説明

ヒトおよび動物における病原性障害の予防および処置のためのミクロンサイズの硫黄の使用

活性成分としてミクロンサイズの硫黄粒子(300ミクロン未満)を含む医薬組成物。前記医薬組成物はさらに、賦形剤(すなわち、リグニンスルホン酸ナトリウム)またはその他の適切な薬剤も含む。前記製剤は、栄養療法および/または補助療法においてヒトおよび動物の病原性障害を予防および治療するため、ならびに飼養成績および繁殖成績を向上するために使用される。影響および/またはサプリメントレジメにおいて使用される。肺炎、関節炎、潰瘍、糖尿病、胃腸管(GI)癌、狼瘡、乾癬および早期閉経を含めた種々の病態が治療されている。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(先願情報)
本願は、2006年6月2日に出願された米国仮特許出願第60/803,731号および2006年6月23日に出願された米国仮特許出願第0/805,619号の利益を請求する。
【0002】
(発明の背景)
硫黄は、特に硫化物および硫酸塩中で遊離して存在するか、他の成分と結合して存在する非金属成分である。硫黄は、両アミノ酸のメチオニンとシステインが硫黄を含有することから、食物の絶対的な必要要素である。通常、ほとんどの食物性硫黄は、タンパク質の形態をとる。
【0003】
硫黄元素は無毒であり、多くの単純な硫黄誘導体には二酸化硫黄や硫化水素がある。接触すると目、鼻、喉、皮膚および肺に炎症を生じる可能性があり、これらの重症度は、暴露の時間および濃度に直接依存する。硫黄の通常の酸化状態には、‐2、+2、+4および+6が含まれる。硫黄の酸化還元特性および反応特性を遷移金属の酸化還元特性および反応特性と組み合わせると、多くの障害に重要な生物学的意義を有する可能性がある多様な化学的性質がもたらされる。硫黄は数多くの医学的特性を有することが古くより認識されていたが、これらの特性は大部分が現代の科学法による立証が待たれている。通常、硫黄は、天然の固体状態では、周期性クラウン形状のS8分子として存在する。しかし、S7、S12およびS18をはじめとするその他多くの環がすでに調製されている。S8環は、硫黄原子が互いに強固に結合した安定した原子分子である。これにより、硫黄原子は水に相対的に不活性な実体となる。
【0004】
リグニンスルホン酸ナトリウムは、セルロースとともに木材の構造をもたらす必須の構成要素の1つである、リグニンの分解生成物である。リグニンは、構成単位であるトランス‐コニフェリルアルコール、トランス‐シナピルアルコールおよびトランス‐p‐クマリルアルコールから構成される非晶質ポリマーである。リグニンスルホン酸は、木材の脱リグニン化に使用する亜硫酸パルプ化プロセスから得られる短鎖分解生成物である。これらは天然で不均質であり、リグニンの各プロパノイドフェノール性アルコールの割合は、パルプ化プロセスで使用する木材の種類により異なる。生成物としてのリグニンスルホン酸ナトリウムは、多くの化合物のほかに、糖類や単糖類、脂肪酸や他の有機化合物の加水分解生成物、および数種類のミネラルをはじめとするスルホン化した加水分解生成物を含有する。リグニンに導入したスルホン酸基の大部分は、プロパン側鎖のα炭素においてヒドロキシル化した置換基を置換する。遊離フェノール構造は急速にスルホン化する(非特許文献1)。
【0005】
リグニンスルホン酸ナトリウムの医学的性質は、現在のところ広範囲に研究されていないが、これらの性質は抗ウイルス剤だけでなく抗血栓剤としての有用性も有するとされている。リグニンスルホン酸は、通常に使用されるレベルでは無毒であることが認められており、このことはデンマーク政府の報告書で裏付けられている(非特許文献2)。米国のFDAには、一般的に安全と認められている(GRAS)製品のリストがある。リグニンスルホン酸ナトリウムはこのリストに含まれており、ヒトへの間接曝露においてGRASステータスを取得している。また、食用動物の試料への混入においてもUSDAの承認を受けている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Gargulak,J.D.and Lebo,S.E.(2000),Commercial Use of Lignin‐Based Materials,in“Lingin: Historical,Biological and Materials Perspectives,Glasser,W.G.,Northey,R.A.and Schulz,T.P.,eds.,ACS Symposium Series 742,Ch.15
【非特許文献2】Tobiassen,L.S.,Nielsen,E.,Norhede,P and Ladefoged,O.(2003)Appendices 1‐18 to:Report on the Health Effects of Selected Pesticides Coformulants,Working Report No.51,2003,Danish Environmental Protection Agency
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様によれば、活性成分として300ミクロン未満の硫黄粒子を含む医薬組成物が提供される。
【0008】
本発明の第2の態様によれば、医薬組成物を調製する方法であって、有効量の300ミクロン未満の硫黄粒子と適切な賦形剤とを混合する手順を含む、方法が提供される。
【0009】
本発明の別の態様によれば、病原性障害を治療、予防または改善する方法であって、有効量の本発明者等の生物学的平衡(equilibiotic)化合物を、このような治療を必要とする動物に投与する手順を含む、方法が提供される。このような病原性障害には、A)肺および気道の障害、B)骨、関節および筋肉の障害、C)消化器障害、D)ホルモン障害、E)癌、F)自己免疫障害、G)ウイルス感染症、H)皮膚障害、そして最後にI)性障害および繁殖障害が含まれるであろう。
