソプロパノールで)既に処理されているならば、作用温度が約20から50℃、特に約35から40℃である場合、数時間の範囲の作用時間、有利には約1から20、特に約2から10時間で十分である。折り畳み解除の程度が小さいか又は基本的に折り畳み解除されていないペプチド又はその誘導体が出発点である場合、同様に、作用時間が長い方が好都合である。例えばHFIP処理に代わる手段として上記手順に従いペプチドもしくはその誘導体が前処理されているか、又は該ペプチドもしくはその誘導体がオリゴマー化に直接供されるならば、作用温度が約20から50℃、特に約35から40℃である場合、約5から30時間、特に約10から20時間の作用時間で十分である。温置後、不溶性成分を遠心により有利に除去する。10,000gで数分が好都合である。
【0084】
選択すべき界面活性剤濃度は使用する界面活性剤に依存する。SDSを使用する場合、0.01から1重量%、好ましくは、0.05から0.5重量%の範囲、例えば、約0.2重量%の濃度が好都合である。ラウリン酸又はオレイン酸を使用する場合、例えば、0.05から2重量%、好ましくは0.1から0.5重量%の範囲、例えば約0.5重量%の、幾分高い濃度が好都合である。
【0085】
界面活性剤作用は、生理的範囲前後の塩濃度で起こるはずである。従って、特に50から500mM、好ましくは100から200mMの範囲、より具体的には約140mMのNaCl濃度が好都合である。
【0086】
続く界面活性剤作用の低下及び温置の継続は、本発明のAβ(X−Y)球状凝集体(WO2004/067561において、オリゴマーBと呼ばれる。)を与えるためのオリゴマー化にさらに関連する。前段階から得られる組成物は通常界面活性剤及び生理的範囲の塩濃度を含有するので、界面活性剤作用を低下させ、好ましくは塩濃度も低下させることが好都合である。例えば、水又は低塩濃度の緩衝液(例えばTris−HCl、pH7.3)で好都合に希釈することにより界面活性剤及び塩の濃度を低下させることによって、これを行い得る。約2から10の範囲、有利には、約3から8の範囲、特に約4の、希釈係数が適切であることが分かっている。この界面活性剤作用を中和することができる物質を添加することによっても、界面活性剤作用の低下を達成し得る。これらの例には、一連の精製及び抽出手段において細胞を安定化させることができる物質のような界面活性剤を錯化することができる物質(例えば、特定のEO/POブロックコポリマー、特に、Pluronic(R)F68の商標名のブロックコポリマー)が含まれる。特定の臨界ミセル濃度前後又はそれ以上の濃度の、アルコキシル化及び、特に、エトキシル化アルキルフェノール(Triton(R)Xシリーズのエトキシル化t−オクチルフェノール、特にTriton(R)X100、3−(3−コラミドプロピルジメチルアンモニオ)−1−プロパンスルホネート(CHAPS(R))など)又はアルコキシル化及び、特に、エトキシル化ソルビタン脂肪エステル(Triton(R)シリーズのもの、特にTween(R)20など)も同様に使用し得る。
【0087】
続いて、十分なAβ(X−Y)球状凝集体が産生されるまでこの溶液を温置する。作用温度が約20から50℃、特に約35から40℃である場合、数時間の範囲、好ましくは約10から30時間、特に約15から25時間の範囲の作用時間で十分である。次にこの溶液を濃縮し得、得られるであろう残渣を遠心により除去し得る。ここでも、10,000gで数分間が好都合であることが分かっている。遠心後に得られた上清は、本発明のAβ(X−Y)球状凝集体を含有する。
【0088】
例えば限外濾過、透析、沈殿又は遠心により、それ自体の様式で、Aβ(X−Y)球状凝集体を最終的に回収することができる。変性条件下でのAβ(X−Y)球状凝集体の電気泳動による(例えばSDS−PAGEによる)分離によって2重のバンドが得られれば(例えば、Aβ(1−42)に対して38/48kDaの見かけの分子量を有する。)さらに好ましく、分離前にオリゴマーのグルタルアルデヒド処理においてこれらの2本のバンドが1本にまとまれば特に好ましい。球状凝集体のサイズ排除クロマトグラフィーの結果、1本のピークになる場合も好ましい(例えば、Aβ(1−42)に対するおよそ60kDaの分子量に対応する。)。Aβ(1−42)ペプチドから開始する場合、本プロセスは、特にAβ(1−42)球状凝集体を得るために適切である。好ましくは、この球状凝集体は、神経細胞に対して親和性を示す。好ましくは、球状凝集体は、神経調節作用も示す。
【0089】
本発明の別の態様によると、「Aβ(X−Y)球状凝集体」という用語は、本明細書中で、基本的にAβ(X−Y)サブユニットからなる球状凝集体を指し、これは、平均で12サブユニットのうち少なくとも11がAβ(X−Y)タイプであれば好ましく、より好ましくはこの球状凝集体の10%未満が何らかの非Aβ(X−Y)ペプチドであり、最も好ましくは、この調製物の非Aβ(X−Y)ペプチドの含量が検出閾値以下である。より具体的には、「Aβ(1−42)球状凝集体」という用語は、本明細書中で、上記で定義されるような、Aβ(1−42)ユニットを含有する球状凝集体を指し;「Aβ(12−42)球状凝集体」という用語は、本明細書中で、上記で定義されるような、Aβ(12−42)ユニットから実質的になる球状凝集体を指し;「Aβ(20−42)球状凝集体」という用語は、本明細書中で、上記で定義されるような、Aβ(20−42)ユニットから実質的になる球状凝集体を指す。
【0090】
「架橋Aβ(X−Y)球状凝集体」という用語は、本明細書中で、球状凝集体の構成単位の、架橋により、好ましくは化学的架橋により、より好ましくはアルデヒド架橋により、最も好ましくはグルタルアルデヒド架橋により、上述のようなAβ(X−Y)球状凝集体から得られる分子を指す。本発明の別の態様において、架橋球状凝集体は基本的に、その単位が、非共有結合相互作用のみによって一緒になっているのではなく、少なくとも一部が共有結合により連結されている球状凝集体である。
【0091】
「Aβ(X−Y)球状凝集体誘導体」という用語は、本明細書中で、特に、検出を容易にする基に共有結合されることにより標識されている球状凝集体(好ましくは、フルオロフォア、例えば、フルオレセインイソチオシアネート、フィコエリスリン、オワンクラゲ(Aequorea victoria)蛍光タンパク質、Dictyosoma蛍光タンパク質もしくは何らかの組み合わせ又はその蛍光活性誘導体;発色団;化学発光団、例えば、ルシフェラーゼ、好ましくはPhotinus pyralis(ホタル)ルシフェラーゼ、Vibrio fischeri(発光細菌)ルシフェラーゼもしくは何らかの組み合わせ又はその化学発光活性誘導体;酵素活性基、例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼなどのペルオキシダーゼ又はその酵素活性誘導体;高電子密度基、例えば、金含有基などの重金属含有基;ハプテン、例えば、フェノール誘導化ハプテン;強い抗原性のある構造、例えば、抗原性があると予測されるペプチド配列、例えば、Kolaskar及びTongaonkarのアルゴリズムなどにより抗原性があると予想されるペプチド配列;別の分子に対するアプタマー;キレート基、例えば、ヘキサヒスチジニル;さらに特異的なタンパク質−タンパク質相互作用に介在する天然もしくは天然由来タンパク質構造、例えば、fos/junペアのメンバー;磁気群、例えば、強磁性体群;又はH、14C、32P、35Sもしくは125I又はそれらの何らかの組み合わせを含む基などの放射活性基);又は共有結合により、もしくは高親和性相互作用による非共有結合によりフラッグ化されている、好ましくは、不活性化、金属イオン封鎖、分解及び/又は沈降を促進する基に共有結合されている、好ましくは、インビボでの分解を促進する基(より好ましくは、ユビキチン)でフラッグ化されている球状凝集体(このフラッグ化オリゴマーがインビボでアセンブルされている場合、特に好ましい。);又は何らかの上記の組み合わせにより修飾されている球状凝集体を指す。このような標識及びフラッグ化基及びこれらをタンパク質に結合するための方法は当技術分野で公知である。球状化の前、最中又は後に、標識及び/又はフラッグ化を行い得る。本発明の別の態様において、球状凝集体誘導体は、標識及び/又はフラッグ化反応により球状凝集体から得ることができる分子である。従って、「Aβ(X−Y)単量体誘導体」という用語は、本明細書中で、特に、球状凝集体に対して述べたように標識又はフラッグ化されたAβ単量体を指す。
【0092】
「より高い親和性」という用語は、本明細書中で、一方の未結合抗体及び未結合球状凝集体と、他方の抗体−球状凝集体複合体との間の平衡が、抗体−球状凝集体複合体にさらに偏っている、相互作用の程度を指す。同様に、「より小さい親和性」という用語は、本明細書中で、一方の未結合抗体及び未結合球状凝集体と、他方の抗体−球状凝集体複合体との間の平衡が、未結合抗体及び未結合球状凝集体にさらに偏っている相互作用の程度を指す。
【0093】
「Aβ(X−Y)単量体」という用語は、本明細書中で、Aβ(X−Y)ペプチドの単離形態、好ましくは、他のAβペプチドとの基本的に非共有相互作用に関与していないAβ(X−Y)ペプチドの形態を指す。実際に、Aβ(X−Y)単量体は通常、水溶液の形態で与えられる。本発明の特に好ましい実施形態において、水性単量体溶液は、例えば本発明の抗体の結合親和性を調べるために使用する場合、0.05%から0.2%、より好ましくは、約0.1%NaOHを含有する。別の好ましい状況において、水性単量体溶液は、0.05%から0.2%、より好ましくは、約0.1%NaOHを含有する。使用する場合、適切な形式で溶液を希釈することが好都合であり得る。さらに、通常、溶液調製後、2時間以内、特に1時間以内、とりわけ30分以内に溶液を使用することが好都合である。
【0094】
「原線維」という用語は、本明細書中で、電子顕微鏡中で原線維性構造を示す非共有結合した個々のAβ(X−Y)ペプチドの集合体を含む分子構造を指し、これはコンゴレッドに結合し、次いで、偏光下で複屈性を示し、そのX−線回折パターンはクロス−β構造である。
【0095】
本発明の別の態様において、原線維は、24単位を超える、好ましくは、100単位を超える凝集体の形成を導く、変性剤非存在下での、例えば0.1M HCl中での、適切なAβペプチドの自己誘導重合体凝集を含むプロセスにより得られる分子構造である。このプロセスは当技術分野で周知である。好都合に、Aβ(X−Y)原線維は、水溶液の形態で使用される。本発明の特に好ましい実施形態において、0.1%NHOH中でAβペプチドを溶解し、20mMNaHPO、140mMNaCl、pH7.4で1:4に希釈し、次いでpH7.4に再調整し、37℃にて20時間温置し、次いで10000gで10分間遠心し、20mMNaHPO、140mMNaCl、pH7.4で再懸濁することにより、水性原線維溶液を調製する。
【0096】
「Aβ(X−Y)原線維」という用語は、本明細書中で、Aβ(X−Y)サブユニットから実質的になる原線維を指し、この場合、平均でサブユニットの少なくとも90%がAβ(X−Y)型のものであれば好ましく、サブユニットの少なくとも98%がAβ(X−Y)型のものであればより好ましく、非Aβ(X−Y)ペプチドの含量が検出閾値以下であれば最も好ましい。
【0097】
組換えアミロイドβタンパク質の使用
本発明の方法に従って作製されたタンパク質は、方法そのものと同様、多数の興味深い用途を有する。例えば、前記方法は、合成有機手段によるペプチドの精製の必要がない。さらに、大規模な組換え発現は、ペプチド合成よりずっと安価であるので、前記方法は、作製コストの大幅な節約を可能とする。
【0098】
さらに、本発明の方法は、様々な、現在同定されたアルツハイマー家族疾患及び将来同定される全ての疾患と関連する天然のアミノ酸バリアントの何れをも容易に導入することができる。
【0099】
また、本発明の方法は、その後、アルツハイマー病の治療用モノクローナル抗体(又は他の抗体)の作製において使用され得るさらなる材料の調製において使用するための出発材料の適切な量を調製することを可能とする。
【0100】
さらに、前記方法は、1)ヒト免疫化をベースとした介入的治療(例えば、能動免疫のために使用され得る球状凝集体)、2)ヒト診断検査又は動物をベースとした代替生物的検査系(例えば、エピトープ(すなわち、球状凝集体又はその一部)は、疾病を診断するために、又は対症療法的治療を決定するために、ヒト又は動物モデル中で検出され得る。)、3)小分子(すなわち、非抗体又は非生物試薬)抗アルツハイマー病予防若しくは治療剤を開発するための、又は認知障害を特徴とするアルツハイマー病に関連する神経病の予防若しくは治療における大規模又は小規模なスクリーニング、4)小分子抗アルツハイマー病(又は関連疾患)の予防又は治療剤を開発するための結晶学的又はNMRをベースとした、構造に基づく設計研究、5)抗体又は他のタンパク質をベースとする抗アルツハイマー病(又は関連疾患)の予防又は治療剤の開発における結晶学的又はNMRをベースとした、構造を基礎とする設計研究、及び6)抗アルツハイマー病予防剤又は治療剤の開発におけるRNAi−をベースとした設計研究で使用するための球状凝集体の調製において使用するための球状凝集体を調製することができる(例えば、International Application No.WO2004/067561;Barghorn et al.,J.Neurochem.2005 95,834−847を参照)。
(本発明において、「球状凝集体」は、非共有的に会合された小集合体を含み、各アミロイドペプチドは平衡分子間βシートと反平行分子内βシートの両方を含有する生物学的構造として定義される。球状凝集体は、準安定的、可溶性であり、その二次構造は、フィブリル形成サブユニットとは異なる(上記のとおり)。時間が経過するにつれて、球状凝集体は、記載されている立体構造「交換」経路(図18及び23)によって、完全に平行なβシート原繊維形態へ最終的に転化する。特に、球状凝集体相互作用に対する観察された二次構造及び可能な三次及び四次構造は、図20、21及び22に図示されているとおりである[図18中の座標も参照されたい。]。さらに、球状凝集体の物理的サイズは、その分子内及び分子間相互作用によって限定される点で、球状凝集体は、オリゴマーと区別され、これらは、オリゴマーの極めて限定された形態をもたらす。球状凝集体のサイズは、球状凝集体集合内の分子間相互作用及び分子内相互作用の両方の存在によって限定される。球状凝集体は、本明細書に定義されているサイズ範囲に従って規定された特有の二次構造との、各モノマー対モノマー平行βシート相互作用から構成される。ずっと大きなアミロイドオリゴマー(原繊維形態)は、優先的に、鎖間平行βシート二次構造を含むことが予想される。これらのより大きなオリゴマー及び原繊維形態は、アミロイド「交換」構造の速度論的開放からもたらされる(図23)。比較により、球状凝集体は、本発明者らが定義したように、混合された鎖間平行及び鎖内反平行構造から構成されることによって、優先的に特徴付けられる。
【0101】
この構造は、1つの反復単位として少なくとも2つの分子からなる。反復単位は、アミロイドβタンパク質の少なくとも残基19ないし21及び30ないし32からなる2つの分子内反平行β−シート並びにアミロイドβタンパク質の少なくとも残基34ないし38からなる1つの分子間平行βシートを含有する(図21)。反平行βシートは、ループによって接続された2つのβストランドによって形成されたβヘアピン構造を有する。この反平行βシートの構造は、1.8と6オングストロームの間の距離で、骨格アミド間(実線によって示されている。)及び骨格アミドとそれらの側鎖間(破線矢印線によって示されている。)(図20)(下表1も参照されたい。)の鎖交差核オーバーハウザー効果(NOE)によって定義される。
【0102】
【表1】

【0103】
レジスター内(in−register)の平行βシートは、骨格NH−NH間の分子間NOE(破線によって示される。)及び骨格NHと側鎖のメチル基間の分子間NOE(矢印実線によって示される。)によって規定される(図20)。
【0104】
分子内と分子間NOEは、異なる放射線同位体で標識された試料を用いて識別された。以下の試料を調製した。(試料A)均一に[15N]標識されたプロトン化された試料;(試料B)H背景中に、Ile、Val、Leu残基の選択的に13C標識されたプロトン化されたメチル基を有する均一に[15N]標識された試料;(試料C)1つの分子が[U−15N,H]で標識され、別の分子が[U−14N,H]で標識されており、これらが1:1の比で混合されている混合された試料;(試料D)[U−15N,H]で標識されたペプチドは、IVL残基の選択的に13C標識された、プロトン化されたメチル基を含有する[U−14N,H]標識されたペプチドと、1:1の比で混合されている、混合された試料。実線によって示される分子内NH−NHNOE(図20)は、3D15N分解されたNOESYスペクトル中の試料A及びB中で観察されたが、15Nフィルターされ、及び15N編集された3DNOESYスペクトル中の試料Cでは観察されなかった。矢印破線によって示されているように(図20)、試料Aを使用することによって、15N分解された3DNOESY中に骨格アミドとそれらの側鎖間のさらなる分子内NOEが観察された。これらのNOEデータは、再度、反平行βシート構造の存在を示している。破線によって示される分子間NH−NHNOE(図20)は、15Nフィルターされ、及び15N編集された3DNOESYスペクトルにおいて、試料C中で観察された。これらのNOEは、レジスター内平行分子間βシートを明確に確定する。1つの分子上の骨格アミド15NHと別の分子上の13CHメチル基間のさらなる分子間NOEが、15N分解されたH/H及び13C/HNOESYスペクトルにおいて、矢印実線によって示されているように(図20)、試料D中に観察された。これらの分子間NOEは、同じく、ファイ(Φ)角度―120±50及びプサイ(Ψ)角度140±50と合致するレジスター内平行βシート構造を示している。水性15N標識された試料が凍結乾燥され、DO中に溶解されたNH/ND交換実験から、βシート中の交換から保護されたアミドが、少なくとも20分間、DO中の試料に対して得られる。保護されたアミドは、残基上の円によって示されている(図20)。これらのゆっくり交換しているアミドの多くは、βシート中に位置しており、おそらく、水素結合されている。
【0105】
NMRデータの分析から得られたNOE由来の距離制約を用いて(表1参照)、シミュレートされたアニーリングプロトコール[M.Nilges, et al.,FEBSLett.229,317−324,1988]を使用することによって、プログラムCNX[A.T.Brunger et al., Acta Crystallogr.D54(Pt5),905−21(1998)]を用いて構造を計算した。G33は、反平行βシートと平行βシートの間の連結部に位置している。この残基の立体構造は確定されておらず、物理的に許容されるあらゆる立体構造と適合するあらゆるファイ、プサイ角度を有し得る。おそらく二量体であるこの実体の代表的な立体構造は、図21に示されており、その座標は図24に示されている。
【0106】
本発明のアミロイドβ実体の構造の1つの完全な構造座標には、図24に示されているもの±アミノ酸(又はその保存的置換)の保存された骨格原子からの標準偏差が含まれる。
【0107】
平均座標位置について演算的に最も好ましい20の構造の平行βシートアミノ酸残基34から38に対する標準偏差は、骨格原子(Ca、N及びC’)については0.51±0.29オングストロームであり、全ての重原子については1.04±0.36である。より好ましくない平均座標位置は、骨格原子(Ca、N及びC’)については0.51±1.29オングストロームであり、全ての重原子については1.04±1.36である。最も好ましくない平均座標位置は、骨格原子(Ca、N及びC’)については0.51±2.29オングストロームであり、全ての重原子については1.04±2.36である。
