説明

ヒトインターフェロンガンマ(IFNγ)変異体

本発明は、改善された熱安定性をもつヒトインターフェロンガンマ変異体、前記変異体をコードする核酸、それらを含有する医薬組成物、及びウイルス感染及び癌の治療を目的とするそれらの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンパク質の改良の分野に関する。本発明は、ヒトインターフェロンガンマ(IFNγ)の改良及び改良型IFNγを含む組成物、それをコードする核酸及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
IFNγは、166個のアミノ酸のサイトカインである。分子は、膜輸送及び分泌を可能にするシグナルペプチド、開裂部位及びいわゆる成熟タンパク質に対応する部分を含む。IFNγのシグナルペプチドは、最初の23個又は最初の20個のアミノ酸残基からなるものとして、異なる著者によりさまざまな形で報告されている。実際、文献中では、成熟配列のN末端におけるアミノ酸トリプレットCys−Tyr−Cys(CYC)の存在に関して疑いがもたれている。IFNγは、2つの非共有結合したサブユニットのホモ2量体として存在する。各々のサブユニットは2つのN−グリコシル化部位(166個のアミノ酸前駆体の48及び120位)を有する。CYC残基が考慮されない場合、インビボで成熟タンパク質中にジスルフィド架橋又はシステインは全く存在しない。各単量体は、N末端に最も近い最初の4つのαヘリックス(αヘリックスA、B、C、及びD)からなるコンパクトな領域、及び2つの単離されたαヘリックスから成り、第2のIFNγ単量体と密な相互関係にあるC末端領域を伴う、6つのαヘリックスを有する。
【0003】
IFNγは、広い活性スペクトラムをもつ多面性サイトカインの原型である。実際、インターフェロン(IFN)には、ウイルス複製の阻害、細胞増殖の阻害及びアポトーシスの誘発などの活性がある。
【0004】
特に、IFNγによるマクロファージ刺激は、以下の応答を誘発する:
− 食作用及び細菌死滅の増強(直接的抗菌性及び抗腫瘍性機序);
− 抗原提示及び分離経路の刺激、マクロファージ表面におけるI型及びII型主要組織適合複合体(MHC)の発現;
− IgG生産及び補体活性化を結果としてもたらす、抗体分泌プラズマ細胞へのBリンパ球の分化;
− 細胞毒性遊離酸素ラジカル及びNOを生産させるNOシンターゼの活性化;
及び/又は
− サイトカイン及び内因性IFNの生産の増強。
IFNγは、その分化を促進し、それによって特異的免疫応答を変調させることによってTリンパ球に対して作用する。
【0005】
その広い活性スペクトラム(抗ウイルス性、抗増殖性及び免疫変調性)を理由として、IFNγは、多様なヒト疾患の治療向けの治療薬として開発されてきた。市販のIFNγ(アクティミューン(Actimmune)及びバイオガンマ(Biogamma))は、現在2つの主な治療適応すなわち慢性肉芽腫症及び特発性肺線維症において経口プレドニゾロンと組合せて使用されている。数多くの新しい二次的治療適応が現在、特に例えばC型肝炎の治療におけるペグ化IFNα/リバビリンに対する付加物としてのその免疫抑制的役割のために、異なる臨床的開発段階にある。以下のものに言及することもできる:非定型抗酸菌感染症、腎臓癌;大理石骨病;全身性強皮症;慢性B型肝炎;慢性C型肝炎;乳頭腫ウイルスに起因するものを含めた異なるウイルス感染;敗血性ショック;アレルギー性皮膚炎;関節リウマチ;卵巣癌;肝線維症;ぜんそく及びリンパ腫。
【0006】
IFNの主な副作用は用量依存性のものであり、従って投薬スケジュールと密接なつながりがある。前記副作用は累積的であり、経時的に悪化する。注射の短時間後(皮下注射の2〜8時間後)に気分のすぐれない状態、吐き気及びおう吐をひき起こし得る急性毒性に加えて、最も一般的な副作用は、インフルエンザに似た症状(悪寒、頭痛、疲労感)、注射部位における炎症反応及び肝臓アミノ基転移酵素の上昇である。最も重大な有害事象としては、うつ病、リンパ球減少症そして稀には皮下注射部位における壊死が含まれる。高用量のIFNを受けた患者は、療法の開始後に糖尿病を発症する可能性がある。さらに、IFN注射の耐容性は、時として経時的に制限され、(およそ10〜20%の患者において)中和抗体の発生という形で現われる。
【0007】
組換え型ヒトIFNγのインビボ半減期は25〜35分にすぎない。この理由から、IFNγでの効率の良い治療には、頻繁に注射をする必要がある。アクティミューン(インター・ミューン Inc(Intermune Inc.)という商品名で販売されている組換え型ヒトIFNγが1990年に使用開始された時、全てのインターフェロンの中でもIFNγの熱安定性が最も低いことからなおさらに、IFNγの半減期を改善する必要性が存在するということが明らかになった。実際に、より安定したIFNγであれば、注射間の間隔をさらに長くすることができ、このようにして患者の快適性が改善される。インビボ効果はタンパク質の比活性とその作用持続時間の組合せの結果としてもたらされることから、より安定したIFNγは同時に、より優れたインビボ効能を可能にすることになる。従って、IFNγの安定性を改善することの経済的な利点は明白である。すなわち、より安定した分子(それが変異体であること又はそれが添加剤を含有すること又は処方が改良されたことなどのいずれか理由とする)は、現在利用可能な作用物質に置き換わり得る第2世代の薬剤の生産を可能にする。さらには、より安定したIFNγがこの分子の適応症を拡げることになる、ということさえ考えられる。実際、その他の分子の中でも、IFNα及びβは、或る種の病状における基準治療であるが、IFNγはその半減期が短かすぎるために、これらの中に数えられていない。最後に、より長期的には、より安定したIFNγによって異なる投与経路(特に経口形態)向けにそれを処方できるようになることが期待できるかもしれない。
【0008】
IFNγはすでに、広範な研究の対象となっている。
【0009】
天然IFNγ変異体
複数の天然突然変異体が記述されてきた。かかる形態の1つは、N末端CYC配列を含有するものである。点突然変異を含有するヒトIFNγの2つの天然変異体、K29Q及びR160Qについても同様に記述されてきた(非特許文献1)。しかしながら、これらの多型はこれまで、いかなる効果とも関連づけされたことがなかった。
【0010】
人工的IFNγ突然変異体
特許文献1は、成熟IFNγの残基1−127、5−146及び5−127を含み、かつ3つの付加的なアミノ酸残基CYCを有するヒトIFNγの部分的配列を伴うポリペプチドについて開示している。
【0011】
特許文献2はIFNγ前駆体の残基118−157を含むペプチドフラグメント及びその使用について開示している。
【0012】
特許文献3は、S155及びS165基内の突然変異のうちの少なくとも1つ及びR160、R162及びR163基内の少なくとも1つの突然変異を含む1つの変型を含めた、CYC残基無しでIFNγの成熟形態の143個のアミノ酸を含む一連の活性IFNγ突然変異を生成し、かつ生産するための方法を提供している。前記突然変異は、特に特発性肺線維症の治療において有用であると思われる。
【0013】
IFNγのC末端領域内の異なる位置で切断された数多くの変異体が記述されてきた。特許文献4は、天然タンパク質のアミノ酸3〜124を含む部分的ヒトIFNγ配列の使用を開示している。最後の20個のアミノ酸残基のIFNγの活性及び安定性に対する重要性がこれまで議論の的となってきており、又今なお議論されている。C末端切断型ヒトIFNγ変異体は、異なるサイズ(10〜20個の切断アミノ酸残基)の切断形態を生産したスロドフスキ(Slodowski)らによって記述されてきた(非特許文献2)。
【0014】
特許文献5内では、著しく高い活性をもつIFNγが7〜11個のC末端残基を欠失させることによって生成された。その上、哺乳動物細胞によるIFNγ生産が、生産宿主細胞により分泌されたエンドプロテアーゼ及びエキソプロテアーゼによる天然の切断に起因するIFNγポリペプチドの不均一集団を結果としてもたらすことがわかっている。この生産の問題を解決するための1つの手法は、特許文献6内で開示されており、例えば分子のグリコシル化(S122T、E61N+S63T)を改善する突然変異と関連づけられる全タンパク質の最初の155個のアミノ酸を含む切断型IFNγを生産することからなる。
【0015】
特許文献7は、(トリプシン、Asp−Nエンドプロテアーゼ、キモトリプシン及びプロリンエンドペプチターゼなど)ヒト血清中に存在するプロテアーゼに対する感受性をもつ、タンパク質分解部位の存在について、IFNγを含む数多くの治療用タンパク質の配列をコンピュータ内で分析する。上述のプロテアーゼに対する保護を与えると想定されている突然変異は次のものである:L53V、L53I、K57Q、K57N、K60Q、K60N、E61Q、E61N、E61H、E62Q、E62N、E62H、K78Q、K78N、K81Q、K81N、K84Q、K84N、D85Q、D85N、D86Q。
【0016】
前記突然変異が付与するかもしれない(活性又は安定性の)改善は、これらの突然変異のいずれについてもまだ実験的に確認されていない可能性があり、従ってこれは科学的憶測のレベルにとどまっている。
【0017】
改善された熱安定性をもつIFNγ突然変異体
IFNγ(特に単量体形態)は低い安定性を有することがわかっている。このため野生型タンパク質は2つのパラメータすなわち酸性pH及び温度に対して非常に敏感になっている。これらの非生理学的条件での突然変異体の安定性の増大は生理学的条件下での安定性の類似の増大と関連づけられるであろうと予想されている。従って、測定が最も容易なパラメータである熱安定性が増大した突然変異体の探求に研究の焦点があてられてきた。
【0018】
特許文献8は、N末端の−1位に付加されたメチオニン、CYC残基なしの成熟配列の最初の132個のアミノ酸を含み、133番目のアミノ酸がグルタミンではなくロイシンであるIFNγ変異体を開示している。IFNγの10個のC末端アミノ酸の切断を伴う前記変異体は、デルタ10L又はC10Lと名付けられている。それは、野生型IFNγ(溶融温度52〜53℃)と比べて改善された生物活性とわずかに改善された熱安定性(溶融温度55℃)を有している。
【0019】
特許文献9は、一部のN及びC末端アミノ酸の突然変異と共役された最後の9個のC末端残基の切断を伴って大腸菌(E.coli)内で生産された一連のIFNγ突然変異体を開示している。前記突然変異は、全て抗ウイルス及び抗腫瘍活性を保存しながら、ジスルフィド架橋を導入し、次にこの架橋がこれらの分子に対して熱安定性特性を付与する。この特許の中では、CYC残基は、成熟タンパク質の一部であり、このトリプレット内のシステインの変異体が生産された。
野生型(完全配列) 50℃で1時間後に25%の
残留活性
突然変異M157+Delta9 50℃で1時間後に81%の
残留活性
突然変異C21S−M157C+Delta9 50℃で1時間後に86%の
残留活性
突然変異C23S−M157C+Delta9 50℃で1時間後に98%の
残留活性
突然変異C21S−C23S−M157C+Delta9 50℃で1時間後に
23%の残留活性
【0020】
特許文献10は、単量体間及び単量体内ジスルフィド架橋を作り出し、それによってIFNγホモ2量体を安定化させるべく、IFNγ構造内の特定の場所にシステイン対が取込まれている、熱安定性ヒトIFNγ変異体を開示している。IFNγの生物活性を保存する唯一のシステイン対は、同じ単量体のヘリックスA及びDを連結するE30C−S92Cであり、その他の単量体間システイン対はIFNγの生物活性を破壊する。この特許内で開示されている突然変異体は、同様に、Delta10突然変異体に対応する切断C末端をも有している。
【0021】
重合体の付加によるIFNγの修飾は、非特許文献3によって及び特許文献11及び特許文献12の中で報告されている。
【0022】
特許文献13は、(IFNγを内含する)成長ホルモン構造スーパーファミリに属するタンパク質の変異体であって、ペプチド構造の一部の可欠アミノ酸残基がシステイン残基によって置き換えられている変異体を開示している。IFNγは、前記スーパーファミリのメンバーの一例として言及されているが、IFNγの実験的修飾は開示されていない。
【0023】
特許文献14は、グリコシル化部位の挿入により修飾されかつ/又はPEGタイプの部分により誘導体化された新規の、IFNγ分子を開示している。前記分子は、改善された半減期及び/又は改善された生物学的利用能などの改善された特性を有している。
【0024】
特許文献15は、改善された安定性を有するインターフェロンのスルフォアルキルエーテルシクロデキストリン誘導体を含有する医薬組成物について記述している。
【0025】
現在、前記変異体のいずれも薬剤の形態では利用不可能である。このような理由から、改良型IFNγ、特に生理学的条件でより高い安定性をもつIFNγに対する強い需要がなおも存在している。前記生理学的条件での安定性の増大は、高温での安定性の増大により評価可能である。
【特許文献1】米国特許第4,832,959号明細書
【特許文献2】米国特許第6,120,762号明細書
【特許文献3】国際公開第2004005341号パンフレット
【特許文献4】欧州特許第0219781号明細書
【特許文献5】欧州特許第0306870号明細書
【特許文献6】米国特許第6,958,388号明細書
【特許文献7】国際公開第2004/022593号パンフレット
【特許文献8】国際公開第92/08737号パンフレット
【特許文献9】米国特許第4,898,931号明細書
【特許文献10】米国特許第6,046,304号明細書
【特許文献11】欧州特許第236987号明細書
【特許文献12】米国特許第5,109,120号明細書
【特許文献13】国際公開第99/03887号パンフレット
【特許文献14】国際公開第01/36001号パンフレット
【特許文献15】国際公開第03002152号パンフレット
【非特許文献1】ニシ(Nishi)ら、「J.Biochem.」第97号:153〜159頁、1985年
【非特許文献2】「Eur.J.Biochem.」第202号:1133〜1140頁、1991年
【非特許文献3】キタ(Kita)ら、「Drug Des.Deliv.」第6号:157〜167頁、1990年
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明は、ヒトIFNγの熱安定性変異体又はその機能的フラグメントに関する。
【0027】