【0010】
本発明の第2の態様によれば、飼養成績を向上させる方法であって、有効量の生物学的平衡化合物を、このような治療を必要とする動物に投与する手順を含む、方法が提供される。
【0011】
本発明の第3の態様によれば、繁殖成績を向上させる方法であって、有効量の生物学的平衡化合物を、このような治療を必要とする動物に投与する手順を含む、方法が提供される。前記生物学的平衡化合物の発明者は、動物および人類の両方の多くの障害で共通する関連性が見出されていると考えている。この病原性障害の共通する関連性は、前記生物学的平衡化合物の適切な投与により効率的に治療または予防または改善することができる。特定の仮説に束縛されることを望むわけではないが、本発明者は、SLS触媒が全身で硫黄原子を自由に酸化できるようにし、それによって全身性抗酸化剤が得られると考えている。この抗酸化剤の特性は、特定の病原体の複製サイクルを弱めるか減衰させ、ひいては対応する還元反応によって水素プロトンが解放される。本質的に、生物学的平衡化合物は、有害な副作用を伴うことなく全身抗酸化療法および全身水素プロトン療法を実現する。ここで再度、身体は病原性の不均衡からの平衡や恒常性を確立することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
特に定義しない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者が通常理解するのと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと類似するまたは同等のいずれの方法および材料も、本発明の実施または試験で使用できるが、ここでは好ましい方法および材料を記載する。以下に言及するすべての刊行物は、参考として本明細書で援用される。
【0013】
本明細書で使用される「動物」とは、循環系を有する脊椎動物および/または動物を指す。したがって、本明細書で使用される「動物」とは、例えば、ヒト、ブタ、ヤギュウ、ウシ、イヌ、ネコ、ニワトリ、七面鳥を指すが、これらに限定されない。
【0014】
地球全体で人口はこの60年の間に4倍以上に増加しており、1950年代から今日までの間に約15億人から65億人へと拡大している。周知の通り、現代の医学の効果が高まっていることは言うまでもない。
【0015】
しかし、この十数年の間に、本出願に既述したような障害が大幅に増加している。このような障害に対する一般的な手法を考察すると、現代の治療に共通したテーマが認められる。このテーマは、障害の原因となる病原体を死滅させることに基づいており、例えば、抗生物質は悪性の細菌を死滅させることを目的としており、抗ウイルス剤は悪性のウイルスを死滅させることを目的としており、ワクチンはウイルスや細菌を死滅させることにより調製され、化学療法や放射線療法は癌細胞を死滅させることを目的としている。さらに、今日の共通する器質性障害の医学的手法は、前記器官の機能を再生する方法でなく、むしろ前記器官の機能を停止させて前記器官の機能を置換する方法となっていた。例えば、現在、糖尿病患者は、インスリン療法を行いながら、膵臓の機能を維持している一方で、治療しない膵臓は機能を停止させている。
【0016】
本明細書には、死滅させる方法ではなく、ヒトを含めたすべての動物における病原性の不均衡または障害から均衡または平衡を回復させる方法が記載されている。本発明者等の広範囲にわたる発見から、多くの医学的障害および感染性疾患の予防および治療に共通する関連性を本発明者等が見出したことは明らかである。この共通する関連性は、本明細書において、生物学的平衡化合物による病原体の減衰として定義する。
【0017】
本明細書で考察する「生物学的平衡化合物」とは、病原体または障害により引き起こされる不均衡からの正常な平衡または恒常性を回復することが可能な化合物または組成物を指す。好ましい実施形態において、本明細書で考察する生物学的平衡化合物は、以下に示すようなミクロンサイズの硫黄を含む。ここで、本明細書で使用される「ミクロンサイズの硫黄」とは、300ミクロン未満(例えば、75ミクロン未満もしくは74ミクロン以下)の硫黄粒子を指し、さらに好ましくは、粒子の95〜98%が44ミクロン以下または45ミクロン未満である、製剤を指すことに留意する。以下で考察する通り、このような製剤は市販されている。当業者が理解し、以下に考察するように、特定の理論に束縛されることを望むわけではないが、粒子サイズは効果に直接影響を及ぼし、そのためより小さな粒子の方がより効果が高いと考えられている。当業者が理解するように、「300ミクロン」とは、硫黄粒子のサイズを指すが、粒子が完全に球形でない場合もあることから、最も厳密な意味での「直径」が必ずしも適切な用語というわけでないが、本明細書では例示のために使用する場合がある。
【0018】
好ましい実施形態において、生物学的平衡化合物は、上に定義したような74ミクロン以下の硫黄粒子と触媒(例えば、リグニンスルホン酸ナトリウム)との混合物を含む。
【0019】
本発明のさらなる実施形態においては、医薬組成物を調製する方法であって、有効量の300ミクロン以下(例えば、74ミクロン以下、または少なくとも74ミクロン、または75ミクロン未満)の硫黄粒子と適切な賦形剤とを混合する手順を含む、方法が提供される。賦形剤はリグニンスルホン酸ナトリウムである場合がある。以下で考察する医薬組成物は、以下で考察する通り、経口投与または注射投与用として配合される場合がある。当業者が理解するように、「有効量」は、当然ながら、以下で考察する通り、動物の年齢、体重および健康状態、ならびに病原体または障害を含むがこれらに限定されない多くの因子により異なる。特定条件下における適切な有効量の具体例については本明細書に記載することに留意する。
【0020】