【0108】
平均座標位置について演算的に最も好ましい20の構造の反平行βシートアミノ酸残基19から21及び30から32に対する標準偏差は、骨格原子(Ca、N及びC’)については0.67±0.23オングストロームであり、全ての重原子については1.52±0.36である。より好ましくない平均座標位置は、骨格原子(Ca、N及びC’)については0.67±1.23オングストロームであり、全ての重原子については1.52±1.36である。最も好ましくない平均座標位置は、骨格原子(Ca、N及びC’)については0.67±2.23オングストロームであり、全ての重原子については1.52±2.36オングストロームである。
【0109】
上記標準偏差(rmsd)は、実験的に測定された数値である。平行βシートと反平行βシートの間の配位は確定されていないので、構造座標全体に対するrmsdは、現在のところ決定されていない。(「標準偏差」)は、平均からの偏差の座標の算術平均の平方根であり、本明細書に記載されている構造座標からの偏差又は変動を表す様式である。)
さらに、本分野で公知の分子モデリング法は、本明細書に記載されているアミロイドβ分子(例えば、二量体)の1つ若しくはそれ以上の活性部位又は結合ポケットを同定するために使用され得る。具体的には、図21に示されているような三次元モデルを特定するために構造座標が使用される。次いで、モデルから、例えば、分子の表面構造、表面電荷、立体配置、反応性アミノ酸の存在並びに疎水性及び親水性の領域に基づいて、活性部位の候補が計算によって可視化され、同定され、及び特徴付けられ得る。このような活性部位の候補は、次いで、様々なアミロイドβ複合体から作製されたスペクトルの化学シフト擾乱、競合的及び非競合的阻害実験を用いて、及び/又は不可欠な残基(resides)又は活性部位の特徴を同定するためにアミロイドβ変異体の発生(generative)及び性質決定によって、さらに精緻化され得る。(例えば、米国特許第6,934,639号を参照)
【0110】
活性部位と相互作用し、又は会合する因子は、アミロイドβ分子の三次元モデルから測定し、コンピュータフィッティング分析を実施することによって同定され得る。コンピュータフィッティング分析は、1)相同性モデリング又は活性部位の構造座標を用いて活性部位の候補の三次元モデルを作製し、及び2)活性部位の候補と同定された因子間の会合の程度を決定することによって、活性部位の候補と同定された因子間の「フィッティング」を評価する様々なコンピュータソフトウェアプログラムを使用する。会合の程度は、結合アッセイを用いて計算的に又は実験的に決定され得る。
【0111】
さらに、本発明のタンパク質、球状凝集体及びオリゴマー(及びこれらに対して誘導された抗体)は、様々な診断アッセイにおいて使用され得ることに留意すべきである。
【0112】
本発明の1つの診断的実施形態において、タンパク質、球状凝集体若しくはオリゴマー又はこれらの一部は、固相上に被覆されている(又は液相中に存在する。)。次いで、検査又は生物試料(例えば、全血、脳脊髄液、血清など)を固相と接触させる。抗体が試料中に存在する場合には、このような抗体は、固相上の抗原に結合し、次いで、直接法又は間接法の何れかによって検出される。直接法は、単に、複合体そのものの存在を検出し、これにより抗体の存在を検出することを含む。間接法では、コンジュゲートが、結合された抗体に添加される。コンジュゲートは、シグナル生成化合物又は標識に付着された第二の抗体を含み、第二の抗体は、結合された第一の抗体に結合する。第二の抗体が結合された第一の抗体に結合すると、シグナル生成化合物は、測定可能なシグナルを発生する。次いで、このようなシグナルは、検査試料中の第一の抗体の存在を示す。
【0113】
診断用免疫アッセイで使用される固相の例は、多孔及び非多孔材料、ラテックス粒子、磁性粒子、微小粒子(例えば米国特許第5,705,330号参照)、ビーズ、膜、マイクロタイターウェル及びプラスチックチューブである。固相材料の選択及びコンジュゲート中に存在する抗原又は抗体を標識する方法は、必要に応じて、所望のアッセイ方式の性能特性に基づき決定される。
【0114】
上述のように、コンジュゲート(又は指標試薬)は、シグナル生成化合物又は標識に連結された抗体(又はおそらく、アッセイによっては抗−抗体)を含む。このシグナル生成化合物又は「標識」は、そのものが検出可能であるか、又は検出可能な産物を生成するための1以上のさらなる化合物と反応し得る。シグナル生成化合物の例には、色原体、放射性同位元素(例えば、125I、131I、32P、H、35S及び14C)、化学発光化合物(例えばアクリジニウム)、粒子(可視性又は蛍光性)、核酸、錯化剤又は酵素などの触媒(例えば、アルカリホスファターゼ、酸性ホスファターゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ及びリボヌクレアーゼ)が含まれる。酵素を使用する場合(例えば、アルカリホスファターゼ又はホースラディッシュペルオキシダーゼ)、色原、蛍光又は化学発光生成基質を添加することにより、検出可能なシグナルが生じる。時間分解蛍光、内部反射蛍光、増幅(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応)及びラマン分光法などのその他の検出系も有用である。
【0115】
上記免疫アッセイにより試験され得る体液の例には、血漿、全血、乾燥全血、脳脊髄液又は組織及び細胞の水性もしくは有機−水性抽出物が含まれる。
【0116】
本発明の別の実施形態において、試験試料は、本発明の特異的抗体(例えば、ヒト又はヒト化されたモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体など)で被覆された固相(又は液相)に曝露され得る。球状凝集体、オリゴマー又はタンパク質は、上述のように、及び試料中に存在すれば、固相に結合し、次いで、上述のような直接又は間接法によって検出され得る。より具体的には、間接法は、標識又はシグナル生成化合物に付着された(結合された抗原に結合する)第二の抗体を含むコンジュゲートを添加することを含む。第二の抗体が結合された抗原に結合する場合、次いで、試験試料中のアルツハイマータンパク質(球状凝集体、オリゴマー、ペプチド又はこれらの一部など)の存在を示す検出可能なシグナルが生成される。
【0117】
本発明はまた、試験試料中における抗体の存在を検出するための第三の方法も包含する。この方法は次の段階を含む:(a)抗抗体/抗原複合体を形成させるのに十分な時間及び条件下で、抗体を含有する疑いのある試験試料を抗原(例えば、タンパク質、球状凝集体若しくはオリゴマー又はこれらの一部)に対して特異的な抗抗体と接触させる段階;(b)結合された抗体に抗原を結合させるのに十分な時間及び条件下で、得られた抗抗体/抗原複合体に抗原を添加する段階(該抗原は、本明細書に定義されているタンパク質、球状凝集体、オリゴマー又はこれらの一部を含む。);(c)得られた抗抗体/抗体/抗原複合体へコンジュゲートを添加する段階(このコンジュゲートは、検出可能なシグナルを検出することができるシグナル生成化合物に付着されたモノクローナル又はポリクローナル抗体を含む組成物を含み、前記モノクローナル又はポリクローナル抗体は抗原に対して誘導されている。)及び(d)シグナル生成化合物により生じたシグナルを検出することにより試験試料中に存在し得る抗体の存在を検出する段階。抗抗体に対する抗体を含む、対照又は標準物質を使用し得る。
【0118】
本発明はまた、本明細書中に記載の抗体の1以上又はその一部と医薬的に許容可能なアジュバント(例えば、フロイントのアジュバント又はリン酸緩衝食塩水)と、を含有するワクチンも含む。
【0119】
キットも本発明の範囲内に含まれる。より具体的には、本発明は、患者中の抗体の存在を測定するためのキットを含む。特に、試験試料中の抗体の存在を測定するためのキットは、a)本明細書中で定義されるような抗原(例えば、タンパク質、球状凝集体、オリゴマー又はこれらの一部);及びb)検出可能なシグナルを生成することができるシグナル生成化合物に付着された抗体を含むコンジュゲートを含む。本キットは、抗原に結合する試薬を含む対照又は標準物質も含有し得る。
【0120】
本発明はまた、試験試料中の抗体を検出するためのキットの別の種類を含む。本キットは、a)目的の抗体に特異的な抗抗体及びb)上記で定義されるような抗原又はその一部を含み得る。抗原に結合する試薬を含む対照又は標準物質も含まれ得る。より具体的には、本キットは、a)抗体に特異的な抗抗体及びb)検出可能なシグナルを生成することができるシグナル生成化合物に付着された抗原を含むコンジュゲートを含み得る。同じく、本キットはまた、抗原に結合する試薬を含む標準物質の対照も含み得る。
【0121】
本キットはまた、各容器に前もってセットされた固相が付いた、バイアル、ボトル又はストリップなどの1つの容器及び個々のコンジュゲートを含有するその他の容器も含み得る。これらのキットはまた、洗浄、処理及び指標試薬など、本アッセイを行うのに必要とされるその他の試薬のバイアル又は容器も含有し得る。
【0122】
さらに、本発明は、北極(E693G)変異、オランダ(E693Q)変異、イタリア変異(E693K)、アイオワ(D694N)変異及びフランドル(A692G)変異からなる群から選択される抗原に対して、及びこれらの抗原を用いて作製されたヒト化抗体を含む。本抗体は、アミロイドβペプチドの自然のヒト配列及び前記変異された配列の少なくとも1つを認識し得る。本抗体は、治療の目的のために、このような変異を有するとして同定された患者に投与され得る。本抗体は、二重可変ドメインを有し得、自然のヒトアミロイドβ配列及び上記家族性変異体の少なくとも1つを認識し得る。本抗体は、二重特異的でもあり得る。
【0123】
さらに、本発明は、アルツハイマー病を有すると疑われる患者中の変異体アミロイドβペプチド配列を検出する方法を含む。本方法は、a)患者から生物学的試料を単離する段階;2)変異体抗原/抗体複合体の形成のために十分な時間及び条件下で、上で直接記載されている抗体と前記生物学的試料を接触させる段階;及びc)変異体抗原/抗体複合体の存在を検出する段階を含み、前記複合体は、前記患者が変異体アミロイドβペプチド配列を有することを示唆し、従って、アルツハイマー病を有することを示唆する。
【0124】
さらに、本発明は、アミロイドペプチドの1モル当りドデシル硫酸ナトリウム(SDS)又は脂肪酸の少なくとも約0.5から2.0モルを含む単離された球状凝集体を含む。最も好ましくは、SDSの約1.0モルが、球状凝集体中に存在する。本発明は、単離された球状凝集体のエピトープも含む。(このエピトープは、ペプチドとSDS(又は脂肪酸)の混合物によって形成され得る。)さらに、本発明は、エピトープに結合する単離された抗体も含む。この抗体は、アミロイドβペプチド凝集体の形成も遮断し得る。この遮断は、ペプチド二量体、ペプチド三量体、ペプチド四量体、ペプチド五量体、ペプチド六量体、ペプチド七量体、ペプチド八量体、ペプチド九量体、ペプチド十量体、ペプチド十一量体、ペプチド十二量体、ペプチド十三量体及びペプチド十四量体の段階で生じ得る。
【0125】
また、本発明は、アミロイドβペプチドを含む単離された球状凝集体も含む。このペプチドは、北極(E693G)変異、オランダ(E693Q)変異、イタリア変異(E693K)、アイオワ(D694N)変異及びフランドル(A692G)変異からなる群から選択された変異を有するアミノ酸配列を含む。本発明は、この球状凝集体のエピトープ(すなわち、ペプチド及びSDS(又は脂肪酸)及び球状凝集体の混合物によって形成されるエピトープ)も含むが、自然のヒトアミロイドβペプチド配列の免疫反応性エピトープとは免疫学的に異なる。
【0126】
さらに、本発明は、自然のヒトアミロイドペプチドのエピトープと比べて、上記エピトープに優先的に結合する単離された抗体(例えば、モノクローナル抗体)を含む。このような抗体は、家族性アルツハイマー病を有する患者の治療においても使用され得る。
【0127】
本発明は、(上述のような)アルツハイマー病の家族性形態の治療において使用され得、(散発性アルツハイマー病の治療の間に提示されるエピトープとは異なる)家族性変異体のエピトープに関して優先的及び選択的なエピトープ反応性を有する単離された抗体(例えば、モノクローナル抗体)も包含する。
【0128】
さらに、本発明は、アルツハイマー病の予防又は治療を必要としている患者において、アルツハイマー病を予防又は治療する方法であり、前記予防又は治療を実施するのに十分な量で、前記患者に、上記単離された抗体の何れか1つ又はそれ以上を投与する段階を含む、前記方法を含む。
【0129】
さらに、本発明は、アミロイドβペプチドを含む単離された球状凝集体を含む。ペプチドは、水素−重水素交換挙動に基づいて、約33%又はそれ未満の保護又は交換を示すアミノ酸を含み、前記アミノ酸は2(Asp)、3(Ala)、4(Glu)、5(Phe)、7(His)、8(asp)、9(Ser)、10(Gly)、17(Lys)、20(Phe)、21(Phe)、22(Ala)、25(Val)、26(Gly)、29(Lys)及び30(Gly)からなる群から選択される。単離された球状凝集体は、アミロイドβペプチドを含む。
【0130】
さらに、本発明は、アミロイドβペプチドを含む単離された球状凝集体を含む。前記ペプチドは、水素−重水素交換挙動に基づいて、約33%から約66%の保護又は交換を示すアミノ酸を含み、前記アミノ酸は、16(Gln)、31(Ala)、32(Ile)、42(Ile)及び43(Ala)からなる群から選択される。
【0131】
また、本発明は、アミロイドβペプチドを含む単離された球状凝集体を包含する。前記ペプチドは、水素−重水素交換挙動に基づいて、約66%又はそれ以上の保護又は交換を示すアミノ酸を含み、前記アミノ酸は、12(Glu)18(Leu)、19(Val)、24(Asp)、33(Ile)、34(Gly)、35(Leu)、36(Met)、38(Gly)、39(Gly)及び40(Val)からなる群から選択される。
【0132】
ヒト家族性変異体
図27に示されているようにN末端Met形態として発現されたヒト家族性変異体アルツハイマーペプチドは、自然配列球状凝集体形態に対して作製された抗体との異なる(より低い)反応性を有すると想定される。例えば、自然配列球状凝集体を用いて作製された抗体Aに結合する能力は、以下の家族性変異については低下する。北極(E693G)、オランダ(E693Q)、イタリア(E693K)、アイオワ(D694N)及びフランドル(A692G)。変異体球状凝集体形態へのこの低下した結合能は、抗体Aエピトープのこの領域中の変化された配列/構造から得られる。これらの変異に関連するアルツハイマー病の家族性形態に罹患している患者の治療的処置における抗体のヒト化された形態の使用は、これらの領域の配列を含有する球状凝集体エピトープに対して選択的に開発された抗体を必要とする。抗体A様抗体は、インビボで球状凝集体中に提示された家族性エピトープを認識する低下した能力を示すので、単独では、これらの家族性変異体に対して治療的に活性でない。
【0133】
本発明は、以下の非限定的な実施例の使用によって例示され得る。
【実施例1】
【0134】
Aβ−アミロイドペプチドのクローニング
Aβ−アミロイドペプチドを合成により構築した。特に、図1は、本明細書中に記載のペプチドをコードするDNA配列ならびにそのペプチドのアミノ酸配列を示す。Aβ−アミロイドペプチドを体系化する配列及びベクターpET29でそれをクローニングするための所望の制限部位をカバーするプライマーを設計し、アニーリング反応において使用し、所望のE.コリ発現ベクターへの連結反応で使用する断片を生成させた。
【0135】
これらのオリゴを一緒にアニーリングさせた後、DNAリガーゼ(Invitrogen、Carlsbad、CA)を用いた連結によりpET29 NdeI XhoI部位にこれらを組み込み、pET29−Aβアミロイドペプチド(1−42)自然形態を形成させた。最終構築物をDNA配列決定により確認した。
【0136】
鋳型としてpET29−Aβアミロイドペプチド[1−42]を用いて部位特異的突然変異誘発(SDM)によりβアミロイドペプチド[1−39、40、42及び43]を作製した。Quick−Changeキット(Stratagene、La Jolla、CA)を用いた独立のSDM反応において、SDMamy−39s及びas、SDMamy−40s及びas、SDMamy−41s及びas、SDMamy−43s及びas(表2参照)のプライマーペアを使用した。新しい構築物、pET29−Aβアミロイドペプチド[1−39]、pET29−Aβアミロイドペプチド[1−40]、pET29−Aβアミロイドペプチド[1−41]及びpET29−Aβアミロイドペプチド[1−43]をDNA配列決定により確認した。
【0137】
得られた構築物を使用して、E.コリBL21(DE3)を形質転換し、発現をテストした。1mMIPTG(イソプロピル−β−D−チオガラクトピラオシド)で誘導後、37℃で4時間増殖させ、ペプチドの発現を行った。クーマシー染色したSDSタンパク質ゲルにおいて可視化した場合、試験発現からの不溶性分画から、予想サイズのタンパク質が得られた。
【0138】
【表2】


【実施例2】
【0139】
発酵及びβアミロイドの発現
1)A−β[1−39]:
[非標識物質の産生]
発現プラスミドをE.コリBL21(DE3)に形質転換し、カナマイシン(50mg/L)を添加したLBに平板接種した。37℃で一晩温置した後、プレート上に現れた形質転換体を使用して、50mg/Lでカナマイシンを添加した150mLのM9前培養に接種した。前培養物を往復振盪器(185rpm)に置き、30℃で温置した。培養物のOD600nmが0.468に到達したら、培地18Lを含有するNew Brunswick Scientific(Edison、NJ)Micros発酵装置に前培養物全てを移した。この発酵用培地は、以下のものから構成された(1Lあたり):11.32g NaHPO7HO、3g KHPO、0.5g NaCl、1mL 1%DF−60消泡剤、1.5gNHCl、3.55gグルコース、2mL 1M MgSO、0.1mL 1M CaCl、0.02mL FeSO(40mg/mL)、2mLカナマイシン(25mg/mL)及び0.633mL微量元素溶液[5N HCl中1Lあたり:10g MnSO・HO;10g AlCl・HO;4g CoCl;2g ZnSO・7HO;2g NaMoO・2HO;1g CuCl・2HO;0.5g HBO]。最初に温度を30℃に調節した。発酵装置に空気を2vvmで噴霧し、DO濃度が45%以下に低下した際に撹拌速度を上昇させる縦続調整ループを通じて45%空気飽和度を超えるように溶解酸素濃度[DO]を維持した。4N HSO及び4N KOHの自動添加を通じて、運転中、pHを7.0に調整した。OD600nmが2.0になったら温度設定を41℃に変更し、1mMIPTGを添加することによりA−βの発現を誘導した。30%グルコース溶液を供給することによって、発現フェーズ全体にわたり0g/Lより上にグルコース濃度を維持した。誘導3時間後に細胞を回収した。
【0140】
2)A−β(1−40):
15N標識物質の作製]