特に本発明は、S63C、E62C、F159C、D99Y、E116C、L158C、S74G、R162C、S122D、L126P、N58R及びT95Vからなる群から選択された少なくとも1つの置換を含む、ヒトIFNγの熱安定性変異体又はその機能的フラグメントを含む医薬組成物において、変異体が第1の置換により導入された残基に付着した非ペプチド部分を含有していない医薬組成物に関する。一実施形態においては、変異体は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個の残基分だけ、好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個の残基分だけ、配列番号2、4及び6の配列からなる群の中から選択された配列を有するポリペプチドと異なっている。特定の実施形態においては、変異体は単一の置換を有する。もう1つの実施形態においては、変異体は、M157C、G41S及びM100Nからなる群の中から選択された少なくとも1つのその他の置換をさらに含む。特に変異体は、S63C、E62C、F159C、D99Y、E116C、L158C、S74G、R162C、S122D、M100N、L126P、N58R、T95V、M157C及びG41Sからなる群の中から選択された2つの置換の組合せを含むか又は有していてよい。好ましい実施形態では、変異体は、S63C+E62C、S63C+F159C、S63C+D99Y、S63C+E116C、S63C+L158C、S63C+S74G、S63C+R162C、S63C+S122D、S63C+M100N、S63C+L126P、S63C+N58R、S63C+T95V、S63C+M157C、S63C+G41S、E62C+F159C、E62C+D99Y、E62C+E116C、E62C+L158C、E62C+S74G、E62C+R162C、E62C+S122D、E62C+M100N、E62C+L126P、E62C+N58R、E62C+T95V、E62C+M157C、E62C+G41S、F159C+D99Y、F159C+E116C、F159C+L158C、F159C+S74G、F159C+R162C、F159C+S122D、F159C+M100N、F159C+L126P、F159C+N58R、F159C+T95V、F159C+M157C、F159C+G41S、D99Y+E116C、D99Y+L158C、D99Y+S74G、D99Y+R162C、D99Y+S122D、D99Y+M100N、D99Y+L126P、D99Y+N58R、D99Y+T95V、D99Y+M157C、D99Y+G41S、E116C+L158C、E116C+S74G、E116C+R162C、E116C+S122D、E116C+M100N、E116C+L126P、E116C+N58R、E116C+T95V、E116C+M157C、E116C+G41S、L158C+S74G、L158C+R162C、L158C+S122D、L158C+M100N、L158C+L126P、L158C+N58R、L158C+T95V、L158C+M157C、L158C+G41S、S74G+R162C、S74G+S122D、S74G+M100N、S74G+L126P、S74G+N58R、S74G+T95V、S74G+M157C、S74G+G41S、R162C+S122D、R162C+M100N、R162C+L126P、R162C+N58R、R162C+T95V、R162C+M157C、R162C+G41S、S122D+L126P、S122D+N58R、S122D+T95V、S122D+M157C、S122D+M100N、S122D+G41S、L126P+N58R、L126P+T95V、L126P+M157C、L126P+M100N、L126P+G41S、N58R+T95V、N58R+M157C、N58R+M100N、N58R+G41S、T95V+M157C、T95V+M100N、T95V+G41S、M157C+M100NおよびM157C+G41Sからなる群の中から選択された置換の組合せを含むか又は有している。より好ましい実施形態においては、変異体は、S63C+E62C、S63C+F159C、S63C+D99Y、S63C+E116C、S63C+L158C、S63C+S74G、S63C+R162C、S63C+S122D、S63C+M100N、S63C+L126P、S63C+N58R、S63C+T95V、S63C+M157C、S63C+G41Sからなる群の中から選択された置換の組合せを含むか又は有している。特に好ましい実施形態においては、変異体は組合せS63+G41Sを含むか又は有している。特定の実施形態においては、変異体はC末端において1〜11個のC末端残基の欠失を有していない。もう1つの特定の実施形態においては、変異体は1〜11個のC末端残基の欠失を有している。特定の実施形態においては、重合体分子、親油性分子及び有機誘導体化剤からなる群の中から選択された非ペプチド部分を含有していない。もう1つの特定の実施形態においては、変異体は、重合体分子、親油性分子及び有機誘導体化剤からなる群の中から選択された非ペプチド部分を含有している。問題の非ペプチド分子はより特定的には重合体分子、好ましくはポリエチレングリコールである。特定の実施形態においては、変異体はグリコシル化されている。もう1つの特定の実施形態においては、変異体はグリコシル化されていない。特定の実施形態においては、医薬組成物は、少なくとも1つのその他の作用物質をさらに含む。少なくとも1つのその他の活性作用物質は好ましくは、抗体、抗腫瘍薬又は化学療法剤、グルココルチコイド、抗ヒスタミン剤、副腎皮質ホルモン、抗アレルギー薬、ワクチン、気管支拡張剤、ステロイド、ベータアドレナリン作動薬、免疫調節剤、サイトカイン例えばインターフェロンアルファ又はベータ、インターロイキン1又は2、TNF(腫瘍壊死因子)、ヒドロキシウレア、アルキル化剤、葉酸拮抗薬、核酸代謝拮抗物質、紡鐘体毒、抗生物質、ヌクオレチド類似体、レチノイド、リポキシゲナーゼ及びシクロオキシゲナーゼ阻害剤、フマル酸及びその塩、鎮痛剤、鎮痙薬及びカルシウム拮抗薬からなる群の中から選択される。好ましい実施形態においては、少なくとも1つのその他の活性作用物質は、I型インターフェロン、特にインターフェロンアルファ又はベータである。医薬組成物は、経口、非経口(例えば皮下、筋内、静脈内又は皮内)、舌下、局所(topical)、局部(local)、気管内、鼻腔内、経皮、直腸、眼球内又は耳介内経路による投与向けに処方されていてよい。
【0028】
本発明は同様に、薬剤としての本発明による医薬組成物にも関する。
【0029】
本発明は、抗ウイルス性、抗増殖性、又は免疫調節性薬剤としての同時、逐次又は分離使用のための組合せ型調製用のもう1つの活性作用物質と本発明による医薬組成物を含む製品にも関する。好ましくは、その他の活性作用物質は、抗体、抗腫瘍薬又は化学療法剤、グルココルチコイド、抗ヒスタミン剤、副腎皮質ホルモン、抗アレルギー薬、ワクチン、気管支拡張剤、ステロイド、ベータアドレナリン作動薬、免疫調節剤、サイトカイン例えばインターフェロンアルファ又はベータ、インターロイキン1又は2、TNF(腫瘍壊死因子)、ヒドロキシウレア、アルキル化剤、葉酸拮抗薬、核酸代謝拮抗物質、紡鐘体毒、抗生物質、ヌクオレチド類似体、レチノイド、リポキシゲナーゼ及びシクロオキシゲナーゼ阻害剤、フマル酸及びその塩、鎮痛剤、鎮痙薬及びカルシウム拮抗薬からなる群の中から選択される。好ましい実施形態においては、その他の活性作用物質は、I型インターフェロン、特にインターフェロンアルファ又はベータである。2つの活性作用物質は、同じ投与経路又は2つの異なる投与経路により投与することができる。特定の実施形態においては、薬剤は、ぜん息、慢性家族性肉芽腫症、特発性肺線維症、非定型抗酸菌感染症、腎臓癌、大理石骨病、全身性強皮症、慢性B型又はC型肝炎、敗血性ショック、アレルギー性皮膚炎及び関節リウマチからなる群の中から選択された病状を治療するために設計されている。
【0030】
本発明は同様に、抗ウイルス性、抗増殖性又は免疫調節性薬剤を調製するため本発明による医薬組成物の使用にも関する。好ましい実施形態においては、薬剤は、ぜん息、慢性家族性肉芽腫症、特発性肺線維症、非定型抗酸菌感染症、腎臓癌、大理石骨病、全身性強皮症、慢性B型又はC型肝炎、敗血性ショック、アレルギー性皮膚炎及び関節リウマチからなる群の中から選択された病状の治療用である。
【0031】
本発明は、上述の組成物中で記述されている熱安定性IFNγ変異体をコードする核酸に関する。本発明は同様に、本発明による核酸の発現カセット、本発明による核酸又は発現カセットを含むベクター、及び本発明による核酸、発現カセット又はベクターを含む宿主細胞にも関する。本発明はさらに、前述の組成物中の記述された熱安定性IFNγ変異体を生産することを目的とした、1つのかかる核酸、1つのかかる発現カセット、1つのかかるベクター又は1つのかかる細胞の使用にも関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
本発明は、その安定性、特に熱安定性が野生型IFNγに比べて増大しているヒトインターフェロンガンマ(IFNγ)の変異体に関する。本発明のIFNγタンパク質変異体は、指向進化により生み出される多様な突然変異の生成を、改善された熱安定性を示す変異体を直接選択するための方法と結びつけることによって得られた。改善された候補の熱変性に対する安定性ならびにその活性の保存は、生物学的試験により検証された。本発明による変異体は、現在治療用、特に慢性肉芽腫症及び特発性肺線維症の治療において用いられている組換え型IFNγの代替物を表わしている。
【0033】
成熟IFNγタンパク質のN末端におけるCYCアミノ酸残基の存在に関する根深い不安感及びその結果としての成熟タンパク質中のアミノ酸の付番に関する疑念を考慮して、本出願で採用した付番は、シグナルペプチド配列を含む全てのIFNγ残基(内含されたN末端メチオニンシグナルペプチドの1からインターフェロンのC末端グルタミンの116まで付番された全てのアミノ酸−配列番号2の配列)を考慮に入れたものとする。その他の2つの形態(CYCなしの成熟形態、配列番号4、又はCYCを伴う成熟形態、配列番号6)における置換の位置は、当業者により容易に決定可能である。
【0034】
以下の用語は、置換を示すためのものである:すなわち、C21Gは、配列番号2の21位にあるシステイン残基の、グリシン残基による置換を表わす。「置換」及び「突然変異」という用語は互換性をもつ。「+」という符号は2つの置換の組合せを表わす。
【0035】
本発明は、表1、表2及び図2〜9に記述されている少なくとも1つの置換を含むヒトIFNγの熱安定性変異体又はその機能的フラグメントに関する。
【0036】
本発明は好ましくは、次のものからなる群のうちの1つから選択された少なくとも1つの置換を含むヒトIFNγの熱安定性変異体又はその機能的フラグメントに関する:
(a) C21G、C21W、Y22D、Y22T、Y22S、S23C、Q24A、D25V、P26D、V28C、G41I、G41S、H42D、S43C、S43G、S43T、G49K、T50Y、L51H、L51I、L53I、G54Q、G54S、G54T、K57S、N58R、N58C、N58H、N58Y、W59F、K60H、K60R、E61K、E62C、S63R、S63C、Q69F、Q69T、V73I、S74G、Y76D、K78Q、L79V、F80V、K81I、D86C、D86Q、D86H、D86I、D86V、Q87I、Q87P、S88N、S88Q、T95A、T95V、T95F、I96L、K97I、K97R、E98K、D99N、D99C、D99Q、D99E、D99I、D99M、D99S、D99T、D99W、D99Y、D99V、M100I、M100V、M100N、N101G、N101H、N101F、N101V、K103R、N106D、N106Q、N106G、S107C、S107G、S107E、K109C、K109Q、K109L、K110H、D113S、E116C、E116Q、E116H、E116I、E116V、T119C、T119I、T119M、T119V、T119Y、T119P、N120Q、N120E、N120L、N120T、Y121T、S122D、S122C、S122E、S122I、S122L、S122K、S122P、S122H、V123T、V123H、V123P、T124C、T124H、L126R、L126I、L126K、L126P、L126T、L126V、N127A、N127R、N127Q、N127E、N127G、N127I、N127K、N127F、N127S、N127W、N127Y、V128I、V128Y、Q129R、Q129C、Q129H、Q129I、Q129Y、Q129V、R130Q、R130L、R130K、R130T、K131M、K131I、E135V、M140P、A141H、A141V、E142F、L143I、S144G、S144L、S144W、S144V、A146K、A146M、A147R、A147G、A147E、A147F、A147L、A147M、A147P、A147S、T149E、T149M、K151A、K151C、K151H、K151S、K151V、M157Q、M157W、M157L、L158W、L158C、L158I、F159C、F159V、R160A、R162D、R162E、R162Q、R162C、R162I、R162L、R162K、R162V、R163T、R163L、R163G、A164G、A164S、A164E及びS165V又はそれらの組合せ;或いは
(b) C21G、C21W、Y22D、Y22T、Y22S、Q24A、D25V、P26D、V28C、G41I、G41S、H42D、S43C、S43G、S43T、G49K、T50Y、L51H、L51I、K57S、N58R、N58C、N58H、N58Y、W59F、K60H、K60R、E61K、E62C、S63R、S63C、Y76D、E98K、M100N、K109C、K109Q、K109L、K110H、T119Y、T119P、Y121T、S122H、S122P、K131I、E135V、M140P、A146K、A146M、A147R、A147G、A147E、A147F、A147L、A147M、A147P、A147S、M157Q、M157W、M157L、L158W、L158C、L158I、F159C、F159V、R160A、R162D、R162E、R162Q、R163T、R163L、R163G、A164E及びS165V又はそれらの組合せ;或いは