以下で考察する通り、本明細書で定義する有効量のミクロンサイズの硫黄を含む医薬組成物(生物学的平衡組成物)の投与は、多くの目的と多くの有利な転帰を有する。一般的に、この投与は、個体の全身の健康状態を改善する方法であって、上述のミクロンサイズの硫黄を含む有効量の医薬組成物を投与する手順を含む、方法と見なすことができる。本明細書で使用される「医薬組成物」とは、治療または医療の目的で投与される組成物を指すが、食料配給の一部としてまたは以下で考察するビタミン剤や栄養補助食品として投与される組成物、すなわち以下に記載の通り、経口的、静脈内、腹腔内(IP)、鼻腔内(IN)などのいずれかにより動物に投与するように調整される組成物も指す。
【0021】
以下で考察する通り、「全身の健康状態」は、いくつかの方法(例えば、飼養効率、全身の快適さ、または病原体、病的状態、疾患または障害に伴う症状の治療、改善または緩和)により測定することができる。例としては、A)肺および気道の障害、B)骨、関節および筋肉の障害、C)消化器障害、D)ホルモン障害、E)癌、F)自己免疫障害、G)ウイルス感染症、H)皮膚障害、そして最後にI)性障害および繁殖障害が含まれるが、これらに限定されない。一般的に「病的状態」は、病原体が外来性(ウイルスまたは微生物)であるかにかかわらず機能の異常が発生するいずれかの状態であると考えられる。以下で考察する通り、本明細書に記載の医薬組成物は、これらの病態の治療に使用される場合がある。
【0022】
一般的な家畜業においては、ウイルス性感染症および/または細菌性感染症により多大な損失を被っている。疾患を患った家畜では一般的に飼養成績や繁殖成績が低下することから、これらの損失の影響は死亡率を超える範囲にまで及ぶことに留意する必要がある。同様に、クリプトスポリジウム、疥癬、シラミ、ダニ、寄生虫などの単細胞および多細胞の寄生虫や、腐蹄症などの真菌症もまた、全身の健康状態や、飼養成績および繁殖成績に悪影響を及ぼす。
【0023】
本明細書には、動物の全身の健康状態を改善する方法であって、本明細書に記載の有効量の生物学的平衡化合物を、このような治療を必要とする動物に投与する手順を含む、方法が記載されている。他の実施形態においては、動物の体重増加または飼養成績を向上させる方法、このような治療を必要とする動物における病原性感染症を治療または予防または改善する方法、動物の受胎率、出生率、乳生産量、および以下に考察する有効量の生物学的平衡化合物または組成物の投与に関連するその他の利点を向上させる方法が提供される。以下で考察する「飼養成績」、「繁殖生成期」などは、実施例に示す通り、治療群と未治療群とを比較することにより測定することができる。
【0024】
本明細書で使用される「生物学的平衡化合物」とは、粒子サイズが300ミクロン未満の粒子まで低下した天然の元素状態の(土壌で形成された)硫黄を指す。いくつかの実施形態においては、リグニンスルホン酸ナトリウム(略語SLS)として知られる天然の触媒化合物(樹皮由来)と呼ばれるものが添加される。特定の理論または仮説に束縛されることを望むわけではないが、SLSは触媒として作用し、それによって硫黄原子が原子の環構造から開放され、重要な全身抗酸化剤として機能するとの仮説を立てている。この結果、硫黄酸化により生じたこれらの硫酸塩(例えば、硫酸カルシウム、硫酸ナトリウム)は、正常な排尿や排便により排出される。この全身の酸化反応とともに、対応する全身の還元反応が生じ、ひいてはこの全身の還元反応により全身で水素プロトンが産生される。生物学的平衡療法の目的は、全身における酸素および水素プロトンの両基本元素の正常な均衡または平衡状態を回復することである。このようにして、前述の感染症、疾患および障害は効果的に予防および治療される。特定の理論に束縛されることを望むわけではないが、本質的に生物学的平衡療法は、病原体から酸素を除去し、水素プロトン濃度を上昇させることによって、病原体の複製に適さない環境を作り出し、それによって病原体の自己免疫、自己充足および自己拒絶を達成する。
【0025】
したがって、本明細書で使用される生物学的平衡化合物とは、天然の成分および/または化合物であって、適切に投与された場合に、病原性の不均衡や障害から正常な平衡や恒常性を回復することができる、成分および/または化合物である。本明細書に記載の特定の生物学的平衡化合物は、酸化した利用可能な硫黄原子により病原体から酸素を除去することによって、自らの役割を果たす。一方で、対応する還元反応により水素プロトンを増加させ、正常化することによって、病原体の複製サイクルが完全に減衰する。
【0026】
ミクロンサイズの硫黄を製造する方法は、当該技術分野で周知である。このような方法の1つは、種々のサイズのミクロンサイズ硫黄の調製方法を開示する、参考として本明細書で援用される米国特許第5788896号に記載されている。特に、前記特許は、ミクロンサイズの硫黄を製造する方法であって、大部分が45ミクロン未満のサイズである硫黄粒子が調製される、方法を教示している。また、より小さなサイズの粒子の生成を最も効果的にする条件も前記特許に記載されていることに留意する。さらに、本明細書で考察する通り、その他の方法もミクロンサイズまたはナノサイズの硫黄粒子の製造ために使用または開発される場合があり、本発明の適用範囲に含まれることにも留意する。
【0027】
上で考察した通り、ミクロンサイズの硫黄は、100%が74ミクロン以下であり、98%が44ミクロン以下であるような粒子を製造する市販の製品から得られる場合もある。この製品は、触媒として作用して、環構造から硫黄原子を除去し、それによって全身の水素プロトン生成のために対応する還元により全身の酸化に利用可能な硫黄原子を製造する、約5%〜16%のリグニンスルホン酸ナトリウムも含む。他の実施形態において、リグニンスルホン酸の他の形態(例えば、カルシウム塩)が添加される場合もあれば、あるいは他の適切な薬剤が添加される場合もある。但し、商業的に使用されるプロセスでは、5ミクロンのサイズの粒子を生成できる(この重要性は以下で詳述する)ことに留意する。また、現在のところ、前記プロセスにより製造される製品は粒状形態であり、200メッシュサイズ以下の微粒子が除去されていることにも留意する。しかし、ミクロンサイズの硫黄は必ずしも粒子形態でなければならないわけではない。あるいは、顆粒を粉末形態に粉砕することも可能であると考えられる。本明細書で考察し、当業者に明らかとなるように、いくつかの実施形態においては、粉末形態が好ましい投与方法である。顆粒形態の簡単な粉砕により、粉末形態を生成することができる。