発現プラスミドをE.コリBL21(DE3)に形質転換し、カナマイシン(50mg/L)を添加したLBに平板接種した。37℃で一晩温置した後、プレート上に現れた形質転換体を使用して、50mg/Lでカナマイシンを添加した150mLの15N−M9前培養に接種した。往復振盪器(185rpm)上に前培養物を置き、30℃で温置した。培養液のOD600nmが0.510に到達したら、培地18Lを含有するNew Brunswick Scientific(Edison、NJ)Micros発酵装置に前培養物75mLを移した。この発酵用培地は、以下のものから構成された(1Lあたり):11.32g NaHPO・7HO、3g KHPO、0.5g NaCl、1mL 1%DF−60消泡剤、1.5g 15N−NHCl、3.55gグルコース、2mL 1M MgSO、0.1mL 1M CaCl、0.02mL FeSO(40mg/mL)、2mLカナマイシン(25mg/mL)及び0.633mL微量元素溶液[5N HCl中1Lあたり:10g MnSO・HO;10g AlCl・ΗO;4g CoCl;2g ZnSO・7HO;2g NaMoO・2HO;1g CuCl・2HO;0.5g HBO]。最初に温度を30℃に調節した。発酵装置に空気を2vvmで噴霧し、DO濃度が45%以下に低下した際に撹拌速度を上昇させる縦続調整ループを通じて45%空気飽和度を超えるように溶解酸素濃度[DO]を維持した。4N HSO及び4N KOHの自動添加を通じて、運転中、pHを7.0に調整した。OD600nmが1.5になったら温度設定を41℃に変更し、1mMIPTGを添加することによりA−βの発現を誘導した。30%グルコース溶液を供給することによって、発現フェーズ全体にわたり0g/Lより上にグルコース濃度を維持した。誘導3時間後に細胞を回収した。
【0141】
3)A−β(1-41):
15N標識物質の作製]
発現プラスミドをE.コリBL21(DE3)に形質転換し、カナマイシン(50mg/L)を添加したLBに平板接種した。37℃で一晩温置した後、プレート上に現れた形質転換体を使用して、50mg/Lでカナマイシンを添加した150mLの15N−M9前培養に接種した。往復振盪器(185rpm)上に前培養物を置き、30℃で温置した。培養液のOD600nmが0.424に到達したら、培地18Lを含有するNew Brunswick Scientific(Edison、NJ)Micros発酵装置に前培養物全てを移した。この発酵用培地は、以下のものから構成された(1Lあたり):11.32g NaHPO・7HO、3g KHPO、0.5g NaCl、1mL 1%DF−60消泡剤、1.5g 15N−NHCl、3.55gグルコース、2mL 1M MgSO、0.1mL 1M CaCl、0.02mL FeSO(40mg/mL)、2mLカナマイシン(25mg/mL)及び0.633mL微量元素溶液[5N HCl中1Lあたり:10g MnSO・HO;10g AlCl・ΗO;4g CoCl;2g ZnSO・7HO;2g NaMoO・2HO;1g CuCl・2HO;0.5g HBO]。最初に温度を30℃に調節した。発酵装置に空気を2vvmで噴霧し、DO濃度が45%以下に低下した際に撹拌速度を上昇させる縦続調整ループを通じて45%空気飽和度を超えるように溶解酸素濃度[DO]を維持した。4N HSO及び4N KOHの自動添加を通じて、運転中、pHを7.0に調整した。OD600nmが1.8になったら温度設定を41℃に変更し、1mMIPTGを添加することによりA−βの発現を誘導した。30%グルコース溶液を供給することによって、発現フェーズ全体にわたり0g/Lより上にグルコース濃度を維持した。誘導3時間後に細胞を回収した。
【0142】
4)A−β(1-42):
15N標識物質の作製]
発現プラスミドをE.コリBL21(DE3)に形質転換し、カナマイシン(50mg/L)を添加したLBに平板接種した。37℃で一晩温置した後、プレート上に現れた形質転換体を使用して、50mg/Lでカナマイシンを添加した150mLの15N−M9前培養に接種した。往復振盪器(185rpm)上に前培養物を置き、30℃で温置した。培養液のOD600nmが0.520に到達したら、培地18Lを含有するNew Brunswick Scientific(Edison、NJ)Micros発酵装置に前培養物75mLを移した。この発酵用培地は、以下のものから構成された(1Lあたり):11.32g NaHPO・7HO、3g KHPO、0.5g NaCl、1mL 1%DF−60消泡剤、1.5g N15−NHCl、3.55gグルコース、2mL 1M MgSO、0.1mL 1M CaCl、0.02mL FeSO(40mg/mL)、2mLカナマイシン(25mg/mL)及び0.633mL微量元素溶液[5N HCl中1Lあたり:10g MnSO・HO;10g AlCl・ΗO;4g CoCl;2g ZnSO・7HO;2g NaMoO・2HO;1g CuCl・2HO;0.5g HBO]。最初に温度を30℃に調節した。発酵装置に空気を2vvmで噴霧し、DO濃度が45%以下に低下した際に撹拌速度を上昇させる縦続調整ループを通じて45%空気飽和度を超えるように溶解酸素濃度[DO]を維持した。4N HSO及び4N KOHの自動添加を通じて、運転中、pHを7.0に調整した。OD600nmが1.5になったら温度設定を41℃に変更し、1mMIPTGを添加することによりA−βの発現を誘導した。30%グルコース溶液を供給することによって、発現フェーズ全体にわたり0g/Lより上にグルコース濃度を維持した。誘導3時間後に細胞を回収した。
【0143】
5)A−β(1-42):
[非標識物質の作製]
発現プラスミドをE.コリBL21(DE3)に形質転換し、カナマイシン(50mg/L)を添加したLBに平板接種した。37℃で一晩温置した後、プレート上に現れた形質転換体を使用して、カナマイシン(50mg/L)を添加したTerrific Broth(Sigma−Aldrich、St.Louis、MO)1Lを含有する6個のフェーンバッハフラスコに接種した。30℃の往復振盪器(185rpm)にこのフラスコを移した。培養液のOD600nmが0.45に到達したら、1mMIPTGを添加することによりA−βの発現を誘導し、41℃の往復振盪器にこのフラスコを移した。誘導3時間後に細胞を回収した。
【0144】
6)A−β(1−43):
[非標識物質の作製]
発現プラスミドをE.コリBL21(DE3)に形質転換し、カナマイシン(50mg/L)を添加したLBに平板接種した。37℃で一晩温置した後、プレート上に現れた形質転換体を使用して、カナマイシン(50mg/L)を添加したTerrific Broth(Sigma−Aldrich、St.Louis、MO)1Lを含有する14個のフェーンバッハフラスコに接種した。37℃の往復振盪器(185rpm)にフラスコを移した。培養液のOD600nmが0.44に到達したら、1mMIPTGを添加することによりA−βの発現を誘導し、41℃の往復振盪器にフラスコを移した。誘導3時間後に細胞を回収した。
【実施例3】
【0145】
組み換え発現させたβ−アミロイドの精製
組み換えヒトアミロイドの精製に対して展開した全般的な概要を図3で示し、下記で述べる。
【0146】
出発試料:
全単離試料のための出発物質はE.コリ細胞培養の回収物から得られた−80℃凍結細胞ペーストであった。細胞培養物は、複数の1Lフラスコでの増殖由来か、又は35Lの大きさの発酵装置由来のものであった。培地は、様々に標識されたA−β試料を調製するために使用されるさらなる標識を含むか又は含まない、非標識物質を産生させるための富栄養培地又は最小培地から構成され得る。様々な培地とともにフラスコ又は発酵装置の何れかを使用し得る。
【0147】
処理1:細胞溶解液及び封入体調製
凍結細胞ペーストをボトルから取り出し、室温に置いてある撹拌プレート上に置いたビーカー中の冷細胞溶解緩衝液5−10体積に添加した。細胞溶解緩衝液は、100mMTris最終pH7.5から7.8(4℃)から構成された。発酵装置由来の細胞ペーストの場合、0.1%TritonX100を細胞溶解緩衝液に添加した。細胞溶解液0.1μL/mLの濃度になるまでベンゾナーゼ(EMD Biosciences、Madison、WI)を添加した。ペレットが均一に再懸濁されるまで凍結細胞ペーストを撹拌した。これは通常、45分から60分以内に完了した。必要に応じて、このプロセスを促進するために組織均質化により懸濁液を短時間均質化した。冷却コイルを氷下に維持しながら、M−110Lマイクロ流動化装置(Microfluidics、Newton、PA)を用いて、又は冷French Pressure cell(SLM Amnico、Rochester、NY)を用いて、細胞溶解を行った。約15℃の細胞溶解物質を250mLナルゲン(Nalge Nunc International、Rochester、NY)遠心ボトル又は50mL 丸底ポリカーボネート遠心管に入れ、JLA16.25ローター(Beckman Instruments、Palo Alto、CA)で23000xGで4℃にて30分間遠心した。上清をデカントし、試料を取り、捨てた。
【0148】
処理2:封入体及びペレット洗浄
pH7.5から7.8の冷50mMトリス緩衝液を添加し、上記で得られたペレットを洗浄した。組織ホモジェナイザ―を用いて物質を再懸濁し、上記のようにJLA16.25ローターで23000xGで遠心した。封入体物質に対してこのようなトリス洗浄を全部で3回行った。SDS PAGE分析のために上清試料を各時間で回収した。
【0149】
処理3:水洗浄
Tris緩衝液洗浄に次いで、最後に水で1回洗浄した。これは、試料の凍結乾燥前にTris緩衝液をほぼ除去するために行った。この段階において、物質全てを1本のボトルへと一度に合わせた。最後に再懸濁試料を上記のようにJLA16.25ローターで23000xGで遠心した。SDS PAGE分析のために上清試料を回収し、その後捨てた。
【0150】
遠心からのペレットを水(NMR用試料)又は0.1%トリフルオロ酢酸を含有する水の何れかで再懸濁した。一度に大量の物質を処理する発酵装置に後者を添加した。水のみから凍結乾燥した物質は非常に静電気が強く、大量に取り扱うことは非常に困難であり、一方、トリフルオロ酢酸の添加により凍結乾燥物質が後に非常に容易かつ安全に扱うことができるようになることに注目した。凍結(シェリング)プロセス中に凍結乾燥機フラスコの壁面に容易に広がる薄いスラリーが得られるように再懸濁試料の最終体積を調整した。
【0151】
処理4:凍結乾燥
再懸濁試料をシェル凍結し、凍結乾燥機に入れ、一晩又はこのプロセスを完了するために必要に応じてより長時間、凍結乾燥した。少量の試料を50mLコニカルポリエチレンチューブ中で凍結乾燥し、そこから移す必要がないようにした。
【0152】
処理5:抽出
使用した抽出溶媒は、V−A)DMSO;V−B)へプタフルオロ酪酸(HFBA)及びV−C)トリフルオロ酢酸であった。フルオロ酸を用いた経路は、ニートTFA中でA−β1−42又は1−40の溶解度が高いことに基づく[Jaoら(1997)、「Trifluoroacetic Pretreatment Reproducibly Disaggregates the Amyloid β−peptide」Int.J.Exp.Clin.Invest.、V4、pp240−252]。構造の目的に対するA−β調製の第一段階としてニートTFAが使用されてきた。ニートTFAは、ペプチドからの前の構造の全ての過程を消し、可溶性を非常に高める。
【0153】
処理5A:DMSO抽出
DMSOは、凍結乾燥封入体試料からペプチドを抽出するために最もよく使用される溶媒である。発酵装置から、出発細胞ペーストの量に依存して、このような凍結乾燥物質10−20gを得た。DMSO(ジメチルスルホキシド)300mLを温撹拌プレート上の600mLガラスビーカー中で37℃に加温した。粉塵を生じさせずに慎重に凍結乾燥物質をDMSOに添加した。移した後、組織ホモジェナイザーを用いて懸濁液を均質化した。さらに15分間撹拌を続けた。全プロセスを45分以内に終了した。ビーカーにガラスプレートで蓋をした。撹拌及び加熱を停止し、ドラフト中のベンチで一晩物質を静置した。試料の温度は常に37℃を超えないようにした。総体積は約350mLであり、翌朝、2個の250mLナルゲンボトルで25℃にて30分間、JLA16.25ローターで23000xGで遠心した。DMSO上清を600mLガラスビーカーにデカントした。さらなる50mL DMSOを各ボトルに添加し、均質化し、前のように遠心した。2つの試料を集め、それにより全部で約400mLとなった。以前の実験でSDS PAGEにより基本的に全てのペプチドはこの手順により抽出されていることが分かっていたので、ペレットを捨てた。
【0154】
NMR試料は、通常、5から10グラムの細胞ペーストを含有した。(水から)凍結乾燥した封入体物質が50mLコニカルポリプロピレンチューブに入っていた。DMSO 25mLをこのチューブに添加し、試料を短時間均質化して、懸濁液に戻した。室温にて、ベンチ上で通常は約4時間静置したが、場合によっては、都合がよいので、一晩温置した。再懸濁したペレットをポリカーボネート遠心管に移し、JLA16.25ローターで25℃にて30分間、23000xGで遠心した。ペレットは少量であり、捨てた。上清を50mLコニカルチューブにデカントした。いくつかのこのような試料を平行してこの段階に持ち込む場合、時にはこれをクロマトグラフィーまで−20℃で凍結した。
【0155】
処理6:クロマトグラフィーのための調製
逆相カラム平衡化溶出物、10%アセトニトリル(1%水酸化アンモニウムを含有する水中)へのDMSOの透析により、クロマトグラフィーのための調製を行った(処理6A、下記)。
【0156】
試料体積がカラム体積と比べて小さい限り(通常、カラム体積の10%未満)、逆相カラムにDMSO抽出物を直接添加することもできる(処理6B、下記)。分析スケールカラムでこれを行った。NMR試料の場合、DMSO試料25mLを0.1%水酸化アンモニウムで250mLに希釈し、カラムに直接添加した。
【0157】
処理6A:透析又は希釈
約1.5Lを保持するのに十分長い6000−8000カットオフ透析膜(Spectrum Laboratories、Rancho Dominguez、CA)にDMSO抽出物を慎重に注いだ。濃アンモニア(0.1%v/v)10mLを添加した15%アセトニトリル10Lに対してこれを透析した。ベンチ上でこれを4時間透析した。透析プロセスを加速するために、定期的に透析膜を取り出し、濃厚なDMSOを再分配した。4時間終了時に、新しい同じ緩衝液10Lに膜を入れ、このプロセスをさらに2時間続けた。透析終了時に、試料を取り、25℃にて30分間、23000xGで遠心した。基本的にペレットはなかった。透析終了時に、350−400mL DMSO抽出物の体積は2倍になった。全試料を2Lシリンダーに移し、総体積が2000mLとなるまで0.1%アンモニア水で2倍に希釈した。試料が確実に逆相カラムに結合するように希釈を行った(処理6A)。
【0158】
処理6A:クロマトグラフィー
2.2x25cm(95mL)ステンレスカラムにPolymer Labs(Amherst、MA)からの15−20ミクロン、300A、PLPR−S逆相レジンを手作業で充填した。これは、75%アセトニトリル+0.1%アンモニア(75%B)から循環させて、10%Bに平衡化されていた。Pharmacia P500ポンプ(Amersham Biosciences、Piscataway、NJ)にカラムを連結し、1000分にわたり、室温にてベンチ上で一晩、カラムに1400mLをポンプで通した。翌朝、約250mLの10%Bを用いてP500ポンプでカラムを洗浄し、次に、Beckman HPLC(Palo Alto、CA)に連結した。280nmの吸収がベースラインになるまで10%Bで洗浄を続け、次いで10%Bから30%Bまで200分間にわたり勾配を開始した(0.1%勾配)。フルスケールの吸収を1吸収単位に維持し、流速を5mL/分に維持した。物質を手動で回収した。約50分画を回収した。これらの体積は様々であるが、殆どが約10mLであった。30%Bでカラムを溶出し続け、溶出液を回収した。痕跡に基づき、これを後に捨てた。各分画100μLをスピードバックに入れ、乾燥させ、IX試料緩衝液100μLをチューブに添加した。試料をSDS PAGEに添加し、分画を4℃で一晩保存した。SDS PAGE後、今回の操作からの不純物が次回の操作に混入する可能性があるので、再生を試みずにPLPRS逆相物質を捨てることとした。
【0159】
翌朝、ゲルからの結果により、プールした。Amicon(Millipore Inc、Billerica、CA)上の3500カットオフ膜でセルを撹拌しながら物質を濃縮し、約4時間で350から50mLに濃縮した。試料は全て溶液中であった。次に、これを一晩凍結乾燥した。翌朝、重量測定フード中の前もって重量測定した2本の50mLコニカルポリプロピレンチューブに慎重にこれを移した。移した総重量は凍結乾燥物質250mg+330mg(総重量580mg)であった。これを−20℃で保存した。全プロセスを5労働日未満で行った。下記は精製テーブルである(表3)。
【0160】
【表3】

【0161】
処理6B:直接添加
濃アンモニア(1%v/v)10μLを含有するDMSO 1mLを固形物20mgに添加した。物質を短時間超音波破砕して固形物を再懸濁し、次いで遠心した。DMSO中の可溶性物質0.5/1mLを3u分析用0.46x25cm PLPR−Sカラムに添加した(段階2.1)。SDS PAGEで判定したところ、純粋なA−βが30%前後で溶出した。SDS PAGEゲルで、既に形成された球状凝集体の特徴的パターンが観察された。この物質を凍結乾燥し、図8で概説する球状凝集体形成プロトコールに供し、図9で見られるSDS PAGEでのバンドパターンを得た。
【0162】
2回目の試行で、DMSO(アンモニア添加なし)中の10mg/mLを調製した。この試料の0.5mLを分析用カラムに直接注入した。この場合、pH変更をカラム上で行った。予想される%Bでペプチドは溶出し、(SDS PAGEにより判定されるように)プールを作製し、凍結乾燥し、球状体形成プロトコールに供し、従来どおり有効な球状凝集体を調製した。NMR試料の場合、DMSO試料25mLを0.1%水酸化アンモニウムで250mLに希釈し、カラムに直接添加した。
【0163】
処理5B、5C:酸性抽出経路
へプタフルオロ酪酸(HFBA)及びトリフルオロ酢酸により抽出を行うこともできた。
【0164】
処理7A1、7A2、7A3:クロマトグラフィーのための調製
温撹拌プレート上の600mLガラスビーカーに無水HFBA300mLを入れた。ドラフト中で激しく撹拌しながら凍結乾燥IB試料(〜10g)をHFBAに添加した。形成された凝集塊は何れも、必要に応じて、組織ホモジェナイザー及びプローブソニケーターで分解した。この物質を約40℃に加熱し、冷まし、ベンチ上で一晩、照明なしで静置した。翌朝、HFBAで溶解したIB試料(これは殆ど溶液状であった。)をロータリーエバポレーターに入れ、浴槽温度を約40℃にして、HPBAをほぼ全て除去した。フラスコの壁周辺の固形物が乾燥しないように注意した。(この物質が粘性のあるシロップのようにふるまう場合、1,1,1,3,3,3,ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)約50mLをフラスコに添加した。温め、フラスコを回転させ、組織ホモジェナイザー及び/又はソニケータープローブを用いることにより、このシロップ状物質をHFIP中の溶液になるようにした。)。全てが溶解している場合、試料が粘性のあるシロップ状の稠度になるまで、HFIPをエバポレーターで除去した。HFIPのさらなる50mL一定分量を添加し、このプロセスを繰り返した。試料がシロップ状の稠度である場合、50mL DMSOをフラスコに添加した。試料は茶褐色となり、少し加熱することによりDMSO中で溶液となった。これを室温にて一晩静置した。翌朝、透明な上清とともに、沈殿物が底に沈降していた。試料を遠心し、ペレットを捨てた。
【0165】
処理8:酢酸水への抽出物の添加