(c) L53I、G54Q、G54S、G54T、Q69F、Q69T、V73I、S74G、K78Q、L79V、F80V、K81I、D86C、D86Q、D86H、D86I、D86V、Q87I、Q87P、S88N、S88Q、T95A、T95V、T95F、I96L、K97I、K97R、D99N、D99C、D99Q、D99E、D99I、D99M、D99S、D99T、D99W、D99Y、D99V、M100I、M100V、N101G、N101H、N101F、N101V、K103R、N106D、N106Q、N106G、S107C、S107G、S107E、D113S、E116C、E116Q、E116H、E116I、E116V、T119C、T119I、T119M、T119V、N120Q、N120E、N120L、N120T、S122D、S122C、S122E、S122I、S122L、S122K、S122P、V123T、V123H、V123P、T124C、T124H、L126R、L126I、L126K、L126P、L126T、L126V、N127A、N127R、N127Q、N127E、N127G、N127I、N127K、N127F、N127S、N127W、N127Y、V128I、V128Y、Q129R、Q129C、Q129H、Q129I、Q129Y、Q129V、R130Q、R130L、R130K、R130T、K131I、K131M、A141H、A141V、E142F、L143I、S144G、S144L、S144W、S144V、T149E、T149M、K151A、K151C、K151H、K151S、K151V、R162C、R162E、R162I、R162L、R162K、R162V、A164G、A164S又はそれらの組合せ;或いは
(d) S63C、E62C、F159C、D99Y、E116C、L158C、S74G、R162C、S122D、L126P、N58R及びT95V。
【0037】
「含む」という語は、変異体又はそのフラグメントが配列番号2、4、及び6というポリペプチド配列を基準にして指示される1つ以上の置換を有するものの、その他の修飾、特に置換、欠失又は付加をも有し得る、ということを意味するものと理解される。
【0038】
「有する」という語は、変異体又はそのフラグメントが配列番号2、4、及び6というポリペプチド配列を基準にして指示される置換のみを含んでいることを意味するものと理解される。
【0039】
本発明は、上述の群から選択された置換の組合せを含むヒトIFNγの熱安定性変異体又はその機能的フラグメントに関する。この組合せは、前記群から選択された2、3、4、5、6、7、8、9又は10個の置換で構成され得る。その上、本発明による熱安定性ヒトIFNγ変異体は、前記群の中に記述されていないその他の突然変異、好ましくは置換、特に当該技術分野で周知であるいくつかのものを含み得る。一例を挙げると、既知の置換は、国際公開第92/08737号パンフレット、国際公開第99/03887号パンフレット、国際公開第01/36001号パンフレット、国際公開第02/81507号パンフレット、国際公開第03/002152号パンフレット、国際公開第2004/005341号パンフレット、国際公開第2004/022593号パンフレット、米国特許第6,958,388号明細書、米国特許第4,898,931号明細書、米国特許第6,046,034号明細書及び国際公開第2006/120580号パンフレットの中で記述されている。
【0040】
例えば、本発明は、C21W、Q24A、D25V、P26D、V28C、G41I、G41S、H42D、G49K、T50Y、L51H、K57S、N58R、N58C、N58H、N58Y、W59F、K60H、K60R、E61K、E62C、S63R、S63C、Y76D、E98K、K109C、K109L、K109Q、K110H、E135V、M140P、A146K、A146M、A147R、A147G、A147L、A147M、A147P、A147S、A147E、M157W、M157Q、M157L、L158C、L158I、L158W、F159C、F159V、R160A、R162D、R162Q及びR162E又はその組合せからなる群の中から選択された少なくとも1つの置換を含むヒトIFNγの熱安定性変異体又はその機能的フラグメントに関する。もう1つの例では、本発明は、Q24A、P26D、V28C、G41I、G41S、H42D、G49K、T50Y、L51H、K57S、N58R、N58C、N58H、N58Y、K60H、K60R、E61K、E62C、S63C、K109C、A146K、A146M、A147R、A147G、A147L、A147M、A147P、A147S、A147E、M157Q、M157L、L158I、F159C、F159V、R160A、R162E、R162Q及びR162D又はその組合せからなる群の中から選択された突然変異の少なくとも1つを含む、ヒトIFNγの熱安定性変異体又はその機能的フラグメントに関する。
【0041】
さらに一層好ましい実施形態においては、本発明は、S63C、E62C、F159C、D99Y、E116C、L158C、S74G、R162C、S122D、L126P、N58R及びT95Vからなる群の中から選択された少なくとも1つの第1の置換を含むヒトIFNγの熱安定性変異体又はその機能的フラグメントに関する。好ましい一実施形態においては、変異体は、前記第1の置換により導入された残基に付着したいかなる非ペプチド部分も含まない。前記変異体は、M157C、G41S及びM100Nからなる群の中から選択された少なくとも1つのその他の置換をさらに含んでいてよい。
【0042】
もう1つの実施形態においては、本発明は、単一の置換C23S又はM157Cか又はC21G、C21W、Y22D、Y22T、Y22S、Q24A、D25V、P26D、V28C、G41I、G41S、H42D、S43C、S43G、S43T、G49K、T50Y、L51H、L51I、K57S、N58R、N58C、N58H、N58Y、W59F、K60H、K60R、E61K、E62C、S63R、S63C、Y76D、E98K、M100N、K109C、K109Q、K109L、K110H、T119Y、T119P、Y121T、S122H、S122P、K131I、E135V、M140P、A146K、A146M、A147R、A147G、A147E、A147F、A147L、A147M、A147P、A147S、M157Q、M157L、L158W、L158C、L158I、F159C、F159V、R160A、R162D、R162E、R162Q、R163T、R163L、R163G、A164E、S165V、L53I、G54Q、G54S、G54T、Q69F、Q69T、V73I、S74G、K78Q、L79V、F80V、K81I、D86C、D86Q、D86H、D86I、D86V、Q87I、Q87P、S88N、S88Q、T95A、T95V、T95F、I96L、K97I、K97R、D99N、D99C、D99Q、D99E、D99I、D99M、D99S、D99T、D99W、D99Y、D99V、M100I、M100V、N101G、N101H、N101F、N101V、K103R、N106D、N106Q、N106G、S107C、S107G、S107E、D113S、E116C、E116Q、E116H、E116I、E116V、T119C、T119I、T119M、T119V、N120Q、N120E、N120L、N120T、S122D、S122C、S122E、S122I、S122L、S122K、S122P、V123T、V123H、V123P、T124C、T124H、L126R、L126I、L126K、L126P、L126T、L126V、N127A、N127R、N127Q、N127E、N127G、N127I、N127K、N127F、N127S、N127W、N127Y、V128I、V128Y、Q129R、Q129C、Q129H、Q129I、Q129Y、Q129V、R130Q、R130L、R130K、R130T、K131I、K131M、A141H、A141V、E142F、L143I、S144G、S144L、S144W、S144V、T149E、T149M、K151A、K151C、K151H、K151S、K151V、R162C、R162E、R162I、R162L、R162K、R162V、A164G及びA164Sからなる群の中から選択された1つ以上の置換と組合せた形での置換C23S又はM157Cのいずれかを有するヒトIFNγの熱安定性変異体又はその機能的フラグメントにも関する。1つの好ましい実施形態においては、本発明は、単一の置換C23S又はM157Cか又はS63C、E62C、F159C、D99Y、E116C、L158C、S74G、R162C、S122D、L126P、N58R、M100N、T95V及びG41Sからなる群の中から選択された1つ以上の置換と組合せた形での置換C23S又はM157Cのいずれかを有するヒトIFNγの熱安定性変異体又はその機能的フラグメントに関する。さらに一層好ましい実施形態においては、本発明は、単一の置換M157C又はS63C、E62C、F159C、D99Y、E116C、L158C、S74G、R162C、S122D、L126P、N58R、M100N、T95V及びG41Sからなる群の中から選択された1つ以上の置換と組合せた形での置換M157Cのいずれかを有するヒトIFNγの熱安定性変異体又はその機能的フラグメントに関する。
【0043】
一実施形態においては、本発明は以下のものからなる群の1つの中から選択された単一の置換を有するヒトIFNγの熱安定性変異体又はその機能的フラグメントに関する:
(a) C21G、C21W、Y22D、Y22T、Y22S、C23S、Q24A、D25V、P26D、V28C、G41I、G41S、H42D、S43C、S43G、S43T、G49K、T50Y、L51H、L51I、K57S、N58R、N58C、N58H、N58Y、W59F、K60H、K60R、E61K、E62C、S63R、S63C、Y76D、E98K、M100N、K109C、K109Q、K109L、K110H、T119Y、T119P、Y121T、S122H、S122P、K131I、E135V、M140P、A146K、A146M、A147R、A147G、A147E、A147F、A147L、A147M、A147P、A147S、M157Q、M157W、M157L、M157C、L158W、L158C、L158I、F159C、F159V、R160A、R162D、R162E、R162Q、R163T、R163L、R163G、A164E及びS165V;又は
(b) L53I、G54Q、G54S、G54T、Q69F、Q69T、V73I、S74G、K78Q、L79V、F80V、K81I、D86C、D86Q、D86H、D86I、D86V、Q87I、Q87P、S88N、S88Q、T95A、T95V、T95F、I96L、K97I、K97R、D99N、D99C、D99Q、D99E、D99I、D99M、D99S、D99T、D99W、D99Y、D99V、M100I、M100V、N101G、N101H、N101F、N101V、K103R、N106D、N106Q、N106G、S107C、S107G、S107E、D113S、E116C、E116Q、E116H、E116I、E116V、T119C、T119I、T119M、T119V、N120Q、N120E、N120L、N120T、S122D、S122C、S122E、S122I、S122L、S122K、S122P、V123T、V123H、V123P、T124C、T124H、L126R、L126I、L126K、L126P、L126T、L126V、N127A、N127R、N127Q、N127E、N127G、N127I、N127K、N127F、N127S、N127W、N127Y、V128I、V128Y、Q129R、Q129C、Q129H、Q129I、Q129Y、Q129V、R130Q、R130L、R130K、R130T、K131I、K131M、A141H、A141V、E142F、L143I、S144G、S144L、S144W、S144V、T149E、T149M、K151A、K151C、K151H、K151S、K151V、R162C、R162E、R162I、R162L、R162K、R162V、A164G及びA164S;又は
(c) S63C、E62C、F159C、D99Y、E116C、L158C、S74G、R162C、S122D、L126P、N58R及びT95V。
【0044】
例えば、置換は、C21W、C23S、Q24A、D25V、P26D、V28C、G41I、G41S、H42D、G49K、T50Y、L51H、K57S、N58R、N58C、N58H、N58Y、W59F、K60H、K60R、E61K、E62C、S63R、S63C、Y76D、E98K、K109C、K109L、K109Q、K110H、E135V、M140P、A146K、A146M、A147R、A147G、A147L、A147M、A147P、A147S、A147E、M157W、M157Q、M157C、M157L、L158C、L158I、L158W、F159C、F159V、R160A、R162D、R162Q及びR162Eからなる群の中から選択される。特に、置換はC23S、Q24A、P26D、V28C、G41I、G41S、H42D、G49K、T50Y、L51H、K57S、N58R、N58C、N58H、N58Y、K60H、K60R、E61K、E62C、S63C、K109C、A146K、A146M、A147R、A147G、A147L、A147M、A147P、A147S、A147E、M157Q、M157C、M157L、L158I、F159C、F159V、R160A、R162E、R162Q及びR162Dからなる群の中から選択されてもよい。好ましくは、本発明は、S63C、E62C、F159C、D99Y、E116C、L158C、S74G、R162C、S122D、L126P、N58R及びT95Vからなる群の中から選択された単一の置換を有するヒトIFNγの熱安定性変異体又はその機能的フラグメントに関する。
【0045】
一実施形態においては、本発明は、C21G+F159C、A147E+R162D、M100N+T119Y、Y76D+K131I、T50Y+Y121T+M140P、P26D+S122P、Y22S+L158W+R163G、Y22D+S122H、R162Q+A164E及びY22T+K109C+T119P+A147F+R163Lからなる群の中から選択された置換の組合せを有するヒトIFNγの熱安定性変異体又はその機能的フラグメントに関する。
【0046】