【0028】
本明細書に記載の通り、いくつかの実施形態において、有効量の生物学的平衡化合物は、経口的または注射のいずれかの方法により、このような治療を必要とする動物に投与される。当業者が理解するように、「有効量」の生物学的平衡化合物は、所望の結果を達成するのに十分な量である。本明細書で考察する通り、ほとんどの実施形態において、所望の結果とは、病原体(例えば、真菌、癌細胞、ウイルスおよび/または細菌)の減衰である。但し、「有効量」は、動物の種類、年齢、体重、全身の健康状態および投与様式により異なる場合があることに留意する。さらに、病原体の減衰に有効な量は、病原体に極めて特異的な場合がある。例えば、クリプトスポリジウムなどの(物理的に大きくより複雑な)単細胞寄生虫は、ほとんどの細菌またはウイルス性感染症よりも効果が著しく高い投与レベルを必要とする。
【0029】
本明細書で使用される「病原体の減衰」とは、病原体の複製率または繁殖率の減速または低下を指す。特定の仮説に束縛されることを望むわけではないが、本発明者は、このような治療を必要とする動物に有効量の生物学的平衡化合物を投与することで、病原体に適さない環境が作り出され、ひいては宿主動物における病原体の減衰がもたらされると考えている。当業者が理解するように、病原体の減衰によって、宿主動物の防御能(例えば、宿主の免疫系)がより迅速かつ効果的に病原体を消失または制御することが可能となる。当業者が理解するように、病原体に対する宿主の自然防御能の活性化は、炎症の増大による体温の上昇を伴うことが多く、これによって、例えば、栄養成績や消化成績、ならびに繁殖成績(例えば、排卵および射精量)などがあるがこれらに限定されない、その他多くの側面に多くの悪影響が及ぶ可能性がある。同様に、病原性感染症は、たとえ病原性感染症の症状が顕著でなく、検出可能なものでないとしても、多くの生理的能力を低下させる可能性がある。そのため病原体の減衰は、免疫系などの宿主の防御能の活性化を短縮し、ひいては、以下に考察し、実施例で実証する通り、繁殖成績などの生理的能力を向上させることになる。
【0030】
当業者が理解するように、本明細書で使用される(すべての文法形式の)「治療」では、必ずしもこのような治療を必要とする動物が目に見える症状を有することが必要なわけではない。例えば、動物は、肺炎を引き起こす微生物病原体に感染する場合があるが、有効量の生物学的平衡化合物の投与により、微生物病原体は、目に見える症状を確認できるレベルまで宿主内で達していないものの、深部体温が若干上昇し、炎症を生じる場合がある。したがって、上で考察した通り、これらの治療の効果は、有効量の生物学的平衡化合物を投与していないか、模造品を投与しているか、対照治療を受けている同一の年齢、性別および体重の動物に比べると、生理的能力が向上もしくは改善するか、または繁殖成績が向上することによって認められる場合がある。本明細書で考察する通り、飼養成績の向上は、体重増加の割合、ならびに当該技術分野で既知の他のパラメータによって測定することができる。同様に、繁殖成績は、例えば、出産サイズ、射精量、受胎頻度などによって測定することができる。また、「全身の健康状態の向上」は、より主観的な用語であると見なされる場合があるものの、これもまた、有効量の生物学的平衡化合物を投与した動物の外観を、生物学的平衡化合物を投与していない同一の年齢、性別および体重の対照動物と比較することによって評価できることに留意する。
【0031】
例えば、いくつかの実施形態において、治療を必要とする動物には、有効量の生物学的平衡化合物が、栄養療法および/または補助療法の一部として投与される。これらの実施形態において、生物学的平衡化合物は、栄養配給の一部として動物に経口投与されるか、飲用水に溶解または懸濁されるか、経口投与用粉末またはカプセルとしてミネラルサプリメントと混合されるか、あるいは筋肉内または静脈内または皮下に注射される。当業者が理解するように、ヒトが摂取する粉末、注射液およびカプセルを製造する方法は、当該技術分野で周知であり、本発明の適用範囲に含まれる。
【0032】
上で考察した通り、好ましい実施形態において、生物学的平衡化合物は、硫黄粒子の100%が74ミクロン以下であり、98%または95%が44ミクロン以下である、市販の製品である。前述の通り、触媒として作用するSLSは、5〜16%の割合で含有される。
【0033】
いくつかの実施形態においては、粒子の少なくとも95%が44ミクロン以下である生物学的平衡化合物が、このような治療を必要とする動物に、0.5〜1.5%の栄養配給(W/W)として、または飲用水(W/V)中で投与される。病原体が多く有毒なほど、病原性の不均衡からの平衡を回復するのに効果的な病原体の減衰を達成するために、より高い投与レベルが必要となるという、病原体の特異性がある。
【0034】
他の実施形態において、このような治療を必要とする動物には、体重100ポンド当たり5.0mL〜10mLの生物学的平衡化合物の飽和溶液が投与される。飽和溶液は、飽和に達するまで生物学的平衡化合物を体温の温かい蒸留水に添加することにより調製される。例えば、8オンスの温かい蒸留水には、2オンスの生物学的平衡化合物が添加される。当業者が理解するように、他の実施形態においては、より多くの希釈溶液が投与される場合もある。但し、希釈溶液の量は、飼養成績の向上、繁殖成績の向上、および前記動物に毒性を及ぼすことのない全身の健康状態の向上、の少なくとも1つを達成するのに十分な量であれば、生物学的平衡化合物の有効量とされることに留意する。特定の理論に束縛されることを望むわけではないが、本発明者は、ミクロンサイズの硫黄が、未処理の硫黄と異なり、動物による硫黄原子の全身吸収を促進するかなりの表面積を有すると考えている。