室温にて急速に撹拌しながら、30%酢酸水の2体積にこの抽出物の1体積をゆっくりと添加した。室温にて30分間撹拌し続け、次いで試料を遠心して少量の不溶性物質を除去した。その間に、Sephadex G50の5x90cm(〜1800mL)カラム(Amersham Biosciences、Piscataway、NJ)を30%酢酸中で充填し、使用するまで低温室で保存した。〜33%DMSO中の試料150−200mLをG50に添加し、試料が凍結しないように注意した。1.5mL/分で約1.2カラム体積分、30%酢酸を用いて試料を溶出した。3つのピークが得られた。最初の(即ちボイド)ピークを捨てた。第二のピークにはほぼ純粋なA−βが含有されていた。第三のピークには若干A−βが含有されていたが、抽出溶媒も含まれており、これも捨てた。2番目のピークを凍結乾燥し、温めながら少量のDMSO、〜10−20mL中で溶解させた。
【0166】
処理9A:酸性逆相クロマトグラフィー
試料を遠心して不溶性物質を沈降させ、20%B(0.1%TFAを含有する20%アセトニトリル)中で平衡化したVydac TP214 C4逆相カラム(Grace−Vydac、Hesperia、CA)に添加した。シリカベースのC4カラム上でTFA系において約60%BでA−βが溶出した。プールを凍結乾燥し、10mL DMSO中で溶解させた。
【0167】
処理9B:塩基性逆相クロマトグラフィー
次に、処理5A経路に記載のPLPR−S逆相システムにDMSO試料を添加し、純粋なA−βを得て、それをアンモニウム塩形態に変換し、次いで凍結乾燥した。
【0168】
最終組成の証明:
これらの方法の何れかにより調製された精製アミロイドβペプチドは、4645から4648Daの観測質量を示した(図4)。これは、利用したDNA発現配列から予想されたN−末端メチオニンの存在と一致した。クローニングされたその他のアミロイドβ型も、使用した個々の発現配列の発現に基づく予想質量を示した。
【実施例4】
【0169】
組み換えβ−アミロイドからの球状凝集体の調製
標準的手順:スケールアップの際には増倍率を使用する。
【0170】
段階1:2本の1.6mL エピチューブ(2x500μLずつ)(Eppendorf Northamerica、Westbury、NY)中、2x3mg ヒトアミロイドβ(1−42)(Bachem Boioscience、King of Prussia、PA)+2x500μL HFIP(ヘキサフルオロイソプロパノール)(6mg/mL懸濁液);37℃にて1.5時間振盪(透明な溶液を回収);
段階2:スピードバックで1.5時間乾燥;
段階3:DMSO各132μLずつ2つで乾燥物を再懸濁し、水浴中で20秒間超音波破砕し、プレート撹拌器上で穏やかに10分間振盪;
段階4:さらなる使用のために−20℃で保存。これから、DMSO中5mMのアミロイドβ(1−42)保存懸濁液が得られる。
【0171】
第1日終了
段階5:15mLファルコンチューブ中に690μL 20mMリン酸Na;140mMNaCl;pH7.4緩衝液を満たす;
段階6:DMSO中60μL 5mMアミロイドβ(1−42)保存懸濁液を添加(400μMアミロイドβ(1−42));
段階7:75μL 2%SDS(水中)を添加(0.2%SDS);
段階8:37℃で6−8時間温置;
段階9:2475μLの水を添加し、3.3mLの最終体積まで水で4倍希釈(132/60x3.3=7.26mL)
段階10:37℃で18−20時間温置、
【0172】
第2日、第2夜終了
段階11a:3000xGで10分間遠心;
段階11b:段階11a後に架橋(架橋したい場合、濃縮前に)、又は、
段階12:30kDa Centriprep(Millipore Inc、Billerica、CA)により1mLまで上清を濃縮;
段階13:12−15kDaカットオフチューブで、PBS/4(PBS=リン酸緩衝食塩水、1mMKCl、154mMNaCl、4mMリン酸、pH7.4;PBS/4=最終的にpH7.4の、蒸留水で1:4希釈したPBS)中で4℃にて試料を一晩透析し、エッペンドルフチューブで10,000xGで10分間、濃縮液を遠心し(透明なペレット)、250μLずつ分注し、−20℃で凍結。Bradford、Sup−12、SDS PAGEを実施。
【0173】
第3日終了
1度に十分なペプチドを操作する限り、収率は通常高い。
【0174】
代替/代用法:
段階12:YM10膜を用いて撹拌セル(Amicon、Millipore、Billerica、CA)において濃縮を行うことができる;
段階13:透析の代わりにPBS/4に対して平衡化したSephadexG25カラムを使用することができる。
【0175】
Bradfordの代わりに、計算した吸光度を用いる。
【実施例5】
【0176】
組み換えβアミロイド及びこれから調製された球状凝集体の特徴
異なる研究場所で調製されたモノクローナル抗体を用いた合成及び組み換え由来のアミロイドを比較するELISA
図5は、イー・コリ中で産生されたMet−Aβ1−42ペプチドを用いて作製されたAβ球状凝集体の直接的ELISAである。球状凝集体エピトープのディスプレイは、濃度依存的様式で、球状凝集体特異的抗体Aの結合によって示された。抗体Aの2つの異なるロットを検査し、異なる大陸の別個の施設で作製した(LU=Ludwigshafen;AP=AbbottPark)。抗体Bは、完全長Aβ1−42ペプチドを用いて作製された球状凝集体に認識することができず、従って、球状凝集体に結合しない。
【0177】
ELISA 完全長及び末端切断された組み換えアミロイド球状凝集体中に提示された球状凝集体エピトープの比較による同定
図6に示されているELISAデータは、組み換えヒトアミロイドペプチドMet1−42から構成される完全長球状凝集体を検出する場合には、マウスモノクローナル抗体A、C、D及びB間の区別を示す(図2)。図は、抗体Aが、抗体C及びDより低い濃度でこれらの球状凝集体を認識し(より強固に結合する)、抗体C及びDは、10F11モノクローナル抗体より強固に結合することを示している。比較によって、図7に示されているELISAデータは、タンパク分解酵素サーモリシンで末端切断されており、(主として)残基20から残基42までのアミロイド配列から構成される球状凝集体を認識する全ての抗体を示している(図2参照)。このELISAデータは、これらの抗体が、ほぼ同一の親和性を有する末端切断された球状凝集体を認識することを示している。図6及び7は、合わせて、抗体Aが、(NMRによって得られた構造データによって以下に記載されているように)球状凝集体エピトープに対して高度に選択的であることを示している。抗体C、D及びBは、アミロイドの短縮化された20−42配列形態(図2)を好む程度が異なる。末端切断されたアミロイドに対する選択性の最も大きな差は、抗体Bによって示されている。エピトープ相互作用のこれらの差に基づいて、抗体C又はD抗体と同様のエピトープ結合特性を有する抗体がより好ましく、抗体Aのエピトープ結合特性を有する抗体は、20から42(又は20から43)アミロイド配列範囲内に含有された球状凝集体エピトープへの結合に対して最も好ましい。
【0178】
合成アミロイドβ及びAPPの9つの異なる調製物に対する一連のmAb(A、B、C及びD)のドットブロット分析を行った(データは、示さず。)。図5、6及び7に図示されているELISAの結果を確認する他に、これらのドットブロットは、以下に示されたNMR構造データとともに、反応性エピトープの最も好ましい実施形態、特に、βアミロイド立体構造スイッチの「閉鎖された」形態を確立するための基礎も成す(図3)。この閉鎖された形態では、エピトープは露出されており、免疫反応に対して利用可能である。「開放」形態では、アミロイド原繊維は、急速に凝集して、より大きい完全に平行なシート構造を形成し、従って、もはや異なるエピトープとして利用できない。原繊維形態は、ほとんど専ら、モノクローナル抗体Cと反応するのに対して、モノクローナル抗体Aはグルタルジアルデヒド架橋及び末端切断されたアミロイド20−42を有する、又は有しない球状凝集体と反応する。モノクローナル抗体D及びBは、サーモリシンで末端切断された又はサーモリシン及びEndoGluCの両者で末端切断された配列12−42と反応する(データは図示せず。)。
【0179】
ELISA材料:マイクロタイタープレートは、Nunc Immuno Plate, Maxi−Sorb Surface、平底(カタログ番号439454)であった。コンジュゲート(二次抗体)は、Jackson Immuno Researchから得たロバ抗マウスHRPOコンジュゲート(カタログ番号715−035−150)であった。HRPO基質は、3,3’,5’,5’−テトラメチルベンジジン液体基質(TMB)、Sigma(カタログ番号T4444)であった。無脂肪乾燥ミルク(NFDM)は、BioRad(カタログ番号170−6404)から入手した。全ての他の化学物質は、一般的な入手先から得た。
【0180】
緩衝液及び溶液:PBST緩衝液:0.05%Tween20を用いて作製されたSigmaPBS。0.5%BSAを有するPBSTは、100mLPBST中に0.5gBSAを溶解することによって作製した。ブロッキング溶液は、PBST中の3%NFDMであった。コンジュゲート希釈剤は、PBST中の1%NFDMであった。コーティング緩衝液は、100mMNaHCOpH8.2であった。HRPO停止溶液は、2MHSOであった。
【0181】
ELISAプレートコーティング:検査すべきアミロイド球状凝集体は、1.0μg/mLになるように、コーティング緩衝液中に希釈した。コートされるべき各ウェルに、100μLを添加した。プレート密閉フィルムで、ウェルを密閉し、4℃で一晩放置した。
【0182】
プレートのブロッキング:ウェルから、コーティング溶液を取り出した。PBST150μLで、ウェルを2から3回洗浄した(場合によって実施する。)。ブロッキング溶液300μLを添加した(PBST中の3%NFDM)。次いで、プレート密閉フィルムでウェルを被覆し、撹拌しながら、室温で約2時間温置した。
【0183】
ELISA一次抗体:ウェルから、ブロッキング溶液を取り出した。PBST150μLで、2から3回洗浄した(場合によって実施する。)。一次抗体溶液100μLを添加した。完全長met+Aβ1−42球状凝集体に対して、抗体5F70.04から100μg/mLの溶液を使用した。0.5%BSAを有するPBSTを用いて、抗体を希釈し、プレート密閉フィルムで被覆し、撹拌しながら、室温で約2から3時間温置した。
【0184】
ELISA二次抗体(HRPOコンジュゲート):ウェルから、一次抗体溶液を取り出し、PBST150μLで2から3回洗浄し(必須)、1%NFDMを有するPBST中に1:5000で希釈された二次抗体(HRPOコンジュゲート)溶液200μLを添加した。プレート密閉フィルムでウェルを被覆し、撹拌しながら、室温で約1時間温置した。
【0185】
基質の展開:ウェルから、コンジュゲート溶液を取り出し、PBST200μLで2から3回洗浄した(必須)。次いで、HRPO基質溶液100μLを、各ウェルに添加した。次いで、観察しながら、呈色を行った(すなわち、青)。(反応は、通常、室温で5から10分間行われる。各ウェルに、停止溶液50μLを添加すると、色は、青から黄色に変化した。マイクロタイタープレートリーダーを用いて、A50nmでウェルを読み取った。停止溶液の添加から30分以内に読み取ることが推奨される。
【0186】
球状凝集体のサーモリシンによる末端切断:約20mL中の球状凝集体9mgに、PBS中の4mg/mLサーモリシン(Calbiochem)45μL(サーモリシン180μg又は9000μL/180μLは、約1対50(v/v)の希釈に等しい。)を添加した。室温で一晩、反応を進行させた。翌朝、反応混合物は、肉眼で見て透明であった。サーモリシン反応を停止させるために、0.5mMになるようにEDTAを添加した。分析用の最終生成物を調製するために、以下のようにクロマトグラフィーを行った。水酸化アンモニウムを用いて、末端切断された球状凝集体1mLをpH10になるように調整した。次いで、SDS(polymer laboratories, Amherst MA.)を除去するために、これを7mmポリマー逆相カラムにかけて、1%/分の勾配で溶出した。主な溶出された画分は、精製された末端切断された(20−42)球状凝集体を含有した。
【0187】
ドットブロット材料、操作及び試料の調製:様々な濃度(100pmol、10pmol、1pmol及び0.1pmol)で、Hamiltanシリンジを介して、約2から5mmのスポット中に、ニトロセルロースペーパーシート(Trans−Blot Transfer Medium(Catalog162−0113)Pure Nitrocellulose Membrane(0.45μm,BIO−RAD Laboratories,Inc., 2000 Alfred Nobel Drive,Hercules,CA)上の抗原として、様々な合成アミロイドβ種及びアルツハイマー前駆体タンパク質(APP)の一群をドット状に添加し、空気の流れによって乾燥させた。(レーン1−10)。
【0188】
検出試薬:NBT/BCIP錠剤(カタログ番号1697471)Roche Diagnostics GmbH,Roche Applied Science,Nonnenwald 2,82372 Penzberg Germany。
アルブミン、ウシ:SIGMA−ALDRICH(カタログA−7888)(BSA)St.Louis,Missouri 63178。
ブロッキング:TBS中の5%スキムミルク粉末
緩衝溶液:TBS、25mMTrisHCl−pH7.5、150mMNaCl;TTBS、25mMTrisHClpH7.5、150mMNaCl、0.05%Tween20;PBS、20mMホスファート、pH7.4、140mMNaCl、0.2mg/mLBSA。
抗体I:TBS中の1%スキムミルク粉末中の0.2μg/mL抗体(20mL/膜=>4μgAb)
抗体II:TBS操作中の1%スキムミルク粉末中の抗マウス−APの1:5000希釈(20mL/膜=>4μLAb)
【0189】
手順
1)約1cmの距離でドット状に添加された1μLの抗原希釈(1から5)。
2)室温で10分間乾燥させる。
3)ブロッキング:TBS中の5%スキムミルク粉末30mLを添加し、室温によって1.5時間温置することによって膜をブロックする。
4)洗浄:容器を傾けてブロッキング溶液を移し、室温によって、10分間、20mLTTBSで膜を洗浄する。
5)抗体I:0.2μg/mLになるように、TBS中の1%スキムミルク粉末中に一次抗体を希釈する。膜当り20mLを使用する。室温で一晩温置する。
6)洗浄:10分間、20mLTTBSで2回、10分間、20mLTBSで1回。
7)抗体II:1:5000になるように、TBS中の1%スキムミルク粉末中に二次抗体を希釈する。膜当り20mLを使用する。室温で1時間温置する。
8)洗浄:10分間、20mLTTBSで2回、10分間、20mLTBSで1回。
9)展開:水20mL中にNBT/BCIP1錠を溶解する。容器を傾けて洗浄溶液を移し、展開溶液とともに、約10分間、膜を覆う。
封鎖(Block up):水で洗浄する。
【0190】
各試料は、以下のように調製した。
【0191】
アミロイドβ(1−42)球状凝集体は、「S. Barghorn et al.JoN.2005,95,834−847」に従って調製した。HFIP中のアミロイドβ(1−42)は、以下のように調製した。1mg/mLアミロイドβ(1−42)を、37℃で1.5時間、HFIP中に溶解した。speed vac中で乾燥させた。乾燥された材料を、DMSO中に再懸濁した。0.1%PluronicF68を加えたPBS中に希釈し、20℃で1時間撹拌した。3000gで20分間遠心した。1%PluronicF68を加えたPBS中にペレットを再懸濁し、20秒間音波処理し、水中に1:6.7希釈し、20℃で1時間撹拌した。次いで、20分、3000gで試料を遠心し、容器を傾けて上清を移し、−80℃で保存した。
【0192】
アミロイドβ(20−42)球状凝集体は、上述のように、アミロイドβ(1−42)球状凝集体から調製した。
【0193】
架橋されたアミロイドβ(1−42)球状凝集体は、以下のように、アミロイドβ(1−42)球状凝集体から調製した。1mg/mLアミロイドβ(1−42)球状凝集体を、室温で2時間、1mMグルタルアルデヒドで処理した後、室温で30分間、5mMエタノールアミン処理を行った。
【0194】
ADDLは、「Lambert et al.PNAS 95,6448−6453,1998」に従って調製した。
【0195】
末端切断されたアミロイドβ(12−42)球状凝集体は、以下のように調製した。20℃で20時間、アミロイドβ(1−42)球状凝集体を、1/93(v/v)EndoGluCプロテイナーゼ(Roche Biosciences,Indianapolis,IN)を処理し、ジイソプロピルフルオロリン酸(DIFP)の過剰で反応を停止し、次いで、30kD分子量カットオフcentriprepを用いてこれを濃縮し、透析液が0.1%SDS含量となるように調整して、1/4PBSに対して透析し、透析後に、−80℃で保存した。
【0196】
HFIP中のアミロイドβ(1−40)は、以下のように調製した。1mg/mLアミロイドβ(1−40)を、37℃で1時間、HFIP中に溶解した。speedvac中で乾燥させ、乾燥した材料を、DMSO中に再懸濁し、−80℃で保存した。
【0197】
0.1%NHOH中のアミロイドβ(1−40)を以下のように調製した。0.1%NHOH中に、1mg/mLアミロイドβ(1−42)を溶解し、−80℃で保存した。
【0198】
アミロイドβ(1−42)原繊維は、以下のように調製した。0.1%NHOH中に、1mg/mLアミロイドβ(1−42)を溶解し、PBS中に1:4希釈し、pH7.4になるように、pHをHClで調整し、37℃で20時間温置し、10000×Gで10分遠心し、PBS中にペレットを再懸濁し、−80℃で保存した。
【0199】
APP(第一のドット:1pmol)は、Sigma Chemical Co.,St. Louis,MOによって供給された。
【0200】
予想されなかった構造的特徴及び生物物理学的特徴:
a)水力学的特徴
図10は、組み換えMetA−β1−42から調製された球状凝集体の水力学的分析(沈降速度及び動的光散乱(DLS;dynamic light−scattering)の結果を図示している。上のパネルは、上記のように調製され、2.5mMリン酸ナトリウム、0.65mMKCl、34.5mMNaCl、pH7.4中で遠心された組み換えMet−Aβ球状凝集体に対する一連の代表的な沈降速度特性を示している。矢印によって記されているように、走査時間は右方向に増加し、特性は、BeckmanXLI分析用超遠心によって作製されたS字形状の一連の各走査を含む。上のパネル中のx軸は、遠心の中心からのcmであり、y軸は、干渉縞の相対変位である。下のパネルは、Schuck(Biophysical Journal, 2000, 78:1606−1619)に従って、SEDFITを用いて計算された、全分析時間にわたる完全な沈降分布(上のパネル)のC特性を図示している。動的光散乱から得られたC分析及び個別の結果が、図面中に要約されている。それらは、球状凝集体が、約14Met−A−β単量体(14×4645)=65030Daを含む球状凝集体に対応する約63kDaの分子量を有することを示している。
【0201】
b)分析的超遠心、沈降速度実験のための実験用プロトコール:
サファイアウィンドウを用いて、標準的な2区画セル中に試料を加えた。4穴又は8穴ローターの何れかを用いて、全ての試料を調べた。条件は以下のとおりであった。温度:20℃、ローター速度:42,000rpm、干渉データを収集した。0.003cmの放射状ステップサイズを用いた連続モードにおいて、280nmの吸光度データを収集した。ステップごとに1つのデータポイントを集めた(シグナルの平均化は行わない。)。典型的には、9時間以下の期間にわたって、200又はそれ以下の走査を収集した。