もう1つの実施形態においては、本発明は、S63C、E62C、F159C、D99Y、E116C、L158C、S74G、R162C、S122D、M100N、L126P、N58R、T95V、M157C及びG41Sからなる群の中から選択2つの置換の組合せ、好ましくはS63C+E62C、S63C+F159C、S63C+D99Y、S63C+E116C、S63C+L158C、S63C+S74G、S63C+R162C、S63C+S122D、S63C+M100N、S63C+L126P、S63C+N58R、S63C+T95V、S63C+M157C、S63C+G41S、E62C+F159C、E62C+D99Y、E62C+E116C、E62C+L158C、E62C+S74G、E62C+R162C、E62C+S122D、E62C+M100N、E62C+L126P、E62C+N58R、E62C+T95V、E62C+M157C、E62C+G41S、F159C+D99Y、F159C+E116C、F159C+L158C、F159C+S74G、F159C+R162C、F159C+S122D、F159C+M100N、F159C+L126P、F159C+N58R、F159C+T95V、F159C+M157C、F159C+G41S、D99Y+E116C、D99Y+L158C、D99Y+S74G、D99Y+R162C、D99Y+S122D、D99Y+M100N、D99Y+L126P、D99Y+N58R、D99Y+T95V、D99Y+M157C、D99Y+G41S、E116C+L158C、E116C+S74G、E116C+R162C、E116C+S122D、E116C+M100N、E116C+L126P、E116C+N58R、E116C+T95V、E116C+M157C、E116C+G41S、L158C+S74G、L158C+R162C、L158C+S122D、L158C+M100N、L158C+L126P、L158C+N58R、L158C+T95V、L158C+M157C、L158C+G41S、S74G+R162C、S74G+S122D、S74G+M100N、S74G+L126P、S74G+N58R、S74G+T95V、S74G+M157C、S74G+G41S、R162C+S122D、R162C+M100N、R162C+L126P、R162C+N58R、R162C+T95V、R162C+M157C、R162C+G41S、S122D+L126P、S122D+N58R、S122D+T95V、S122D+M157C、S122D+M100N、S122D+G41S、L126P+N58R、L126P+T95V、L126P+M157C、L126P+M100N、L126P+G41S、N58R+T95V、N58R+M157C、N58R+M100N、N58R+G41S、T95V+M157C、T95V+M100N、T95V+G41S、M157C+M100N及びM157C+G41Sからなる群の中から選択された組合せを含むか又は有するヒトIFNγの熱安定性変異体又はその機能的フラグメントに関する。好ましい実施形態において、本発明は、S63C+E62C、S63C+F159C、S63C+D99Y、S63C+E116C、S63C+L158C、S63C+S74G、S63C+R162C、S63C+S122D、S63C+M100N、S63C+L126P、S63C+N58R、S63C+T95V、S63C+M157C、S63C+G41Sからなる群の中から選択された置換の組合せ、好ましくは組合せS63C+G41Sを含むか又は有する変異体に関する。
【0047】
配列番号1〜6は、前駆体及び成熟形態のヒトIFNγのタンパク質配列及びそれらをコードする核酸配列を記述する。好ましい実施形態においては、本発明による変異体は、166個のアミノ酸残基の前駆体タンパク質(配列番号2)又は本発明による少なくとも1つの置換又は置換の組合せを含むCYCトリペプチドを伴うか又は伴わない成熟タンパク質(それぞれ配列番号6及び4)に対応する。特に「変異体」という用語は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個の残基、好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個の残基分だけ配列番号2、4及び6の配列の中から選択された配列を有するポリペプチドと異なっているポリペプチドを意味する。
【0048】
「機能的フラグメント」というのは、ヒトIFNγの活性を有するヒトIFNγのフラグメントを意味している。例えば、前記フラグメントは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20個のアミノ酸残基、好ましくは1〜15個の残基、さらに一層好ましくは1〜11個の残基のC末端欠失を伴い、CYCトリペプチドを伴うか又は伴なわないヒトIFNγの前駆体又は成熟形態に対応していてよい。フラグメントは、ヒトIFNγの100、110、120、130又は140個の連続するアミノ酸残基を含んでいてよい。
【0049】
「ヒトIFNγ活性」というのは、インビトロ又はインビボで決定される、ヒトIFNγレセプタに結合しヒトIFNγがそのレセプタに結合した時点で誘発されたシグナルの変換をひき起こす能力を意味する。ヒトIFNγ活性は、明細書中及び実施例中で以下に記述する方法によって測定することができる。
【0050】
本発明による変異体は、野生型ヒトIFNγに比べて増大した熱安定性を有する。前記増大は、少なくとも5%、好ましくは少なくとも10、20又は30%である。「熱安定性」は、熱の作用にさらされた後もその活性を保つタンパク質の能力を意味するものと理解される。例えば、タンパク質を59℃で10分間インキュベートすることができる。このとき、変異体の熱安定性は前記前処理の後の残留活性の百分率によって評価される。一変異体の熱安定性のこの尺度は次に、同じ条件に付された野生型IFNγを用いることによって得られる同じ値と比較される。
【0051】
熱安定性は改善されたが活性は低い変異体を使用してもよい。好ましくは、本発明の熱安定性変異体は、野生型ヒトIFNγの活性の少なくとも10%、好ましくは野生型ヒトIFNγの活性の少なくとも20、30、40、50、60、70、80又は90%に対応する活性(前処理無しの条件)を保つ。特に好ましい実施形態においては、本発明の熱安定性変異体は、野生型ヒトIFNγのものと同等であるかさらにはより高いものである活性を保つ。
【0052】
対象の変異体を選択するための興味深い要因は、残留活性の百分率を乗じた変異体の相対的活性である。
【0053】
「非ペプチド部分」は、ヒトIFNγのアミノ酸の側鎖に付着可能な非ペプチド分子を示すべく意図されている。前記分子は、重合体分子、親油性分子、炭水化物又は有機誘導体化剤であり得る。炭水化物は、例えばN−又はO−グリコシル化などによる、インビトロ又はインビボグリコシル化によってIFNγに付着可能である。親油性分子は例えば、飽和又は不飽和脂肪酸、テルペン、ビタミン、ステロイド又はカロテノイドであり得る。重合体分子はポリオール、ポリアミン、多炭素環酸(polycarbocyclic acid)又はポリアルキレンオキサイド、特にポリエチレングリコール(PEG)であり得る。このタイプの分子は、当業者にとって周知のものである。PEG基を含有する変異体を「ペグ化」されていると呼ぶことにする。
【0054】
本発明によるヒトIFNγは、好ましくは48位及び120位でグリコシル化可能である。もう1つの実施形態においては、変異体をグリコシル化することはできない。変異体が置換G41Sを含む場合、それはN−グリコシル化によってN39位でグリコシル化可能である。他の実施形態においては、かかる変異体をこの位置でグリコシル化することはできない。
【0055】
一実施形態においては、重合体分子を付加すること、特に重合体を付加すること(キタら、「Drug Des.Deliv.」第6号:157〜167頁、1990年;欧州特許第236987号明細書及び米国特許第5,109,120号明細書)又はペグ化(国際公開第99/03887号パンフレット;国際公開第2004005341号パンフレット、「重合体分子の接合」を参照)により変異体を修飾することができる。本発明によるヒトIFNγ変位体の好ましい実施形態においては、重合体分子は、41、58、62、63、74、95、99、100、116、122、126、157、158、159及び162位以外の位置に付着させられる。特に、分子は、本発明による変異体内で行なわれた置換、特にS63C、E62C、F159C、D99Y、M100N、E116C、L158C、S74G、R162C、S122D、L126P、N58R、T95V、G41S及びM157Cからなる群の中から選択された置換によって導入される残基には付着させられない。
【0056】
もう1つの実施形態においては、本発明による変異体は、いかなる重合体分子も含有しない。特に、それはペグ化されない。
【0057】
IFNγのインビトロ活性は一般に、増大する量のIFNγでの処理後の細胞系に対するウイルスの細胞変性効果の減少に関して測定される。IFNγに特異的なその他の生物学的試験が存在する(再考のため、ミーガー(Meager)、「J.Immunol.Methods」、第261号、(2002年)21〜36頁)。特にこれらの新しい試験は、IFNγの多面的活性の特徴の1つをより特異的に評価することを可能にする。インビボ活性の試験も存在する。
【0058】
IFNγに対する抗ウイルス応答は、異なる共役系(使用されたウイルスに対する感応性をもつウイルス/IFNγ−応答性接着細胞系)の中で測定可能である。例としては以下の共役系が含まれる:VSV/MDBK;VSV又はEMCV/A549、VSV、EMCV、SFV又はシンドビス(Sindbis)ウイルス/WISH;VSV又はEMCV/HeLa;VSV、EMCV又はメンゴウイルス(Mengovirus)/FS4、FS71、又はHep2;VSV、EMCV、メンゴウイルス又はシンドビスウイルス/FL;EMCV/2D9;ここでVSVは水疱性口内炎ウイルス;EMCV=脳心筋炎ウイルス;SFV=セムリキ森林熱ウイルスである。好ましくは、使用されるウイルスは、ワクシニアウイルス又はリンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)となる。単純ヘルペスウイルス(HSV)及びサイトメガロウイルスを使用してもよい。
【0059】
IFNγの活性は、GAS(ガンマーインターフェロン活性化部位)又はISRE要素(インターフェロン刺激型応答要素)を含むIFNγ応答性プロモータの制御下で、例えばルシフェラーゼといったリポータ遺伝子を使用することによってもテストできる。このようにして、リポータ遺伝子は、IFNγによる刺激の後に検定を受ける。pGAS/ルシフェラーゼ及びpISRE/ルシフェラーゼベクターは市販されている(#219091、ストラタジーン(Stratagene)。好ましい実施形態においては、IFNγ活性はPGAS/ルシフェラーゼベクターを用いた方法によって測定される。
【0060】
全てその生物学的活性を保ちながらのIFNγの熱安定性の増加により、同等の生物学的活性について、使用される治療用量の削減及びその結果としての治療の弊害の削減を可能にするより効果的な治療の開発を想定することができるようになる。こうして、これまでこのタイプの分子では想像もできなかった、ヘルペスなどのウイルス感染を削減する目的でさらに高い用量のIFNγを使用する治療も可能となる。その上、本発明による変異体は、特に室温で、野生型IFNγに比べて、その保管中のより長い半減期、ひいてはより優れた保管寿命という利点も有する可能性がある。
【0061】
従って、本発明は、本発明による熱安定性IFNγ変位体を含む医薬組成物に関する。
【0062】
このようにして、本発明は好ましくは、特に本発明は、S63C、E62C、F159C、D99Y、E116C、L158C、S74G、R162C、S122D、L126P、N58R及びT95Vからなる群から選択された少なくとも1つの置換を含む、熱安定性IFNγ変異体又はその機能的フラグメントを含む医薬組成物において、変異体が第1の置換により導入された残基に付着した非ペプチド部分を含有していない医薬組成物に関する。一実施形態においては、変異体は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個の残基分だけ、好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個の残基分だけ、配列番号2、4及び6の配列の中から選択された配列を有するポリペプチドと異なっている。特定の実施形態においては、この変異体は単一の置換を有する。もう1つの実施形態においては、変異体は、M157C、G41S及びM100Nからなる群の中から選択された少なくとも1つのその他の置換をさらに含む。特に変異体は、S63C、E62C、F159C、D99Y、E116C、L158C、S74G、R162C、S122D、M100N、L126P、N58R、T95V、M157C及びG41Sからなる群の中から選択された2つの置換の組合せを含むか又は有していてよい。好ましい実施形態では、変異体は、S63C+E62C、S63C+F159C、S63C+D99Y、S63C+E116C、S63C+L158C、S63C+S74G、S63C+R162C、S63C+S122D、S63C+M100N、S63C+L126P、S63C+N58R、S63C+T95V、S63C+M157C、S63C+G41S、E62C+F159C、E62C+D99Y、E62C+E116C、E62C+L158C、E62C+S74G、E62C+R162C、E62C+S122D、E62C+M100N、E62C+L126P、E62C+N58R、E62C+T95V、E62C+M157C、E62C+G41S、F159C+D99Y、F159C+E116C、F159C+L158C、F159C+S74G、F159C+R162C、F159C+S122D、F159C+M100N、F159C+L126P、F159C+N58R、F159C+T95V、F159C+M157C、F159C+G41S、D99Y+E116C、D99Y+L158C、D99Y+S74G、D99Y+R162C、D99Y+S122D、D99Y+M100N、D99Y+L126P、D99Y+N58R、D99Y+T95V、D99Y+M157C、D99Y+G41S、E116C+L158C、E116C+S74G、E116C+R162C、E116C+S122D、E116C+M100N、E116C+L126P、E116C+N58R、E116C+T95V、E116C+M157C、E116C+G41S、L158C+S74G、L158C+R162C、L158C+S122D、L158C+M100N、L158C+L126P、L158C+N58R、L158C+T95V、L158C+M157C、L158C+G41S、S74G+R162C、S74G+S122D、S74G+M100N、S74G+L126P、S74G+N58R、S74G+T95V、S74G+M157C、S74G+G41S、R162C+S122D、R162C+M100N、R162C+L126P、R162C+N58R、R162C+T95V、R162C+M157C、R162C+G41S、S122D+L126P、S122D+N58R、S122D+T95V、S122D+M157C、S122D+M100N、S122D+G41S、L126P+N58R、L126P+T95V、L126P+M157C、L126P+M100N、L126P+G41S、N58R+T95V、N58R+M157C、N58R+M100N、N58R+G41S、T95V+M157C、T95V+M100N、T95V+G41S、M157C+M100NおよびM157C+G41Sからなる群の中から選択された置換の組合せを含むか又は有している。さらに一層好ましい実施形態においては、変異体は、S63C+E62C、S63C+F159C、S63C+D99Y、S63C+E116C、S63C+L158C、S63C+S74G、S63C+R162C、S63C+S122D、S63C+M100N、S63C+L126P、S63C+N58R、S63C+T95V、S63C+M157C及びS63C+G41Sからなる群の中から選択置換の組合せを含むか又は有している。特に一層好ましい実施形態においては、変異体は組合せS63+G41Sを含むか又は有している。特定の実施形態においては、変異体はC末端において1〜11個の残基の欠失を有していない。もう1つの特定の実施形態においては、変異体はC末端において1〜11個の残基の欠失を有している。特定の実施形態においては、重合体分子、親油性分子及び有機誘導体化剤からなる群の中から選択された非ペプチド部分を含有していない。もう1つの特定の実施形態においては、変異体は、重合体分子、親油性分子及び有機誘導体化剤からなる群の中から選択された非ペプチド部分をまさに含有している。当該の非ペプチド分子はより特定的には重合体分子、好ましくはポリエチレングリコールである。特定の実施形態においては、変異体はグリコシル化されている。特に変異体は、それが置換G41Sを含む場合にN−グリコシル化によりN39位においてグリコシル化され得る。