【0035】
当業者が理解するように、より小さな平均サイズを有するミクロンサイズの硫黄ほど、より大きな表面積を有し、さらに容易に吸収されることになる。したがって、上述の価値は特定のミクロンサイズの硫黄に当てはまるものであり、より小さな硫黄粒子はより少量使用される場合があることに留意する必要がある。実際に、本発明者が発見した通り、大きなサイズ(すなわち、300ミクロン)の硫黄粒子に比べると、より小さなサイズ(すなわち、95%が44ミクロン以下)の硫黄粒子の方が、前述の障害の予防および治療にはるかに効果的であった。論理的には、ナノサイズの硫黄粒子までのより小さなミクロンサイズの硫黄粒子が、前述の感染症および障害の予防および治療により効果的な可能性があると考えられる。したがって、本明細書で使用される「有効量のミクロンサイズの硫黄」とは、生物学的平衡化合物または類似のサイズの生成物についての特定の値を指すだけでなく、その生物学的等価物、すなわち、低濃度または少量で使用される場合があり、本発明の適用範囲に含まれる、より小さな硫黄粒子も指す。
【0036】
その他に以下の2つの一般的な医学的所見について言及する必要がある。
【0037】
第一に、外部環境に対するすべての動物の正常な開口部または孔(すなわち、口、耳、鼻、目、肛門、膣、および陰茎の開口部)は、身体内部(すなわち、血液のpH)よりも高い水素プロトン濃度(低いpH)を有している。実際に、病原体は宿主の身体に侵入するため、pHが低いほど病原体を減衰できることが明らかとなっている。第二に、人口ワクチンのほとんどの免疫化は、実際のところ、病原体(例えば、ウイルスまたは細菌)の濃度または量を単に減衰させただけである。
【0038】
好ましい実施形態においては、病原性感染症を治療または予防または改善する方法であって、有効量の生物学的平衡化合物を、このような治療を必要とする動物に投与する手順を含む、方法が提供される。したがって、このような治療を必要とする動物への有効量の生物学的平衡化合物の投与は、以下の少なくとも1つの効果を有する:すなわち、本明細書で考察し、当該技術分野で既知の通り、肺炎に伴う症状(発熱、炎症、呼吸困難など)の重症度の低下または症状の除去、下痢に伴う症状の重症度の低下または症状の除去、真菌性、ウイルス性および/または細菌性感染症に伴う症状の重症度の低下または症状の除去。
【0039】
当業者が理解するように、微生物感染症には、細菌性感染症およびウイルス感染症が含まれる。微生物感染症を引き起こす微生物の例には、大腸菌、サルモネラ菌、カンピロバクター、鳥インフルエンザウイルス、PCV2、マイコプラズマ、PRRS、PIRAL、IBR、連鎖球菌、および真菌症が含まれるが、これらに限定されない。当業者が理解するように、この一覧は、単に例示を目的としたものであり、決して網羅的なものでなく、その他多くの適切な微生物病原体が当業者に周知である。
【0040】
別の実施形態においては、飼養成績を向上させる方法であって、有効量の生物学的平衡化合物を、このような治療を必要とする動物に投与する手順を含む、方法が提供される。当業者が理解するように、有効量の生物学的平衡化合物の投与によって、体重増加率の向上、食料消費量の向上などの少なくとも1つが達成される。
【0041】
好ましい実施形態においては、繁殖成績を向上させる方法であって、有効量の生物学的平衡化合物を、このような治療を必要とする動物に投与する手順を含む、方法が提供される。当業者が理解するように、有効量の生物学的平衡化合物の投与によって、産子数の増加、精子量の増加などの少なくとも1つが達成される。
【0042】
以下では本発明を実施例により説明する。但し、これらの実施例は例示を目的としたものであり、本発明は必ずしもこれらの実施例により限定されるわけではないことを理解するものとする。
【実施例】
【0043】
(実施例1) 生物学的平衡化合物のブタへの投与
体重約65ポンドの肥育用家畜を購入し、175ポンドの体重まで給餌した。給餌時、ならびにストレスおよび/または疾患の発症時には、抗ウイルスワクチン、抗寄生虫治療薬、および抗生物質を投与した。これまでのところ、新たに仕入れた肥育用家畜は以下の健康上の問題を煩っていた:肺炎による死亡を招くウイルス性、寄生虫性および細菌性感染症、下痢による死亡(脱水)を招く細菌性感染症、ならびに動物の全身の健康状態および飼養成績を低下させる寄生虫。ウイルス性および細菌性感染症は、通常、到着後10日に開始し、生存している場合は到着後30日まで持続する。
【0044】
例えば、生物学的平衡化合物の投与前に、2,560頭のブタを購入した。これらの内の226頭は肺炎で死亡し、256頭は下痢で死亡し、53頭は生育せず、目標体重の175ポンドに達する前に、消耗性疾患(寄生虫およびそれらの目に見える徴候である疥癬による)により死亡した。当業者が理解するように、これは約21%の死亡率を示す。さらに、疾患に罹患した動物を治療するには、相当な家畜の維持を継続する必要があり、ひいては、残りの動物が目標体重の175ポンドに達するのに約6ヶ月を要することから、飼養成績に影響が及ぶ。
【0045】
次いで、2,340頭のブタの群れに、有効量の生物学的平衡化合物(例えば、食物および/または飲用水中の0.5%〜1.5%の生物学的平衡化合物)を投与した。以下で考察する通り、依然として肺炎または下痢による症状を発現していた動物には、有効量の生物学的平衡化合物を投与した。2,340頭の内、10頭は肺炎で死亡し、8頭は下痢で死亡し、1頭は消耗性障害で死亡し、死亡率は1%未満(0.7%)である。さらに、約3ヶ月半で目標体重の175ポンドに達し、このことは、目標体重を達成するのに必要となる食物と時間が少ないことから、飼養成績と効果が向上したことを明らかに示している。