【0202】
c)データのフィッティング:
データのフィッティングを行うために、2つの相補的な方法を使用した。試料の全体的な不均一性を理解するために、SEDFITv8.9(Schuck,2000)で実行されるとおりに、連続的S分布分析(C分析、図7)を実施した。放射状及び時間非依存性ノイズの両方のフィッティングを行い、最大エントロピーアルゴリズムを用いてデータから除去した。プログラムSVEDBERG(Philo,J.S.,1997,Biophysical Journal,72:435−444)を用いて、改変されたFujita−MacCosham関数に、生の移動境界特性(図6、上のパネル)をフィッティングさせた。これによって、沈降係数(S)及び拡散係数(D)をともに測定することが可能となり、従って、モデルによって指定された種の分子量(Mr)の計算が可能となる。この分析では、走査は視覚的に検査され、適切な走査のみを使用した。走査を選ぶための基準には、メニスカスからの十分なクリアランス及び十分なプラトー領域が残存していること(すなわち、極端に沈降しないこと)が含まれた。モデルは、単一の種及び複数の種(最大3)を含んだ。
【0203】
d)フィッティングからの結果:
C分析:C分析は、主に、約4のSを有する単一の種を示唆し、より高次の凝集体の若干量も存在した。このより大きな種のピークは若干広く、分割されていない複数の種が存在し得ることを示唆する。摩擦係数f/fは、全般的に(全ての種)、f/f=1.54にフィットし、存在するオリゴマーが単純な球体でないことを示唆する。
【0204】
SVEDBERG分析:単一種を用いてデータのフィッティングを行うことは可能であったが、潜在的な追加の種を付加すると、よりよいフィッティングが得られた。フィッティングの改善は、残差の全体的な変動がより少ないこと、及び適合度パラメータが38%低下したことによって判断した。主成分(種の逆重畳に基づくと、材料の92%)については、フィッティングは、S20,w=4.1及びS20,w=5.5の値を与える。これらの値を用いて、約68kDaのMrを得、約14ペプチド単位のオリゴマーを示唆していた。f/f=1.42の形状係数が得られ、同じく、より扁長な球体を示唆した。より大きなS値の幅広い分布によって、非主要成分が示され、これらは、分離されていないより高次の多数の凝集体の少量(10%未満)から構成される可能性があることを示唆している。結果を視覚的に明瞭にすることができる相補的な分析アプローチは、球状凝集体集合中のオリゴマーの特定数に相当する分子量の固定された値にモデルをフィッティングさせることである。次いで、これらのフィッティングから得られた残余誤差の二乗の合計を、球状凝集体サイズの想定可能な各増分に対してプロットする。この分析は、2成分フィッティングに対して、図21に示されている(主成分は球状凝集体であり、非主成分はより高次の種である。)。このプロットでは、提唱されている凝集体の分子量を(Mr=4645の増分として)固定することによって、主成分Aβペプチドのオリゴマー状態を10から18に固定し、SVEDBERG中でフィッティングを行った。各強制的フィッティングに対する球状凝集体当りのペプチドの数に対して、得られた適合度パラメータ(二乗の合計)をプロットした。最小値(最も低いフィッティング誤差)は、球状凝集体当り約14ペプチドのオリゴマー状態とともに生じる。
【0205】
総合すると、沈降分析は、約3.6nmの球体相当半径を示唆するのに対して、DLSは、約3.9nmの値を示唆する。DLS研究は、APD検出器を装着したレーザー光散乱システム(ALV Instruments,Germany)を用いて行った。レーザー波長は、クリプトンイオンレーザー(Coherent Instruments, CA)の647nm線であり、40と150度の間の散乱角度が選択された。試料は、20℃の槽調節された温度で測定された。複数の成分に対する相関関数の分析は、正則化を用いて行った(ラプラス反転アルゴリズム(例えば、SPIE Proceedings Vol.1430“Photon Correlation Spectroscopy:Multicomponent Systems”Ed.K.S.Schmitz,ISBN:0−8194−0520−5,266pagesを参照されたい。)。158度の散乱角度を用いた後方散乱APD検出を行いながら、DLS Plate Reader DynaPro(Protein Solution,Wyatt Instruments,CA)を用いて、さらなるDLS測定を実施した。ダイオードレーザは、819.7nmの発光を有する。温度は、モニターされているが、調節されていない(T約25C)。
【0206】
e)球状凝集体の原子間力顕微鏡:
図14は、球状凝集体(上のパネル)及び金ナノ球体(下のパネル)の代表的なAFM走査を図示している。X及びY軸のサイズは等しく、長さ250nmのマーカーが、それぞれに対して示されている。同一の設定条件下で、各試料を走査し、各事例において、球状凝集体及びナノ球体は、3から5nmの高さに及ぶようである(Z軸)。Z軸の絶対的な較正は、溝を20nmの深さに設定して、NIST(National Institute of Standards and Technology)3D参照標準を用いて行った。標準物質は、Veeco Instruments,Woodbury NYの一部門であるNanodvices,Inc.から入手した。この標準物質からの反復した高さ測定(N=10)によって、0.228nmの標準偏差で、19.909nmの平均高が明らかとなった。Veeco/Digital Instrumentsは、ゼロから20nmの範囲まで、高さ測定の較正が線形であることを保障している。球状凝集体の高さ範囲内でのAFMの性能を測定し、X及びY次元での測定に対する、AFM先端部の側方への歪みを推定するために、AFMによって、コロイド状金ナノ球体(平均直径5nm)を測定した。金ナノ球体は、Sigma(St. Louis, MO, カタログ番号G−1402,lot103K91851)から購入し、Sigmaの技術専門家は、粒子は、3.5から6.5nmのサイズ範囲を示すはずであると述べた。タッピングモードAFMで典型的に使用される力では、金ナノ球体は、AFM画像化ツールの先端によって圧縮されないので、これらの球体を使用した。比較すると、アミロイド凝集体は、AFMによって画像化されたときに、僅かに歪むことが以前に示されている(Stine et.al., 1996)。製造業者(Veeco/Digital Instruments)は、AFM先端部の曲率半径が10nmであることを明記している(Veeco model # TESP、先端部は、実際に、NanoWorld AG, Neuchatel, Switzerlandによって製造された;type:NCH−W, Unit No.:12543L320、バネ定数28−54N/m)。画像測定に基づくと、金ナノ球体(実際には3から5nm)は直径約15nmであるように見受けられ、4から7の側方画像ゆがみ係数が示唆された。上の図の単一の画像化された球状凝集体は、約23nm、すなわち、側方のゆがみを除去すれば、約3.2から4.2nmを測定した。これらの大きさは、水力学的及び光散乱分析から測定された球体相当半径と一致した(上記)。
【0207】
Barnstead NANOpureウォーターシステム(APS Water Services Corp., Van Nuys, CA)から得た水を用いて、0.029mg/mLの濃度になるように試料を希釈した。使用前に水の伝導率をモニターし、使用した水は全て、18.0MΩcmの最小伝導率を有していた。堆積の前に、14000rpmで10分間、Eppendorf5415C Microfuge(Eppendorf AG, Hamburg, Germany)上で試料を遠心した。直径1/2”の切断された直後の雲母ディスク(Ruby Red Mica Sheets, Cat.#71850, Electron Microscopy Sciences, Ft. Washington, PA)上に、試料20μLを堆積した。湿った紙タオルを入れた閉じたペトリ皿中に各試料を配置し、7分間温置させた。次いで、NANOpure水(5から200μL分取試料)1mLで各試料を濯ぎ、穏やかに流れている空気流の下で乾燥させた。
【0208】
原子間力顕微鏡(AFM)は、Veeco/Digital Instruments Nanoscope IIIa(Veeco, Santa Barbara, CA)上で行った。タッピングモードAFMは、TESP先端部(f約280kHz)を使用して行った。高さ及び振幅両モードで、4nm、2nm及び1nmでの画像を収集した。「高さモード」画像の切片分析を用いて、各球状凝集体の高さを測定した(Stine et al., 1996, J.Prot.Chem.,15,193−203を参照されたい。)。
【0209】
図12、13及び14は、SDSなし(図12)、0.05%SDS(図13)及び0.2%SDS(図14)で可視化された、球状凝集体の代表的なAFM画像を図示している。Met−Aβペプチドのこれらの濃度で(30μg/mL単量体濃度又はそれ以上)、SDSの存在下において、ペプチドは大きい密な原繊維凝集体を急速に(数十分)形成する傾向は大幅に低減され、これらのより高次の原繊維凝集体の形成に対して、ペプチドはSDSによって安定化される。総合すると、SDS処理を通じて球状凝集体を作製することは、より大きな原繊維形態への急速な凝集に対して、球状凝集体を安定化させる。SDSのドデシル硫酸鎖上のサルファート部分は、ペプチドの球状凝集体集合物に結合された、負に帯電したサルファート基間の電荷−電荷反発によって、より大きな種への凝集を遮断するように作用すると考えられる。SDS濃度は、球状凝集体を調製する過程で低下されるので(図8)、透析後には、残留量が残るに過ぎない。この操作によって得られたペプチドの球状凝集体集合体の独特の構造/立体構造(図20から24)は、(自然の立体構造のために)、これにより、何十万又は何百万ダルトンもの分子量を有する巨大な原繊維凝集体を形成する急速な凝集が妨げられる。これらの安定化された球状凝集体は、ヒト自己抗体及びマウスモノクローナル抗体の両方と反応する特有のエピトープ領域(アミロイド原繊維上のエピトープとは異なる。)を提示する(図5から7)。生物学的には、アミロイドペプチドのインビボでの生成は、細胞膜の天然環境中で生じる(図23)。この状況では、アミロイドペプチドは、細胞膜に常に曝露され、細胞膜内に包埋されることさえある。この膜が両親媒性生物脂質の二重層から構成されていることは、一般的な生物学的知識である。従って、球状凝集体を作製するために使用されるSDSは、細胞脂質膜の天然の両親媒性環境を模倣していると予測される。この両親媒性環境では、アミロイドは、先述のエピトープ領域を提示する(曝露する)球状凝集体構造へ自己集合する。
【0210】
インビトロでこのプロセスによって得られた球状凝集体は、適切な治療用(遮断)モノクローナル抗体の選択及び設計で使用するためのエピトープとして提示されるペプチド二次構造を決定する上で有用である(図17から24)。これらの球状凝集体は、アルツハイマー病に対する能動免疫のためのワクチンの候補を作製する上でも使用される。さらに、これらの球状凝集体は、球状凝集体形成を遮断し、又は他の細胞実体との球状凝集体の相互作用を変化させ、これにより、疾病の進行を低下又は停止させることができる小分子剤(薬物)の送達用ツール分子としての有用性も有する。さらに、安定化された球状凝集体は、疾病の傾向を予測し、治療剤の効力をモニターするための診断検査法の作製のためにも使用され得る。公知の天然脂肪酸又は界面活性剤など、単独の又は組み合わせた、SDS以外の両親媒性因子も、インビトロで球状凝集体を調製する上で有用であると予想される。球状凝集体を調製する上で有用と予測される化学因子の一部のリストには、以下の種の1つ又はそれ以上が含まれる。
【0211】
オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、11,14−エイコサジエン酸、13−ドコセナミド、13−エピ−12−オキソフィトジエン酸、13(Z)−ドコセン酸、17−オクタデシン酸、1−アラキドノイルグリセロール、1−アラキドノイルグリセロール−d5、2−アラキドノイルグリセロール、2−アラキドノイルグリセロール−d5、2−アラキドニルグリセロールエーテル、2−フルオロパルミチン酸、2−ヒドロキシミリスチン酸、2−リノレオイルグリセロール、3−チアテトラデカン酸、4,5−デヒドロドコサヘキサエン酸、5,6−デヒドロアラキドン酸、7,7−ジメチル−5,8−エイコサジエン酸、8,11−エイコサジイン酸、9,12−オクタデカジイン酸、9−オクタデセナミドアドレン酸、α−リノレン酸、α−リノレノイルエタノールアミドアラキドン酸、アラキドン酸−d8、アラキドン酸メチルエステルアラキドン酸(過酸化物なし)、アラキドン酸(ナトリウム塩)、アラキドノイルエタノールアミド、アラキドノイルエタノールアミド−d8、アラキドノイルグリシン、アラキドノイルm−ニトロアニリン、アラキドノイルp−ニトロアニリン、アラキドニルトリフルオロメチルケトン、シス−パリナリン酸、共役リノール酸(10E、12Z)、共役リノール酸(9E、11E)、共役リノール酸(9Z、11E)、デカノイルm−ニトロアニリン、デカノイルp−ニトロアニリン、ジホモ−γ−リノレン酸、ジホモ−γ−リノレン酸エチルエステル、ジホモ−γ−リノレン酸メチルエステル、ジホモ−γ−リノレノイルエタノールアミド、ドコサヘキサエン酸、ドコサヘキサエン酸−d5、ドコサペンタエン酸、ドコサテトラエノイルエタノールアミド、ドコサトリエン酸、エイコサペンタエン酸、エイコサペンタエン酸(過酸化物なし)、エイコテトライン酸、エイコサトリエン酸(11Z、14Z、17Z)、エイコサトリエン酸(5Z、8Z、11Z)、エイコサトリイン酸、エライジン酸、γ−リノレン酸、ラウリン酸、リノエライジン酸、リノール酸、リノール酸−d4、リノール酸(過酸化物なし)、リノレオイルエタノールアミド、ミード酸エタノールアミド、メチルα−リノレニルフルオロホスホナート、メチルアラキドニルフルオロホスホナート、メチルγ−リノレナート、メチルγ−リノレニルフルオロホスホナート、N−オレオイルグリシン、N−オレオイルタウリン、N−パルミトイルタウリン、N−ステアロイルタウリン、オレイン酸、オレイン酸−2,6−ジイソプロピルアニリド、オレオイルエタノールアミド、オレイルアニリド、オレイルトリフルオロメチルケトン、ω−3アラキドン酸、ω−3アラキドン酸−d8、パルミチン酸、パルミトイルエタノールアミド、パルミチルトリフルオロメチルケトン、フィタン酸、ステアリドン酸、ステアリドン酸メチルエステル、ステアロイルエタノールアミド、トラウマト酸、ウンベリフェリルアラキドナート、1−ブタンスルホン酸ナトリウム、ペンタンスルホン酸ナトリウム、1−ヘプタンスルホン酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、デシル硫酸ナトリウム、(ドデシル硫酸ナトリウム)ドデシル硫酸リチウム、1−ドデカンスルホン酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ヘキサデシル硫酸ナトリウム、ヘキサンスルホン酸ナトリウム、オクタデシル硫酸ナトリウム、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム、2−ヒドロキシ−3−スルホプロピルドデカノアート、N−ラウリルサルコシンジオクチルスルスクシナート、DOSS、ジ−2−エチルヘキシルスルホスクシナート及びナトリウム塩。
【0212】
f)球状凝集体の等温滴定熱量測定:
図15は、組み換えMetA−β1−42から調製された球状凝集体へのモノクローナル抗体Aの結合から得られた結果を示している。結合は、等温滴定熱量測定法(ITC)によって直接測定された。この例では、熱量測定装置のセルは、(単量体単位を基礎として)86μMの濃度で、アミロイドβを含有した。これは、132μMのA抗体で滴定された。何れも、pH7.4の35mMNaClを加えた5mMリン酸ナトリウム緩衝液中に存在した。フィッティングによって決定された解離定数(結合のKd)は490nM(又は0.46μM)であり、結合の観察されたエンタルピーは、−47.5kJ/モルであり、結合の見かけの化学量論は、6.3アミロイドβ分子/抗体分子であった。水力学的分析(図13及び21)と総合すると、これは、球状凝集体単位当り約2個の抗原結合部位を示唆する。
【0213】
g)NMR特性:
試料の調製:同位体は、Cambridge Isotope Laboratories及びIsotecから購入した。NMR研究用に調製された標識された全ての試料に対して、Minimal Media[Sambrook, et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York, 1989]を使用した。N−Met1−42ペプチドを、pET29aベクター中にクローニングし、E.コリ株BL21中に発現した(DE3)。ODが1.0に達するまで、震盪フラスコ中において、細胞を36℃で増殖させ、次いで、42℃で2時間発現させた。HO培地中の1g/L15NHCl及び3g/Lグルコースとともに、均一に[15N]標識された試料を増殖させた。DO培地中の1g/L15NHCl及び3g/LD−グルコース−d12とともに、均一に[15N,H]標識された試料を増殖させた。DO培地中の1g/L14NHCl及び3g/LD−グルコース−d12とともに、均一に[14N,H]標識された試料を増殖させた。100%DO培地中の1g/L14NHCl及び3g/L[13C,H]−グルコース−d12とともに、均一に[15N,H,13C]標識された試料を増殖させた。100%DO、D−グルコース−d12(3g/L)及び15NHCl(1g/L)を含有する培地中で細胞を増殖させ、3−13C−α−ケトブチラート(50mg/L、イソロイシンメチル基を標識するため)、及び3,3−13−α−ケトイソバレラート(100mg/L、バリン及びロイシンメチル基を同時に標識するため)を培地に補充することによって、Hバックグラウンド中に、Ile、Val、Leu残基の選択的に13C標識された、プロトン化されたメチル基を有する均一に[15N]標識された試料を調製した。発現されたペプチドは、実施例3で上述されているように精製した。Barghornらの公表されたプロトコール(J.Neurochem.2005 95,834−847)を使用することによって、NMR試料を調製し、約1.5%SDS−d25及びpH7.4の1×リン酸緩衝化された生理的食塩水(GIBCO)を含有する緩衝液中に、16mg/mLの最終濃度になるように濃縮した。混合された試料を調製する場合、試料調製のためのプロトコールに供する前に、異なる標識スキームを有する精製されたペプチドを1:1の比率で混合した。
【0214】