【0063】
本発明による医薬組成物は、薬学的に許容できる支持体又は賦形剤をさらに含み得る。前記支持体及び賦形剤は、当業者にとって周知のものである(「Remington’s Pharmaceutical Sciences」、第18版、A.R.ジェンナーロ(Gennaro)編、Mack Publishing Company[1990年];「Pharmaceutical Formulation Development of Peptides and Proteins」、S.フロクジャー(Frokjaer)及びL.ホヴガード(Hovgaard)編、Taylor&Francis[2000年];及び「Handbook of Pharmaceutical Excipients」、第3版、A.キッブ(Kibbe)編、Pharmaceutical Press[2000年])。
【0064】
本発明による医薬組成物は、さまざまな形態で、特に液体、ゲル、凍結乾燥、粉末、圧縮固体その他の形態で処方可能である。
【0065】
本発明はさらに、薬剤としての本発明による熱安定性IFNγ変異体又は本発明による組成物にも関する。
【0066】
本発明の医薬組成物は、経口、非経口(例えば皮内、筋内、静脈内、皮下)、舌下、局所、局部、気管内、鼻腔内、経皮、直腸、眼球内、耳介内投与に適し、それ向けに処方されており、前記活性作用物質は1投薬量単位の形で投与することができる。
【0067】
医薬組成物の一例は、非経口投与向け溶液である。組成物は即時に使用するのに適した液体形態であってもよいが、かかる非経口形態を凍結した形態又は凍結乾燥した形態で提供してもよい。この場合、組成物は使用に先立ち解凍されるか又はもどされることになる。凍結乾燥の場合、組成物は注射用滅菌水又は無菌生理食塩溶液などの薬学的に許容できる希釈剤の添加によって調製されることになる。
【0068】
単位剤形は、例えば錠剤、カプセル、ゲル、顆粒、粉末、経口又は注射用溶液又は懸濁液、経皮パッチ、舌下、口腔、気管内、眼球内、鼻腔内、耳介内形態、吸入、局所、経皮、皮下、筋内又は静脈内形態、直腸投与形態又はインプラントであってよい。
【0069】
局所投与向けの処方物としては、クリーム、ゲル、軟こう、ローション又は滴剤がある。前記薬学処方物は、関連分野の従来の方法に従って調製される。好ましい実施形態においては、医薬組成物は液体である。
【0070】
前記単位剤形は、薬学処方物に応じて、体重1kgあたり0.001〜100μgの活性成分の連日投与を可能にするように投薬される。それよりも高いか又は低い投薬量強度が適切である特殊なケースも考えられる。前記投薬量は、本発明の範囲から逸脱するものではない。標準的実践に従うと、各患者のための適切な用量は、投与方法、患者の体重及び応答性に従って医師によって決定される。
【0071】
好ましい実施形態においては、IFNγは経口経路、好ましくは皮下注射により投与される。例えば、IFNγの通常の注射用量は、体表面積が0.5m超である場合には1〜100μg/mの間に含まれ、体表面積が0.5m以下の場合には体重1kgあたり0.01〜10μgの間に含まれる。
【0072】
IFNγは、広い活性スペクトラムをもつ多面性サイトカインの原型である。事実、インターフェロン(IFN)には、ウイルス複製の阻害、細胞増殖の阻害及びアポトーシスの誘発などの活性がある。
【0073】
特に、IFNγによるマクロファージ刺激は、以下の応答を誘発する:
− 食作用及び細菌死滅の増強(直接的抗菌性及び抗腫瘍性機序);
− 抗原提示及び分離経路の刺激、マクロファージ表面におけるI型及びII型主要組織適合複合体(MHC)の発現;
− 免疫グロブリンIgG生産及び補体活性化を結果としてもたらす、抗体分泌プラズマ細胞へのBリンパ球の分化;
− 細胞毒性酸素遊離ラジカル及びNOを生産させるNOシンターゼの活性化;
及び/又は
− サイトカイン及び内因性IFNの生産の増強。
【0074】
IFNγは、その分化を促進し、それによって特異的免疫応答を変調させることによってTリンパ球に対して作用する。
【0075】
IFNγの薬学的特性の中でも、追求され臨床段階で開発された主要な効果は、主として免疫調節面であり、抗ウイルス治療用分子の面は今までのところさほど大規模に開発されていない。
【0076】
その広い活性スペクトラム(抗ウイルス性、抗増殖性及び免疫変調性)を理由として、IFNγは、多様なヒト疾患の治療における治療薬として開発されてきた。市販のIFNγ(Actimmune及びBiogamma)は、特に2つの主要な治療適応すなわち慢性肉芽腫症及び特発性肺線維症において経口プレドニゾロンと組合せて使用されている。主要な治療適応に加えて、数多くの新規な二次的適応が現在、特に例えばC型肝炎の治療におけるペグ化IFNγ/リバビリンに対する付加物としてのその免疫抑制的役割のために、異なる臨床的開発段階(II及びIII)にある。非定型抗酸菌感染症、腎臓癌;大理石骨病;全身性強皮症;慢性B型肝炎;慢性C型肝炎;敗血性ショック;アレルギー性皮膚炎;関節リウマチ;卵巣癌;肝線維症;ぜんそく;及びリンパ腫に言及することもできる。
【0077】
IFNγは同様に、さまざまなウイルス感染の治療においても有用であり、ヒト乳頭腫ウイルス感染及びB型及びC型肝炎ウイルス感染に対抗する活性を示す。
【0078】
その上、高用量のIFNγに付随する毒性の問題が、より安定した分子、ひいてはインビボでより強い効果を有する分子により軽減又は解決されたとすると、新規の適応性におけるIFNγの使用、特にヘルペス(HSV)I型及びII型ウイルス感染を治療するための使用を再度考慮してもよいと思われる。
【0079】
従って、本発明は、抗ウイルス性、抗増殖性又は免疫調節性薬剤を調製するための本発明による熱安定性IFNγ変異体又は本発明による医薬組成物の使用に関する。例えば前記薬剤は、炎症性疾患、癌、感染症、骨疾患、自己免疫疾患などを治療するように設計される。好ましい実施形態においては、本薬剤は、ぜん息、慢性家族性肉芽腫症、特発性肺線維症、非定型抗酸菌感染症、腎臓癌、大理石骨病、全身性強皮症、慢性B型又はC型肝炎、敗血症ショック、アレルギー性皮膚炎及び関節リウマチからなる群の中から選択された病状を治療するように設計される。変形実施形態においては、本薬剤は、痒痛、神経皮膚炎、I型糖尿病、血管狭窄症、基底細胞上皮腫、癌又はリンパ腫例えば卵巣癌、腎臓癌、白血病例えばB又はT細胞増殖性障害、慢性骨髄性白血病及び関連する症候群、乳癌、肺癌、黒色腫、結腸直腸癌、脳腫瘍、胸膜癌、胃癌、膵癌、ウイルス感染例えばB型又はC型肝炎ウイルスに起因するもの、クローン病、乾癬、多発性硬化症及び筋萎縮性側湾硬化症からなる群の中から選択された病状を治療するように設計されている。
【0080】
本発明による熱安定性IFNγ変異体は、もう1つの活性作用物質、例えば抗体、抗腫瘍薬又は化学療法剤、グルココルチコイド、抗ヒスタミン剤、副腎皮質ホルモン、抗アレルギー薬、ワクチン、気管支拡張剤、ステロイド、ベータアドレナリン作動薬、免疫調節剤、サイトカイン例えばインターフェロンアルファ又はベータ、インターロイキン1又は2、TNF(腫瘍壊死因子)、ヒドロキシウレア、アルキル化剤、葉酸拮抗薬、核酸代謝拮抗物質、紡鐘体毒、抗生物質、ヌクオレチド類似体、レチノイド、リポキシゲナーゼ及びシクロオキシゲナーゼ阻害剤、フマル酸及びその塩、鎮痛剤、鎮痙薬及びカルシウム拮抗薬及びその組合せからなる群の中から選択される活性作用物質と組合せた状態で使用してよい。付加的な活性作用物質は、本発明によるIFNγの投与の前、又はそれと同時に又はその後に投与してよい。さらに、これを同じ投与経路で投与してもよいし、又2つの異なる投与経路で投与してもよい。このようにして本発明は、上述の病状の1つを治療するための同時、逐次又は分離使用向けに設計された複合製剤を目的とした、好ましくは上述のリストから選択されたもう1つの活性作用物質と、本発明による熱安定性IFNγ変異体又は医薬組成物を含む製品に関する。
【0081】
抗体との組合せは、癌を治療するために有用である。実際、IFNγはADCC(抗体依存性細胞細胞毒性)により抗体の効果を増大させることができる。抗体は好ましくは、癌細胞上で曝露された抗原に対抗して導かれる。抗体はポリクローナル、モノクローナル、ヒト化又はキメラ抗体であってよい。好ましくは、抗体はモノクローナルでかつヒト化されたものである。例えば、非ホジキンリンパ腫などのB細胞リンパ増殖性障害の場合、抗原はCD20であり得る。前記抗体はリツキシマブであり得る。
【0082】
グルココルチコイドとの組合せは、特発性肺線維症などの肺胞性疾患を治療するために有用である。適切なグルココルチコイドの例としては、ヒドロコルチゾン、コルチゾン、デキサメタゾン、ベタメタゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン及びその薬学的に許容できる塩が含まれる。本発明の好ましい実施形態は、本発明によるIFNγとプレドニゾロンの組合せの使用に関する。
【0083】
抗ヒスタミン剤、副腎皮質ホルモン、抗アレルギー薬との組合せは、特に痒疹又は神経皮膚炎などの皮膚疾患を治療するために特に有用である。
【0084】
抗アレルギー薬、気管支拡張剤、ステロイド、ベータアドレナリン作動薬、免疾調節剤、又はサイトカインとの組合せは、特にぜん息を治療するために有用である。
【0085】
本発明はさらに、必要としている患者における抗ウイルス性、抗増殖性又は免疫調節性治療方法において、この患者に対し治療上有効な量の本発明による熱安定性IFNγ変異体又は医薬組成物を投与する段階を含む方法に関する、好ましくは、治療方法は、上述の病状を治療するように設計されている。任意には、この方法は、好ましくは以上で列挙したものの中から選択されるもう1つの活性作用物質を投与する段階をさらに含んでいてよい。治療上有効な量は、疾病の症状を軽減又は除去する、又は疾病の進行を管理するか又は遅延させるのに必要な量である。患者は好ましくはヒトである。
【0086】
本発明は、本発明によるヒトIFNγの熱安定性変異体をコードする核酸に関する。本発明は同様に、本発明による核酸のための発現カセットにも関する。本発明はさらに、本発明による核酸又は発現カセットを含むベクターにも関する。このベクターはプラスミド及びウイルスベクターから選択されてよい。
【0087】
核酸は、DNA(cDNA、又はgDNA)、RNA、その2つの混合物であってよい。それは1本鎖又は2重鎖又はこれら2つの混合であってよい。これは、例えば修飾された結合、修飾されたプリン又はピリミジン塩基又は修飾された糖を含む、修飾されたヌクレオチドを含んでいてよい。これは、化学的合成、組換え、突然変異誘発などを含む、当業者にとって既知のあらゆる方法により調製してもよい。
【0088】
発現カセットは、本発明による熱安定性ヒトIFNγ変異体の発現のために必要な全ての構成要素、特に宿主細胞内での転写及び翻訳に必要な構成要素を含む。宿主細胞は、原核細胞又は真核細胞であってよい。特に、発現カセットは、プロモータ及びターミネータ、任意には増幅因子を含む。プロモータは、原核性又は真核性であってよい。好ましい原核プロモータは以下の通りである:Lacl、Lacz、pLact、Ptac、pAPA、pBAD、バクテリオファージT3又はT7のRNAポリメラーゼプロモータ、ポリヘドリンプロモータ、ファージラムダのPR又はPLプロモータ。好ましい真核プロモータの例は以下の通りである:CMV早期プロモータ、HSVチミジンキナーゼプロモータ、SV40早期又は後期プロモータ、マウスメタロチオネイン−Lプロモータ及び一部のレトロウイルスのLTR領域。一般に、適切なプロモータを選択するために、当業者は有利にもサンブルック(Sambrook)ら(1989年)の研究又はフラー(Fuller)ら(1996年:「Immunology in Current Protocols in Molecular Biology」)で記述されている技術を参照することができる。
【0089】
本発明は、本発明による熱安定性ヒトIFNγ変異体をコードする核酸又は発現カセットを含有するベクターに関する。ベクターは好ましくは発現ベクターである、すなわち、宿主細胞内での変異体の発現のために必要な構成要素を含んでいる。宿主細胞は原核生物、例えば大腸菌(E.coli)又は真核生物であり得る。真核生物は、下等真核生物例えば酵母(例えばS.セレビシェ(cerevisiae)又は真菌(例えばコウジカビ属(ゲヌス・アスペルギルス(genus Aspergillus))又は高等真核生物例えば昆虫細胞(例えばSf9又はSf21)、哺乳動物細胞又は植物細胞であってよい。細胞は哺乳動物細胞、例えばCOS(グリーンモンキー細胞系)〔例えばCOS1(ATCC CRL−1650)、COS7(ATCC CRL−1651)、CHO(米国特許第4,889,803号明細書;米国特許第5,047,335号明細書、CHO−K1(ATCC CCL−61)〕、マウス細胞又はヒト細胞であってよい。特定の実施形態においては、細胞は非ヒト及び非胚細胞である。ベクターは、プラスミド、ファージ、ファージミド、コスミド、ウイルス、YAC、BAC、アグロバクテリウム(Agrobacterium)のpTiプラスミドなどであってよい。ベクターは、好ましくは、複製起点、多重クローニング部位及び選択遺伝子からなる群の中から選択された1つ以上の要素を含んでいてよい。好ましい実施形態においては、ベクターはプラスミドである。原核生物ベクターの制限されない例は、以下の通りである:pQE70、pQE60、pQE−9(キアゲン(Qiagen))、pbs、pD10、phagescript、psiX174、pbluescriptSK、pbsks、pNH8A、pNH16A、pNH18A、pNH46A(ストラタジーン(Stratagene));ptrc99a、pKK223−3、pKK233−3、pDR540、pBR322及びpRIT5(ファルマシア(Pharmacia))、pET(ノバゲン(Novagen))。真核生物ベクターの制限されない例は、以下の通りである:pWLNEO、pSV2CAT、pPICZ、pcDNA3.1(+)Hyg(インビトロジェン(Invitrogen))、pOG44、pXT1、pSG(ストラタジーン);pSVK3、pBPV、pCI−neo(ストラタジーン)、pMSG、pSVL(ファルマシア);及びpQE−30(QLAexpress)。ウイルスベクターの制限されない例としては、アデノウイルス活性作用物質V、HSV、レンチウイルスなどが含まれる。好ましくは、発現ベクターはプラスミド又はウイルスベクターである。