【0046】
有効量のミクロンサイズの硫黄の投与は、死亡率が劇的に減少させ(21%から1%未満)、飼養成績を大幅に向上させた(175ポンドに達するまでに以前は約180日であったのに対して約110日)ことから、顕著な効果を及ぼした。このことは、損失が少なく、飼育時間が大幅に短縮されることから、作業の効率および収益性が大幅に改善されたことを示している。
【0047】
(実施例2) ブタの繁殖成績
別の実験では、約250頭のDurrockギルトからなる分娩において、前述の通り、有効量の生物学的平衡化合物を投与した。生物学的平衡化合物の含有割合は、完全試料の0.75%であった。乳飲みブタ用の飼育箱の穏やかな交換パイプライン中の溶液にも生物学的平衡化合物を、1ガロン当たりテーブルスプーン2杯の割合で含ませた。
【0048】
生物学的平衡化合物の治療計画を開始した後、人工授精のための精子射精量が50〜100%増加したことが明らかになった。さらに、週1回の繁殖を基準とした人工授精の成功率が、平均57%(8/14)から93%(13/14)に上昇した。一腹当たりの出生数も、一腹当たり平均7.5〜8頭から一腹当たり約10頭まで上昇した。離乳時体重も、平均8〜10ポンドから13〜14ポンドに増加した。
【0049】
さらに、生物学的平衡化合物の投与前には、12頭の内の6頭のブタが肺炎で死亡し、90頭のギルトが死亡したのに対して、上で考察したような生物学的平衡化合物の投与後には、オスブタもギルトも死亡しなかった。
【0050】
明らかな通り、有効量の生物学的平衡化合物の投与によって、より多くの子ブタが出生し(人工授精の成功8回×一腹当たりの子ブタ8頭=子ブタ64頭に対し、人工授精の成功13回×一腹当たりの子ブタ10頭=子ブタ130頭)、離乳時体重の増加により証明されるように、飼養成績が向上した。したがって、同じ期間でより多くの子ブタを育てることができる。
【0051】
但し、生物学的平衡化合物の投与開始前には、前述の分娩では、肺炎マイコプラズマおよびレプト/パルボ病が確認されたことに留意する。また、抗生物質およびウイルスワクチンは効果がなかったことにも留意する。
【0052】
(実施例3) IM注射
この実施例では、肺炎に罹患するメスウシに、少なくとも95%の粒子が44ミクロン以下であり、前述の触媒SLSを含む生物学的平衡化合物の飽和溶液を、体重100ポンド当たり8mL投与した。
【0053】
具体的には、投与前に、動物は体温が上昇し(42℃)、呼吸(あえぎ)、脱水、脆弱性に苦しみ、意識や反応がなかった。実際に、前記ウシの体温は25分間にわたり42℃が記録され、ウシの目を軽くたたいても、反射運動がなく、まぶたを閉じることもなかった。
【0054】
前述の有効量の生物学的平衡化合物を頸筋内に注射によって投与した後、1時間以内に動物は立ち上がり、反応し、症状の重症度は軽減され、体温は38℃まで低下した。同じ実験を14回(9回はブタで、5回はウシで)繰り返したが、すべてのケースで同様の結果が得られたことに留意する。14回のうち3回では、48時間以内に症状が再発し、2回目のIM投与を実施した。この2回目の治療後、症状は消失し、さらなる治療の必要はなかった。
【0055】
(実施例4) ウシの治療
2005年に、大規模放牧により264頭のウシが生まれた。この年の間に、7頭のウシが下痢で死亡し、6頭が肺炎で死亡し、9頭が両方の疾患により死亡した。全体では264頭の内の22頭のウシが死亡し、死亡率は8.3%であった。
【0056】
2006年には、上で考察した通り、ミネラルが約18〜20%の生物学的平衡化合物となるように、ウシに供給するミネラルサプリメントを変更した。その後、出生した245頭のウシの内、わずか2頭のみが暴風による肉体的な障害により死亡し、微生物感染症による死亡はなかった。
【0057】
(実施例5) ヒツジの治療
2006年に、子ヒツジを出生する120頭のメスヒツジは、以下の問題を被っていた。前記ヒツジは、腐蹄症、下痢、肺炎、関節炎を患っており、全身の健康状態は悪く、メスヒツジが出生した186頭の内の23頭が死亡した。最も考慮すべき重要な点は、25%以上(すなわちメスヒツジ43頭)が、2本以上の脚の関節に慢性的な関節炎を患っていた点である。これにより治療や取扱いに多大な費用が生じた。2006年に使用した治療は、抗生物質、イボメック、6種混合ワクチン、セレン、およびビタミンEであった。2007年には、3月にメスヒツジが120頭の子ヒツジを出生したが、子ヒツジに下痢や肺炎は見られなかった。メスヒツジにも、関節炎の問題や、妊娠病、肺炎、またはマイコプラズマによる咳が見られず、わずかな腐蹄病が見られ、寒さによるストレスがわずかに見られただけであった。2007年のヒツジ全体の健康状態は優れており、大幅に向上したと考えられた。子ヒツジの死亡率は、2006年の10%から5%未満(すなわち、子ヒツジ5頭)に低下した。2007年で使用した治療は、食物中に1トン当たり50ポンドの生物学的平衡化合物を適切に投与したのみであった。
【0058】
(実施例6) ブタのPCV2治療
PCV2とは、ブタにおけるサーコウイルスによる消耗性障害である。ブタの分娩を終えた一腹のブタの子を使用して対照試験を実施した。60頭の離乳を終えたブタに生物学的平衡化合物を投与し、比較として120頭の離乳を終えたブタにウイルスワクチンを接種した。4週間後、生物学的平衡化合物の投与群では死亡が見られず、ワクチン接種群では2頭が死亡した。通常は、治療を行わないと、このウイルスに感染した動物の20%以上が死亡することに留意する。農場経営者により導き出された所見および結論は、ワクチン接種計画よりも生物学的平衡化合物が支持された。経営者によれば、生物学的平衡化合物の投与により、成長速度と全身の健康状態が明らかに良好であるとのことであった。
【0059】
(実施例7) 痩せこけた新生ブタ