NMR分光法:BrukerDRX600又はDRX800NMR分光光度計上で、25℃で、NMRスペクトルを収集した。均一に[15N,H,13C]標識された試料を用いた三重共鳴実験(HNCA,HN(CO)CA,HN(CA)CB,HN(COCA)CB)[T.Yamazaki, et al.,J.Am.Chem.Soc.116,11655−11666,(1994)]を用いて、骨格のH、15N及び13C共鳴を割り当てた。α及び側鎖シグナル共鳴は、均一に15N標識された試料を用いて、15N編集されたNOESYスペクトルから割り当てた[S.W.Fesik,et al.,J.Magn.Reson.78,588−593,(1988);G.M.Clore, et al.,Meths.Enzymol.239,349−363,(1994)]。骨格アミドNH−NHNOEは、H骨格中のIle、Val、Leu残基の選択的に13C標識された、プロトン化されたメチル基を有する均一に[15N]標識された試料を使用することによって、3D15N分解されたNOESY実験から割り当てた。15Nフィルターされ、及び15N編集された3DNOESY実験は、[U−15H]標識され、及び[U−14N、H]標識された試料が、1:1の比で混合されている混合された試料を使用することによって、以前に記載されているように実施した[M.Ikura,et al.,J.Am.Chem.Soc.114,2433−2440,(1992);G.W.Vuister,et al.,J.Am.Chem.Soc.116,9206−9210,(1994)]。IVL残基の選択的に13C標識された、プロトン化されたメチル基を含有する、[U−15N,H]標識されたペプチドは、[U−14N,H]標識されたペプチドと、1:1の比で混合されている別個の混合された試料を、15Nフィルターされ、及び15N編集された3DNOESY実験において使用した。これらの実験において使用されるNOESY混合時間は、80から400m秒の範囲にわたった。
【0215】
構造計算:βアミロイドペプチドN−met1−42の反復単位の構造は、プログラムCNX[A.T.Brunger,et al.,Acta Crystallogr.D54(Pt5),905−21,(1998)]を使用するシミュレートされたアニーリングプロトコール[M.Nilges,et al.,FEBS Lett.229,317−324,(1988)]を用いて計算された。NMRデータの分析から得られる計178の距離制限を、構造計算中に含めた。さらに、Cα及びCβ化学シフトの分析に基づいて、構造計算中にβシート領域中の44のφ角度制限を含めた[G.Cornilescu,et al.,J.Biomol.NMR 13,289−302,(1999)]。
【0216】
結論として、アミロイドβペプチドN−Met1−42(Aβ1−42と称される。)の適切な球状凝集体を調製し、NMRによって研究した。90%HO/10%DO溶液中の15N標識されたAβ1−42の15N/Hヘテロ核単一量子相関分光法(HSQC;heteronuclear single quantum correlation spectroscopy)スペクトル(図23A)は、スペクトル中のクロスピークが十分に分散されており、溶液中の折り畳まれていないペプチドの化学シフトに比べて低磁場の方向に大きくシフトしていることを明確に示している。100%DO溶液中への交換後、低磁場方向にシフトされたアミドは、1日後に、DO中になお明確に観察され(図16B)、これらのアミドプロトンが、溶媒から遮蔽されており、おそらく、水素結合されていることを示唆している。これらの結果は、Aβ1−42の観察可能な形態は、溶液中で高度に構造化されていることを示している。
【0217】
さらに、Aβ1−42の均一にH、15N及び13C標識された形態に対して、形態一連のNMR三重共鳴骨格実験を収集した。15N/HHSQCスペクトル中のシフトされたクロスピークの多くは、各骨格アミドに割り当てられた。Cα及びCβ共鳴の割り当てられた化学シフトに基づいて、2つのβ鎖は、N−MetAβ1−42の残基17−23及び28−39に対して存在することが見出された(図17及び20)。異なる同位体標識された試料を使用することによって、15Nフィルターされ、及び15N編集された3DNOESY実験において、観察された分子内NOEと分子間NOEが識別された。データ分析及び構造計算は、観察可能なN−MetAβ1−42の構造は、混合された平行/反平行βシートを含有することを示す(図20、21及び24)を示す。N−MetAβ1−42に対するこれらの溶液NMR研究は、球状凝集体経路中のペプチドの折り畳みは、Sciarrettaら(Biochemisty 2005,44,6003−6014)によって記載されているように、原繊維経路のフィブリロマー(fibrilomer)構造とは異なる構造を呈することを示唆している。最小反復鎖内及び鎖間相互作用は、本明細書で観察及び記載されているものである。
【実施例6】
【0218】
ハイブリドーマ細胞株の開発の例
モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ、組み換え及びファージディスプレー技術又はこれらの組み合わせの使用など、本分野で公知の多様な技術を用いて調製することが可能である。例えば、モノクローナル抗体は、本分野において公知であり、例えば、「Harlow et al., Antibodies:A Laboratory Manual,(Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2nd ed. 1988);Hammerling, et al., in:Monoclonal Antibodies and T−CeIl Hybridomas 563−681(Elsevier, N.Y., 1981)」(前記参考文献は、参照により全体が本明細書に組み込まれる。)に教示されているものなど、ハイブリドーマ技術を用いて作製することが可能である。本明細書において使用される「モノクローナル抗体」という用語は、ハイブリドーマ技術を通じて産生された抗体に限定されない。「モノクローナル抗体」という用語は、あらゆる真核、原核又はファージクローンなど、単一のクローンに由来する抗体を表し、産生方法によらない。
【0219】
本明細書に記載されている1つのモノクローナル抗体(例えば、モノクローナル抗体A)を作製するために使用される具体的なプロトコールは、以下のとおりである。
【0220】
マウスの免疫化:CFA中の抗原50μgで、Balb/c及びA/Jマウス(6から8週齢)を皮下免疫した。計3回の強化免疫のために、ImmuneasyTM(Qiagen)中の抗原50μgで、3週ごとに、動物に強化免疫を行った。融合の4日前に、抗原10μgを静脈内からマウスに強化免疫した。
【0221】
細胞融合及びハイブリドーマスクリーニング:標準的な技術を用いて、5:1の比率で、免疫化された動物から得た脾細胞をSP2/0−Ag14骨髄腫細胞と融合した。融合から7ないし10日後に、巨視的コロニーが観察された時点で、Aβ20−42への抗体に対するELISAによって、SNを検査した。ELISA陽性ウェルから得た細胞の規模を増大させ、限界希釈によってクローニングした。
【0222】
抗体イソタイプの測定:抗Aβ20−42Mabのイソタイプは、ZymedEIAイソタイプ決定キットを用いて決定した。
【0223】
モノクローナル抗体のスケールアップ及び精製:5%の低IgGを含有する培地中に、ハイブリドーマを拡大させた。ウシ胎児血清(Hyclone)。上清を採集し、濃縮した。プロテインAクロマトグラフィーを用いてMabを精製し、PBS中に透析した。
【0224】
血清の力価:Aβ20−42で、10匹のマウスを免疫化した。1:5000−10,000のELISA力価(1/2MaxOD450nm)で、全てのマウスを抗体陽転させた。
【0225】
本明細書に記載されているモノクローナル抗体A、B及びDは、アミロイドβタンパク質の非Met形態を用いて作製されていた。本明細書に記載されているモノクローナル抗体Cは、アミロイドβタンパク質の非Met1−42形態を用いて作製された。
【実施例7】
【0226】
14−SDSを用いた、Aβ球状凝集体へのSDSの結合
0.05%SDS段階で、Aβ球状凝集体の13.5mLは、0.62mLに濃縮された。この濃縮された材料0.3mLを、10mLのEconoPacDG10カラムにかけた。手で0.25mL画分を集めた。図Xの挿入図は、遊離の単量体SDSが溶出する領域を、延長されたy軸とともに示している。ペプチド(黒四角)及びSDS(黒丸)の濃度並びにペプチドに対するSDSの比(白三角)が示されている。球状凝集体のピークにわたるSDS/ペプチドの比(画分14及び15)は、ペプチドの1分子当りSDS約0.5から約1.5分子の間である。クロマトグラフィー分離は、サイズ排除クロマトグラフィーに供された際に、SDSがAβペプチドと分離していることを示している。結果は、図25に示されている。
【0227】
放射線標識された界面活性剤及びサイズ排除クロマトグラフィーを用いた、タンパク質−界面活性剤凝集体中に結合された界面活性剤の量の測定は、文献において十分に確立されている。Tranfordと共同研究者は、ウシ血清アルブミン(Makino et al.,(1973),J.Biol.Chem.,248:4926−4932)、SDS中の数個のタンパク質(Tanford et al.,(1974),Biochemistry,13:2369−2376)などの様々なタンパク質の研究においてこれを使用し、界面活性剤溶液中の膜タンパク質の性質決定のための一般的方法として引用されている(Tanford and Reynolds,(1976),BBA,457:133−170)。Mollerと共同研究者らは、この方法を用いて、膜タンパク質への界面活性剤の結合の研究も行った(Moller and leMaire,(1993),J.Biol.Chem.2658:18659−18672)。LeMaire及び共同研究者も、特にCa2+依存性ATPアーゼとともに、この方法を広く使用してきた(Rivas etal.,(1982),Anal.Biochem.,123:194−200)。主として、Hummel and Dryer((1962),BBA,63:530−532)によって最初に記載されたタンパク質−リガンド相互作用の研究に関する初期の仕事に基づいて、Helenius及びSimmnsは、特にタンパク質界面活性剤相互作用を調べるために、この方法を改変した((1972),J.Biol.Chem.,247:3656−3661))。サイズ排除クロマトグラフィーカラム上で、界面活性剤がタンパク質とともに同時移動することは、タンパク質と界面活性剤間の間の物理的相互作用の証拠である。Helenius及びSimmons(同書)に従って、「タンパク質に結合された界面活性剤の量は、タンパク質とともに同時溶出した放射性界面活性剤の量から測定することができた。」
【0228】
この技術は、一つには、リガンド(球状凝集体の場合にはSDS)を含みながら、クロマトグラフィーゲルがタンパク質を効率的に排除するという要件に基づいている(Andreu,(1985),Methods in Enzymology,117:346−354)。これらの実験において、本発明者らは、界面活性剤分子が単量体として溶液中で挙動するように、SDSのCMC(臨界ミセル濃度)未満で作業を行っている。単量体として、それらは、使用されているDG10などの脱塩樹脂の孔中に分配されるのに対して、Aβ球状凝集体は排除される。従って、樹脂は、Aβ球状凝集体及びこれらに結合された全てのSDSから遊離のSDSを効率的に分離することが可能である。Aβ球状凝集体とともに同時移動することが見出されたSDSは、結合されたと記述することができる。本方法の古典的な使用では、サイズ排除カラムは、SDSのバックグラウンドレベル中で平衡化される。次いで、タンパク質溶出に随伴していれば、このバックグラウンドレベルを上回って界面活性剤レベルが上昇するにつれて、タンパク質へのSDSの結合が観察される。
【0229】
ここでは、緩衝液中に競合する界面活性剤が一切存在しない状態で、SDS結合を検査した。クロマトグラフィーの間にAβ球状凝集体から分配解離し得る何れかのSDSを置換するための遊離のSDSが即座に供給されないので、この方法は、結合されたSDSをより厳格に探査する。しかしながら、クロマトグラフィーの間に(ゲルクロマトグラフィーマトリックス中に)分配するSDSは、(球状凝集体に結合されているので)溶出しているAβ球状凝集体から完全には分離されないので、溶出している球状凝集体ピークにわたって、SDSに対するペプチドの見かけの化学両論比の変化をもたらす。
【実施例8】
【0230】
アミロイドβペプチドの球状凝集体及び原繊維形態の骨格アミド保護の比較
球状凝集体骨格アミド交換実験:
液体窒素中で水性緩衝液中の球状凝集体試料を瞬間凍結し、一晩凍結乾燥させた。これらの凍結乾燥された試料の幾つかは、−70℃で保存され、基準試料としての役割を果たす(DO中に存在しない。)。次いで、凍結乾燥された試料の残りを、DO中に溶解した。交換可能なH/D交換が生じる、4℃での様々な時間の後に、H/D交換を停止させるために液体窒素中でこれらの試料を瞬間凍結し、凍結乾燥した。次いで、0.07%重水素化されたジクロロ酢酸(Cambridge Isotope Laboratories Inc., Andover, MA)を含有するDMSO−d480μL(Cambridge Isotope Laboratories Inc.,Andover,MA)中にこれらの交換された試料及び交換されていない(基準)試料を溶解してから3分後以内に、一次元及び二次元15N/HHSQCスペクトルを収集した。酸性化されたDMSO−d中に球状凝集体を溶解すると、多量体球状凝集体は単量体へ転化される。[U−15N,13C]標識された試料を用いて、一連の骨格実験(T.Yamazaki et al.,(1994)J.Am.Chem.Soc.116,11655−11666)を収集することによって、この酸性化されたDMSO−d溶媒中のアミロイドβペプチドのこの単量体形態の15N/HHSQCスペクトルの割り当てを行う。これらの割り当てを用いて、アミロイドβペプチドの各残基のピーク強度を分析し、それらの骨格アミド保護係数を得る。保護係数は、DO交換に供されていない試料の強度に対する、DO中での交換後における試料の観察されたクロスピーク強度の比として定義される。これらの交換実験では、0.5mMの単量体濃度を使用した。保護係数の計算において使用されたピーク強度は、1DNMRスペクトルの脂肪族CH領域強度に基づいて較正した。
【0231】
前球状凝集体(初期調製段階ペプチド)骨格アミド交換実験:約1.5%SDS−d25及びpH7.4の1×リン酸緩衝化生理的食塩水(GIBCO/Invitrogen,Carlsbad,CA)を含有する緩衝液中の15N標識された試料を凍結乾燥させた後、次いで、乾燥された試料をDO中に溶解し、一連の15N/HHSQCスペクトルを集めた。これらの実験では、遅い交換アミドが検出された。
【0232】
実験は、Met−アミロイドβを用いて行ったが、文献データ(以下参照)とのグラフ的比較を容易にするために、N末端Met残基は、図のパネルから除外されている(図26参照)。保護係数は、DO交換に供されていない試料の強度に対する、DO中での交換後の試料に対する15N/HHSQCスペクトル中の観察されたクロスピーク強度の比として定義される。球状凝集体については、骨格アミド保護実験に対して2つのデータの組を収集し、それらの平均及び標準偏差を報告するために使用した。現在の実験で使用されるDMSO/酸溶媒中で、本質的に速い逆交換速度を示したので、球状凝集体中の残基D1、D7、S8及びH14は除外した。残基対(E11及びD23)、(V18及びV36)及び(I13及びI41)に対するスペクトルの重複のために(パネルBにおいて、星によって記されている。)、骨格アミドのこれらの対に対する平均保護係数のみを報告ことができる。その結果、各残基が示し得る最高及び最低の保護係数を推測し(80%の最大保護係数を仮定)、これらの限界の標準偏差を使用することによって、これらの重複された残基に対して示された不明確さが得られた。パネルB中に示されている球状凝集体のアミド保護は、DO中での5日間の交換に供された試料に対するものである。パネルC中の原繊維骨格アミド保護は、DO中での温置の20分(黒い棒)及び120分(薄い灰色の棒)後に、Olofssonら((2006),JBC281,477−483)から採用した。さらに、パネルAは、前球状凝集体に対する骨格の割り当て及びアミド交換データを示している。割り当てられた残基及び割り当てられていない残基は、それぞれ、+及び−の符号によって示されている。遅い、中程度の及び速い交換速度を示した初期調製段階(前球状凝集体)に特徴的なペプチドの骨格アミドが、それぞれ、配列の下に、黒丸、半黒丸及び白丸によって示されている。中央及びC末端残基(パネルC)の両方に対して遅いアミド交換速度が観察された原繊維形態とは異なり、前球状凝集体(パネルA)及び球状凝集体(パネルB)中のC末端12残基に対しては、遅い交換速度が主に観察される。従って、この比較は、アミロイドβペプチドの前球状凝集体(パネルA)及び球状凝集体(パネルB)形態は、極めて似たアミド交換速度を示し、両形態が類似のコア構造を採っていることと合致することを示している。これに対して、前球状凝集体及び球状凝集体形態は何れも、原繊維形態のペプチドの中央領域とは明瞭に異なるNH/ND交換速度を示し、これらは、原繊維形態とは異なる構造コアを有することを示唆している。
【0233】
【表4】

【0234】
上記寄託は、ブダペスト条約の規定に基づいて行われ、2005年12月1日に、American Type Culture Collection, 10801 University Boulevard, Manassas, Virginia 20110−2209によって受領された。
【図面の簡単な説明】
【0235】
【図1A】βアミロイドペプチドをコードする遺伝子のDNA配列を示している(配列番号1)。クローニングに使用されたヌクレオチド制限部位が示されており、これらは設計されたプライマー中には含まれなかった。開始Met(ATG)及び停止コドン(TGA)が示されている。
【図1B】アミロイド前駆体タンパク質(APP)のインビボでのプロセッシングに由来する自然のアミロイドβ(1−42)タンパク質のアミノ酸配列を示している(配列番号2)。
【図2】天然のN末端メチオニンを含有するアミロイドβペプチド又はタンパク質の様々な形態を示しており、天然配列(公知の変異バリアントを含む。)残基40から44にまで及んでいる(配列番号3=1−39、配列番号4=1−40、配列番号5=1−41、配列番号6=1−42及び配列番号=1−43)。
【図3A】組み換えアミロイドβに対する精製スキームを表している。
【図3B】組み換えアミロイドβに対する精製スキームを表している。
【図4】組み換えMetアミロイドβ1−42のMALDI質量スペクトルを表している。ペプチドの理論的分子量は、4645Daである。観察された値は、4648Daである。3Daの相違は、装置の精度限界内である。
【図5】組み換えアミロイド(配列:Met−Aβ1−42)から調製された球状凝集体に対するマウスモノクローナル抗体Bを上回るマウスモノクローナル抗体Aの選択性を示すELISAの結果を示している。
【図6】組み換えアミロイド(配列:Met−Aβ1−42)から調製された球状凝集体への、マウスモノクローナル抗体A、マウスモノクローナル抗体B、マウスモノクローナル抗体C及びマウスモノクローナル抗体の結合を比較するELISAアッセイの結果を示している。
【図7】組み換えアミロイド(配列:Met−Aβ1−42)から調製された配列残基20−42になるように末端切断された球状凝集体への、マウスモノクローナル抗体A、マウスモノクローナル抗体B、マウスモノクローナル抗体C及びマウスモノクローナル抗体Dの結合を比較するELISAアッセイの結果を示している。
【図8】合成アミロイドペプチド又は組み換え完全長アミロイドペプチドの何れかを用いて球状凝集体を調製するために使用した段階を要約している。
【図9】様々なゲル負荷量での、合成Bachemペプチド(1−42)又は組み換えMetA−β(Met1−42)から調製された球状凝集体のSDS−PAGEゲルを(分子量標準とともに)図示している。