【0090】
本発明によるIFNγをコードする配列は、シグナルペプチドを含んでいてもいなくてもよい。含まれていない場合には、メチオニンが任意にN末端に付加されてよい。もう1つの変形形態においては、非相同シグナルペプチドを導入することができる。前記非相同シグナルペプチドは、大腸菌といった原核生物又は真核生物、特に哺乳動物、昆虫又は酵母細菌の誘導体であってよい。
【0091】
本発明は、細胞を形質転換又はトランスフェクトするための、本発明によるポリヌクレオチド、発現カセット又はベクターの使用に関する。本発明は、熱安定性ヒトIFNγ変異体をコードする核酸、発現カセット又はベクターを含む宿主細胞、及び本発明による熱安定性組換え型ヒトIFNγ変異体を生産するためのその使用に関する。「宿主細胞」という用語は、この細胞の培養又は成長の結果もたらされる娘細胞を包含する。特定の実施形態においては、細胞は非ヒト細胞であってかつ非胚細胞である。本発明は同様に、本発明による熱安定性組換え型ヒトIFNγ変異体を生産するための方法において、本発明によるポリヌクレオチド、発現カセット又は発現ベクターで細胞を形質転換又はトランスフェクトする段階;トランスフェクション/形質転換を受けた細胞を培養する段階;及び細胞により生産された熱安定性ヒトIFNγ変異体を回収する段階を含む方法にも関する。1変形実施形態においては、本発明による熱安定性組換え型ヒトIFNγ変異体を生産するための方法は、本発明によるポリヌクレオチド、発現カセット又はベクターを含む細胞を提供する段階;トランスフェクション/形質転換を受けた細胞を培養する段階;及び細胞により生産された熱安定性ヒトIFNγ変異体を回収する段階を含む。特に、細胞は、この変異体をコードする核酸により一過性の又は安定した形で形質転換/トランスフェクションを受けてよい。前記核酸は、エピソーム又はクロモソーム形態で細胞内に含有されていてよい。組換え型タンパク質を生産するための方法は、当業者にとって周知のものである。例としては、大腸菌中での生産については、米国特許第5,004,689号明細書、欧州特許第446,582号明細書、ワング(Wang)ら(「Sci.Sin.」B24:1076〜1084頁、1994年及び「Nature」、第295号、503頁)、そして哺乳動物細胞内での生産についてはジェームス(JAMES)ら(Protein Science(1996年)第5号:331〜340頁)内で記述されている特定的方法が含まれる。
【0092】
本発明はさらに、本発明による熱安定性IFNγ変異体をコードする核酸、本発明による発現カセット、ベクター又は宿主細胞を含む医薬組成物特に上述の疾患を治療するように設計された薬剤を調製することを目的としたその使用にも関係し得る。本発明は同様に、治療上有効な量でかかる組成物を投与する段階を含む、それを必要とする患者の治療方法にも関する。
【0093】
本明細書中に列挙された全ての参考文献は本出願の参照文献リスト中に記されている。本発明のその他の面及び利点は、当然のことながら制限的なものとしてではなくあくまでも例示をするために提供されている以下の実施例の中でより明確になるだろう。
【実施例】
【0094】
熱安定性ヒトIFNγ変異体の選択
発明者らは、仏国特許出願第0505935号明細書の中に記述されているTHRと呼ばれる熱安定性タンパク質変異体を直接選択するための方法を開発した。
【0095】
前記方法は、増大した熱安定性をもつヒトIFNγ変異体とカナマイシン耐性タンパク質変異体との間の融合タンパク質を調製することに基づいている(カナマイシンヌクレオチジルトランスフェラーゼのこの2重突然変異体については、リアオ(Liao)、「Enzyme Microb.Technol.」、1993年、第15号、286〜92頁の中で記述されている)。ヒトIFNγ変異体のライブラリは、仏国特許第2813314号明細書中で記述されているMassive Mutagensis(登録商標)の方法によって調製され、テルモス・テルモフィラス(Thermus thermophilus)菌株HB27の中で高温で形質転換された。前記ライブラリからの形質転換されたクローンは、(野生型IFNγ)−KNTアーゼ融合タンパク質の生産がもはや細胞成長を可能にしない増大するカナマイシン濃度で選択された。理論的には、前記条件下で得られたクローンには、2005年6月10日に出願された仏国特許出願第0505935号明細書中で記されている通り、高温での増大した安定性が付随する。選択されたクローン上に担持された突然変異は、表1内に列挙されている。この第1の選択において単離された異なる突然変異体は、再び個別に形質転換され、その耐性レベルは野生型構成体と比較された。このようにして、つねに野生型よりは大きい様々な耐性度を付与する21の突然変異体が確認された(表2)。
【0096】
IFNγ点突然変異体の系統的生成
さらに、発現クローンpORF/IFNγから出発して、(基準として配列番号6を用いて)いわゆる野生型IFNγ位置との関係において1つそしてただ1つだけのアミノ酸差異を有する一連の大きなIFNγ点突然変異が生成された。
【0097】
IFNγ変異体の機能分析
この選択方法により選択されるか又はIFNγの全ての位置で系統的に生成されたヒトIFNγ変異体を、COS7動物細胞の中で一過的に発現させた。これらのタンパク質を培養上清中で分泌させた。前記変異体の活性の安定性及び保存性を評価するために、COS7細胞培養上清を59℃で10分間熱変性に付した。次にこれらのタンパク質(変性又は未変性)を、ルシフェラーゼリポータ遺伝子を含有するトランスフェクションを受けたHeLa細胞に対し作用させた。16時間の刺激後、各々の突然変異及び各々の条件について、IFNγ活性に対応するホタルルシフェラーゼシグナルを測定した。研究中のタンパク質についての熱変性後の残留活性を計算した(残留活性=変性活性/未変性活性×100)後で、それから、未変性タンパク質によって誘発された活性を、前記同じ変性タンパク質によって誘発された活性と比較した。未変性変異体の基底活性も、突然変異を受けていないIFNγのものと比較した。
【0098】
実験の詳細:
分子生物学:
プラスミド構成体
THR系:使用したベクターは、大腸菌(E.coli)及びT.サーモフィラス(Thermophilus)複製起源、大腸菌中で形質変換体を選択するためのアンピシリン耐性遺伝子、大腸菌及びT.サーモフィラスの両方において活性であるプロモータ(pslpAプロモータ)の制御下で熱安定性KNTアーゼをコードする遺伝子を含んでいた。図1を参照のこと。(146個のアミノ酸を含有する成熟形態についてコードする、配列番号5)IFNγヌクレオチド配列を、KNTアーゼのN末端側でベクターのNcoIとNotI部位との間でクローニングさせた。IFNγ−KNTアーゼ融合を、ペプチド配列AAAGSSGSI(配列番号8)でリンカーペプチドにより分離させ、ヌクレオチド配列GCG−GCC−GCA−GGA−AGC−TCT−GGT−TCC−ATC(配列番号7)によりコードした。
【0099】
真核細胞発現系:哺乳動物細胞内でIFNγを発現させるために、pORF/IFNγ(インビトロジェン(Invivogen))を使用し、この中でハイブリッドプロモータEF−1α−HLTV及び強SV40ポリアデニル化配列を含む発現カセット内にIFNγをクローニングした。
【0100】
基準IFNγ突然変異体の生産
文献中で記述された複数の熱安定性突然変異体を構築し、正の対照として使用した。これらは、次のものについてコードする:
− タンパク質IFNγE30C/S92C:ジスルフィド架橋を伴う突然変異体(溶融温度(mt)+15℃、ワシューツァ(Waschutga)ら、1996年)、
− タンパク質IFNγデルタ10(タンパク質のC末端における最後の10個のアミノ酸の欠失、改善された活性及び安定性、溶融温度+7.5℃及び4倍に増大した抗ウイルス活性、スロドヴスキ(Slodowski)ら、1991年)。
【0101】
前記突然変異体を、仏国特許第2813314号明細書中で記述されているMassive Mutagenesis(登録商標)法によりpNCK−IFNγ及びPORF−INFγ中で生産させた。
【0102】
THR法により選択されたIFNγ突然変異体のpORF−IFNγ内の生産
THR法により選択されたクローンの配列上で同定された突然変異に対応する単一の及び多数の突然変異を、仏国特許第2813314号明細書中で記述されたMassive Mutagenesis(登録商標)法によりpORF−IFNγ内に導入した。
【0103】
pORF/IFNγ内の単一のIFNγの系統的生成
全ての単一IFNγ変異体の系統的生成(すなわち、遺伝子コード中の他の19個のアミノ酸による成熟野生型タンパク質のアミノ酸の置換)を仏国特許第2813314号明細書中で記述されている通りのMassive Mutagenesis(登録商標)法によりpORF/IFNγ中で実施した。
【0104】
THR法による熱安定性突然変異の選択
Massive Mutagenesis(登録商標)により、pNCKベクター中にクローニングされたIFNγ変異体のライブラリを生産した。全ての位置(21から166まで)で全ダイバーシチを導入した。その後ライブラリをサーマス・サーモフィラス菌株HB27中で高温(70℃)で形質転換し、20又は40μg/mlのカナマイシン上((野生型IFNγ)−KNTアーゼが細胞増殖を可能にしない条件)で選択した。選択培地上で成長したクローンを配列決定することにより同定された突然変異は、表1に列挙されている。この一次選択において単離した異なる突然変異体を次に個別に再度形質転換し、その耐性レベルを野生型構成体のものと比較した。このようにして、野生型よりもつねに大きいものの変動する耐性度を付与する21の突然変異体を確認した(表2)。
【0105】
IFNγ突然変異体の安定性及び活性の機能的検証
全ての細胞培養試薬はインビトロジェン社由来のものであった。HeLa細胞(ヒト類上皮癌細胞)、COS−7細胞(アフリカグリーンモンキーSV40形質転換細胞)及びCHO細胞(チャイニーズハムスター卵巣)を、それぞれダルベッコ改変イーグル培地(D−MEM)及びイスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM)中で標準培養条件(湿潤CO5〜8%雰囲気内で37℃)下で成長させた。全ての培地は供給業者の推奨事項に従って調製され、L−グルタミン類似体(グルタマックス)を含有していた。実験に応じて、培養及びトランスフェクション段階については10%の最終濃度で、かつ生産段階についてはより低い百分率の濃度で、除補体したウシ胎存血清(FCS)を、そして抗生物質(HeLa及びCOS7細胞については100単位/mlのペニシリンと0.1mg/mlのストレプトマイシンそしてCHO細胞については50単位/mlのペニシリン及び0.05mg/mlのストレプトマイシン)を、培地に補足した。SV40早期プロモータの制御下でベータガラクトシダーゼを発現するpSV−ベータガル(商標)ベクター(プロメガ(Promega))を使用して、全てのトランスフェクション効率を正規化した。
【0106】
COS7哺乳動物細胞中のヒトIFNγ突然変異体の発現
天然又は突然変異体pORF/IFNγ構成体でのCOS7細胞のトランスフェクションのために、細胞が90%の集密性に達した時点で細胞をトリプシン処理し、次に(表面接着後に約25%の集密性を得るため)1/4の比で再度播腫した。細胞が70〜80%の集密性に達した時点で1ウェルあたり30,000〜60,000個の細胞を用いて、24ウェルのマイクロタイタープレート中でCOS7細胞をトランスフェクトした。5というJetPEI/DNA比で室温にて30分間およそ50ngのDNA及びJetPEI(ポリプラス(Polyplus)トランスフェクション)を用いて、トランスフェクションを実施した。24時間のトランスフェクションの後、培地(500μlのIMDM+FCS+抗生物質)を交換した。トランスフェクションからT=24時間後に、(約0.5−1μg/mlの発現レベルで)IFNγを含有する上清を回収し、等分し、IFNγ活性検定の間−20℃で保管した。
【0107】
CHO哺乳動物細胞中でのヒトIFNγ突然変異体の発現
天然又は突然変異体pORF/IFNγ構成体でのCHO細胞のトランスフェクションのために、細胞が80%の集密性に達した時点で細胞をトリプシン処理し、次に(表面接着後に約33%の集密性を得るため)1/3の比で再度播腫した。細胞が70%の集密性に達した時点でT75フラスコ中で1フラスコあたり4・10個の細胞を用いて、細胞をトランスフェクトした。5というJetPEI/DNA比で室温にて30分間およそ8ngのDNA及びJetPEI(Polyplusトランスフェクション)を用いて、トランスフェクションを実施した。24時間のトランスフェクションの後、培地(10mlのIMDM+2.5%のFCS+抗生物質)を除去した。細胞を1×PBSで簡単に洗浄し、培地をIMDM+構成物質で置換し、付加的なFSCは加えなかった。トランスフェクションからT=48時間後に、(約0.5−1μg/mlの発現レベルで)IFNγを含有する上清を回収し、等分し、IFNγ活性検定の間−20℃で保管した。
【0108】
野生型及び変異体ヒトIFNγの定量化
IFNγの総量を決定するための基準ELISAキットは、クリニサイエンシーズ(Clinisciences)(#88−7316−86)製であった。もう1つの市販のELISAキット(バイオソース(Biosource)#KHC4021)で前記同じタンパク質を定量化することにより、このELISAキット内で使用される抗体が、非突然変異体天然分子と我々の変異体を同じ要領で認識することが確認された。
【0109】
一次活性試験
IFNγがHeLa細胞上のIFNγレセプタを特異的に活性化することが先に示された。HeLa細胞中のJak/Stat1経路のIFNγ媒介型刺激は、結果として、特にGAS(ガンマ活性化部位)配列を含むプロモータの制御下で遺伝子を転写活性化する。このようにして、複数のGAS部位(ストラタジーンからのプラスミドpGAS/ルシフェラーゼ)を含有するプロモータの下流側でルシフェラーゼ(ホタルルシフェラーゼ)がクローニングされるリポータ遺伝子系でHeLa細胞をトランスフェクトすることによってIFNγ変異体の活性を測定し比較することが可能である。
【0110】
pGAS/ルシフェラーゼでのHeLa細胞の一過性トランスフェクション