分娩を終えた500頭の子ブタでは、26頭の出産において25頭の痩せこけた子ブタが記録された。生物学的平衡化合物の適切な投与後には、26頭の出産において痩せこけた子ブタはわずか5〜6頭であった。経営者の談話によると、「これは非常に大きい」とのことである。投与レベルは、全食料配給1000kg当たり7.5kgであった。
【0060】
(実施例8) ヒトの肺および呼吸器障害
10代で脾臓を切除したために免疫不全を患う50歳のヒト男性が慢性肺炎を患っていた。この男性は、39歳から47歳まで、静注電解質補水と抗生物質療法の大量投与を受けるために、平均で年に2.3回通院することになった。この男性が、1日当たり生物学的平衡化合物650mgのカプセルを経口投与で摂取し始めたところ、再発が見られていない。
【0061】
(実施例9) ヒトの骨関節および筋障害
72歳の高齢の女性が以前に診断を受け、変形性関節症、リウマチ様関節炎および痛風および線維筋痛を患っていた。女性は、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)であるCelebrexの治療を受けていた。
【0062】
治療の2年後、女性の手および足指関節に小結節が発生し、付随する骨が湾曲してしまった。女性は両手首に固定器を付け、歩行が困難となり、腕や脚に締め付けるような痛みを報告し続けている。
【0063】
さらに、女性は腎不全を発症していた。2006年7月に、女性は自主的にCelebrex療法を中止した。2007年2月までに、女性の手と脚の両方の小結節は明らかに40%小さくなり、女性は前と同じように完全に動けるようになった。疼痛レベルは2〜4(0が無痛、10が耐えられない痛み)であると女性は報告した。
【0064】
さらに、2007年2月には、女性の腎不全が、臨床血液および尿検査による判定で20%から75%に改善されたと、主治医は女性に報告した。この72歳の女性の体重は約170ポンドであり、女性の生物学的平衡化合物の1日の投与量は、1日当たり650mgの経口カプセル3回であった。
【0065】
(実施例10) 消化器障害
消化性潰瘍を患う62歳の女性が、胃潰瘍のコロニーを治療するために3回の手術を受けた。これらの手術は、広範な種々の抗生物質による治療と同じく失敗であった。
【0066】
出血性の消化性潰瘍のコロニーにより、女性は毎月の輸血を要した。体重195ポンドのこの女性は、2006年9月15日に、生物学的平衡化合物650mgのカプセルの1日4回の経口投与を開始した。2007年1月15日から2007年6月4日までに、消化性潰瘍の出血は完全に止まり、女性は輸血の必要がなくなった。この間に女性は、消化性潰瘍の他の治療を行わなかった。さらに、女性は不快感も痛みも報告せず、内視鏡試験でも、胃やその他の胃腸管の内面の潰瘍が報告されなかった。
【0067】
(実施例11) ヒトのホルモン障害
1型糖尿病を患う47歳の男性は、3ヶ月の平均血中グルコール濃度が10.5mg/mL(ミリモル/L)であった。この患者は、多尿症、多飲症、過剰な空腹、視力障害、眠気、吐き気、運動中の耐久力の低下を報告していた。呼吸は深く、速くなることが多く、息のケトンの匂いはマニキュアの除光液に似ていた。この患者は、インスリン療法を受けている間に男性の父親が同じ疾患で死亡したのを目の当たりにしていた。男性は自ら、絶対に必要でない限りは、インスリン療法を受けないことに決めた。2007年8月1日現在、男性は、1型糖尿病に変化が見られなければ、2007年11月1日にインスリン療法を開始するということで主治医と最終的な合意に至った。2007年8月1日に男性は、1日650mgの生物学的平衡化合物の経口カプセルを飲み始めた。2007年11月1日の週に再び主治医に報告した時には、男性の最近3ヶ月の平均血中グルコース血が8.2mg/dL(ミリモル/L)に低下していたことに、主治医は驚きを示した。また、男性は、前記1型糖尿病の身体症状の緩和も報告した。その後、男性の3ヶ月間の平均血中グルコース値は6.0mg/dL(ミリモル/L)まで低下した。これは糖尿病の状態でないと見なされる。さらに、男性は数年ぶりに気分が良いと自ら報告し、上述の1型糖尿病の症状のいずれも見られなかった。すべてのベクトルが非糖尿病の状態に維持され、この患者は、10年間以上の間で最も気分が良いと報告している。
【0068】
また、54歳の男性が、2006年の秋に2型糖尿病であると診断され、血中グルコース濃度は1ヶ月平均で8.4であった。そこで、前記生物学的平衡化合物を1日600mg90日間摂取した後、再度血液試料を採取したところ、血中グルコース濃度は5.1に低下した。この男性は同時にコレステロール値も3.48から3.00に低下した。
【0069】
(実施例12) ヒトの癌
2004年の夏に、71歳の男性が、胃腸管癌(GI癌)と診断された。2004年の夏から2006年の夏まで、この男性は化学療法を受けたが、失敗に終わった。主治医の癌専門医は放射線療法を薦めたが、この患者は放射線療法に自ら反対の意を示した。コンピュータ断層撮影法(CT)や超音波によれば、あらゆる包括的な目的における病状回復の可能性はゼロであると、男性は主治医に言われた。男性は、所定の鎮痛剤を多量に服用し続け、自宅で死ぬことを決意した。2006年7月16日に、1日3回650mgの生物学的平衡化合物のカプセルの投与を開始したところ、この患者は、24時間以内に即座に腹痛が著しく軽減されたと報告した。
【0070】
さらに3日目に、男性は、この2年間で経験したことのなかった完全な排便を経験した。2週間以内に、男性は鎮痛剤の服用を中止することができ、再び家族と生活を共にするようになった。2007年3月に、男性はCTと超音波を受けたところ、主治医である癌専門医は、GI癌が有意に消失しているとの報告を受け、仰天した。2007年6月4日の時点で、この71歳の男性は、家族とともに幸福で健康な人生を送っていると報告されている。
【0071】
(実施例13) ヒトの自己免疫障害