【図10】組み換えMetA−β1−42から調製された球状凝集体の水力学的分析(沈降速度及び動的光散乱(DLS;dynamic light−scattering)の結果を図示している。
【図11】組み換えMetA−β1−42から調製された球状凝集体又はSigma Chemical Co.(St.Louis,MO)から購入された金ナノ球体の代表的な原子間力顕微鏡(AFM)画像を図示している。エッジ画像データのみ、最も鋭い形体が、より明るい。画像が暗くなるほど、形体は、雲母チップ基材表面の表面に近くなる。
【図12】SDSなし(図15)、0.05%SDS(図16)及び0.2%SDS(図17)で可視化された、球状凝集体の代表的なAFM画像(30μg/mL単量体アミロイド濃度)を図示している。各図面において、左:高さ画像、右:エッジ画像。各画像において、最も高い(左)及び最も鋭い(右)形体(それぞれ)が、より明るい。画像が暗くなるほど、形体は、雲母チップ基材表面の表面に近くなる。
【図13】SDSなし(図15)、0.05%SDS(図16)及び0.2%SDS(図17)で可視化された、球状凝集体の代表的なAFM画像(30μg/mL単量体アミロイド濃度)を図示している。各図面において、左:高さ画像、右:エッジ画像。各画像において、最も高い(左)及び最も鋭い(右)形体(それぞれ)が、より明るい。画像が暗くなるほど、形体は、雲母チップ基材表面の表面に近くなる。
【図14】SDSなし(図15)、0.05%SDS(図16)及び0.2%SDS(図17)で可視化された、球状凝集体の代表的なAFM画像(30μg/mL単量体アミロイド濃度)を図示している。各図面において、左:高さ画像、右:エッジ画像。各画像において、最も高い(左)及び最も鋭い(右)形体(それぞれ)が、より明るい。画像が暗くなるほど、形体は、雲母チップ基材表面の表面に近くなる。
【図15】組み換えMetA−β1−42から調製された球状凝集体へのモノクローナル抗体Aの結合から得られた結果を示している。結合は、等温滴定熱量測定法(ITC)によって直接測定された。この例では、熱量測定装置のセルは、(単量体単位を基礎として)86μMの濃度で、アミロイドβを含有した。これは、132μMのA抗体で滴定された。何れも、pH7.4の35mMNaClを加えた5mMリン酸ナトリウム緩衝液中に存在した。フィッティングによって決定された解離定数(結合のKd)は490nM(又は0.46μM)であり、結合の観察されたエンタルピーは、−47.5kJ/モルであり、結合の見かけの化学量論は、6.3アミロイドβ分子/抗体分子であった。水力学的分析と総合すると、これは、球状凝集体単位当り完全長抗体に対して約2個の結合部位を示唆する。
【図16A】90%HO/10%DO溶液中の15N標識されたN−MetAβ1−42(パネルA)及び100%DO溶液中への交換から1日後(パネルB)の15N/Hヘテロ核単一量子相関分光法(HSQC;heteronuclear single quantum correlation)スペクトルを図示している。
【図16B】90%HO/10%DO溶液中の15N標識されたN−MetAβ1−42(パネルA)及び100%DO溶液中への交換から1日後(パネルB)の15N/Hヘテロ核単一量子相関分光法(HSQC;heteronuclear single quantum correlation)スペクトルを図示している。
【図17A】N−metアミロイドβペプチド1−42の配列を表している。NMRによって同定された2つのβ鎖が、枠内に表示されている(配列番号8)。
【図17B】NMRデータの鎖間NOEの分析から同定されたAβ1−42の反平行βシートを表している((配列番号9)(aas28−39);配列番号10(aas17−23))。
【図18】固体状NMR及び本明細書に記載されている球状凝集体の観察された混合平行/反平行構造経路に基づいて、以前に提案された平行βシート原繊維構造経路(Sciaretta et al., Biochemistry 2005,44:6003−6014)間の著しい構造的な相違を図示している。
【図19】僅かにより大きな(4から5nm)完全な球状凝集体と混合されたSDS(約1.5%)中の溶液状NMRによって観察されると考えられる最も小さな観察された球状凝集体種(1−2nm高)のAFM画像を図示する。エッジ画像データのみ、最も鋭い形体が、より明るい。画像が暗くなるほど、形体は、雲母チップ基材表面の表面に近くなる。
【図20】N−MetAβ1−42試料に対して得られたNMRデータを要約する。破線は、混合された試料(1:1の比で混合された、[U−15H]標識及び[U−14N,H]標識された試料)を使用することによって、15Nフィルターされた及び15N編集された3DNOESY実験において観察された分子間NH−NHNOEを示している。実線矢印の線は、混合された試料([U−15N,H]標識された試料を、IVL残基の13C標識された、プロトン化されたメチル基を選択的に含有する[U−14N,H]標識された試料と1:1の比で混合した。)を使用することによって、15N分解された3DNOESY実験中で観察された側鎖のNHからメチル基(矢印の先)までのNOEを示している。実線は、H背景中にIle、Val、Leu残基の選択的に13C標識された、プロトン化されたメメチル基とともに均一に15N標識された試料を使用することによって、15N分割された3DNOESY実験で観察された分子内NH−NHNOEを示している。矢印破線は、[U−15N]標識された試料を使用することによって、15N分割された3DNOESY実験において観察された骨格アミド及びそれらの側鎖間の分子内NOEを示している。NH/ND交換実験において遅い交換を示す骨格アミドが、丸によって示されている。
【図21】NMRデータと合致するN−Met−β−アミロイドペプチド1−42の反復単位の構造モデルを図示している。プログラムCNX(Brunger et al., Acta Crystallogr.D54(Pt 5),905−21(1998))及び本明細書中のNMRデータの分析から得られたNOEに由来する距離制約を用い、シミュレートされたアニーリングプロトコールを使用して構造を計算した。リボンプロットで示されている残基は、黒い色の残基に対応する。
【図22】溶液中で、観察された三量体、四量体又は五量体中間体形態を生じ得る球状凝集体中のアミロイドペプチド相互作用の3つの「仮定的な」より高次の配置を図示している(図12、SDSゲル)。本明細書に記載されているように、より高次の凝集物も存在し、水力学的に観察される。これらの配置は、分子間凝集及び平行アミロイドペプチドβシートの原繊維の最終的な形成に対する駆動力としての、C末端平行シート領域(図20参照)に沿った分子間相互作用の存在に基づいている。これは、アミロイドペプチドの他の可能な配置を限定するものではなく、又はそれらが存在しないことを示唆するものではない。
【図23】Met−A−β1−42試料の模式図並びに原子間力及び電子顕微鏡を図示しており、インビトロで見られる鎖内及び鎖間βシート相互作用の混合物からのアミロイド立体構造交換変換を支持する(図20及び図21参照)。球状凝集体は、上記のように、SDS又は脂肪酸の存在下で形成され、上記のように、SDS又は脂肪酸が実際にその中に存在する。本図面中に示されているように、SDSが図示されている。球状凝集体構造を取り囲んでいるSDSの正確な配向は、今後解明しなければならない。鎖内反平行βシート相互作用が開放し、アミロイド原繊維形態の蓄積をもたらす完全に平行なシートを形成するときに、交換が起こる。反パラレル領域が「開放」した後に産生されたペプチドの生じた原繊維及び凝集形態が、本図面中のAFM及びTEM画像で観察される。下方のTEM画像は、代表的なスライスを示しており、サイズは、y=約260nm、x=約372nmである。観察された原繊維の幅は、約6nmである。精製されたMet1−42球状凝集体の試料は、以前に記載したとおりに調製した。Met1−42は、0.03mg/mLの最終濃度であり、透過型電子顕微鏡(TEM)によって、337,500倍の増幅係数で画像化するために、2%酢酸ウラニルで染色した。下方のAMF画像は、代表的なスライスを示しており、サイズは、y=250nm、x=500nmである。画像は、観察された種の分散された場を示している。Met1−42球状凝集体の試料は、以前に記載したとおりに調製した。Met1−42は、1.1mg/mLの当初濃度であり、4℃で2週間以上温置し、ナノ純水中に20:1で希釈した(最終0.055mg/mL)。切断された直後の雲母チップ上に20μLを堆積し、5から8分間温置した後、雲母チップを600μLナノ純水のリンス及びAFM走査を行った。球状凝集体に対して選択的な抗体は、図X及びYに図示されているように、混合された分子内反平行βシート(概ね残基18から33)と平行βシート(概ね残基34から39)を有するペプチド中に作製されたエピトープに選択的に結合する。インビトロで球状凝集体の形成をもたらす1つ又は複数の機序は、インビボで観察される機序とは異なり得る。
【図24A】本発明の観察された球状凝集体のβアミロイド成分の配位を図示している。配位は、βアミロイドペプチドN−Met1−42球状凝集体の二量体成分のモデルに対するものである。1つの分子の配列番号は15から42であるのに対して、別の分子に対する配列番号は115から142である。
【図24B】本発明の観察された球状凝集体のβアミロイド成分の配位を図示している。配位は、βアミロイドペプチドN−Met1−42球状凝集体の二量体成分のモデルに対するものである。1つの分子の配列番号は15から42であるのに対して、別の分子に対する配列番号は115から142である。
【図24C】本発明の観察された球状凝集体のβアミロイド成分の配位を図示している。配位は、βアミロイドペプチドN−Met1−42球状凝集体の二量体成分のモデルに対するものである。1つの分子の配列番号は15から42であるのに対して、別の分子に対する配列番号は115から142である。
【図24D】本発明の観察された球状凝集体のβアミロイド成分の配位を図示している。配位は、βアミロイドペプチドN−Met1−42球状凝集体の二量体成分のモデルに対するものである。1つの分子の配列番号は15から42であるのに対して、別の分子に対する配列番号は115から142である。
【図24E】本発明の観察された球状凝集体のβアミロイド成分の配位を図示している。配位は、βアミロイドペプチドN−Met1−42球状凝集体の二量体成分のモデルに対するものである。1つの分子の配列番号は15から42であるのに対して、別の分子に対する配列番号は115から142である。
【図24F】本発明の観察された球状凝集体のβアミロイド成分の配位を図示している。配位は、βアミロイドペプチドN−Met1−42球状凝集体の二量体成分のモデルに対するものである。1つの分子の配列番号は15から42であるのに対して、別の分子に対する配列番号は115から142である。
【図24G】本発明の観察された球状凝集体のβアミロイド成分の配位を図示している。配位は、βアミロイドペプチドN−Met1−42球状凝集体の二量体成分のモデルに対するものである。1つの分子の配列番号は15から42であるのに対して、別の分子に対する配列番号は115から142である。
【図24H】本発明の観察された球状凝集体のβアミロイド成分の配位を図示している。配位は、βアミロイドペプチドN−Met1−42球状凝集体の二量体成分のモデルに対するものである。1つの分子の配列番号は15から42であるのに対して、別の分子に対する配列番号は115から142である。
【図24I】本発明の観察された球状凝集体のβアミロイド成分の配位を図示している。配位は、βアミロイドペプチドN−Met1−42球状凝集体の二量体成分のモデルに対するものである。1つの分子の配列番号は15から42であるのに対して、別の分子に対する配列番号は115から142である。
【図24J】本発明の観察された球状凝集体のβアミロイド成分の配位を図示している。配位は、βアミロイドペプチドN−Met1−42球状凝集体の二量体成分のモデルに対するものである。1つの分子の配列番号は15から42であるのに対して、別の分子に対する配列番号は115から142である。
【図24K】本発明の観察された球状凝集体のβアミロイド成分の配位を図示している。配位は、βアミロイドペプチドN−Met1−42球状凝集体の二量体成分のモデルに対するものである。1つの分子の配列番号は15から42であるのに対して、別の分子に対する配列番号は115から142である。
【図24L】本発明の観察された球状凝集体のβアミロイド成分の配位を図示している。配位は、βアミロイドペプチドN−Met1−42球状凝集体の二量体成分のモデルに対するものである。1つの分子の配列番号は15から42であるのに対して、別の分子に対する配列番号は115から142である。
【図24M】本発明の観察された球状凝集体のβアミロイド成分の配位を図示している。配位は、βアミロイドペプチドN−Met1−42球状凝集体の二量体成分のモデルに対するものである。1つの分子の配列番号は15から42であるのに対して、別の分子に対する配列番号は115から142である。
【図24N】本発明の観察された球状凝集体のβアミロイド成分の配位を図示している。配位は、βアミロイドペプチドN−Met1−42球状凝集体の二量体成分のモデルに対するものである。1つの分子の配列番号は15から42であるのに対して、別の分子に対する配列番号は115から142である。
【図24O】本発明の観察された球状凝集体のβアミロイド成分の配位を図示している。配位は、βアミロイドペプチドN−Met1−42球状凝集体の二量体成分のモデルに対するものである。1つの分子の配列番号は15から42であるのに対して、別の分子に対する配列番号は115から142である。
【図24P】本発明の観察された球状凝集体のβアミロイド成分の配位を図示している。配位は、βアミロイドペプチドN−Met1−42球状凝集体の二量体成分のモデルに対するものである。1つの分子の配列番号は15から42であるのに対して、別の分子に対する配列番号は115から142である。
【図24Q】本発明の観察された球状凝集体のβアミロイド成分の配位を図示している。配位は、βアミロイドペプチドN−Met1−42球状凝集体の二量体成分のモデルに対するものである。1つの分子の配列番号は15から42であるのに対して、別の分子に対する配列番号は115から142である。
【図24R】本発明の観察された球状凝集体のβアミロイド成分の配位を図示している。配位は、βアミロイドペプチドN−Met1−42球状凝集体の二量体成分のモデルに対するものである。1つの分子の配列番号は15から42であるのに対して、別の分子に対する配列番号は115から142である。
【図24S】本発明の観察された球状凝集体のβアミロイド成分の配位を図示している。配位は、βアミロイドペプチドN−Met1−42球状凝集体の二量体成分のモデルに対するものである。1つの分子の配列番号は15から42であるのに対して、別の分子に対する配列番号は115から142である。
【図24T】本発明の観察された球状凝集体のβアミロイド成分の配位を図示している。配位は、βアミロイドペプチドN−Met1−42球状凝集体の二量体成分のモデルに対するものである。1つの分子の配列番号は15から42であるのに対して、別の分子に対する配列番号は115から142である。
【図24U】本発明の観察された球状凝集体のβアミロイド成分の配位を図示している。配位は、βアミロイドペプチドN−Met1−42球状凝集体の二量体成分のモデルに対するものである。1つの分子の配列番号は15から42であるのに対して、別の分子に対する配列番号は115から142である。
【図25】アミロイドβペプチドの球状凝集体(パネルB)及び原繊維(パネルC)形態の骨格アミド保護の比較を示している。
【図26A】C14−SDSを用いた、SDSのAβ球状凝集体への結合を示している。
【図26B】C14−SDSを用いた、SDSのAβ球状凝集体への結合を示している。
【図26C】C14−SDSを用いた、SDSのAβ球状凝集体への結合を示している。
【図27】N末端Met形態として発現されたヒト家族性変異体アルツハイマーペプチドを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式[X+Y]によって表されるタンパク質に対して少なくとも70%のアミノ酸配列同一性を有する精製されたβ−アミロイドタンパク質(「X」は、メチオニン、バリン及びロイシンからなる群から選択される、前記タンパク質のアミノ末端に位置する1つ又はそれ以上のアミノ酸を含み、並びに「Y」は、自然のアミロイドβタンパク質のアミノ酸配列の全部又は一部を含む。)。
【請求項2】
「Y」が、前記自然のβ−アミロイドタンパク質の39から43個の連続するアミノ酸を含む、請求項1に記載の精製されたβ−アミロイドタンパク質。
【請求項3】
「Y」が、Glu665Asp、Lys/Met670/Asn/Leu、Ala673Thr、His677Arg、Asp678Asn、Ala692Gly、Glu693Gly、Glu693Gln、Asp694Asn、Ala713Thr及びAla713Valからなる群から選択される変異体を含む、請求項2に記載の精製されたβ−アミロイドタンパク質。
【請求項4】
「X」がメチオニンである、請求項2又は請求項3に記載の精製されたβ−アミロイドタンパク質。
【請求項5】
式[X+Y]によって表されるタンパク質に対して少なくとも70%のアミノ酸配列同一性を有するβ−アミロイドタンパク質をコードする単離された核酸分子(「X」は、メチオニン、バリン及びロイシンからなる群から選択される、前記タンパク質のアミノ末端に位置する1つ又はそれ以上のアミノ酸を含み、並びに「Y」は、自然のアミロイドβタンパク質のアミノ酸配列の全部又は一部を含む。)。
【請求項6】
請求項5に記載の単離された核酸分子を含むベクター。
【請求項7】
請求項6に記載の前記ベクターを含む宿主細胞。
【請求項8】
a.請求項1に記載の前記β−アミロイドタンパク質をコードする核酸分子をベクター中に形質移入する段階;及び
b.前記宿主細胞による前記β−アミロイドタンパク質の発現に十分な時間及び条件下で、段階a)の前記ベクターを宿主細胞中に形質転換する段階を含む、
式[X+Y]によって表されるタンパク質に対して少なくとも70%の配列同一性を有する精製されたβ−アミロイドタンパク質を作製する方法(「X」は、メチオニン、バリン及びロイシンからなる群から選択される、前記タンパク質のアミノ末端に位置する1つ又はそれ以上のアミノ酸を含み、並びに「Y」は、自然のβ−アミロイドタンパク質のアミノ酸配列の全部又は一部を含む。)。
【請求項9】
前記宿主細胞が原核生物又は真核生物である、請求項8に記載の宿主細胞。
【請求項10】
前記原核宿主細胞が、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)、バチルス種(Bacillus sp.)、ストレプトコッカス種(Streptococcus sp.)及びラクトバチルス種(Lactobacillus sp)からなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記真核細胞が、昆虫細胞、酵母細胞及び哺乳動物細胞からなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
請求項1に記載の前記β−アミロイドタンパク質に結合する単離された抗体。
【請求項13】
前記抗体がモノクローナル又はポリクローナルである、請求項12に記載の単離された抗体。
【請求項14】
前記抗体がモノクローナルであり、及びヒトのもの又はヒト化されているものである、請求項13に記載の単離された抗体。
【請求項15】
前記抗体が、少なくとも0.50μMの特異的結合定数(K)を有する、請求項14に記載の単離された抗体。