HeLa細胞を、それらが90%の集密性に達した時点でトリプシン処理し、その後1/3の比率で再播種した。50〜80%の集密性でのHeLa細胞のトランスフェクションを、供給業者のプロトコルに従って、96ウェルのマイクロタイタープレート内で実施した。1ウェルにつき20,000の細胞を、5というJetPEI/DNA比でおよそ150ngのpGAS/ルシフェラーゼDNA及びJetPEIでトランスフェクトし、次に30秒間ボルテックスし30分間室温に放置した。その後、プレートの各ウェル内にDNA/JetPE1混合物を20マイクロリットルを等分し、このようにトランスフェクトされた細胞を24時間37℃で5%のCO雰囲気中で培養した。
【0111】
熱安定性ヒトIFNγ変異体の一次スクリーニング
IFNγ変異体(未変性タンパク質)/(野生型タンパク質)の合計基底活性の測定:
IFNγを含有するCOS7細胞上清を1対100で希釈し、10μlのこれらの希釈物を、pGAS/ルシフェラーゼでトランスフェクトされたHeLa細胞に添加した。プレートを5%CO雰囲気下において37℃で16時間インキュベートして、ホタルルシフェラーゼの細胞質発現を可能にし、その後細胞ペレットを回収し凍結させた。50マイクロリットルのGlo溶解緩衝液(商標)(プロメガ)を添加して細胞を溶解させた(IFNγによる特異的刺激に応えて生産されたルシフェラーゼを放出するべく室温で攪拌しながら10分間)。Bright Glo(商標)試薬(プロメガ)を添加することによって活性を測定し、蓄積されたルシフェラーゼの数量を照度計(FLX×800、バイオテックインストルメント(Bio−Tek Instrument))上で計数した。粗IFNγ活性は、RLU(相対ルシフェラーゼ単位)で発現される。各変異体(未変性)の合計活性(野生型タンパク質との関係における)を、5つの異なる実験(最低でデュプリケート)からのデータの平均として、最低2つの独立したトランスフェクションからの培養上清について、計算した。エラーバーは、標準誤差(s.e.m)により計算した。合計活性データを提示するための1つの方法は、各トランスフェクションについて同じ条件で発現された非突然変異体IFNγの基底活性の百分率として各変異体の基底活性を報告することにある。
【0112】
ルシフェラーゼリポータ遺伝子を用いた熱変性後の変異体の残留活性の測定
リポータ遺伝子を用いた一次活性試験について先に記述した通り、場合に応じて10分間59℃での熱変性処理に付されたか又は未処理で放置されたIFNγを含有するCOS7細胞上清の1/100希釈物10μlで細胞を刺激した後、ルシフェラーゼの数量を測定した。熱変性の後残留する各変異体の活性の画分を表現する1つの方法は、変性前の同じ変異体の基底活性の百分率として定義づけされる各変異体が保っている残留活性を計算することにある。変性前の合計活性との関係における残留活性を、5つの異なる実験(最低デュプリケート)からのデータの平均として、かつ最低2つの独立したトランスフェクションからの培養上清について計算した。エラーバーは、標準誤差(s.e.m)のための公式を用いて計算した。
【0113】
IFNγ変異体のための改善指数の測定(熱安定性及び/又は活性の改善)
問題のIFNγ変異体が改善された熱安定性を示すと同時に少なくとも部分的にタンパク質の固有活性を保ったということを確認した時点で、前処理後の変異体の残留活性にその活性(前処理なし)を乗じた積を計算することができた。この指数から、熱安定性の利得及び相対的活性損失を知り、ひいてはタンパク質の予想されるインビボ効果を知ることができる。非突然変異体IFNγについて37そして文献のデルタ10突然変異体について約76の指数という値は、基準タンパク質を用いて得られたものである。
【0114】
一次スクリーニングの完了時点で、図2〜6に示されているように、突然変異を受けていないヒトIFNγと比べ改善された熱安定性及び/又は活性をもつ一連のヒトIFNγ変異体が同定された。
【0115】
熱安定性ヒトIFNγ変異体の2次スクリーニング−インビトロ半減期の測定
一次スクリーニングにおいて同定された大部分の熱安定性IFNγ変異体の固有の安定性の改善を比較する目的で、59℃での熱変性時間の関数としてIFNγ変異体の活性の変動を追跡するべく2次スクリーニングを実践した。このようにして、59℃で50%だけ初期IFNγ活性を低減させるのに必要な変性時間に対応する、本明細書で「インビトロ半減期」と呼ばれる59℃での半減期が決定された。この半減期は、特に以下のパラメータ全てを制御することによって決定された。すなわち1000pg/mlの同じIFNγ出発濃度、変性すべき最終試料内の0.15%に調整された同等の血清FCS濃度、及び10分毎に試料を採取して30分間の59℃の変性温度。
【0116】
CHO細胞上清内のIFNγ濃度をELISAによって決定した。その後これらの異なるIFNγ変異体群をIMDM培地+0.15%FCS中で1000pg/mlまで希釈させた。0、10、20及び30分間59℃で熱変性前処理を受けるように希釈物を等分した。前処理した希釈物10マイクロリットルを、先に記述した通りのpGAS/ルシフェラーゼでトランスフェクトされたHeLa細胞から100μl/培地に添加した。5%CO雰囲気中に37℃で16時間置いた後、細胞ペレットを溶解させ、ルシフェラーゼを先に記述した通りに定量化した。
【0117】
データを提示する1つの方法は、IFNγ変異体による形質導入経路の特異的刺激に対応する粗活性を報告することであり、この粗活性はRLU(相対ルシフェラーゼ単位)で表現される。各変異体の熱変性後に保たれている活性の画分(残留活性とも呼ばれる)を提示するもう1つの方法は、各変性時間について、変性前の同じ変異体の基底活性との関係において保たれた残留活性の百分率を計算することである。これらの計算はトランスフェクションを受けていない細胞からシグナルを差引いた後に行なわれた。
【0118】
このようにして決定された各変異体の半減期を次に野生型IFNγのものと比較した。半減期(T1/2)は分単位で表現され、以下の公式を用いて計算される:
T1/2=ln(2)/(k 不活性化)
なお式中k 不活性化というのは、不活性段階の速度定数である。
【0119】
前記定数は以下の公式に従って各時点の瞬間的不活性化速度の平均に基づいて計算される:
Ln A(t)=ln b−t (k 不活性化)
なお式中、A(+)は、時点tにおけるIFNγ活性であり、bは定数である。
【0120】
従って、要約すると、図7に提示され表3でまとめられている本明細書で計算された「インビトロ」半減期は、各IFNγ変異体の最大活性の半分が保存されていた時間に対応する。
【0121】
表3中に提示されているもう1つのパラメータは、同じ条件下で生産された非突然変異体野生型分子との関係における各変異体の半減期の改善比率である。このパラメータの値が高ければ高いほど、非突然変異体ヒトIFNγのものと比べた変異体の「インビトロ」半減期の改善は大きくなる。
【0122】
このようにして、この2次スクリーニングの完了時点で、図7及び表3に要約されているように200〜1.4倍の率でそのインビトロ半減期の顕著な改善を示す16のIFNγ突然変異体が単離された。
【0123】
マウスにおける熱安定性ヒトIFNγ変異体の薬物動態パラメータの測定
熱安定性IFNγ変異体のこれらの記述的な薬物動態研究は、生物学的半減期又は最終半減期(「インビボ半減期」とも呼ばれる)、ならびに異なる投与経路(静脈内(i.v.)又は皮下(s.c.)注射)についての曲線下面積を決定することを目的としていた。これらのデータは次に、哺乳動物細胞内で生産された野生型IFNγについて得られたデータ、及び市販の分子、換言すると偽「アクティミューン」の特徴を示す大腸菌内で生産された標準的組換え型IFNγの場合に得られるデータと比較された。
【0124】
生物学的半減期の測定は数多くの方法で実施された:すなわち、ルーテンフランツ(Rutenfranz)ら、(「J.Interferon Res.」1990年、第10巻、337〜341頁)により記述されている1つの方法は、週令8週のC57BL/6マウスにおける静脈内及び筋内注射を使用した。
【0125】
半減期は、抗ウイルス活性試験によって直接、マウス血清(水疱性口内炎ウイルスつまりVVSに感染したHep2細胞)について測定された。この実施例では、マウス血清中のIFNγレベルを検出するための代替案としてELISAを使用した。
【0126】
クルース(Croos)及びロバーツ(Roberts)(「J.Pharm.」、1993年、第45巻、606609頁)により記述されているもう1つの方法は、放射性標識を用い、皮下注射の後の雌のスプラーグ・ドーリー(Sprague−Dawley)ラットの組織中のその吸収及び血清中のそのレベルを追跡した。血液及び組織標本を、それらが含有する放射性標識されたIFNγの量について分析した。
【0127】
IFNの薬物動態パラメータを決定するためのELISA方法の使用は、ロスタン(Rostaing)ら、(1998年)、「J.Am.Soc.Nephrol.」第9号(12):2344〜48頁により皮下投与の後、及びメリムスキ(Merimsky)ら、(1991年)、「Cancer Chemother.Pharmacol.」第27号(5)]によって筋内投与の後のIFNアルファについて記述されてきた。
【0128】
野生型及び突然変異体IFNγを、COS及びCHO細胞中で発現させた。培養上清を10分間4000rpmで2度目に遠心分離し、次にMillipore PES0.22μmフィルタ上でろ過した。5000ダルトンのカットオフでビバスピン(Vivaspin)ろ過ユニット(サートリアス(Sartorius))上での遠心分離によって、ろ過された上清を濃縮した。次にIFNγ濃度を、先に適合させた希釈物を用いることによって試料について決定した。
【0129】
野生型及び突然変異体IFNγを次の2つの要領で投与した:
− C57BL/6Jマウスの尾静脈内への10μg/mlのIFNγ溶液100μlの注入;
− 又は、C57BL/6Jマウスの胃内への6.7μg/mlのIFNγ溶液100μlの皮下注入。
【0130】
これらの実験では、体重20〜30グラムで週令8週目のC57BL/6Jを使用した。動物を、24.1℃の一定温度、55%の一定湿度でかつ昼夜12時間サイクルで一週間室内にて順応させた。
【0131】
対象の分子の投与後異なる時点で血液試料を収集した。3、6、24、48、72、96、120、144、168及び192時間目に後眼窩試料を採取し、216時間という最終時点で死後心臓試料を採取した。
【0132】
室温で20分間血液を凝固させることそして20℃で20分間5000gでの遠心分離の上清に対応する画分を回収することによって血清を調製した。次に、血清を単離し先に記述したELISA検定によるIFNγ活性の測定まで−80℃で保管した。
【0133】
各々のマウス血清においてELISAにより検出されたIFNγの数量を追跡することによって、血漿IFNγ濃度を経時的に測定した。各々の後眼窩試料について、3匹のマウスからの少なくとも3つの異なる血清の平均としてIFNγを定量化した。これらの異なる薬物動態実験を、異なるトランスフェクション由来のIFNγを用いて少なくとも2回、各々の変異体について実施した。次に経時的な血清中のIFNγ濃度を報告した。パラメータ〔T1/2i.v.、AUCi.v.,〕〔T1/2sc及びAUCsc〕を、それぞれ「静脈内ボーラス非コンパーメント」及び「脈管外ボーラス」薬物動態分析モデルを用いて、Kineticaソフトウェア(Vs4.4.1.サーモエレクトロン(株)(Thermo Electron Inc.))を利用して計算した。
【0134】
表4及び5に提示されているもう1つのパラメータは、同じ条件で生産された非突然変異体野生型分子のそれぞれのパラメータとの関係における、及びかかるデータが入手可能である場合には細菌組換え型ヒトIFNγのそれぞれのパラメータとの関係における、各変異体についての半減期又は曲線下面積の改善比率である。これらの比率が高くなればなるほど、非突然変異体ヒトIFNγのものと比べた変異体における改善が大きくなる。
【0135】
これらの実験結果及びその分析は、静脈内注射の場合は図8及び表4に、そして皮下注射については図9及び表5で提示されている。
【0136】
突然変異S63C、G41S及びその組合せが、CHOにおいて生産された組換え型ヒトIFNγのもの及び細菌内で生産された組換え型ヒトIFNγのものに比べたこれらの変異体のインビボ半減期の顕著な改善を結果としてもたらしたということがわかる。皮下投与の後、2重突然変異体は、CHO細胞内で生産された組換え型ヒトIFNγのものと比べたこれらの薬物動態パラメータの顕著な改善を再び示した。
【0137】
【表1】

【0138】
【表2】

【0139】
【表3】

【0140】
【表4】

【0141】
【表5】

【0142】
表1:テルモス・テルモフィラス中でIFNγライブラリの一次選択において同定された突然変異体。数字は、166残基前駆体内の突然変異の位置に対応する。
表2:テルモス・テルモフィラスの中で2次選択試験により検証された突然変異体。数字は、166−残基前駆体内の突然変異の位置に対応する。
表3:59℃での熱変性研究における熱安定性IFNγ変異体についての「インビトロ」半減期計算及び、CHO中で生産された野生型IFNγの半減期と比べた、変異体半減期の改善比の計算のまとめ。
表4:静脈内注射研究中の熱安定性IFNγ変異体についての熱除去半減期計算及びCHO中で生産された野生型IFNγの半減期に比べた変異体半減期の改善比の計算のまとめ。非コンパートメントIVボーラスモデルを用いたKinetica Vs 4.4ソフトウェアを利用して、最終除去半減期(T1/2、静脈内)を計算した。
表5:皮下注射研究中の合計曲線下面積(AUCtot.s.c.)及び除去半減期(T1/2s.c.)のまとめ。CHO中で生産された野生型IFNγの総AUC及び半減期と比べた変異体の総AUC及び半減期の改善比の計算。これらのパラメータは、Kinetica Vs 4.4ソフトウェアを利用して計算された。
【図面の簡単な説明】
【0143】
【図1】突然変異体ライブラリを生成するため及びテルモス・テルモフィラス(Thermus thermophilus)中でのその選定のために用いられるpNCKベクター。
【図2】テルモス・テルモフィラスにより選択されたIFNγ単一突然変異体のための機能分析データ:すなわち、熱安定性分析(残留活性%、図版A)、野生型タンパク質と比べた相対的合計活性(図版B)及び積(残留活性×野生型と比べた相対的合計活性)/100によって定義づけられる改善指数(図版C)。
【図3】テルモス・テルモフィラスにより選択された2重及び多重位置に由来するIFNγ単一突然変異体についての機能分析データ:すなわち熱安定性分析(残留活性%、図版A)、野生型タンパク質と比べた相対的合計活性(図版B)及び積(残留活性×野生型と比べた相対的合計活性)/100により定義づけられる改善指数(図版C)。