数年間狼瘡を患っていた55歳の男性が、2006年9月に1日650mgの前記生物学的平衡化合物の経口摂取を開始した。45日後に血液検査を行ったところ、患者の尿中の狼瘡尿に伴う問題は解消されていると判定された。この患者の投薬および食事における唯一の変更は、食物に前記生物学的平衡化合物を加えただけであった。前記生物学的平衡化合物を毎日摂取してから、今日まで患者は、病気の割には異常なほど良好な健康状態を享受している。
【0072】
(実施例14) ヒトのウイルス感染症
67歳の男性が単純ヘルペスウイルス2型(HSV‐2)を患っていた。HSV‐2は陰部ヘルペスの原因となる。30年以上にわたり、この男性は、皮膚や粘膜内層の小さな水疱を発症するHSV‐2感染症を患っていた。また30年以上にわたり、水疱は10〜15日間持続した。この陰部HSV‐2感染症は重症であり、生殖器部に複数の痛みを伴う水疱が長期間発生していた。このウイルスは、発熱や、排尿時の焼灼痛、脚の付け根のひどい不快感や痒みを引き起こした。30年間の抗ウイルス療法ではHSV‐2感染症を根絶させることができなかったと結論付けられた。しかし、1日3回650mgの前記生物学的平衡化合物の経口カプセルを投与したところ、治療を続けるにつれて、不快感が軽減され、発症期間が10〜15日から1〜2日に短縮された。さらに、発症は、皮膚潰瘍を伴わない生殖器部の皮膚の赤みだけであった。
【0073】
(実施例15) ヒトの皮膚病
身体の3分の2に乾癬を患う60歳の男性が、何年にもわたり障害年金を受けていた。1日約1gの前記生物学的平衡化合物を数週間投与したところ、男性は病態の症状が緩和され始めた。
【0074】
同じ割合で前記生物学的平衡化合物の投与を1年間続けたところ、腕に少量が残った以外は、ほとんどすべての乾癬による損傷部位が治癒した。全体として男性が消耗性障害からの良好に回復していることが予想される。
【0075】
(実施例16) 家禽の皮膚病
養鶏業者は、7,000匹の若鶏に前記生物学的平衡化合物を1%の割合で42日間投与した。本試験の目的は、飼料を与え、同じ農場から同時に販売される他の群れに比べて、この群れのセルライトの発生率が減少するかどうかを確認することであった。屠殺後、対照群に比べると、セルライトが67%減少したことが判明した。
【0076】
(実施例17) ヒトの性障害および繁殖障害
ある女性が27歳で早期に閉経を迎えた。この女性は甲状腺機能低下症(橋本甲状腺炎)を患っていた。甲状腺機能低下症とは、甲状腺の活性の低下である。女性は、甲状腺ホルモン補充療法であるエルトキシンの治療を受けた。
【0077】
通常、閉経は、卵巣の周期的機能、すなわち月経期の永久的な停止である。この某女性は、閉経の16年後に前記生物学的平衡化合物の適切な投与を受けたところ、正常なサイクルを開始した。2006年11月に43歳で、女性は650mgの生物学的平衡化合物のカプセルの4回の経口摂取を開始した。2006年11月から数ヶ月後に、正常な卵巣の周期的機能、すなわち月経期が直ちに開始した。2007年6月の時点で、正常な性周期および性機能が継続している。また、すでにこの女性は、情緒の変化や、鬱、興奮、頭痛、不眠および疲労といった閉経の症状を患っていない。
【0078】
以上において本発明の好ましい実施形態を説明してきたが、これらの実施形態では種々の改変が為される場合があり、添付の特許請求の範囲が、本発明の趣旨および適用範囲に含まれる場合があるこれらのすべての改変を網羅するものとして意図されることが認識され、理解されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性成分として300ミクロン未満の硫黄粒子を含む、医薬組成物。
【請求項2】
前記活性成分が、300ミクロン未満の硫黄粒子およびリグニン硫酸ナトリウムを含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記硫黄粒子が75ミクロン未満である、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記硫黄粒子の95〜98%が45ミクロン未満である、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
医薬組成物を調製する方法であって、有効量の300ミクロン未満の硫黄粒子と適切な賦形剤とを混合する手順を含む、方法。
【請求項6】
前記賦形剤がリグニン硫酸ナトリウムである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記硫黄粒子が75ミクロン未満である、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記硫黄粒子の95〜98%が45ミクロン未満である、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記医薬組成物が病原体または病的状態の治療に使用される、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
前記医薬組成物が飼養成績の向上に使用される、請求項5に記載の方法。
【請求項11】
前記医薬組成物が繁殖成績の向上に使用される、請求項5に記載の方法。

【公表番号】特表2009−538837(P2009−538837A)
【公表日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−512383(P2009−512383)
【出願日】平成19年6月4日(2007.6.4)
【国際出願番号】PCT/CA2007/000977
【国際公開番号】WO2007/140588
【国際公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(508354902)ナチュラル エムエー インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】