【請求項16】
前記抗体が、−30kJ/モルを超える結合エンタルピーを有する、請求項14に記載の単離された抗体。
【請求項17】
前記抗体が、少なくとも1つの抗体/アミロイド球状凝集体の抗体対アミロイド球状凝集体結合比を有する、請求項14に記載の単離された抗体。
【請求項18】
アルツハイマー病の治療又は予防を必要としている患者において、アルツハイマー病を治療又は予防する方法であり、前記治療又は予防を実施するのに十分な量で、前記患者に、請求項12に記載の前記単離された抗体を投与することを含む、前記方法。
【請求項19】
前記単離された抗体が、筋肉内、静脈内及び皮下からなる群から選択される経路を介して投与される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
単離されたβ−アミロイドペプチドオリゴマーであり、1)反平行鎖内配置に配向された残基19から21及び残基30から32並びに2)平行鎖間配置で配向された残基34から38を含み、前記オリゴマーは、F19(NH)−I32(NH)、F19(NH)−I32(HB)、F19(NH)−I32(HG##)、A21(NH)−A30(NH)、A21(NH)−A30(HB#)、A21(NH)−I31(HD1#)、A21(NH)−I31(HG1#)、I32(NH)−F19(HD1#)、I32(NH)−F19(HB#)及びA30(NH)−A21(HB#)からなる群から選択される原子対に対して、約1.8から6.5オングストローム内の分子内プロトン間距離を有するA−β(1−42)ペプチドを含む、前記単離されたβ−アミロイドペプチドオリゴマー。
【請求項21】
単離されたβ−アミロイドペプチドオリゴマーであり、G33(NH)−G34(NH)、M35(NH)−V36(NH)、G37(NH)−G38(NH)、G33(NH)−V18(CγH)、V18(NH)−V18(CγH)、L34(NH)−L34(Cδ)、M35(NH)−V36(CγH)、G38(NH)−V39(CγH)及びV39(NH)−V39((CγH)からなる群から選択される原子対に対して、約1.8から6.5オングストローム内のペプチド鎖Aとペプチド鎖B間の分子間プロトン間距離を有するA−β(1−42)ペプチドを含み、前記オリゴマーは、少なくとも残基19から21及び30から32を含む分子内反平行β−シートを含み、並びに原子対{F19CO,I32N}、{I32CO,F19N}、{A21CO,A30N}及び{A30CO,A21N}は、3.3±0.5オングストロームの距離であり、COは、骨格酸素原子を示し、前記残基のファイ(φ)角度は−180から−30の範囲であり、及び前記残基のプサイ(ψ)角度は、約60から180又は約−180から−150の範囲である、前記単離されたβ−アミロイドペプチドオリゴマー。
【請求項22】
単離されたβ−アミロイドオリゴマーであり、前記オリゴマーは、少なくとも2つのβ−アミロイドペプチド(標識されたA及びB)の少なくとも残基34から38を含む分子間平行βシートを含み、以下の原子対{G33CO(A),L34N(B)}、{L34CO(B),M35N(A)}、{M35CO(A),V36N(B)]、{V36CO(B),G37N(A)}及び{G37CO(B),G38N(A)}(COは、骨格酸素原子を示す。)が、3.3±0.5Åの距離であり、及び前記残基のファイ(φ)角度が−180から−30の範囲であり、及び前記残基のプサイ(ψ)角度が、60から180又は−180から−150の範囲である、前記単離されたβ−アミロイドオリゴマー。
【請求項23】
少なくとも1つのβ−アミロイドN−Met1−42オリゴマーに結合する単離された抗体であり、前記オリゴマーは、
(a)少なくとも残基19から21及び30から32を含む分子内反平行βシート(以下の原子対は、{F19CO,I32N}、(I32CO,F19N}、{A21CO,A30N}及び{A30CO,A21N}(COは、骨格酸素原子を示す。)が、3.3±0.5Åの距離であり、及び前記残基のファイ(φ)角度が−180から−30の範囲であり、及び前記残基のプサイ(ψ)角度が、60から180又は−180から−150の範囲である。)並びに
(b)少なくとも2つのβ−アミロイドペプチド(標識されたA及びB)の少なくとも残基34から38を含む分子間平行βシートを含む分子間平行β−シート(以下の原子対{G33CO(A),L34N(B)},{L34CO(B),M35N(A)},{M35CO(A),V36N(B)},{V36CO(B),G37N(A)}及び{G37CO(B),G38N(A)}(COは、骨格酸素原子を示す。)が、3.3±0.5Åの距離であり、及び前記残基のファイ(φ)角度が−180から−30の範囲であり、及び前記残基のプサイ(ψ)角度が、60から180又は−180から−150の範囲である。)
からなる群から選択される、前記単離された抗体。
【請求項24】
少なくとも2つのN−Met1−42βアミロイドペプチドの三次元構造が、図X及びYに示されている何れかの物理的に許容される立体構造を含む、請求項23に記載の単離された抗体。
【請求項25】
請求項1に記載の前記単離されたβ−アミロイドタンパク質の少なくとも2つを含む精製された球状凝集体。
【請求項26】
請求項25に記載の前記精製された球状凝集体に結合する単離された抗体。
【請求項27】
アルツハイマー病を有すると疑われる患者においてアルツハイマー病を診断する方法であり、
a.前記患者から生物学的試料を単離する段階;
b.球状凝集体/抗体複合体の形成に十分な時間及び条件下で、請求項12又は請求項26に記載の前記単離された抗体と、前記生物学的試料を接触させる段階;並びに
c.前記試料中の前記球状凝集体/抗体複合体の存在を検出する段階を含み、前記複合体の存在が、前記患者中のアルツハイマー病の診断を示す、前記方法。
【請求項28】
アルツハイマー病を有すると疑われる患者においてアルツハイマー病を診断する方法であり、
a.前記患者から生物学的試料を単離する段階;
b.抗体/球状凝集体複合体の形成に十分な時間及び条件下で、請求項25に記載の前記球状凝集体と、前記生物学的試料を接触させる段階;
c.結合された抗体へコンジュゲートが結合するのに十分な時間及び条件下で、得られた抗体/球状凝集体にコンジュゲートを添加する段階(前記コンジュゲートは、検出可能なシグナルを発生することができるシグナル生成化合物に付着された抗体を含む。);並びに
d.前記シグナル生成化合物によって発生されたシグナルを検出することによって、前記生物学的試料中に存在し得る抗体の存在を検出する段階を含み、前記シグナルが、前記患者中のアルツハイマー病の診断を示す、前記方法。
【請求項29】
アルツハイマー病を有すると疑われる患者においてアルツハイマー病を診断する方法であり、
a.前記患者から生物学的試料を単離する段階;
b.抗体/精製された球状凝集体複合体の形成に十分な時間及び条件下で、請求項25に記載の前記球状凝集体と、前記生物学的試料を接触させる段階;及び
c.前記試料中の前記抗体/精製された球状凝集体複合体の存在を検出する段階;
を含み、前記複合体の存在が、前記患者中のアルツハイマー病の診断を示す、前記方法。
【請求項30】
アルツハイマー病を有すると疑われる患者においてアルツハイマー病を診断する方法であり、
a.前記患者から生物学的試料を単離する段階;
b.抗抗体/抗体複合体の形成を可能とするのに十分な時間及び条件下で、前記試料中の抗体に対して特異的な抗抗体と、前記生物学的試料を接触させる段階;
c.結合された抗体へコンジュゲートが結合するのに十分な時間及び条件下で、得られた抗抗体/抗体複合体にコンジュゲートを添加する段階(前記コンジュゲートは、検出可能なシグナルを発生することができるシグナル生成化合物に付着された請求項31に記載の前記球状凝集体を含む。);並びに
d.前記シグナル生成化合物によって発生されたシグナルを検出する段階を含み、前記シグナルが、前記患者中のアルツハイマー病の診断を示す、前記方法。
【請求項31】
請求項12又は請求項26に記載の前記単離された抗体を含む組成物。
【請求項32】
請求項1又は請求項25に記載の前記精製されたβ−アミロイドタンパク質及び医薬として許容されるアジュバントを含むワクチン。
【請求項33】
アルツハイマー病の予防又は治療を必要としている患者において、アルツハイマー病を予防又は治療する方法であり、前記予防又は治療を実施するのに十分な量で、前記患者に、請求項31に記載の前記組成物を投与する段階を含む、前記方法。
【請求項34】
アルツハイマー病の予防又は治療を必要としている患者において、アルツハイマー病を予防又は治療する方法であり、前記予防又は治療を実施するのに十分な量で、前記患者に、請求項32に記載の前記ワクチンを投与する段階を含む、前記方法。
【請求項35】
アルツハイマー病の治療又は予防のための化合物を同定する方法であり、
a)前記1つ又はそれ以上の化合物が前記精製された球状凝集体に結合し、又は中和するのに時間及び条件下で、請求項31に記載の前記精製された球状凝集体に、目的の1つ又はそれ以上の化合物を曝露する段階;及び
b)前記精製された球状凝集体に結合し、又は中和する化合物を同定する段階を含み、
前記同定された化合物がアルツハイマー病の治療又は予防において使用される、前記方法。
【請求項36】
患者中のアルツハイマー病の治療又は予防において有用な小分子を診断する方法であり、
a)請求項25に記載の前記精製された球状凝集体、請求項25に記載の前記単離されたβ−アミロイドペプチドオリゴマー及び請求項25に記載の前記単離されたオリゴマーの集合からなる群から選択されるタンパク質の三次元構造を分析する段階;
b)段階a)の前記選択されたタンパク質の表面上に1つ又はそれ以上のエピトープを同定する段階;及び
c)段階b)の同定されたエピトープの前記1つ又はそれ以上に結合する小分子を設計する段階(前記小分子は、アルツハイマー病の治療又は予防において使用される。)を含む、前記方法。
【請求項37】
アルツハイマー病の治療又は予防において使用されるべきモノクローナル抗体を同定する方法であり、
a)前記モノクローナル抗体の1つ又はそれ以上の前記球状凝集体への結合及び球状凝集体/抗体複合体の形成に十分な時間及び条件下で、請求項25に記載の前記精製された球状凝集体をモノクローナル抗体のライブラリーに曝露する段階;
b)前記球状凝集体/抗体複合体の存在を同定する段階;
c)前記複合体内の1つ又はそれ以上の抗体の正体を決定する段階(前記1つ又はそれ以上の抗体は、アルツハイマー病の治療又は予防において使用される。)、前記方法。
【請求項38】
前記安定化を実施するのに十分な時間及び量で、アルキル鎖界面活性剤又は脂質を前記試料に添加する段階を含む、Met−アミロイドβ(1−42)オリゴマー又はその一部の試料を安定化させる方法。
【請求項39】
請求項26に記載の前記単離された抗体、及び医薬として許容されるアジュバントを含むワクチン。
【請求項40】
図27の連続するアミノ酸残基E22−D23−V24−G25−S26−N27−K28(配列番号25)を含むエピトープ。
【請求項41】
請求項40に記載の前記エピトープに結合する単離された抗体。
【請求項42】
北極(E693G)変異、オランダ(E693Q)変異、イタリア変異(E693K)、アイオワ(D694N)変異及びフランドル(A692G)変異からなる群から選択される抗原に対して作製されたヒト化抗体。
【請求項43】
前記抗体が、アミロイドβペプチドの自然のヒト配列及び前記変異された配列の少なくとも1つを認識する、請求項1に記載のヒト化抗体。
【請求項44】
アルツハイマー病を有すると疑われる患者中の変異体アミロイドβペプチドを検出する方法であり、
a)前記患者から生物学的試料を単離する段階;
b)変異体抗原/抗体複合体の形成に十分な時間及び条件下で、請求項42に記載の前記抗体と、前記生物学的試料を接触させる段階;及び
c)前記変異体抗原/抗体複合体の存在を検出する段階を含み、
前記複合体が、前記患者が変異体アミロイドβペプチド配列を有すること、従って、アルツハイマー病を有することを示す、前記方法。
【請求項45】
アミロイドペプチドの1モル当りドデシル硫酸ナトリウム(SDS)又は脂肪酸の少なくとも約0.5から2.0モルを含む単離された球状凝集体。
【請求項46】
請求項45に記載の前記単離された球状凝集体のエピトープ。
【請求項47】
請求項46に記載の前記エピトープに結合する単離された抗体。
【請求項48】
アミロイドβペプチド凝集の形成を遮断する、請求項47に記載の単離された抗体。
【請求項49】
アミロイドβペプチドを含む単離された球状凝集体であり、前記ペプチドは北極(E693G)変異、オランダ(E693Q)変異、イタリア変異(E693K)、アイオワ(D694N)変異及びフランドル(A692G)変異からなる群から選択される変異を有するアミノ酸配列を含む、前記球状凝集体。
【請求項50】
前記自然のヒトアミロイドペプチドのエピトープと比べて、請求項46に記載の前記エピトープに優先的に結合する単離された抗体。
【請求項51】
アルツハイマー病の予防又は治療を必要としている患者において、アルツハイマー病を予防又は治療する方法であり、前記予防又は治療を実施するのに十分な量で、前記患者に、請求項50に記載の前記単離された抗体を投与することを含む、前記方法。
【請求項52】
アミロイドβペプチドを含む単離された球状凝集体であり、前記ペプチドは、水素−重水素交換挙動に基づいて、約33%又はそれ未満の保護又は交換を示すアミノ酸を含み、前記アミノ酸は、2(Asp)、3(Ala)、4(Glu)、5(Phe)、7(His)、8(asp)、9(Ser)、10(Gly)、17(Lys)、20(Phe)、21(Phe)、22(Ala)、25(Val)、26(Gly)、29(Lys)及び30(Gly)からなる群から選択される、前記球状凝集体。
【請求項53】
アミロイドβペプチドを含む単離された球状凝集体であり、前記ペプチドは、水素−重水素交換挙動に基づいて、約33%から約66%の保護又は交換を示すアミノ酸を含み、前記アミノ酸は、16(Gln)、31(Ala)、32(Ile)、42(Ile)及び43(Ala)からなる群から選択される、前記球状凝集体。
【請求項54】
アミロイドβペプチドを含む単離された球状凝集体であり、前記ペプチドは、水素−重水素交換挙動に基づいて、約66%又はそれ以上の保護又は交換を示すアミノ酸を含み、前記アミノ酸は12(Glu)、18(Leu)、19(Val)、24(Asp)、33(Ile)、34(Gly)、35(Leu)、36(Met)、38(Gly)、39(Gly)及び40(Val)からなる群から選択される、前記球状凝集体。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16A】
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【図16B】
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【図17A】
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【図17B】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24A】
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【図24B】
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【図24C】
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【図24D】
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【図24E】
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【図24F】
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【図24G】
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【図24H】
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【図24I】
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【図24J】
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【図24K】
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【図24L】
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【図24M】
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【図24N】
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【図24O】
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【図24P】
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【図24Q】
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【図24R】
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【図24S】
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【図24T】
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【図24U】
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【図25】
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【図26A】
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【図26B】
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【図26C】
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【図27】
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【公表番号】特表2009−518010(P2009−518010A)
【公表日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−543498(P2008−543498)
【出願日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際出願番号】PCT/US2006/046043
【国際公開番号】WO2007/064917
【国際公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【出願人】(391008788)アボット・ラボラトリーズ (650)
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT LABORATORIES
【出願人】(502104228)アボット ゲーエムベーハー ウント カンパニー カーゲー (89)
【Fターム(参考)】