【図4】安定性及び/又は活性が改善された、系統的に生成されたIFNγ単一点突然変異体の機能分析データの第1の部分−熱安定性分析(残留活性%、図版A)、野生型タンパク質と比べた相対的合計活性(図版B)及び積(残留活性×野生型に比べた相対的合計活性)/100により定義づけされる改善指数(図版C)。
【図5】安定性及び/又は活性が改善された、系統的に生成されたIFNγ単一点突然変異体の機能分析データの第2の部分−熱安定性分析(残留活性%、図版A)、野生型タンパク質と比べた相対的合計活性(図版B)及び積(残留活性×野生型に比べた相対的合計活性)/100により定義づけされる改善指数(図版C)。
【図6】安定性及び/又は活性が改善された、系統的に生成されたIFNγ単一点突然変異体の機能分析データの第3の部分−熱安定性分析(残留活性%、図版A)、野生型タンパク質と比べた相対的合計活性(図版B)及び積(残留活性×野生型に比べた相対的合計活性)/100により定義づけされる改善指数(図版C)。
【図7】調整されたFCS濃度の存在下59℃での熱変性動態研究においてインビトロ半減期を測定することによるヒトIFNγタンパク質変異体の熱安定性評価。測定は、59℃での変性時間の関数として保存されたIFNγの量を追跡することからなる。これらのデータは、これらの条件下でこれらの分子の「インビトロ半減期」を計算するために使用された。半減期計算は、表3中に提示されている。
【図8】静脈内投与後の熱安定性ヒトIFNγ変異体の薬物動態プロファイル。IFNγレベルは、100μlの10μg/ml溶液を静脈内注射した後C57BL/6マウスから収集した血清についてELISAにより監視された。
【図9】皮下投与後の熱安定性ヒトIFNγ変異体の薬物動態プロファイルの例。IFNγ血漿濃度は、100μlの6.7μg/ml溶液の皮下注射の後C57BL/6マウスから収集した血清についてELISAにより定量化された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
S63C、E62C、F159C、D99Y、E116C、L158C、S74G、R162C、S122D、L126P、N58R及びT95Vからなる群から選択された少なくとも1つの第1の置換を含む、ヒトインターフェロンガンマ(IFNγ)の熱安定性変異体又はその機能的フラグメントを含む医薬組成物であって、前記指示された位置が配列番号2の位置に対応し、前記変異体が第1の置換により導入された残基に付着した非ペプチド部分を含有していない、医薬組成物。
【請求項2】
前記変異体が、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個の残基分だけ、好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個の残基分だけ、配列番号2、4及び6の配列の中から選択された配列を有するポリペプチドと異なっている、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記変異体が単一の置換を有する、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記変異体が、M157C、G41S及びM100Nからなる群の中から選択された少なくとも1つのその他の置換をさらに含み、指示された位置が配列番号2の位置に対応する、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記変異体が、S63C、E62C、F159C、D99Y、E116C、L158C、S74G、R162C、S122D、M100N、L126P、N58R、T95V、M157C及びG41Sからなる群の中から選択された2つの置換の組合せを含むか又は有しており、前記指示された位置が配列番号2の位置に対応する、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記変異体が、S63C+E62C、S63C+F159C、S63C+D99Y、S63C+E116C、S63C+L158C、S63C+S74G、S63C+R162C、S63C+S122D、S63C+M100N、S63C+L126P、S63C+N58R、S63C+T95V、S63C+M157C、S63C+G41S、E62C+F159C、E62C+D99Y、E62C+E116C、E62C+L158C、E62C+S74G、E62C+R162C、E62C+S122D、E62C+M100N、E62C+L126P、E62C+N58R、E62C+T95V、E62C+M157C、E62C+G41S、F159C+D99Y、F159C+E116C、F159C+L158C、F159C+S74G、F159C+R162C、F159C+S122D、F159C+M100N、F159C+L126P、F159C+N58R、F159C+T95V、F159C+M157C、F159C+G41S、D99Y+E116C、D99Y+L158C、D99Y+S74G、D99Y+R162C、D99Y+S122D、D99Y+M100N、D99Y+L126P、D99Y+N58R、D99Y+T95V、D99Y+M157C、D99Y+G41S、E116C+L158C、E116C+S74G、E116C+R162C、E116C+S122D、E116C+M100N、E116C+L126P、E116C+N58R、E116C+T95V、E116C+M157C、E116C+G41S、L158C+S74G、L158C+R162C、L158C+S122D、L158C+M100N、L158C+L126P、L158C+N58R、L158C+T95V、L158C+M157C、L158C+G41S、S74G+R162C、S74G+S122D、S74G+M100N、S74G+L126P、S74G+N58R、S74G+T95V、S74G+M157C、S74G+G41S、R162C+S122D、R162C+M100N、R162C+L126P、R162C+N58R、R162C+T95V、R162C+M157C、R162C+G41S、S122D+L126P、S122D+N58R、S122D+T95V、S122D+M157C、S122D+M100N、S122D+G41S、L126P+N58R、L126P+T95V、L126P+M157C、L126P+M100N、L126P+G41S、N58R+T95V、N58R+M157C、N58R+M100N、N58R+G41S、T95V+M157C、T95V+M100N、T95V+G41S、M157C+M100NおよびM157C+G41Sからなる群の中から選択された置換の組合せを含むか又は有しており、前記指示された位置が配列番号2の位置に対応する、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記変異体が、S63C+E62C、S63C+F159C、S63C+D99Y、S63C+E116C、S63C+L158C、S63C+S74G、S63C+R162C、S63C+S122D、S63C+M100N、S63C+L126P、S63C+N58R、S63C+T95V、S63C+M157C、S63C+G41Sからなる群の中から選択された置換の組合せを含むか又は有しており、前記指示された位置が配列番号2の位置に対応する、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記変異体が組合せS63+G41Sを含むか又は有しており前記指示された位置が配列番号2の位置に対応する、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記変異体がC末端において1〜11個の残基の欠失を有していない、請求項1〜8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記変異体がC末端において1〜11個の残基の欠失を有している、請求項1〜8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記変異体が、重合体分子、親油性分子及び有機誘導体化剤からなる群の中から選択された非ペプチド部分を含有していない、請求項1〜10のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記変異体が、重合体分子、親油性分子及び有機誘導体化剤からなる群の中から選択された非ペプチド部分を含有している、請求項1〜10のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記非ペプチド分子が重合体分子、好ましくはポリエチレングリコールである、請求項11又は12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記変異体がグリコシル化されている、請求項1〜13のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記変異体がグリコシル化されていない、請求項1〜13のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項16】
少なくとも1つのその他の作用物質をさらに含む、請求項1〜15のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記少なくとも1つのその他の活性作用物質が、抗体、抗腫瘍薬又は化学療法剤、グルココルチコイド、抗ヒスタミン剤、副腎皮質ホルモン、抗アレルギー薬、ワクチン、気管支拡張剤、ステロイド、ベータアドレナリン作動薬、免疫調節剤、サイトカイン例えばインターフェロンアルファ又はベータ、インターロイキン1又は2、TNF(腫瘍壊死因子)、ヒドロキシウレア、アルキル化剤、葉酸拮抗薬、核酸代謝拮抗物質、紡鐘体毒、抗生物質、ヌクオレチド類似体、レチノイド、リポキシゲナーゼ及びシクロオキシゲナーゼ阻害剤、フマル酸及びその塩、鎮痛剤、鎮痙薬及びカルシウム拮抗薬からなる群の中から選択される、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記少なくとも1つのその他の活性作用物質がインターフェロンアルファ又はベータである、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項19】
経口、非経口(例えば皮下、筋内、静脈内又は皮内)、舌下、局所、局部、気管内、鼻腔内、経皮、直腸、眼球内又は耳介内投与向けに処方されている、請求項1〜18のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項20】
薬剤としての請求項1〜19のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項21】
抗ウイルス性、抗増殖性、又は免疫調節性薬剤としての同時、逐次又は分離使用のために設計された複合製剤用のもう1つの活性作用物質と請求項1〜15のいずれか一項に記載の医薬組成物を含む製品。
【請求項22】
前記その他の活性作用物質が、抗体、抗腫瘍薬又は化学療法剤、グルココルチコイド、抗ヒスタミン剤、副腎皮質ホルモン、抗アレルギー薬、ワクチン、気管支拡張剤、ステロイド、ベータアドレナリン作動薬、免疫調節剤、サイトカイン例えばインターフェロンアルファ又はベータ、インターロイキン1又は2、TNF(腫瘍壊死因子)、ヒドロキシウレア、アルキル化剤、葉酸拮抗薬、核酸代謝拮抗物質、紡鐘体毒、抗生物質、ヌクオレチド類似体、レチノイド、リポキシゲナーゼ及びシクロオキシゲナーゼ阻害剤、フマル酸及びその塩、鎮痛剤、鎮痙薬及びカルシウム拮抗薬からなる群の中から選択される、請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項23】
前記その他の活性作用物質がインターフェロンアルファ又はベータである、請求項22に記載の製品。
【請求項24】
前記2つの活性作用物質が同じ投与経路又は2つの異なる投与経路により投与されている、請求項21〜23のいずれか一項に記載の製品。
【請求項25】
前記薬剤が、ぜん息、慢性家族性肉芽腫症、特発性肺線維症、非定型抗酸菌感染症、腎臓癌、大理石骨病、全身性強皮症、慢性B型又はC型肝炎、敗血性ショック、アレルギー性皮膚炎及び関節リウマチからなる群の中から選択された病状を治療するために設計されている、請求項21〜24のいずれか一項に記載の製品。
【請求項26】
抗ウイルス性、抗増殖性又は免疫調節性薬剤を調製するための請求項1〜19のいずれか一項に記載の医薬組成物の使用。
【請求項27】
前記薬剤が、ぜん息、慢性家族性肉芽腫症、特発性肺線維症、非定型抗酸菌感染症、腎臓癌、大理石骨病、全身性強皮症、慢性B型又はC型肝炎、敗血性ショック、アレルギー性皮膚炎及び関節リウマチからなる群の中から選択された病状を治療するために設計されている、請求項26に記載の使用。
【請求項28】
請求項1〜15のいずれか一項に記載の熱安定性IFNγ変異体をコードする核酸。
【請求項29】
請求項28に記載の核酸の発現カセット。
【請求項30】
請求項28に記載の核酸又は請求項29に記載の発現カセットを含むベクター。
【請求項31】
請求項28に記載の核酸、請求項29に記載の発現カセット又は請求項30に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項32】
請求項1〜15のいずれか一項に記載の熱安定性IFNγ変異体を生産することを目的とした、請求項28に記載の核酸、請求項29に記載の発現カセット、請求項30に記載のベクター又は請求項31に記載の細胞の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図7−1】
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【図7−2】
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【図7−3】
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【図7−4】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2009−529027(P2009−529027A)
【公表日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−557801(P2008−557801)
【出願日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際出願番号】PCT/FR2007/000419
【国際公開番号】WO2007/101949
【国際公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(508270831)
【氏名又は名称原語表記】BIOMETHODES
【Fターム(参考)】